説明

霧状整髪剤

【課題】セット保持力が高く、かつ再整髪可能であるにもかかわらず、べたつかず、整髪できる髪型の応用範囲の広い霧状整髪剤の提供。
【解決手段】成分(A)と、成分(B)及び(C)の少なくとも一方とを含有し、(B)+(C)が0.05〜5質量%、質量比(A)/〔(B)+(C)〕が1〜100である霧状整髪剤。
(A) 式(1)で表される構成単位を有するポリエーテルポリカーボネート 0.5〜15質量%


〔AはC2-6のアルキレン基、nは5〜1000の平均値、pは5〜100の平均値を示す〕
(B) ジメチルアクリルアミド/ヒドロキシエチルアクリレート/メトキシエチルアクリレートコポリマー
(C) 水酸基を2個以上有し、分子量62以上1000以下であり、30℃で液状の溶剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧状整髪剤に関する。
【背景技術】
【0002】
整髪剤において、ヘアスタイルのセット保持力を高めるためには、セット用ポリマーや油剤の配合量を増加させるのが一般的である。しかし、セット用ポリマーの配合量を単純に増やすと、整髪した頭髪が硬く、ごわつく原因となる。またセット用ポリマーを単純に配合した毛髪化粧料では、整髪した後、ヘアスタイルが一度崩れると再整髪できないのが一般的である。一方、ワックスのように油剤を配合した毛髪化粧料の場合は、ヘアスタイルが崩れた後に再整髪することは可能であるが、セット保持力はセット用ポリマーに比べて極めて低く、セット保持力を上げるために油剤量を増やすと、整髪した頭髪がべたつく原因となる。
【0003】
そこで、セット用ポリマーに特定の溶剤などを併用することにより、再整髪を可能にしたエアゾール化粧料が提案されている(例えば特許文献1)。しかし、このような再整髪可能な化粧料であっても、十分なセット保持力を保持させようとするとべたつきの原因となる一方、べたつきを抑制しようとすると十分なセット保持力が得られず、両方の性能を両立させることは困難である。
【0004】
また、自らのポリマー同士は粘着するが、他の物に対する粘着性は低い(以下、「自己選択粘着性」という)特定のポリマーが提案されている(例えば特許文献2)。このポリマーは、指などに付着した場合でもべたつかず、しかも水、アルコール等に溶解することができるため、洗浄が容易である点でも有用である。しかし特許文献2には、ポリマー自体と当該ポリマーからなる粘着剤、当該ポリマーからなる層を有する粘着シートについての開示がされているのみで、毛髪化粧料、整髪剤への適用や、ましてやどのような剤型にするかについては、記載も示唆も一切無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-68134号公報
【特許文献2】特開2009-41004号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】springヘア&ビューティ2009年春号,p.62〜67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは特許文献2に記載の特定のポリマーに着目し、これを用いた整髪剤の検討を行ってきた。しかし、このポリマーをヘアワックスに適用しようとしたところ、ヘアワックスは通常、両手の手のひらに広げた上で髪に適用するため、結局は手同士でべたつきが生じてしまう。そこで手に付着することが少なく、簡便に髪に適用できる霧状整髪剤に適用しようと検討を行ったところ、そのような霧状整髪剤は、ふんわりとした空気を多く含んだような軽さのある髪型を形成するには適したものとなるものの、例えば近年流行している「重めのスタイルに軽さをブレンドした」多少のまとまり感のある髪型(例えば、非特許文献1のp.62〜67に記載の「あいまいヘア」。ただし一般的には、当該髪型について様々な用語が使われている。)を形成するには、ふんわり感が強すぎて、重めの感じがやや出しづらいものとなってしまうという問題に遭遇した。これは、霧状整髪剤とした場合、前記ポリマーは毛髪に多数の小さな粒子として定着するが、その自己選択粘着性ゆえに、一旦毛髪に付着したポリマー粒子は他の毛髪と粘着しないため、毛髪同士を固定するのに貢献するポリマー粒子が、たまたま毛髪同士の交点に付着したものと、その後たまたま粒子同士が接触した場合のみであることによるものと考えられる。
【0008】
従って本発明の課題は、ヘアスタイルのセット保持力が高く、かつ再整髪可能であるにもかかわらず、べたつかず、しかも整髪できる髪型の応用範囲が広く、重さと軽さの混在した、適度にまとまり感のある髪型も作りやすい霧状整髪剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特許文献2に記載の特定のポリマーに対して特定の柔軟化剤を一定の比率で併用して霧状整髪剤に適用すると、当該ポリマーの特徴である自己選択粘着性によるべたつかなさを損なうことなく、他の物に対する粘着性をわずかに増加させることができ、重さと軽さの混在した、適度にまとまり感のある髪型を得るのに優れた霧状整髪剤が得られることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、成分(A)と、成分(B)及び(C)の少なくとも一方とを含有し、成分(B)及び(C)の合計含有量が0.05〜5質量%であり、成分(A)の含有量と成分(B)及び(C)の合計含有量との質量比(A)/〔(B)+(C)〕が1〜100である霧状整髪剤を提供するものである。
(A) 一般式(1)で表される構成単位を有するポリエーテルポリカーボネート 0.5〜15質量%
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、nは平均値で5〜1000の数を示し、pは平均値で5〜100の数を示し、(n×p)個のAOは同一でも異なってもよい。〕
(B) ジメチルアクリルアミド/ヒドロキシエチルアクリレート/メトキシエチルアクリレートコポリマー
(C) 水酸基を2個以上有し、分子量62以上1000以下であり、30℃で液状の溶剤
【発明の効果】
【0013】
本発明の霧状整髪剤は、ヘアスタイルのセット保持力が高く、かつ再整髪可能であるにもかかわらず、べたつかず、しかも整髪できる髪型の応用範囲が広いものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔(A) ポリエーテルポリカーボネート〕
本発明で使用するポリエーテルポリカーボネートは、前記一般式(1)で表される構成単位を有する。一般式(1)において、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、(n×p)個のAOは同一でも異なってもよいが、少なくとも2種以上のアルキレンオキシ基からなることが好ましい。また、Aは炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、(n×p)個のAOがエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の組み合わせからなることが更に好ましい。また、(AO)nが異なるアルキレンオキシ基からなる場合、これらはブロック構造でも、ランダム構造でもよいが、ランダム構造であるのがより好ましい。
【0015】
一般式(1)において、nは、アルキレンオキシ基の平均付加モル数を示す5〜1000の数であり、10〜500の数が好ましい。pは[(AO)nCOO]基の平均繰り返し数を示す5〜100の数であり、5〜50の数が好ましい。
【0016】
ポリエーテルポリカーボネートは、下記(イ)又は(ロ)に示す方法により製造することができ、(イ)の方法が好ましい。
(イ)炭酸エステルとポリエーテルジオールをエステル交換する工程を有する方法。
(ロ)ホスゲンとポリエーテルジオールを反応させる工程を有する方法。
【0017】
(イ)の方法において、ポリエーテルポリカーボネートの製造に用いられる炭酸エステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられ、炭酸ジメチル、炭酸ジフェニルが好ましい。
【0018】
ポリエーテルポリカーボネートの製造に用いられるポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体が好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合により得られるランダム共重合体がより好ましい。ポリエーテルジオールとして市販品を用いることもでき、例えばアデカポリエーテルPR-3005、3007、PR-5007(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いられるポリエーテルジオールの数平均分子量は、水やアルコールへの良好な溶解性を得る観点から、200〜50,000が好ましく、400〜20,000がより好ましい。
【0020】
ポリエーテルポリカーボネートの製造に際しては、ポリエーテルジオール以外に、他のポリオールを共存させてもよい。他のポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、テトラメチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等の芳香族基含有ジオール等が挙げられる。
【0021】
炭酸エステルとポリエーテルジオールとのエステル交換の際に、他のポリオールとして、上記のグリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等を共存させた場合には、得られるポリエーテルポリカーボネート中にはこれら他のポリオールから導かれる構造部分が含まれることになる。この場合、そのような構造部分は、前述の(AO)nと同様に、ブロック構造でも、ランダム構造でもよい。
【0022】
全ポリオールに対するポリエーテルジオールの割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0023】
炭酸エステルとポリエーテルジオールをエステル交換する際の炭酸エステルとポリエーテルジオールとの反応モル比は、1/0.9〜1/1.1が好ましく、1/0.95〜1/1.05がより好ましい。
【0024】
炭酸エステルとポリエーテルジオールをエステル交換する際には、通常のエステル交換反応触媒が使用できる。このような触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びそれらのアルコキシド、水素化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、酸化物等が挙げられる。また、亜鉛、アルミニウム、スズ、チタン、鉛、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、マンガン、ジルコニウム等の金属のアルコキシド、水素化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、酸化物等を用いることもできる。また、トリエチルアミン、イミダゾール等の有機塩基化合物を用いることもできる。これらの触媒の中では、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属のアルコキシド、水素化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、酸化物等、スズ、チタン等の金属のアルコキシド、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、酸化物等が好ましい。
【0025】
炭酸エステルとポリエーテルジオールのエステル交換反応における反応温度は、100〜300℃が好ましく、120〜250℃がより好ましく、120〜200℃が更に好ましい。反応圧力は常圧でもよいが、減圧下が好ましい。
【0026】
エステル交換反応は、炭酸エステルとポリエーテルジオールと触媒を仕込み、上記温度で攪拌し、炭酸エステルから脱離するアルコールを反応系外へ除去することが望ましい。常圧の場合、窒素などの不活性気体を流通させることで脱離アルコールを効果的に除去することができる。減圧の場合、揮発する脱離アルコールを容易に系外に除去することができる。
【0027】
エステル交換により得られた生成物は、低分子量成分を除く精製工程に付することが好ましい。低分子量成分を除くことにより、他着力(他のものに対する粘着力)を低下させることができ、べたつき性の少ないより優れた霧状整髪剤を得ることができる。
【0028】
低分子量成分の除去は、例えば溶媒精製により行うことができる。より具体的には、エステル交換反応により得られた生成物を水溶性溶媒に溶解し、疎水性溶媒を添加することで低分子量成分の少ないポリエーテルポリカーボネートを析出させることができる。
【0029】
水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン等が例示され、エタノールが好ましい。疎水性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒が例示され、ヘキサンが好ましい。水溶性溶媒に対する疎水性溶媒の添加量を調節することにより、求める分子量分布のポリエーテルポリカーボネートを得ることができる。水溶性溶媒に対する疎水性溶媒の添加量は、0.1〜50容量倍が好ましく、0.5〜10容量倍がより好ましい。
【0030】
ポリエーテルポリカーボネートの重量平均分子量は、良好な自己選択粘着性の観点から、5万以上が好ましく、7万以上がより好ましく、10万以上が更に好ましい。また、霧状整髪剤への配合のしやすさ、洗髪時の洗浄性等の観点から、100万以下が好ましく、70万以下がより好ましく、50万以下が更に好ましい。
【0031】
なお、ポリエーテルポリカーボネートの重量平均分子量及び前述のポリエーテルジオールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいうものとする。より具体的には、GPC装置として、商品名「HLC-8220GPC」(東ソー社)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で求めるものとする。
【0032】
<平均分子量の測定方法>
・サンプル濃度:0.25質量%(クロロホルム溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:クロロホルム
・流速:1.0mL/min
・測定温度:40℃
・カラム:商品名「K-G」(1本)+商品名「K-804L」(2本)(以上、Shodex社)
・検出器:示差屈折計(GPC装置 商品名「HLC-8220GPC」(東ソー社)に付属)
・ポリスチレン標準サンプル:「TSKstandard POLYSTYRENE F-10」(分子量10.2万)、F-1(1.02万)、A-1000(870)(以上、東ソー社)、及び「POLYSTYRENE STANDARD」(分子量90万、3万;西尾工業社)
【0033】
ポリエーテルポリカーボネートの自己選択粘着性を、以下に示す測定方法により求められる物性値として表した場合、同じ測定対象ポリマー同士の粘着性を示す物性値を「自着力」、測定対象ポリマーとこれ以外の他者との粘着性を示す物性値を「他着力」としたとき、他着力/自着力の相対比が0.7以下であることが望ましく、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下である。また、自着力が200gf以上の範囲にあることが望ましい。更に好ましくは自着力が200gf以上であって、他着力が140gf以下、より好ましくは120gf以下、更に好ましくは100gf以下である。
【0034】
<粘着性(他着力及び自着力)の測定方法>
測定対象ポリマーの20質量%トルエン溶液を調製し、PET製シート上に、バーコーターで溶液の厚さ500μmにキャストし、60℃12時間加熱後、25℃50%RHで1日放置する。タッキングテスター(レスカ社,TACIIUC-2006)を用い、上記シートと、タッキングテスターのプローブに取り付けた各種材料との粘着力を測定する。
測定条件は、プローブ降下速度600mm/sec、プローブ押し付け荷重200gf、押し付け時間0.5secとした。プローブ先端に、圧子面積8mm2のポリプロピレン製円板(エンジニアリングテストサービス社のテストピース:三菱化学ノーブレンNH-8)を取り付けて粘着力を測定し、得られた値を「他着力」とした。一方、測定対象ポリマーを前述と同様に、溶液に溶かし、キャストして乾燥したものを、圧子面積8mm2のPET製円板とし、これをプローブ先端に取り付けて粘着力を測定し、得られた値を「自着力」とした。
【0035】
ポリエーテルポリカーボネートが、上記の自己選択粘着性を備える場合、室温において、粘着力がほとんど無いか、又は低くありながら、粘着部位同士が接着すると非常に強い粘着及び再接着が可能となる。
【0036】
従来の再整髪可能なエアゾール化粧料(例えば特許文献1)では、粘着力により毛髪を固定するので、毛髪に付着させる霧状の粒子1個1個の粒径が大きすぎるとべたつきの原因となる。これに対し本発明で使用する成分(A)のポリエーテルポリカーボネートは、良好な自己選択粘着性を有するため、粒子の大きさにかかわらずべたつきを生じない。このことから、本発明の霧状整髪剤においては、霧状に噴出させた際に、整髪剤が毛髪化粧料の分野で一般的に用いられる霧状の範囲の粒子にさえなればよく、粒子径については特に調整する必要が無い。
【0037】
また、より高い整髪性や再整髪性を得るためには、粘着剤が毛髪との間で強く保持されることが好ましい。霧状整髪剤では、毛髪に塗布した際、ポリマーは溶剤によって可塑化された状態で毛髪上に付着し、細かい凹凸にも入り込むことができる。その後の溶剤が揮発する過程でポリマーが毛髪上に固定される。
【0038】
本発明の霧状整髪剤における成分(A)のポリエーテルポリカーボネートの含有量(エアゾール式の場合は原液中の含有量。以下同じ。)は、べたつかず、良好なセット保持力を有するものとする観点から、0.5〜15質量%、更には0.75〜10質量%、特に1〜7質量%が好ましい。
【0039】
〔(B) ジメチルアクリルアミド/ヒドロキシエチルアクリレート/メトキシエチルアクリレートコポリマー〕
成分(B)としては、例えばプラスサイズL-2700(互応化学社)等の市販品を使用することができる。
【0040】
〔(C) 水酸基を2個以上有し、分子量62以上1000以下であり、30℃で液状の溶剤〕
成分(C)の溶剤は、水酸基を2個以上有し、分子量62以上1000以下であり、30℃で液状のものであるが、分子量が90以上600以下、特に100以上200以下のものが好ましい。具体的には、プロピレングリコール(分子量76.1)、1,3-ブチレングリコール(分子量90.1)、グリセリン(分子量92.1)、イソペンチレングリコール(分子量104.1)、ヘキシレングリコール(分子量118.2)、ジプロピレングリコール(分子量134.2)、ポリプロピレングリコール(重合度9,分子量540)、ポリエチレングリコール200、同400、同600等が挙げられる。なかでも、適度な粘着性が得られる点から、炭素数4以上のものが好ましい。具体的には、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(重合度9,分子量540)、1,3-ブチレングリコールが好ましく、特にジプロピレングリコールが好ましい。なお、ここでいう「液状」とは、ブルックフィールド型回転粘度計(ローターNo.2,回転数12rpm,60秒間,30℃)で測定した粘度が1000mPa・s以下の状態をいう。
【0041】
本発明の霧状整髪剤は、成分(B)、成分(C)のうち少なくとも一方を含有する。成分(B)、成分(C)の合計含有量は、成分(A)の自己選択粘着性を損なうことなく整髪剤全体としての他着力(すなわち毛髪に対する粘着性)を向上して、適度にまとまり感のある髪型を得るのに適したものとする観点から0.05〜5質量%であり、好ましくは0.08〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0042】
また、成分(B)、成分(C)のそれぞれの含有量は、両者の合計含有量の場合と同様の観点から0.05〜3質量%が好ましく、更には0.08〜2質量%、更には0.1〜1.5質量%が好ましい。
【0043】
更に、本発明の霧状整髪剤における成分(A)の含有量と成分(B)及び(C)の合計含有量との質量比(A)/〔(B)+(C)〕は、上記と同様の観点から1〜100であり、好ましくは1.5〜70、より好ましくは2〜30である。
【0044】
〔(D):アニオン性セットポリマー〕
本発明の霧状整髪剤には、更に成分(D)としてアニオン性セットポリマーを含有させることができる。成分(D)のアニオン性セットポリマーとしては、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ファーセラン、アラビアガム、ガッチガム、カラヤガム、トラガントガム、カンテン末、カルボキシメチルセルロース等の天然アニオン性セットポリマー;酸性ビニル単量体又はその塩を重合することにより得られるポリマー等の合成のアニオン性セットポリマーが挙げられる。ここで、酸性ビニル単量体とは、1分子中に、カルボキシ基、リン酸基等の酸性基と、重合可能なビニル基とを有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。合成のアニオン性セットポリマーの具体例としては、アクリル酸/エチルアクリレート/N-t-ブチルアクリルアミドコポリマー(BASF社のウルトラホールド8,ウルトラホールド・ストロング等)、オクチルアクリルアミド/アクリル酸コポリマー(ナショナル・スターチ社のアンフォーマーV-42等)、アクリレート/メタクリレート/アクリル酸/メタクリル酸コポリマー(ユニオンカーバイド社のアマホールドDR25等)、アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミドコポリマー(互応化学工業社のプラスサイズL-9540B等)、メチルビニルエーテル/マレイン酸アルキルコポリマー(ISP社のガントレッツES-225,同ES-425,同SP-215等)、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー(ナショナル・スターチ社のレジン28-1310等)、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニルコポリマー(ナショナル・スターチ社のレジン28-2930等)、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニルコポリマー(BASF社のルビセットCAP等)、ビニルアルコール/イタコン酸コポリマー(クラレ社のKM-118等)などのカルボン酸系のアニオン性セットポリマー;その他、リン酸基含有モノマーによるホモポリマー(DAP社のポリホスマーM-101、ポリホスマーPE-201、ポリホスマーMH-301等)、リン酸基含有モノマーとアクリル酸エステルとのコポリマー(DAP社のポリホスマーMHB-10等)などのリン酸系のアニオン性セットポリマーが挙げられる。
これらのアニオン性セットポリマーのうち、カルボン酸系のアニオン性セットポリマーが好ましく、なかでも非中和型のものが好ましい。
【0045】
成分(D)のアニオン性セットポリマーは、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、他着力/自着力の相対比の値を一層小さくして、べたつきが無く、良好なセット保持性と再整髪性を有する観点から、本発明の霧状整髪剤中の0.5〜20質量%、更には1〜15質量%、特に1.5〜10質量%であるのが好ましい。
【0046】
成分(A)のポリエーテルポリカーボネートと成分(D)のアニオン性セットポリマーとの質量比は、他着力/自着力の相対比を一層小さくして、べたつきが無く、良好なセット保持性と再整髪性を有する観点から、20/80〜80/20が好ましく、更には30/70〜70/30、特に40/60〜60/40が好ましい。
【0047】
〔媒体〕
溶媒(支持媒体)としては、水、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ラクトン類等を使用することができ、これらは単独で又は混合して用いることができる。これらのうち、汎用性の観点から、水、エタノールが好ましく、特にエタノールが好ましい。
【0048】
〔任意成分〕
本発明の霧状整髪剤中には、上記成分のほかに、本発明の効果を妨げない限度内(0.1〜10質量%)で、化粧料用油剤を添加することができる。このような化粧料用油剤としては、ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油等のグリセライド類;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ類;セチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル酸のエステル類;流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等のシリコーン誘導体;ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。更にこれらの化粧料用油剤を乳化安定化するために乳化剤を添加することができる。乳化剤としてはアニオン性、両性、カチオン性、非イオン性のいずれの界面活性剤も使用することができる。
【0049】
更に、本発明の霧状整髪剤には、商品価値を高めるために香料や色素、毛髪化粧料の経日的変質防止のために防腐剤や酸化防止剤を添加することができ、また、更に必要に応じて、グリセリン、プロピレングリコール等の調湿剤、硬化剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、有色染料、染料定着剤、噴射剤等を添加することもできる。
【0050】
〔剤型〕
本発明の霧状整髪剤の剤型としては、エアゾール式、ノンエアゾール式のいずれでもよい。
【0051】
エアゾール式霧状整髪剤は、以上の整髪剤を噴射剤と共に耐圧容器に充填することにより製造される。噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、炭酸ガス、窒素ガス、これらの混合物等が挙げられる。また、HFC-152a等の代替フロンを使用することもできる。噴射剤の量は、良好な噴射特性と良好な粘着特性を得るために、原液と噴射剤の質量比で、原液/噴射剤=5/95〜99/1、特に20/80〜95/5の範囲が好ましい。また、耐圧容器内の圧力が良好な噴射特性と良好な粘着特性を得るためには、25℃の温度で0.12〜0.45MPaになるように調整するのが好ましい。
ノンエアゾール式霧状整髪剤は、以上の整髪剤をポンプスプレー容器やトリガー式スプレー容器に充填することにより製造される。
【実施例】
【0052】
以下の例において、ポリエーテルポリカーボネートの重量平均分子量及び粘着性(他着力及び自着力)は、前述の方法で測定した。
【0053】
合成例1
攪拌機、分留コンデンサー及び温度計を取り付けた反応容器に、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムコポリマー(数平均分子量5000、水酸基価22.0mgKOH/g、株式会社ADEKA製、商品名アデカポリエーテルPR-5007)27.1g(0.005モル)、炭酸ジフェニル1.15g(0.005モル)及び炭酸セシウム4mg(0.01ミリモル)を入れた。
【0054】
反応容器内を攪拌しながら160℃まで昇温し、そのまま2時間加熱し続けて、反応により生成するフェノールを系外へ排出した。更に真空ポンプを用いて減圧吸引を開始し、180℃まで徐々に温度を上げながら約4時間反応を行って、ポリエーテルポリカーボネートを得た(以下ポリエーテルポリカーボネート1という)。このポリエーテルポリカーボネート1の重量平均分子量は、180,000であった。
また、他着力は106gf、自着力は233gfであり、他着力/自着力は0.45であった。
【0055】
実施例1〜12、比較例1〜10
常法に従って、表1に示す組成のヘアスプレー原液を調製し、噴射剤(DME/LPG(質量比)=70/30,0.20MPa)と共に、表に示す原液を噴射剤/原液=50/50(質量比)で、下記バルブ及びボタンを備えたエアゾール容器に充填して、エアゾール式整髪剤を製造した。得られた整髪剤について、重さと軽さが混在した髪型の作りやすさ、べたつきのなさ、セット保持力及び再整髪力を評価した。
【0056】
バルブ:ステム径φ0.4mm,ハウジング径φ0.6mm×ベーパータップ径φ0.4mm
ボタン:口径φ0.60mm(メカニカルブレークアップ付き)(三谷バルブ社)
【0057】
1)重さと軽さが混在した髪型の作りやすさ:
各ヘアスプレーを用いて整髪を行い、重さと軽さが混在した、適度にまとまり感のある髪型の作りやすさについて、以下の基準に従って官能評価を行った。
(評価基準)
◎:良い
○:やや良い
△:やや悪い
×:悪い
【0058】
2)べたつきのなさ:
各ヘアスプレーを用いて整髪を行い、その際のべたつきのなさについて、以下の基準に従って官能評価を行った。
(評価基準)
◎:良い
○:やや良い
△:やや悪い
×:悪い
【0059】
3)セット保持力:
各ヘアスプレーを用いて整髪を行った後、25℃、90%Rhの環境で6時間経過後におけるセット保持力について、以下の基準に従って官能評価を行った。
(評価基準)
◎:良い
○:やや良い
△:やや悪い
×:悪い
【0060】
4)再整髪力:
各ヘアスプレーを用いて整髪を行い、25℃、90%Rhの環境で6時間経過後、再び整髪したときの再整髪力について、以下の基準に従って官能評価を行った。
(評価基準)
◎:良い
○:やや良い
△:やや悪い
×:悪い
【0061】
【表1】

【0062】
各実施例はいずれも、重さと軽さが混在した髪型の作りやすさが良好であった。比較例は項目によっては評価が高いが、いずれも上記髪型の作りやすさの評価が低く、本発明の目的には合致しないものであった。
【0063】
実施例13、比較例11
常法に従って、表2に示す組成のヘアスプレー原液を調製し、噴射剤としてのLPG(0.25MPa,20℃)と共に、原液/噴射剤(重量比)=60/40で、下記バルブ及びボタンを備えたエアゾール容器に充填した。このヘアスプレーについて、前記と同様に評価を行った。
バルブ:ステム径φ0.41mm,ハウジング径φ0.64mm×ベーパータップ径φ0.41mm
ボタン:口径φ0.46mm(MB,コンケープ)
(日本プリシジョンバルブ社)
【0064】
【表2】

【0065】
処方例1
常法に従って下記処方のヘアスプレー原液を調製し、噴射剤としてのDMEと共に、原液/噴射剤(質量比)=50/50で、実施例1と同じエアゾール容器に充填した。
原液組成 (質量%)
ポリエーテルポリカーボネート1(合成例1) 6.9
プラスサイズL-2700 0.6
精製水 残量
【0066】
得られたヘアスプレーは、重さと軽さが混在した、適度にまとまり感のある髪型の作りやすさ、べたつきのなさ、セット保持力及び再整髪力に優れたものであった。
【0067】
処方例2
常法に従って下記処方の毛髪化粧料を調製し、容器に封入してポンプスプレーとした(吉野工業所製のY-150のスプレイヤーを使用)。
処方組成 (質量%)
ポリエーテルポリカーボネート1(合成例1) 3.5
プラスサイズL-2700 0.3
精製水 残量
【0068】
得られたポンプスプレーは、重さと軽さが混在した、適度にまとまり感のある髪型の作りやすさ、べたつきのなさ、セット保持力及び再整髪力に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)と、成分(B)及び(C)の少なくとも一方とを含有し、成分(B)及び(C)の合計含有量が0.05〜5質量%であり、成分(A)の含有量と成分(B)及び(C)の合計含有量との質量比(A)/〔(B)+(C)〕が1〜100である霧状整髪剤。
(A) 一般式(1)で表される構成単位を有するポリエーテルポリカーボネート 0.5〜15質量%
【化1】

〔式中、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、nは平均値で5〜1000の数を示し、pは平均値で5〜100の数を示し、(n×p)個のAOは同一でも異なってもよい。〕
(B) ジメチルアクリルアミド/ヒドロキシエチルアクリレート/メトキシエチルアクリレートコポリマー
(C) 水酸基を2個以上有し、分子量62以上1000以下であり、30℃で液状の溶剤
【請求項2】
成分(B)の含有量が、0.05〜3質量%である請求項1記載の霧状整髪剤。
【請求項3】
成分(C)の含有量が、0.05〜3質量%である請求項1記載の霧状整髪剤。
【請求項4】
更に、成分(D)としてアニオン性セットポリマー0.5〜20質量%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の霧状整髪剤。
【請求項5】
エアゾール式である請求項1〜4のいずれかに記載の霧状整髪剤。
【請求項6】
ノンエアゾール式である請求項1〜4のいずれかに記載の霧状整髪剤。

【公開番号】特開2011−251918(P2011−251918A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125282(P2010−125282)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】