説明

静圧スライダ

【課題】 可動体の位置補正機能をより向上させた静圧スライダを提供する。
【解決手段】
静圧スライダ(1)は、固定体(2)と可動体(3)とを備え、可動体(3)は、該可動体(3)と固定体(2)との間の隙間(4)に供給される流体を介して固定体(2)に沿って相対移動可能である。固定体(2)および可動体(3)の一方は、隙間(4)に供給される流体が通過する貫通孔(5)を有する。貫通孔(5)の少なくとも一部は、隙間(4)における流体の圧力に応じて径が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定体と可動体とを有し、固定体と可動体との間に流体が供給されると、固定体に対して可動体が移動可能になる静圧スライダに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、ウェハやマスク等を搬送するためにステージと呼ばれる搬送装置が用いられている。ステージには、その種類の一つとして、静圧スライダがある。静圧スライダは、固定体と可動体との間に供給される流体を介して、可動体を固定体に接触させることなく一定方向に移動させることができる。これにより、摩擦が小さく、運動精度が良好であるといった長所をもつ。
【0003】
一方、静圧スライダは、一般的に、剛性が小さいという欠点がある。剛性とは、荷重変化に対する可動体の偏心しにくさのことである。この剛性を高める一つの手法として、可変絞り機構が提案されている。例えば、特許文献1には、軸受面に給気する貫通孔が配置された軸受本体と、軸受け面と反対側の平面との間に絞り隙間を形成して配置された可変絞り機構とを有する静圧軸受装置が開示されている。また、特許文献1には、この可変絞り機構が、軸受け面と反対側の平面に対向し、シーリングを兼ねたOリングにより保持されて中心に絞り隙間に吸気する貫通孔が設けられた絞り円板と、この絞り円板を支持する円形板バネとを備え、絞り隙間における空気の流れを広がり流れとして絞り円板の角度変位に復元力が与えられるようにした、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−53640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された静圧軸受装置では、可変絞り機構の絞り円板とOリングとの間に摺動抵抗が存在するため、絞り隙間が変動しても絞り円板が動作しない不感帯が生じる恐れがある。このように不感帯が生じると、軸受装置が支持する可動体の位置が変動しても、それを適切に補正することができないという問題が生じる。
【0006】
よって、可動体の位置補正機能をより向上させた静圧スライダが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による静圧スライダは、固定体と可動体とを備え、前記可動体は、該可動体と前記固定体との間の隙間に供給される流体を介して前記固定体に沿って相対移動可能である静圧スライダであって、前記固定体および前記可動体の一方は、前記隙間に供給される前記流体が通過する貫通孔を有し、該貫通孔の少なくとも一部は、前記隙間における前記流体の圧力に応じて径が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様による静圧スライダは、可動体の位置が変動しても、それを適切に補正することができ、位置補正機能が向上した静圧スライダを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による静圧スライダの構成例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のx−x線における断面図である。
【図2】(a)は、図1の可変絞り機構の拡大上面図であり、(b)は、可変絞りの内径が大きい場合の図1の可変絞り機構の拡大断面図である。
【図3】可変絞りの内径が小さい場合の可変絞り機構の拡大断面図である。
【図4】従来の静圧スライダと本実施の形態による静圧スライダの剛性を示すグラフである。
【図5】従来の静圧スライダと本実施の形態による静圧スライダの位置再現性及び応答性を示すグラフである。
【図6】従来の静圧スライダの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態による静圧スライダについて、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、静圧スライダは、固定体2と可動体3とを有する。可動体3は、固定体2に対して相体移動可能である。固定体2は、軸体であり、可動体3は、筒体である。可動体3は、軸体を囲繞するように配置される。可動体3を固定体2に対して配置すると、軸体の外周面(第1表面2a)と、筒体の内周面(第2表面3a)とが対向し、それらの間に隙間4が形成される。可動体3は、その隙間4に供給される流体を介して、第1表面2aに沿って相対移動が可能である。
【0012】
また、可動体3は、隙間4に供給される流体が通過する貫通孔5を有する。貫通孔5の一方の開口5aは、可動体3の外表面に設けられ、外部から貫通孔5に流体を供給する供給口として作用する。貫通孔5の他方の開口5bは、可動体3の隙間4に接する第2表面3aに設けられ、隙間4に対して流体が排出される排出口として作用する。
【0013】
図1〜図3に示すように、貫通孔5は、その一部が隙間4における流体の圧力に応じて、その径が変化する。具体的な構成は以下の通りである。
【0014】
可動体3は、内部に貫通孔5の一部の径を変化させる可変絞り6を備える。可変絞り6は、環状の弾性体7を有する。この環状の弾性体7は、貫通孔5の一部を構成し、弾性体7の内径(絞り内径)を変化させると、貫通孔5の径が変化するようになっている。この弾性体7は、例えば、ステンレス、銅、チタン、ジルコニア、および炭化珪素から選択される少なくとも1種からなる。また、弾性体7の内径は、例えばφ0.1〜0.5mmであり、肉厚は0.02〜0.1mmである。なお、本実施形態による静圧スライダ1において、弾性体7は貫通孔5の一部を構成しているが、貫通孔5の全部を構成していてもよい。その場合、貫通孔5の内周面は、環状の弾性体7の内周面に相当する。
【0015】
可動体3は、隙間4と弾性体7との間に設けられて隙間4に連通した連通孔8を有する。
すなわち、連通孔8は、隙間4と弾性体7とを接続する孔部であり、これによって隙間4における流体の圧力が弾性体7に伝わる。弾性体7は、隙間4における流体の圧力が連通孔8を介して伝わることにより、流体によって押圧されると、その内径が変化する。
【0016】
なお、連通孔8は、弾性体7の近傍において他の部位よりも径が大きいことが好ましい。このように径が大きい場合には、流体によって弾性体7をより広い面積で押圧することができ、流体の圧力変化に対して、弾性体7の内径をより確実に、より応答性良く変化させることが可能になる。
【0017】
より好ましくは、連通孔8の径を弾性体7の近傍において他の部位よりも大きくし、弾性体7の周囲に圧力部屋となる空洞部8aを設けることが好ましい。このように空洞部8
aを設けると、流体の圧力変化に対して、弾性体7の内径をより確実に、より応答性良く変化させることが可能になる。
【0018】
このような貫通孔5等を有する可動体3は、セラミックス又は金属からなる筒体に穴あけ加工を施して、貫通孔5および連通孔8を形成することにより得られる。セラミックスの例としては、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素等が挙げられ、金属の例としては、アルミニウム、ステンレス、チタン等が挙げられる。可動体3の内部に可変絞り6となる弾性体7を設ける方法としては、可動体3となる筒体に貫通孔5となる孔部を設けて、その孔部から弾性体7を挿入し、弾性体7を孔部の内壁に接着剤によって接着すればよい。または、筒体に、貫通孔5と交差する、弾性体7を挿入するための孔部を別途設けて、弾性体7を挿入した後、その孔部の開口部を接着剤によって封止してもよい。
【0019】
なお、固定体2となる軸体も、セラミックス又は金属からなってよい。固定体2についても、セラミックスの例としては、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素等が挙げられ、金属の例としては、アルミニウム、ステンレス、チタン等が挙げられる。
【0020】
次に、可変絞り6の動作について説明する。なお、図2,図3に示す矢印は、流体の流れる方向を示している。まず、(1)可動体3に大きな荷重がかかる等して、固定体2と可動体3との間の隙間4が小さくなった場合について説明する。固定体2と可動体3との間の隙間4が小さくなると、隙間4における流体の圧力が上昇し、その圧力が、連通孔8を介して弾性体7に伝達される。このとき、弾性体7の内径は、図3に示すように小さくなる。弾性体7の内径が小さくなると、貫通孔5の排出口5bにおける流体の圧力が上昇し、貫通孔5から圧力の高い流体が排出される。この流体は、可動体3が固定体2から離れるように、すなわち、可動体3の位置を元に戻すように作用する。
【0021】
次に、(2)固定体2と可動体3との間の隙間4が大きくなった場合について説明する。固定体2と可動体3との間の隙間4が大きくなると、隙間4における流体の圧力が低下して、その圧力が連通孔8を介して弾性体7に伝達される。これにより、弾性体7の内径が大きくなる(元に戻る)と、貫通孔5の排出口5bにおける流体の圧力が低下し、貫通孔5から圧力の低い流体が排出される。この流体は、可動体3が固定体2に近づくように、すなわち、可動体3の位置を元に戻すように作用する。
【0022】
以上により、本実施の形態による静圧スライダ1によれば、隙間4における流体の圧力に応じて貫通孔5の径が変化し、その結果、貫通孔5から排出される流体の圧力が変化する。この圧力変化によって、可動体3の位置が補正される。
【0023】
なお、隙間4における流体の圧力の変化を、貫通孔5から排出される流体の圧力に、より確実に反映させるという点では、可変絞り6は、排出口5b近傍に設けられることが好ましい。しかし、一方で、排出口5bから排出される流体の圧力を増すという点では、流体を2段階で絞ることが好ましいため、可変絞り6と排出口5bとの間に貫通孔5の径が大きい部位である圧力調整部9を設けてもよい。これにより、可変絞り6から噴出した流体が圧力調整部9を経てさらに排出口5bによって絞られるため、隙間4に排出される流体の圧力をより高くすることができる。
【0024】
なお、貫通孔5から排出される流体の圧力については、弾性体7の特性、すなわち押圧力と内径変化の大きさとの関係、弾性体7付近での連通孔8の径の大きさ、貫通孔5の排出口5bの大きさ等によっても適宜調整可能である。
【0025】
本実施の形態による静圧スライダ1によれば、隙間4の変動に対して不感帯の発生を抑
制することができるため、可動体3の位置が変動してもそれを適切に補正することができ、可動体3の位置補正機能を向上させることができる。
【0026】
また、静圧スライダ1は、隙間4の間隔が変動してからその補正までの間に長時間を要しないため、応答性が高くなり、高速な応答が要求される装置に使用できる。なお、Oリングを使用した従来の静圧スライダでは、摺動抵抗によって絞り円板の応答性が低下することから、可動体が偏心したときに復元させるまでの時間が長くなるという問題があるが、本実施の形態による静圧スライダ1は、このような問題を解決することができる。
【0027】
また、本実施の形態による静圧スライダ1では、可変絞り6を簡易な構成で実現できるため、製作コストを低減できる。
【0028】
なお、本実施の形態による静圧スライダ1には、図示していないが、可動体3の固定体2を挟んで対向する部位にそれぞれ可変絞り6が設けられている。具体的に、図1に示す静圧スライダ1の可動体3は、角柱状の筒体であって、4つの平板によって構成することができる。この場合、固定体2を挟んで対向する平板(説明のために「第1の平板」および「第2の平板」とする。)にそれぞれ可変絞り6を設けるとよい。このとき、可動体3の位置が変動して、第1の平板と固定体2との間の隙間4が小さくなり、第2の平板と固定体2との間の隙間4が大きくなると、第1の平板に設けられた可変絞り6は、上記(1)で説明したように、隙間4を大きくするように働き、第2の平板に設けられた可変絞り6は、上記(2)で説明したように隙間4を小さくするように働く。これにより、可動体2の位置をより精度良く補正することができる。
【0029】
以上のことから、4つの平板に可変絞り6をそれぞれ設けることにより、可動体3が上下左右方向に変動しても、これを精度良く補正することができる。
【0030】
また、可変絞り6は、図1に示すように、可動体3の移動方向に沿って両端部にそれぞれ設けられていることが好ましい。このように両端部に設けることにより、可動体3は、移動方向における両端部において、固定体2との隙間4の間隔を補正するため、可動体3の安定した移動が可能になる。また、本実施の形態による静圧スライダ1においては、可動体3の長手方向における両端部に可変絞り6を設けることになるため、可動体3に偏荷重がかかり、可動体3の上記両端部において隙間4の間隔が異なっても、それぞれ独立して間隔4を補正することが可能になり、可動体3の位置補正効果が向上する。
【0031】
また、上述のように可動体3を4つの平板によって構成することができる場合、それぞれの平板について、可動体3の移動方向の両端部、および移動方向に垂直な方向における両端部にそれぞれ可変絞り6を設けると、可動体3をより安定して移動させることが可能になる。例えば、図1に示すように、矩形状の平板の4つの隅に可変絞り6を設けると、可動体3をより安定して移動させることができる。
【0032】
以下に、本実施の形態による静圧スライダ1の製造方法の一例について説明する。まず、可動体3の製造方法は以下のとおりである。なお、ここでは、可動体3を4つの平板によって構成する場合を説明する。(a)可動体3を構成する1つの平板状のセラミック焼結体に、貫通孔5の可動体の移動方向に沿って延在する部位を形成する。具体的には、平板状のセラミック焼結体の側面から穴あけ加工を行うことにより、上記部位となる孔部(以下、「第1孔部」ともいう。)を形成する。次に、(b)上記セラミック焼結体の一方の主面(第1主面)から他方の主面(第2主面)に向かって、第1孔部のセラミック焼結体の内部に存在する端部に接続されるように、貫通孔5の一部となる孔部(以下、「第2孔部」ともいう。)を形成する。第2孔部は、第1主面と第2主面の間でセラミック焼結体を貫通する。なお、ここでは、第2主面は、第2表面3aとなる。
【0033】
次に、(c)セラミック焼結体の第2主面から穴あけ加工を行い、第2孔部に接続される連通孔8を形成する。ここで、空洞部8aを形成する場合は、第2孔部を形成する際、又は連通孔8を形成する際のいずれかの場合に同時に形成することができる。さらに、(e)セラミック焼結体の第1主面から第2孔部に可変絞り6となる弾性体7を挿入し、弾性体7の外周面の一部を第2孔部の内壁に接着する。弾性体7は、アルミニウム、ステンレス、又はチタン等の金属であってよい。そして、(f)第2孔部の第1主面における開口部を封止する。このとき、第2孔部のうち貫通孔5を構成しない部位については、接着剤を充填して封止する。最後に、貫通孔5等が形成された4つの平板を接着剤にて接着し、筒状の可動体3を構成する。
【0034】
固定体2は、セラミック焼結体からなる軸体を準備することにより得られ、可動体3を固定体2を囲繞するように配置することにより、静圧スライダ1が得られる。
【0035】
また、本実施の形態による静圧スライダ1は、剛性が比較的高い。ここで、剛性とは、上述したように、荷重変化に対する可動体3の偏心しにくさのことである。図4は、Oリングを使用した従来の静圧スライダと本実施の形態による静圧スライダ1のそれぞれについて剛性と上記隙間4との関係を示したグラフである。具体的には、以下のように条件を設定し、シミュレーションを行うことで剛性を測定した。本実施の形態による静圧スライダ1としては、矩形状の軸体である固定体2に、角柱状の筒体である可動体3を配置したものと仮定した。固定体2は、長さ150mm、断面50mm角の軸体とし、可動体3は、長さ100mm、幅50mmの矩形状の4つの平板を組み合わせた筒体とした。可動体3の各平板の中央部に、貫通孔5および可変絞り6を1つずつ設けるものとした。この貫通孔5に給気圧力0.4MPaの圧縮空気を供給し、可動体3を浮上させるものとした。また、貫通孔5の排出口の内径はφ0.3mm、可変絞り6の内径は、押圧力がない状態でφ0.5mmと設定した。
【0036】
従来の静圧スライダとしては、図6の構成において、排出口25a、25bをφ0.6mm、Oリング32の外径をφ6mm、太さ1mm、弾性ヒンジ36の外径をφ4mm、弾性ヒンジの排出口の内径をφ0.2mm、弾性ヒンジ36と軸受本体との隙間hrを10.5mmと設定した。
【0037】
このような2つの静圧スライダの可動体の上面に重量の異なる荷重(負荷)を載せたと仮定してシミュレーションを行い、可動体が下方向に変位する量を計算した。なお、図6の構成において、可動体とはスラスト軸のことであり、荷重はWで示される。
【0038】
図4では、剛性を、隙間4を1μm狭くするのに必要な負荷の重量の大きさで示した。すなわち、いずれの静圧スライダも、絞り機構により可動体2の位置を補正する効果があるが、可動体2に負荷をかけて隙間4が1μm以上狭くなった場合には、もはや絞り機構による上記補正効果は働いていないものとみなし、隙間4が1μm狭くなる場合の負荷の大きさを剛性として示した。すなわち、図4のグラフは、それぞれの静圧スライダにおいて、上記補正効果が得られる負荷の大きさの限界値を示している。
【0039】
図4に示すように、両者とも、隙間が4μmのときに剛性が最大であった。具体的に、従来の静圧スライダでは、隙間が4μmのときに、剛性(負荷の大きさ)の値が200N/μmであるのに対し、本実施形態による静圧スライダ1では、剛性の値は400N/μmであった。
【0040】
この結果により、従来の静圧スライダの可変絞り機構が正常に働くのは負荷の大きさが200Nまでであるのに対し、本実施の形態による静圧スライダ1は、負荷が400Nか
かるまで可変絞り機構が正常に働き、可動体1の位置補正機能が向上していることがわかった。
【0041】
さらに、図5は、静圧スライダの応答性と再現性を示すグラフである。ここで、再現性とは、可動体が変動した場合に、その変動をどれだけ補正することができるかを示す。具体的には、従来の静圧スライダと本実施の形態による静圧スライダ1のそれぞれについて、固定体と可動体の隙間を4μmにした後、可動体に400Nの負荷をかけて取り外した時の可動体の上下方向に変位する量を計算した。図5の横軸は、負荷をかけてからの時間の経過と可動体の変位との関係を示している。図5の横軸の1.4秒の時点で負荷を外した。図5に示すように、従来例は、負荷を外してから可動体が元の位置に戻るまでの応答時間が約1秒(1.4〜2.4sec)であるのに対し、本実施の形態による静圧スライダ1は、応答時間が約0.1秒(1.4〜1.6sec)であることがわかった。また、可動体が最終的に安定したときの変位量として表される再現性は、従来例が0.4μm(2.2sec以降の変位量)であるのに対し、本実施の形態による静圧スライダ1は0.04μm(1.6sec以降の変位量)であった。なお、可動体が最終的に安定したときの変位量が小さいほど、負荷をかける直前からの変位量が小さいということであるから、再現性が優れているといえる。
【0042】
以上により、従来例では、Oリングを使用しているため、応答時間が短く、再現性も悪いと考えられるのに対し、本実施の形態による静圧スライダ1は、このような問題が改善されていることがわかった。
【符号の説明】
【0043】
1:静圧スライダ
2:固定体
3:可動体
4:隙間
5:貫通孔
6:可変絞り
7:弾性体
8:連通孔
8a:空洞部
9:圧力調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と可動体とを備え、前記可動体は、該可動体と前記固定体との間の隙間に供給される流体を介して前記固定体に沿って相対移動可能である静圧スライダであって、
前記固定体および前記可動体の一方は、前記隙間に供給される前記流体が通過する貫通孔を有し、該貫通孔の少なくとも一部は、前記隙間における前記流体の圧力に応じて径が変化することを特徴とする静圧スライダ。
【請求項2】
前記固定体および前記可動体の前記一方は、内部に前記貫通孔の少なくとも一部の径を変化させる可変絞りを備え、
該可変絞りは、前記隙間における前記流体の圧力に応じて絞り内径が変化することを特徴とする請求項1に記載の静圧スライダ。
【請求項3】
前記可変絞りは、外部からの押圧によって内径が変化する環状の弾性体を有し、
前記固定体および前記可動体の前記一方は、前記隙間と前記弾性体との間に設けられて前記隙間に連通した連通孔を備え、
前記弾性体は、前記連通孔を介して前記流体によって押圧されることにより、内径が変化することを特徴とする請求項2に記載の静圧スライダ。
【請求項4】
前記連通孔は、前記弾性体の近傍において他の部位よりも径が大きいことを特徴とする請求項3に記載の静圧スライダ。
【請求項5】
前記弾性体は、ステンレス、銅、チタン、ジルコ二アおよび炭化珪素から選択される少なくとも1種からなる請求項3または請求項4に記載の静圧スライダ。
【請求項6】
前記固定体は、軸体であり、前記可動体は、前記軸体を囲繞する筒体であり、前記可変絞りは、前記可動体の移動方向に沿って両端部にそれぞれ設けられている請求項2から請求項5のいずれかに記載の静圧スライダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159103(P2012−159103A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17428(P2011−17428)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】