説明

静止ドラムを備えた給糸装置からの糸解舒の停止を検出する方法

【課題】静止ドラムを備えた給糸装置からの糸解舒の停止を検出する。
【解決手段】静止ドラムと、各糸ループがドラム12から解舒されるたびにパルスを生成するセンサS3とを備えた給糸装置10からの糸解舒の停止を検出するために、限界時間間隔を連続的に計算する。限界時間間隔は、これを超えた場合は糸の不測の停止が発生したと見なすべきである、連続する2つのパルス間の最大間隔に相当する。限界時間間隔は、糸引き出し速度に応じてリアルタイムに更新される。次に、直前のパルスからの遅延が連続的に測定され、更新後の限界時間間隔と比較される。測定された遅延が更新後の限界間隔を超えると、機械が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に編機用の、静止ドラムを備えた給糸装置からの糸解舒の停止を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緯糸ストックを形成する複数の糸ループが電動フライホイールによって巻き付けられる静止ドラムを備えた給糸装置が知られている。下手側の機械、一般には従来型の丸/直線編機、から要求があると、これらのループはドラムから解舒され、次に糸の張力を制御する緯糸制動デバイスを通過し、最後に下手側の機械に供給される。
【0003】
上記種類の給糸装置は当業者には周知であり、その主要目的は、下手側の機械の糸引き出し速度にかかわらず、ドラム上に貯留される糸の量をほぼ一定に維持しながら、繰り出される糸の張力を最小化することである。この目的のために、給糸装置は、制御ユニットに接続された各種センサを備えている。これらのセンサの1つは、特に、各ループが解舒されるたびに少なくとも1つのパルスを生成する。このセンサは、例えば、光学センサ、圧電センサなどでもよい。このセンサは、ドラム上に貯留される糸の量が一定に維持されるようにフライホイールの糸巻き付け速度を最適化するために、その他のセンサと連係する。
【0004】
このような従来のシステムでは、糸の停止を検出するための別のセンサが給糸装置と編機との間に配置されている。糸の停止という状況は、糸が切れた場合または編機の針から糸が外れた場合に起こりうる。この場合、制御ユニットは、完成品の欠陥を防止するため、および加工中の製品の緯管の外れを回避するために、編機の停止を指令する。緯管が外れると、公知のように、製品を形成する糸を編機に挿入しなおすという面倒で時間のかかる作業が必要になる。
【0005】
公知のように、上記の糸切れセンサは、機械式または電子式のどちらでもよい。
【0006】
機械式センサの利点は、安価であることである。しかし、機械式センサは、反応の素早さという点で効率が低い。さらには、運転中、感知アームが糸に擦れるため、給糸張力に干渉し、結果として張力制御システムの精度に影響を及ぼす。
【0007】
電子式センサの利点は、反応の素早さという点で効率が高い点である。さらに、動作中、糸の動きが光電センサによって検出されるため、解舒される糸の張力に干渉しない。ただし、このような電子式センサは極めて高価であり、追加の供給/通信回路の設置および配線を必要とする。結果として、検出システムのコストが上昇し、複雑さが増す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主な目的は、上記のような専用センサの使用に起因する欠点を克服する、静止ドラムを備えた給糸装置からの糸解舒の停止を検出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的および、以下においてより明確になる、他の複数の利点は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって達成され、各従属請求項には本発明の他の、二次的ではあるが、好都合な特徴が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による方法を実施するための給糸装置を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図1を参照しながら、非限定的な例として開示されるいくつかの好適な、非排他的な実施形態に言及して本発明についてより詳細に説明する。
【0012】
図1を参照すると、繊維機械用の給糸装置10は、静止ドラム12と、モータ15によって駆動されるフライホイール14とを備える。フライホイール14は、リール16から糸Fを引き出し、ドラム12に複数のループの形態で巻き付けることによって緯糸の貯留またはストックを形成する。通常の繊維機械、好ましくは編機17、から要求があると、糸Fはドラム12から解舒され、この機械に供給される。
【0013】
ドラム12上に貯留される糸の量は、3つのセンサによって制御される。第1のセンサS1は一般にはホールセンサであり、ドラムに巻き付けられる糸の量および巻き付け速度を算出するために、フライホイール14に取り付けられた(例えば符号Mで表示したような)磁石の通過を検出する。第2のセンサS2は、好ましくは機械式センサであり、ドラム12の中間区域における最小限のストックが有るか無いかを示す二進法による情報を提供する。第3のセンサS3は、好ましくは光学センサであり、ドラムから各ループが解舒されるたびにパルスUWPを生成する。
【0014】
給糸装置10の下手側には、緯糸制動デバイス20が配置される。緯糸制動デバイス20は、ドラム12から解舒される糸の張力をほぼ一定に維持するためにこの糸の張力を制御するようにプログラミングされた制御ユニットCUによって制御される。ドラムから解舒される糸Fの張力を測定し、対応する測定張力信号T_measを生成するために、張力センサ22が緯糸制動デバイス20の下手側に配置される。
【0015】
制御ユニットCUは、張力制御ブロックTCを備える。張力制御ブロックTCは、測定張力信号T_measと所望の張力を示す基準張力T−refとを比較し、測定張力と基準張力の間の差を最小化するように制動強さを調節するために緯糸制動デバイス20を駆動する制動信号BIを生成するようにプログラミングされる。
【0016】
制御ユニットCUは、アラーム信号、状態、およびパラメータのプログラミングなどのデータを相互に交換するために、バス30を介して編機17と従来の方法で交信する。
【0017】
従来の給糸ラインと異なり、上記の装置は、糸切れの発生が考えられる条件を検出するために、第3のセンサS3によって生成されたパルス信号UWPを利用するため、専用センサを必要としない本発明による方法を用いる。
【0018】
特に、上記のように、正常運転中、給糸装置は、ドラム12から各ループが解舒されるたびにセンサS3からパルスUWPを受信する。当業者には周知のように、下手側の機械の運転速度が一定であれば、糸引き出し速度はほぼ一定のままである。したがって、これらのパルスは経時的にほぼ等間隔である。すなわち、連続するパルス間の時間間隔が変化したとしてもその変化はごく僅かである。この観点から、本発明による方法は、直前のパルスからの遅延が2つのパルス間の平均時間間隔より大幅に長い場合は、糸切れまたは機械17の針からの糸外れのどちらかにより糸の不測の停止が発生したことを意味するという原理に基づく。
【0019】
本発明の第1の実施形態は、機械17の状態情報(RUN/STOP)のみが得られる場合、すなわち機械17の運転速度が得られない、場合に適している。この第1の実施形態において、本発明による方法は、機械が運転中の場合にのみ有効である。この方法は、以下の段階を含む。

−連続する2つのパルス間の平均時間間隔MUT(すなわち、平均ループ解舒時間)を連続的に計算し、後者から限界時間間隔MWTを計算する。限界時間間隔MWTは、これを超えた場合は糸の不測の停止が発生したと見なすべきである最大間隔に相当する。この限界間隔は、次式によりリアルタイムに更新される。

MWT=MUT*K

式中、Kは、好ましくは2から4の範囲内の定数である。

−直前のパルスUWPからの遅延DTを連続的に測定し、更新後の限界間隔MWTと比較する。

−遅延DTが更新後の限界間隔MWTより大きい場合は、機械を停止させる。
【0020】
言うまでもないが、上記の測定/計算動作はすべて、センサS3から受信したパルス信号に基づき、制御ユニットCUによって行われる。制御ユニットのプログラミングは、当業者の通常の知識範囲内であるので、これ以上説明しない。
【0021】
平均ループ解舒時間MUTは、直前のn個の間隔UT,UT,...,UTの算術平均として計算されると都合がよい。ここで、nは好ましくは3から5の範囲内である。
【0022】
この実施形態では、機械の運転速度の情報は得られないので、限界間隔MWTは、連続する2つのパルス間の平均時間間隔の変化に応じて更新される。この平均時間間隔は、糸引き出し速度に応じて変化する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、機械の状態情報と運転速度の両方が得られる場合に適している。この実施形態によると、検出方法の前にチューニング操作を行う。この操作は以下の段階を含む。

−機械を基準運転速度SPD0で運転し、基準運転速度SPD0における連続する2つのパルス間の平均時間間隔MUT0を算出する。

−基準限界時間間隔MWT0を次式により計算する。

MWT0=MUT0*K’

式中、K’は、好ましくは2から4の範囲内の定数である。

−基準限界間隔MWT0と機械の基準運転速度SPD0のデータを保存する。
【0024】
上記のチューニング操作の実施後、この実施形態による方法は、以下の段階を含む。

−リアルタイムに更新される限界時間間隔を次式により連続的に計算する。

MWT’=MWT0*SPD0/SPD

式中、MWT’は更新後の限界間隔であり、SPDは、リアルタイムに更新された機械の運転速度である。

−直前のパルスUWPからの遅延DT’を連続的に測定し、更新後の限界間隔MWT’と比較する。

−遅延DT’が更新後の限界間隔MWT’より大きい場合は、機械を停止させる。
【0025】
前の実施形態と同様に、基準運転速度SPD0における連続する2つのパルス間の平均時間間隔MUT0は、直前のm個の間隔UT,UT,...,UTの算術平均として計算されると都合がよい。ここでmは好ましくは3から5の範囲内である。
【0026】
機械の停止中、SPDの値は0に等しく、制御ユニットは本検出方法を無効にする。この状況は、限界時間間隔MWTを無限に設定したことに相当する。
【0027】
この実施形態では、連続する2つのパルス間の平均時間間隔は、チューニング操作中にのみ算出される。機械の運転速度の情報が得られるので、限界時間間隔は、糸引き出し速度を決める機械の運転速度に応じて直接更新される。
【0028】
したがって、上記の両実施形態では、限界時間間隔は、糸引き出し速度に応じて連続的に更新される。第1の実施形態では、下手側の機械の運転速度は得られないため、連続するパルス間の平均時間間隔が限界時間間隔を更新するためのパラメータとして使用される。第2の実施形態では、機械の運転速度が得られるので、この情報が使用される。
【0029】
本願明細書においては本発明のいくつかの好適な実施形態について説明してきたが、当業者が特許請求の範囲内で多くの変更を行いうることは言うまでもない。特に、上記の好適な各実施形態においてはセンサS3が1つだけであるため、各ループがドラムから解舒されるたびに生成されるパルスは1つだけであるが、本発明は、複数のセンサが等間隔に配置され、各ループがドラムから解舒されるたびに複数のパルスが生成される場合にも同様に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸装置(10)から下手側の機械への糸解舒の停止を検出する方法であって、前記給糸装置は静止ドラム(12)と、各糸ループが前記ドラム(12)から解舒されるたびにパルスを生成するために配置されたセンサ(S3)とを備え、前記方法は、
−連続する2つのパルス間の最大間隔に相当し、それを超えた場合は前記糸の不測の停止が発生したと見なすべき、限界時間間隔(MWT,MWT’)を連続的に計算し、前記限界時間間隔を前記糸の引き出し速度に応じてリアルタイムに更新する段階と、
−直前のパルスからの遅延(DT,DT’)を連続的に測定し、前記遅延と前記更新後の限界時間間隔(MWT,MWT’)とを比較する段階と、
−前記測定された遅延(DT,DT’)が前記更新後の限界間隔(MWT,MWT’)を超えたときに前記下手側の機械を停止させる段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記限界時間間隔は次式に基づき算出され、

MWT=MUT*K

式中、MWTは前記限界時間間隔であり、MUTは前記リアルタイムに更新された連続する2つのパルス間の平均時間間隔であり、Kは所定の定数であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定数(K)は2から4の範囲内であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記連続するパルス間の平均時間間隔(MUT)は直前のn個の間隔(UT,UT,...,UT)の算術平均として算出されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
nは2から5の範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
事前のチューニング操作を含み、該事前のチューニング操作は、
−前記機械を基準運転速度(SPD0)で運転し、前記基準運転速度(SPD0)における連続する2つのパルス間の平均時間間隔(MUT0)を算出する段階と、
−基準限界時間間隔(MWT0)を次式により算出する段階であって、

MWT0=MUT0*K’

式中、MWT0は前記基準限界時間間隔であり、MUT0は前記基準速度における前記連続する2つのパルス間の平均時間間隔であり、K’は所定の定数であり、前記限界時間間隔は次式により算出され、

MWT’=MWT0*SPD0/SPD

式中、MWT’は算出される限界時間間隔であり、SPD0は前記基準運転速度であり、SPDはリアルタイムに更新された運転速度である、段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記定数(K’)は2から4の範囲内であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基準速度における前記連続する2つのパルス間の平均時間間隔(MUT0)は直前のm個の間隔(UT0,UT0,...,UT0)の算術平均として算出されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
mは2から5の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−12381(P2011−12381A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−115279(P2010−115279)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(510139036)エル ジー エル エレクトロニクス ソシエタ ペル アチオニ (2)
【氏名又は名称原語表記】via Ugo Foscolo 156,I−24024 Gandino(BG),Italy
【住所又は居所原語表記】L.G.L. Electronics S.p.A.
【Fターム(参考)】