説明

露光位置計測方法および露光装置

【課題】基板上の正確な露光位置を容易に計測できる露光位置計測方法を提供すること。
【解決手段】ウエハWAの裏面側でウエハWAのx軸方向の直径上に並ぶよう形成された裏面マークPxおよびウエハWAの裏面側でウエハWAのy軸方向の直径上に並ぶよう形成された裏面マークPyを、ウエハWAの裏面側から検出する検出ステップと、裏面マークPx,Pyの検出結果に基づいてウエハWA上の露光位置の座標を算出する座標算出ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光位置計測方法および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置は、ウエハの表面や裏面に配置しているマークを検出し、マークが配置されるべき位置からの位置ずれ量をウエハの位置ずれ量として算出していた。そして、露光装置は、算出されたウエハの位置ずれ量に基づいて、ウエハの線形的な露光位置補正を行ったうえでウエハの露光を行っていた。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の位置ずれ補正方装置は、被加工基板上の各区画に配置された位置決め用のマークの位置を検出している。そして、検出結果に従って、被加工基板の各区画の基準位置からのずれを被加工基板の結晶軸方位に依存する伸縮関数を用いて算出し、位置ずれの非線形成分を補正している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、結晶方位に依存した非線形成分しか補正できないので、装置間で生じるステージの走りに起因するずれや、結晶方位以外の要因から生じるずれの非線形成分を正確に計測できないという問題があった。このため、露光装置の変更やデバイス処理(ウエハへの成膜や熱処理など)を行うことによって、位置ずれの非線形的な成分が発生した場合に、合わせ位置ずれ量を正確に計測できなかった。その結果、合わせ位置ずれを正確に補正できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−164399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板上の正確な露光位置を容易に計測できる露光位置計測方法および露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様によれば、基板の裏面側で前記基板の第1の直径上および前記第1の直径に直交する第2の直径上のそれぞれに並ぶよう形成されたパターンを、第1のパターンとして検出する検出ステップと、前記第1のパターンの検出結果に基づいて前記基板上の露光位置の座標を算出する座標算出ステップと、を含むことを特徴とする露光位置計測方法が提供される。
【0008】
また、本願発明の一態様によれば、第1の方向および前記第1の方向に直交する第2の方向のそれぞれに並ぶよう露光対象物に形成されたパターンを、第1のパターンとして検出する検出部と、前記第1のパターンの検出結果に基づいて前記露光対象物の露光位置の座標を算出する座標算出部と、算出した前記露光位置の座標に基づいて、前記露光対象物の露光を行う露光部と、を備えることを特徴とする露光装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板上の正確な露光位置を容易に計測することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態に係る露光装置で露光処理されるウエハの構成を示す図である。
【図2】図2は、裏面マークの構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態に係る露光装置が備えるウエハステージの構成を示す図である。
【図4】図4は、ウエハステージの構成を示す断面図である。
【図5】図5は、実施の形態に係る露光装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、ウエハステージとセンサの動作を説明するための図である。
【図7】図7は、ウエハ上の原点算出方法を説明するための図である。
【図8】図8は、ウエハの回転方向の位置ずれを説明するための図である。
【図9】図9は、ウエハステージの他の構成例を示す断面図である。
【図10】図10は、裏面マークの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る露光位置計測方法および露光装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る露光装置で露光処理されるウエハの構成を示す図である。本実施の形態の露光装置(後述の露光装置10)は、基板(ウエハWAなど)の位置を算出しながらウエハWAに露光処理を行う装置である。図1では、ウエハWAの裏面を上面側から見た図を示している。
【0013】
ウエハWAの裏面上には、x軸方向にウエハWAの直径とほぼ同じ長さに並べられた裏面マークPxと、y軸方向にウエハWAの直径とほぼ同じ長さに並べられた裏面マークPyと、が、位置計測マークとしてウエハWAの略中心位置で直交するよう十字状に配置されている。換言すると、ウエハWA裏面上のx軸方向の最左端から最右端の間(第1の直径上)に裏面マークPxが配置され、ウエハWA裏面上のy軸方向の最上端から最下端までの間(第2の直径上)に裏面マークPyが配置されている。
【0014】
裏面マーク(第1のパターン)Px,Pyは、それぞれ矩形状の領域に配置されている。裏面マークPxの配置される矩形状領域は、長手方向がx軸方向であり、短手方向がy軸方向である。また、裏面マークPyの配置される矩形状領域は、長手方向がy軸方向であり、短手方向がx軸方向である。
【0015】
また、ウエハWAの裏面上には、裏面マークPxに平行な方向に配置された裏面マークQxと、裏面マークPyに平行な方向に配置された裏面マークQyと、が原点計測マークとして配置されている。裏面マークQxは、裏面マークPxから所定距離だけ離れた裏面マークPxとは異なる領域(ウエハWAの中心を通らない領域)に配置されており、裏面マークQyは、裏面マークPyから所定距離だけ離れた裏面マークPyとは異なる領域(ウエハWAの中心を通らない領域)に配置されている。
【0016】
裏面マーク(第2のパターン)Qx,Qyは、それぞれ矩形状の領域に配置されている。裏面マークQxの配置される矩形状領域は、例えば長手方向がx軸方向であり、短手方向がy軸方向である。また、裏面マークQyの配置される矩形状領域は、例えば長手方向がy軸方向であり、短手方向がx軸方向である。
【0017】
裏面マークQxの配置される矩形状領域のうち、x軸方向の長さは裏面マークPxよりも短く、y軸方向の長さは裏面マークPxと同じ長さである。また、裏面マークQyの配置される矩形状領域のうち、x軸方向の長さは裏面マークPyよりも短く、y軸方向の長さは裏面マークPyと同じ長さである。また、裏面マークQx,Qyは、ウエハWA内にマーク端が収まるよう長さが決定されている。
【0018】
裏面マークQx,Qyは、ウエハWAの中心位置を算出するためのマークである。露光装置10は、裏面マークQx,Qyの位置を測定することによって、裏面マークQxのx軸方向の中心位置(後述するマーク中心Cx2)と裏面マークQyのy軸方向の中心位置(後述するマーク中心Cy2)を算出する。そして、露光装置10は、算出したマーク中心Cx2,Cy2を用いて、ウエハWAの回転方向のずれ量(ローテーションずれ量)(後述する回転ずれ量Rot)を算出する。露光装置10は、算出したマーク中心Cx2,Cy2と、回転ずれ量Rotと、を用いてウエハWAの中心点(原点)を算出する。
【0019】
また、裏面マークPx,Pyは、ウエハWA上での露光位置の座標を算出するためのマークである。露光装置10は、裏面マークPxの測定値と、ウエハWAの原点と、を用いてウエハWA上での露光位置の座標を算出する。裏面マークPx,Py,Qx,Qyは、例えばウエハWAがバルクウエハの状態である時に形成しておく。
【0020】
つぎに、裏面マークPx,Py,Qx,Qyの構成について説明する。なお、以下では裏面マークPx,Py,Qx,Qyを裏面マークRという場合がある。図2は、裏面マークの構成の一例を示す図である。図2では、裏面マークRの一例である裏面マークPxの上面図を示している。
【0021】
裏面マークPxは、ライン&スペースのパターンであるラインパターンL1とスペース領域S1とが等間隔で等ピッチパターンとして配置されている。ラインパターンL1は、矩形状をなしており、その長手方向がy軸方向であり、短手方向がx軸方向である。裏面マークPxは、ラインパターンL1がx軸方向の直径上に複数繰り返し並べられることによって構成されている。このように、本実施の形態のウエハWAの裏面には、複数の凹凸(ライン&スペース)からなるグレーティング状の周期構造部として裏面マークPxが形成されている。
【0022】
また、裏面マークPy,Qx,Qyは、それぞれ裏面マークPxと同様に、ラインパターンL1とスペース領域S1とが等間隔で配置されている。裏面マークPy,Qyでは、ラインパターンL1の長手方向がx軸方向であり、短手方向がy軸方向である。また、裏面マークQxでは、ラインパターンL1の長手方向がy軸方向であり、短手方向がx軸方向である。なお、ラインパターンL1の短手方向の長さ(幅)と、スペース領域S1の短手方向の長さ(幅)とは、異なる寸法であってもよい。
【0023】
つぎに、露光装置10が備えるウエハステージの構成について説明する。図3は、実施の形態に係る露光装置が備えるウエハステージの構成を示す図であり、図4は、ウエハステージの構成を示す断面図である。図3では、ウエハステージ5を上面側から見た図を示しており、図4では、ウエハステージ5をx軸方向(アーム81xの軸方向)に切断した場合の断面図を示している。
【0024】
ウエハステージ5の上部側には、ウエハWAを支持する複数からなる針状部材9と、針状部材9に載置されたウエハWAを固定するウエハホルダ6と、が配置されている。各針状部材9は、ウエハWAを載置した際に裏面マークRに接触しない位置に形成しておく。ウエハステージ5は、ウエハステージ5自身が移動することによってウエハWAへの露光位置を露光光の照射位置に移動させる。ウエハステージ5の近傍には、裏面マークRの位置を測定するためのマーク測定部30X,30Yが設けられている。
【0025】
マーク測定部30Xは、裏面マークPx,Qxの位置を測定する手段であり、アーム81x,82xと、アーム81x,82xを駆動させるアーム駆動部7Xと、を備えている。また、マーク測定部30Yは、裏面マークPy,Qyの位置を測定する手段であり、アーム81y,82yと、アーム81y,82yを駆動させるアーム駆動部7Yと、を備えている。
【0026】
アーム81x,82xは、ウエハステージ5の主面と平行な面内上で互いに平行方向となるようアーム駆動部7Xに接合されており、アーム駆動部7Xからウエハホルダ6側に延びている。また、アーム81y,82yは、ウエハステージ5の主面と平行な面内上で互いに平行方向となるようアーム駆動部7Yに接合されており、アーム駆動部7Yからウエハホルダ6側に延びている。
【0027】
アーム81x,82xは、アーム駆動部7Xからx軸方向に延設された棒状部材であり、ウエハホルダ6内をx軸方向に移動する。アーム81xには、アーム駆動部7Xとは反対側の先端部に裏面マークPxの位置を測定するセンサ(マーク検出センサ)Sx1が配置されている。また、アーム82xには、アーム駆動部7Xとは反対側の先端部に裏面マークQxの位置を測定するセンサ(マーク検出センサ)Sx2が配置されている。
【0028】
アーム81y,82yは、アーム駆動部7Yからy軸方向に延設された棒状部材であり、ウエハホルダ6内をy軸方向に移動する。アーム81yには、アーム駆動部7Yとは反対側の先端部に裏面マークPyの位置を測定するセンサ(マーク検出センサ)Sy1が配置されている。また、アーム82yには、アーム駆動部7Yとは反対側の先端部に裏面マークQyの位置を測定するセンサ(マーク検出センサ)Sy2が配置されている。なお、以下では、センサSx1,Sx2,Sy1,Sy2をセンサSという場合がある。
【0029】
ウエハホルダ6には、その内部にアーム81x,82xを挿入してセンサSx1,Sx2をx軸方向に導く溝(溝壁面)85x,86xが形成されている。溝85x,86xは、x軸方向にウエハホルダ6の最左端から最右端まで延びている。溝85xは、ウエハWAをウエハホルダ6上に載置した際にセンサSx1が裏面マークPxの全位置を検出できる位置(裏面マークPxの直下)に形成されている。溝86xは、ウエハWAをウエハホルダ6上に載置した際にセンサSx2が裏面マークQxの全位置を検出できる位置(裏面マークQxの直下)に形成されている。
【0030】
また、ウエハホルダ6には、その内部にアーム81y,82yを挿入してセンサSy1,Sy2をy軸方向に導く溝(溝壁面)85y,86yが形成されている。溝85y,86xは、y軸方向にウエハホルダ6の最上端から最下端まで延びている。溝85yは、ウエハWAをウエハホルダ6上に載置した際にセンサSy1が裏面マークPyの全位置を検出できる位置(裏面マークPyのほぼ直下)に形成されている。溝86yは、ウエハWAをウエハホルダ6上に載置した際にセンサSy2が裏面マークQyの全位置を検出できる位置(裏面マークQyの直下)に形成されている。
【0031】
溝85y,86yと溝86x,86xは、互いにぶつからないよう、溝85y,86yが、溝86x,86xよりも上側に形成されている。なお、溝85y,86yを、溝86x,86xよりも下側に形成しておいてもよい。溝85y,86y,86x,86xは、例えば、上面側が開放された断面コの字状である。なお、溝85y,86y,86x,86xは、上面側が閉ざされた筒状であってもよい。この場合、センサSによる裏面マークRの検出感度が低下しないよう、ウエハホルダ6を透明な部材などで構成しておく。
【0032】
また、溝85y,86y,86x,86xおよび針状部材9は、溝85y,86y,86x,86xが針状部材9の直下となる位置に形成しても構わない。なお、溝85y,86y,86x,86xを針状部材9の直下に形成する場合は、センサSによる裏面マークRの検出感度が低下しないよう、針状部材9を透明な部材で構成しておく。
【0033】
センサSx1,Sx2によって、裏面マークPx,Qxを測定する際には、ウエハステージ5とアーム81y,82yの相対位置を固定した状態で、ウエハステージ5およびアーム81y,82yをx軸方向に移動させる。
【0034】
同様に、センサSy1,Sy2によって、裏面マークPy,Qyを測定する際には、ウエハステージ5とアーム81x,82xの相対位置を固定した状態で、ウエハステージ5およびアーム81x,82xをy軸方向に移動させる。
【0035】
つぎに、露光装置10の構成について説明する。図5は、実施の形態に係る露光装置の構成を示すブロック図である。露光装置10は、露光機構20、アーム駆動部7X,7Y、センサ群13を有している。露光機構20は、ウエハWAへの露光処理を行う装置であり、ステージ駆動部11、制御部14を備えている。
【0036】
ステージ駆動部11は、ウエハステージ5を駆動させてウエハステージ5をXY方向に移動させる。ステージ駆動部11は、制御部14からの指示に従ってウエハステージ5を移動させる。また、アーム駆動部7X,7Yは、制御部14からの指示に従ってアーム81x,82x,81y,82yを移動させる。
【0037】
センサ群13は、センサSx1,Sx2,Sy1,Sy2である。センサ群13は、エンコーダ機構を有しており、裏面マークRに光を照射するとともに反射信号を検出することによって裏面マークRを検出する。センサ群13は、裏面マークRの検出信号を位置情報として制御部14に送る。
【0038】
制御部14は、CPU、ROM、RAMなどを具備したコンピュータなどであり、ステージ駆動部11、アーム駆動部7X,7Y、図示しない光源などを制御する。制御部14は、ウエハWA(ウエハステージ5)上で露光させたい位置が、露光光の照射位置となるようステージ駆動部11に指示を送る。
【0039】
また、制御部14は、センサSx1,Sx2,Sy1,Sy2が所望の位置となるよう、アーム駆動部7X,7Yに指示を送る。制御部14は、ウエハWAの原点(センサSx1,Sy1のウエハWA上の基準位置)を算出する際には、センサSx2が裏面マークQxの全パターン位置を検出できるよう、アーム駆動部7Xに移動指示を送る。また、制御部14は、ウエハWAの原点を算出する際には、センサSy2が裏面マークQyの全パターン位置を検出できるよう、アーム駆動部7Yに移動指示を送る。
【0040】
また、制御部14は、ウエハWAを露光する際には、ウエハWAの原点からウエハWAの露光位置までの間に配置されている裏面マークPx,Pyを検出できるようアーム駆動部7X,7Yに移動指示を送る。具体的には、センサSx1が、裏面マークPxのうち、原点から露光位置と同じx座標に配置されている裏面マークPxまでの各パターン位置(各ラインL1の座標)を検出できるようアーム駆動部7Xに指示を送る。また、センサSy1が、裏面マークPyを構成する各パターンうち、原点から露光位置と同じy座標に配置されている裏面マークPyまでの各パターン位置を検出できるようアーム駆動部7Yに指示を送る。
【0041】
例えば、ウエハWAの原点が(x0,y0)であり、露光位置が(x1,y1)である場合、センサSx1は、裏面マークPxのうちx0と同じx座標にあるパターンからx1と同じx座標にあるパターンまでの各パターン位置(パターン数)を検出する。また、センサSy1は、裏面マークPyのうちy0と同じy座標にあるパターンからy1と同じy座標にあるパターンまでの各パターン位置(パターン数)を検出する。
【0042】
また、(x2,y2)の露光位置から(x3,y3)の露光位置まで移動する場合、センサSx1は、裏面マークPxのうちx2と同じx座標にあるパターンからx3と同じx座標にあるパターンまでの各パターン位置(パターン数)を検出する。また、センサSy1は、裏面マークPyのうちy2と同じy座標にあるパターンからy3と同じy座標にあるパターンまでの各パターン位置(パターン数)を検出する。
【0043】
本実施の形態の制御部14は、センサ群13からの位置情報に基づいて、ウエハWA上の露光位置に対応するウエハステージ5上の位置をウエハWAの露光位置として算出する算出部としての機能を有している。具体的には、制御部14は、原点から露光位置までラインパターンL1をいくつ検出できたかに基づいて、ウエハWAの露光位置を算出する。
【0044】
制御部14は、x軸方向の露光位置(座標)を計測する際には、センサSx1が原点から露光位置まで移動するまでの間に、センサSx1が右方向へ進んだ際に検出したパターン数と、センサSx1が左方向へ進んだ際に検出したパターン数と、を記憶しておく。そして、記憶しておいたパターン数を用いて原点からのx軸方向の距離を算出する。
【0045】
また、制御部14は、y軸方向の露光位置(座標)を計測する際には、センサSy1が原点から露光位置まで移動するまでの間に、センサSy1が上方向へ進んだ際に検出したパターン数と、センサSy1が下方向へ進んだ際に検出したパターン数と、を記憶しておく。そして、記憶しておいたパターン数を用いて原点からのy軸方向の距離を算出する。
【0046】
ウエハWAの露光位置は、ウエハWAを基準として算出された位置をウエハステージ5上の位置に換算した位置である。これにより、制御部14は、ウエハステージ5上でのウエハWAの露光位置を補正する。制御部14は、ウエハWAへの露光位置の補正処理として、補正位置に応じた位置が露光光の照射位置となるようステージ駆動部11に指示を送る。
【0047】
ここで、ウエハステージ5とセンサSの動作について説明する。図6は、ウエハステージとセンサの動作を説明するための図である。図6の(a)では、露光位置がR(x1,y1)の場合のウエハステージ5とセンサSの位置を示している。また、図6の(b)では、露光位置がR(x2,y1)の場合のウエハステージ5とセンサSの位置を示し、図6の(c)では、露光位置がR(x1,y3)の場合のウエハステージ5とセンサSの位置を示している。
【0048】
R(x1,y1)での露光を終えた後に、露光位置をx方向に移動させる場合、ウエハステージ5とセンサSy1の相対位置を固定した状態で、ウエハステージ5およびセンサSy1をx軸方向に移動させる。このとき、センサSx1の位置は固定しておく。これにより、センサSx1は、相対的にウエハWAの裏面下(裏面マークPx)をx軸方向に移動することとなる。
【0049】
例えば、R(x1,y1)の次の露光位置がR(x2,y1)の場合、センサSx1は、x座標の位置がx2となる位置まで相対移動する(b)。これにより、センサSx1は、裏面マークPxの下部を座標x1から座標x2まで移動することとなる。センサSx1は、裏面マークPxの下部を移動している間、裏面マークPxのパターンを順番に検出していく。センサSx1が検出したパターンは、x軸方向の位置情報として制御部14に送られる。これにより、制御部14は、センサSx1が検出したパターンの数に基づいて、R(x2,y1)の位置を算出(計測)する。
【0050】
R(x1,y1)での露光を終えた後に、露光位置をx方向に移動させる場合、ウエハステージ5とセンサSx1の相対位置を固定した状態で、ウエハステージ5およびセンサSx1をy軸方向に移動させる。このとき、センサSy1の位置は固定しておく。これにより、センサSy1は、相対的にウエハWAの裏面下(裏面マークPy)をy軸方向に移動することとなる。
【0051】
例えば、R(x1,y1)の次の露光位置がR(x1,y3)の場合、センサSy1は、y座標の位置がy3となる位置まで移動する(c)。これにより、センサSy1は、裏面マークPyの下部を座標y1から座標y3まで相対移動することとなる。センサSy1は、裏面マークPyの下部を移動している間、裏面マークPyのパターンを順番に検出していく。センサSy1が検出したパターンは、y軸方向の位置情報として制御部14に送られる。これにより、制御部14は、センサSy1が検出したパターンの数に基づいて、R(x1,y3)の位置を算出(計測)する。
【0052】
つぎに、露光位置の算出方法について説明する。図7は、ウエハ上の原点算出方法を説明するための図であり、図8は、ウエハの回転方向の位置ずれを説明するための図である。ウエハWAの中心位置を算出する際には、センサSx2がx軸方向に移動することによって裏面マークQxの一方の端部から他方の端部までのラインパターンL1を全て検出する。このとき、センサSx2は、ラインパターンL1の検出信号を制御部14に送る。制御部14は、ラインパターンL1の数に基づいて、裏面マークQxのx軸方向の中心位置をマーク中心Cx2として算出する。ラインパターンL1は等間隔で並べられているので、制御部14は、検出されたラインパターンL1の数がN(Nは自然数)である場合、一方の端部から数えて(N/2)番目のラインパターンL1の位置をマーク中心Cx2に設定する。
【0053】
また、ウエハWAの中心位置を算出する際には、センサSy2がy軸方向に移動することによって裏面マークQyの一方の端部から他方の端部までのラインパターンL1を全て検出する。このとき、センサSy2は、ラインパターンL1の検出信号を制御部14に送る。制御部14は、ラインパターンL1の数に基づいて、裏面マークQyのy軸方向の中心位置をマーク中心Cy2として算出する。ラインパターンL1は等間隔で並べられているので、制御部14は、検出されたラインパターンL1の数がM(Mは自然数)である場合、一方の端部から数えて(M/2)番目のラインパターンL1の位置をマーク中心Cy2に設定する。
【0054】
つぎに、制御部14は、予め設定しておいた裏面マークQxのy軸方向の位置Ly2と、予め設定しておいた裏面マークQyのx軸方向の位置Lx2と、を用いてウエハWAの回転方向のずれ量を回転ずれ量Rotとして算出する。例えば、制御部14は、以下に示す式(1)を用いて回転ずれ量Rotを算出する。
Rot=(−(Cx2/Ly2)+(Cy2/Lx2))/2・・・(1)
【0055】
さらに、制御部14は、以下に示す式(2)、式(3)を用いてウエハWAの原点(Cx1,Cy1)を算出する。
Cx1=(Cx2)+(Rot×Ly2)・・・(2)
Cy1=(Cy2)−(Rot×Lx2)・・・(3)
【0056】
これにより、制御部14は、ウエハWAの回転方向の位置ずれを考慮したウエハWAの原点に座標(Cx1,Cy1)を設定する。この後、制御部14は、裏面マークPxの測定値(原点から露光位置までの間にあるラインパターンL1の数)と、ウエハWAの原点と、を用いてウエハWA上での露光位置の座標を算出する。具体的には、制御部14は、センサSx1,Sy1で検出されるラインパターンの数に基づいて、ウエハステージ5(ウエハWA)の位置(座標)を算出し補正する。
【0057】
このように、裏面マークRを用いて露光位置の補正を行うので、ウエハ基準のステージ移動が可能となり、その結果、露光装置間でウエハWA上の位置と露光位置との位置マッチングずれが発生する場合であっても、位置ずれの非線形成分を補正することが可能となる。また、ウエハプロセス(ウエハWAへの成膜や熱処理などのデバイス処理)でウエハWAに歪みや反りなどが生じた場合であっても、ウエハWA上の位置と露光位置との間で発生する位置ずれの非線形成分を補正することが可能となる。換言すると、ウエハWAの裏面に配置した位置基準面を用いてウエハWA上での位置算出を行うので、露光装置間で生じるずれの非線形成分なども含めてウエハWAが歪んだ状態そのものを補正することが可能となる。また、ウエハWAの原点とウエハステージ5の原点とが同じであり、ウエハWA上の位置を測定するスケールとウエハステージ5上でのスケールとが同じであるので、露光位置でのアライメントが不要となる。露光装置10は、ウエハWA上の位置と露光位置との間で発生する位置ずれの非線形成分を補正しながら、所望の位置でウエハWAを露光する。
【0058】
露光装置10によるウエハWAの露光位置補正や露光処理は、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。そして、露光位置が補正された状態で露光されたウエハWAを用いて半導体デバイスなどの半導体装置(半導体集積回路)が製造される。具体的には、レジストの塗布されたウエハWAに露光位置の補正を行って露光し、その後ウエハWAを現像してウエハWA上にレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとしてウエハWAの下層側をエッチングする。半導体装置を製造する際には、上述した露光位置を補正した状態での露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0059】
なお、本実施の形態では、ウエハホルダ6内をセンサSが移動する場合について説明したが、センサSはウエハホルダ6以外の位置を移動してもよい。図9は、ウエハステージの他の構成例を示す断面図である。図9では、図4と同様にウエハステージ5をx軸方向(アーム81xの軸方向)に切断した場合の断面図を示している。図9のウエハステージ5では、センサSx1,Sy1,Sy2や図示しないセンサSx2が、それぞれウエハホルダ6の下部側に設けられたウエハステージ5内に配置されている。
【0060】
ウエハステージ5内にセンサSを配置する場合も、ウエハホルダ6内にセンサSを配置する場合と同様に、溝85y,86y,86x,86xを、上面側が開放された断面コの字状としておく。さらに、センサSによる裏面マークRの検出感度が低下しないよう、ウエハホルダ6を透明な部材で構成しておく。なお、溝85y,86y,86x,86xは、上面側が閉ざされた筒状であってもよい。この場合、センサSによる裏面マークRの検出感度が低下しないよう、ウエハステージ5を透明な部材で構成しておく。
【0061】
また、ウエハWAを支持する複数からなる針状部材9の間(ウエハホルダ6の上面)にセンサSを配置してもよい。この場合、アーム81x,82x,81y,82yと針状部材9とがぶつからない位置を通るよう、アーム81x,82x,81y,82yを移動させる。また、針状部材9の間にセンサSを配置する場合、ウエハホルダ6上に溝85y,86y,86x,86xを設けておいてもよいし、溝85y,86y,86x,86xを設けておかなくてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、裏面マークPx,Qxをx軸と平行な直径方向に配置し、裏面マークPy,Qyをy軸と平行な直径方向に配置する場合について説明したが、裏面マークRの配置位置は図1に示した配置位置に限らない。ウエハWAのx軸方向の全ての位置とy軸方向の全ての位置を検出できる位置であれば、何れの位置に裏面マークRを配置してもよい。換言すると、ウエハWAのx軸方向の最左端から最右端までと、y軸方向の最上端から最下端までを測定できる位置であれば、裏面マークRを何れの位置に配置してもよい。したがって、裏面マークPxと裏面マークPyは直交する必要はない。また、裏面マークPxや裏面マークPyは、1本の直線状に配置する必要はなく複数本の直線状に配置してもよい。センサSを移動させる溝は、裏面マークRの配置位置に応じた位置に形成しておく。
【0063】
また、本実施の形態では、ラインパターンL1を等間隔に配置することによって裏面マークRを構成したが、ラインパターンL1を不等間隔に並べてもよい。図10は、裏面マークの他の構成例を示す図である。図10の(a)では、ラインパターンを所定の不等間隔で配置した場合の裏面マークPxの上面図を示している。裏面マークPxは、ラインパターンL2が不等間隔で配置されている。ラインパターンL2は、ラインパターンL1と同様の形状を有している。
【0064】
スペース領域S2の短手方向の幅(ラインパターンL2間の距離)を、予め規定した種々の距離となるようラインパターンL2を配置しておく。例えば、裏面マークRのx軸方向の一方の端部側(図10の(a)では左端側)ではスペース領域S2の幅を広くし、x軸方向の他方の端部側に向かうに従ってスペース領域S2の幅を狭くしておく。また、ラインパターンL2を一定の幅としておく。これにより、露光装置10は、スペース領域S2の幅を測定することによって、ウエハWA上の何れの位置を計測しているかを認識することが可能となる。したがって、露光装置10は、ウエハWA上の何れの位置が露光位置となっているかを判断することが可能となる。
【0065】
また、ラインパターンL2を予め規定した種々の幅で配置してもよい。例えば、図10の(b)に示すように、裏面マークRのx軸方向の一方の端部側(図10の(b)では左端側)ではラインパターンL3の幅を広くし、x軸方向の他方の端部側に向かうに従ってラインパターンL3の幅を狭くしておく。また、スペース領域S3を一定の幅としておく。これにより、露光装置10は、ラインパターンL3の幅を測定することによって、ウエハWA上の何れの位置を計測しているかを認識することが可能となる。したがって、露光装置10は、ウエハWA上の何れの位置が露光位置となっているかを判断することが可能となる。
【0066】
また、ラインパターンL2の幅やスペース領域S2の幅が不等間隔となるよう配置しておくことによって、検出したラインパターンL2の幅やスペース領域S2の幅に基づいてウエハWAの原点を算出することが可能となる。これにより、裏面マークQx,Qyが不要となる。
【0067】
また、裏面マークQx,Qyは、裏面マークPx,Pyと重ならない位置に配置してもよい。これにより、裏面マークRの検出が容易になる。また、裏面マークRは露光装置(ウエハ裏面照射用露光機)などを用いてウエハWAの裏面に形成してもよいし、EB(電子ビーム)露光装置などの他の装置を用いてウエハWAの裏面に形成してもよい。また、裏面マークRは、ラインパターンに限らず、ドットパターンなどの他の形状を有したパターンであってもよい。
【0068】
また、裏面マークPxと裏面マークQyが重なるウエハWAの中心部では、ウエハステージ5の位置を検出する機能(位置検出機能)によって測定されたウエハステージ5の位置を用いて、ウエハWAの露光位置を補間してもよい。また、ウエハWAの外側を露光位置とする場合、ウエハステージ5の位置する検出する機能によって測定されたウエハステージ5の位置を用いて、ウエハWAの露光位置を補間してもよい。これにより、裏面マークRのパターン検出が不可能な状況であっても所望の位置にウエハステージ5(ウエハWA)を移動させることが可能となる。
【0069】
このように実施の形態によれば、ウエハWA上の正確な露光位置を容易に計測することが可能になる。したがって、露光装置間差に起因するウエハWAの位置ずれの非線形成分やウエハプロセスで発生するウエハの位置ずれの非線形成分の補正を容易に行なうことが可能となる。
【0070】
また、ウエハホルダ6に溝85y,86y,86x,86xが形成されているので、露光中であってもウエハ裏面に形成されている裏面マークRのパターン検出が可能となる。また、ウエハホルダ6のx軸方向、y軸方向に沿って移動可能なセンサSを備えているので、x軸方向、y軸方向のそれぞれに独立したパターン検出が可能となる。
【符号の説明】
【0071】
5 ウエハステージ、6 ウエハホルダ、7X,7Y アーム駆動部、10 露光装置、11 ステージ駆動部、13 センサ群、14 制御部、20 露光機構、81x,82x,81y,82y アーム、Px,Py,Qx,Qy 裏面マーク、Sx1,Sx2,Sy1,Sy2 センサ、WA ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面側で前記基板の第1の直径上および前記第1の直径に直交する第2の直径上のそれぞれに並ぶよう形成されたパターンを、第1のパターンとして検出する検出ステップと、
前記第1のパターンの検出結果に基づいて前記基板上の露光位置の座標を算出する座標算出ステップと、
を含むことを特徴とする露光位置計測方法。
【請求項2】
前記第1のパターンを検出する前に、前記基板の裏面側で前記第1のパターンとは異なる複数のパターンを、第2のパターンとして検出するとともに、前記第2のパターンの検出結果に基づいて前記基板上の原点座標を算出する原点算出ステップをさらに含み、
前記座標算出ステップでは、算出した前記原点座標を用いて前記基板上の座標を算出することを特徴とする請求項1に記載の露光位置計測方法。
【請求項3】
前記第1のパターンは、前記第1の直径方向および前記第2の直径方向に等間隔に配置されたパターンであり、
前記座標算出ステップでは、検出された前記第1のパターンの数に基づいて前記基板上の座標が算出されることを特徴とする請求項1または2に記載の露光位置計測方法。
【請求項4】
前記第1のパターンは、前記第1の直径方向および前記第2の直径方向に不等間隔に配置されたパターンであり、
前記原点算出ステップでは、検出された前記第1のパターンのパターン間隔またはパターン幅に基づいて前記原点座標が算出され、
前記座標算出ステップでは、検出された前記第1のパターンの数、検出された前記第1のパターンのパターン間隔またはパターン幅に基づいて前記基板上の座標が算出されることを特徴とする請求項2に記載の露光位置計測方法。
【請求項5】
第1の方向および前記第1の方向に直交する第2の方向のそれぞれに並ぶよう露光対象物に形成されたパターンを、第1のパターンとして検出する検出部と、
前記第1のパターンの検出結果に基づいて前記露光対象物の露光位置の座標を算出する座標算出部と、
算出した前記露光位置の座標に基づいて、前記露光対象物の露光を行う露光部と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項6】
前記座標算出部は、
前記第1のパターンを検出する前に、前記第1のパターンとは異なる複数のパターンを、第2のパターンとして前記露光対象物から検出するとともに、前記第2のパターンの検出結果に基づいて前記露光対象物の原点座標を算出し、算出した前記原点座標を用いて前記露光対象物の座標を算出することを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第1のパターンは、前記第1の方向および前記第2の方向に等間隔に配置されたパターンであり、
前記座標算出部は、検出された前記第1のパターンの数に基づいて前記露光対象物の座標を算出することを特徴とする請求項5または6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1のパターンは、前記第1の方向および前記第2の方向に不等間隔に配置されたパターンであり、
前記座標算出部は、検出した前記第1のパターンのパターン間隔またはパターン幅に基づいて前記原点座標を算出し、検出した前記第1のパターンの数、検出した前記第1のパターンのパターン間隔またはパターン幅に基づいて前記露光対象物の座標を算出することを特徴とする請求項6に記載の露光装置。
【請求項9】
前記露光対象物は、半導体集積回路が形成される基板であり、前記第1のパターンは、前記基板の裏面側で前記基板の第1の直径上および前記第1の直径に直交する第2の直径上のそれぞれに並ぶよう形成されたパターンであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つに記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−108691(P2011−108691A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259267(P2009−259267)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】