説明

電解質積層膜、膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池

【課題】 フッ素系電解質膜は高価な上、酸素透過性が高くこれに伴い発生するラジカルに対する耐久性が低く、更に製造時及び廃棄時のフッ素排出に伴う環境負荷が大きい。一方、エンジニアリングプラスチック系材料を用いた電解質膜は、セル抵抗によって評価される発電特性が低く、特に低湿度下においてセル抵抗・発電特性が低い。
【解決手段】 構成電解質膜として少なくとも2つの電解質膜を積層してなる電解質積層膜であって、前記電解質膜の少なくとも1つが、イオン伝導性基を有し、主鎖に芳香環を有する重合体(I)を主成分とする電解質膜(i)であって、さらに、前記電解質膜の少なくとも1つがイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)及びイオン伝導性基を有しない重合体ブロック(B)を構成成分とするブロック共重合体(II)を主成分とする電解質膜(ii)であることを特徴とする電解質積層膜を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池用の電解質積層膜、並びに該電解質積層膜を含んでなる膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー・環境問題の抜本的解決策として、燃料電池技術は新エネルギー技術の柱の1つとして数えられている。特に固体高分子型燃料電池(PEFC;Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、小型軽量化も期待できることから、電気自動車用の駆動電源や携帯機器用の電源、さらに電気と熱を同時利用する家庭据置き用の電源機器など幅広い用途への適用が検討されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、一般に次のように構成される。まず、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜の両側に、白金属の金属触媒を担持したカーボン粉末と高分子電解質からなるイオン伝導性バインダーとを含む触媒層がそれぞれ形成される。各触媒層の外側には、燃料ガス及び酸化剤ガスをそれぞれ通気する多孔性材料であるガス拡散層がそれぞれ形成される。ガス拡散層としてはカーボンペーパー、カーボンクロスなどが用いられる。触媒層とガス拡散層を一体化したものはガス拡散電極と呼ばれ、また一対のガス拡散電極をそれぞれ触媒層が高分子電解質膜と向かい合うように高分子電解質膜に接合した構造体は膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)と呼ばれている。この膜−電極接合体の両側には、導電性と気密性を備えたセパレータが配置される。電極面に燃料ガス又は酸化剤ガス(例えば空気)を供給するガス流路が膜−電極接合体とセパレータの接触部分又はセパレータ内に形成されている。一方の電極(燃料極)に燃料ガスを供給し、他方の電極(酸素極)に空気などの酸素を含有する酸化剤ガスを供給して発電する。すなわち、燃料極では燃料がイオン化されてプロトンと電子が生じ、プロトンは高分子電解質膜を通り、電子は両電極をつなぐことによって形成される外部電気回路を移動して酸素極へ送られ、酸化剤と反応することで水が生成する。このようにして、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して取り出すことができる。
【0004】
固体高分子型燃料電池に使用される高分子電解質膜として、当初主としてフッ素系の高分子電解質膜が使われてきた(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製))。フッ素系の高分子電解質膜は低湿度下におけるイオン伝導性に優れるため、良好な出力を得ることが可能である。また、乾燥時の機械的強度が高いだけでなく、加湿した場合の線膨張率が低く、燃料電池のオン/オフに伴う湿度変化によっても強度が保持され、寸法変化に伴う膜の劣化も少ない。しかしながら、これらフッ素系の高分子電解質膜は酸素透過性が高くこれに伴い発生するラジカルに対する耐久性が低いこと、製造時及び廃棄時のフッ素排出に伴う環境負荷が大きいこと、また高価であることなどの欠点も有しているため、代替材料が求められている。
【0005】
フッ素系の高分子電解質に代わる材料として、エンジニアリングプラスチック系材料をベースポリマーとし、これにスルホン酸基などのイオン伝導性基を導入した高分子電解質からなる高分子電解質膜が提案されている。
【0006】
例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のスルホン化物が提案されている(例えば特許文献1参照)。このような高分子電解質膜はフッ素が含まれていないため、高分子電解質膜の製造及び廃棄時、また劣化時にもフッ素化合物が全く発生しない。また機械的強度が高く加湿時の線膨張率も低いので、使用時の強度、耐久性にも優れる。更に酸素バリア性が高いため、酸素ガスが燃料極に流れ込むことで発生するラジカルの発生が抑制され膜の劣化が起こりにくいという特徴を有している。しかしこれらの材料を用いた高分子電解質膜は、触媒層との接合性が悪いという課題を有している。
【0007】
そこで、これら非フッ素系電解質膜に軟化温度が低い高分子電解質を塗布した電解質積層膜が提案されている。特許文献2には、上記エンジニアリングプラスチック系の高分子電解質膜に軟化温度が低いナフィオンを塗布した電解質積層膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−93114号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/051776号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules,(1969),2(5),453−458
【非特許文献2】Kautsch.Gummi,Kunstst.,(1984),37(5),377−379;
【非特許文献3】Polym.Bull.,(1984),12,71−77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、エンジニアリングプラスチック系材料を用いた電解質膜は、セル抵抗によって評価される発電特性が低く、特に低湿度下においてセル抵抗・発電特性が大きく悪化する傾向がある。
【0011】
また、触媒層との接合性を改善するためにナフィオンを塗布すると、廃棄時にナフィオンを分離することは実質的に不可能であり、廃棄にかかる負荷は従来のフッ素系電解質膜と同様に高いものとなる。
【0012】
そこで本発明は、広い湿度範囲で低いセル抵抗を示し、さらに乾燥時の機械的強度に優れ加湿時の線膨張率も抑制されることに由来して、燃料電池のオン/オフに伴う湿度変化によっても発電特性が維持され、またラジカル耐久性にも優れるため長期の使用にも優れる非フッ素系の高分子電解質膜を提供することを目的とする。また、該高分子電解質膜を含んでなる膜−電極接合体を提供することを別の目的とする。更に該膜−電極接合体を含んでなる固体高分子型燃料電池を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、構成電解質膜として少なくとも2つの高分子電解質膜を積層してなる固体高分子型燃料電池用の電解質積層膜であって、前記高分子電解質膜の少なくとも1つが、イオン伝導性基を有し、主鎖に芳香環を有する重合体(I)を主成分とする高分子電解質膜(i)であって、さらに、前記高分子電解質膜の少なくとも1つがイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)及びイオン伝導性を有しない重合体ブロック(B)を構成成分とするブロック共重合体(II)を主成分とする高分子電解質膜(ii)であることを特徴とする電解質積層膜、並びに該電解質積層膜を含んでなる膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池を提供することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明は、
構成電解質膜として少なくとも2つの高分子電解質膜を積層してなる電解質積層膜であって、前記高分子電解質膜の少なくとも1つが、イオン伝導性基を有し、主鎖に芳香環を有する重合体(I)を主成分とする高分子電解質膜(i)であり、さらに、前記高分子電解質膜の少なくとも1つがイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)及びイオン伝導性基を有しない重合体ブロック(B)を構成成分とするブロック共重合体(II)を主成分とする高分子電解質膜(ii)であることを特徴とする電解質積層膜に関する。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、
前記重合体ブロック(B)がゴム状の重合体ブロック(B)であることを特徴とする請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、
前記重合体(I)が、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリエーテルケトンケトン類、ポリフェニレンサルファイド類、ポリフェニレンエーテル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルスルホン類、ポリフェニレンスルホン類、ポリフェニレンスルホキシド類、ポリフェニレンスルフィドスルホン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリパラフェニレン類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリイミド類から選択される少なくとも1種のセグメントを有する請求項1記載の電解質積層膜に関する。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、
前記イオン伝導性基が−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される基である請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、
前記重合体(II)中、重合体ブロック(A)が芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とすることを特徴とする請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、
前記ブロック共重合体(II)が、イオン伝導性基を有さず非ゴム状の重合体ブロック(C)を更に構成成分とすることを特徴とする請求項2に記載の電解質積層膜に関する。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、
前記重合体ブロック(C)が、下記の一般式(a)で表される芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位として有する重合体ブロックである請求項6に記載の電解質積層膜に関する。
【0021】
【化1】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、そのうち少なくとも1つはアルキル基を表す)
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、
前記重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0023】
また、請求項9に記載の発明は、
前記重合体ブロック(C)と前記重合体ブロック(A)との質量比が85:15〜20:80である請求項6に記載の電解質積層膜に関する。
【0024】
また、請求項10に記載の発明は、
前記ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(B)の質量割合が5〜95質量%である請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0025】
また、請求項11に記載の発明は、
前記イオン伝導性基が−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される官能基である請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0026】
また、請求項12に記載の発明は、
前記高分子電解質膜(i)の厚さが2〜20μmであり、高分子電解質膜(ii)の厚さが2〜40μmである請求項1に記載の電解質積層膜に関する。
【0027】
また、請求項13に記載の発明は、
請求項1に記載の電解質積層膜を含んでなる膜−電極接合体に関する。
【0028】
また、請求項14に記載の発明は、
請求項13に記載の膜−電極接合体を含んでなる固体高分子型燃料電池に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電解質積層膜は、低湿度から高湿度までの広い湿度変化においても高い寸法安定性、並びに高い機械的耐久性を有し、水素を燃料とする固体高分子型燃料電池に用いたとき、出力特性、耐久性に優れる。このことは、従来湿度の制御のため必要であった多くの補機類を省略することに繋がり、装置の小型化、コストダウンのために有利である。また高分子電解質膜のガスバリア性が高いため、酸素の透過に伴い発生するラジカルに対する耐久性に優れ、長寿命である。さらに、該電解質積層膜を用いた膜−電極接合体、及び燃料電池は発電特性、並びにラジカルに対する耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0031】
本発明の電解質積層膜を構成する高分子電解質膜(i)の主成分である重合体(I)は高分子電解質膜(i)の70質量%以上を占めることが望ましく、90質量%以上を占めることが更に望ましく、95質量%以上を占めることが更に望ましい。重合体(I)は複数を併用してもよく、その場合、用いる複数の重合体(I)の合計として高分子電解質膜(i)の主成分を構成すればよい。複数の重合体(I)を併用する場合、相互の親和性が高いことが望ましく、これは一次構造、極性などの類似性が重要となる。
【0032】
本発明の電解質積層膜を構成する高分子電解質膜(i)に含有される重合体(I)以外の成分としては、本発明の効果を損わない限り特に限定されるものではなく、他の高分子材料(例えばイオン伝導性基を有しない、主鎖に芳香環を有する重合体;他の高分子電解質(例えばブロック共重合体(II)と類似の高分子電解質));各種無機材料(例えば金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩等、イオン伝導性を有する無機電解質、またはイオン伝導性を有さない無機塩類等);各種添加剤(例えば、軟化剤、安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤)を各単独で又は2種以上組み合わせて含有していても良い。
【0033】
本発明の電解質積層膜は高分子電解質膜(i)を少なくとも1層積層しているが、複数層用いてもよい。
【0034】
本発明の電解質積層膜で用いる高分子電解質膜(i)の主成分である重合体(I)としては、イオン伝導性基を有し、主鎖に芳香環を有する重合体であり、例えば、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリエーテルケトンケトン類、ポリフェニレンサルファイド類、ポリフェニレンエーテル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルスルホン類、ポリフェニレンスルホン類、ポリフェニレンスルホキシド類、ポリフェニレンスルフィドスルホン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリパラフェニレン類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリイミド類から選択される少なくとも1種のセグメントを有する芳香族高分子の構造を挙げることができる。この中でも寸法安定性、機械的耐久性、ガスバリア性に伴うラジカル耐久性の観点からポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリエーテルケトンケトン類、ポリフェニレンサルファイド類、ポリフェニレンエーテル類が好ましい。
【0035】
これらのセグメントにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、ベンジル基などの炭素数7〜12のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲンなどの置換基が挙げられる。置換基は複数有していても良く、その場合は、これらは異なっていてもよい。またこれらアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基などの炭化水素系官能基は官能基が有する水素原子を別の官能基で置換した構造であってもよい。
【0036】
重合体(I)は2種類以上のセグメントにより構成される共重合体であってもよく、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でも、グラフト共重合体でもよい。また重合体(I)は、重合して得られたものを用いることもできるし、市販品を用いることもできる。例えば、ポリエーテルエーテルケトン類はVICTREX社より「VICTREX PEEK」として、またポリフェニレンサルファイド類はクレハ株式会社より「フォートロンKPS」などとして入手することができる。
【0037】
重合体(I)のイオン伝導性基が導入されていない状態での分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、2,000〜1,0000,000の間から選択されるのが好ましく、5,000〜500,000の範囲から選択されるのがより好ましく、8,000〜100,000の間から選択されるのがより好ましい。
【0038】
重合体(I)が有するイオン伝導性基としては、該電解質積層膜を用いて作製される膜−電極接合体が十分なイオン伝導度を発現できるような基であれば特に限定されないが、中でも−SOM、−POHM、又は−COOM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基又はそれらの塩を用いることができ、特に高いイオン伝導性を示す観点から、−SOM又は−POHMで表されるスルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が好適に用いられる。
【0039】
重合体(I)のイオン伝導性基の導入位置については特に制限はなく、主鎖の芳香環に直接導入されていてもよいし、炭素数1から12のアルキル基、フッ化アルキル基、炭素数6から24の芳香族残基、また、炭素数1から12のアルコキシ基などを介して主鎖に結合されていてもよい。
【0040】
重合体(I)のイオン伝導性基として例えばスルホン酸基の場合、その導入方法は、硫酸を用いる方法、硫酸と脂肪族酸無水物との混合物を用いる方法、クロロスルホン酸を用いる方法、クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物を用いる方法、三酸化硫黄を用いる方法、三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物を用いる方法、さらに2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等を用いる方法が例示される。
【0041】
重合体(I)のイオン伝導性基として例えば、ホスホン酸基の場合、その導入方法は、芳香環上にハロメチル基を導入後、これに三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、さらに加水分解反応を行ってホスホン酸基を導入する方法や、芳香環上にホスフィン酸基を導入後、硝酸によりホスフィン酸基を酸化してホスホン酸基とする方法等が例示できる。
【0042】
重合体(I)のイオン交換容量は、0.1mmol/g〜5.0mmol/gの範囲が好ましく、0.5mmol/g〜4.0mmol/gの範囲がより好ましい。イオン伝導性基の種類や濃度、温度、処理時間などの条件を適宜選択することによりイオン交換容量を調節することができる。イオン交換容量、もしくは重合体(I)中のスルホン化率又はホスホン化率は、酸価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
【0043】
重合体(I)のイオン伝導性基は、適当な金属イオン(例えばアルカリ金属イオン)あるいは対イオン(例えばアンモニウムイオン)で中和されている塩の形で導入されていてもよい。例えば、適当な方法でイオン交換することより、スルホン酸基を塩型にしたブロック共重合体を得ることができる。
【0044】
重合体(I)は、本発明の効果を損わない限り、1種もしくは複数の他の単量体単位を含んでいてもよいし、各種添加剤、例えば、軟化剤、安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤等を各単独で又は2種以上組み合わせて含有していても良い。
【0045】
本発明の電解質積層膜を構成する高分子電解質膜(ii)の主成分であるブロック共重合体(II)は該高分子電解質膜(ii)の70質量%以上を占めることが望ましく、90質量%以上を占めることが更に望ましく、95質量%以上を占めることが更に望ましい。これらブロック共重合体(II)は複数を併用してもよく、その場合、用いる複数のブロック共重合体(II)の合計として高分子電解質膜(ii)の主成分を構成すればよい。複数のブロック共重合体(II)を併用する場合、相互の親和性が高いことが望ましく、これは構成する各ブロックの1次構造、極性などの類似性が重要となる。
【0046】
本発明の電解質積層膜を構成する高分子電解質膜(ii)に含有されるブロック共重合体(II)以外の成分としては、本発明の効果を損わない限り特に限定されるものではなく、他の高分子材料(例えばイオン伝導性基を有しない重合体;他の高分子電解質(例えば重合体(I)と類似の高分子電解質));各種無機材料(例えば金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩等、イオン伝導性を有する無機電解質、またはイオン伝導性を有さない無機塩類等);各種添加剤(例えば、軟化剤、安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤)を各単独で又は2種以上組み合わせて含有していても良い。
【0047】
本発明の電解質積層膜は高分子電解質膜(ii)を少なくとも1層積層しているが、複数層用いてもよい。
【0048】
本発明の電解質積層膜で用いる高分子電解質膜(ii)に含有されるブロック共重合体(II)を構成する重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とがミクロ相分離することが非常に望ましい。ここでいうミクロ相分離とは、2種類以上の鎖状高分子の末端を共有結合で連結したブロックコポリマーにおいて、同種の高分子鎖同士で凝集し相分離するが、異種高分子間に斥力的な相互作用が働き、結果としてナノスケールからサブミクロンスケールの周期的な自己組織化構造を形成し、得られる周期構造を言う。かかるミクロ相分離構造は形成されるドメインサイズが可視光の波長(3800〜7800Å)以下である相分離を意味するものとする。重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士はそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はイオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合によりイオンチャンネルが形成され、プロトン等のイオンの通り道となる。
【0049】
ブロック共重合体(II)の構成成分である重合体ブロック(A)としては、イオン交換基を有し、ブロック共重合体を合成可能な重合体ブロックであればよい。例えば、芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロック、ポリカーボネートブロック、ポリアミドブロック、ポリイミドブロック、ポリ尿素ブロック、ポリスルホンブロック、ポリスルホネートブロック、ポリベンゾオキサゾールブロック、ポリベンゾチアゾールブロック、ポリフェニルキノキサリンブロック、ポリキノリンブロック、ポリトリアジンブロック、ポリアクリレート誘導体ブロック、ポリメタクリレート誘導体ブロック等が挙げられ、中でも芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロックが好ましい。このうち、合成が容易であり、また、重合体(I)との構造の類似性から、親和性が高く、接合性に優れる、芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロックがより好ましい。
【0050】
重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル系化合物単位が有する芳香環は、炭素環式芳香環であるのが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等が挙げられる。これら芳香族ビニル系化合物の具体例として、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−イソブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの芳香族ビニル系化合物が挙げられる。
【0051】
また、上記の芳香族ビニル系化合物単位が炭素環式芳香環として、α−炭素が4級炭素であるものでもよい。すなわち、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、もしくはtert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)又はフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物等を挙げることができ、具体的には、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−4−エチルスチレン、α−メチル−4−t−ブチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
【0052】
これらは1種又は2種以上組み合わせて使用できるが、中でもスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−2−メチルスチレンが、材料の入手性、合成の容易さ、イオン交換基の導入の点から好ましい。
【0053】
これらの2種以上を共重合させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。
【0054】
重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損わない範囲内で1種もしくは複数の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる他の単量体としては、例えば、炭素数4〜8の共役ジエン(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン等)、炭素数2〜8のアルケン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが望ましい。
【0055】
重合体ブロック(A)が芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とすると、重合体ブロック(B)とのミクロ相分離を起こす上で有利であり、この結果イオン伝導性を高めることができる。この場合、芳香族ビニル系化合物単位は、最終的に得られる電解質積層膜に十分なイオン伝導性を付与するために、重合体ブロック(A)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがより一層好ましい。
【0056】
重合体ブロック(A)がブロック共重合体(II)の5〜60質量%を占めることは、得られる電解質積層膜に十分なイオン伝導性を付与するために好ましい。10〜55質量%を占めることがより好ましく、20〜50質量%以上を占めることが更に好ましい。
【0057】
各重合体ブロック(A)の分子量は、電解質積層膜の性状、要求性能、他の重合体成分等によって適宜選択される。分子量が大きい場合、電解質積層膜の力学特性が高くなる傾向にあるが、大きすぎるとブロック共重合体の成形、製膜が困難になり、分子量が小さい場合、ミクロ相分離構造、ひいては、イオンチャンネルを形成しにくくなるため、イオン伝導性を示さなくなる傾向にあり、また力学特性が低くなる傾向にあるので、これらの傾向を考慮して、求められる機能に応じて分子量を適宜選択することができる。
【0058】
各重合体ブロック(A)のイオン伝導性基が導入されていない状態での分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、3,000〜100,000の間から選択されるのが好ましく、4,000〜50,000の範囲から選択されるのがより好ましく、5,000〜20,000の間から選択されるのがより好ましい。また、製膜時の溶液調製のしやすさ、および製膜性の観点から、5,000〜10,000の間から選択されるのが好ましい。
【0059】
また、重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損わない範囲内で公知の方法により架橋されていてもよい。架橋を導入することにより、重合体ブロック(A)が形成するイオンチャンネル相が膨潤しにくくなり、乾燥時と湿潤時の力学特性(引張特性等)の変化などが更に小さくなる傾向にある。
【0060】
本発明の電解質積層膜を構成する高分子電解質膜(ii)におけるブロック共重合体(II)は重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有することが必要である。イオン伝導性基の導入位置を重合体ブロック(A)にすることはブロック共重合体(II)全体の耐ラジカル性を向上させるのに特に有効であるためである。
【0061】
重合体ブロック(A)が有するイオン伝導性基としては特に限定はなく、イオン伝導性を有する官能基を用いることが出来、アニオンおよび/またはカチオンとの親和性が高いもの、特に官能基の一部がイオンとして解離しやすいものが好適であり、例えばスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、4級アンモニウム塩、ピリジンの4級塩などが挙げられる。特にプロトン性官能基または該プロトン性官能基のプロトンを他のイオンと交換した塩はプロトン伝導性に優れ、例えばスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基並びにそれらの塩などが挙げられる。イオン伝導性、導入しやすさ、価格などの観点からスルホン酸基及びホスホン酸基並びにそれらの塩が好適に用いられる。イオン伝導性基の種類や濃度を適宜選択することでイオン交換容量を調節することができる。
【0062】
本発明でイオン伝導性に言及する場合のイオンとしてはプロトンなどが挙げられる。イオン伝導性基としては、該電解質積層膜を用いて作製される膜−電極接合体が十分なイオン伝導度を発現できるような基であれば特に限定されないが、中でも−SOM又は−POHM、又は−COOM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基又はそれらの塩を用いることができ、特に高いイオン伝導性を示す観点から、−SOM又は−POHMで表されるスルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が好適に用いられる。
【0063】
イオン伝導性基の重合体ブロック(A)中への導入位置については特に制限はなく、芳香族化合物単位、芳香族ビニル系化合物単位に導入しても既述の他の単量体単位に導入してもよいが、イオンチャンネル形成を容易にする観点から、芳香族化合物単位、芳香族ビニル系化合物単位の芳香環に導入するのが好ましい。
【0064】
イオン伝導性基の導入量は、得られるブロック共重合体(II)の要求性能等によって適宜選択されるが、固体高分子型燃料電池用の電解質膜として使用するのに十分なイオン伝導性を発現するためには、通常、ブロック共重合体(II) のイオン交換容量が0.70meq/g以上となるような量であることが好ましく、1.00meq/g以上となるような量であることがより好ましい。ブロック共重合体(II)のイオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり耐水性が不十分になる傾向となるので、4.00meq/g以下であるのが好ましい。
【0065】
イオン伝導性基を有しない重合体ブロック(B)としては、重合体ブロック(A)とミクロ相分離する重合体ブロックであることが望ましい。例えば、スチレン誘導体(スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシル、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体)、炭素数4〜8の共役ジエン(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン等)、炭素数2〜8のアルケン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、炭素数5〜8のシクロアルケン(シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン及びシクロオクテン等)、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン(ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテン等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。
【0066】
重合体ブロック(B)における「イオン伝導性基を有しない」とは、実質的にイオン伝導性を示さない程度にイオン伝導性基を有しないことを意味し、重合体ブロック(B)の繰り返し単位あたりイオン伝導性基が0.1個以下であればよく、0.05個以下であることが好ましい。
【0067】
重合体ブロック(B)はこれらの中でも、ゴム状の重合体ブロック(B)を構成成分とすることが好ましく、このことによりブロック共重合体(II)が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって成形性(組立性、接合性、締付性など)等が改善される。ここでいうゴム状の重合体ブロック(B)はガラス転移点あるいは軟化点が30℃以下であることを意味し、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。ここでガラス転移点あるいは軟化点は、重合体ブロック(B)に相当するホモポリマーの測定値から類推できる。
【0068】
ゴム状の重合体ブロック(B)は、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位からなる重合体ブロックであることが好ましく、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位より選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることがより好ましく、炭素数2〜6のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることがさらに好ましい。上記で、アルケン単位として最も好ましいのはイソブテン単位、1,3−ブタジエン単位の二重結合を飽和した構造単位(1−ブテン単位、2−ブテン単位)、イソプレン単位の二重結合を飽和した構造単位(2−メチル−1−ブテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、2−メチル−2−ブテン単位)であり、特に柔軟性の高さから1,3−ブタジエン単位の二重結合を飽和した構造単位(1−ブテン単位、2−ブテン単位)の併用、イソプレン単位の二重結合を飽和した構造単位(2−メチル−1−ブテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、2−メチル−2−ブテン単位)の併用が、最も好ましい。共役ジエン単位として最も好ましいのは1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位である。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0069】
該繰返し単位を構成することができる単量体を重合(共重合)させる場合、単量体として共役ジエンを用いる場合には、可能となる複数の重合様式(例えば1,3−ジエンにおいては1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合)のいずれであってもよく、またガラス転移点あるいは軟化点が30℃以下であれば、これら複数の重合様式の割合(例えば1,2−結合と1,4−結合との割合)にも特に制限はない。
【0070】
重合体ブロック(B)を構成する繰返し単位が、ビニルシクロアルケン単位や共役ジエン単位や共役シクロアルカジエン単位である場合のように炭素−炭素二重結合を有している場合には、本発明の電解質積層膜を用いた膜−電極接合体の発電性能、耐熱劣化性の向上などの観点から、かかる炭素−炭素二重結合はその80モル%以上が水素添加されているのが好ましく、90モル%以上が水素添加されているのがより好ましく、95モル%以上が水素添加されているのがより一層好ましい。例えば重合体ブロック(B)として、炭素数4〜8の共役ジエン単位を重合したのち、炭素−炭素二重結合の実質的に全部を水素添加されたものを用いても良い。炭素−炭素二重結合の水素添加率は、一般に用いられている方法、例えば、ヨウ素価測定法、H−NMR測定等によって算出することができる。
【0071】
また、このように重合体ブロック(B)中の二重結合を低減することで、イオン伝導性基導入反応が起こりにくくなるので、例えばイオン伝導性基を有しないブロック共重合体にイオン伝導性基導入反応を行うことでブロック共重合体(II)を製造する場合、イオン伝導性基を有しない重合体ブロック(B)を形成する上で有利となる。
【0072】
また、重合体ブロック(B)が、ブロック共重合体(II)に弾力性を与えるためには、上記ゴム状の重合体ブロック(B)の好ましい繰り返し単位を70質量%以上含むことが好ましく、80%以上含むことがより好ましく、90%以上含むことがより好ましい。他の繰り返し単位としては、例えばスチレン単位、ビニルナフタレン単位等の芳香族ビニル系化合物単位や塩化ビニル単位等のハロゲン含有ビニル化合物単位を含んでいてもよい。
【0073】
重合体ブロック(B)がブロック共重合体(II)の40質量%以上を占めることによって、優れた耐水性が発現するので好ましい。50質量%を占めることがより好ましく、60質量%以上を占めることが更に好ましい。また、重合体ブロック(B)がゴム状である場合、ブロック共重合体(II)が柔軟性を発現するためには25%以上占めることが好ましく、40%以上を占めることがより好ましい。
【0074】
各重合体ブロック(B)の分子量は、電解質積層膜の性状、要求性能、他の重合体成分等によって適宜選択される。分子量が大きい場合、電解質積層膜の力学特性が高くなる傾向にあるが、大きすぎるとブロック共重合体(II)の成形、製膜が困難になり、分子量が小さい場合、ミクロ相分離構造、ひいては、イオンチャンネルを形成しにくくなるため、イオン伝導性を示さなくなる傾向にあり、また力学特性が低くなる傾向にあるので、これらの傾向を考慮して、求められる機能に応じて分子量を適宜選択することができる。
【0075】
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを構成成分とするブロック共重合体(II)の構造は特に限定されないが、重合体ブロック(A)は複数あることが望ましく、少なくとも1つの重合体ブロック(B)の少なくとも1つの両端は、ブロック共重合体(II)の末端でないことが望ましい。例としてA−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体とA−B型ジブロック共重合体との混合物、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−B型ペンタブロック共重合体、(A−B)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)、(B−A)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体は、各単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0076】
前記重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比は60:40〜5:95であるのが好ましく、50:50〜10:90であるのがより好ましく、40:60〜20:80であるのがより一層好ましい。該質量比がこの範囲にあるとき、ミクロ相分離により重合体ブロック(A)の形成するイオンチャンネルがシリンダー状ないし連続相となるのに有利であって、実用上十分なイオン伝導性が発現し、また疎水性である重合体ブロック(B)の割合が適切となって優れた耐水性が発現する。
【0077】
本発明で使用するブロック共重合体(II)は、一部にグラフト結合を含むものも包含する。かかるブロック共重合体としては、構成する重合体ブロックの一部がブロック共重合体の主たる部分(例えば主鎖)にグラフト結合したものなどが挙げられる。
【0078】
本発明で用いるブロック共重合体(II)の数平均分子量は特に制限されないが、イオン伝導性基が導入されていない状態でのポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、10,000〜1,000,000が好ましく、15,000〜700,000がより好ましく、20,000〜500,000がより一層好ましい。
【0079】
本発明のブロック共重合体(II)は、イオン伝導性基を有さず非ゴム状の重合体ブロック(C)を更に構成成分としてもよい。重合体ブロック(C)は、拘束相として機能する。ここでいう重合体ブロック(C)は、使用条件下で、拘束機能を発現する必要があることから、そのガラス転移点あるいは軟化点が30℃を超えることが必要であり、該ガラス転移点あるいは軟化点が40℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。ここでガラス転移点あるいは軟化点は重合体ブロック(C)に相当するホモポリマーの測定値から類推できる。
【0080】
重合体ブロック(C)としては、芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロック、ポリカーボネートブロック、ポリアミドブロック、ポリイミドブロック、ポリ尿素ブロック、ポリスルホンブロック、ポリスルホネートブロック、ポリベンゾオキサゾールブロック、ポリベンゾチアゾールブロック、ポリフェニルキノキサリンブロック、ポリキノリンブロック、ポリトリアジンブロック、ポリアクリレート誘導体ブロック、ポリメタクリレート誘導体ブロック等が挙げられ、中でも芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロック、ポリエーテルケトンブロック、ポリスルフィドブロック、ポリホスファゼンブロック、ポリフェニレンブロック、ポリベンゾイミダゾールブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ポリフェニレンオキシドブロックが好ましく、合成が容易である、また、本発明で用いる重合体(I)との構造の類似性より、親和性が高く、均一性高く一体化される、という観点から芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロックがより好ましい。
【0081】
上記の芳香族ビニル系化合物単位が有する芳香環は炭素環式芳香環であるのが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等が挙げられる。これら芳香族ビニル系化合物の具体例として、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−イソブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの芳香族ビニル系化合物が挙げられる。
【0082】
また、上記の芳香族ビニル系化合物単位が有する炭素環式芳香環として、α−炭素が4級炭素であるものでもよい。すなわち、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、もしくはtert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)又はフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物等を挙げることができ、具体的には、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−4−エチルスチレン、α−メチル−4−t−ブチルスチレン、α−メチル−4−イソプロピルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
【0083】
これらは1種又は2種以上組み合わせて使用できるが、中でも4−t−ブチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、α−メチル−4−t−ブチルスチレン、α−メチル−イソプロピルスチレンが好ましい。これらの2種以上を共重合させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。
【0084】
重合体ブロック(C)は、本発明の効果を損わない範囲内で1種もしくは複数の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる他の単量体としては、例えば、炭素数4〜8の共役ジエン(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン等)、炭素数2〜8のアルケン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが望ましい。
【0085】
重合体ブロック(C)がブロック共重合体(II)の10質量%以上を占めることによって、機械的強度を高く保つこととなり、好ましい。20質量%以上を占めることがより好ましく、25質量%以上を占めることが更に好ましい。
【0086】
重合体ブロック(C)と重合体ブロック(A)との比率に特に限定はないが、イオン伝導性基を導入する前の単量体単位の比率として、85:15〜0:100であることが好ましく、重合体ブロック(C)による機械的強度と、高いイオン伝導性を両立する上では、85:15〜20:80であることが好ましく、更に75:25〜25:75の範囲であることが好ましい。
【0087】
またゴム状の重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との合計として、ブロック共重合体(II)の40質量%以上を占めることによって、優れた耐水性が発現するので好ましい。50質量%を占めることがより好ましく、60質量%以上を占めることが更に好ましい。
【0088】
実質的にイオン伝導性基を有さない重合体ブロック(C)は、下記の一般式(a)
【0089】
【化2】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、そのうち少なくとも1つはアルキル基を表す)で表される芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位として有する重合体ブロックから構成されていてもよい。一般式(a)のRで表される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。一般式(a)のR〜Rで表される炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。一般式(a)で表される芳香族ビニル系化合物単位の好適な具体例としては、p−メチルスチレン単位、4−tert−ブチルスチレン単位、p−メチル−α−メチルスチレン単位、4−tert−ブチル−α−メチルスチレン単位等が挙げられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。これら2種以上を重合(共重合)させる場合の形態は、ランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。
【0090】
重合体ブロック(C)は、拘束相としての機能を妨げない範囲内で、芳香族ビニル系化合物単位以外に、1種もしくは複数の他の単量体単位を含んでいても良い。かかる他の単量体単位を与える単量体としては、例えば、炭素数4〜8の共役ジエン、炭素数2〜8のアルケン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルエーテル等が挙げられる。芳香族ビニル系化合物と上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが望ましい。
拘束相としての機能を果たす観点から、上記した芳香族ビニル系化合物単位は、重合体ブロック(C)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがより一層好ましい。
【0091】
重合体ブロック(C)の分子量は、高分子電解質の性状、要求性能、他の重合体成分等によって適宜選択される。分子量が大きい場合、高分子電解質の力学特性が高くなる傾向にあるが、大きすぎるとブロック共重合体の成形、製膜が困難になり、分子量が小さい場合、力学特性が低くなる傾向にあり、必要性能に応じて分子量を適宜選択することが重要である。ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、800〜500,000の間から選択されるのが好ましく、2,000〜150,000の間から選択されるのがより好ましく、3,000〜50,000の間から選択されるのがより好ましい。
【0092】
本発明で用いるブロック共重合体(II)が重合体ブロック(C)、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)から構成される場合、該ブロック共重合体(II)の構造は、特に限定されないが、例としてA−B−C−Aテトラブロック共重合体、B−A−B−Cテトラブロック共重合体、A−B−C−Bテトラブロック共重合体、C−B−C−Aテトラブロック共重合体、A−B−A−Cテトラブロック共重合体、A−C−B−C−Aペンタブロック共重合体、C−A−B−A−Cペンタブロック共重合体、A−C−B−C−Aペンタブロック共重合体、C−B−A−B−Cペンタブロック共重合体、A−B−C−A−Bペンタブロック共重合体、A−B−C−A−Cペンタブロック共重合体、A−B−C−B−Cペンタブロック共重合体、A−B−A−B−Cペンタブロック共重合体、A−B−A−C−Bペンタブロック共重合体、B−A−B−A−Cペンタブロック共重合体、B−A−B−C−Aペンタブロック共重合体、B−A−B−C−Bペンタブロック共重合体、C−A−C−B−Cペンタブロック共重合体等が挙げられる。
【0093】
ブロック共重合体(II)の構成成分である重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とはミクロ相分離を起こし、重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士とがそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はイオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合によりイオンチャンネルが形成され、プロトンの通り道となる。
【0094】
本発明で使用するブロック共重合体(II)は、一部にグラフト結合を含むものも包含する。一部にグラフト結合を含むブロック共重合体としては、構成する重合体ブロックの一部がブロック共重合体の主たる部分(例えば主鎖)にグラフト結合したものなどが挙げられる。
【0095】
本発明で用いられるブロック共重合体(II)の製造法に関しては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えばイオン伝導性基を有さないブロック共重合体を製造した後、イオン伝導性基を結合させる方法がある。この場合イオン伝導性基が導入されやすい繰り返し単位からなる重合体ブロックと、イオン伝導性基が導入されにくい重合体ブロックからなるブロック共重合体をまず製造し、イオン伝導性基導入反応を行う。イオン伝導性基が導入されやすい繰り返し単位からなる重合体ブロックが重合体ブロック(A)となり、イオン伝導性基が導入されにくい繰り返し単位からなる重合体ブロックが重合体ブロック(B)、(C)となる。イオン伝導性基が導入されにくい繰り返し単位からなる重合体ブロックは重合後、二重結合などの官能化されやすい部位が消失するようなモノマーを選択してもよく、該二重結合などの官能化されやすい部位を重合後に除去(例えば二重結合の水素添加)しても良い。
【0096】
重合体ブロック(A)又は(B)を構成する単量体の種類、分子量等によって、重合体ブロック(A)又は(B)の製造法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量制御、分子量分布制御、重合体構造制御、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との結合の容易さ等からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法が好ましい。
【0097】
製造法の具体例として、ポリ(α−メチルスチレン)からなる重合体ブロック(A)及び共役ジエンからなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法について述べる。この場合、工業的容易さ、分子量、分子量分布、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との結合の容易さ等からリビングアニオン重合法で製造するのが好ましく、次のような具体的な合成例が示される。
(1)テトラヒドロフラン溶媒中でジアニオン系開始剤を用いて共役ジエン重合後に、―78℃の温度条件下でα−メチルスチレンを逐次重合させA−B−A型ブロック共重合体を得る方法(例えば非特許文献1参照)。
(2)α−メチルスチレンをアニオン系開始剤を用いてバルク重合をした後に、共役ジエンを逐次重合させ、その後テトラクロロシラン等のカップリング剤によりカップリング反応を行い、(A−B)nX型ブロック共重合体を得る方法(例えば非特許文献2、3参照)。
(3)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法。
(4)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレン(重合体ブロック(A)を構成する単量体)を重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させ、得られるα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーに重合体ブロック(A)を構成する単量体を重合させてA−B−A型ブロック共重合体を得る方法。
【0098】
また、製造法の具体例として、4−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物を主たる繰返し単位とする重合体ブロック(C)、スチレン又はα−メチルスチレンからなる重合体ブロック(A)及び共役ジエンからなる重合体ブロック(B)を構成成分とするブロック共重合体あるいはグラフト共重合体の製造法について述べる。この場合、工業的容易さ、分子量、分子量分布、重合体ブロック(C)、(B)及び(A)の結合の容易さ等からリビングアニオン重合法が好ましく、次のような具体的な合成例が挙げられ、採用/応用することができる。
(5)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、10〜100℃の温度条件下で、4−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物を重合し、その後共役ジエン、スチレンを逐次重合させC−B−A型ブロック共重合体を得る方法。
(6)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、10〜100℃の温度条件下で、4−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物を重合し、その後スチレン、共役ジエンを逐次重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加してC−A−B−A−C型ブロック共重合体を得る方法。
(7)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、10〜100℃の温度条件下で、4−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物、共役ジエン、4−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物を逐次重合させC−B−C型ブロック共重合体を作成し、アニオン重合開始剤系(アニオン重合開始剤/N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)を添加し共役ジエン単位をリチオ化した後、スチレンを重合させ、C−B(−g−A)−C型ブロック・グラフト共重合体を得る方法。
(8)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエン、4−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物を逐次重合させてA−B−C型ブロック共重合体、及びα−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、共役ジエン、4−tert−ブチルスチレンを逐次重合させてA−C−B−C型ブロック共重合体を得る方法。
【0099】
このようにして製造されたブロック共重合体は、重合体ブロック(B)を構成する炭素数4〜8の共役ジエン単位の二重結合の水素添加反応に供される。該水素添加反応の方法としては、アニオン重合等で得られたブロック共重合体の溶液を耐圧容器に仕込み、Ni/Al系等のチーグラー系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において水素添加反応を行う方法を例示できる。
【0100】
次に、得られたブロック共重合体にイオン伝導性基を結合させる方法について述べる。まず、得られたブロック共重合体にスルホン酸基を導入する方法について述べる。スルホン化は、公知のスルホン化の方法で行える。このような方法としては、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や縣濁液を調製し、スルホン化剤を添加し混合する方法やブロック共重合体に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法等が例示される。
【0101】
使用するスルホン化剤としては、硫酸、硫酸と脂肪族酸無水物との混合物系、クロロスルホン酸、クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物系、三酸化硫黄、三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物系、さらに2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等が例示される。また、使用する有機溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類等が例示でき、必要に応じて複数の組合せから、適宜選択して使用してもよい。
【0102】
得られたブロック共重合体のスルホン化物を含む反応溶液から、スルホン化物を固形物として取り出す方法としては、水中に反応溶液を注ぎスルホン化物を沈殿させた後に溶媒を常圧留去する方法や、反応溶液中に停止剤の水を徐々に添加し懸濁せしめ、スルホン化物を析出させた後に溶媒を常圧留去する方法などが挙げられるが、スルホン化物が微分散化し、その後の水での洗浄効率が高くなる観点から、反応溶液中に停止剤の水を徐々に添加し、懸濁せしめ、スルホン化物を析出させる方法が好適に用いられる。
【0103】
得られたブロック共重合体にホスホン酸基を導入する方法について述べる。ホスホン化は、公知のホスホン化の方法で行える。具体的には、例えば、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や懸濁液を調製し、無水塩化アルミニウムの存在下、該共重合体をクロロメチルエーテル等と反応させ、芳香環にハロメチル基を導入後、これに三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、さらに加水分解反応を行ってホスホン酸基を導入する方法などが挙げられる。あるいは、該共重合体に三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、芳香環にホスフィン酸基を導入後、硝酸によりホスフィン酸基を酸化してホスホン酸基とする方法等が例示できる。
【0104】
スルホン化又はホスホン化の程度としては、すでに述べたように、ブロック共重合体(II)のイオン交換容量が0.70meq/g以上、特に0.80meq/g以上になるまで、しかし、4.00meq/g以下であるようにスルホン化またはホスホン化されることが望ましい。これにより実用的なイオン伝導性能が得られる。スルホン化またはホスホン化されたブロック共重合体(II)のイオン交換容量、もしくはブロック共重合体(II)における芳香族ビニル系化合物中のスルホン化率又はホスホン化率は、酸価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
【0105】
イオン伝導性基は、適当な金属イオン(例えばアルカリ金属イオン)あるいは対イオン(例えばアンモニウムイオン)で中和されている塩の形で導入されていてもよい。例えば、適当な方法でイオン交換することより、スルホン酸基を塩型にしたブロック共重合体(II)を得ることができる。
【0106】
本発明の電解質積層膜は、本発明の効果を損わない限り、各種添加剤、例えば、軟化剤、安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤等を各単独で又は2種以上組み合わせて含有していても良い。
【0107】
軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系もしくはアロマ系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、パラフィン、植物油系軟化剤、可塑剤等が挙げられる。
【0108】
安定剤は、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等を包含し、具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスチリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロジナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のフェノール系安定剤;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジアステリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定剤等が挙げられる。
【0109】
本発明の電解質積層膜は、固体高分子型燃料電池用電解質膜として必要な性能、膜強度、ハンドリング性等の観点から、その膜厚が5〜500μm程度であることが好ましく、7〜100μm程度であることがより好ましい。膜厚が5μm未満である場合には、膜の機械的強度やガスの遮断性が不充分となる傾向がある。逆に、膜厚が500μmを超えて厚い場合には、膜抵抗が大きくなり、充分なプロトン伝導性が発現しないため、電池の発電特性が低くなる傾向がある。該膜厚はより好ましくは5〜300μmである。
【0110】
本発明の電解質積層膜の構成成分である高分子電解質膜(i)と高分子電解質膜(ii)の膜は、本発明の特徴をより効果的に発揮する観点から、高分子電解質膜(i)の厚さが2〜20μmであり、高分子電解質膜(ii)の厚さが2〜40μmであることが好ましく、高分子電解質膜(i)の厚さが3〜10μmであり、高分子電解質膜(ii)の厚さが3〜20μmであることがより好ましい。高分子電解質膜(i)と高分子電解質膜(ii)の厚さの比としては、1:4〜4:1であることが好ましい。
【0111】
本発明の高分子電解質積層膜の層構成としては特に制限はないが、膜と電極の電気的接合性を高める観点から、最外層の高分子電解質層のイオン伝導容量が内部より高いことが、膜と電極の電気的接合性を高め、電池特性を向上させる観点から好ましい。好ましい例としては、イオン交換容量の低い内層の両面に、イオン交換容量の高い外層を有する構造の高分子電解質積層膜を挙げることができる。また、熱可塑性が低い内層(例えば高分子電解質膜(i))の両面に、熱可塑性がより高い外層(例えば高分子電解質膜(ii))を有する構造の高分子電解質積層膜を挙げることができる。このような構成とすることで加熱によって電極との接合が容易となる。同様の理由で触媒層のバインダー成分と構造がより近い重合体を含有する高分子電解質膜を触媒層と接するように配置することが望ましい。また、機械的強度がより高い層(例えば高分子電解質膜(i))の両面に、機械的強度がより低い層(例えば高分子電解質膜(ii))を対象性良く配置した構造の高分子電解質積層膜を挙げることができる。このような構成とすることで電解質積層膜の変形などが一層抑制できる。
【0112】
本発明の高分子電解質積層膜の調製については、かかる調製のための通常の方法であればいずれの方法も採用できる。例えば、本発明の電解質積層膜を構成する高分子電解質膜の1つを作製するには、上記重合体(I)もしくはブロック共重合体(II)、及び上記したような添加剤を適当な溶媒と混合して、5質量%以上の上記重合体(I)もしくはブロック共重合体(II)の均一溶液または乳化液を調製した後、離形処理済のPETフィルム等に、コーターやアプリケータ塔を用いて塗布した後、適切な条件で溶媒を除去することによって、所望の厚みを有する電解質膜を得る溶液塗工方法や、熱プレス成形、ロール成形、押し出し成形等の公知の方法を用いて製膜する方法等を用いることができるが、良好な強度と柔軟性を有する電解質膜を調製しやすい観点から、溶液塗工方法が好適に用いられる。
【0113】
得られた第1層目の電解質膜の上に、第2層として、同じもしくは異なる電解質膜を形成させるには、新たに、同じもしくは異なる重合体(I)もしくはブロック共重合体(II)を同様に塗布して乾燥することにより、作製することができる。3層以上からなる積層膜を作製する場合には、上記方法と同様に第3層目以降を塗布し、乾燥すればよい。また上記のように得られた、同じもしくは異なる電解質膜同士を熱ロール成形等で圧着させることにより積層化させてもよい。また、積層膜の界面接合性を高める観点から、例えば第1層目を塗布した後、凹凸状の基材を押し当てたり、凹凸面のある基材上に第1層目を塗布したりすることで第1層表面に凹凸をつけて表面積を上げ、その後第2層目を塗布することで積層化させてもよい。同様の手法は第3層目以降にもとることができる。
【0114】
均一溶液系で調製する場合に使用する溶媒は、重合体(I)もしくはブロック共重合体(II)の構造を破壊することなく、溶液塗工が可能な程度の粘度の溶液を調製することが可能なものであれば特に制限されない。具体的には、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンのような非プロトン系極性溶媒、あるいはこれらの混合溶媒等が例示できる。重合体(I)、ブロック共重合体(II)の構造、共重合体の構成、分子量、イオン交換容量等に応じて、上記に例示した溶媒の中から、1種又は2種以上の組合せを適宜選択し使用することができる。特に良好な強度と柔軟性を有する電解質膜を調整しやすい観点から、重合体(I)においては非プロトン系極性溶媒が好ましく、ブロック共重合体(II)においてはトルエンとイソブチルアルコールの混合溶媒、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、シクロヘキサンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、シクロヘキサンとイソブチルアルコールの混合溶媒、テトラヒドロフラン溶媒、テトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒が好ましく、特に、トルエンとイソブチルアルコールの混合溶媒、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒が好ましい。高分子電解質膜(i)と高分子電解質膜(ii)の界面接合性を高める観点から、塗工時には重合体(I)の溶液中にブロック共重合体(II)を溶解する溶媒を適量混合してもよいし、或いはブロック共重合体(II)の溶液中に重合体(I)を溶解する溶媒を適量混合してもよい。
【0115】
また、溶液塗工方法における溶媒除去の条件は、重合体(1)もしくはブロック共重合体(II)のスルホン酸基等のイオン伝導性基が脱落する温度以下で、溶媒を完全に除去できる条件であれば任意に選択することが可能である。所望の物性を発現させるため、複数の温度を任意に組み合わせたり、通風気下と真空下等を任意に組み合わせてもよい。具体的には、60〜100℃程度の熱風乾燥にて4分以上かけて溶媒を除去する方法や、100〜140℃程度の熱風乾燥にて2〜4分にて溶媒を除去する方法や、25℃程度で1〜3時間程度、予備乾燥させた後、100℃程度の熱風乾燥にて数分かけて乾燥する方法や、25℃程度で1〜3時間程度、予備乾燥させた後、25〜40℃程度の雰囲気下、真空乾燥にて1〜12時間程度乾燥する方法などが挙げられる。良好な強度と柔軟性を有する電解質膜を調製しやすい観点から、60〜100℃程度の熱風乾燥にて4分以上かけて溶媒を除去する方法や、25℃程度で1〜3時間程度、予備乾燥させた後、100℃程度の熱風乾燥にて数分かけて乾燥する方法や、25℃程度で1〜3時間程度、予備乾燥させた後、25〜40℃程度の雰囲気下、真空乾燥にて1〜12時間程度乾燥する方法などが好適に用いられる。
【0116】
次に、本発明の電解質積層膜を用いた膜−電極接合体について述べる。膜−電極接合体の製造については特に制限はなく、公知の方法を適用することができ、例えば、イオン伝導性バインダーを含む触媒ペーストを印刷法やスプレー法により、ガス拡散層上に塗布し乾燥することで触媒層とガス拡散層との接合体を形成させ、ついで1対の接合体をそれぞれ触媒層を内側にして、電解質積層膜の両側にホットプレスなどにより接合させる方法や、上記触媒ペーストを印刷法やスプレー法により電解質積層膜の両側に塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、それぞれの触媒層に、ホットプレスなどによりガス拡散層を圧着させる方法がある。さらに別の製造法として、イオン伝導性バインダーを含む溶液又は懸濁液を、電解質積層膜の両面及び/又は1対のガス拡散電極の触媒層面に塗布し、電解質積層膜と触媒層面とを張り合わせ、熱圧着などにより接合させる方法がある。この場合、該溶液又は懸濁液は電解質膜及び触媒層面のいずれか一方に塗付してもよいし、両方に塗付してもよい。さらに他の製造法として、まず、上記触媒ペーストをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製などの基材フィルムに塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、ついで、1対のこの基材フィルム上の触媒層を電解質積層膜の両側に加熱圧着により転写し、基材フィルムを剥離することで電解質積層膜と触媒層との接合体を得、それぞれの触媒層にホットプレスによりガス拡散層を圧着する方法がある。これらの方法においては、イオン伝導性基をNaなどの金属との塩にした状態で行い、接合後の酸処理によってプロトン型に戻す処理を行ってもよい。
【0117】
上記膜−電極接合体を構成するイオン伝導性バインダーとしては、例えば、「Nafion」(登録商標、デュポン社製)や「Gore−select」(登録商標、ゴア社製)などの既存のパーフルオロスルホン酸系ポリマーからなるイオン伝導性バインダー、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリエーテルケトンからなるイオン伝導性バインダー、リン酸や硫酸を含浸したポリベンズイミダゾールからなるイオン伝導性バインダー等を用いることができる。また、本発明の電解質積層膜を構成する重合体(I)もしくはブロック共重合体(II)からイオン伝導性バインダーを作製してもよい。なお、電解質積層膜とガス拡散電極との密着性を一層高めるためには、ガス拡散電極と密着する面の構成電解質と同一材料から形成したイオン伝導性バインダーを用いることが好ましい。
【0118】
上記膜−電極接合体の触媒層の構成材料について、導電材/触媒担体としては特に制限はなく、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛などが挙げられ、これら単独であるいは2種以上混合して使用される。触媒金属としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、パラジウム等、あるいはそれらの合金、例えば白金−ルテニウム合金が挙げられる。中でも白金や白金合金が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は、10〜300オングストロームである。これら触媒はカーボン等の導電材/触媒担体に担持させた方が触媒使用量は少なくコスト的に有利である。また、触媒層には、必要に応じて撥水剤が含まれていてもよい。撥水剤としては例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエン共重合体、ポリエーテルエーテルケトン等の各種熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0119】
上記膜−電極接合体のガス拡散層は、導電性及びガス透過性を備えた材料から構成され、かかる材料として例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等の炭素繊維よりなる多孔性材料が挙げられる。また、かかる材料には、撥水性を向上させるために、撥水化処理を施してもよい。
【0120】
上記のような方法で得られた膜−電極接合体を、極室分離と電極へのガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータ材の間に挿入することにより、固体高分子型燃料電池が得られる。本発明の膜−電極接合体は、燃料ガスとして水素を使用した純水素型、メタノールを改質して得られる水素を使用したメタノール改質型、天然ガスを改質して得られる水素を使用した天然ガス改質型、ガソリンを改質して得られる水素を使用したガソリン改質型、メタノールを直接使用する直接メタノール型等の固体高分子型燃料電池用膜−電極接合体として使用可能である。
【0121】
本発明の電解質積層膜は、高分子電解質膜(i)と高分子電解質膜(ii)を積層することにより、低湿度から高湿度までの広い湿度変化においても高い寸法安定性、並びに高い機械的耐久性を有し、水素を燃料とする固体高分子型燃料電池に用いたとき、出力特性、耐久性に優れる。このことは、従来湿度の制御のため必要であった多くの補機類を省略することに繋がり、装置の小型化、コストダウンのために有利である。また電解質膜のガスバリア性が高いため、酸素の透過に伴い発生するラジカル耐久性に優れ、長寿命である。更に電解質に弾力性と柔軟性を有するフレキシブルな重合体を有することから、電極との接合性にも優れ、該電解質積層膜を用いた膜−電極接合体、及び燃料電池は出力特性、並びに耐久性に優れる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0123】
(実施例及び比較例の高分子膜の性能試験及びその結果)
以下の1)〜5)の試験によって各実施例又は比較例で得られた膜を評価した。
【0124】
1)線膨張率
1cm×4cmの試料を4時間蒸留水に浸漬した後に、長手方向の長さ(x)を計測し、以下の式により算出し、10%未満を○、10%以上を×とした
線膨張率(%)=(x−4)/4×100
【0125】
2)膜強度
2.5cm×7.5cmのダンベル型試験片に長軸方向に向かい5cmの切込みを入れ、材料を、インストロンジャパン社製5566型引張試験機により、25℃、相対湿度50%、引張速度250mm/minの条件において応力を測定し、25MPa以上を○、25MPa未満を×とした。
【0126】
3)燃料電池用単セルの発電特性(100%湿度条件下)
得られた電解質膜および電解質積層膜を用いて作成した固体高分子型燃料電池用単セルについて、出力性能を評価した。燃料として水素を用い、酸化剤として空気を用いた。水素の供給条件は、ストイキ1.3、加湿を100%R.H.とした。空気の供給条件は、ストイキ2.0、加湿を100%R.H.とした。セル温度を70℃に設定して、実施例、比較例で作成した評価セルをセットした後、発電試験を実施し、1.0A/cm時のセル抵抗、及び電圧を評価し、セル抵抗については3.0mΩ未満を○、3.0mΩ以上を×とし、電圧については0.50V以上を○、0.50V未満を×とした。
【0127】
4)燃料電池用単セルの発電特性(30%湿度条件下)
得られた電解質膜および電解質積層膜を用いて作成した固体高分子型燃料電池用単セルについて、出力性能を評価した。燃料として水素を用い、酸化剤として空気を用いた。水素の供給条件は、ストイキ1.3、加湿を30%R.H.とした。空気の供給条件は、ストイキ2.0、加湿を30%R.H.とした。セル温度を70℃に設定して、実施例、比較例で作成した評価セルをセットした後、100%R.H.に加湿した水素、空気を用いて、前処理を行った後、発電試験を実施し、1.0A/cm時のセル抵抗、及び電圧を評価し、セル抵抗については3.0mΩ未満を○、3.0mΩ以上を×とし、電圧については0.45V以上を○、0.45V未満を×とした。
【0128】
5)耐久性(開回路電圧・OCV)試験
得られた電解質膜および電解質積層膜を用いて作成した固体高分子型燃料電池用単セルについて、加速試験として開回路試験(OCV試験)を行った。試験は、常圧で、アノード及びカソードにそれぞれ水素、酸素を500mL/分の速度で供給し、加湿を30%R.H.とした。セル温度を90℃に設定して、実施例、比較例で作成したセルをセットした後、発電は行わずに開回路状態で放置し、100時間後の電圧を測定し、開回路電圧は初期値0.95V以上、100時間後0.90V以上を○とし、それら未満を×とした。
【0129】
<参考例1>
(ポリスチレン(重合体ブロック(A))、水添ポリイソプレン(重合体ブロック(B))及びポリ(4−tert−ブチルスチレン)(重合体ブロック(C))からなるブロック共重合体の製造)
1400mLオートクレーブに、脱水シクロヘキサン865ml及びsec−ブチルリチウム(1.25M−シクロヘキサン溶液)3.27mlを仕込んだ後、4−tert−ブチルスチレン36.1ml、スチレン51.0mlを逐次添加し、50℃で逐次重合させ、次いでイソプレン149ml、スチレン49.4ml、及び4−tert−ブチルスチレン33.7mlを逐次添加し、60℃で逐次重合させることにより、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリイソプレン−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、tBSSIStBSと略記する)を合成した。得られたtBSSIStBSの数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は99010であり、H−NMR測定から求めた1,4−結合量は94.0%、スチレン単位の含有量は34.8質量%、4−tert−ブチルスチレン単位の含有量は24.8質量%であった。
【0130】
合成したtBSSIStBSのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のチーグラー系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において70℃で8時間水素添加反応を行い、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−水添ポリイソプレン−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)(以下、tBSSEPStBSと略記する)を得た。得られたtBSSEPStBSの水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、ポリイソプレンの二重結合に由来するピークは検出されなかった。
【0131】
<製造例1>
(スルホン化tBSSEPStBSの合成)
参考例1で得られたブロック共重合体(tBSSEPStBS)40gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン500mlを加え、室温にて攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン147.5ml中、0℃にて無水酢酸73.7mlと硫酸33.0mlとを反応させて得られたスルホン化試薬を、5分かけて徐々に滴下した。室温にて72時間攪拌後、停止剤の蒸留水を20ml添加した。その後、0.7Lの蒸留水を重合体溶液にゆっくり注ぎ、重合体を凝固析出させた。塩化メチレンを常圧留去にて除去した後、ろ過した。ろ過により得られた固形分をビーカーに移し、蒸留水を1.3L添加して、攪拌下で洗浄を行った後、ろ過回収を行った。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化tBSSEPStBSを得た。得られたスルホン化tBSSEPStBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から100mol%、該スルホン化tBSSEPStBSのイオン交換容量は2.64meq/gであった。
【0132】
<製造例2>
(スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの合成)
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(VICTREX社製PEEK、450P)30gを、撹拌機付きのガラス製反応容器にて窒素置換した後、濃硫酸550gを加え、室温にて攪拌して溶解させた。室温にて110時間撹拌後、氷冷した水中に反応物を注ぎ、重合体を凝固析出させた。固形分をろ過し、得られた固形分をビーカーに移して蒸留水を2L添加して、撹拌下で洗浄を行った後、ろ過回収を行った。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトンの単量体単位でのスルホン化率はH−NMR分析から62%、該スルホン化ポリエーテルエーテルケトンのイオン交換容量は1.80meq/gであった。
【0133】
<実施例1>
(電解質積層膜の作製)
製造例1で得られたスルホン化tBSSEPStBSの16質量%のトルエン/イソプロピルアルコール(質量比5/5)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」]上に約75μmの厚みでコートし、熱風乾燥機にて、100℃、4分間乾燥させることで、厚さ7μmの膜を得た。ついで、製造例2で得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトンの13質量%のジメチルスルホキシド溶液を調製し、前記膜の上に約75μmの厚みでコートし、100℃で20分乾燥することで、トータルの厚さが14μmの膜を得た。その上に製造例1で得られたスルホン化tBSSEPStBSの16質量%のトルエン/イソプロピルアルコール(質量比5/5)溶液を約75μmの厚みでコートし、100℃で4分乾燥することで、トータルの厚さが21μmの膜を得た。得られた電解質積層膜は、気泡等の欠陥のない膜であった。この膜の線膨張率は10%であり、膜強度は27MPaであった。
【0134】
(固体高分子型燃料電池用単セルの作製)
固体高分子型燃料電池用の電極を以下の手順で作製した。Pt−Ru合金触媒担持カーボンに、ナフィオンの10質量%水分散液を、カーボンとナフィオンとの質量比が1:1になるように添加混合し、ついでn−プロピルアルコールを、水/n−プロピルアルコールの質量比が1/1になるまで添加混合し、均一に分散されたペーストを調製した。このペーストをスプレー法にて、カーボンペーパーの片面に均一に塗布した。130℃で30分乾燥させ、アノード用の電極を作製した。また、Pt触媒担持カーボンに、ナフィオンの10質量%溶液を、カーボンとナフィオンとの質量比が1:0.75になるように添加混合し、ついでn−プロピルアルコールを、水/n−プロピルアルコールの質量比が1/1になるまで添加混合し、均一に分散されたペーストを調製し、アノード側と同様の方法にてカソード用電極を作製した。(1)で作製した電解質積層膜を、上記2種類の電極でそれぞれ膜と触媒面とが向かい合うように挟み、その外側を2枚の耐熱性フィルム及び2枚のステンレス板で順に挟み、ホットプレス(130℃、20kg/cm、8min)により膜−電極接合体を作製した。ついで作製した膜−電極接合体を、2枚のガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータで挟み、さらにその外側を2枚の集電板及び2枚の締付板で挟み固体高分子型燃料電池用の評価セル(電極面積は25cm)を作製した。100%湿度条件下での発電特性はセル特性は2.3mΩ、電圧は0.50Vであった。また、30%湿度条件下でのセル特性は2.8mΩ、電圧は0.47Vであった。また、開回路電圧は初期において0.97V、100時間後において0.90Vであった。
【0135】
<比較例1>
(電解質膜の作製)
製造例2で得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトンの20質量%のジメチルスルホキシド溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」]上に約200μmの厚みでコートし、100℃で20分乾燥後、PETフィルムから剥離することで、厚さ20μmの膜を得た。この膜の線膨張率は5.4%であり、膜強度は49MPaであった。
【0136】
(固体高分子型燃料電池用単セルの作製)
作製した電解質膜を用いる以外、実施例1と同様の方法にて固体高分子型燃料電池用の評価セルを作製した。100%湿度条件下での発電特性はセル特性は2.3mΩ、電圧は0.50Vであった。また、30%湿度条件下でのセル特性は3.8mΩ、電圧は0.38Vであった。また、開回路電圧は初期において1.00V、100時間後において0.97Vであった。
<比較例2>
(電解質膜の作製)
電解質膜として、線膨張率10%、膜強度25MPaのデュポン社製NAFION211−CS(厚さ25μm)を用いる以外、実施例1と同様の方法にて固体高分子型燃料電池用の評価セルを作製した。100%湿度条件下での発電特性はセル特性は2.8mΩ、電圧は0.58Vであった。また、30%湿度条件下でのセル特性は2.8mΩ、電圧は0.58Vであった。また、開回路電圧は初期において0.91V、100時間後において0.85Vであった。
【0137】
実施例1と比較例1、2で作成した電解質積層膜と電解質膜に関する1)〜4)の性能試験結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
実施例1と比較例1との比較からわかるように、比較例1においては、線膨張率・膜強度と耐久性には優れるものの、セル抵抗が高く、特に相対湿度30%下においての発電性能は低いものであった。また、実施例1と比較例2との比較からわかるように、比較例2においては、線膨張率・膜強度と発電性能には優れるものの、初期のOCV値が低く長期の耐久性も低いものであった。これに対して、実施例1の電解質積層膜は線膨張率を抑え、膜強度を高く保ったまま、高い発電特性と優れた耐久性を示すことが確認された。
【0140】
上記各種性能試験の結果から、本発明の電解質積層膜は、低湿度から高湿度までの広い湿度変化においても高い寸法安定性、機械的耐久性、並びに固体高分子型燃料電池に用いたときに優れた出力特性、及び高いラジカル耐久性を示し、性能のバランスに優れる非フッ素系の電解質膜である。また本積層膜は、電極との良好な接合性も優れるため、これを用いた膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池の出力特性および耐久性も優れると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成電解質膜として少なくとも2つの高分子電解質膜を積層してなる電解質積層膜であって、前記高分子電解質膜の少なくとも1つが、イオン伝導性基を有し、主鎖に芳香環を有する重合体(I)を主成分とする高分子電解質膜(i)であり、さらに、前記高分子電解質膜の少なくとも1つがイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)及びイオン伝導性基を有しない重合体ブロック(B)を構成成分とするブロック共重合体(II)を主成分とする高分子電解質膜(ii)であることを特徴とする電解質積層膜。
【請求項2】
前記重合体ブロック(B)がゴム状の重合体ブロック(B)であることを特徴とする請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項3】
前記重合体(I)が、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリエーテルケトンケトン類、ポリフェニレンサルファイド類、ポリフェニレンエーテル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルスルホン類、ポリフェニレンスルホン類、ポリフェニレンスルホキシド類、ポリフェニレンスルフィドスルホン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリパラフェニレン類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリイミド類から選択される少なくとも1種のセグメントを有する請求項1記載の電解質積層膜。
【請求項4】
前記イオン伝導性基が−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される基である請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項5】
前記ブロック共重合体(II)中、重合体ブロック(A)が芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰り返し単位とすることを特徴とする請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項6】
前記ブロック共重合体(II)が、イオン伝導性基を有さず非ゴム状の重合体ブロック(C)を更に構成成分とすることを特徴とする請求項2に記載の電解質積層膜。
【請求項7】
前記重合体ブロック(C)が、下記の一般式(a)で表される芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位として有する重合体ブロックである請求項6に記載の電解質積層膜。
【化1】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、そのうち少なくとも1つはアルキル基を表す)
【請求項8】
前記重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項9】
前記重合体ブロック(C)と前記重合体ブロック(A)との質量比が85:15〜20:80である請求項6に記載の電解質積層膜。
【請求項10】
前記ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(B)の質量割合が5〜95質量%である請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項11】
前記イオン伝導性基が−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される官能基である請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項12】
前記高分子電解質膜(i)の厚さが2〜20μmであり、高分子電解質膜(ii)の厚さが2〜40μmである請求項1に記載の電解質積層膜。
【請求項13】
請求項1に記載の電解質積層膜を含んでなる膜−電極接合体。
【請求項14】
請求項13に記載の膜−電極接合体を含んでなる固体高分子型燃料電池。

【公開番号】特開2011−103176(P2011−103176A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256615(P2009−256615)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】