説明

静圧気体軸受スピンドル

【課題】従来別途必要であったシール気体供給源およびシール機構を省略することにより、構成を簡素化するとともに、被回転物を保持する保持部におけるラジアル剛性の低下を回避可能な静圧気体軸受スピンドルを提供する。
【解決手段】静圧気体軸受スピンドル1は、円筒状の形状を有する軸部12と、軸部12の一方の端部に接続され、被回転物を保持するためのテーブル11とを含む回転軸10と、軸部12の外周面を、回転軸10を支持するための軸受用気体が供給される隙間である軸受隙間51を隔てて取り囲む固定部40とを備えている。そして、軸受用気体は、テーブル11と固定部40との間に形成された隙間であるシール隙間93から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧気体軸受スピンドルに関し、より特定的には、気体軸受内部への異物の侵入を抑制するための気体シール機構を備えた静圧気体軸受スピンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸を気体軸受により保持する静圧気体軸受スピンドルは、粉塵、ミスト、切屑など異物の存在する環境下で使用される場合がある。このような場合、前述の異物が気体軸受内に侵入することによる不具合の発生を抑制するため、異物の侵入を抑制する保護機構(シール機構)が必要となる。ここで、気体軸受により非接触に保持されている回転軸の回転を阻害することを回避するため、シール機構は回転軸に対して非接触であることが望ましい。このような非接触のシール機構として、エアシール機構を備えた静圧気体軸受スピンドルが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
以下、エアシール機構を備えた従来の静圧気体軸受スピンドルについて説明する。図6は、従来の静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。図6を参照して、従来の静圧気体軸受スピンドル100は、回転軸110と、回転軸110の一部を取り囲む固定部140とを備えている。回転軸110は、円筒状の形状を有する軸部112と、軸部112の一方の端部に接続され、図示しない被回転物を保持するための保持部としてのテーブル111とを含んでいる。固定部140は、軸部112の外周面を、回転軸110を支持するための軸受用気体が供給される隙間である軸受隙間151を隔てて取り囲む軸受スリーブ120と、軸受スリーブ120を取り囲み、軸受スリーブ120を保持するハウジング130とを含んでいる。
【0004】
また、回転軸110は、回転軸110の軸と中心軸が一致し、円盤状の形状を有するスラスト板113を含んでいる。軸受スリーブ120は、スラスト板113の両側の底面に対して軸受隙間151を隔てて対向するように形成されている。
【0005】
軸受スリーブ120には、軸受用気体を軸受隙間151に供給するノズル152Aが、回転軸110の軸部112を取り囲むように複列に、かつ周方向に複数個形成されるとともに、スラスト板113の両側の底面に対向するように周方向に複数個形成されている。ノズル152Aは、スリーブ給気路152と、ハウジング給気路154とを介して、図示しない軸受用気体供給部に接続されている。また、軸受スリーブ120およびハウジング130には、軸受隙間151とハウジング130の外部とを接続する軸受用気体排出路156が形成されている。
【0006】
さらに、回転軸110の、スラスト板113からみてテーブル111とは反対側には、軸部112の外周面を取り囲むように接続されたロータ172が配置されている。また、ハウジング130には、ロータ172の外周面に対向するようにステータ171が配置されている。ステータ171およびロータ172は、回転軸110を軸周りに回転駆動するビルトインモータ170を構成している。
【0007】
そして、軸受スリーブ120において、軸部112に対向するノズル152Aが形成されている領域よりもテーブル111側の軸部112に対向する位置には、環状の溝であるスリーブ環状溝121が形成されている。一方、軸部112のスリーブ環状溝121に対向する位置には、環状の溝である回転軸環状溝114が形成されている。スリーブ環状溝121および回転軸環状溝114は、軸部112を取り囲むポケット182を構成している。さらに、軸受スリーブ120およびハウジング130には、ポケット182と、ポケット182にシール気体を供給するシール気体供給源(図示しない)とを接続するシール気体供給路181が形成されている。また、ポケット182は軸受スリーブ120と回転軸の軸部112との隙間であるシール隙間183を介して外部と連通している。ここで、シール気体供給路181、ポケット182およびシール隙間183は、シール機構180を構成している。
【0008】
次に、静圧気体軸受スピンドル100の動作を説明する。図示しない軸受用気体供給部から供給された高圧の軸受用気体が、ハウジング給気路154、スリーブ給気路152およびノズル152Aを通って軸受隙間151に供給されることにより、回転軸110は、軸受スリーブ120に対して回転自在に非接触支持される。そして、ビルトインモータ170のステータ171に図示しない電源から電力が供給されることにより、ロータ172を軸回りに回転させる駆動力が発生する。これにより、軸受スリーブ120に対して回転自在に非接触支持されている回転軸110は、ロータ172とともに軸受スリーブ120に対して相対的に軸周りに回転する。
【0009】
このとき、図示しないシール気体供給源から、シール気体がシール気体供給路181を介してポケット182に供給され、当該シール気体はシール隙間183から外部に排出される。これにより、シール隙間183からの軸受隙間151への異物の侵入が抑制される。
【特許文献1】特開2000−46054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の静圧気体軸受スピンドル100の構成では、シール気体を供給するシール気体供給源が必要になるとともに、シール気体供給路181およびポケット182を含むシール機構180が別途必要となる。また、回転軸110の軸部112を取り囲む軸受スリーブ120の、ノズル152Aが形成された領域であるジャーナル軸受部とテーブル111との間にシール機構180のポケット182が必要となるため、テーブル111とジャーナル軸受部との距離が大きくなる。その結果、被加工物などの被回転物が載置される保持部としてのテーブル111のテーブル面111Aにおけるラジアル剛性が低下する。
【0011】
そこで、本発明の目的は、従来別途必要であったシール気体供給源およびシール機構を省略することにより、構成を簡素化するとともに、被回転物を保持する保持部におけるラジアル剛性の低下を回避可能な静圧気体軸受スピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従った静圧気体軸受スピンドルは、円筒状の形状を有する軸部と、軸部の一方の端部に接続され、被回転物を保持するための保持部とを含む回転軸と、軸部の外周面を、回転軸を支持するための軸受用気体が供給される隙間である軸受隙間を隔てて取り囲む固定部とを備えている。そして、軸受用気体は、保持部と固定部との間に形成された隙間であるシール隙間から排出される。
【0013】
本発明の静圧気体軸受スピンドルにおいては、回転軸を支持するために軸受隙間に供給された軸受用気体が、保持部と固定部との間に形成されたシール隙間から排出される。そのため、排出される軸受用気体がシール気体として機能し、保持部と固定部との間から軸受隙間への異物の侵入が抑制される。その結果、従来別途必要であったシール気体供給源およびシール機構を省略することが可能となり、構成を簡素化することができる。また、回転軸の軸部において、軸受隙間に供給された軸受用気体により保持される領域(ジャーナル軸受部)と回転軸の保持部との間にシール機構を構成する構造を別途配置する必要がないため、軸受用気体により保持される回転軸の領域と保持部とを近づけることが可能となる。その結果、保持部におけるラジアル剛性が向上する。
【0014】
以上のように、本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、従来別途必要であったシール気体供給源およびシール機構を省略することにより、構成を簡素化するとともに、被回転物を保持する保持部におけるラジアル剛性の低下を回避可能な静圧気体軸受スピンドルを提供することができる。
【0015】
上記本発明の静圧気体軸受スピンドルにおいては、固定部は、円筒状の貫通孔を有し、当該貫通孔に上記軸部が挿入される軸受スリーブと、軸受スリーブを取り囲み、軸受スリーブを支持するハウジングとを含んでいてもよい。そして、シール隙間は、軸受スリーブと保持部との間に形成されていてもよいし、ハウジングと保持部との間に形成されていてもよい。また、シール隙間は、軸受スリーブおよびハウジングと保持部との間にわたって形成されていてもよい。
【0016】
上記本発明の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、シール隙間は、軸受用気体の排出方向に対して、隣接する部位よりも幅の大きい拡幅部を有している。これにより、排出される軸受用気体の圧力が拡幅部において変化するため、シール隙間から軸受隙間への異物の侵入が一層抑制される。
【0017】
上記本発明の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、シール隙間は、軸受用気体の排出方向が変化する屈曲部を有している。これにより、屈曲部において異物の侵入経路が屈曲するため、シール隙間から軸受隙間への異物の侵入が一層抑制される。ここで、シール隙間から軸受隙間への異物の侵入を、さらに抑制するためには、屈曲部において、軸受用気体の排出方向が不連続に変化していることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、
従来別途必要であったシール気体供給源およびシール機構を省略することにより、構成を簡素化するとともに、被回転物を保持する保持部におけるラジアル剛性の低下を回避可能な静圧気体軸受スピンドルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
まず、本発明の一実施の形態である実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。図1は、実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。
【0021】
図1を参照して、実施の形態1における静圧気体軸受スピンドル1は、円筒状の形状を有する軸部12と、軸部12の一方の端部に接続され、被回転物を保持するための保持部としてのテーブル11とを含む回転軸10と、軸部12の外周面を、回転軸10を支持するための軸受用気体が供給される隙間である軸受隙間51を隔てて取り囲む固定部40とを備えている。テーブル11は、軸部12の軸を含む断面において、軸部12に比べて、軸部12の軸方向に垂直な方向の幅(直径)が大きい円盤状の形状を有している。そして、軸受用気体は、テーブル11と固定部40との間に形成された隙間であるシール隙間93から排出される。
【0022】
より具体的には、保持部としてのテーブル11において、被回転物を載置するテーブル面11Aとは反対側の底面である裏面11Bと固定部40との間には、外部と連通するシール隙間93と、シール隙間93に接続され、シール隙間93よりも大きい空間であるバッファ室としてのポケット部92とが形成されている。ポケット部92は、軸部12のテーブル11が接続されている側の端部の外周を取り囲むように形成された環状の空間である。また、シール隙間93は軸部12の軸方向に交差する方向、より具体的には直交する方向に延在している。さらに、ポケット部92には、軸受隙間51に連通し、軸受隙間51に供給された軸受用気体を軸受隙間51から排出する排出路91が接続されている。排出路91、ポケット部92およびシール隙間93は、軸受用気体の排気を利用したシール機構である排気シール機構90を構成している。
【0023】
固定部40は、軸部12の外周面を、軸受隙間51を隔てて取り囲むことにより回転軸10を径方向(ラジアル方向)に支持するジャーナル軸受として機能する軸受スリーブ20と、軸受スリーブ20を取り囲み、軸受スリーブ20を保持するハウジング30とを含んでいる。
【0024】
また、回転軸10は、回転軸10の軸と中心軸が一致し、円盤状の形状を有するスラスト板13を含んでいる。軸受スリーブ20は、スラスト板13の両側の底面に対して軸受隙間51を隔てて対向するように形成されており、回転軸10を軸方向(アキシアル方向)に支持するスラスト軸受として機能する。
【0025】
軸受スリーブ20には、軸受用気体を軸受隙間51に供給するノズル52Aが、回転軸10の軸部12を取り囲むように複列に、かつ周方向に複数個形成されるとともに、スラスト板13の両側の底面に対向するように周方向に複数個形成されている。ノズル52Aは、スリーブ給気路52と、ハウジング給気路54とを介して、図示しない軸受用気体供給部に接続されている。また、軸受スリーブ20には、軸受隙間51とポケット部92とを接続する排出路91が形成されている。
【0026】
さらに、回転軸10の、スラスト板13からみてテーブル11とは反対側には、軸部12の外周面を取り囲むように接続されたロータ72が配置されている。また、ハウジング30には、ロータ72の外周面に対向するようにステータ71が配置されている。ステータ71およびロータ72は、回転軸10を軸周りに回転駆動するビルトインモータ70を構成している。
【0027】
そして、本実施の形態1における静圧気体軸受スピンドル1においては、図6に基づいて説明した従来の静圧気体軸受スピンドル100とは異なり、シール機構180やシール気体供給源が別途設けられていない。
【0028】
次に、静圧気体軸受スピンドル1の動作を説明する。図1を参照して、図示しない軸受用気体供給部から供給された高圧の圧縮空気などの軸受用気体が、ハウジング給気路54、スリーブ給気路52およびノズル52Aを通って軸受隙間51に供給されることにより、回転軸10は、軸受スリーブ20に対して回転自在に非接触支持される。そして、ビルトインモータ70のステータ71に図示しない電源から電力が供給されることにより、ロータ72を軸回りに回転させる駆動力が発生する。これにより、軸受スリーブ20に対して回転自在に非接触支持されている回転軸10は、ロータ72とともに軸受スリーブ20に対して相対的に軸周りに回転する。なお、軸受用気体としては、空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、酸素などの気体を採用することができる。
【0029】
このとき、図示しない軸受用気体供給部から供給された軸受用気体は、排出路91およびポケット部92を介してシール隙間93から外部に排出される。その結果、シール隙間93から外部に排出される軸受用気体が気体シールとして機能し、シール気体供給源およびシール機構を別途設置することなく、シール隙間93から軸受隙間51への異物の侵入が抑制される。また、回転軸10の軸部12において、軸受隙間51に供給された軸受用気体により保持される領域(ジャーナル軸受部)と回転軸10のテーブル11との間にシール機構を構成する構造を別途配置する必要がないため、ジャーナル軸受部とテーブル11とを近づけることが可能となる。その結果、テーブル11におけるラジアル剛性が向上し、テーブル11のテーブル面11Aに載置される被回転物を安定して回転させることが可能となる。
【0030】
以上のように、本実施の形態1における静圧気体軸受スピンドル1によれば、従来別途必要であったシール気体供給源およびシール機構を省略することにより、構成を簡素化するとともに、被回転物を保持するテーブル11におけるラジアル剛性の低下を回避可能な静圧気体軸受スピンドルを提供することができる。
【0031】
ここで、図1においては、軸受スリーブ20のテーブル11に対向する側の端面のうち、内周面側の領域がポケット部92を構成しており、ポケット部92を構成する領域の外周面側の領域とテーブル11の裏面11Bとの間にシール隙間93が形成されている。そして、ハウジング30とテーブル11との距離は、シール隙間93における軸受スリーブ20とテーブル11との距離よりも大きい。すなわち、シール隙間93は、軸受スリーブ20とテーブル11との間に形成されており、ハウジング30はシール隙間93を構成していない。
【0032】
しかし、実施の形態1における排気シール機構90の構成は上述の構成に限られず、他の構成を採用することもできる。図2は、実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの第1の変形例の要部を示す概略部分断面図である。また、図3は、実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの第2の変形例の要部を示す概略部分断面図である。
【0033】
以下、実施の形態1における第1の変形例について説明する。図2を参照して、第1の変形例における静圧気体軸受スピンドル1は、基本的には図1に基づいて説明した実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1と同様の構成を有している。しかし、図2に示す第1の変形例における静圧気体軸受スピンドル1は、排気シール機構90の構成において、上記図1の静圧気体軸受スピンドル1とは異なっている。すなわち、図2に示す第1の変形例においては、軸受スリーブ20のテーブル11に対向する側の端面全体がポケット部92を構成しており、シール隙間93は、ハウジング30のテーブル11に対向する側の端面と、テーブル11の裏面11Bとの間に形成されている。すなわち、テーブル11と軸受スリーブ20との間の距離は、シール隙間93を構成するテーブル11とハウジング30との間の距離よりも大きく、軸受スリーブ20はシール隙間93を構成していない。
【0034】
次に、実施の形態1における第2の変形例について説明する。図3を参照して、第2の変形例における静圧気体軸受スピンドル1は、基本的には図1に基づいて説明した実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1と同様の構成を有している。しかし、図3に示す第2の変形例における静圧気体軸受スピンドル1は、排気シール機構90の構成において、上記図1の静圧気体軸受スピンドル1とは異なっている。すなわち、図3に示す第2の変形例においては、軸受スリーブ20のテーブル11に対向する側の端面のうち、内周面側の領域がポケット部92を構成しており、ポケット部92を構成する領域の外周面側の領域とテーブル11の裏面11Bとの間にシール隙間93が形成されている。さらに、ハウジング30のテーブル11に対向する側の端面は、軸受スリーブ20のシール隙間93を構成する領域と同一の平面を構成しており、テーブル11の裏面11Bとの間にシール隙間93を形成している。すなわち、シール隙間93は、テーブル11と、軸受スリーブ20およびハウジング30との間にわたって形成されている。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2における静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。図4は、実施の形態2における静圧気体軸受スピンドルの要部の構成を示す概略部分断面図である。
【0036】
図4を参照して、実施の形態2における静圧気体軸受スピンドル1は、基本的には図1および図3に基づいて説明した実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1の第2の変形例と同様の構成を有しており、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1と同様の作用効果を奏する。しかし、実施の形態2における静圧気体軸受スピンドル1は、シール隙間93の構成において、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1の第2の変形例とは異なっている。
【0037】
すなわち、実施の形態2における静圧気体軸受スピンドル1においては、シール隙間93は、軸受用気体の排出方向に対して、隣接する部位よりも幅の大きい拡幅部93Aを有している。すなわち、軸受スリーブ20のテーブル11に対向する側の端面のうち、シール隙間93を構成する領域には、円環状の凹部が形成されており、当該凹部とテーブル11の裏面11Bとの間に拡幅部93Aが形成されている。
【0038】
これにより、実施の形態2における静圧気体軸受スピンドル1においては、排出される軸受用気体の圧力が拡幅部93Aにおいて変化するため、シール隙間93から軸受隙間51への異物の侵入が一層抑制される。なお、拡幅部93Aは、図4に示すように1箇所でも効果があるが、2箇所以上に形成されていてもよい。
【0039】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3における静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。図5は、実施の形態3における静圧気体軸受スピンドルの要部の構成を示す概略部分断面図である。
【0040】
図5を参照して、実施の形態3における静圧気体軸受スピンドル1は、基本的には図1および図3に基づいて説明した実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1の第2の変形例と同様の構成を有しており、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1と同様の作用効果を奏する。しかし、実施の形態3における静圧気体軸受スピンドル1は、シール隙間93の構成において、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1の第2の変形例とは異なっている。
【0041】
すなわち、実施の形態3における静圧気体軸受スピンドル1においては、シール隙間93は、軸受用気体の排出方向が変化する屈曲部93Bを有している。より具体的には、ハウジング30のテーブル11に対向する側の端面は、軸受スリーブ20のテーブル11に対向する側の端面に比べて、テーブル11側から見て後退した位置に形成されている。そして、テーブル11にはこれに沿うように突出部11Cが形成されている。その結果、軸受スリーブ20の外周端およびハウジング30の内周端とテーブル11の突出部11Cとの間に、シール隙間93が不連続に、より具体的には直角に屈曲する屈曲部93Bが形成されている。なお、屈曲部93Bは、ハウジング30のテーブル11に対向する側の端面が、軸受スリーブ20のテーブル11に対向する側の端面に比べて、テーブル11側から見て突出した位置に形成され、テーブル11にはこれに沿うように厚みの薄い薄肉部を有することにより形成されてもよい。
【0042】
これにより、屈曲部93Bにおいて異物の侵入経路が屈曲するため、シール隙間93から軸受隙間51への異物の侵入が一層抑制される。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の静圧気体軸受スピンドルは、気体軸受内部への異物の侵入を抑制するための気体シール機構を備えた静圧気体軸受スピンドルに、特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの第1の変形例の要部を示す概略部分断面図である。
【図3】実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの第2の変形例の要部を示す概略部分断面図である。
【図4】実施の形態2における静圧気体軸受スピンドルの要部の構成を示す概略部分断面図である。
【図5】実施の形態3における静圧気体軸受スピンドルの要部の構成を示す概略部分断面図である。
【図6】従来の静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 静圧気体軸受スピンドル、10 回転軸、11 テーブル、11A テーブル面、11B 裏面、11C 突出部、12 軸部、13 スラスト板、20 軸受スリーブ、30 ハウジング、40 固定部、51 軸受隙間、52 スリーブ給気路、52A ノズル、54 ハウジング給気路、70 ビルトインモータ、71 ステータ、72 ロータ、90 排気シール機構、91 排出路、92 ポケット部、93 シール隙間、93A 拡幅部、93B 屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の形状を有する軸部と、前記軸部の一方の端部に接続され、被回転物を保持するための保持部とを含む回転軸と、
前記軸部の外周面を、前記回転軸を支持するための軸受用気体が供給される隙間である軸受隙間を隔てて取り囲む固定部とを備え、
前記軸受用気体は、前記保持部と前記固定部との間に形成された隙間であるシール隙間から排出される、静圧気体軸受スピンドル。
【請求項2】
前記固定部は、
円筒状の貫通孔を有し、前記貫通孔に前記軸部が挿入される軸受スリーブと、
前記軸受スリーブを取り囲み、前記軸受スリーブを支持するハウジングとを含み、
前記シール隙間は、前記軸受スリーブと前記保持部との間に形成されている、請求項1に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項3】
前記固定部は、
円筒状の貫通孔を有し、前記貫通孔に前記軸部が挿入される軸受スリーブと、
前記軸受スリーブを取り囲み、前記軸受スリーブを支持するハウジングとを含み、
前記シール隙間は、前記ハウジングと前記保持部との間に形成されている、請求項1に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項4】
前記シール隙間は、前記軸受用気体の排出方向に対して、隣接する部位よりも幅の大きい拡幅部を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項5】
前記シール隙間は、前記軸受用気体の排出方向が変化する屈曲部を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静圧気体軸受スピンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−128443(P2008−128443A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317319(P2006−317319)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】