説明

静脈内アクセスのためにカテーテルの位置を検出するための方法および装置

【課題】静脈内アクセスのためのカテーテルの位置の検知のためのシステムを提供する。
【解決手段】カテーテル10の針14の先端15を照明する光源を有するカテーテルと、皮膚表面より下にある画像脈管構造と針先端の位置とを同時に検知し且つ応答して画像を皮膚に投影することにより、脈管構造に対する針先端の位置を明らかにする赤外線検知器兼画像プロジェクタとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像に関し、さらに詳細には、静脈内アクセスのためにカテーテルの位置を検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静脈内(IV)カテーテルは、採血や輸液のために静脈にアクセスするのに用いられる。静脈への確かな挿管を確認する上で、看護師や臨床医を支援する技術は非常に少ない。末梢IVアクセスのための標準的な技術は、止血帯を使用して静脈を鬱血させる、その後、適切な静脈を見つけるために触診する、最後にカテーテルの針を挿入するなどである。臨床医は、静脈に針を挿入する際に「感触」に頼ったり、カテーテルの静脈挿入完了を確かめるために血液フラッシュバック(逆血)の確認に頼ったりしなければならない。この試行錯誤の手順は、統計によると、臨床医が静脈挿管を完了するには平均2.4回の試行と最大20分とが必要である。患者が経験する痛みや不安の増加とは別に、IVケアに関連する実際のコストがある。患者の処理能力、看護師の時間、消耗品、および感染率の増加は全て、病院および政府の医療費の増加の一因となる。
【0003】
静脈アクセスを支援し、且つ上述した従来の試行錯誤の手順の短所を克服するシステムが開発されている。そのようなシステムの一例は、Christie Digital Systems,Inc.の一部門であるChristie Medical Holdings,Inc.が製造および販売するVeinViewer(登録商標)赤外線検知器兼画像プロジェクタであり、このシステムは、米国特許第7,239,909号明細書、ならびに米国特許出願公開第2010/051808号明細書、米国特許出願公開第2007/0158569号明細書、および米国特許出願公開第2006/0122515号明細書に記載され、これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
VeinViewer(登録商標)によると、拡散赤外線を用いて皮膚表面より下にある脈管構造を撮像し、その後画像を皮膚上に投影して脈管構造の位置を明らかにする。脈管構造の画像は、脈管構造自体と正確に同じ解剖学的位置において、且つその三次元的な状況(患者の皮膚)において投影されるため、非常に容易に血管が見える。また、臨床医はトランスデューサを手に持たないので、静脈アクセスに取り組む上で両手が自由になる。
【0005】
VeinViewer(登録商標)システムは、病院で広く採用されているが、挿管が成功したことが検知不可能であるため、同システムの用途はいくぶん限定されている。この点については、超音波が、挿管が成功したどうかを示すことが出来る現在唯一の視覚化技術である。超音波は、PICCラインやCVC線など、深部静脈アクセスへの使用が一般的であるが、末梢静脈には通常使用されない。
【0006】
脈管構造の画像取得用の超音波画像化システムの例として、血管造影画像を取得し且つ血管内のカテーテルの位置を特定するためのシステムを開示する米国特許出願公開第2006/0036167号公報や、体内のカテーテルの位置を特定し、且つカテーテルの位置の血管造影表示とカテーテルが取り込んだ画像との2つの画像を同時に表示するシステムを開示する米国特許第7,930,014号公報などがある。
【0007】
関心のある他の先行技術は、次のとおりである。米国特許出願公開第2008/0194930号公報、米国特許出願公開第2010/0094126号公報、米国特許出願公開第2008/0039715号公報、米国特許出願公開第2006/0036164号公報、米国特許出願公開第2011/0009738号公報、ならびに米国特許第6,178,340号公報、米国特許第5,519,208号公報、米国特許第5,608,210号公報、および米国特許第4,817,622号公報。
【0008】
米国特許出願公開第2008/0194930号公報には、IRカメラ(赤外線カメラ)による針の検知を容易にするために、カテーテルの針の表面を改良することが開示されている。
【0009】
米国特許出願公開第2010/0094126号公報には、光ファイバを使用し、同光ファイバを針の端の外に延ばすことによって針先端の位置を特定すること、及び吸収されて再放出された光を利用して静脈を見つけることが開示されている。同出願は、臨床医が皮膚上で針を通過させて、これに対応する光学的リターンを観察することにより、皮下静脈の存在を検知することを想定している。針又は静脈の画像化は開示されていない。
【0010】
米国特許第6,178,340号公報には、患者の皮膚表面近くの静脈を検知する赤外線画像化システムが開示されている。静脈の位置を臨床医に示すのに、スクリーンが用いられている。カテーテル/針の画像化は、開示されていない。
【0011】
米国特許第5,519,208号公報には、近赤外線LEDを用いて、針/カテーテルの先端を表示することが開示されている。針/カテーテルの画像は、スクリーンを通して見るか、又は鏡を介して見ることにより画像と患者とを同時に見ることができるようになっている。
【0012】
米国特許第5,608,210号公報もまた、近赤外線LEDを用いて、針/カテーテルの先端を表示することが開示されている。針/カテーテルの画像は、臨床医が着用する特別なヘッドギアを通して見る。頭部装着型の機器は、静脈挿管を試みながらモニタを見るという問題を克服することを意図したものである。
【0013】
米国特許第4,817,622号公報には、ファイバを用いて組織を照明することが開示されている。
【0014】
米国特許出願公開第2008/0039715号公報および米国特許出願公開第2006/0036164号公報には、先端を発光させて、カテーテルの患者内での位置を特定することと、このような検知を容易にするためのパルス光信号の利用とが開示されている。パルス信号はカテーテルの位置特定を容易にすることを意図したものであり、既知の信号タイプ、例えば周期的なパルスを機器に与えて体内での検知および追跡を行う。
【0015】
米国特許出願公開第2011/0009738号公報には、針の表面特性の変化を利用してIRカメラによる追跡を容易にすること、また血液の特性を利用してIRカメラが受信した信号を修正することにより、挿管の成功を検知することが開示されている。
【0016】
本明細書の一態様の目的は、赤外線ベースの画像を利用してカテーテルの場所を検知する一方、確かな挿管を検知する際における先行技術の難題を解消するシステムを記述することである。
【発明の概要】
【0017】
本発明の一態様では、針と、光源と、カメラと、プロジェクタとを備えるカテーテルの挿管を検知するためのシステムを提供する。光源は、患者の皮膚の所望の範囲を照明する。光は、組織によって反射され散乱されるが、血液中のヘモグロビンによって吸収される。カメラは、反射された光を検知し、その後、カメラが取得した画像をプロジェクタが患者の皮膚に投影することにより、患者の血管の地図を臨床医に見えるように提示する。針の先端から光を投影することにより、当該針が検知可能になる。これは、ファイバを針の先端又はその近くまで通すことによって、又は中空にした針自体を光ガイドとして用いることによって達成され得る。光は、静脈周辺の組織を照明するが、血液中のヘモグロビンによって吸収される。従って、針が患者の皮膚の中に押し込まれる間も、先端はカメラには見え続けており、見えなくなるのは、針先端から放出される光が血液中のヘモグロビンによって吸収され、カメラが検知する光が大幅に減少することによって分かる挿管完了の時点である。また、臨床医が針の位置あわせをするのを支援するために、針の画像を患者の皮膚に投影してもよい。これは、皮膚と針先端とを照明するのに2つの異なる波長の光を使用して、又は皮膚および針先端を交互に照明する光の交互パルスによって達成され得る。
【0018】
これらは、以下でさらに完全に記述および主張されるように、後に明らかになる他の態様や他の利点と共に、構造および動作の詳細の中に存在し、本明細書の一部を形成する添付の図面に対して参照が行われ、図面における同様の参照番号は、全体を通して同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】先行技術による、従来のIVカテーテルの断面図である。
【図2】第1の実施形態による、カテーテルの位置検知のための光源を有するIVカテーテルの断面図である。
【図3】第2の実施形態による、カテーテルの位置検知のための光源を有するIVカテーテルの断面図である。
【図4】第3の実施形態による、カテーテルの位置検知のための光源を有するIVカテーテルの断面図である。
【図5】さらなる実施形態による、カテーテルの位置検知のための光源を有するIVカテーテルの断面図である。
【図6】静脈内アクセスのためのカテーテルの位置検知システムの実施形態例の一部をなすIRイメージャおよびプロジェクタの概略的表示である。
【図7】さらなる実施形態による、図2〜図5のカテーテルと図6のIRイメージャおよびプロジェクタとを組み込んだ静脈内アクセスのためのカテーテルの位置検知システムの概略的表示である。
【図8A】図7のシステムを用いて患者の腕に投影した画像である。
【図8B】図7のシステムを用いて患者の腕に投影した画像である。
【図8C】図7のシステムを用いて患者の腕に投影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、末梢IVアクセスのための従来的な先行技術のカテーテル10を示しており、カテーテル筐体12が誘導針14の上を覆っており、同誘導針14は針筐体16内で終端している。誘導針14は、カテーテルを静脈内に挿入するために使用される。静脈が挿管されると、誘導針14は取り除かれて、カテーテル10が適切な場所に残る。
【0021】
第1の実施形態によると、図2に示されているように、図1のIVカテーテル10を、針14内に配置された光ファイバ光ガイド18を介して照明することが出来る。光ガイドは、針筐体16から照明されて、針先端15に光を伝搬する。照明源又は照明器(図6および図7を参照してさらに詳述する)が発する光の波長は、組織に対しては透過性があるが、ヘモグロビンによって容易に吸収されるように選択されている。適切な波長範囲は、650〜1100nmである。照明器は、レーザ、LED、その他の好適な光源であってもよく、筐体16内に配置可能であるか、又は光ファイバ19および光源結合器20を介して遠隔の位置から筐体に接続可能である。結合器20により、光ファイバ19の発光端と光ガイド18との間が正確に位置あわせされる。また、遠隔で照明器を使用すれば、カテーテル周りのあらゆる邪魔がなくなり、挿入が容易になる。
【0022】
図3に示された第2の実施形態においては、光ガイドとして中空の針14が使用されており、ファイバ18が不要となる。光源結合器20は、針筐体16に直接取り付けられており、針14の後部と自ら位置あわせする。光は、針の軸(針14内)を伝搬し、針14の鋭利な側(先端)で外部に放射され、分散される。
【0023】
窓24は、医療承認を受けたプラスチック製の透明窓であって、プラスチック製の針筐体16に埋め込み成型されている。窓24の目的は、血液による光源結合器20の汚染を防ぎつつ、挿管のための視覚検知器として使用可能な血液フラッシュバックチャンバを作成することである。前記チャンバは、針筐体16内の窓24で区切られた図3の図示左側の空間である。針筐体16が透明であるので、前記チャンバに針14を通じて流れ込んだ流体(血液)が針筐体16外から視認可能となる。
【0024】
図4に例示された第3の実施形態においては、平凸レンズ25が設けられており、この平凸レンズ25の半径は、光ファイバ19のファイバ開口数出力に適合しているため、針14への光学的な結合が良好となる。レンズ25は、製造プロセスの一部として、光学窓24に埋め込み成形してもよい。レンズ25は、光ファイバ19から放出された発散光を、針14の端にある開口の一点に集束させる。これにより、針先端15に対する光結合と光伝達が最大限に確保される。
【0025】
図5に例示されたさらなる実施形態によると、針筐体16の壁に自己芯合わせ機構26が設けられており、光源結合器20が光学的な窓24とレンズ25とに対して確実に自己芯合わせする。これは、光源結合器に合わせて針筐体の壁にわずかなテーパを設けることによって達成しても良い。この方法では、結合器は、自己芯合わせする一方で、摩擦により所定位置に「係止」することもできる。あるいは、直角掛けのねじ山(図示せず)を用いて光結合器20を取り付けてもよい。この場合、光結合器20を係合するために、整合するねじ山(図示せず)を針筐体16に設ける。
【0026】
図6は、後で詳述する図7のシステムに組み込むための、上述したChristie Medical Holdings,Inc.が製造および販売するVeinViewer(登録商標)及び赤外線検知器兼画像プロジェクタ27の改良版の概略的表示である。これ以降に記述する改良部分は別として、赤外線検知器兼画像プロジェクタは、市販されている製品であって、当業者にとっての常識であり、上記の特許および特許出願にも記述されている。概して、赤外線検知器兼画像プロジェクタ27は、IR照明器28と、IRイメージャ29と、画像処理回路および画像光学系30と、プロジェクタ32とを備える。IRライト(IR照明器28)が患者の組織を照明する光(光35)は、ヘモグロビンによって吸収される650〜1100nmの範囲の光である。吸収されない光は、患者の組織に反射されて戻り、IRイメージャ29が検知する。反射画像は、画像処理回路および画像光学系30によって処理され、その後、リアルタイムで戻ってプロジェクタ32を介して再投影され、患者の皮下血管の位置を示す。IRイメージャ29は、環境における背景IR光から反射画像光を区別する遮断フィルタを備えている。なお、前記背景IR光は、例えば、室内照明や昼光等の光である。
【0027】
IR照明器28に加えて、IVカテーテル10を照明する追加IR照明器28Aを設けてもよく、照明器28Aからの光を検知するために、第2のIRイメージャ29Aと光学セパレータ31を設けてもよい。光学セパレータ31は、バンドパスダイクロイックフィルタ(a band-pass dichroic filter)であって、後述する第1、第2の波長の光を分離する。図6の改良システムは、図2又は図5のいずれかのIVカテーテル10と組み合わせて、図7に示すような、静脈内アクセスのためにカテーテルの位置を検知するシステムを構築してもよい。
【0028】
図7のシステムにおいて、赤外線検知器兼画像プロジェクタ27は、USBケーブル33を介して追加IR照明器28Aに接続され、この照明器28Aが光ファイバ19および光源結合器20(図2〜図5)を介してIVカテーテル10を照明する。この追加光源(IR照明器28A)の照明波長(光34の波長)もまた、650〜1100nmの範囲であるが、IR照明器28から出力される第1の波長(光35の波長)とは異なる第2の波長であり、少なくとも50nmは第1の波長から離れていることが好ましい。カテーテルの先端15から放射している光34は、光学セパレータ31を透過し、IRイメージャ29Aに検知される。照明器28からの光35でヘモグロビンによって吸収されていないものは、組織によって反射されてIRイメージャ29が検知する一方、ヘモグロビンによって吸収された光は、反射光35の不在として静脈38を示すことになる。ヘモグロビンによって吸収されてない光35は、光学セパレータ31によってフィルタされるので、IRイメージャ29Aに検知されない。従って、イメージャ29が静脈の画像と検知するのと同時に、イメージャ29Aが針14の画像を検知する。両検知器は、2つの画像の画像位置が確実に整合するように、アスペクト比と解像度とが同一であることが好ましい。IRイメージャ29Aは、空間における針の軸方位を定めるために、カテーテル筐体16も検知可能である。具体的には、IRイメージャ29Aは、照明器28Aから照射され、透明なカテーテル筐体16から拡散する光を検知することにより、当該カテーテル筐体16を検知する。針の先端15と筐体とが検知されると、赤外線検知器兼画像プロジェクタ27は、例えば、図8A〜図8Cに示されているように、プロジェクタ32によってIVカテーテル10を画像の他の部分とは異なる色で照明することにより、画像マップにおける組織36と静脈38とに対する針14の相対位置を示す画像40を皮膚表面に投影することができる。
【0029】
針が皮膚内に押し込まれると、選択された波長は容易には組織に吸収されないため、赤外線検知器兼画像プロジェクタ27のIRイメージャ29Aは、照明された先端15を検知し続ける。赤外線検知器兼画像プロジェクタ27が針全体を投影し続けるため、臨床医は静脈38に対する針の相対位置を視覚的に参照できる。針が静脈を貫通すると、上述したように、血液が針を通じてフラッシュバックする。血液は、650〜1100nmの範囲の波長をよく吸収するので、針先端15から放射する光は、大幅に減少する。光が減少すると、IRイメージャ29Aは、結局のところ光が検知されない状況を検知する。この状況が、画像処理回路にフィードバックされ、これに応じて針の投影色を変更して、針が血流に入ったことを臨床医に知らせる。血管が挿管されたことをオペレータに知らせるために、文章による追加情報を画像上に加えることも可能である。
【0030】
波長の分離についても、単一のIRイメージャ29を少なくとも1つの他の方法を用いれば、検知可能である。同一寸法の2つのバンドパスフィルタ(図示せず)で構成された鏡を用いて、第1、第2の波長(光35、34の波長)を分離することができる。第1のフィルタは、第1の波長をイメージャ29の半分にまで反射し、第2の波長を転送可能にする。第2のフィルタは、イメージャ29の残りの半分にまで第2の波長を反射し、第1の波長を転送可能にする。イメージャ29の前に好適な画像光学系を設けて、各波長をイメージャの各半分の一方に集束させてもよい。画像の両半分は、アスペクト比および解像度が同一となるように分割されている。その後、得られた静脈又はカテーテルの画像を処理し投影画像に重ねることにより、カテーテルの場所が特定される。
【0031】
さらなる実施形態によると、IR照明器28Aが発する光の波長(カテーテル10の照明)に光パルス変調を用いても良いが、IR照明器28が発する光の波長と同じ波長とする。これにより、第2の波長を検知するためのイメージャを追加する必要がなくなり、異なる波長を解像するために必要となる画像光学系30の設計が簡素化される。この実施形態において、イメージャ29は、20〜30フレーム毎秒の速度で画像を取得する。好適には、この速度を二重式で維持する、すなわち静脈のパターンと針との画像を交互に切り替えるのに、40〜60フレーム毎秒の速度が必要となる。しかしながら、この速い速度で取得すると、イメージャに当たる光量が減少し、その結果、信号対雑音比が減少する。これを補償するには、画素ビニングを採用し、解像度を下げて信号対雑音比を改善することが可能である。40〜60フレーム毎秒で適切な信号対雑音比を得ることが出来ない場合には、フレームレートを20〜30フレーム毎秒に下げてもよいが、投影画像に目に見えて遅れが生じる。
【0032】
タイミングを合わせた光パルスを用いれば、IR照明器28およびIVカテーテル10用のIR照明器28Aを順次パルス化することによって、静脈マップとカテーテルの画像が分離されるので、任意の時点において、IRイメージャ29は静脈の画像又はIVカテーテルの画像のいずれか一方だけを検知することになる。パルス変調を用いれば、静脈の画像とカテーテルの画像とに対して、赤外線イメージャ29が同じ波長で動作可能である。
【0033】
この実施形態については、IR照明器28とIR照明器28Aとが交互にオンとなるようにタイミングが図られている。IR照明器28とIR照明器28Aとが交互にオンとなるのに合わせて、イメージャ29が事実上シャッタ開閉され、照明器28又は照明器28Aから散乱又は伝達された光を交互に連続フレームで取得するように同期が行われる。フレームの同期は、2つの方法のうちの一方で行ってもよい。
【0034】
第1は電子的同期であって、赤外線検知器および画像プロジェタ27内のマイクロコントローラによって、IR照明器28とIR照明器28Aとが交互にオンオフされると共に、IRイメージャ29のシャッタが開閉される。なお、マイクロコントローラは、IR照明器28、IR照明器28A及びIRイメージャ29に通信可能に接続されている。イメージャ29は、A、B、A、B等のような連続フレームで画像取り込み可能である。マイクロコントローラは、IR照明器28がオンであるときに、イメージャ29により取り込まれた画像をA、IR照明器28Aがオンであるときに、イメージャ29により取り込まれた画像をBであると認識し、図8A〜図8Cのようにプロジェクタ32を介して画像A、Bを患者の皮膚に投影する。ここで、Aは静脈の画像であり、Bはカテーテルの画像であり、フレーム間ではイメージャ29は、仮想的に閉じられている。この配列を用いて、フレーム取り込みAの間にIR照明器28を照明させ、フレーム取り込みBの間に照明器28を消灯させる。また、同期信号をUSBケーブル33で出力し、フレーム取り込みBの間に、照明器28Aに外部にある針先端15を照明させ、フレーム取り込みAの間に照明器28Aを消灯させる。
【0035】
第2は光学同期であって、上述したものと同じ同期パターンを使用するが、光学信号を用いて同期してもよい。この場合、マイクロコントローラが所定のパルス信号に従って照明器28のオンオフを切り替える。針先端照明器28Aを赤外線検知器および画像プロジェタ27のごく近傍に配置し、照明器28が点灯されたときに(フレーム取り込みA)、IRイメージャ29に設けられた検知用のフォトダイオードがこの光を検知すると、マイクロコントローラに信号を送信する。マイクロコントローラは、前記信号を受信している間、針先端照明器28Aを消灯させ、前記信号を受信しなくなると、照明器28Aを点灯させる。この場合も、電子的同期と同様に、イメージャ29が、画像A、Bを交互に取り込み、マイクロコントローラが画像A、Bを交互に認識し、プロジェクタ32を介して画像A、Bを患者の皮膚に投影する。
【0036】
照明器28および28Aから受信された光を区別するためのより単純で最終的な方法は、強度フィルタリングを使用することである。2つのIRイメージャ29および29Aを用いて、照明器28および28Aが異なる波長で患者に投影した反射光を検知する代わりに、単一のIRイメージャ29を用いて、照明器28および28Aが同じ波長であるが異なる振幅又は強度で患者に投影した反射光を検知するようにしてもよい。照明器28Aからの光は、照明器28からの光よりも明るくしてもよく、IRイメージャ29に検知され、プロジェクタ32を介して患者の皮膚に戻されて再投影され、カテーテルの針はより明るいため区別できる。針先端15からの光は、静脈周りの大量の組織から後方散乱される拡散散乱光よりも、かなり明るく集束している。この相対的輝度差を画像処理ソフトウエアと回路とグレースケールフィルタを用いて、背景の静脈の画像から針14を判別することができる。しかしながら、この技術は、画像化システムの全体的なダイナミックレンジを減少させる。具体的には、前記回路に、光の輝度を示すしきい値が記録されている。針先端15からの光(照明器28Aから照射される光)の輝度は、前記しきい値の輝度よりも上に設定されている。組織からの反射光(照明器28から照射される光)の輝度は前記しきい値よりも下に設定されている。したがって、マイクロコントローラは、IRイメージャ29により検知された光の輝度が前記しきい値よりも上であるときには、針14の画像であると認識し、IRイメージャ29により検知された光の輝度が前記しきい値よりも下であるときには、背景の静脈の画像であると認識する。IRイメージャ29が、針先端15に加えて、透明なカテーテル筐体16から拡散する光を検知することにより、当該カテーテル筐体16を検知する場合にも、上述した相対的輝度差を利用し背景の静脈の画像からカテーテル筐体16を判別することができる。
【0037】
図8A〜図8Cは、図7のシステムを用いて取得した静脈マップ画像を示しており、カテーテル10と照光したカテーテルの先端15とを有色投影した画像である。ゆえに、図8Aにおいて、挿管前には、先端15を第1の色(例えば赤色)で示してもよく、図8Bは、静脈挿管が行われたことを示すために、先端15を第2の色(例えば黄色)で示し、図8Cにおいては、カテーテルの空間方位を示すために、皮膚表面下にあるカテーテルの針14が、色付きの線(例えば黄色)で示している。
【0038】
本発明は、上記の実施形態および変形例に関して記述してきた。他の実施形態又は変形例が可能である。例えば、図3のように窓24を設ける代わりに、針の端に光プラグを配置して、血液フラッシュバックが光源結合器20を汚染するのを防ぐようにしてもよい。この光プラグは、例えば医療承認を受けたプラスチック製の透明窓を針14の端に配置して、中空針を通って光を伝送できるようにしたものであってもよい。
【0039】
詳細な明細書から本発明の多くの特徴と利点とが明らかであり、従って、添付の特許請求の範囲の意図は、本発明の真の精神および範囲に該当する本発明のそのような全ての特徴と利点とを含むことである。さらに、当業者には多くの改変や変更が容易に思い浮かぶため、図示および記述した厳密な構成や動作に本発明を限定することは望ましくなく、従って、好適な改変および均等物は、全て特許請求の範囲に依ることができ、その範囲内に該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈内アクセスのためにカテーテルの位置を検知するシステムにおいて、
カテーテルであって、その針先端を照明する照明器を有するカテーテルと、
皮膚表面より下にある脈管構造と前記針先端の位置とを同時に検知し且つ応答して前記脈管構造の画像を前記皮膚に投影することにより、前記当該脈管構造に対する前記針先端の相対位置を明らかにする赤外線検知器兼画像プロジェクタと
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記針内に配置され且つ前記先端において終端する光ガイドを備え、
前記照明器は、前記光ガイドを照明することにより、前記針先端に光を伝搬させることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記照明器が発する光の波長は、組織に対しては透過性があるがヘモグロビンによって容易に吸収される波長であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記波長は、650〜1100nmの範囲であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記照明器は、レーザであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記照明器は、LEDであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記照明器は、前記カテーテルの前記針先端から遠い方の端において筐体内に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記照明器からの光は、光源結合器を介して針筐体に結合された光ファイバを通って伝搬するようになっており、
前記筐体は、前記カテーテルの前記針先端から遠い方の端に配置されており、
前記結合器により、前記照明器と前記光ガイドとの間が位置合わせされることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記照明器からの光は、前記針を通って前記先端に向かうことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、光源結合器を介して針筐体に結合された光ファイバに接続されており、
前記筐体は、前記カテーテルの前記針先端から遠い方の端に配置されており、
光が前記針を通って前記先端に向かうように、前記結合器により前記照明器と前記光ガイドとの間が位置合わせされるようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、医療承認を受けたプラスチック製の透明窓をさらに備えており、
当該窓は、挿管の視覚表示部として用いる血液フラッシュバックチャンバを作成するために前記針筐体に埋め込み成型されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記窓に埋め込み成型された平凸レンズをさらに備えており、当該レンズの半径は、前記光を前記針に光学的結合するために前記光ファイバのファイバ開口数出力に適合していることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記照明器は、組織に対して透過性があるがヘモグロビンによって容易に吸収される波長で光を発生させることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記波長は、650〜1100nmの範囲であることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記照明器は、レーザであることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記照明器は、LEDであることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記赤外線検知器兼画像プロジェクタは、
前記脈管構造を照明する第1の照明器と、
前記カテーテルを照明する第2の照明器と、
ヘモグロビンによって吸収されていない反射光を検知する第1のIRイメージャと、
前記針先端からの光および前記カテーテルからの光を検知するための第2のIRイメージャとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記第1および第2の照明器の照明波長は、各々650〜1100nmの範囲であるが異なる波長であり、少なくとも50nmは互いから離れていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記赤外線検知器兼画像プロジェクタは、
前記脈管構造を照明する第1の照明器と、
前記カテーテルを照明する第2の照明器と、
ヘモグロビンによって吸収されていない反射光に加えて、前記針先端からの光および前記カテーテルからの反射光も検知するIRイメージャとを備えており、
前記第1の照明器は、タイミングをとった光パルスを生成するように変調されており、
前記第2の照明器は、前記第1の照明器が光パルスを生成していない時に、タイミングをとった光パルスを生成するように変調されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、
前記第2の照明器は、前記IRイメージャのごく近傍に配置されることにより、前記第1の照明器が点灯したときには、前記IRイメージャが前記第1の照明器からの光を検知して前記第2の照明器を消灯させるようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記赤外線検知器兼画像プロジェクタは、
前記脈管構造を照明するための第1の照明器と、
前記カテーテルを照明するための第2の照明器と、
ヘモグロビンによって吸収されていない反射光に加えて、前記針先端からの光および前記カテーテルからの光も検知するIRイメージャとを備えており、
前記第2の照明器からの光は前記第1の照明器からの光よりも明るく、これにより前記IRイメージャが、前記第2の照明器からの明るい光とヘモグロビンによって吸収されていない第1の照明器からの反射拡散光とを区別するようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記IRイメージャは、画像処理とグレースケールフィルタとを用いて、前記明るい光と前記反射光とを区別することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記画像を有色投影を用いて前記皮膚に投影することにより、前記脈管に対する前記針の相対位置を明らかにすることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公開番号】特開2013−9949(P2013−9949A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110436(P2012−110436)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【出願人】(508145241)クリスティー デジタル システムズ ユーエスエー インコーポレイティッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Christie Digital Systems USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】10550 Camden Dr. Cypress, CA 90630 , USA
【Fターム(参考)】