説明

露点計、湿度計、露点導出装置、湿度導出装置、露点測定方法、及び湿度測定方法

【課題】メンテナンス性がよく且つ簡略な構造でありながら、広い湿度範囲において露点を測定可能な露点計、湿度計、露点導出装置、湿度導出装置、露点測定方法、及び湿度測定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、測定空間S1と当該測定空間S1に対して断熱部100で隔てられる外部空間S2とに跨って配置される伝熱部2を準備し、伝熱部2の測定空間内に位置する部位2aが結露するように外部空間内に位置する部位2bの温度を測定空間内に位置する部位2aの温度より低温にし、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tをそれぞれ測定し、測定空間内に位置する部位2aに結露が生じた状態の伝熱部2における熱収支に基づく関係式T1を用い、前記の伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから測定空間S1の露点Tを算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露点計、湿度計、露点導出装置、湿度導出装置、露点測定方法、及び湿度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測定空間の露点を計測する露点計として種々のものが知られている。例えば、下記の特許文献1には、鏡面冷却式露点計が開示されている。この鏡面冷却式露点計は、反射鏡表面温度が被測定気体の露点を下回ると、結露によって反射鏡表面の光学的反射率が低下するという原理を利用したものである。
【0003】
具体的には、この露点計では被測定気体が導入されるハウジングが設けられ、そのハウジング外の第1光源素子及び第2光源素子から参照光及び測定光がそれぞれ光ファイバを経てハウジング内に導入される。参照光は、ハウジング内の測定用光路を直進したあと光ファイバにより第1受光素子に案内される一方、測定光は、ハウジング内で反射鏡の鏡面で反射されたあと光ファイバにより第2受光素子に案内される。前記反射鏡には、制御回路によって冷却能力が制御されるヒートポンプが設けられ、制御回路は、第1受光素子及び第2受光素子で受光した参照光及び測定光の光量に基づき、反射鏡の鏡面に生じた結露量が一定となるようにヒートポンプを制御して反射鏡の温度を調整する。
【0004】
このように構成される鏡面冷却式露点計では、反射鏡に被測定気体を接触させてこの被測定気体に含まれる水分により鏡面を結露させ、制御回路による反射鏡の温度調整によって鏡面の結露量が一定となったときの反射鏡の温度が露点として導出される。
【0005】
また、下記の特許文献2には、乾湿球を用いて湿度を計測する湿度計が開示されている。この湿度計では、同型の乾球温度計と湿球温度計が並べて設置されていると共に、湿球温度計の下方に水の入ったタンクが置かれており、このタンク内の水に浸されたガーゼ等からなるウィックによって湿球温度計の感部が包まれている。そして、乾球温度計が示す乾球温度と湿球温度計が示す湿球温度との差から相対湿度を求めるように構成されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の露点計は、2つの光源素子、2つの受光素子、複数の光ファイバ、反射鏡、ヒートポンプ、測温体、ヒートポンプの制御回路及び温度計測用回路等の非常に多くの構成部材によって構成されており、構造が複雑になる。
【0007】
一方、上記特許文献2の湿度計は、ウィックが古くなって汚れてくると水を吸い上げる力が弱まるため、その度に煩雑なウィックの交換作業を行う必要がある。このため、湿度計のメンテナンスに係る作業負担が大きくなる。
【0008】
そこで、下記の特許文献3の露点計及び湿度計が開発された。この露点計及び湿度計は、測定空間とこの測定空間から断熱部により隔てられた外部空間とに跨って配置されたヒートパイプ(伝熱部)を用い、このヒートパイプの外部空間内に位置する外側部位を冷却することにより当該ヒートパイプの測定空間内に位置する内側部位の表面温度が露点と略等しくなることを利用して、測定空間の露点及び相対湿度を求める。
【0009】
具体的に、露点計は、測定空間とその外側の外部空間とを断熱部(断熱壁)により隔てる恒温恒湿槽と、断熱部を貫通して測定空間と外部空間とに跨るように配置されるヒートパイプと、ヒートパイプの内側部位の表面温度を検出する外面温度検出部とを備える。
【0010】
この露点計では、ヒートパイプの外側部位が冷却され、そのときのヒートパイプの内側部位(即ち、作動流体が蒸発する部位)の表面温度が測定空間の露点として検出される。
【0011】
このように、上記の露点計によれば、ヒートパイプと、外面温度検出部とで構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように多数の部材で構成されるものに比べて、構造を簡略化することができた。また、この露点計は、従来の乾湿球湿度計のように測定にウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−194756号公報
【特許文献2】実用新案登録第3021853号公報
【特許文献3】国際特許出願公開WO2008/123313号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献3の露点計では、測定空間が特定の湿度範囲内でないと伝熱部(ヒートパイプ)の内側部位の表面温度と測定空間の露点とが近似しないことが判明した。このため、上記の露点計では、露点を精度よく計測できる湿度範囲が狭いという問題があることが判明した。
【0014】
そこで、メンテナンス性がよく且つ簡略な構造でありながら、広い湿度範囲において露点を測定可能な露点計、湿度計、露点導出装置、湿度導出装置、露点測定方法、及び湿度測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく以下の知見に着目した。
【0016】
この知見は、断熱部で隔てられた2つの空間(測定空間と外部空間)に跨るように配置された伝熱部における熱収支に関するものである。具体的には、伝熱部の外部空間側に位置する端部を測定空間側に位置する端部よりも低温にして測定空間内に位置する部位に結露を生じさせたときに、測定空間から伝熱部へ入る顕熱と伝熱部の結露によって伝熱部へ供給された潜熱とを合わせた熱量が伝熱部から外部空間に放出される熱量と等しくなるといった熱収支が測定空間の湿度に関係なく成り立つというものである。
【0017】
この知見に基づき、本発明者らは、前記の熱収支における顕熱及び潜熱と放熱量との関係を露点の観点から精査した結果、伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度と露点との間に所定の関係式が成り立つことを発見した。
【0018】
本発明は、これらの各温度と測定空間の露点との間の関係式に着目することによってなされたものであり、測定空間の露点を測定するための露点計であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部と、前記伝熱部の温度を検出する部材温度検出部と、前記測定空間の温度を検出する測定空間温度検出部と、前記外部空間の温度を検出する外部空間温度検出部と、前記測定空間の露点を算出する演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記部材温度検出部により検出される前記伝熱部の温度と前記測定空間温度検出部により検出される前記測定空間の温度と前記外部空間温度検出部により検出される前記外部空間の温度とから前記測定空間の露点を算出するものを提供する。
【0019】
この露点計によれば、伝熱部の外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にして前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態とすることにより、伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度から広い湿度範囲において露点を精度よく求めることができる。これは、測定空間内に位置する部位が結露した状態であれば測定空間の相対湿度に関係なく成り立つ伝熱部の熱収支に基づく関係式を用いて露点を算出するためである。
【0020】
また、当該露点計では、伝熱部と、部材温度検出部と、測定空間温度検出部と、外部空間温度検出部と、演算装置とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。また、この露点計は、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。従って、本発明による露点計では、メンテナンスに係る作業負担を軽減しながら、構造を簡略化することができる。
【0021】
本発明に係る露点計においては、前記演算装置は、前記部材温度検出部の温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の第1の熱抵抗の値、及び前記部材温度検出部の温度検出部位と前記外部温度検出部の温度検出部位との間の第2の熱抵抗の値をそれぞれ格納可能な熱抵抗記憶部と、前記伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記熱抵抗記憶部に格納された第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値、前記部材温度検出部により検出される伝熱部の温度、前記測定空間温度検出部により検出される測定空間の温度、及び前記外部空間温度検出部により検出される外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算部と、を備えることが、好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、演算や事前実験によって第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値を求めて熱抵抗記憶部に格納しておけば、一つの伝熱部の温度と、測定空間の温度と、外部空間の温度とから、広い湿度範囲における露点を精度よく求めることができる。即ち、上記の構成によれば、露点計が伝熱部を一つ備えていればよいため、露点計の構造を簡略にすることができる。
【0023】
また、本発明に係る露点計においては、前記伝熱部を複数備え、前記部材温度検出部は、各伝熱部の温度をそれぞれ検出し、前記演算装置は、前記伝熱部における熱収支に基づく関数を用いて、前記部材温度検出部により検出される各伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出し、各伝熱部は、前記部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗、及び前記部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位と前記外部温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部と互いに異なるようにそれぞれ構成されてもよい。
【0024】
かかる構成によれば、部材温度検出部の温度検出部位と測定空間温度検出部の温度検出部位との間の第1の熱抵抗の値、及び部材温度検出部の温度検出部位と外部温度検出部の温度検出部位との間の第2の熱抵抗の値を求めるための演算や事前実験を予め行うことなく、測定空間の露点を求めることができる。即ち、複数の伝熱部の温度をそれぞれ検出してこれら各温度を演算に用いることにより、第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値を用いなくても露点を算出することができる。
【0025】
前記伝熱部は、ヒートパイプであることが好ましい。このように、熱抵抗の小さなヒートパイプを伝熱部として用いることにより、応答性の優れた露点計が得られる。
【0026】
前記部材温度検出部は、前記伝熱部の表面温度を検出することが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、伝熱部の温度をその内部で検出する場合に比べ、伝熱部の構造及び部材温度検出部の温度検出部位の構造を簡略化することができる。
【0028】
この場合、前記断熱部は、前記測定空間を外側から囲み、前記伝熱部は、前記断熱部の所定部位を貫通することにより前記測定空間と前記外部空間とに跨るように配置され、前記部材温度検出部は、前記伝熱部における前記断熱部を貫通する部位又は前記測定空間内に位置する部位の表面温度を検出することが好ましい。
【0029】
伝熱部において断熱部に囲まれた部位の表面温度は、外気温(外側空間の気温)や風等の外乱による影響を受け難いため、この部位の表面温度を伝熱部の温度として検出し、これを用いて露点を算出することにより、求められた露点において外乱による誤差を抑えることができる。
【0030】
前記伝熱部は、前記測定空間と前記外部空間とに跨って配置される伝熱部本体と、前記伝熱部本体の外部空間内に位置する部位を冷却する冷却手段と、を有してもよい。
【0031】
かかる構成によれば、冷却手段によって伝熱部本体の温度を低下させることができ、これにより、当該伝熱部本体に結露が生じ易くなって当該露点計の測定可能な湿度範囲がより広がる。即ち、当該露点計では、内部空間内に位置する部位の表面に結露が生じたときの伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度から露点を算出しているため、冷却手段によって伝熱部を結露し易くし、測定空間の相対湿度が低くても伝熱部の内部空間内に位置する部位に結露が生じるようにすることで、測定可能な湿度範囲がより広がる。
【0032】
この場合、例えば、前記冷却手段がヒートシンクであれば、冷却のための動力や電力を供給することなく伝熱部本体を効果的に冷却することができる。
【0033】
前記断熱部は、当該断熱部を挟んで前記測定空間から前記外部空間に向う方向に沿って前記伝熱部を相対変位可能に支持してもよい。
【0034】
かかる構成によれば、伝熱部を断熱部に対して相対変位させることによって伝熱部における測定空間内に位置する部位の表面積と外部空間内に位置する部位の表面積とを変更することができ、これにより、測定できる湿度範囲や応答性を調整することが可能となる。即ち、相対変位させて測定空間内に位置する部位の表面積及び外部空間内に位置する部位の表面積を変えることで、伝熱部の温度検出部位と測定空間の温度検出部位との間の熱抵抗の値、及び伝熱部の温度検出部位と外部空間の温度検出部位との間の熱抵抗の値が変化するため、測定できる湿度範囲や応答性が変化する。
【0035】
また、本発明者らは、上述の知見に基づき、前記の熱収支における顕熱及び潜熱と放熱量との関係を露点の観点から精査した結果、伝熱部の断熱部に対応する部位又は測定空間内に位置する部位の温度、伝熱部の外部空間内に位置する部位の表面温度、及び測定空間の温度と測定空間の露点との間に、本発明者らが発見した上述の伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度と露点との間に成り立つ所定の関係式と異なる関係式が成り立つことも発見した。
【0036】
本発明は、これらの各温度と測定空間の露点との間の関係式に着目することによってなされたものであり、測定空間の露点を測定するための露点計であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部と、前記伝熱部の前記断熱部と対応する部位又は前記測定空間内に位置する部位の温度を検出する第1部材温度検出部と、前記伝熱部の前記外部空間内に位置する部位の表面温度を検出する第2部材温度検出部と、前記測定空間の温度を検出する測定空間温度検出部と、前記測定空間の露点を算出する演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記第1部材温度検出部により検出される前記伝熱部の温度、前記第2部材温度検出部により検出される前記伝熱部の表面温度、及び前記測定空間温度検出部により検出される前記測定空間の温度から前記測定空間の露点を算出するものを提供する。
【0037】
この露点計によれば、伝熱部の外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にして前記測定空間内に位置する部位の温度を測定空間の露点以下にして当該部位に結露が生じた状態とすることにより、伝熱部の断熱部に対応する部位の温度又は測定空間内に位置する部位の温度、伝熱部の外部空間内に位置する部位の表面温度、及び測定空間の温度から広い湿度範囲において露点を精度よく求めることができる。
【0038】
しかも、外部空間内に位置する部位の表面温度を用いて露点を算出することにより、外気温(外部空間の気温)を用いて露点を算出する場合に比べ、誤差を抑えることができる。即ち、外部空間において伝熱部から熱が放出されているため、外部空間において伝熱部の周辺で検出した外気温は、外部空間の温湿度条件や測定位置、風向き等によって変動するが、伝熱部の表面温度は、前記外部空間の温湿度条件等による変動が少なく、そのため、この表面温度を用いて露点を算出することにより求まった露点に含まれる誤差を抑えることができる。
【0039】
また、当該露点計では、伝熱部と、第1部材温度検出部と、第2部材温度検出部と、測定空間温度検出部と、演算装置とにより構成されるため、従来の鏡面冷却式露点計のような非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができ、しかも、ウィックを必要としないのでメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。
【0040】
この露点計においては、前記演算装置は、前記第1部材温度検出部の温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の第1の熱抵抗の値、及び前記第1部材温度検出部の温度検出部位と前記第2部材温度検出部の温度検出部位との間の第2の熱抵抗の値をそれぞれ格納可能な熱抵抗記憶部と、前記伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記熱抵抗記憶部に格納された第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値、前記第1部材温度検出部により検出される伝熱部の温度、前記第2部材温度検出部により検出される伝熱部の表面温度、及び前記測定空間温度検出部により検出される測定空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算部と、を備えることが好ましい。
【0041】
かかる構成によれば、演算や事前実験によって第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値を求めて熱抵抗記憶部に格納しておけば、一つの伝熱部における断熱部に対応する部位の温度又は内部空間内に位置する部位の温度、一つの伝熱部における外部空間内に位置する部位の表面温度、及び測定空間の温度から広い湿度範囲における露点を精度よく求めることができる。即ち、上記の構成によれば、露点計が伝熱部を一つ備えていればよいため、露点計の構造を簡略にすることができる。
【0042】
また、この露点計においては、前記伝熱部を複数備え、前記第1部材温度検出部は、各伝熱部の前記断熱部と対応する部位の温度又は前記測定空間内に位置する部位の温度をそれぞれ検出し、前記第2部材温度検出部は、各伝熱部の前記外部空間内に位置する部位の表面温度をそれぞれ検出し、前記演算装置は、前記伝熱部の熱収支に基づく関数を用いて、前記第1部材温度検出部により検出される各伝熱部の温度、前記第2部材温度検出部により検出される各伝熱部の表面温度、及び前記測定空間の温度から前記測定空間の露点を算出し、各伝熱部は、前記第1部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗、及び前記第1部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位とこの温度検出部位に対応する前記第2部材温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部と互いに異なるようにそれぞれ構成されてもよい。
【0043】
かかる構成によれば、複数の伝熱部の温度をそれぞれ検出してこれら各温度を演算に用いることにより、第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値を用いなくても露点を算出することができる。
【0044】
また、本発明は、測定空間の相対湿度を測定するための湿度計であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部と、前記伝熱部の温度を検出する部材温度検出部と、前記測定空間の温度を検出する測定空間温度検出部と、前記外部空間の温度を検出する外部空間温度検出部と、前記測定空間の露点を算出する演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記部材温度検出部により検出される前記伝熱部の温度、前記測定空間温度検出部により検出される前記測定空間の温度、及び前記外部空間温度検出部により検出される前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点演算部と、前記露点演算部により算出される露点に基づいて相対湿度を算出する湿度演算部と、を有するものを提供する。
【0045】
この湿度計によれば、伝熱部の外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にして前記測定空間内に位置する部位の温度を測定空間の露点以下にして当該部位に結露が生じた状態とすることにより、伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度から広い湿度範囲において露点が精度よく求まるため、この露点に基づき相対湿度を精度よく求めることができる。即ち、演算によって露点から相対湿度を容易に且つ精度よく求めることができるため、測定空間の相対湿度に関係なく成り立つ伝熱部の熱収支に基づく関係式を用い、伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度から測定空間の露点を精度よく求め、これに基づいて相対湿度を算出することにより、測定空間の相対湿度を精度よく求めることができる。
【0046】
また、本発明による湿度計では、伝熱部と、部材温度検出部と、測定空間温度検出部と、外部空間温度検出部と、演算装置とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のような非常に多くの部材で構成されるものを使用する場合に比べて構造を簡略化することができ、しかも、ウィックを必要としないのでメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。
【0047】
また、本発明は、測定空間の露点を算出する露点導出装置であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度がそれぞれ入力される温度入力部と、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記温度入力部に入力された前記伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算部と、前記演算部での演算結果を出力する出力部と、を有するものを提供する。
【0048】
この露点導出装置によれば、伝熱部の測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部の温度、測定空間の温度、及び外部空間の温度を入力することにより、広い湿度範囲において露点を精度よく求めることができる。しかも、当該露点導出装置を用いることにより、伝熱部と、部材温度検出部と、測定空間温度検出部と、外部空間温度検出部と、当該露点導出装置とによって露点計を構成することができ、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて、露点計の構造を簡略化することが可能となる。
【0049】
また、本発明は、測定空間の相対湿度を算出する湿度導出装置であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度がそれぞれ入力される温度入力部と、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記温度入力部に入力された前記伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点演算部と、前記露点演算部により算出される露点に基づいて前記測定空間の相対湿度を算出する湿度演算部と、前記相対湿度演算部での演算結果を出力する出力部と、を有するものを提供する。
【0050】
この湿度導出装置によれば、伝熱部の測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部の温度と、測定空間の温度と、外部空間の温度とを入力することにより、広い湿度範囲において露点が精度よく求まるため、この露点に基づき相対湿度を精度よく求めることができる。しかも、当該湿度導出装置を用いることにより、伝熱部と、部材温度検出部と、測定空間温度検出部と、外部空間温度検出部と、当該湿度導出装置とにより湿度計を構成することができ、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものを使用する場合に比べて、湿度計の構造を簡略化することが可能となる。
【0051】
また、本発明は、測定空間の露点を測定する方法であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部を用い、前記伝熱部の測定空間内に位置する部位が結露するように、前記外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にする温度調整工程と、前記温度調整工程後の前記伝熱部の温度を測定する伝熱部測定工程と、前記温度調整工程後の前記測定空間の温度を測定する測定空間測定工程と、前記温度調整工程後の前記外部空間の温度を測定する外部空間測定工程と、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記伝熱部測定工程で測定された伝熱部の温度、前記測定空間測定工程で測定された測定空間の温度、及び前記外部空間測定工程で測定された外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算工程と、を備える方法を提供する。
【0052】
この露点測定方法によれば、伝熱部の測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態にした伝熱部の温度と、測定空間の温度と、外部空間の温度とを測定すれば、これらの温度から広い湿度範囲において露点を精度よく求めることができる。
【0053】
また、本発明は、測定空間の相対湿度を測定する方法であって、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部を用い、前記伝熱部の測定空間内に位置する部位が結露するように、前記伝熱部の外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にする温度調整工程と、前記温度調整工程後の前記伝熱部の温度を測定する伝熱部測定工程と、前記温度調整工程後の前記測定空間の温度を測定する測定空間測定工程と、前記温度調整工程後の前記外部空間の温度を測定する外部空間測定工程と、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記伝熱部測定工程で測定された伝熱部の温度、前記測定空間測定工程で測定された測定空間の温度、及び前記外部空間測定工程で測定された外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点算出工程と、前記露点算出工程で算出された露点に基づいて相対湿度を算出する湿度算出工程と、を備える方法を提供する。
【0054】
この湿度測定方法によれば、伝熱部の測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態にした伝熱部の温度と、測定空間の温度と、外部空間の温度とを測定すれば、これらの温度から広い湿度範囲において露点が精度よく求まるため、これに基づいて相対湿度を算出することにより、測定空間の相対湿度を精度よく求めることができる。
【発明の効果】
【0055】
以上より、本発明によれば、メンテナンス性がよく且つ簡略な構造でありながら、広い湿度範囲において露点を精度よく計測可能な露点計、湿度計、露点計に用いられる露点導出装置、湿度計に用いられる湿度導出装置、露点測定方法、及び湿度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施形態による露点計の構造を概略的に示した図である。
【図2】図1に示した露点計の機能を説明するためのブロック図である。
【図3】図1に示した露点計の伝熱部における熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。
【図4】第2実施形態による露点計の機能を説明するためのブロック図である。
【図5】図4に示した露点計の各伝熱部における熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。
【図6】第3実施形態による露点計の機能を説明するためのブロック図である。
【図7】図6に示した露点形の伝熱部本体熱における熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。
【図8】第4実施形態による湿度計の機能を説明するためのブロック図である。
【図9】各温湿度条件での第4実施形態に係る湿度計の測定誤差と、従来の湿度計の測定誤差とを示す図である。
【図10】冷却手段として放熱部材を用いた場合の伝熱部を説明するための図である。
【図11】放熱部材を備えた伝熱部の説明をするための図である。
【図12】二重管構造のヒートパイプを伝熱部として用いた場合を説明するための図である。
【図13】断熱部に対して相対変位可能に支持される伝熱部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0058】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による露点計の構造を概略的に示した図であり、図2は、図1に示した露点計の機能を説明するためのブロック図であり、図3は、図1に示した露点計の伝熱部における熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。まず、図1乃至図3を参照して、本発明の第1実施形態による露点計の構成について説明する。
【0059】
本実施形態の露点計は、測定空間S1内の露点を測定するものであり、図1に示すように、伝熱部2と、第1外面温度センサ(部材温度検出部)4と、第2外面温度センサ6と、測定空間温度センサ(測定空間温度検出部)8と、外部空間温度センサ(外部空間温度検出部)10と、演算装置(露点導出装置)20とを備える。
【0060】
伝熱部2は、ヒートパイプによって構成されており、内部に作動流体としての水が減圧状態で封入されると共にヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成されている。ここでいうヒートパイプ現象とは、封入された作動流体が所定の場所で蒸発と凝縮を繰り返すことにより、作動流体が蒸発するところから凝縮するところへ、作動流体の流動に伴って熱が輸送される現象を意味している。
【0061】
この伝熱部2は、測定空間S1内と、この測定空間S1の外側の外部空間S2とに跨って配置される。伝熱部2のうち測定空間S1内に位置する部位を内側部2aとし、外部空間S2内に位置する部位を外側部2bとする。測定空間S1は、例えば、断熱壁100(断熱部)で囲まれた恒温恒湿槽101の内側の空間である。一方、外部空間S2は、前記恒温恒湿槽101の外側の空間である。恒温恒湿槽101の駆動により測定空間S1の温度を外部空間S2の温度よりも高くすることが可能となっている。この恒温恒湿槽101の天壁部を構成する断熱壁100には貫通孔100aが形成されている。伝熱部2は、この貫通孔100aに挿通されることにより、測定空間S1と外部空間S2とに跨って配置される。これにより、伝熱部2の内側部2a内で作動流体が蒸発し、外側部2b内で気体状の作動流体が凝縮するようになっている。この伝熱部2は、垂直に起立した姿勢で配設されるのみならず、ヒートパイプ現象が発生可能な範囲であれば、垂直からある程度傾斜した姿勢で配設されていてもよい。
【0062】
尚、本実施形態では、伝熱部2としてヒートパイプが用いられるが、これに限定されない。例えば、伝熱部2は、中実の銅棒等であってもよい。即ち、伝熱部2は、測定空間S1と外部空間S2とに跨って配置可能であり、測定空間S1から伝熱部2に熱が入るときの熱抵抗及び伝熱部2から外部空間S2に熱が出るときの熱抵抗に比べ、伝熱部2の表面に沿って又は伝熱部の内部を熱が移動するときの熱抵抗が非常に小さいものであればよい。
【0063】
第1外面温度センサ4は、露点Tを求めるための演算に用いられる伝熱部2の温度(伝熱部温度)Tを検出するセンサである。本実施形態の第1外面温度センサ4は、伝熱部2の外面(表面)温度を検出し、その検出結果に応じた信号を出力する。具体的に、第1外面温度センサ4は、測定空間S1内に位置する伝熱部2の内側部2aの端部近傍の外面に取り付けられている。
【0064】
第2外面温度センサ6は、伝熱部2において完全にヒートパイプ現象が生じているか否かを判断するための温度を検出するセンサである。この第2外面温度センサ6は、伝熱部2の外側部2bの端部近傍の外面に取り付けられている。詳細には、第2外面温度センサ6は、伝熱部2においてヒートパイプ現象が生じているときに、外側部2bにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面に取り付けられている。そして、第2外面温度センサ6は、取り付けられた部分の外面温度を検出してその検出結果に応じた信号を出力する。
【0065】
測定空間温度センサ8は、露点Tを求めるための演算に用いられる測定空間S1の温度(測定空間温度)Tを検出するセンサである。この測定空間温度センサ8は、測定空間S1内に配設されており、測定空間S1内の温度Tを検出してその検出結果に応じた信号を出力する。
【0066】
外部空間温度センサ10は、露点Tを求めるための演算に用いられる外部空間S2の温度(外部空間温度)Tを検出するセンサである。この外部空間温度センサ10は、外部空間S2内に配設されており、外部空間S2内の温度Tを検出してその検出結果に応じた信号を出力する。
【0067】
演算装置20は、測定空間S1内の露点Tを算出し、この算出した露点Tを表示(出力)する。この演算装置20は、各種情報(信号)を格納可能な記憶部21と、露点Tを算出する演算部24と、演算部24での演算結果を出力する出力部25と、を備える。本実施形態の演算装置20には、各センサ4,6,8,10が切り離し可能に接続されている。
【0068】
記憶部21は、各センサ4,6,8,10からの信号を格納する温度入力部22と、熱抵抗の値を格納する熱抵抗入力部23と、を含む。本実施形態では、記憶部21として、ハードディスクやRAM等が用いられる。
【0069】
温度入力部22は、第1外面温度センサ4と第2外面温度センサ6と測定空間温度センサ8と外部空間温度センサ10とに接続され、各センサ4,6,8,10からの信号を受け取り、これらの各信号を格納する部位である。
【0070】
熱抵抗入力部23は、第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗(第1の熱抵抗)の値Rieと、第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗(第2の熱抵抗)の値Reoとを格納する部位である。本実施形態の熱抵抗入力部23には、キーボードやタッチパネル等の入力部23aが接続され、この入力部23aから第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoが入力される。尚、熱抵抗入力部23への第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoの入力は、入力部23aからの入力に限定されない。例えば、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoが計算機等の演算により求められ、この演算結果が前記計算機等から直接熱抵抗入力部23に入力されてもよい。
【0071】
第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoは、前記のように伝熱部2の熱伝達率から演算により求めたものでもよく、また、当該露点計を用いた事前実験等による実測に基づいて求めたものでもよい。
【0072】
演算部24は、記憶部21の熱抵抗入力部23に格納された第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoと、第1外面温度センサ4で検出されて温度入力部22に格納された伝熱部温度Tと、測定空間温度センサ8で検出されて温度入力部22に格納された測定空間温度Tと、外部空間温度センサ10で検出された外部空間温度Tとから測定空間S1の露点Tを算出する。具体的に、演算部24には、関係式T1が予め格納されており、当該演算部24は、この関係式T1を用い、第1の熱抵抗の値Rie、第2の熱抵抗の値Reo、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから測定空間S1の露点Tを算出する。
【0073】
関係式T1は、内側部2aに結露が生じた状態の伝熱部2における熱収支に基づくものであり、以下のようにして求められる。
【0074】
測定空間温度Tよりも外部空間温度Tが低くなるように測定空間温度Tと外部空間温度Tとの間に所定の温度差を設けて伝熱部2にヒートパイプ現象を生じさせると、伝熱部2内の作動流体によって測定空間S1側から外部空間S2側に向けて熱が輸送される。これにより、伝熱部温度Tが測定空間の露点以下となり、伝熱部2の内側部2aには結露が生じる。このときの測定空間S1から伝熱部2へ入る顕熱、即ち、T間の温度差によって生じる顕熱をQieとし、結露により測定空間S1から伝熱部2へ供給される潜熱、即ち、T間の温度差によって生じる潜熱をQieとすると、顕熱Qieは、
【数1】

で表され、潜熱Qieは、
【数2】

【0075】
で表される。ここで、T間の熱抵抗(第1の熱抵抗の値)をRie、伝熱部2の内側部2aに生じる結露(水)の潜熱をL、測定空間S1内の空気の比熱をCpa、大気の全圧をP、大気の飽和水蒸気圧をPsとする。
【0076】
一方、伝熱部2内を内側部2aから外側部2bへ移動したあと外側部2bから外部空間S2に放出される熱量Qeoは、伝熱部温度Tと外部空間温度Tとによって決定され、T間の熱抵抗(第2の熱抵抗の値)をReoとすると、
【数3】

で表される。
【0077】
ここで、外側部2bを内側部2aよりも低温にして内側部2aを露点以下にして内側部2aに結露を生じさせたときに、伝熱部2において測定空間S1から伝熱部2へ入る顕熱Qieと結露によって伝熱部2に供給された潜熱Qieとを合わせた熱量が伝熱部2から外部空間S2に放出される熱量Qeoと等しくなるといった熱収支が測定空間S1の相対湿度に関係なく成り立つ。従って、Qie、Qie、Qeoの間には、
【数4】

で表される関係が成り立つ(図3参照)。
【0078】
そして、式(4)に上記の式(1)〜式(3)を代入して整理することにより、露点を求めるための関係式T1は、
【数5】

で表される。
【0079】
このように求められた関係式T1には、伝熱部2の種類や形状等によって異なり且つ露点Tの計測中に一つの伝熱部2から得られる各種温度等のデータからは導出することができない第1の熱抵抗の値Rieと第2の熱抵抗の値Reoとが含まれている。そのため、本実施形態の露点計では、演算や事前実験により第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを求め、これらの値を記憶部21(熱抵抗入力部23)に格納し、演算部24が自由に使用できるようにしておくことで、露点Tの測定の際に得られる温度データから露点Tを算出することを可能にしている。
【0080】
また、演算部24は、第1外面温度センサ4からの信号と第2外面温度センサ6からの信号とに基づいて、内側部2aにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度と外側部2bにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面温度との温度差を算出する。そして、演算部24は、この温度差を規定値と比較することにより、伝熱部2において完全にヒートパイプ現象が生じているか否かの判断を行う。
【0081】
出力部25は、演算部24の演算結果を受けて測定空間S1の露点Tを出力する。本実施形態の出力部25は、演算結果を表示するように構成される。尚、出力部25は、演算結果を表示する構成に限定されずに、液晶ディスプレイ等の外部の表示装置等に前記演算結果等を表示させるための信号を出力するように構成されてもよく、印字等によって出力するように構成されてもよい。
【0082】
このように構成される露点計では、以下のようにして測定空間S1の露点Tが測定される。
【0083】
記憶部21(詳しくは、熱抵抗入力部23)に第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoが格納されていない場合は、先ず、測定空間S1の露点Tを測定する前に、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを演算や事前実験によってそれぞれ求め、これを熱抵抗入力部23に入力(格納)する。一方、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoが既に格納されている場合は、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを入力することなく、次のステップに進む。
【0084】
伝熱部2の測定空間S1側の端部と外部空間S2側の端部とに温度差を形成する。具体的には、恒温恒湿槽101を駆動させ、測定空間温度Tを外部空間温度Tよりも高くする。これにより、伝熱部2の外側部2bが内側部2aよりも低温となり、伝熱部2の内側部2aの温度が露点以下となり内側部2aに測定空間S1中に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。このとき、伝熱部2にはヒートパイプ現象が生じる。詳しくは、内側部2aの外面における水分の凝縮に伴って発生する凝縮熱(潜熱)によって、内側部2a内の作動流体が蒸発し、気体状の作動流体が略音速で伝熱部2の外側部2bに向かって流れる。一方、外側部2bでは、外部空間S2が測定空間S1よりも低温であることに起因して気体状の作動流体が冷却されて凝縮し、凝縮することにより液体状となった作動流体が内側部2aに向かって流れる。このように伝熱部2内では、作動流体が所定の場所で蒸発と凝縮を繰り返すことにより、作動流体が蒸発するところから凝縮するところへ、作動流体の流動に伴って熱が輸送される。
【0085】
伝熱部2でヒートパイプ現象が完全に生じた状態になると、内側部2aの外面温度と外側部2bの外面温度との差が一定となるため、演算部24は、これを検出することにより伝熱部2でヒートパイプ現象が完全に生じているか否かを判断する。詳細には、演算部24は、第1外面温度センサ4からの信号と第2外面温度センサ6からの信号とに基づいて、内側部2aにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度と外側部2bにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面温度との温度差を算出し、この温度差が前記一定の温度差となっているか否かを確認する。
【0086】
一方、演算部24は、温度入力部22から、第1外面温度センサ4の検出結果を示す信号、即ち、伝熱部温度Tを表す信号と、測定空間温度センサ8の検出結果を示す信号、即ち、測定空間温度Tを表す信号と、外部空間温度センサ10の検出結果を示す信号、即ち、外部空間温度Tを表す信号と、を受け取ると共に、熱抵抗入力部23から第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを受け取る。前記の温度差によって伝熱部2でヒートパイプ現象が完全に生じていると確認されると、その後、演算部24は、熱抵抗入力部23からの第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoと、温度入力部22からの各信号が表す温度と、をそれぞれ関係式T1(式(5))に代入して演算し、これにより測定空間S1の露点Tを算出する。そして、出力部25が、演算部24によって算出された測定空間S1の露点Tを表示(出力)する。
【0087】
以上説明したように、第1実施形態の露点計によれば、伝熱部2の外側部2bの温度を内側部2aの温度より低温にして内側部2aに結露が生じた状態とすることにより、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから広い湿度範囲において露点Tを精度よく求めることができる。これは、内側部2aが結露した状態であれば測定空間S1の相対湿度に関係なく成り立つ伝熱部2の熱収支に基づく関係式T1(式(5))を用いて露点Tを算出するためである。
【0088】
また、当該露点計は、伝熱部2と、第1外面温度センサ4と、測定空間温度センサ8と、外部空間温度センサ10と、演算装置20とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。また、この露点計は、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。従って、本発明による露点計では、メンテナンスに係る作業負担を軽減しながら、構造を簡略化することができる。
【0089】
また、第1実施形態による露点計では、演算や事前実験によって第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを求めて記憶部21に格納しておけば、一つの伝熱部温度Tと、測定空間温度Tと、外部空間温度Tとから、広い湿度範囲における露点Tを精度よく求めることができる。即ち、本実施形態の露点計には、伝熱部2が一つ備えられていればよいため、当該露点計の構造を簡略にすることができる。
【0090】
また、第1実施形態による露点計では、熱抵抗の小さなヒートパイプを伝熱部2として用いることにより、応答性の優れた露点計が得られた。
【0091】
また、第1実施形態による露点計では、第1外面温度センサ4により伝熱部2の外面(表面)温度を検出しているため、伝熱部2の温度を当該伝熱部2の内部で検出する場合に比べ、伝熱部2の構造及び温度センサ4の構造を簡略化することができる。
【0092】
尚、第1実施形態による露点計では、第1外面温度センサ4によって伝熱部2における断熱部100に囲まれた部位(本実施形態では、測定空間S1側の端部近傍)の外面(表面)温度を検出しているが、伝熱部2の外面(表面)温度は、風等の外乱による影響を受け易いため、断熱壁100の中にある伝熱部2の表面温度を第1外面温度センサ4によって検出するようにし(図2及び図3の断熱壁100の中の第1外面温度センサ4参照)、このセンサ4により測定された温度を用いて露点Tを算出することにより、求められる露点Tにおいて外乱による誤差をさらに抑えることができる。
【0093】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態による露点計の機能を説明するためのブロック図であり、図5は、図4に示した露点計の各伝熱部における熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態による露点計の構成について説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0094】
本実施形態の露点計は、図4に示すように、複数(本実施形態では2本)の伝熱部2と、第1センサ部40と、第2センサ部60と、測定空間温度センサ8と、外部空間温度センサ10と、演算装置20aとを備えている。
【0095】
各伝熱部2は、第1実施形態同様に、ヒートパイプによってそれぞれ構成される。各伝熱部2は、測定空間S1と当該測定空間S1の外側の外部空間S2とに跨ってそれぞれ配置される。また、各伝熱部2は、第1センサ部40の第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗、及び第1センサ部40の第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部2と互いに異なるようにそれぞれ構成される。本実施形態では、伝熱部2の内側部2aの表面積と外側部2bの表面積とのうちの少なくとも一方が他の伝熱部2と互いに異なるようにそれぞれ構成される。具体的には、本実施形態の露点計には2つの伝熱部2,2が設けられている。これらの伝熱部2,2は、外径が同じで且つ長さが同じヒートパイプによってそれぞれ構成される。これら2つの伝熱部2,2は、差し込み長さ(即ち、測定空間S1内に位置する内側部2aの軸方向の長さ)が互いに異なるように配置される。これにより、2つの伝熱部2,2は、内側部2a,2a同士の表面積及び外側部2b,2b同士の表面積が互いに異なった状態となる。
【0096】
尚、2つの伝熱部2,2として外径が同じで長さの異なるヒートパイプが用いられ、内側部2aの長さ(測定空間S1内への差し込み長さ)が互いに異なる、又は同じになるように前記2つの伝熱部2,2が配置されてもよい。また、各伝熱部2の外径をそれぞれ異なる大きさにすることで、伝熱部2の内側部2aの表面積と外側部2bの表面積とのうちの少なくとも一方が他の伝熱部2と互いに異なるようにそれぞれ構成されてもよい。これらのように構成されても、内側部2aの表面積又は/及び外側部2bの表面積を互いに異なった状態とすることができる。
【0097】
第1センサ部40は、露点Tを求めるための演算に用いられる各伝熱部2の伝熱部温度Tを検出する部位である。この第1センサ部40は、複数の伝熱部2に対応する数の第1外面温度センサ4を有し、各第1外面温度センサ4は、各伝熱部2の内側部2aの端部近傍の外面にそれぞれ取り付けられる。そして、第1センサ部40は、各第1外面温度センサ4が取り付けられた部分の外面温度をそれぞれ検出してその検出結果に応じた信号を出力する。
【0098】
第2センサ部60は、各伝熱部2において完全にヒートパイプ現象が生じているか否かを判断するための温度を検出する部位である。この第2センサ部60は、複数の伝熱部2に対応する数の第2外面温度センサ6を有し、各第2外面温度センサ6は、各伝熱部2の外側部2bの端部近傍の外面にそれぞれ取り付けられる。そして、第2センサ部60は、各第2外面温度センサ6が取り付けられた部分の外面温度をそれぞれ検出してその検出結果に応じた信号を出力する。
【0099】
演算装置20aは、測定空間S1の露点Tを算出すると共に、この算出した露点Tを表示(出力)する。この演算装置20aは、各センサ8,10及び各センサ部40,60からの信号が入力され、これらを格納する温度入力部22と、露点Tを算出する演算部24aと、演算部24aでの演算結果を出力する出力部25と、を備える。
【0100】
温度入力部22は、第1センサ部40と第2センサ部60と測定空間温度センサ8と外部空間温度センサ10とに接続され、各センサ部40,60及び各センサ8,10からの信号を受け取り、これらの各信号を格納する部位である。
【0101】
演算部24aは、温度入力部22に格納された各信号が表す温度、即ち、第1センサ部40の各第1外面温度センサ4で検出された各伝熱部温度Tと、測定空間温度センサ8で検出された測定空間温度Tと、外部空間温度センサ10で検出された外部空間温度Tとから測定空間S1の露点Tを算出する。具体的に、演算部24aには、関係式T2が予め格納されており、当該演算部24aは、この関係式T2を用い、各伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから測定空間S1の露点Tを算出する。
【0102】
関係式T2は、内側部2aに結露が生じた状態の伝熱部2における熱収支に基づくものであり、以下のようにして求められる。
【0103】
複数(本実施形態では2つ)の伝熱部2において、以下のように、上記第1実施形態の関係式T1(式(5))がそれぞれ成り立つ。尚、以下では、各伝熱部2から得られる値を区別するために、一方の伝熱部2から得られた値には何も付けず、他方の伝熱部2から得られた値には右上に「´」の符号を付ける(例えば、一方の伝熱部2から得られた伝熱部温度を「T」とした場合、他方の伝熱部2から得られた伝熱部温度を「T´」とする)。
【数6】

【数7】

【0104】
また、図5に示されるように、伝熱部2の内側部2aの熱伝達率をh、伝熱部2の内側部2aの表面積をS、長さをL、伝熱部2の外側部2bの熱伝達率(ヒートパイプ内外の熱伝達率を合成した有効熱伝達率)をh、伝熱部2の外側部2bの表面積をS、長さをL、伝熱部2の外径をdとすると、第1の熱抵抗の値Rieと第2の熱抵抗の値Reoとの熱抵抗比Rie/Reoは、それぞれ
【数8】

【数9】

となる。
【0105】
ここで、伝熱部(ヒートパイプ)2内外の熱伝達率を合成した有効熱伝達率hは、
【数10】

で与えられる。尚、hciは、伝熱部(ヒートパイプ)2内部の熱伝達率、hcoは、伝熱部(ヒートパイプ)2外部の熱伝達率である。
【0106】
式(8)及び式(9)より、
【数11】

ここで、式(6)より、
【数12】

また、同様にして、式(7)より、
【数13】

これら式(12)及び式(13)を式(11)に代入すると、
【数14】

となる。この式(14)を
【数15】

とし、この式(15)に式(8)及び式(9)を代入してKを以下のように定義する。
【数16】

そして、式(15)において測定空間S1の露点がT1=T1’であることから
【数17】

となり、露点を求めるための関係式T2は、
【数18】

で表される。
【0107】
このように求められた関係式T2を用いて露点Tを求めるためには、複数の伝熱部温度T(T´)が必要であるが、関係式T2には上記第1実施形態の関係式T1(式(5))のように第1の熱抵抗の値Rieと第2の熱抵抗の値Reoとが含まれていないため、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを用いることなく、複数の伝熱部温度Tのデータを代入することにより露点Tを求めることができる。そのため、露点Tの測定前に予め演算や事前実験を行って第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを求めることなく、露点Tを測定することができる。尚、2つの伝熱部2において、(i)一方の伝熱部2の第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗、及び第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗と、(ii)他方の伝熱部2の第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗、及び第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗とが同じ場合には、式(6)と式(7)とが同一となり、式(18)を求めることができない。そのため、複数の伝熱部2を備える露点計においては、各伝熱部は、第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗、及び第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部2と互いに異なるようにそれぞれ構成されなければならない。
【0108】
また、演算部24aは、第1センサ部40からの信号と第2センサ部60からの信号とに基づいて、各内側部2aにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度と、前記内側部2aに対応する外側部2bにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面温度と、の温度差をそれぞれ算出する。そして、演算部24aは、各伝熱部2における前記の温度差を規定値とそれぞれ比較することにより、各伝熱部2において完全にヒートパイプ現象が生じているか否かの判断を行う。
【0109】
このように構成される露点計では、以下のようにして測定空間S1の露点Tが測定される。
【0110】
恒温恒湿槽101を駆動させ、測定空間温度Tを外部空間温度Tよりも高くすることにより、各伝熱部2の測定空間S1側の端部と外部空間S2側の端部とに温度差を形成する。これにより、各伝熱部2の外側部2bが内側部2aよりも低温となり、測定空間S1内に位置する各伝熱部2の内側部2aの温度がそれぞれ露点以下になって各内側部2aに測定空間S1に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。このとき、各伝熱部2にヒートパイプ現象がそれぞれ生じている。そして、演算部24aは、第1センサ部40からの信号と第2センサ部60からの信号とに基づいて、各伝熱部2における内側部2aにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度と外側部2bにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面温度との温度差をそれぞれ算出し、この算出される各温度差から各伝熱部2でヒートパイプ現象がそれぞれ完全に生じているか否かを判断する。
【0111】
一方、演算部24aは、温度入力部22から、第1センサ部40の各第1外面温度センサ4により検出された各伝熱部温度Tを表す信号と、測定空間温度センサ8により検出された測定空間温度Tを表す信号と、外部空間温度センサ10により検出された外部空間温度Tを表す信号とを受け取る。前記の温度差によって伝熱部2でヒートパイプ現象が完全に生じていると確認されると、その後、演算部24aは、温度入力部22からの各信号が表す温度をそれぞれ関係式T2(式(18))に代入して演算し、これにより測定空間S1の露点Tを算出する。そして、出力部25が、演算部24aによって算出された測定空間S1の露点Tを表示(出力)する。
【0112】
以上説明したように、第2実施形態の露点計によれば、第1実施形態の露点計と同様に、伝熱部2の外側部2bの温度を内側部2aの温度より低温にして内側部2aの温度を露点以下にして内側部2aに結露が生じた状態とすることにより、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから広い湿度範囲において露点Tを精度よく求めることができる。
【0113】
また、第2実施形態による露点計では、伝熱部2と、第1外面温度センサ4と、測定空間温度センサ8と、外部空間温度センサ10と、演算装置20aとにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。また、この露点計は、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。従って、本発明による露点計では、メンテナンスに係る作業負担を軽減しながら、構造を簡略化することができる。
【0114】
また、第2実施形態による露点計では、関係式T2(式(18))を用いて露点Tを求めるため、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを求めるための演算や事前実験を予め行うことなく、測定空間S1の露点Tを求めることができる。即ち、複数の伝熱部2の温度Tをそれぞれ検出してこれら各伝熱部温度Tを演算に用いることにより、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを用いなくても露点Tを算出することができる。尚、上記のように、複数の伝熱部2において、第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗、及び第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗が全て同じであれば、関係式T2(式(18))を求めることができない。そのため、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを用いずに関係式T2(式(18))を用いて露点Tを算出するためには、露点計は、複数の伝熱部2を備え、これら各伝熱部が、第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗、及び第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部2と互いに異なるように構成されていなければならない。
【0115】
尚、第2実施形態による露点計においても第1実施形態と同様に、伝熱部2における断熱部100に囲まれた部位(本実施形態では、測定空間S1側の端部近傍)の外面(表面)温度を検出しているが、伝熱部2の外面(表面)温度は、風等の外乱による影響を受け易いため、断熱壁100の中にある伝熱部2の表面温度を第1外面温度センサ4によってそれぞれ検出するようにし(図4及び図5の断熱壁100の中の各第1外面温度センサ4参照)、これら各センサ4,4により測定された温度をいて露点Tを算出することにより、求められる露点Tにおいて外乱による誤差をさらに抑えることができる。
【0116】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態による露点計の機能を説明するためのブロック図であり、図7は、図6に示した露点形の伝熱部本体における熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。次に、図6及び図7を参照して、本発明の第3実施形態による露点計の構成について説明するが、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0117】
この第3実施形態による露点計は、上記第1実施形態及び第2実施形態による露点計と異なり、伝熱部32において気体状の作動流体が凝縮する基側部34dを強制的に冷却するようになっている。具体的に、本実施形態による露点計は、伝熱部32と、第1外面温度センサ4と、第2外面温度センサ(第2部材温度検出部)6aと、測定空間温度センサ8と、断熱部16と、演算装置20bとを備えている。
【0118】
伝熱部32は、測定空間S1内と、この測定空間S1に対して断熱部16で隔てられた空間(外部空間)S3とに跨って配置される伝熱部本体34と、伝熱部本体34の空間S3内に位置する部位(基側部)34dを冷却する冷却手段36と、を有する。本実施形態では、伝熱部本体34は、ヒートパイプによって構成され、冷却手段36は、ペルチェ素子12と、接続部14と、を有する。
【0119】
ペルチェ素子12は、吸熱側と放熱側とを備え、入力電力に応じて吸熱側が吸熱動作を行うとともに放熱側が放熱動作を行う。そして、ペルチェ素子12の吸熱側が伝熱部本体34の基側部34dの端部に接続されている。ペルチェ素子12の吸熱側は、基側部34dを冷却して気体状の作動流体を凝縮させるための冷却部として機能する。このペルチェ素子12の吸熱側による冷却作用によって、基側部34dが測定空間S1に配置される先側部34cよりも低温に強制的に冷却されて伝熱部本体34で完全にヒートパイプ現象が生じるようになっている。一方、ペルチェ素子12の放熱側では、吸熱側との熱交換によって生じる熱を放出するようになっている。
【0120】
接続部14は、伝熱部本体34の基側部34dとペルチェ素子12とを互いに結合する。具体的に、この接続部14は、基側部34dとペルチェ素子12の吸熱側とを、互いにリジッドに結合しつつ互いに熱的に接続している。
【0121】
第1外面温度センサ4は、伝熱部本体34において作動流体が蒸発する先側部34cの端部近傍の外面に取り付けられている一方、第2外面温度センサ6aは、伝熱部本体34において気体状の作動流体が凝縮する基側部34dの端部近傍の外面に取り付けられている。ここで、先側部34cは、伝熱部本体34のうち、後述するように伝熱部本体34に外嵌される断熱部16に対して一方側となる部分であり、基側部34dは、伝熱部本体34のうち断熱部16に対して他方側となる部分である。
【0122】
本実施形態の第2外面温度センサ6aは、露点Tを求めるための演算に用いると共に伝熱部本体34でヒートパイプ現象が完全に生じているか否かの判断に用いる伝熱部本体34の温度を検出するセンサである。
【0123】
断熱部16は、伝熱部本体34の基側部34d、第2外面温度センサ6a、ペルチェ素子12及び接続部14の周りを覆うように設けられており、伝熱部本体34が挿通される貫通孔16aが設けられている。即ち、伝熱部本体34のうち先側部34cが測定空間S1の雰囲気下に位置しており、この先側部34cと断熱部16内の基側部34dとの間の位置で、断熱部16を構成する壁部の一部が伝熱部本体34に外嵌している。この断熱部16により、測定空間S1の温度に対して断熱部16内(空間S3)の温度を低温に保持できるようになっている。
【0124】
演算装置20bは、温度入力部22及び熱抵抗入力部23を含む記憶部21と、演算部24bと、出力部25と、ペルチェ素子12を制御する制御部26とを有している。
【0125】
本実施形態の熱抵抗入力部23には、第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の熱抵抗(第1の熱抵抗)の値Rieと、第1外面温度センサ4と第2外面温度センサ6aとの間の熱抵抗(第3の熱抵抗)の値Reo1とが入力(格納)される。
【0126】
演算部24bは、関係式T1(式(5))を有し、この関係式T1を用い、第1の熱抵抗の値Rie、第3の熱抵抗の値Reo1、伝熱部本体の温度T1、測定空間温度T、及び第2外面温度センサ6aにより検出された伝熱部2の外面(表面)温度T1から測定空間S1の露点Tを算出する。ここで、本実施形態の演算部24bでは、上記第1実施形態と異なり外部空間温度Tの代わりに伝熱部本体34の外面(表面)温度T1を用いて露点Tを求めるが、この場合でも、第2の熱抵抗の値Reoの代わりに第3の熱抵抗の値Reo1を用いることにより、上記第1実施形態の演算部24(図2参照)と同一の関係式T1を用いて露点Tの温度を精度よく求めることができる。
【0127】
制御部26は、演算部24bが第1外面温度センサ4からの信号と第2外面温度センサ6aからの信号とに基づいて算出した伝熱部本体34の外面温度の差、すなわち先側部34cにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度と基側部34dにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面温度との温度差に基づいてペルチェ素子12を制御する。具体的には、制御部26は、基側部34dの端部近傍の外面温度と先側部34cの端部近傍の外面温度との間に伝熱部本体34でヒートパイプ現象が完全に生じるような温度差が付くように、ペルチェ素子12の吸熱側の冷却能力を制御して基側部34dを冷却する。
【0128】
また、制御部26は、伝熱部本体34においてヒートパイプ現象が完全に生じていても、測定空間S1の相対湿度が低いために先側部34cに結露が生じない場合には、さらにペルチェ素子12の吸熱側の冷却能力を上げる。これにより、伝熱部本体34の温度が下がって結露し易くなるため、測定空間S1の相対湿度が低くても先側部34cに結露が生じ、これにより、露点Tを求めることが可能となる。即ち、伝熱部32が冷却手段36を有することで、当該露点計の測定可能な湿度範囲がより広がる。
【0129】
このように構成される露点計では、以下のようにして測定空間S1の露点Tが測定される。
【0130】
熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第3の熱抵抗の値Reo1が格納されていない場合は、先ず、測定空間S1の露点Tを測定する前に、第1の熱抵抗の値Rie及び第3の熱抵抗の値Reo1を演算や事前実験によってそれぞれ求め、これを熱抵抗入力部23に入力(格納)する。一方、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第3の熱抵抗の値Reo1が既に格納されている場合は、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第3の熱抵抗の値Reo1を入力することなく、次のステップに進む。
【0131】
第3実施形態による露点計では、伝熱部本体34の先側部34c、第1外面温度センサ4、測定空間温度センサ8が測定空間S1の雰囲気下に配置される。
【0132】
次に、第1外面温度センサ4から出力される信号と第2外面温度センサ6aから出力される信号とに基づいて演算部24bにより、伝熱部本体34の先側部34cの端部近傍の外面温度と基側部34dの端部近傍の外面温度との温度差が算出される。その後、この算出された温度差に基づいて制御部26がペルチェ素子12の吸熱側の冷却能力を制御する。この際、所定の温度差が基側部34dの端部近傍の外面温度と先側部34cの端部近傍の外面温度との間に付くように、基側部34dが冷却される。これにより、伝熱部本体34ではヒートパイプ現象が完全に生じ、伝熱部本体34の先側部34cの端部近傍、即ち、作動流体が蒸発する部分の外面に結露が生じる。
【0133】
この状態で、演算部24bが関係式T1(式(5))を用いて、熱抵抗入力部23に格納されている第1の熱抵抗の値Rie及び第3の熱抵抗の値Reo1と、温度入力部22に格納されている第1外面温度センサ4により検出された伝熱部本体34の先側部34cの外面(表面)温度T1、第2外面温度センサ6aにより検出された伝熱部本体34の基側部34dの外面(表面)温度T1、及び測定空間温度センサ8により検出された測定空間温度Tと、から測定空間S1の露点Tが算出される。このように算出された露点Tは、出力部25により表示される。
【0134】
尚、伝熱部本体34において、ヒートパイプ現象が完全に生じていても先側部34cに結露が生じない場合は、制御部26が、ペルチェ素子12の吸熱側の冷却能力を上げて伝熱部本体34の温度を下げて結露し易くする。これにより、測定空間S1の相対湿度が低くても先側部34cに結露が生じ、露点Tを測定することが可能となる。
【0135】
以上説明したように、第3実施形態による露点計では、伝熱部本体34の基側部34dの温度を先側部34cの温度より低温にして先側部34cの温度を露点以下にして先側部34cに結露が生じた状態とすることにより、伝熱部本体34の先側部34cの外面温度T1、伝熱部本体34の基側部34dの外面(表面)温度T1、及び測定空間温度Tから広い湿度範囲において露点Tを精度よく求めることができる。これは、先側部34cが結露した状態であれば測定空間S1の相対湿度に関係なく成り立つ伝熱部本体34の熱収支に基づく関係式T1を用いて露点Tを算出するためである。
【0136】
しかも、基側部34dの外面(表面)温度T1を用いて露点Tを算出することにより、気温(空間S3の気温)を用いて露点Tを算出する場合に比べ、誤差を抑えることができる。即ち、空間S3において伝熱部本体34から熱が放出されているため、空間S3において伝熱部本体34の周辺で検出した気温は、空間S3の温湿度条件や測定位置等によって変動するが、伝熱部本体34の外面(表面)温度T1は、前記空間S3の温湿度条件等による変動が少なく、そのため、この外面(表面)温度T1を用いて露点Tを算出することにより、求めた露点Tに含まれる誤差を抑えることができる。
【0137】
また、第3実施形態による露点計では、冷却手段36によって伝熱部本体34の温度を低下させることができ、これにより、当該伝熱部本体34に結露が生じ易くなって当該露点計の測定可能な湿度範囲が広がる。即ち、当該露点計では、先側部34cの表面に結露が生じた状態での先側部34cの外面(表面)温度T1、測定空間温度T、及び基側部34dの外面(表面)温度T1から露点Tを算出しているため、冷却手段36によって伝熱部本体34を結露し易くし、測定空間S1の相対湿度が低くても先側部34cに結露が生じるようにすることで、測定可能な湿度範囲を広くすることが可能である。
【0138】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態による湿度計の機能を説明するためのブロック図である。次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態による湿度計の構成について説明するが、上記第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0139】
本実施形態の湿度計は、測定空間S1内の相対湿度を測定するものであり、上記第1実施形態の露点計の演算装置20において、演算部24を露点演算部124とし、湿度演算部27を加えた構成を有する。具体的に、湿度計は、図8に示すように、伝熱部2と、第1外面温度センサ4と、第2外面温度センサ6と、測定空間温度センサ8と、外部空間温度センサ10と、演算装置(湿度導出装置)120とを備えている。
【0140】
演算装置120は、測定空間S1内の露点Tを算出すると共にこの露点Tに基づいて測定空間S1内の相対湿度Φを算出し、この算出した露点T及び相対湿度Φを表示(出力)する。この演算装置120は、各センサ4,6,8,10からの信号が入力される温度入力部22及び熱抵抗の値が入力される熱抵抗入力部23を含み、各種信号を格納する記憶部21と、露点Tを算出する露点演算部124と、露点演算部124で算出された露点Tに基づいて相対湿度Φを算出する湿度演算部27と、露点演算部124及び湿度演算部27での各演算結果を出力する出力部25aと、を備える。
【0141】
露点演算部124は、上記第1実施形態の演算部24(図2参照)と同様に構成され、関係式T1を有し、この関係式T1を用い、第1の熱抵抗の値Rie、第2の熱抵抗の値Reo、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから測定空間S1の露点Tを算出する。
【0142】
湿度演算部27は、露点演算部124により算出された露点Tから以下のようにして測定空間S1の相対湿度Φを算出する。
【0143】
湿度演算部27は、以下の式(19)に露点演算部124により算出された露点Tを代入して測定空間S1の絶対湿度Xを算出する。
【数19】

ここで、Pは、大気の全圧であり、Xは、第1外面温度センサ4で検出された温度Tから以下の式(20)で与えられる第1外面センサ4の部分の絶対湿度である。
【数20】

尚、Pvesは、第1外面温度センサ4の温度Tでの飽和水蒸気圧である。
【0144】
そして、湿度演算部27は、この絶対湿度Xから測定空間S1の水蒸気分圧Pviを以下の式(21)に基づき算出する。
【数21】

【0145】
湿度演算部27は、空気温度と飽和水蒸気圧との関係を示すテーブルを有し、このテーブルと式(21)により算出した水蒸気分圧Pviとから、以下の式(22)に基づいて測定空間S1の相対湿度Φを算出する。
【数22】

ここで、測定空間温度Tでの飽和蒸気圧をPvsとする。
【0146】
このように構成される湿度計では、以下のようにして測定空間S1の露点T及び相対湿度Φが測定される。
【0147】
上記第1実施形態と同様に、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoが格納されていない場合は、先ず、測定空間S1の相対湿度Φを測定する前に、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを演算や事前実験によってそれぞれ求め、これを熱抵抗入力部23に入力(格納)する。一方、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoが既に格納されている場合は、熱抵抗入力部23に第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoを入力することなく、次のステップに進む。
【0148】
恒温恒湿槽101を駆動させ、測定空間温度Tを外部空間温度Tよりも高くすることにより、各伝熱部2の測定空間S1側の端部と外部空間S2側の端部とに温度差を形成する。これにより、伝熱部2の外側部2bが内側部2aよりも低温となり、内側部2aの温度が露点以下となって内側部2aに測定空間S1中に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。このとき、伝熱部2にヒートパイプ現象が生じる。そして、露点演算部124は、第1外面温度センサ4からの信号と第2外面温度センサ6からの信号とに基づいて、内側部2aにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度と外側部2bにおいて気体状の作動流体が凝縮する部分の外面温度との温度差を算出し、この算出される温度差から伝熱部2でヒートパイプ現象がそれぞれ完全に生じているか否かを判断する。
【0149】
伝熱部2においてヒートパイプ現象が完全に生じていることが確認されると、上記第1実施形態と同様に、露点演算部124により関係式T1(式(5))を用いて、熱抵抗入力部23に格納されている第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoと、温度入力部22に格納されている伝熱部温度T及び測定空間温度Tと、から測定空間S1の露点Tが算出される。
【0150】
露点演算部124が測定空間S1の露点Tを算出すると、湿度演算部27がこの露点Tを用い、式(19)〜式(22)に基づいて測定空間S1の相対湿度Φを算出する。
【0151】
そして、出力部25aが露点演算部124によって算出された測定空間S1の露点Tと、湿度演算部27によって算出された測定空間S1の相対湿度とを表示する。
【0152】
以上説明したように、第4実施形態による湿度計では、伝熱部2の内側部2aの温度を外側部2bの温度より低温にして内側部2aの温度を露点以下にして内側部2aに結露が生じた状態とすることにより、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから広い湿度範囲において露点Tが精度よく求まるため、この露点Tに基づき相対湿度Φを精度よく求めることができる。即ち、演算によって露点Tから相対湿度Φを容易に且つ精度よく求めることができるため、測定空間S1の相対湿度Φに関係なく成り立つ伝熱部2の熱収支に基づく関係式T1を用い、伝熱部温度T、測定空間温度T、及び外部空間温度Tから測定空間S1の露点Tを精度よく求め、これに基づいて相対湿度Φを算出することにより、測定空間S1の相対湿度Φを精度よく求めることができる。
【実施例1】
【0153】
ここで、実際に行った測定結果について説明する。この測定では、測定空間の温度と相対湿度とを変化させつつ、即ち、測定空間の温湿度条件を変化させつつ、この測定空間の相対湿度を第4実施形態による湿度計を用いて測定した。また、同じ温湿度条件で、以下の構成の従来の湿度計を用いて測定空間の相対湿度を測定した。
【0154】
この従来の湿度計は、測定空間とその外側の外部空間とを断熱部(断熱壁)により隔てる恒温恒湿槽と、断熱部を貫通して測定空間と外部空間とに跨るように配置されるヒートパイプと、ヒートパイプの内側部位の表面温度を検出する外面温度検出部とを備える。そして、この従来の湿度計は、ヒートパイプの外側部位を冷却し、当該ヒートパイプの測定空間内に位置する内側部位の表面温度を測定空間の露点として検出し、この露点に基づき測定空間の相対湿度を導出する。
【0155】
これらの湿度計での測定結果を湿度の代わりに露点で示したものを図9に示す。
【0156】
この測定結果から、従来の湿度計による測定結果では、基準温度及び基準露点が小さいときには比較的誤差が少ないが、基準温度及び基準露点が大きくなるに伴って誤差が大きくなるのに対し、第4実施形態の湿度計による測定結果では、広い温湿度範囲において誤差が少ないことが確認できる。
【0157】
尚、本発明の露点計、湿度計、露点導出装置、湿度導出装置、露点測定方法、及び湿度測定方法は、上記第1実施形態〜第4実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0158】
湿度計の具体的構成は、上記第4実施形態の湿度計に限定されない。例えば、上記第2実施形態の露点計や上記第3実施形態の露点計における演算装置20a,20bに上記第4実施形態の湿度演算部27を加えた構成の湿度計でもよい。即ち、露点Tが求められれば、この露点Tから式(19)〜式(22)を用いて相対湿度Φを精度よく求めることができるため、関係式T1又はT2を用いて、伝熱部温度T(又はT1)、測定空間温度T、及び外部空間温度T(又は、伝熱部が冷却手段を備える場合には伝熱部本体34の基側部34dの外面(表面)温度T1)から露点Tを求めることができる露点計に湿度演算部27(図8参照)を加えた構成の湿度計であればよい。
【0159】
上記第3実施形態の露点計では、伝熱部本体34の基側部34dがペルチェ素子12等の冷却手段と共に断熱部16によって囲われているが、これに限定されず、空間S3が第1実施形態及び第2実施形態の外部空間S2と同様に解放された空間であってもよい。即ち、上記第1実施形態による露点計や上記第2実施形態による露点計において、ヒートパイプの外部空間S2内に位置する部位に冷却手段が設けられてもよい。これにより、第1及び第2実施形態による露点計の各伝熱部2を冷却して温度をより下げて結露し易くすることができるため、測定範囲をより広くすることができる。
【0160】
また、上記第3実施形態では、伝熱部本体34の基側部34dを冷却する手段としてペルチェ素子12が用いられているが、これに限定されない。例えば、冷却手段は、図10に示されるように、測定空間S1と外部空間S2とに跨って配置される伝熱部本体34の外部空間S2側に位置する部位(外側部)34bに設けられるヒートシンク等の放熱部材36aであってもよい。この放熱部材36aは、外部空間S2との接触面積を増やすことにより伝熱部本体34から外部空間S2へ熱が放出される際の熱抵抗の値Reoを小さくする放熱面を有する。このような放熱面を有する放熱部材36aを冷却手段として用いることで、冷却のための動力や電力を供給することなく伝熱部本体34を効果的に冷却することができる。また、冷却手段は、伝熱部本体34の外側部位34b(図10参照)に向けて送風する送風装置等であってもよい。かかる構成によっても、外側部位34bから放出される熱量を増加させ、伝熱部本体34全体の温度を下げることができる。
【0161】
また、冷却手段は、図11に示されるように、複数の伝熱部本体34を備えた露点計や湿度計において各伝熱部本体34をそれぞれ冷却可能に設けられてもよい。
【0162】
また、伝熱部本体34としてヒートパイプを用い、このヒートパイプ34の外部空間S2内に位置する部位に放熱部材36aを取り付ける場合、ヒートパイプ34の上端部が放熱部材36aよりも上方に突出するように取り付けるのが好ましい(図11参照)。このようにすることで、劣化等によりヒートパイプ34の内部に水素ガス等の非凝縮性ガスが発生してもこのガスが放熱部材よりも上方に突出した部位(ガス溜め部)37に溜まるため、測定精度への影響を抑制することができる。詳しくは、ヒートパイプ34において熱を外部空間S2に放熱する部位の内側に劣化により発生した非凝縮性のガスが徐々に溜まると、ヒートパイプ34から外部空間S2へ熱を放出するときの熱抵抗の値もそれに伴って徐々に変化する。そのため、露点T若しくは相対湿度Φの測定毎に第2の熱抵抗の値Reoを実測によって求めなければ、これら露点T及び相対湿度Φを精度よく求めることができなくなる。そこで、放熱に殆んど寄与しない部位である放熱部材36aが取り付けられた位置よりも上方の部位にガス溜め部37を設け、ここに非凝縮性のガスが発生したときにこのガスが溜まるようにすることで、劣化により非凝縮性のガスが発生しても第2の熱抵抗の値Reoの変化を抑えることができる。
【0163】
また、上記第1乃至第3実施形態の露点計及び上記第4実施形態の湿度計では、伝熱部2(又は、冷却手段を備える場合には伝熱部本体34)の温度Tとしてその外面(表面)に取り付けられた第1外面温度センサ4により外面(表面)温度を検出しているが、これに限定されず、伝熱部2(又は伝熱部本体34)の内部温度を検出するように構成されてもよい。具体的には、例えば、伝熱部2(又は伝熱部本体34)がヒートパイプで構成される場合、図12に示されるように、このヒートパイプ2を内管2iとその外側を囲む外管2oとを有する二重管構造とする。そして、内管2iと外管2oとの間の空間でヒートパイプ現象が生じるように作動流体を封入し、内管2i内に温度検出部材(図12においてはシース熱電対)4aを挿入する。このように構成することで、伝熱部2(又は伝熱部本体34)の内部温度(内管2iの管壁の温度)を検出することができる。
【0164】
また、上記第1乃至第3実施形態の露点計及び上記第4実施形態の湿度計では、伝熱部2(又は、冷却手段を備える場合には伝熱部本体34)の温度として、測定空間S1側の端部近傍の表面温度を検出しているが、伝熱部2(又は伝熱部本体34)であればどの位置の温度でもよい。但し、外面温度を検出する場合は、断熱部100を貫通している部位や、周囲を断熱部100に囲まれた測定空間S1(図2及び図4参照)内に位置する部位が好ましい。これは、伝熱部2(又は伝熱部本体34)において断熱部100に囲まれた部位の表面温度が外気温(外部空間S2の気温)や風等の外乱による影響を受け難いため、この部位の表面温度を伝熱部2(又は伝熱部本体34)の温度として検出し、これを用いて露点Tを算出することにより、求められた露点において外乱による誤差を抑えることができるからである。尚、上記第3実施形態に示すような第1の熱抵抗の値Rie及び第3の熱抵抗の値Reo1を用いて露点Tを求める露点計では、伝熱部本体34の測定空間S1内の部位又は断熱部16を貫通している部位の温度と、伝熱部本体34の空間S3(又は測定空間S1と外部空間S2とに跨って配置される場合には外部空間S2)内に位置する部位の外面(表面)温度とをそれぞれ検出するように各温度センサ4,6a(又は6)を配置しなければ、温度センサ4,6a(又は6)間の温度差が小さくなり過ぎ、有効な温度センサ4,6a(又は6)間の第3の熱抵抗の値Reo1が得られない。
【0165】
また、上記第2実施形態の露点計では、各ヒートパイプ(伝熱部)2における第1外面温度センサ4と測定空間温度センサ8との間の第1の熱抵抗の値Rie、及び第1外面温度センサ4と外部空間温度センサ10との間の第2の熱抵抗の値Reoのうちの少なくとも一方が他のヒートパイプ2と互いに異なったものとなるように、外径が同じで長さの異なる複数のヒートパイプが用いられているが、これに限定されない。例えば、図11に示されるように、同一形状のヒートパイプ34に放熱面の面積が異なる放熱部材36aをそれぞれ取り付けることにより、各ヒートパイプ34における第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoのうちの少なくとも一方が他のヒートパイプ34と互いに異なったものとなるようにしてもよい。
【0166】
上記第1乃至第3実施形態の露点計及び上記第4実施形態の湿度計では、伝熱部2(又は、冷却手段を備える場合には伝熱部本体34)は、断熱部100に対して固定されているが、図13に示されるように、伝熱部2(又は伝熱部本体34)の軸方向に沿って相対変位可能に断熱部100に支持されてもよい。かかる構成によれば、伝熱部2(又は伝熱部本体34)を断熱部100に対して相対変位させることによって伝熱部2(又は伝熱部本体34)における内側部2aの表面積と外側部2bの表面積とを変更することができ、これにより、測定できる湿度範囲や応答性を調整することが可能となる。即ち、相対変位させて内側部2aの表面積及び外側部2bの表面積を変えることで、第1の熱抵抗の値Rie及び第2の熱抵抗の値Reoをそれぞれ変化させ、これにより、測定できる湿度範囲や応答性を調性することができる。
【0167】
上記第2実施形態の露点計では、複数の伝熱部2として2つの伝熱部2,2が配置されているが、3つ以上の伝熱部2,2、…が配置されてもよい。この場合、各伝熱部2,2,…は、内側部2aの長さ(表面積)と外側部2bの長さ(表面積)とが互いに異なるように断熱部100に設けられる。そして、任意の2本の伝熱部2,2を用いて露点Tを求め、前記の2本の伝熱部2,2と少なくとも1本が異なる2本の伝熱部2,2を用いて露点を求め、これを繰り返して求めた複数の露点の平均をとってこれを測定空間S1の露点Tとすることにより、より精度よく測定空間S1の露点Tを求めることが可能となる。
【符号の説明】
【0168】
2 伝熱部
2a 内側部(伝熱部の測定空間内に位置する部位)
2b 外側部(伝熱部の外部空間内に位置する部位)
4 第1外面温度センサ(部材温度検出部/第1部材温度検出部)
6a 第2外面温度センサ(第2部材温度検出部)
8 測定空間温度センサ(測定空間温度検出部)
10 外部空間温度センサ(外部空間温度検出部)
20,20a,20b 演算装置
21 記憶部
24,24a,24b 演算部
27 湿度演算部
34 伝熱部本体
36 冷却手段
16,100 断熱部
120 演算装置
124 露点演算部
eo 伝熱部から放出される熱の熱量
ie 伝熱部に入る顕熱の熱量
ie 結露により伝熱部に供給される潜熱の熱量
eo 第2の熱抵抗の値
ie 第1の熱抵抗の値
S1 測定空間
S2 外部空間
S3 空間(外部空間)
露点
1,T2 伝熱部温度、測定空間温度、及び外部空間温度と、露点との関係式
伝熱部の温度
測定空間の温度
外部空間の温度
1 伝熱部の外側部又は基側部の外面(表面)温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定空間の露点を測定するための露点計であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部と、
前記伝熱部の温度を検出する部材温度検出部と、
前記測定空間の温度を検出する測定空間温度検出部と、
前記外部空間の温度を検出する外部空間温度検出部と、
前記測定空間の露点を算出する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記部材温度検出部により検出される前記伝熱部の温度と前記測定空間温度検出部により検出される前記測定空間の温度と前記外部空間温度検出部により検出される前記外部空間の温度とから前記測定空間の露点を算出する露点計。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記部材温度検出部の温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の第1の熱抵抗の値、及び前記部材温度検出部の温度検出部位と前記外部温度検出部の温度検出部位との間の第2の熱抵抗の値をそれぞれ格納可能な熱抵抗記憶部と、
前記伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記熱抵抗記憶部に格納された第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値、前記部材温度検出部により検出される伝熱部の温度、前記測定空間温度検出部により検出される測定空間の温度、及び前記外部空間温度検出部により検出される外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算部と、を備える請求項1に記載の露点計。
【請求項3】
前記伝熱部を複数備え、
前記部材温度検出部は、各伝熱部の温度をそれぞれ検出し、
前記演算装置は、前記伝熱部における熱収支に基づく関数を用いて、前記部材温度検出部により検出される各伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出し、
各伝熱部は、前記部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗、及び前記部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位と前記外部温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部と互いに異なるようにそれぞれ構成される請求項1に記載の露点計。
【請求項4】
前記伝熱部は、ヒートパイプである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露点計。
【請求項5】
前記部材温度検出部は、前記伝熱部の表面温度を検出する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露点計。
【請求項6】
前記断熱部は、前記測定空間を外側から囲み、
前記伝熱部は、前記断熱部の所定部位を貫通することにより前記測定空間と前記外部空間とに跨るように配置され、
前記部材温度検出部は、前記伝熱部における前記断熱部を貫通する部位又は前記測定空間内に位置する部位の表面温度を検出する請求項5に記載の露点計。
【請求項7】
前記伝熱部は、前記測定空間と前記外部空間とに跨って配置される伝熱部本体と、
前記伝熱部本体の外部空間内に位置する部位を冷却する冷却手段と、を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の露点計。
【請求項8】
前記冷却手段は、ヒートシンクである請求項7に記載の露点計。
【請求項9】
前記断熱部は、当該断熱部を挟んで前記測定空間から前記外部空間に向う方向に沿って前記伝熱部を相対変位可能に支持する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露点計。
【請求項10】
測定空間の露点を測定するための露点計であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部と、
前記伝熱部の前記断熱部と対応する部位又は前記測定空間内に位置する部位の温度を検出する第1部材温度検出部と、
前記伝熱部の前記外部空間内に位置する部位の表面温度を検出する第2部材温度検出部と、
前記測定空間の温度を検出する測定空間温度検出部と、
前記測定空間の露点を算出する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記第1部材温度検出部により検出される前記伝熱部の温度、前記第2部材温度検出部により検出される前記伝熱部の表面温度、及び前記測定空間温度検出部により検出される前記測定空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点計。
【請求項11】
前記演算装置は、
前記第1部材温度検出部の温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の第1の熱抵抗の値、及び前記第1部材温度検出部の温度検出部位と前記第2部材温度検出部の温度検出部位との間の第2の熱抵抗の値をそれぞれ格納可能な熱抵抗記憶部と、
前記伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記熱抵抗記憶部に格納された第1の熱抵抗の値及び第2の熱抵抗の値、前記第1部材温度検出部により検出される伝熱部の温度、前記第2部材温度検出部により検出される伝熱部の表面温度、及び前記測定空間温度検出部により検出される測定空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算部と、を備える請求項10に記載の露点計。
【請求項12】
前記伝熱部を複数備え、
前記第1部材温度検出部は、各伝熱部の前記断熱部と対応する部位の温度又は前記測定空間内に位置する部位の温度をそれぞれ検出し、
前記第2部材温度検出部は、各伝熱部の前記外部空間内に位置する部位の表面温度をそれぞれ検出し、
前記演算装置は、前記伝熱部の熱収支に基づく関数を用いて、前記第1部材温度検出部により検出される各伝熱部の温度、前記第2部材温度検出部により検出される各伝熱部の表面温度、及び前記測定空間の温度から前記測定空間の露点を算出し、
各伝熱部は、前記第1部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位と前記測定空間温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗、及び前記第1部材温度検出部の当該伝熱部における温度検出部位とこの温度検出部位に対応する前記第2部材温度検出部の温度検出部位との間の熱抵抗のうちの少なくとも一方が他の伝熱部と互いに異なるようにそれぞれ構成される請求項10に記載の露点計。
【請求項13】
測定空間の相対湿度を測定するための湿度計であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部と、
前記伝熱部の温度を検出する部材温度検出部と、
前記測定空間の温度を検出する測定空間温度検出部と、
前記外部空間の温度を検出する外部空間温度検出部と、
前記測定空間の露点を算出する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記部材温度検出部により検出される前記伝熱部の温度、前記測定空間温度検出部により検出される前記測定空間の温度、及び前記外部空間温度検出部により検出される前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点演算部と、前記露点演算部により算出される露点に基づいて相対湿度を算出する湿度演算部と、を有する湿度計。
【請求項14】
測定空間の露点を算出する露点導出装置であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度がそれぞれ入力される温度入力部と、
前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記温度入力部に入力された前記伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算部と、
前記演算部での演算結果を出力する出力部と、を有する露点導出装置。
【請求項15】
測定空間の相対湿度を算出する湿度導出装置であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度がそれぞれ入力される温度入力部と、
前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を有し、この関係式を用いて、前記温度入力部から入力された前記伝熱部の温度、前記測定空間の温度、及び前記外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点演算部と、
前記露点演算部により算出される露点に基づいて前記測定空間の相対湿度を算出する湿度演算部と、
前記相対湿度演算部での演算結果を出力する出力部と、を有する湿度導出装置。
【請求項16】
測定空間の露点を測定する方法であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部を用い、
前記伝熱部の測定空間内に位置する部位が結露するように、前記外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にする温度調整工程と、
前記温度調整工程後の前記伝熱部の温度を測定する伝熱部測定工程と、
前記温度調整工程後の前記測定空間の温度を測定する測定空間測定工程と、
前記温度調整工程後の前記外部空間の温度を測定する外部空間測定工程と、
前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記伝熱部測定工程で測定された伝熱部の温度、前記測定空間測定工程で測定された測定空間の温度、及び前記外部空間測定工程で測定された外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する演算工程と、を備える露点測定方法。
【請求項17】
測定空間の相対湿度を測定する方法であって、
前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置される伝熱部を用い、
前記伝熱部の測定空間内に位置する部位が結露するように、前記伝熱部の外部空間内に位置する部位の温度を測定空間内に位置する部位の温度より低温にする温度調整工程と、
前記温度調整工程後の前記伝熱部の温度を測定する伝熱部測定工程と、
前記温度調整工程後の前記測定空間の温度を測定する測定空間測定工程と、
前記温度調整工程後の前記外部空間の温度を測定する外部空間測定工程と、
前記測定空間内に位置する部位に結露が生じた状態の伝熱部における熱収支に基づく関係式を用い、前記伝熱部測定工程で測定された伝熱部の温度、前記測定空間測定工程で測定された測定空間の温度、及び前記外部空間測定工程で測定された外部空間の温度から前記測定空間の露点を算出する露点算出工程と、
前記露点算出工程で算出された露点に基づいて相対湿度を算出する湿度算出工程と、を備える湿度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−83206(P2012−83206A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229620(P2010−229620)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】