説明

静止型流体混合装置

【課題】集合・混合流路の流体の集合・混合機能を保持させたままで集合・混合流路における圧力損失を低減させて、加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)を図ること。
【解決手段】集合・混合流路は、第1・第2集合エレメントの対向面にそれぞれ流体の流出口を中心とする同一円周上に同形・同大の多数の凹部を配列して形成するとともに、半径方向には周縁部側から中央部側に向けて凹部の開口面積を漸次縮小させて形成し、かつ、中央部側の凹部の最小開口面積を前記拡散エレメントの凹部の開口面積以上となした複数の凹部を配列して形成し、両集合エレメントの凹部の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように円周方向に位置ずれさせて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を混合する静止型流体混合装置、具体的には、例えば、液体と液体、液体と気体、粉体と液体、を超微細化かつ均一化して混合する静止型流体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静止型流体混合装置の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対向させて配置するとともに、両拡散エレメントの間に中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路を形成した拡散・混合ユニットと、中央部に流体の流出口を形成した円板状の第1集合エレメントに、円板状の第2集合エレメントを対向させて配置すると共に、両集合エレメントの間に周縁部側から流入した流体を中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合する集合・混合流路を形成した集合・混合ユニットとを具備し、拡散・混合流路の終端部と集合・混合流路の始端部を接続した静止型流体混合装置が開示されている。
【0003】
そして、第1・第2拡散エレメントの対向面と第1・第2集合エレメントの対向面には適切な同一の深さと大きさの六角形の凹部群をハニカム構造に形成するとともに、対向する各エレメントを相互に連通するように位置を違えて配置して、拡散・混合流路と集合・混合流路において、流体が蛇行しながら合流と分流(分散)を繰り返しながら半径方向に流動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−52034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示された静止型流体混合装置は、中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路と、周縁部側から流入した流体を中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合する流路構造を同様に形成しているために、混合分散機能の高い拡散・混合流路と比べて,集合・混合側流路は分散数がはるかに少ないにもかかわらず拡散・混合流路と同程度の圧力損失が生じていた。そのため,拡散・混合側エレメントと集合・混合側エレメント全体の圧力損失をできるだけ削減して、静止型流体混合装置に流体を加圧して供給する加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、集合・混合流路の流体の集合・混合機能を保持させたままで集合・混合流路における圧力損失を低減させて、加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)を図ることができる静止型流体混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る静止型流体混合装置は、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対向させて配置するとともに、両拡散エレメントの間に中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路を形成し、円板状の第1集合エレメントに、中央部に流体の流出口を形成した円板状の第2集合エレメントを対向させて配置するとともに、両集合エレメントの間に周縁部側から流入した流体を中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合する集合・混合流路を形成して、拡散・混合流路の終端部と集合・混合流路の始端部を接続した混合ユニットを具備する静止型流体混合装置であって、拡散・混合流路は、第1・第2拡散エレメントの対向面にそれぞれ同形・同大の多数の凹部を配列して形成して、各拡散エレメントの凹部の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように位置を違えて配置し、集合・混合流路は、第1・第2集合エレメントの対向面にそれぞれ流体の流出口を中心とする同一円周上に同形・同大の多数の凹部を配列して形成するとともに、半径方向には周縁部側から中央部側に向けて凹部の開口面積を漸次縮小させて形成し、かつ、中央部側の凹部の最小開口面積を前記拡散エレメントの凹部の開口面積以上となした複数の凹部を配列して形成し、両集合エレメントの凹部の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように円周方向に位置ずれさせて配置したことを特徴とする。
【0008】
かかる静止型流体混合装置では、周縁部側の大きめの開口面積を有する凹部からスムーズに流入した流体が、漸次縮小された開口面積を有する凹部に流入して分流(分散)と合流を繰り返しながら中心部側に集合する。そのため、流体に作用するほぼ一様なせん断力により流体の微細化かつ均一化を図ることができるとともに、集合・混合流路における圧力損失を削減することができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る静止型流体混合装置は、請求項1記載の静止型流体混合装置であって、流体の流入口を中心とする同一円周上に配置した各拡散エレメントの凹部の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させる一方、流体の流出口を中心とする同一円周上に配置した各集合エレメントの凹部の数は、半径方向の各列において同一となしたことを特徴とする。
【0010】
かかる静止型流体混合装置では、各拡散エレメントの凹部の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させているため、流体が合流する凹部の数は周縁部側ほど増大するとともに、それに比例して数多く分流される。そのため、拡散・混合流路においては流体にせん断力が作用して微細化される回数が流体の流動方向に沿って漸次増大する。
【0011】
各集合エレメントの凹部の数は、半径方向の各列において同一となしているため、流体が合流する凹部の数は各列において同数であり、周縁部から中心部への流れに伴う各列における流体の分割(分散)・混合は無駄なく確実に行われる。そのため、集合・混合流路においては流体にほぼ一様なせん断力が作用して微細化される回数が流体の流動方向において一定に保たれるが、圧力損失を軽減することができる。
【0012】
請求項3記載の発明に係るエマルション燃料生成装置は、連続相としての燃料油と分散相としての水との混合液に微量の空気を付加した流体を、請求項1又は2記載の静止型流体混合装置により混合して微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することを特徴とする。
【0013】
かかるエマルション燃料生成装置では、連続相としての燃料油と、分散相としての水と、微量の空気とを静止型流体混合装置により微細化して混合することにより、浮力が減少した微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。この際、浮力が減少した微細な気泡は、疎水性であるため、水滴の表面には付着せずに、燃料油中に分散して、気−液界面の面積(燃焼表面積)を増加させるとともに静電分極により表面活性(界面活性剤のような機能)を発揮して、微細化した水滴の合一を防止して、水滴をエマルション燃料中で安定化させることができる。その結果、かかるエマルション燃料では水滴径の分散が均一化して、かかるエマルション燃料を例えば燃焼装置で燃焼させると、良好な燃焼効率を確保することができて、すすや黒煙が発生するという不具合を解消することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、集合・混合流路の流体の集合・混合機能を保持させたままで集合・混合流路における圧力損失を低減させて、静止型流体混合装置に流体を加圧して供給する加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る静止型流体混合装置の正面断面説明図。
【図2】本発明に係る静止型流体混合装置が具備する混合ユニットの正面断面分解説明図。
【図3】本発明に係る静止型流体混合装置が具備する混合ユニットの分解斜視説明図。
【図4】第1・第2拡散エレメントの側面説明図。
【図5】第1・第2集合エレメントの側面説明図。
【図6】エマルション燃料生成装置の概念説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る静止型流体混合装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[静止型流体混合装置]
図1に示す10は本発明に係る静止型流体混合装置であり、静止型流体混合装置10は、一方向(本実施形態では左右方向)に伸延する円筒状に形成したケーシング体11と、ケーシング体11内に同軸的に配列させて収容した複数組(本実施形態では五組)の混合ユニット12と、混合ユニット12に処理対象の流体Rを導入する導入口15を中央部に有してケーシング体11の左側端面に着脱自在に連結した左側端部壁体13と、混合ユニット12により処理された流体Rを導出する導出口16を中央部に有してケーシング体11の右側端面に着脱自在に連結した右側端部壁体14とから構成している。ケーシング体11の外周面左右側部には連結フランジ17,18を形成して、連結フランジ17,18に左・右側端部壁体13,14の周縁部をケーシング体11の軸線方向に重合状態に面接させて、連結ボルト19,19により連結している。
【0017】
静止型流体混合装置10は、図1に示すように、ケーシング体11内に五組の混合ユニット12を同軸的にかつ直列的に配列させて収容して、各混合ユニット12の対向面間にOリング26を介設している。この際、ケーシング体11の内周面と各混合ユニット12の外周面とは、隙間のない密着状態となしている。このように構成して、ケーシング体11内に配設した混合ユニット12内を流体R(図1において矢印で示す)が上流側である左側の導入口15側から下流側である右側の導出口16に蛇行しながら流動するようにしている。
【0018】
混合ユニット12は、流体Rを拡散・混合する拡散・混合流路27と、流体Rを集合・混合する集合・混合流路28を有しており、拡散・混合流路27の終端部と集合・混合流路28の始端部を連通させて接続している。すなわち、拡散・混合流路27は、図2に示すように、中央部に流体Rの流入口32を形成した円板状の第1拡散エレメント30に、円板状の第2拡散エレメント40を対向させて配置するとともに、両拡散エレメント30,40の間に中央部側の流入口32から流入した流体Rを周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合するように形成している。最左側に配置した第1拡散エレメント30の中央部に形成した流入口32は、左側端部壁体13の中央部に形成した導入口15に整合させて連通している。そして、拡散・混合流路27は、第1・第2拡散エレメント30,40の対向面にそれぞれ同形・同大の多数の凹部35,41を配列して形成して、各拡散エレメント30,40の凹部35,41の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように位置を違えて配置している。流体Rの流入口を中心とする同一円周上に配置した各拡散エレメント30,40の凹部35,41の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させて、流動方向である半径方向に分流数(分散数)を増大させている。
【0019】
また、集合・混合流路28は、図2に示すように、円板状の第1集合エレメント50に、中央部に流体Rの流出口を形成した円板状の第2集合エレメント60を対向させて配置するとともに、両集合エレメント50,60の間に周縁部側から流入した流体Rを中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合するように形成している。最右側に配置した第2集合エレメント60の中央部に形成した流出口62は、右側端部壁体14の中央部に形成した導出口16に整合させて連通している。そして、集合・混合流路28は、第1・第2集合エレメント50,60の対向面にそれぞれ流体Rの流出口62を中心とする同一円周上に同形・同大の多数の凹部51,65を配列して形成するとともに、半径方向には周縁部側から中央部側に向けて凹部51,65の開口面積を漸次縮小させて形成し、かつ、中央部側の凹部51,65の最小開口面積を前記拡散エレメント30,40の凹部35,41の開口面積以上となした複数の凹部51,65を配列して形成し、両集合エレメント50,60の凹部51,65の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように円周方向に位置ずれさせて配置している。流体の流出口62を中心とする同一円周上に配置した各集合エレメント50,60の凹部51,65の数は、半径方向の各列において同一(本実施形態では12個)となしている。
【0020】
しかも、第1・第2集合エレメント50,60では、中心部側にリング状に配置した凹部51,65の第1列と、それよりも円周側にリング状に配置した凹部51,65の第2列と、さらにそれよりも円周側にリング状に配置した凹部51,65の第3列からなる3列の各列に同数個の凹部51,65を配置して形成している。そして、各列の凹部51,65の半径方向の幅は、略同一幅ないしは同一幅に形成するとともに、各列の凹部51,65の円周方向の幅は、第1列の凹部51,65の円周方向の幅を1とすると、第2列の凹部51,65の円周方向の幅は1.5、第3列の凹部51,65の円周方向の幅は2の割合で形成している。
【0021】
このように構成して、混合ユニット12では、第1・第2拡散エレメント30,40の凹部35,41の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させているため、流体Rが合流する凹部35,41の数は周縁部側ほど増大するとともに、それに比例して数多く分流(分散)される。そのため、拡散・混合流路27においては流体Rにせん断力が作用して微細化される回数が流体Rの流動方向(周縁部側に向かう半径方向)に沿って漸次増大するようにしている。
【0022】
また、第1・第2集合エレメント50,60では、周縁部側の大きめの開口面積を有する第3列の凹部51,65からスムーズに流入した流体Rが、漸次縮小された開口面積を有する第2列の凹部51,65さらには第1列の凹部51,65に順次流入して分流(分散)と合流を繰り返しながら中心部側に集合する。そのため、流体Rに作用するほぼ一様のせん断力により流体Rの微細化かつ均一化を図ることができるとともに、集合・混合流路28における圧力損失を削減することができる。しかも、各集合エレメント50,60の凹部51,65の数は、半径方向の各列において同一となしているため、流体Rが合流する凹部51,65の数は各列において同数であり、周縁部から中心部への流れに伴う各列における流体Rの分割(分散)は無駄なく確実に行われる。そのため、集合・混合流路28においては流体Rにほぼ一様にせん断力が作用して微細化される回数が流体Rの流動方向において一定に保たれるが、圧力損失を軽減することができる。
【0023】
以下に、各混合ユニット12の構成をより具体的に説明する。すなわち、各混合ユニット12は、いずれも同様の構造であり、図3に示すように、対向配置された2枚の板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の第1・第2拡散エレメント30,40と、対向配置された2枚の板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の第1・第2集合エレメント50,60とを備えている。
【0024】
各混合ユニット12の上流側半部を形成する2枚の第1・第2拡散エレメント30,40のうち、導入口15側(上流側)に配置される第1拡散エレメント30は、円板状のエレメント本体31の中央部に、流体Rの流入口32が貫通状態で形成されている。そして、エレメント本体31の外周縁部には、全周に亘って肉厚の周壁部33が下流側に突出状に形成されて、エレメント本体31と周壁部33とにより、下流側に向けて円形の開口を有する凹み部34が形成され、凹み部34内に円板状の空間が形成されている。
【0025】
図4に示すように、エレメント本体31の下流側面には、開口形状が正六角形の凹部35が隙間のない状態で複数形成されている。いわゆるハニカム状に多数の凹部35が形成されている。なお、符号「36」は、第1拡散エレメント30に第2拡散エレメント40をネジ留めにより固定する際に用いられるネジ用の挿通孔である。
【0026】
図2〜図4に示すように、2枚の拡散エレメント30,40のうち、導出口16側(下流側)に配置される第2拡散エレメント40は、第1拡散エレメント30よりも小径である。そして、第2拡散エレメント40の直径は、第1拡散エレメント30の凹み部34の直径よりも小径であり、凹み部34に第2拡散エレメント40が対面状態に嵌入されて配置される。
【0027】
また、第2拡散エレメント40の、第1拡散エレメント30との対向面、すなわち導入口15側に向けられる上流側面(第1拡散エレメント30と対向する面)には、第1拡散エレメント30のエレメント本体31と同様に、開口形状が正六角形の凹部41が隙間のない状態で複数形成されている。なお、符号「46」は、第1拡散エレメント30に第2混合エレメント40をネジ留めにより固定する際に用いられるネジ用の挿通孔である。
【0028】
そして、両拡散エレメント30,40は、図2および図3に示すような配置で組み付けられる。具体的に説明すると、第1拡散エレメント30の凹み部34内に、第2拡散エレメント40を対面状態に配置する。このとき、第1拡散エレメント30の下流側面のハニカム状の多数の凹部35の開口面と、第2拡散エレメント40の上流側面のハニカム状の多数の凹部41の開口面とが対面状態に当接するように、第2拡散エレメント40の向きを定める(図3参照)。この状態で、第1拡散エレメント30の挿通孔36と、第2拡散エレメント40の挿通孔46の位置を整合させてネジ72でネジ止めして組み付ける。
【0029】
図2に示すように、第2拡散エレメント40の直径は、第1拡散エレメント30の凹み部34の直径よりも小径に形成されている。ただし直径の違いは僅かである。
【0030】
従って、両拡散エレメント30,40を組み付けると、第1拡散エレメント30の周壁部33の内周面38と第2拡散エレメント40の外周端面43との間に、第2拡散エレメント40の外周端面に沿って全周に亘りリング状の間隙が環状流出路73として形成され、環状流出路73の下流側に位置する終端開口部が拡散・混合流路27の終端部であり、下流側に向けてリング状に開口されている。
【0031】
そして、第1拡散エレメント30の流入口32に供給された流体Rは、拡散・混合流路27(図1参照)を通過した後、この拡散・混合流路27の終端部から放出される。環状流出路73の流出幅t1は、全周にわたって略一定間隔(略均等幅)に形成されており、例えば、第2拡散エレメント40の半径の20分の1前後の幅で形成される(図4参照)。
【0032】
このように、第2拡散エレメント40の外周に全周に亘る環状流出路73の終端開口部を略均等幅に形成すると、全周に亘って流体Rを略均等に流出させることができるため、終端開口部から流出される流体Rの圧力にばらつきが発生しにくくなり、混合ユニット12の外周部の位置によって流体Rの流出量に偏りが生ずるような不具合が防止される。流出量の偏りが防止されれば、流路抵抗が低下し、また局所的に流体Rの圧力が高圧になる場所が生ずることが防止される。
【0033】
また、本実施形態では、環状流出路73の大きさ、すなわち間隙の流出幅t1が全周に亘って略均等になっている。これにより、より確実に流路抵抗を低下させることができて、局所的高圧領域の発生、特に環状流出路73近傍における局所的高圧領域の発生を防止できる。
【0034】
ここで、各拡散エレメント30,40の当接側の面に形成されるハニカム状の多数の凹部35,41の相互関係について説明する。
【0035】
図4に示すように、両拡散エレメント30,40の凹部35,41は同形・同大に形成して、これらの当接面は、第1拡散エレメント30の凹部35の中心位置に、第2拡散エレメント40の凹部41の角部49が位置する状態で当接している。
【0036】
このような状態で当接させると、第1拡散エレメント30の凹部35と第2拡散エレメント40の凹部41との間で流体Rを流動させることができる。また、角部49は3つの凹部41の角部が集まっている位置である。
【0037】
従って、例えば、第1拡散エレメント30の凹部35側から第2拡散エレメント40の凹部41側に流体Rが流れる場合を考えると、流体Rは、2つの流路に分流(分散)されることになる。
【0038】
つまり、第1拡散エレメント30の凹部35の中央位置に位置された第2拡散エレメント40の角部49は、流体Rを分流する分流部として機能する。逆に、第2拡散エレメント40側から第1拡散エレメント30側に流体Rが流れる場合を考えると、2方から流れてきた流体Rが1つの凹部35に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2拡散エレメント40の中央位置に位置された角部49は、合流部として機能する。
【0039】
また、第2拡散エレメント40の凹部41の中心位置にも、第1拡散エレメント30の凹部35の角部39が位置する。この場合は、第1拡散エレメント30の角部39が上述した分流部や合流部として機能する。
【0040】
このように、相互に対向状態に対面配置された両拡散エレメント30,40の間には、中央の流入口32から両拡散エレメント30,40(ケーシング体11)の軸線方向に供給された流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両拡散エレメント30,40の放射線方向(軸線方向と直交する半径方向)に蛇行状態にて流動する拡散・混合流路27(図1参照)が形成されている。
【0041】
この拡散・混合流路27を流体Rが流動する過程で、流体Rに混合処理が施される。そして、拡散・混合流路27を通過した流体Rは、その後、混合ユニット12の背面側外周部に下流側に向けてリング状に開口した環状流出路73の終端開口部から混合ユニット12の下流側半部に流入される。
【0042】
各混合ユニット12の下流側半部を形成する2枚の第1・第2集合エレメント50,60のうち、導出口16側(下流側)に配置される第2集合エレメント60は、円板状のエレメント本体61の中央部に、流体Rの流出口62が貫通状態で形成されている。そして、エレメント本体61の外周縁部には、全周に亘って肉厚の周壁部63が上流側に突出状に形成されて、エレメント本体61と周壁部63とにより、上流側に向けて円形の開口を有する凹み部64が形成され、凹み部64内に円板状の空間が形成されている。
【0043】
図5に示すように、エレメント本体61の下流側面には、開口形状が変形六角形、つまり、円周方向側に配置された対向辺を他の四辺よりも極端に短く形成して略四角形状(略ひし形状)に形成した凹部65が隙間のない状態で多数形成されている。なお、符号「66」は、第1拡散エレメント30に第2集合エレメント60をネジ留めにより固定する際に用いられるネジ用のネジ孔である。
【0044】
図2、図3および図5に示すように、2枚の集合エレメント50,60のうち、導入口15側(上流側)に配置される第1集合エレメント50は、第2集合エレメント60よりも小径である。そして、第1集合エレメント50の直径は、第2集合エレメント60の凹み部64の直径よりも小径であり、凹み部64に第1集合エレメント50が対面状態に嵌入されて配置される。
【0045】
また、第1集合エレメント50の、第2集合エレメント60との対向面、すなわち導出口16側に向けられる下流側面には、第2集合エレメント60のエレメント本体61と同様に、開口形状が変形六角形の凹部51が隙間のない状態で複数形成されている。なお、符号「56」は、第1拡散エレメント30に第1集合エレメント50をネジ留めにより固定する際に用いられるネジ用の挿通孔である。
【0046】
そして、両集合エレメント50,60は、図2および図3に示すような配置で組み付けられる。すなわち、第2集合エレメント60の凹み部64内に、第1集合エレメント50を対面状態に配置する。このとき、第2集合エレメント60の上流側面の多数の凹部65の開口面と、第1集合エレメント50の下流側面52の多数の凹部51の開口面とが対面状態で、流出口62を中心とする円周方向に凹部51,65が相互に半分だけ位置ずれして当接するように、第2集合エレメント60の向きを定める(図3参照)。この状態で、第1集合エレメント50の挿通孔56と、第2集合エレメント60のネジ孔66の位置を整合させてネジ72でネジ止めして組み付ける。
【0047】
図5に示すように、第1集合エレメント50の直径は、第2集合エレメント60の凹み部64の直径よりも小径に形成されている。ただし直径の違いは僅かである。従って、両集合エレメント50,60を組み付けると、第2集合エレメント60の周壁部63の内周面68と第1集合エレメント50の外周端面との間に、第1集合エレメント50の外周端面に沿って全周に亘りリング状の間隙が環状流入路74として形成され、環状流入路74の上流側に位置する始端開口部が集合・混合流路28の始端部であり、上流側に向けてリング状に開口される。
【0048】
そして、第2集合エレメント60の環状流入路74に供給された流体Rは、集合・混合流路28(図1参照)を通過した後、この集合・混合流路28の始端部から放出される。環状流入路74の流入幅t2は、全周にわたって略一定間隔(略均等幅)に形成されており、例えば、第2集合エレメント60の半径の20分の1前後の幅で形成される(図5参照)。環状流入路74の流入幅t2は環状流出路73の流出幅t1と同一幅に形成している。
【0049】
このように、第2集合エレメント60の外周に全周に亘る環状流入路74の始端部を略均等幅に形成すると、全周に亘って流体Rを略均等に流入させることができるため、始端部から流入される流体Rの圧力にばらつきが発生しにくくなり、混合ユニット12の外周部の位置によって流体Rの流入量に偏りが生ずるような不具合が防止される。流入量の偏りが防止されれば、流路抵抗が低下し、また局所的に流体Rの圧力が高圧になる場所が生ずることが防止される。
【0050】
そして、本実施形態では、環状流入路74の大きさ、すなわち間隙の流入幅t2が全周に亘って略均等になっている。これにより、より確実に流路抵抗を低下させることができて、局所的高圧領域の発生、特に環状流入路74近傍における局所的高圧領域の発生を防止できる。
【0051】
しかも、相互に円周方向に凹部51,65の半分だけ位置ずれさせて対向状態に対面配置された両集合エレメント50,60の間には、環状流入路74から両集合エレメント50,60の周縁部に流入した流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両集合エレメント50,60の中心部に向かって軸線方向と直交する半径方向に蛇行状態にて流動する集合・混合流路28(図1参照)が形成されており、この集合・混合流路28を流体Rが流動する過程で、流体Rに混合処理が施される。そして、集合・混合流路28を通過した流体Rは、その後、混合ユニット12の背面側中心部に開口した流出口62から混合ユニット12の外部に流出される。
【0052】
ここで、各集合エレメント50,60の当接側の面に形成される多数の凹部51,65の相互関係について説明する。
【0053】
図5に示すように、両集合エレメント50,60の凹部51,65は同一列上の凹部51,65については同形・同大に形成し、かつ、周縁部側から中心部側に向けて漸次縮小させて形成し、これらの当接面は、第2集合エレメント60の凹部65の中心位置に、第1集合エレメント50の凹部51の角部59が位置する状態で当接している。
【0054】
このような状態で当接させると、第1集合エレメント50の凹部51と第2集合エレメント60の凹部65との間で流体Rを流動させることができる。また、角部69は4つの凹部51の角部が集まっている位置である。
【0055】
従って、例えば、第1集合エレメント50の凹部51側から第2集合エレメント60の凹部65側に流体Rが流れる場合を考えると、流体Rは、3つの流路に分流(分散)されることになる。
【0056】
つまり、第1集合エレメント50の凹部51の中央位置に位置された第2集合エレメント60の角部69は、流体Rを分流する分流部として機能する。逆に、第2集合エレメント60側から第1集合エレメント50側に流体Rが流れる場合を考えると、3方から流れてきた流体Rが1つの凹部51に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2集合エレメント60の中央位置に位置された角部69は、合流部として機能する。
【0057】
また、第2集合エレメント60の凹部65の中心位置にも、第1集合エレメント50の凹部51の角部59が位置する。この場合は、第1集合エレメント50の角部59が上述した分流部や合流部として機能する。
【0058】
このように、相互に対向状態に対面配置された両集合エレメント50,60の間には、環状流入路74から流入された流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両集合エレメント50,60の放射線方向(軸線方向と直交する半径方向)に蛇行状態にて流動する拡散・混合流路27(図1参照)が形成されている。
【0059】
さらには、全周にわたって下流側に向けてリング状に開口する環状流出路73の終端部と、全周にわたって上流側に向けてリング状に開口する環状流入路74の始端部とは、整合状態にて近接・対面して形成されるため、環状流出路73→環状流入路74→集合・混合流路28へと流動する流体Rの圧力損失を大幅に低下させることができて、シール部であるOリング26からの流体漏れを堅実に回避することができる。
[エマルション燃料生成装置]
エマルション燃料を生成するエマルション燃料生成装置80は、図6に示すように、前記した静止型流体混合装置10を具備して構成している。すなわち、エマルション燃料生成装置80は、静止型流体混合装置10の導入口15に流体Rを導入する導入管20を接続する一方、導出口16に流体Rを導出する導出管21を接続している。導入管20には導入用ポンプP1を設けて、導入用ポンプP1により導入口15を通して流体Rを静止型流体混合装置10に圧送するようにしている。そして、導入用ポンプP1により導入管20を通して異なる複数種類の流体R(例えば、液体と気体)を静止型流体混合装置10に圧送して導入し、静止型流体混合装置10により流体Rを混合処理可能としており、混合処理が施された流体Rは導出管21を通して導出可能としている。
【0060】
導出管21の中途部と導入管20の導入用ポンプP1よりも下流側に位置する中途部との間には、導出側三方弁22と導入側三方弁23とを介して流体戻し管24を介設している。流体戻し管24の中途部には戻し用ポンプP2を設けている。各ポンプP1,P2としては、気液混合移送が可能なポンプ、すなわち、気液混合流体であるエマルション燃料を圧送する際にも、安定した吐出圧力及び吐出流量を確保することができるポンプ(例えば、株式会社ニクニ製の「気液移送ポンプ」)を使用することができる。
【0061】
このように構成して、エマルション燃料生成装置80では、導出側三方弁22と導入側三方弁23を適宜切り替えて、流体Rを導入管20→静止型流体混合装置10→導出管21→導出側三方弁22→流体戻し管24→導入側三方弁23→導入管20を通して循環させる循環回路25を形成可能としている。この際、循環回数ないしは循環時間を所望に設定することで、流体成分を超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)することができるとともに、均一な大きさに微細化することができる。
【0062】
混合処理対象となる流体Rは、液体と液体、液体と気体、粉体と液体の組み合わせが考えられるが、ここでは液体である連続相としての燃料油及び分散相としての水と、気体である微量の空気を混合処理して、微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。燃料油と水の混合比を調整することにより、適正な燃焼条件下で内燃機関を燃焼させる燃料として使用することができる。また、燃料油としては、ガソリン、航空タービン用燃料油(ジェット機燃料油)、灯油、軽油、ガスタービン用燃料油、重油などがあるが、本実施形態は、特に重油の改質に有効なものであり、廃油であっても改質して、有効利用可能な改質廃油となすことができる。さらに、難燃性の廃油を燃料油として用いた場合でも、本実施形態に係るW/O型のエマルション燃料とすることで安定的に燃焼させることができる。また、空気は導入管20に吸気管81を連通連結し、吸気管81から外気をエジェクタ効果(導入管20中の圧力と吸気管中の圧力との圧力差を利用した吸引効果)によりを取り入れ可能としている。82は吸気管81の中途部に取り付けた流量調整弁である。
【0063】
ここで、エマルション燃料を製造するに際して、混合される燃料油と水の体積比は、燃料油:水=6〜9:4〜1である。燃料油としてA重油を用いる場合は、好ましくは、燃料油:水=8:2、燃料油としてC重油を用いる場合は、好ましくは、燃料油:水=8.5:1.5、燃料油として廃油を用いる場合は、好ましくは、廃油:水=9:1の体積比で混合することにより、エマルション燃料を生成することができる。気体である微量の空気は、例えば、吸気管81から吸気される外気の量を、燃料油と水の混合液の体積(所定流量)の0.1%〜3%、好ましくは1%前後(0.7%〜1.2%)に流量調整弁82により設定して、燃料油と水の混合液に混合されるようにすることで、気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。
【0064】
このように構成して、エマルション燃料生成装置80では、導入管20を通して流体Rとしての燃料油と水と微量の空気を静止型流体混合装置10の導入口15に導入して、静止型流体混合装置10により流体Rを混合処理する。この際、流体Rは循環回路25を通して所望の回数ないしは時間だけ循環させて混合処理することができる。そして、混合処理終了後、つまり、気泡混じりのエマルション燃料が生成された後は、導出側三方弁22を切替操作して、導出管21の終端部から回収することができる。
【0065】
連続相としての燃料油と、分散相としての水と、微量の空気とを静止型流体混合装置10により微細化して混合することにより、浮力が減少した微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。この際、浮力が減少した微細な気泡は、疎水性であるため、水滴の表面には付着せずに、燃料油中に分散して、気−液界面の面積(燃焼表面積)を増加させるとともに静電分極により表面活性(界面活性剤のような機能)を発揮して、微細化した水滴の合一を防止して、水滴をエマルション燃料中で安定化させることができる。その結果、かかるエマルション燃料では水滴径の分散が均一化して、かかるエマルション燃料を例えば燃焼装置で燃焼させると、良好な燃焼効率を確保することができて、すすや黒煙が発生するという不具合を解消することができる。
【0066】
ここで、微量の空気の直径をナノレベルないしはサブミクロンレベルの超微細な気泡となした場合には、直径がナノレベルないしはサブミクロンレベルの超微細な気泡混じりのエマルション燃料となすことができる。この場合、超微細な気泡によるより一層の気−液界面の面積(燃焼表面積)増加、及び、静電分極による表面活性(界面活性剤のような機能)の増大を図ることができて、微細化した水滴の合一を防止して、水滴をエマルション燃料中でより一層安定化させることができる。その結果、良好な燃焼効率をより一層向上させることができる。なお、ナノレベルとは、1μm未満のレベルをいう。サブミクロンレベルとは、0.1μm〜1μmのレベルをいう。
【符号の説明】
【0067】
10 静止型流体混合装置
11 ケーシング体
12 混合ユニット
13 左側端部壁体
14 右側端部壁体
30 第1拡散エレメント
40 第2拡散エレメント
50 第1集合エレメント
60 第2集合エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対向させて配置するとともに、両拡散エレメントの間に中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路を形成し、
円板状の第1集合エレメントに、中央部に流体の流出口を形成した円板状の第2集合エレメントを対向させて配置するとともに、両集合エレメントの間に周縁部側から流入した流体を中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合する集合・混合流路を形成して、
拡散・混合流路の終端部と集合・混合流路の始端部を接続した混合ユニットを具備する静止型流体混合装置であって、
拡散・混合流路は、第1・第2拡散エレメントの対向面にそれぞれ同形・同大の多数の凹部を配列して形成して、各拡散エレメントの凹部の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように位置を違えて配置し、
集合・混合流路は、第1・第2集合エレメントの対向面にそれぞれ流体の流出口を中心とする同一円周上に同形・同大の多数の凹部を配列して形成するとともに、半径方向には周縁部側から中央部側に向けて凹部の開口面積を漸次縮小させて形成し、かつ、中央部側の凹部の最小開口面積を前記拡散エレメントの凹部の開口面積以上となした凹部を複数の列状に配置して、両集合エレメントの凹部の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように円周方向に位置ずれさせて配置したことを特徴とする静止型流体混合装置。
【請求項2】
流体の流入口を中心とする同一円周上に配置した各拡散エレメントの凹部の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させる一方、
流体の流出口を中心とする同一円周上に配置した各集合エレメントの凹部の数は、半径方向の各列において同一となしたことを特徴とする請求項1記載の静止型流体混合装置。
【請求項3】
連続相としての燃料油と分散相としての水との混合液に微量の空気を付加した流体を、請求項1又は2記載の静止型流体混合装置により混合して微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することを特徴とするエマルション燃料生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91011(P2013−91011A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233178(P2011−233178)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(504244173)株式会社MGグローアップ (15)
【出願人】(392024518)丸福水産株式会社 (16)
【Fターム(参考)】