説明

電離放射線硬化性組成物

【課題】 耐光性、透過性及び硬化性の全てを充分に満足し得る硬化物を与えることができ、例えば、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、より多くの用途に有用な電離放射線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 電離放射線エネルギーにて硬化させて用いる硬化性組成物であって、上記電離放射線硬化性組成物は、電離放射線エネルギー2J/cmで硬化させて得られる硬化物が、波長380nmでの初期光線透過率80%以上、かつ促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率90%以上を満たすものである電離放射線硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線硬化性組成物に関する。より詳しくは、光学部材、照明部材、自動車部材等の各種用途に広く用いられる電離放射線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電離放射線硬化性組成物とは、電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、ガンマー線等の電離放射線エネルギーにより硬化させて用いる硬化性組成物であり、ガラス等の透明性無機材料に比べて成形加工性が良好であることから、例えば、光学部材、照明部材、自動車部材等の各種用途に広く好適に用いられている。これらの用途においては、硬化物が、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対して着色や変質、劣化を起こしにくいという性質、すなわち耐光性を有することが特に要求されるが、更に高外観を呈するとともに実用性に優れたものとするために高度の透明度や充分な硬化強度を有することもまた求められている。しかしながら、従来の硬化性組成物を用いた硬化物では、これらの要望を充分に満たすことのできるものはなかった。
【0003】
従来の電離放射線硬化性組成物としては、硬化性(メタ)アクリル系組成物が知られており、具体的には、エチレンオキシドで変性されたビスフェノールAのジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステルのジアクリレート及びフェノキシ(エトキシ)エチルアクリレートを含む硬化性(メタ)アクリル系組成物によって形成される光学部品が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このような組成物を硬化させて得られる硬化物(透明性樹脂)は、耐光性が充分ではなく、ガラス等の透明性無機材料と比較して経時的な変色や変質という点では充分なものとはいえないことから、耐光性を充分に向上させることにより、例えば、太陽電池や屋外電光掲示板等の使用時に太陽光に直接曝露され得る光学部品や、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源を利用する発光ダイオード、光ケーブル、表示装置等の光学部材等に好適なものとし、多くの用途に有用なものとするための工夫の余地があった。
【0004】
またアルキレン(オキシ)ジ(メタ)アクリレート、所定の光重合開始剤及び所定の紫外線吸収剤を所定の割合で含有する光硬化性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このような組成物を硬化させて得られる硬化物(透明性樹脂)は、耐光性、透過性及び硬化性の全てを充分に満足し得るものとはいえないため、この点を改善し、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、多くの用途に好適に用いることができるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平6−263831号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平4−180904号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐光性、透過性及び硬化性の全てを充分に満足し得る硬化物を与えることができ、例えば、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、より多くの用途に有用な電離放射線硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、電離放射線硬化性組成物について種々検討したところ、該硬化性組成物を特定の電離放射線エネルギーで硬化させて得られる硬化物における初期光線透過率及び光線透過率保持率を所定値に設定することにより、透明性に優れるとともに、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対しても着色や変質、劣化を起こしにくく、すなわち「耐光性」が高く、しかも充分な硬化強度を有する硬化物を与える硬化性組成物とすることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。ここで、通常の硬化性組成物に光重合開始剤を添加した場合、光重合開始剤の添加に起因して耐光性や可視光の短波長領域の透過率が充分とはならないことがあるが、本発明の硬化性組成物を用いることにより、光重合開始剤の添加量を充分に低減することが可能となるため、耐光性及び可視光の短波長領域の透過率がより向上され、多くの用途に好適なものとすることが可能となることを見いだしたものである。また、このような電離放射線硬化性組成物について、特定の(メタ)アクリル酸エステル化物を含有するものとしたり、スルホン酸(塩)及び/又はスルホン酸エステル含有率を特定したりすることによって、光重合開始剤の添加量を大幅に削減することができることを見いだし、これに起因して本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、電離放射線エネルギーにて硬化させて用いる硬化性組成物であって、上記電離放射線硬化性組成物は、電離放射線エネルギー2J/cmで硬化させて得られる硬化物が、波長380nmでの初期光線透過率80%以上、かつ促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率90%以上を満たすものである電離放射線硬化性組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の電離放射線硬化性組成物(以下、「硬化性組成物」ともいう。)は、電離放射線エネルギーにて硬化させて用いる硬化性組成物であるが、電離放射線エネルギーとしては特に限定されず、例えば、電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、ガンマー線等が挙げられる。中でも、紫外線が特に好ましい。紫外線照射による硬化の場合には、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いることが好適である。このような光源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等が好ましく、また、これらの光源とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0009】
また電子線照射による硬化の場合には、加速電圧が10〜500kVである電子線を用いることが好適である。より好ましくは、20〜300kVであり、更に好ましくは、30〜200kVである。電子線の照射量は、2〜500kGyであることが好ましく、より好ましくは、3〜300kGyであり、更に好ましくは、5〜200kGyである。なお、電子線とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0010】
本発明においては、上記硬化性組成物を電離放射線エネルギー2J/cmで硬化させて得られる硬化物が、波長380nmでの初期光線透過率80%以上を満たすことが適当である。上記初期光線透過率が80%未満であると、例えば、LED(発光ダイオード:light-emitting diode)封止剤、光ケーブル、光導波路、レンズシート等の光学部材のように高度の透明性が要求される分野において好適なものとすることができないため、より多くの用途に有用なものとするという本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。好ましくは82%以上であり、より好ましくは85%以上である。
上記波長380nmでの初期光線透過率としては、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0011】
<波長380nmでの初期光線透過率>
1、硬化物(試験片)の作成
ガラス面に厚さ400μmの枠を設け、その中に硬化性組成物を流し込み、250μmのPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを被せて、25℃雰囲気で、250W超高圧水銀ランプを用いて主波長365nm、照射強度43mJ/cm・秒の紫外線を46.5秒照射して充分硬化させた後、型から取り外して、試験片を得る。
2、初期光線透過率の測定
上記試験片について、分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定する。
【0012】
本発明においてはまた、上記硬化性組成物を電離放射線エネルギー2J/cmで硬化させて得られる硬化物が、促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率90%以上を満たすことが適当である。上記光線透過率保持率が90%未満であると、例えば、LED封止剤、光ケーブル、光導波路、レンズシート等の光学部材のように高度の耐光性が要望される分野において好適なものとすることができないため、より多くの用途に有用なものとするという本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。好ましくは95%以上であり、より好ましくは、促進耐光性試験300時間後の光線透過率保持率が90%以上であることである。
上記促進耐光性試験200時間(又は300時間)後の光線透過率保持率としては、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0013】
<促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率>
1、硬化物(試験片)の作成
上記波長380nmでの初期光線透過率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様にして試験片を得る。
2、光線透過率保持率の測定
上記試験片について、まず、分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定し、これを「促進耐光性試験前の光線透過率(%)」とする。その後、この試験片について、超エネルギー照射試験機(スガ試験機社製)を用いて、照射強度90mW/cm、波長295〜450nm、湿度70%Rh、温度50℃にて照射を行う。200時間(又は300時間)照射後の試験片を再び分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定し、これを「促進耐光性試験後の光線透過率(%)」とする。その後、以下の式により光線透過率保持率(%)を求める。
光線透過率保持率(%)=(促進耐光性試験後の光線透過率/促進耐光性試験前の光線透過率)×100
【0014】
本発明においては更に、上記硬化性組成物を電離放射線エネルギー2J/cmで硬化させて得られる硬化物が、B以上の鉛筆硬度を示すことが好適である。このように高度の硬化性を有する硬化物を与える硬化性組成物とすることによって、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは、HB以上の鉛筆硬度を示すことである。
上記鉛筆硬度としては、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0015】
<鉛筆硬度>
1、硬化物(試験片)の作成
上記波長380nmでの初期光線透過率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様にして試験片を得る。
2、鉛筆硬度の測定
上記試験片について、JIS K5600−5−4:1999に準じて鉛筆硬度を測定する。
【0016】
本発明の電離放射線硬化性組成物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物(以下、「(メタ)アクリル酸エステル化物(A)」ともいう。)を含むものであることが好適である。このような(メタ)アクリル酸エステル化物(A)とは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物(以下、「ポリオール化合物」ともいう。)と、(メタ)アクリル酸(メタクリル酸及び/又はアクリル酸)とから生成し得るエステル化物を意味する。
上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)の含有量としては、例えば、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、10〜95質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物において、耐熱性、寸法安定性及び成形性のバランスをより良好なものとすることができる。より好ましくは、20〜90質量%であり、更に好ましくは、30〜85質量%である。
【0017】
上記ポリオール化合物としては、芳香族炭化水素構造を有しないものであることが好適であり、これにより、上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物において、耐光性をより充分に向上させることが可能となる。
このようなポリオール化合物、すなわち芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール等のアルカンジオールや、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール等の他、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物としてはまた、水酸基(すなわち、自身の有する水酸基)に対してβ−水素を含有しない化合物であることが好適である。これにより、上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物において、光による劣化や変色に対する耐性をより充分に向上させることが可能となる。
このようなポリオール化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンが好適である。
なお、水酸基(すなわち、自身の有する水酸基)に対してβ−水素を有しないアルコールとは、言い換えれば、アルコール化合物(アルコール類)であって、自身の有する水酸基に対してβ−位の炭素原子等が結合するすべての原子が水素原子以外の炭素原子等である化合物である。これらのアルコール化合物は、β−位の炭素原子が結合するすべての原子が炭素原子であり、芳香族炭化水素構造を有しないものであり、1分子中に2個以上の水酸基を有するという点において共通する化学構造をもつことになり、本発明において同様の性能・効果を発現することになる。β−水素を有する骨格は光による劣化を受けやすく、β−水素が脱離することによって、目的物が変色するおそれがあるからである。したがって、上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は優れたものとすることができる。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)としては、市販品を用いてもよいし、自ら調整して用いてもよい。自ら調整する手法としては、例えば、上記ポリオール化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを触媒の存在下で脱アルコール反応させることにより製造する方法(エステル交換法)や、上記ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸とを触媒の存在下で脱水反応させることにより製造する方法(脱水縮合法)を用いることが好ましい。
【0020】
上記エステル交換法に使用可能な(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されるものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が好適である。
【0021】
上記エステル交換法において、上記ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの仕込みモル比(ポリオール化合物中の水酸基:(メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、1:1〜1:20であることが好ましい。より好ましくは、1:1.5〜1:10であり、更に好ましくは、1:2〜1:5である。
【0022】
上記エステル交換法に使用可能な触媒としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属アルコラート、マグネシウムアルコラート、アルミニウムアルコラート、チタンアルコラート、ジブチルスズオキシド、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜3質量%である。なお、反応後には、通常の手法により触媒を除去することが好適である。
【0023】
上記エステル交換法に使用可能な溶媒としては特に限定されないが、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、シメン等が挙げられる。溶媒の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、1〜70質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50質量%であり、更に好ましくは、10〜30質量%である。
【0024】
上記エステル交換法における反応温度としては、例えば、50〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは、70〜140℃であり、更に好ましくは、90〜130℃である。
【0025】
上記脱水縮合法において、上記ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸との仕込みモル比(ポリオール化合物中の水酸基:(メタ)アクリル酸)としては、例えば、1:1〜1:5であることが好ましい。より好ましくは、1:1.01〜1:2であり、更に好ましくは、1:1.05〜1:1.5である。
【0026】
上記脱水縮合法に使用可能な触媒としては特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。触媒の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜3質量%である。なお、反応後は、通常の手法により触媒を除去することが好適である。
上記触媒の中でも、得られる硬化性組成物中のスルホン酸誘導体(硫黄成分)の含有量をより低減させるという観点からは、陽イオン交換樹脂が好適である。陽イオン交換樹脂としては、例えば、ローム・アンド・ハース社製のアンバーリスト(登録商標)やアンバーライト(登録商標)、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標)等が挙げられる。また、陽イオン交換樹脂を触媒として使用する場合には、使用前に、トルエン、メタノール等の有機溶媒や水で充分に洗浄し、スルホン酸誘導体(硫黄成分)の溶出を防止することが好ましい。
【0027】
上記脱水縮合法に使用可能な溶媒の種類や使用量としては特に限定されず、例えば、上記エステル交換法において上述した形態が好ましい形態として挙げられる。上記脱水縮合法における反応温度としてもまた、特に限定されないが、例えば、上記エステル交換法において上述したように設定することが好適である。
【0028】
上記エステル交換法及び脱水縮合法においては、エステル交換反応又は脱水縮合反応中の(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止することを目的として、反応系に重合防止剤を添加することが好適である。重合防止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4H−TEMPO)及びその誘導体(TEMPO誘導体);ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン;銅塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。重合防止剤の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、0.0001〜2質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.005〜0.5質量%である。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)としてはまた、下記一般式(1);
【0030】
【化1】

【0031】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、メチル基及びエチル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。但し、R、R及びRの合計炭素原子数は、0〜2である。nは、1〜100の数を表す。)で表されるエーテル構造を有するものであることが好適である。このようなエーテル構造を上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)中に存在させることによって、極少量の光重合開始剤でも硬化が効率よく進行することとなるため、耐光性、透過性及び硬化性の全てをより充分に満足し得る硬化物を得ることが可能となる。すなわち、上述したように光重合開始剤の添加に起因して耐光性や可視光の短波長領域の透過率が充分とはならないことがあるが、上記一般式(1)で表されるエーテル構造を有することにより、光重合開始剤の添加量を大幅に削減することができるため、黄変成分及び短波長の光を吸収する成分を充分に低減することが可能となり、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることとなる。
【0032】
上記エーテル構造は、アルキレンオキシド単位を繰り返し単位とする構造であるが、当該アルキレンオキシド単位は、場合によっては、上述した条件を満たす側鎖を有するものであってもよい。このようなエーテル構造を生成するには、アルキレンオキシド単位を付加するための前駆体として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド(1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシドを用いることが好適である。
【0033】
上記エーテル構造において、アルキレンオキシド単位の繰り返し数(上記一般式(1)中のn)は、1〜100の数である。nが小さ過ぎると充分な耐光性が得られないおそれがあり、また逆にnが大き過ぎると耐水性や硬度を充分なものとすることができないおそれがある。好ましくは、1〜15であり、より好ましくは、1〜10であり、更に好ましくは、1〜8である。なお、場合によっては、上記好適範囲を外れる数のアルキレンオキシド単位が付加された(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を用いてもよい。
【0034】
上記エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物(A)としては、市販品を用いてもよいし、自ら調整して用いてもよい。自ら調整する手法としては、例えば、通常の手法によりポリオール化合物の水酸基にアルキレンオキシド単位を付加した後、当該化合物と、(メタ)アクリル酸(又は(メタ)アクリル酸エステル)とを上述したエステル交換法又は脱水縮合法でエステル化することにより、上記エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を得ることが好適である。なお、アルキレンオキシド単位が付加されたポリオール化合物が市販されている場合には、当該商品を用いてエステル化反応のみを自ら行ってもよい。
上記エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物(A)の特に好適な形態としては、芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物に、アルキレンオキシドを付加して得られる化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物であり、該アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種のものである形態である。
【0035】
上記エーテル構造の含有量としては、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満であると、上記エーテル構造の存在により発揮される上述の効果が充分に得られないおそれがある。硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対して硬化物の変色や変質、劣化等を起こしにくい性能(すなわち、耐光性)を更に向上させるという観点からは、上記エーテル構造の含有量は大きいほど好ましく、具体的には、5質量%を超えるものであることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。また、上記エーテル構造の含有量の上限は特に制限されないが、硬化物の耐水性を向上させるという観点から、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、65質量%以下であることが好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、更に好ましくは55質量%以下である。
上記エーテル構造の含有量は、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0036】
<エーテル構造の含有量>
硬化性組成物(15mg)及び48質量%臭化水素酸(200mg)を、5mLのアルミシールバイアル中に入れ、テフロン(登録商標)シリコンセプタムを介して封じ、オーブン中で150℃にて2時間加熱し、臭素酸分解反応を進行させた後、硬化性組成物中のエーテル構造を臭素化させる。反応終了後、反応液中の臭化物(例えば、1,2−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモブタン、1,4−ジブロモブタン等)の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定し、検量線との比較により定量する。定量された臭化物の含有量の値から、硬化性組成物中の上記エーテル構造の含有量を算出する。
【0037】
上記エーテル構造の含有量を上述した範囲内とするためには、例えば、上記エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を製造する際のエーテル構造の前駆体(例えば、アルキレンオキシド)の使用量を調節する手法が好ましく採用され得る。
【0038】
上記電離放射線硬化性組成物としてはまた、該硬化性組成物に含まれ得るスルホン酸、スルホン酸塩及び/又はスルホン酸エステル(以下、単に「スルホン酸誘導体」ともいう。)の含有量が、該硬化性組成物全量に対し、硫黄分換算で100ppm以下であることが好適である。すなわち、上記硬化性組成物中のスルホン酸(塩)及び/又はスルホン酸エステル含有率が、硫黄分換算で100ppm以下であることが好適である。これにより、スルホン酸誘導体に起因する硬化物の着色や変質、劣化を充分に防止することが可能となる。より好ましくは50ppm以下であり、更に好ましくは30ppm以下であり、より更に好ましくは20ppm以下であり、特に好ましくは10ppm以下である。
なお、「スルホン酸(塩)」とは、スルホン酸及び/又はスルホン酸塩を意味する。
上記スルホン酸誘導体含有率としては、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0039】
<スルホン酸誘導体含有率>
硬化性組成物をトルエンに溶解させ、水を添加後、分液ロートにて水層中にスルホン酸及びスルホン酸塩を抽出する。この水層を分離し、エバポレーターを用いて濃縮し、更に熱風乾燥機を用いて水分を除去する。その後、アセトンに溶解させ、ガスクロマトグラフィーによりスルホン酸の含有量を測定し、検量線との比較により定量する。
【0040】
上記硬化性組成物中のスルホン酸誘導体含有率を上述した範囲内とするためには、例えば、(1)硬化性組成物の製造工程においてスルホン酸誘導体を使用しないか、又は、(2)硬化性組成物の製造工程においてスルホン酸誘導体を使用した場合には、当該スルホン酸誘導体を除去する除去工程を更に行う、という手法を用いることが好適である。
上記(1)の手法による場合には、例えば、触媒として、通常用いられているスルホン酸誘導体(特に、p−トルエンスルホン酸)以外の化合物(例えば、陽イオン交換樹脂)を用いた脱水縮合法か、又は、触媒として金属アルコラート等を用いたエステル交換法により、上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を製造することとすればよい。このような手法によると、スルホン酸誘導体含有率は理論上はゼロであり、除去工程を付加しなくてもよいため、製造コストの観点からも好適である。
上記(2)の手法による場合、スルホン酸誘導体を除去する手段としては、例えば、水又はアルカリ水溶液を用いた洗浄方法や、塩基性無機塩(例えば、MgO)又は陰イオン交換樹脂を用いた吸着ろ過方法を採用することができる。
【0041】
上記電離放射線硬化性組成物の特に好適な形態としては、該硬化性組成物中のスルホン酸(塩)及び/又はスルホン酸エステル含有率が、硫黄分換算で100ppm以下であって、該硬化性組成物は、芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物を含んでなり、該(メタ)アクリル酸エステル化物は、上記一般式(1)で表されるエーテル構造を有し、該エーテル構造は、該硬化性組成物100質量%に対して、5質量%以上である形態である。このような形態とすることによって、上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物において、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光による着色や変質、劣化が飛躍的に抑制され、本発明の作用効果を更に充分に発揮することが可能となる。
【0042】
本発明の電離放射線硬化性組成物としては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を含有することが好適であり、これによって、充分な耐光性を保持したまま、その硬化時の収縮による成形不具合や寸法安定性等を充分に改善できることとなる。
このような重合体及び/又は共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸を、全単量体成分100モル%に対して50モル%以上含む単量体成分を重合して得られるものであることが好ましく、その具体的な形態は特に限定されるものではない。なお、このような重合体及び/又は共重合体は、1種又は2種以上含むことができる。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル等の単官能(メタ)アクリレート;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル;
【0044】
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の単官能ビニル化合物;
無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸モノメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の単官能α,β−不飽和化合物;
ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル;
ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体としてはまた、上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)と重合可能な官能基を有するものであることが好ましい。これにより、上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の光学特性、例えば、硬化物の靱性や耐水性をより充分に向上させることが可能となる。
このような官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の製造方法等が挙げられる。なお、これら以外の方法を用いることもできる。
【0046】
(1)カルボキシル基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、グリシジル基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、グリシジル基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、カルボキシル基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(2)水酸基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、イソシアネート基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、イソシアネート基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、水酸基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(3)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、ビニルエーテル基及び他の重合性基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、ビニルエーテル基及び他の重合性基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(4)水酸基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、酸無水物基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、酸無水物基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、水酸基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(5)多官能単量体を含む単量体成分を部分的に重合させて、二重結合の一部を重合体の側鎖に残存させる方法。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体の含有割合としては、例えば、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、5〜50質量%であることが好ましい。これにより、特に硬化時の収縮がより充分に抑制され、更に良好な成形性が得られることとなる。より好ましくは、10〜40質量%であり、更に好ましくは、10〜30質量%である。
【0048】
上記電離放射線硬化性組成物としてはまた、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の他の重合性単量体を含んでいてもよく、この場合には、硬化性組成物の粘度の低減や硬化速度の向上といった作用効果を得ることができる。
このような重合性単量体としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を得るための単量体成分として上述した化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0049】
上記重合性単量体の含有量としては特に限定されず、例えば、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、硬化性組成物の粘度の低減や硬化速度の向上といった作用効果を充分に得ることが可能となる。
【0050】
上記電離放射線硬化性組成物としてはまた、重合性オリゴマーを含んでいてもよく、この場合には、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の靭性の向上といった作用効果を得ることができる。
このような重合性オリゴマーとしては、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
飽和若しくは不飽和の多塩基酸又はその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と、飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;
多官能エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート;
【0051】
多官能オキセタン化合物(例えば、4,4’−ビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸のビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メチル]エステル、9,9−ビス[2−メチル−4−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4[2−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるオキセタン(メタ)アクリレート;
飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;
ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;
ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート等。
【0052】
上記重合性オリゴマーの含有量としては特に限定されず、例えば、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の靭性の向上といった作用効果を充分に得ることが可能となる。
【0053】
上記電離放射線硬化性組成物としては更に、上述した(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体以外の他の重合体を含んでいてもよい。
このような重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ケイ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、AS樹脂、EVA樹脂等の1種又は2種以上を使用することができる。このような重合体が硬化性組成物中に配合されることにより、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の光学特性や力学特性の向上といった作用効果を得ることができる。
【0054】
上記他の重合体の含有量としては特に限定されず、例えば、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、硬化性組成物を硬化させて得られる光学特性や力学特性の向上といった作用効果を充分に得ることが可能となる。
【0055】
本発明の電離放射線硬化性組成物は、重合開始剤を含むことが好適であり、硬化性組成物中に重合開始剤が配合されることにより、所定の重合開始要因に応じて重合(硬化)が開始されることになる。
上記重合開始剤としては、通常使用されるものを用いればよく、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。中でも、少なくとも光重合開始剤を用いることが好適であり、これにより、本発明の硬化性組成物を用いた光学部品等の製造効率が向上され得る。なお、通常の硬化性組成物に光重合開始剤を添加した場合、光重合開始剤の添加に起因して耐光性や可視光の短波長領域の透過率が充分とはならないことがあるが、本発明の硬化性組成物を用いることにより、光重合開始剤の添加量を充分に低減することが可能となるため、耐光性及び可視光の短波長領域がより向上され、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、種々の用途により好適なものとすることが可能となる。また、光重合開始剤と熱重合開始剤とを併用してもよく、この場合には、更に光重合開始剤の添加量を低減することができるため、好適である。
【0056】
上記光重合開始剤としては特に限定されず、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
【0057】
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;
2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類等。
【0058】
上記熱重合開始剤としては特に限定されず、例えば、下記の有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、
【0059】
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、
【0060】
2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;
【0061】
2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、
【0062】
2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤等。
これらの重合開始剤の中でも、芳香族炭化水素構造を含まないものが好適に用いられ得る。
【0063】
なお、上記熱重合開始剤とともに、熱重合促進剤を含んでいてもよく、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム等の金属石鹸;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルが好適である。
【0064】
上記重合開始剤の配合量(光重合開始剤と熱重合開始剤との合計量)としては、例えば、上記電離放射線硬化性組成物の全量100質量%に対し、0.001〜10質量%であることが好ましい。0.001質量%未満であると、重合性が充分とはならないおそれがあり、10質量%を超えると、充分な耐光性を発揮できる硬化物を得ることができないおそれがある。より好ましくは、0.001〜5質量%であり、更に好ましくは、0.001〜3質量%であり、特に好ましくは、0.005〜1質量%であり、最も好ましくは、0.01〜0.5質量%である。
【0065】
また上記重合開始剤として光重合開始剤と熱重合開始剤とを併用する場合、これらの配合量の質量比(熱重合開始剤/光重合開始剤)としては、例えば、1〜100/1であることが好ましい。熱重合開始剤の割合が1未満であると、より充分に耐候性を向上させることができないおそれがあり、100を超えると、硬化性を充分なものとすることができないおそれがある。より好ましくは、2〜100/1であり、更に好ましくは、2〜50/1であり、より更に好ましくは、2〜30/1であり、特に好ましくは、3〜20/1であり、最も好ましくは、5〜20/1である。
【0066】
上記電離放射線硬化性組成物としてはまた、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填材、消泡剤、増粘剤、揺変化剤、レベリング剤、ヒンダードアミン系光安定剤、離型剤等の各種添加剤を含んでいてもよく、これらの添加剤は通常の使用形態により用いられ得る。なお、離型剤の選択は、精密な光学材料等を成形する際には重要となる。
上記無機充填材としては、光学特性を損なわないという観点から金属酸化物からなる微粒子が好ましい。上記微粒子に用いられる金属酸化物としては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、鉄、アンチモン、スズ、インジウム、セリウム、アルミニウム、タングステン、ニオブ、クロム、ルテニウム、ランタン、イッテルビウム、スカンジウム、イットリウム等の酸化物及びこれらの複合酸化物が挙げられる。粒径は光学特性を損なわない範囲で規定されるが、好ましくは、1nm〜10μmの範囲である。
【0067】
上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、リン系酸化防止剤、又は、フェノール系酸化防止剤の1種又は2種以上を使用することができる。
上記フェノール系酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、スミライザーGM、スミライザーGS、スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーGA−80、スミライザーWX−R(いずれも商品名、住友化学工業社製);アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−330(いずれも商品名、旭電化工業社製);アンテージDBH、アンテージDAH、アンテージW−400、アンテージW−500(いずれも商品名、川口化学工業社製)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、長期間における着色防止効果の高い点で、アデカスタブAO−60、IRGANOX1010を用いることが好ましい。上記フェノール系酸化防止剤の配合量としては、例えば、上記電離放射線硬化性組成物全量100質量%に対し、フェノール系酸化防止剤0.01〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0068】
上記リン系酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−11C、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(いずれも商品名、旭電化工業社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、長期間における着色防止効果の高い点で、アデカスタブ2112を用いることが好ましい。上記リン系酸化防止剤の配合量としては、例えば、上記電離放射線硬化性組成物全量100質量%に対し、リン系酸化防止剤0.01〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0069】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては特に限定されず、例えば、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87((いずれも商品名、旭電化工業社製);チヌビン111FDL、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン292(以上チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、長期間における着色防止効果の高い点で、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−62、チヌビン111FDL、チヌビン292を用いることが好ましい。
上記ヒンダードアミン系光安定剤の配合量としては、例えば、上記電離放射線硬化性組成物全量100質量%に対し、ヒンダードアミン系光安定剤0.01〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0070】
上記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ナトリウム等の金属石鹸;カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等の脂肪酸;ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;メチルステアレート、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ソルビタンモノステアレート等の脂肪酸エステル;KF96、KF965、KF410、KF412、KF4701、KF54、KS61、KM244F、KS702、KF725、KS707、KS800P(いずれも商品名、信越化学工業社製)等のシリコーン系離型剤;ポリフォックスPF−136A、PF−156A、PF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−651、PF−652、PF−3320(いずれも商品名、オムノバ社製)等のフッ素系界面活性剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、充分な透明性を保持したまま離型性を発現できるという観点からは、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、フッ素系界面活性剤が好適である。
【0071】
本発明の電離放射線硬化性組成物としては、上述したように上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を含有することが好適であるが、このような硬化性組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)及び必要に応じてその他の成分を混合することにより得ることができる。また、更に上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を含む硬化性組成物とする場合には、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を部分重合することによって(メタ)アクリル系重合体及び/又は共重合体と(メタ)アクリル系単量体との混合物を調製し、この混合物に上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)及び必要に応じてその他の成分を添加することによって製造することができる。更に、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を部分重合により調製し、該官能基と反応しうる別の官能基を有するメタクリレートを混合して反応させることによって、上記(メタ)アクリル酸エステル化物(A)、(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体、並びに、必要に応じてその他の成分を含有する混合物を製造してもよい。
【0072】
本発明の電離放射線硬化性組成物は、上述したように電離放射線エネルギーを用いて硬化することにより硬化物となるが、このような硬化物は、耐光性や透過性、硬化強度等の各種物性に優れることから、例えば、LED封止剤、光ケーブル、光導波路、プリズムシートやレンチキュラーレンズシート等のレンズシート、光学フィルム、光学レンズ等の光学部材、照明カバー、装飾材等の照明部材、ヘッドランプ部品、インパネ部品等の自動車部材等に特に好適に用いることが可能である。これらの中でも、レンズシートとして用いることが好適である。
本発明の電離放射線硬化性組成物を用いたレンズシートとしては、少なくとも基材の一方の面に電離放射線硬化性組成物の硬化物からなる多数のレンズ列又はマイクロレンズアレイを配列したフィルム又はシート状のものであることが好ましい。レンズ列又はマイクロレンズアレイの形状は目的に応じて種々の形状のものが使用される。レンズ列としては、例えば、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、波型形状等である。レンズ列の断面形状としては、二等辺三角形、不等辺三角形、台形、半円、楕円、多角形等が挙げられる。レンズシートの厚さは0.1〜3mm、レンズ列のピッチは10μm〜0.5mmとすることが好ましい。
上記レンズシートの基材としては、光透過率が高く、屈折率が比較的高い材料を用いたシート又はフィルムであることが好ましく、例えば、ガラス板、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、MS(アクリル−スチレン共重合体)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、TAC(セルローストリアセテート)、シクロポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。基材と電離放射線硬化性組成物の密着性を上げるためにコロナ放電処理やオゾン処理又はプライマー処理等の表面処理を施した基材を用いることが好ましい。
上記レンズシートの製造方法としては、例えば、所定のレンズパターンを形成したレンズ型に電離放射線硬化性組成物を注入し、基材を重ね合わせた後、電離放射線を照射して硬化させ、型から取り出す方法が挙げられる。
上記レンズシートにおいては、必要に応じて基材及び/又は電離放射線硬化性組成物中に酸化防止剤、黄変防止剤、光安定剤、ブルーイング剤、蛍光増白剤、拡散剤、顔料等の添加剤を添加することもできる。
また導光板、光等方拡散性を有する拡散シート、反射型偏光性シート(住友スリーエム社製のDBEF等)等の光学シート・フィルムの少なくとも一方の面に上記レンズシートと同様のレンズ形状を形成させることも好ましい使用形態のひとつである。
【発明の効果】
【0073】
本発明の電離放射線硬化性組成物は、上述のような構成からなり、耐光性、透過性及び硬化性の全てを充分に満足し得る硬化物を与えることができ、例えば、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、より多くの用途に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
合成例1
(M−1:NPG−2EOのジメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド2モル付加物(以下、「NPG−2EO」と略す。)192g、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略す。)400g、ジブチルスズオキシド(以下、「DBTO」と略す。)3.84g及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「4H−TEMPO」と略す。)19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド2モル付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(M−1)とした。
得られた化合物(M−1)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ分析(Inductively Coupled Plasma:以下、「ICP」と略す。)によって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0076】
合成例2
(M−2:NPG−4EOのジメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド4モル付加物(以下、「NPG−4EO」と略す。)280g、MMA400g、DBTO5.60g及び4H−TEMPO28.0mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド4モル付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(M−2)とした。
得られた化合物(M−2)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0077】
合成例3
(M−3:NPG−6EOのジメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド6モル付加物(以下、「NPG−6EO」と略す。)368g、MMA400g、DBTO7.36g及び4H−TEMPO36.8mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド6モル付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(M−3)とした。
得られた化合物(M−3)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0078】
合成例4
(M−4:NPG−2EOのジアクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−2EO192g、アクリル酸エチル400g、DBTO3.84g及び4H−TEMPO19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するエタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からアクリル酸エチルを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド2モル付加物のジアクリレートを得た。これを化合物(M−4)とした。
得られた化合物(M−4)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0079】
合成例5
(M−5:TMP−3EOのトリメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド3モル付加物(以下、「TMP−3EO」と略す。)266g、MMA600g、DBTO5.32g及び4H−TEMPO26.6mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、トリメチロールプロパンへのエチレンオキシド3モル付加物のトリメタクリレートを得た。これを化合物(M−5)とした。
得られた化合物(M−5)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0080】
合成例6
(M−6:NPG−2EOのジメタクリレート(カリウムブトキシド触媒))
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−2EO192g、MMA400g、カリウムt−ブトキシド3.84g及び4H−TEMPO19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、水洗によって触媒を除去してネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド2モル付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(M−6)とした。
得られた化合物(M−6)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0081】
合成例7
(M−7:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、1,6−ヘキサンジオール118g、MMA400g、DBTO2.36g及び4H−TEMPO11.8mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートを得た。これを化合物(M−7)とした。
得られた化合物(M−7)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0082】
合成例8
(M−8:NPGジメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、十分に脱水したネオペンチルグリコール135g、MMA400g、カリウムt−ブトキシド1.35g及び4H−TEMPO13.5mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、4時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液から未反応のMMAを留去した後、水洗によって未反応のネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールモノメタクリレート及び触媒を除去してネオペンチルグリコールジメタクリレートを得た。これを化合物(M−8)とした。
得られた化合物(M−8)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0083】
合成例9
(M−9:パラトルエンスルホン酸を用いて脱水縮合で合成したNPG−2EOのジメタクリレート)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−2EO192g、メタクリル酸(以下、「MAA」と略す。)189g、p−トルエンスルホン酸(以下、「PTS」と略す。)7.5g、トルエン50g及び4H−TEMPO19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成する水を留去し、6時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、水洗、静置し水層部を分離する操作を3回繰り返し、加熱減圧によってトルエン及び未反応のMAAを除去してネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド2モル付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(M−9)とした。
得られた化合物(M−9)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子含有率は400ppmであった。
【0084】
合成例10
(P−1)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えたフラスコに、MMA190g、MAA8.6g、トルエン463gを入れて窒素置換し、70℃に昇温した。次に2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、V−65)0.99gをトルエン50gで希釈した溶液を発熱に注意しながらゆっくり滴下した。70℃で3時間反応を行った後、90℃で2時間反応を行ってラジカル重合を完結させた。
次に、メトキノン0.68g、メタクリル酸グリシジル156g、テトラフェニルホスフォニウムブロミド2.71gを添加して、空気と窒素との混合ガスを吹き込みながら100℃に昇温し、酸価が5以下になるまで反応を行った。得られたポリマー溶液をn−ヘキサンで再沈後、減圧にてn−ヘキサンを除去して化合物(P−1)得た。
得られた化合物(P−1)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したところ、数平均分子量(Mn)は35000、重量平均分子量(Mw)は78000であった。
また得られた化合物(P−1)に含まれる硫黄原子の含有率をICPによって測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0085】
実施例1〜8、比較例1〜6
表1、2に示す配合により、実施例1〜8及び比較例1〜6の電離放射線硬化性組成物を調整した。この組成物を調整する際には、まず、各成分を95℃にて充分に加熱混合し、均一な溶液とした後、常温まで冷却することにより、各成分が良好に相溶した透明な組成物を調整した。得られた電離放射線硬化性組成物のそれぞれについて、上述したようにして、組成物中のエーテル基含有量(質量%)、組成物中のスルホン酸誘導体含有率(ppm)、鉛筆硬度、波長380nmでの初期光線透過率、並びに、促進耐光性試験200時間及び300時間後の光線透過率保持率を求めた。結果を表1、2に示す。
【0086】
実施例9〜16
表1に示す配合により、実施例9〜16の電離放射線硬化性組成物を調整した。この組成物を調整する際には、まず、各成分を95℃にて充分に加熱混合し、均一な溶液とした後、常温まで冷却することにより、各成分が良好に相溶した透明な組成物を調整した。得られた電離放射線硬化性組成物のそれぞれについて、上述したようにして、組成物中のエーテル基含有量(質量%)、組成物中のスルホン酸誘導体含有率(ppm)、鉛筆硬度、波長380nmでの初期光線透過率、並びに、促進耐光性試験200時間及び300時間後の光線透過率保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
表1、2中の記載は以下の通りである。
「PMMA」:ポリメタクリル酸メチル(商品名「スミペックスLG−6A」、住友化学工業社製)
「D−1173」:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(光重合開始剤、商品名「ダロキュア1173」、チバ スペシャリティ ケミカルズ社製)
「PEG400」:平均分子量400のポリエチレングリコール(和光純薬工業社製)
「※注」:硬化物がゲル状(硬化不充分)であるため測定できなかったことを示す。
【0090】
表1及び2中、実施例1〜16と比較例3及び5とでは、初期光線透過率に大きな差がみられる。すなわち、実施例1〜16では初期光線透過率が80%以上であるのに対し、比較例3及び5では、初期光線透過率が50及び55%である。実施例1〜15の電離放射線硬化性組成物は、エーテル構造を(メタ)アクリル酸エステル化物中に有するものである。一方、比較例3及び5の電離放射線硬化性組成物は、エーテル構造が(メタ)アクリル酸エステル化物中に存在しないものである。このことから、エーテル構造含有化合物に(メタ)アクリロイル基があることにより透過率をより充分に向上させることができることがいえる。比較例3及び5においては、(メタ)アクリロイル基がないエーテル構造含有化合物は硬化時に相分離して透過率を落とすと考えられる。
【0091】
実施例17(レンズシートの実施例)
断面形状が頂角90度の二等辺三角形であるプリズム列をピッチ50μmにて切削したプリズムシート作成用レンズ型を用意し、実施例9に示した配合にて作成した組成物を型に注入し、厚さ200μmのアクリル樹脂シートで覆って、ロールで均一に展延した。
上記硬化物(試験片)の作成と同様に照射強度43mJ/cm・秒の紫外線を46.5秒照射して充分硬化させた後、型から取り出してプリズムシートを作成した。
図1のような光源、光源リフレクタ、反射板、導光板、拡散シートを配置した液晶バックライト用装置に上記プリズムシートを載置し、出射光の正面輝度を測定した後、上記プリズムシートについて同様に超エネルギー照射試験機を用いて照射強度90mW/cm、波長295〜450nm、湿度70%Rh、温度50℃にて促進耐光性試験を200時間実施した。試験後のプリズムシートを上記液晶バックライト用装置に載置し、出射光の正面輝度を測定したところ、輝度は試験前と全く変化がなかった。また、試験後のプリズムシートに黄変は全く見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例17の促進耐光性試験に用いた液晶バックライト用装置を示した概略図である。
【符号の説明】
【0093】
1 光源
2 光源リフレクタ
3 反射板
4 導光板
5 拡散シート
6 プリズムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線エネルギーにて硬化させて用いる硬化性組成物であって、
該電離放射線硬化性組成物は、電離放射線エネルギー2J/cmで硬化させて得られる硬化物が、波長380nmでの初期光線透過率80%以上、かつ促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率90%以上を満たすものである
ことを特徴とする電離放射線硬化性組成物。
【請求項2】
前記電離放射線硬化性組成物は、該硬化性組成物中のスルホン酸(塩)及び/又はスルホン酸エステル含有率が、硫黄分換算で100ppm以下であって、
該硬化性組成物は、芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物を含んでなり、
該(メタ)アクリル酸エステル化物は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、メチル基及びエチル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。但し、R、R及びRの合計炭素原子数は、0〜2である。nは、1〜100の数を表す。)で表されるエーテル構造を有し、
該エーテル構造は、該硬化性組成物100質量%に対して、5質量%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電離放射線硬化性組成物。
【請求項3】
前記芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物は、水酸基に対してβ−水素を含有しない化合物である
ことを特徴とする請求項2に記載の電離放射線硬化性組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル化物は、芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物に、アルキレンオキシドを付加して得られる化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物であり、
該アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種のものである
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電離放射線硬化性組成物。
【請求項5】
前記電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び/又は共重合体を含有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電離放射線硬化性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−84788(P2007−84788A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183720(P2006−183720)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】