説明

電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置

【課題】シアン化合物などの重金属系汚染物質や有機系汚染物質を分解して無害化することで処分費の低減が図れる。
【解決手段】土壌処理装置1は、汚染土壌Gを洗浄しつつ、砂利C1、砂C2、および細粒子C3に分級する分級装置2と、分級された細粒子C3からなる濃縮残渣Nに対して電解酸化処理を行うための電解槽30を設けた電解酸化処理部3と、分級装置2で使用した洗浄水Wを清浄化させるための排水処理部4とを備えている。濃縮分離された濃縮残渣Nに対して電解酸化処理を行うことで、その濃縮残渣Nに含まれる有機系汚染物質を酸化分解させて、無害化させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シアン化合物等の重金属からなる無機系汚染物質やダイオキシン、油などの有機系汚染物質を含む土壌の浄化方法として、汚染物質が細粒子分に偏在しているという特性を利用し、分級洗浄を行って濃縮残渣としてその汚染物質を細粒子として濃縮分離させることで、汚染除去を行う土壌洗浄技術が知られている。このような土壌洗浄方法では、汚染土壌を分級洗浄機に投入して、洗浄しつつ砂利、砂、および細粒子に分級し、その細粒子は濃縮残渣として廃棄する。そして、分級洗浄時に使用した洗浄水にはシアン化合物などの汚染物質の一部が溶解することから、その洗浄水を水処理施設へ送水して電解酸化処理や凝集沈殿処理などを施すことで汚染物質を分離し、このときの処理物は前記分級によって生じる濃縮残渣とともに廃棄処分している。
【0003】
ところで、上述したようなシアン化合物やニッケル等の重金属を含んだ排水や脱脂廃液などの有機物を無害化する別の方法として、電気分解酸化法がある。この電気分解酸化法は、例えばメッキ工場から排出されるは排水処理に多く使用されており、例えばシアン化合物を含む排水からシアンを酸化分解させ、最終的には炭酸ガスと水などに分解して無害化するものである(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3816438号公報
【特許文献2】特開2006−15253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の土壌洗浄技術においては以下のような問題があった。
すなわち、土壌洗浄処理において分解除去された濃縮残渣や凝集沈殿物には、汚染土壌中の汚染物質が濃縮されており、これは脱水後、処理困難物として最終処分場にて外部処分されている。ところが、細粒子分が多い砂質土や粘性土からなる汚染土壌を洗浄した場合には、分級によって取り出される濃縮残渣(細粒子分)の割合が著しく増加することになる。そのため、大量の処理困難物が発生することになり、その処分費が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、シアン化合物などの重金属系汚染物質や有機系汚染物質を分解して無害化することで処分費の低減が図れる電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、有機系汚染物質や無機系汚染物質を含む汚染土壌を電解酸化処理して無害化させるための土壌処理方法であって、汚染土壌を濃縮分離して細粒子から形成されるスラリー状の濃縮残渣を得る工程と、濃縮残渣に対して電極を導入することにより電解酸化処理を行う工程とを有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る土壌処理装置では、有機系汚染物質や無機系汚染物質を含む汚染土壌を電解酸化処理して無害化させるための電解酸化による土壌処理装置であって、汚染土壌を濃縮分離して細粒子から形成されるスラリー状の濃縮残渣を取り出す分級装置と、濃縮残渣に対して電極を導入することにより電解酸化処理を行うための電解槽とを有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、シアン化合物等の重金属系汚染物質や有機系汚染物質を含んだ汚染土壌を例えば砂利、砂、細粒子に分級することで得られる濃縮分離された濃縮残渣(細粒子)は、液体と細粒子とが混じったスラリー状の物性であるので、この濃縮残渣に対して電解酸化処理を行うことで、その濃縮残渣に含まれる汚染物質が酸化分解させることができる。つまり、その処理後の物質が無害化されて処理困難物ではなくなることから、処理困難物を外部搬出させ加熱処理する必要がなくなり、運搬費や加熱費などの処分費を大幅に削減することができる。とくに、細粒子の比率が大きい砂質土や粘性土などの汚染土壌の場合には、濃縮分級された濃縮残渣が増大することになることから、無害化による効果が大きくなる利点がある。
【0010】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、電解酸化処理を行う工程において、濃縮残渣に対して振動攪拌を行うことが好ましい。
本発明では、電解酸化処理を行うための電解槽に例えば振動攪拌機を備えることで、電解酸化時おいて濃縮残渣が振動しつつ流動を起こして十分に攪拌されることになることから、酸化分解の効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、電解酸化処理は、電極を備えた複数の電解槽を直列に配置するとともに、それら複数の電解槽のそれぞれに振動発生手段を備え、濃縮残渣を電解処理槽の配列順に経由させて連続的に流動させるようにしてもよい。
本発明では、複数の電解槽において濃縮残渣を振動発生手段によって振動を与えつつ連続的に流動させることで、効果的に振動流動を発生させることができるので、酸化分解をより効率よく行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、電解酸化処理を行う工程の前に、酸化剤およびPH調整剤の少なくとも一方を濃縮残渣に添加する前処理工程を有することがより好ましい。
本発明では、電解酸化処理の前工程で酸化剤やPH調整剤を濃縮残渣に添加しておくことで、酸化分解が促進され、この前処理工程を行わない場合に比べてより一層の無害化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、電解酸化処理を行う工程の前に、濃縮残渣に対して泡浮遊分離処理する工程を有していてもよい。
本発明では、濃縮残渣に対して電解酸化処理を行う前に、その濃縮残渣に対して泡浮遊分離処理を施すことで泡浮遊フロスを分離させ、この泡浮遊フロスに対して電解酸化処理を行うことで酸化分解効率を高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、電解酸化処理を行う工程の前に、濃縮残渣に対して凝集沈殿処理する工程を有していてもよい。
本発明では、濃縮残渣に対して電解酸化処理を行う前に、その濃縮残渣に対して凝集沈殿処理を施すことで凝集沈殿スラリーを分離させ、この凝集沈殿スラリーに対して電解酸化処理を行うことで酸化分解効率をより一層高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、濃縮残渣は、分級洗浄により濃縮分離されることが好ましい
本発明では、例えば分級装置を使用して洗浄しつつ濃縮分離された細粒子(濃縮残渣)を取り出すことができる。つまり、電解酸化処理を行うための電解槽などに供給する細粒子の粒径を、電解酸化に好適な例えば75μm未満の粒子に容易に且つ均一な状態で調整することができることから、電解酸化処理の効率を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る電解酸化による土壌処理方法では、分級洗浄の際に生じる洗浄水に対して電極を導入することにより電解酸化処理を行う工程を有することが好ましい
本発明では、洗浄水に含まれる分級の際に汚染土壌から溶出された汚染物質が電解酸化処理により分解され、無害化させることが可能となるので、その処理後の排水は再び分級時の洗浄水として循環させて再利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置によれば、汚染物質を含んだ汚染土壌を濃縮分離させた濃縮残渣に対して電解酸化処理を行うことで、その濃縮残渣中の汚染物質が酸化分解し、処理後の物質が無害化されるので、処理困難物としての発生量が抑えられ、処分費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による土壌処理方法の概略構成を説明するための図である。
【図2】土壌処理方法の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態による土壌処理方法の概略構成を説明するための図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態による土壌処理方法の概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態による電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本第1の実施の形態による土壌処理装置1は、有機系汚染物質を含む汚染土壌Gを対象とし、これを酸化分解することにより無害化を図るためのものである。 ここで、有機系汚染物質として、有機系のシアン化合物、ベンゼン等が挙げられるが、すべての有機物を適用対象としている。また、ニッケルなどの無機系汚染物質も対象としている。
すなわち、土壌処理装置1は、汚染土壌Gを洗浄しつつ、砂利C1、砂C2、および細粒子C3(これを「濃縮残渣N」という)に分級する分級装置2と、分級された濃縮残渣Nに対して電解酸化処理を行うための電解酸化処理部3と、分級装置2で使用した洗浄水を清浄化させるための排水処理部4とを備えて概略構成されている。
【0021】
分級装置2は、ハイドロサイクロン等で湿式分級するものであり、供給された汚染土壌Gを洗浄しつつ、粒径5mm以上の砂利C1と、粒径75μm以上5mm未満の砂C2と、粒径75μm未満に濃縮分離された細粒子C3とに分級可能な構造となっている。分級装置2で濃縮分級された細粒子C3は、液性限界以上の水分を含むスラリー状をなしている。そして、分級装置2は、排水処理部4で排水処理された処理水W0が洗浄水として供給されるとともに、分級時に汚染土壌Gを洗浄した水(洗浄水W)が排水処理部4へ送水される構成となっている。
【0022】
電解酸化処理部3は、分級装置2で濃縮分離させた濃縮残渣Nを収容し、その濃縮残渣Nに対して電解酸化処理するための容器状の電解槽30を備えている。電解槽30は、少なくとも陽極と陰極の一対の電極(図示省略)が槽内に送り込まれた濃縮残渣N内に挿入された状態で配置され、その電極間に所定電流を所定時間をもって流すことで濃縮残渣Nに含まれる有機系汚染物質を酸化分解させる構成となっている。なお、電解槽30として、例えば特許第2767771号公報に記載されている電解酸化槽(日本テクノ株式会社製)を採用することができる。
そして、電解槽30には、酸化分解によって無害化された処理物(無害化物N0)を槽外へ排出するための図示しない排出口が槽底部に設けられている。
【0023】
また、電解槽30は、図示しない振動攪拌機が設けられており、これにより酸化分解する濃縮残渣Nに例えば10〜500Hzの振動と流動とを作用させて攪拌する機能を有している。この振動攪拌機としては、前記と同様に特許第2767771号公報に記載されている振動攪拌機(日本テクノ株式会社製)を採用することができる。
【0024】
また、電解酸化処理部3にあっては、電解酸化処理の前処理として、電解槽30において酸化剤またはPH調整剤が添加される構成となっている。具体的には、酸化剤を添加する場合においては、酸化剤として過酸化水素(H)、過硫酸ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、二酸化塩素等が挙げられ、濃縮残渣Nに対して添加することで有機系汚染物質の一部を分解することができ、これにより分解できずに残った有機系汚染物質を電解槽30で電解酸化処理することができるようになっている。また、PH調整剤を添加する場合においては、PH調整剤として水酸化ナトリウム(NaOH)が挙げられ、濃縮残渣Nに対して添加することによりPH調整することができ、これにより汚染物質濃度を低下させることができるようになっている。
【0025】
排水処理部4は、分級装置2から送り込まれた汚染した洗浄水Wに含まれる土粒子をポリ塩化アルミニウム(PAC)や硫酸バンド等の凝集剤によって凝集沈殿させる処理を行う第1沈殿槽41と、鉄などの添加物を洗浄水Wに添加することで鉄錯体などの錯化合物を沈殿させるための第2沈殿槽42とを備えている。そして、第1沈殿槽41および第2沈殿槽42のそれぞれによって処理された第1凝集沈殿スラリーD1および第2凝集沈殿スラリーD2が電解酸化処理部3の電解槽30へ送出され、濃縮残渣Nとともに電解酸化処理される構成となっている。また、第2沈殿槽42での処理水W0は、循環水として再び分級装置2へ送水されるようになっている。
【0026】
次に、このように構成される土壌処理装置1を用いた土壌処理方法、および作用について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、有機系汚染物質を含んだ汚染土壌Gを分級装置2に投入し(ステップS1)、洗浄しつつ砂利C1、砂C2、および細粒子C3に分級する(ステップS2)。そして、分級洗浄された細粒子C3は例えば75μm未満の粒径で濃縮分離されたスラリー状の濃縮残渣Nとなり、この濃縮残渣Nを分級装置2から電解酸化処理部3の電解槽30へ送り出す(ステップS3)。また、ステップS4では、ステップS2で行った分級工程で発生する汚染土壌Gを洗浄することにより汚染された洗浄水Wが排水処理部4へ送られる。
【0027】
次に、排水処理部4では、第1沈殿槽41においてPACや硫酸バンド等の凝集剤を用いて洗浄水W中の土粒子を沈殿させる一次凝集沈殿処理が行われ、この処理によって得られた第1凝集沈殿スラリーD1が電解槽30に送られる(ステップS5)。さらに、第1沈殿槽41で処理された処理水Wは第2沈殿槽42へ送られ、第2沈殿槽42において鉄などの添加物を洗浄水Wに添加することで鉄錯体を沈殿させる二次凝集沈殿処理が行われ、この処理によって得られた第2凝集沈殿スラリーD2もまた電解槽30に送られる(ステップS6)。そして、第2沈殿槽42で処理された処理水W0は、分級装置2へ送られて、分級の際の洗浄水として使用される(ステップS7)。
【0028】
次に、分級装置2で取り出された濃縮残渣Nは、電解槽30に供給され、排水処理部4から送り込まれた第1凝集沈殿スラリーD1、第2凝集沈殿スラリーD2とともに、酸化剤やPH調整剤の添加による前処理が行われる(ステップS8)。これにより、濃縮残渣NやスラリーD1、D2に含まれる有機系汚染物質の濃度を低下させることができ、電解酸化処理部3として酸化分解が促進される効果を得ることができる。
【0029】
次に、ステップS8の前処理工程を行った処理物に対して電解酸化処理が行われる(ステップS9)。つまり、電解酸化対象となる濃縮残渣N(第1、第2凝集沈殿スラリーD1、D2を含む)は液体と細粒子とが混じったスラリー状の物性をなしているので、その中に含まれる有機系汚染物質が酸化分解されることになる。そして、ステップS10において、電解槽30で電解酸化処理して無害化された処理物(無害化物N0)が電解槽30から取り出され、適宜処理される。
【0030】
このように、本土壌処理方法では、シアン化合物等の有機系汚染物質を含んだ汚染土壌Gを例えば砂利、砂、細粒子に分級することで得られる濃縮分離された濃縮残渣N(細粒子C3)は、液体と細粒子とが混じったスラリー状の物性であるので、この濃縮残渣Nに対して電解酸化処理を行うことで、その濃縮残渣Nに含まれる有機系汚染物質が酸化分解させることができる。つまり、その処理後の物質が無害化されて処理困難物ではなくなることから、処理困難物を外部搬出させ加熱処理する必要がなくなり、運搬費や加熱費などの処分費を大幅に削減することができる。とくに、細粒子の比率が大きい砂質土や粘性土などの汚染土壌の場合には、濃縮分級された濃縮残渣が増大することになることから、無害化による効果が大きくなる利点がある。
【0031】
また、本土壌処理方法では、電解酸化処理を行う工程において、濃縮残渣Nに対して振動攪拌を行うことで、電解酸化時おいて濃縮残渣Nが振動しつつ流動を起こして十分に攪拌されることになることから、酸化分解の効率を向上させることができる。
さらに、分級装置2を使用して洗浄しつつ濃縮分離された細粒子(濃縮残渣N)を取り出すことができるので、電解酸化処理を行うための電解槽30に供給する細粒子C3の粒径を、電解酸化に好適な例えば75μm未満の粒子に容易に且つ均一な状態で調整することができ、電解酸化処理の効率を高めることができる。
【0032】
上述のように本第1の実施の形態による電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置では、有機系汚染物質を含んだ汚染土壌Gを濃縮分離させた濃縮残渣Nに対して電解酸化処理を行うことで、その濃縮残渣N中の有機系汚染物質が酸化分解し、処理後の物質が無害化されるので、処理困難物としての発生量が抑えられ、処分費の低減を図ることができる。
【0033】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0034】
図3に示すように、第2の実施の形態の土壌処理装置1Aは、電解酸化処理部3Aにおいて、泡浮遊分離機31と、第3沈殿槽32とを設けた構成となっている。すなわち、電解酸化処理部3Aは、分級装置2(図1参照)から取り出された濃縮残渣Nと、排水処理部4から得られた第1凝集沈殿スラリーD1、第2凝集沈殿スラリーD2とが泡浮遊分離機31に供給され、泡浮遊分離処理により分離した泡浮遊フロスFが電解槽30に送られる。そして、泡浮遊分離処理で処理された土壌分が第2凝集沈殿槽32に送られ、その凝集沈殿処理により生じた第3凝集沈殿スラリーD3が電解槽30に送られ、その第3凝集沈殿スラリーD3に対して電解酸化処理が行われる構成となっている。
本第2の実施の形態では、濃縮残渣Nに対して電解酸化処理を行う前に、その濃縮残渣Nに対して泡浮遊分離処理や凝集沈殿処理を施すことで、酸化分解効率をより一層高めることができる。
【0035】
図4に示すように、第3の実施の形態の土壌処理装置1Bは、上述した第1の実施の形態の排水処理部4において、第1凝集沈殿槽41の上流側に一対の陽極、陰極からなる電極(図示省略)を備えた排水側電解槽43を設けた構成となっている。つまり、本排水処理部4Aでは、分級装置2で使用した汚染された洗浄水Wが排水処理部4の排水側電解槽43に送り込まれ、洗浄水Wに含まれる分級の際に汚染土壌Gから溶出された有機系汚染物質が電解酸化処理により分解され、無害化させることができ、無害化物N0として処理することが可能な構成となっている。そして、その処理後の排水(処理水W0)は、上述した第1の実施の形態と同様に第1沈殿槽41、第2沈殿槽42のそれぞれにおいて適宜処理され、再び分級時の洗浄水として循環させて再利用される。
【0036】
次に、上述した第1乃至第3の実施の形態による電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置を裏付けるため、実施例について以下説明する。
【実施例】
【0037】
本実施例では、上述した第1〜第3の実施の形態で示した土壌処理装置において適宜な条件の元で電解酸化処理による試験を実施して、汚染土壌から得られる土壌(試験対象物)に含まれるシアン濃度の変化を確認した。
表1乃至表3に示すように、試験は、13通りの電解酸化処理試験(試験例1〜13)を行った。ここで、表1乃至表3は、各試験1〜13における試験項目と試験結果を示している。そして、各試験例においては、適宜な電流を所定の処理時間流すことで電解酸化処理を行い、処理前と処理後の土壌のシアン濃度mgT−CN/kg(これを、「ろ過土含有濃度」という)を測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表1に示す試験例1〜4はシアン分解能を確認するための試験であって、そのうち試験例1は土壌への適用性を確認するための試験、試験例2〜4は土壌洗浄プラント(上述した土壌処理装置)への適用性を確認するための試験であり、試験例5は電解酸化による分解の効率化を確認するための試験である。表2に示す試験例6は、電解酸化処理の経時変化を確認するための試験である。また、表3に示す試験例7〜13は、酸化剤、PH調整剤を用いた前処理による処理能力を確認するための試験である。
【0042】
以下に、各試験例1〜13における試験結果について表1〜表3に基づいて説明する。
【0043】
表1に示すように、試験例1は、土壌におけるシアン分解効果を確認する試験であり、汚染土壌から作成した土壌スラリーを使用し、その土壌スラリーに対して処理時間120分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は17mgT−CN/kgから7.5mgT−CN/kgとなり略半分に減少することが確認でき、濃度低下率は56%となった。
【0044】
試験例2は、土壌洗浄プラントのうち分級装置で取り出されるサイクロンオーバー分(すなわち、細粒子、濃縮残渣)への適用性を確認するための試験であり、そのサイクロンオーバー分に対して処理時間120分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は37mgT−CN/kgから6.1mgT−CN/kgに減少し、濃度低下率は84%となり、高いシアン分解率となっていることが確認できた。
【0045】
試験例3は、土壌洗浄プラントのうちサイクロンオーバー分(すなわち、細粒子、濃縮残渣)を凝集沈殿処理により得られた凝集沈殿スラリーへの適用性を確認するための試験であり、その凝集沈殿スラリーに対して処理時間120分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は57mgT−CN/kgから17mgT−CN/kgに減少し、濃度低下率は70%となっていることが確認できる。
【0046】
試験例4は、土壌洗浄プラントのうちサイクロンオーバー分(すなわち、細粒子、濃縮残渣)を泡浮遊分離機により泡浮遊分離処理して得られた泡浮遊フロスへの適用性を確認するための試験であり、その泡浮遊フロスに対して処理時間120分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は54mgT−CN/kgから32mgT−CN/kgに減少し、濃度低下率は41%となっていることが確認できる。
【0047】
試験例5は、電解酸化処理による分解の効率化を確認するための試験であり、試験対象のサンプルに上述した試験例3と同様の凝集沈殿スラリーを使用するとともに、電解酸化処理に用いる電極として新品の部材をし、この凝集沈殿スラリーに対して処理時間120分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は20mgT−CN/kgから3.3mgT−CN/kgに減少し、濃度低下率は84%となり、高いシアン分解率となっていることが確認できた。そして、上述した試験例3のろ過土含有濃度70%に比べて84%となっており、新品電極とすることで電解酸化による分解能が向上されることがわかる。
【0048】
表2に示す試験例6は、電解酸化処理の経時変化を確認するための試験であり、試験対象のサンプルに上述した試験例3と同様の凝集沈殿スラリーを使用し、この凝集沈殿スラリーに対して電解酸化処理を行い、15分経過時、30分経過時、60分経過時(処理後)のそれぞれのシアン濃度を測定した。その結果、ろ過土含有濃度において、15分経過時で77mgT−CN/kg、30分経過時で75mgT−CN/kg、60分経過時で60mgT−CN/kgに処理時間が経過するにしたがって減少しており、処理時間が長いほど分解が進行することが確認できる。
【0049】
表3に示す試験例7では、試験対象のサンプルに上述した試験例3と同様の凝集沈殿スラリーを使用し、この凝集沈殿スラリーに対して処理時間300分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は180mgT−CN/kgから22mgT−CN/kgに減少し、濃度低下率は88%となり、高いシアン分解率となっていることが確認できた。つまり、上述した試験例3の処理時間120分の場合のろ過土含有濃度70%に比べても88%と高くなっていることからも、上述した試験例6で実証されたように処理時間が長いほど分解が促進することがいえる。
【0050】
試験例8〜11は、PH調整剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を使用したPH調整による前処理において、処理能力向上性を確認するための試験であって、試験例8ではPH8に調整した場合であり、試験例9では試験例8でPH調整したサンプルにおいてPH8からPH10に調整した場合であり、さらに試験例10ではPH10からPH11に調整した場合であり、そして試験例11ではPH11からPH12に調整した場合である。
試験例8は、上述した試験例7と同様のサンプルである凝集沈殿スラリーを使用し、PH処理前とPH8に処理した後のろ過土含有濃度を測定した。その結果、ろ過土含有濃度は180mgT−CN/kgから170mgT−CN/kgに減少することが確認できる。
【0051】
試験例9は、上述した試験例8でPH調整したサンプルをさらにPH10にPH処理したサンプルのろ過土含有濃度を測定した。その結果、ろ過土含有濃度は170mgT−CN/kgから160mgT−CN/kgに減少することが確認できる。
【0052】
試験例10は、上述した試験例9でPH調整したサンプルをさらにPH11にPH処理したサンプルのろ過土含有濃度を測定した。その結果、ろ過土含有濃度は160mgT−CN/kgから130mgT−CN/kgに減少することが確認できる。
【0053】
試験例11は、上述した試験例10でPH調整したサンプルをさらにPH12にPH処理したサンプルのろ過土含有濃度を測定した。その結果、ろ過土含有濃度は130mgT−CN/kgから110mgT−CN/kgに減少することが確認できる。
【0054】
試験例12は、上述した試験例11でPH12に調整したサンプルに対して酸化剤を添加することによる前処理において、処理能力向上性を確認するための試験であって、酸化剤として過酸化水素(H)をサンプルに対して1.5%添加したときのろ過土含有濃度を測定した。その結果、ろ過土含有濃度は110mgT−CN/kgから80mgT−CN/kgに減少することが確認できる。
【0055】
試験例13は、上述した試験例8〜12で処理されたPH調整と酸化剤添加によって処理されたサンプルを使用し、このサンプルに対して処理時間300分で電解酸化処理を行った。その結果、ろ過土含有濃度は80mgT−CN/kgから11mgT−CN/kgに減少し、濃度低下率は86%となり、高いシアン分解率となっていることが確認できる。本試験例13では処理後のろ過土含有濃度が11mgT−CN/kgであり、上述した試験例7の場合(22mgT−CN/kg)と比べると低い濃度になっていることから、PH調整と酸化剤添加による前処理に効果があるものといえる。
【0056】
このように本実施例では、試験例1〜13のそれぞれにおいて、ろ過土含有濃度の低下が確認されたが、とくに試験例2の土壌洗浄プラントでサイクロンオーバー分においては84%と濃度低下率が高く、また試験例6、7、13より処理時間が長いほど濃度低下率も高くなり、試験例5により新品電極を使用する効果も大きいことが確認できる。さらに、試験例8〜13において、電解酸化処理の前処理として酸化剤やPH調整剤を添加することも有効であることが確認できた。
【0057】
以上、本発明による電解酸化による土壌処理方法および土壌処理装置の第1乃至第3の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では単体の電解槽30を備えた構成となっているが、これに限定されることはない。例えば、電極を備えた複数の電解槽を直列に配置するとともに、それら複数の電解槽のそれぞれに振動発生手段(図示省略)を備え、濃縮残渣を電解処理槽の配列順に経由させて連続的に流動させるようにしてもよい。この場合、複数の電解槽において濃縮残渣を振動発生手段によって振動を与えつつ連続的に流動させることで、効果的に振動流動を発生させることができるので、酸化分解をより効率よく行うことができる効果を奏する。
また、本実施の形態では電解槽30に振動攪拌機(図示省略)を備えて振動流動を濃縮残渣Nに与える構成としているが、これに限定されることはなく、この振動攪拌機を省略することも可能である。
【0058】
さらに、第2の実施の形態では電解酸化処理部3Aとして泡浮遊分離機31と第3沈殿槽32とを備えているが、それら両方を備える形態に制限されることはなく、いずれか一方のみであってもかまわない。
さらにまた、第3の実施の形態では排水処理部4Aにおける排水側電解槽43が第1沈殿槽41より上流側に配置させているが、これに限らず、第1沈殿槽41および第2沈殿槽42の下流側、すなわちこれらの沈殿処理がなされた排水に対して電解酸化処理を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B 土壌処理装置
2 分級装置
3、3A 電解酸化処理部
4、4A 排水処理部
30 電解槽
31 泡浮遊分離機
32 第3沈殿槽
41 第1沈殿槽
42 第2沈殿槽
43 排水側電解槽
C3 細粒子
D1〜D3 第1〜第3凝集沈殿スラリー
F 泡浮遊フロス
N 濃縮残渣
N0 無害化物
W 洗浄水
W0 処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系汚染物質や無機系汚染物質を含む汚染土壌を電解酸化処理して無害化させるための土壌処理方法であって、
前記汚染土壌を濃縮分離して細粒子から形成されるスラリー状の濃縮残渣を得る工程と、
前記濃縮残渣に対して電極を導入することにより電解酸化処理を行う工程と、
を有することを特徴とする電解酸化による土壌処理方法。
【請求項2】
電解酸化処理を行う工程において、前記濃縮残渣に対して振動攪拌を行うことを特徴とする請求項1に記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項3】
前記電解酸化処理は、電極を備えた複数の電解槽を直列に配置するとともに、それら複数の電解槽のそれぞれに振動発生手段を備え、前記濃縮残渣を前記電解槽の配列順に経由させて連続的に流動させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項4】
前記電解酸化処理を行う工程の前に、酸化剤およびPH調整剤の少なくとも一方を前記濃縮残渣に添加する前処理工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項5】
前記電解酸化処理を行う工程の前に、前記濃縮残渣に対して泡浮遊分離処理する工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項6】
前記電解酸化処理を行う工程の前に、前記濃縮残渣に対して凝集沈殿処理する工程を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項7】
前記濃縮残渣は、分級洗浄により濃縮分離されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項8】
前記分級洗浄の際に生じる洗浄水に対して電極を導入することにより電解酸化処理を行う工程を有することを特徴とする請求項7に記載の電解酸化による土壌処理方法。
【請求項9】
有機系汚染物質や無機系汚染物質を含む汚染土壌を電解酸化処理して無害化させるための電解酸化による土壌処理装置であって、
前記汚染土壌を濃縮分離して細粒子から形成されるスラリー状の濃縮残渣を取り出す分級装置と、
前記濃縮残渣に対して電極を導入することにより電解酸化処理を行うための電解槽と、
を有することを特徴とする土壌処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279881(P2010−279881A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134146(P2009−134146)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(392026224)日本テクノ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】