説明

静脈撮像装置、静脈画像補間方法およびプログラム

【課題】装置の小型化を図り、熱雑音により生じる画質の劣化を防止することが可能な静脈撮像装置、静脈画像補間方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る静脈撮像装置の撮像素子は、レンズアレイによって集光された生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する。本発明に係る静脈撮像装置は、熱雑音出力データに基づいて熱雑音の測定を行い、この熱雑音の測定結果に基づいて撮像時の温度を推定する。本発明に係る静脈撮像装置は、推定した撮像時の温度に基づいて、画像の補間処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈撮像装置、静脈画像補間方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体個人認証は、今後のネットワーク社会において、権利を守る為に非常に重要な技術である。特に、常時、他人が本人になりすまして、金銭やコンテンツ、権利などをネット越しに盗むことが可能であるインターネット上での商取引では、生体個人認証は、暗号だけでは解決できない領域を守る技術として注目されている。しかしながら、生体個人認証の中でも指紋や虹彩(アイリス)などを利用したものは、偽造の問題が解決できない。この点、静脈のパターンのうち外部から容易に撮像できない部位を用いた個人認証技術は、判定精度の高さや偽造、成りすましが困難であるため、次世代の生体個人認証として期待されている。
【0003】
他方、特に静脈の画像を撮像するための撮像方式を実現するにあたって、光源の位置の制限が大きいため、撮像デバイスの平面構造化が困難であった。この問題を解決するために、広角レンズなどによる方法は提案されてきた。しかしながら、この方法では、撮像デバイスと指との距離を限定することが困難であるとともに、ユーザ側が確実に同じ距離に指をおく必要があることが必要となることから、認証の再現性が確保できなかった。また、大判センサによる接触式または非接触式のデバイスは、原理的には理想的であるが、センササイズが大きくなるため、高価な光学材料などに起因するコストの問題があった。さらに、センサで生じる熱雑音は温度上昇に比例して増加するため、撮影時の外気温が高温となると、認証に用いられる画像の画質が低下することとなるため、認証精度が悪くなるという問題があった。
【0004】
このように、外気温が撮像デバイスに与える影響は大きいため、撮像デバイスの温度を把握することが重要となる。以下に示す特許文献1では、露光装置に用いられた光学部材の温度を検出する温度検出手段と、検出した温度が所定の範囲内となるように光学部材の温度を調整する温度調整手段とを装置に設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−349957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような温度検出手段や温度調整手段を装置に設けると、装置の小型化が困難となるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、装置の小型化を図り、熱雑音により生じる画質の劣化を防止することが可能な、静脈撮像装置、静脈画像補間方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の受光レンズがアレイ状に配設されたレンズアレイと、前記レンズアレイの端部に設けられ、生体の一部に対して近赤外光を照射する近赤外光照射光源と、前記レンズアレイによって集光された前記生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて前記静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する撮像素子と、前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定する熱雑音測定部と、前記熱雑音測定部により測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定する温度推定部と、前記静脈撮像データ生成領域により生成された前記静脈撮像データを用いて前記静脈の撮像画像を生成し、前記温度推定部により推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈の撮像画像の補間処理を行う静脈画像補間部と、を備える静脈撮像装置が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、熱雑音測定部は、熱雑音出力データ生成領域から出力された熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定する。また、温度推定部は、熱雑音測定部により測定された熱雑音の大きさに基づいて、静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定する。また、静脈画像補間部は、静脈撮像データ生成領域により生成された静脈撮像データを用いて静脈の撮像画像を生成し、温度推定部により推定された撮像温度に基づいて、静脈の撮像画像の補間処理を行う。
【0010】
前記静脈画像補間部は、前記温度推定部により推定された前記撮像温度に基づいて、所定時間分の前記静脈の撮像画像の積分処理および前記静脈の撮像画像からのノイズ除去処理の少なくとも何れかを行うことが好ましい。
【0011】
前記撮像素子は、一つのレンズアレイに対して前記静脈撮像データ生成領域に位置する複数の画素が対応しており、前記静脈画像補間部は、前記静脈の撮像画像の生成に用いられた前記静脈撮像データを出力した画素の周辺に位置する画素から出力された前記静脈撮像データを利用して前記補間処理を行うことが好ましい。
【0012】
前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに対して、前記熱雑音測定部によって前記熱雑音を定量的に処理するための前処理を行う熱雑音出力前処理部を更に備えてもよい。
【0013】
前記熱雑音出力前処理部は、所定時間分の前記熱雑音出力データを累積加算する累積処理、または、前記熱雑音出力データに対するピーク処理の少なくともいずれかを実行してもよい。
【0014】
少なくとも前記撮像素子の駆動制御を行う駆動制御部を更に備え、前記駆動制御部は、前記熱雑音測定部により測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記撮像素子の受光時間およびフレームレートの少なくとも何れかの制御を行ってもよい。
【0015】
前記静脈の撮像画像から静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部を更に備え、前記静脈パターン抽出部は、前記温度推定部により推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈パターンの抽出に用いられるフィルタのフィルタ特性を変更してもよい。
【0016】
前記温度推定部から出力された前記撮像温度が所定の閾値以上であった場合に警告を発する警告部を更に備えてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の受光レンズがアレイ状に配設されたレンズアレイと、前記レンズアレイの端部に設けられ、生体の一部に対して近赤外光を照射する近赤外光照射光源と、前記レンズアレイによって集光された前記生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて前記静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する撮像素子と、を備えた静脈撮像装置の前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定するステップと、測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定するステップと、前記静脈撮像データ生成領域により生成された前記静脈撮像データを用いて前記静脈の撮像画像を生成し、推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈の撮像画像の補間処理を行うステップと、を含む静脈画像補間方法が提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、複数の受光レンズがアレイ状に配設されたレンズアレイと、前記レンズアレイの端部に設けられ、生体の一部に対して近赤外光を照射する近赤外光照射光源と、前記レンズアレイによって集光された前記生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて前記静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する撮像素子と、を備えた静脈撮像装置を制御するコンピュータに、前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定する熱雑音測定機能と、前記熱雑音測定機能により測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定する温度推定機能と、前記静脈撮像データ生成領域により生成された前記静脈撮像データを用いて前記静脈の撮像画像を生成し、前記温度推定機能により推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈の撮像画像の補間処理を行う静脈画像補間機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、装置の小型化を図り、熱雑音により生じる画質の劣化を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る静脈撮像装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】同実施形態に係る静脈撮像装置について説明するための説明図である。
【図3】同実施形態に係る静脈撮像装置について説明するための説明図である。
【図4A】マイクロレンズアレイで撮像した画像について説明するための説明図である。
【図4B】マイクロレンズアレイで撮像した画像について説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係る撮像素子について説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係る撮像素子について説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係る撮像素子について説明するための説明図である。
【図8】同実施形態に係る画素選択部について説明するための説明図である。
【図9】特定の画素からデータを取得する方法について説明するための説明図である。
【図10】特定の画素からデータを取得する方法について説明するための説明図である。
【図11】同実施形態に係る静脈画像補間方法について説明するための流れ図である。
【図12】本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置のハードウェア構成について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)目的
(2)第1の実施形態
(1−1)静脈撮像装置の構成について
撮像部の構成について
撮像部の構造の一例について
マイクロレンズアレイで得られる画像について
撮像素子について
画像処理部の構成について
認証処理部の構成について
特定の画素からのデータの取得について
(1−2)静脈画像補間方法について
(2)本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置のハードウェア構成について
(3)まとめ
【0023】
<目的>
本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置および静脈画像補間方法について説明するに先立ち、静脈撮像装置の概略について説明しながら、本発明の目的とするところについて、まず説明する。
【0024】
生体認証、特に静脈認証において、撮像素子にCCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いたカメラを利用する方式が主流であった。しかしながら、このような静脈認証装置は、指紋認証などに比較して装置が大きなものになるため、応用範囲が限定されていた。
【0025】
そこで、以下で説明する本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置は、大判のセンサとレンズアレイの一種であるマイクロレンズアレイ(Micro Lens Array:MLA)を利用することで、静脈撮像装置の薄型化を実現する。
【0026】
また、大判センサデバイスはシリコン等を用いて形成されるが、シリコンを用いたデバイスでは、温度上昇に伴い熱雑音が増加する。特に、TFTセンサのように薄膜を用いて形成されるセンサデバイスでは、高温でのノイズが顕著となって、撮像された静脈画像の劣化が激しくなる。また、静脈画像の劣化が進むことで、高温時での認証精度が低下してしまう可能性が高くなる。
【0027】
そこで、以下で説明する本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置では、撮像素子の撮像領域の周辺画素を熱雑音の測定用に用いることで、各温度における各部材の最良のサンプリングや画像処理による補正を自動化することを目的とする。
【0028】
(第1の実施形態)
<静脈撮像装置の構成について>
まず、図1〜図3を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る静脈撮像装置の構成について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る静脈撮像装置の構成を説明するためのブロック図である。また、図2は、本実施形態に係る静脈撮像装置の平面図であり、図3は、図2をA−A切断線で切断した場合の断面図である。
【0029】
本実施形態に係る静脈撮像装置10は、例えば図1に示したように、撮像部、画像処理部および認証処理部の3つの部分と、記憶部141と、から構成されている。
【0030】
撮像部は、生体の一部(例えば、指など)を撮像する処理を行う部分である。この撮像部は、例えば図1に示したように、マイクロレンズアレイ101と、近赤外光照射光源105と、撮像素子109と、駆動制御部121と、を主に備える。
【0031】
画像処理部は、撮像部によって生成された静脈に関する画像データ(撮像データ)の取得に際しての処理や、取得した撮像データに対する各種の画像処理を行って、生体の内部に存在する静脈の撮像画像(静脈画像)を生成する部分である。この画像処理部は、例えば図1に示したように、画素データ分割部123と、熱雑音出力前処理部125と、熱雑音測定部127と、温度推定部129と、警告部131と、画素選択部133と、静脈画像補間部135と、を主に備える。
【0032】
認証処理部は、画像処理部によって生成された静脈画像の認証処理を行う部分である。この認証処理部は、例えば図1に示したように、静脈パターン抽出部137と、認証部139と、を主に備える。
【0033】
[撮像部の構成について]
まず、撮像部の構成について、以下に詳細に説明する。
【0034】
マイクロレンズアレイ(Micro Lens Array:MLA)101は、後述する近赤外光照射光源105から生体の一部に対して照射され、生体内部の静脈を透過した近赤外光(以下、静脈透過光とも称する。)を、後述する撮像素子109へと集光する。このマイクロレンズアレイ101は、後述するように、複数の受光レンズから構成されている。マイクロレンズアレイ101は、例えば、ガラス素材よりも熱による影響が大きい素材を用いて形成される。このような素材を用いることで、任意の大きさのマイクロレンズアレイを、例えばモールド成形等により、安価で大量に製造することが可能となる。このようなガラス素材よりも熱による影響が大きい素材の一例として、プラスチック樹脂を挙げることができる。
【0035】
近赤外光照射光源105は、静脈撮像装置10に載置された生体の一部に対して、所定の波長帯域を有する近赤外光を照射する。近赤外光は、身体組織に対して透過性が高い一方で、血液中のヘモグロビン(還元ヘモグロビン)に吸収されるという特徴を有するため、近赤外光を指や手のひらや手の甲に照射すると、指や手のひらや手の甲の内部に分布している静脈が影となって画像に現れる。画像に表れる静脈の影を、静脈パターンという。このような静脈パターンを良好に撮像するために、近赤外光照射光源105は、約600nm〜1300nm程度の波長、好ましくは、700nm〜900nm程度の波長を有する近赤外光を照射する。
【0036】
ここで、近赤外光照射光源105が照射する近赤外光の波長が600nm未満または1300nm超過である場合には、血液中のヘモグロビンに吸収される割合が小さくなるため、良好な静脈パターンを得ることが困難となる。また、近赤外光照射光源105が照射する近赤外光の波長が700nm〜900nm程度である場合には、近赤外光は、脱酸素化ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンの双方に対して特異的に吸収されるため、良好な静脈パターンを得ることができる。
【0037】
このような近赤外光照射光源105として、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を用いることが可能である。また、上述のような波長帯域を有する発光ダイオードを用いる代わりに、上述の波長帯域を含む光を射出可能な発光ダイオードと、射出された光を光学的に帯域制限するフィルタとを組み合わせたものを使用してもよい。さらに、近赤外光照射光源105には、光源から照射された光の分布を調整する光量調整フィルタが組み合わされていてもよい。
【0038】
この近赤外光照射光源105は、後述する駆動制御部121により、近赤外光の照射タイミングや、照射する近赤外光の強度等が制御される。
【0039】
撮像素子109は、複数の画素111が格子状に配置された撮像面を有し、マイクロレンズアレイ101により結像された静脈透過光を基に、近赤外光による静脈撮像データを生成する。本実施形態に係る撮像素子109として、例えば、CCD型画像センサや、CMOS型画像センサや、TFT(Thin Film Transistor)型画像センサ等を利用することができる。撮像素子109は、生成された静脈撮像データを出力する。また、撮像素子109は、生成した静脈撮像データを、後述する記憶部141に記録してもよい。
【0040】
なお、本実施形態に係る静脈撮像装置10においては、後述するように、マイクロレンズアレイ101の一つの受光レンズに対して、複数の画素111が割り当てられている。そのため、本実施形態に係る静脈撮像装置10においては、一つの受光レンズによって集光された近赤外光(静脈透過光)は、複数の画素111によって撮像されることとなる。
【0041】
この撮像素子109は、後述する駆動制御部121により、画素の走査タイミング等が制御される。
【0042】
駆動制御部121は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現される。駆動制御部121は、近赤外光照射光源105や撮像素子109の駆動制御を行う。また、駆動制御部121は、後述する熱雑音測定部127から伝送された熱雑音の大きさに関する情報に基づいて、少なくとも撮像素子109の駆動制御の調整を行う。より詳細には、駆動制御部121は、所定の同期信号等に基づいて、撮像素子109の受光時間(シャッタースピード)や、撮像素子109のフレームレートといった駆動の制御を行う。駆動制御部121は、近赤外光照射光源105に対しても、近赤外光の照射タイミングや照射強度に関する駆動制御を行うことが可能である。
【0043】
より詳細には、駆動制御部121は、撮像素子109の制御に関して、撮像素子109のある一つの方向に沿った駆動制御を、撮像素子109のある一つの方向に沿った画素数単位で分割して駆動する制御とする。すなわち、本実施形態に係る撮像素子109をある方向に沿って切断した切断図を考えた場合に、撮像素子109に、例えば7つの画素が存在したとする。この場合、駆動制御部113は、この切断線の方向に沿って画素を7つのグループに分けて分割して駆動制御を行う。
【0044】
ここで、駆動制御部121は、近赤外光照射光源105や撮像素子109の制御を行うにあたり、後述する記憶部141に記録されている各種のパラメータやデータベース等を参照することが可能である。
【0045】
[撮像部の構造の一例]
次に、図2〜図6を参照しながら、本実施形態に係る撮像部の構造の一例について、詳細に説明する。
【0046】
本実施形態に係る静脈撮像装置10のマイクロレンズアレイ101は、例えば図2に示したように、受光レンズである複数のマイクロレンズ103から構成されており、マイクロレンズ103は、所定の基板上に格子状に配列されている。各マイクロレンズ103は、例えば図3に示したように、光入射面から当該マイクロレンズ103に入射した静脈透過光を、後述する撮像素子109(より詳細には、撮像素子109の画素111)に導光する。マイクロレンズアレイ101は、像面湾曲が少なく深さ方向のひずみがないレンズアレイであるため、このようなマイクロレンズアレイ101を用いることで、良好な画像データを得ることができる。マイクロレンズアレイ101を構成する各マイクロレンズ103の焦点位置は、静脈撮像装置10の撮像対象となる静脈Vが存在する静脈層の位置となるように設定される。
【0047】
人体の皮膚は、表皮層、真皮層および皮下組織層の3層構造となっていることが知られているが、上述の静脈層は、真皮層に存在している。真皮層は、指表面に対して0.1mm〜0.3mm程度の位置から2mm〜3mm程度の厚みで存在している層である。したがって、このような真皮層の存在位置(例えば、指表面から1.5mm〜2.0mm程度の位置)にマイクロレンズ103の焦点位置を設定することで、静脈層を透過した透過光を、効率よく集光することが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ101に配設されるマイクロレンズ103の個数は、図2に示した例に限定されるわけではない。本実施形態に係るマイクロレンズアレイ101に配設されるマイクロレンズ103の個数は、撮像したい生体の大きさや、撮像素子109の大きさに応じて、自由に設定することが可能である。
【0049】
近赤外光照射光源105の一例である発光ダイオードは、例えば図2に示したように、マイクロレンズアレイ101の対向する端部に複数配置されている。発光ダイオードが配置される端部は、生体の一部(図2および図3に示した例では、指FG)の上端と下端に対応する縁部であることが好ましい。このように発光ダイオードを配置することで、指FGの上下方向から、近赤外光を照射することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態に係る近赤外光照射光源105の個数は、図2に示した例に限定されるわけではなく、マイクロレンズアレイ101の大きさや、近赤外光照射光源105の照射可能エリア等に応じて、自由に設定することが可能である。
【0051】
また、マイクロレンズアレイ101と近赤外光照射光源105との間には、例えば図2および図3に示したように、指向性制御板107が設けられる。この指向性制御板107は、近赤外光照射光源105から射出された直接光12の指向性を制御し、直接光12が直接マイクロレンズアレイ101のマイクロレンズ103に入射しないようにする。
【0052】
近赤外光照射光源105から射出された近赤外光は、例えば図3に示したように、指FGの表面に向かって上方に伝搬し、直接光12として、指FGの内部に入射する。ここで、人体は良好な近赤外光の散乱体であるため、指FG内に入射した直接光12は四方に散乱しながら伝搬する。これらの散乱光の一部は、背面散乱光13として上述の静脈層を背面から指表面に向かって進行し、その途中で静脈Vを透過する。静脈を透過した静脈透過光は、マイクロレンズアレイ101を構成するそれぞれのマイクロレンズ103に入射することとなる。
【0053】
ここで、相隣接するマイクロレンズ103の境界部には、指向性制御板107が設けられる。この指向性制御板107により、静脈透過光の指向性を制御することが可能となり、各マイクロレンズ103に入射した光を隣接するマイクロレンズ103と分離できる。これにより、本実施形態に係る静脈撮像装置10では、撮像素子109(より詳細には、画素111)に集光される静脈透過光を選択することが可能となる。
【0054】
[マイクロレンズアレイで得られる画像について]
次に、図4Aおよび図4Bを参照しながら、マイクロレンズアレイによって得られる画像の特徴について、詳細に説明する。図4Aおよび図4Bは、マイクロレンズアレイで撮像した画像について説明するための説明図である。
【0055】
一般に、マイクロレンズアレイを用いてある画像を撮像すると、例えば図4Aに示したように、撮像画像は、元の画像に対して、上下および左右が逆転した像となる。また、実際には、一つの受光レンズ(マイクロレンズ103)に対して、複数の画素111が割り当てられているため、一つのマイクロレンズ103に割り当てられた全ての画素111について、上下左右の逆転した像が形成される。例えば、図4Bに示したように、一つのマイクロレンズ103に対して、例えば3×3=9個の画素111が割り当てられているとすると、9個の受光素子それぞれには、上下左右の逆転した画像が形成される。
【0056】
本実施形態に係る静脈撮像装置10では、以下で詳述するように、一つのマイクロレンズ103に対応する複数の画素111それぞれによって生成された撮像データを用いて、画像の補間処理を行う。
【0057】
[撮像素子について]
続いて、図5および図6を参照しながら、本実施形態に係る静脈撮像装置10が備える撮像素子109について、詳細に説明する。図5および図6は、本実施形態に係る撮像素子について説明するための説明図である。
【0058】
本実施形態に係る静脈撮像装置10が備える撮像素子109は、当該撮像素子109内の画素111が形成されている領域が、例えば図5に示したように、2つの領域151,153に区分されている。一方の領域151は、静脈撮像データの生成に用いられる静脈撮像データ生成領域であり、他方の領域153は、熱雑音の大きさを推定する際に用いられる熱雑音出力データを生成する熱雑音出力データ生成領域である。
【0059】
静脈撮像データ生成領域151には、複数の画素(図示せず。)がアレイ状に配置されており、マイクロレンズアレイ101が備える複数のマイクロレンズ103により集光された静脈透過光が画素111に達する。静脈撮像データ生成領域151から出力される静脈撮像データは、当該撮像データを生成した画素が検知した光の強度に対応したデータである。
【0060】
熱雑音出力データ生成領域153には、複数の画素(図示せず。)がアレイ状に配置されている。また、熱雑音出力データ生成領域153は、例えば図5に示したように遮光膜155によって遮光されており、外光が熱雑音出力データ生成領域153に入射しないようになっている。そのため、この熱雑音出力データ生成領域153から出力されるデータは、この領域に含まれる画素が外光を検知した結果生成されたデータではなく、外界または自装置内の温度に依存して発生する熱雑音に対応する出力データとなる。また、撮像素子109に設けられる熱雑音出力データ生成領域153の大きさは、撮像素子109とともに用いられるマイクロレンズアレイ101の大きさ等に応じて決定することができる。
【0061】
このような熱雑音出力データ生成領域153は、例えば図5に示したように、撮像素子109のある一辺に沿って、撮像素子109の端部に設けられていてもよい。また、図6(a)、(b)に示したように、熱雑音出力データ生成領域153は、撮像素子109の互いに対向する辺に沿って設けられていてもよく、図6(c)に示したように、撮像素子109の4つの辺に沿って設けられていてもよい。
【0062】
[画像処理部の構成について]
続いて、図1に戻って、本実施形態に係る静脈撮像装置10が備える画像処理部の構成について、詳細に説明する。
【0063】
画素データ分割部123は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画素データ分割部123は、例えば図7に示したように、駆動制御部121から入力される撮像素子109を走査するためのパルスに基づいて、撮像素子109から伝送された画素データが、撮像素子109の2つの領域のどちらから出力されたものかを判断する。図7に例示したように、撮像素子109の2つの領域からの出力を取得するために、撮像素子の垂直(または水平)方向同期用のパルスと、熱雑音出力取得パルスと、静脈撮像データ取得パルスの3種類のパルスが用いられる。そのため、画素データ分割部123は、これらのパルスに応じて、熱雑音出力データが伝送されたのか、静脈撮像データが伝送されたのかを判断することが可能である。
【0064】
画素データ分割部123は、熱雑音出力取得パルスがHi状態になっている期間に取得したデータ(すなわち、熱雑音出力データ)を、後述する熱雑音出力前処理部125に伝送する。また、画素データ分割部123は、静脈撮像データ取得パルスがHi状態になっている期間に取得したデータ(すなわち、静脈撮像データ)を、後述する画素選択部133に伝送する。
【0065】
熱雑音出力前処理部125は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。熱雑音出力前処理部125は、画素データ分割部123から伝送された熱雑音出力データに対して、後述する熱雑音測定部127によって熱雑音を定量的に処理するための前処理を行う。このような前処理の例として、所定時間分の熱雑音出力データを累積加算する累積処理、または、熱雑音出力データに対するピーク処理を挙げることができる。熱雑音出力前処理部125は、上述のような累積処理またはピーク処理の少なくとも何れかを実施する。また、熱雑音出力前処理部125は、累積処理およびピーク処理の双方を実施してもよく、これらの処理以外の前処理を実施してもよい。
【0066】
熱雑音出力データ生成領域153から出力される熱雑音出力データは、時間と共に変動する不安定な出力であるため、上述のような処理をすることで、熱雑音出力データに含まれる熱雑音出力を表す数値を、定量的な判断が可能な程度まで安定化させることができる。これにより、後述する熱雑音測定部127により実施される測定処理の精度を向上させることが可能となる。
【0067】
熱雑音出力生成部153は、前処理を行った熱雑音出力データを、熱雑音測定部127に伝送する。
【0068】
熱雑音測定部127は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。熱雑音測定部127は、熱雑音出力前処理部125から伝送された熱雑音出力データを解析して、撮像素子109で発生している熱雑音の大きさを測定する。熱雑音測定部127は、熱雑音の測定結果を熱雑音情報として、駆動制御部121と、温度推定部129とに伝送する。
【0069】
駆動制御部121は、熱雑音測定部127から伝送された熱雑音の大きさに応じて、撮像素子109の駆動周波数を低下させたり、撮像素子109の受光時間(すなわちシャッタースピード)やフレームレートを制御したりすることが可能である。熱雑音が大きくなるにつれて、撮像素子109から出力されるデータのS/N(Signal to Noise)比が低下することとなる。そこで、駆動制御部121が、撮像素子109の駆動周波数を低下させたり、受光時間を長くしたり、フレームレートを遅くしたりすることで、熱雑音によるデータ信号のS/N比の低下を抑制することができる。
【0070】
温度推定部129は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。温度推定部129は、熱雑音測定部127から伝送された熱雑音の大きさに関する情報である熱雑音情報に基づいて、自装置が撮像処理を行った際の温度(撮像温度)を推定する。ここで、自装置が撮像処理を行った際の温度とは、自装置が設けられた場所における外気温であってもよく、自装置が到達している温度であってもよい。温度推定部129は、撮像素子109で発生している熱雑音の大きさと、撮像処理を行った際の温度との対応関係が記載されているデータベースを有しており、このデータベースに基づいて熱雑音の大きさから温度を推定する。また、これらの対応関係を表すデータベースは、これら2つのパラメータの間の関係を表した数式等であってもよい。
【0071】
このようなデータベースは、例えば、静脈撮像装置10が製造された際に、温度を変化させながら、発生する熱雑音の大きさを計測しておくことで生成することができる。このようにして生成されたデータベースは、それぞれの静脈撮像装置10に固有の熱雑音の特徴を含んでおり、自装置で発生する熱雑音と温度との関係を精度良く見積もることが可能となる。
【0072】
また、温度推定部129は、温度の推定結果に基づいて、撮像素子109から出力されるデータ信号のS/N比の低下の度合いを推定することが可能である。このS/N比の低下の度合いは、例えば、装置の組立て時などに行われる温度とS/N比との関係を明らかにするための評価実験等の結果を用いて予めデータベース等を生成しておき、このようなデータベースを利用することで見積もることができる。
【0073】
温度推定部129は、温度の推定結果(例えば、現在の温度が70℃である旨を表す情報など)を、後述する警告部131、画素選択部133、静脈画像補間部135および静脈パターン抽出部137に伝送する。また、温度推定部129は、S/N比の低下の度合い等を見積もった場合には、見積もり結果(例えば、10dB程度の低下が予想される旨を表す情報など)を、温度の推定結果とあわせて伝送してもよい。
【0074】
警告部131は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。警告部131は、温度推定部129から伝送された温度の推定結果等を参照し、静脈撮像装置10の温度または外界の温度が所定の閾値以上である場合に、正常な静脈の撮像処理(ひいては静脈認証処理)が困難となると判断し、警告を出力する。
【0075】
また、警告部131は、後述する認証部139から、あるユーザから得られた静脈パターンについて所定の回数以上認証に失敗した等の情報が伝送された場合に、装置自体が正常な処理ができない環境下にあると判断し、警告を出力してもよい。
【0076】
さらに、警告部131は、正常な静脈の撮像処理(ひいては静脈認証処理)が実施できないほどの温度であると判断した場合に、自装置で行われている静脈の撮像処理や静脈認証処理を中止してもよい。
【0077】
画素選択部133は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画素選択部133は、一つのマイクロレンズ103に対応する複数の画素111の中から、静脈画像の生成用に用いる静脈撮像データを生成する画素を選択する。以下では、図8を参照しながら、画素選択部133が行う画素選択処理について、詳細に説明する。図8は、画素選択部133が行う画素選択処理について説明するための説明図である。
【0078】
図8では、マイクロレンズアレイ101の一つのマイクロレンズ103に対して、8×8=64個の画素111が対応しており、マイクロレンズ103は、被写体を1/2に縮小するレンズである場合について、図示している。この場合に、被写体の大きさは1/2の大きさまで縮小されるため、64個の画素のうち、中央部分に位置する4×4=16個の画素を用いることで、被写体の撮像データを得ることができる。ただ、このような場合であっても、中央部分以外の画素に対しても被写体からの光は結像しており、中央部分の4×4画素以外の部分から得られる撮像データも、被写体画像の生成に利用可能である。
【0079】
この際、画素選択の基準単位となる基準単位領域は、上述のように、マイクロレンズ103の倍率等から4×4=16画素分の領域となる。また、結像位置のズレ等が生じていなければ、マイクロレンズ103を介して集光された光は、8×8=64個の画素のうち、略中央部分に結像することとなる。そこで、画素選択部133は、1つのマイクロレンズ103に対応する8×8画素のうち、中央部分に位置する4×4画素を選択する。
【0080】
また、画素選択部133は、温度推定部129から伝送された温度の推定結果を参照し、画素111から出力されるデータ信号のS/N比の低下が予想される場合には、基準単位領域の周辺に位置し、光を検知している画素をあわせて選択する。
【0081】
画素選択部133は、上述のようにして選択した画素に関する情報(例えば、選択した画素を特定するための情報など)と、選択した画素から得られた静脈撮像データとを、後述する静脈画像補間部135へと伝送する。
【0082】
静脈画像補間部135は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈画像補間部135は、画素選択部133から伝送された静脈撮像データに基づいて静脈画像を生成する。また、静脈画像補間部135は、温度推定部129から伝送された温度に関する情報(温度を表す情報や、S/N比の低下度合いに関する見積もり結果など)に基づいて、生成した静脈画像に対して補間処理を行う。
【0083】
なお、静脈画像補間部135は、静脈画像の生成に際して、温度推定部129から伝送された温度に関する情報に基づいて、静脈撮像データに含まれる出力値の補正を行う。より具体的には、静脈画像補間部135は、静脈撮像データに含まれる出力値そのものを画像の生成に用いるわけではなく、以下の式1に基づいて、出力値の補正を行う。
【0084】
補正後の出力値
=(データの出力値−黒レベル基準値)/(白レベルの基準値−黒レベルの基準値)
・・・(式1)
【0085】
ここで、上記式1において、黒レベル基準値とは、黒一色からなる画像を撮像したときに撮像素子109から出力されるデータの出力値であり、白レベル基準値とは、白一色からなる画像を撮像したときに撮像素子109から出力されるデータの出力値である。また、上記式1において、データの出力値とは、被写体を撮像した際に撮像素子109から出力されるデータの出力値である。
【0086】
撮像温度が高温となると、データ出力値に占める熱雑音の割合が増加し、画像のコントラストが低下して、画像が全体的に白みを帯びてしまう。そこで、本実施形態に係る静脈画像補間部135は、温度推定部129から伝送された温度に関する情報に基づいて、黒レベル基準値の値を変更し、熱雑音の増加に伴う画像の劣化を自動的に防止する。より詳細には、上記式1において、常温時の黒レベル基準値に対して乗算される補正係数を設定し、画像補間部135は、温度推定部129から伝送された温度に関する情報に基づいて、この補正係数の値を調整する。
【0087】
また、静脈画像補間部135で行われる補間処理として、例えば、生成された静脈画像のノイズ除去処理などがある。また、温度推定部129から伝送された温度に関する情報に応じて、複数フレームの画像を積分処理し静脈画像の画質を向上させる処理を行っても良い。複数フレームの画像を積分処理することで、処理に要する時間が増加して静脈撮像装置10のユーザの待ち時間が増えてしまうものの、環境温度等によって静脈の撮像(ひいては、静脈の認証処理)ができなくなるという事態の発生を低下させることが可能である。
【0088】
また、静脈画像補間部135は、温度推定部129から伝送された温度に関する情報に応じて、例えばマルチタップの補間フィルタ等を用いて、以下のような補間処理を行ってもよい。すなわち、静脈画像補間部135は、図8に示したように、基準単位領域に含まれる画素から得られた画像データだけでなく、基準単位領域の周辺に位置し、光を検知している画素から得られた画像データを用いて、静脈画像の補間処理(合成処理)を行ってもよい。このような処理を行うことで、熱雑音の増加に伴い画像のS/N比が低下している場合であっても、静脈画像の画質(S/N比)を向上させることが可能となる。
【0089】
静脈画像補間部135は、補間処理がなされた静脈画像を、後述する静脈パターン抽出部137に伝送する。
【0090】
[認証処理部の構成について]
静脈パターン抽出部137は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。静脈パターン抽出部137は、例えば、静脈画像補間部135から伝送される静脈画像に対して、静脈パターン抽出の前処理を行なう機能と、静脈パターンの抽出を行なう機能と、静脈パターン抽出の後処理を行なう機能と、を備える。
【0091】
ここで、上記の静脈パターン抽出の前処理は、例えば、静脈画像から指の輪郭を検出し、静脈画像のどの位置に指があるかを識別する処理や、検出した指の輪郭を利用して撮像画像を回転させて、撮像画像の角度を補正する処理等を含む。
【0092】
また、上記の静脈パターンの抽出は、輪郭の検出や角度の補正が終了した撮像画像に対して差分フィルタを適用することで行なわれる。差分フィルタは、注目している画素とその周囲の画素について、注目している画素と周囲の画素との差分が大きな部分で、大きな値を出力値として出力するフィルタである。換言すれば、差分フィルタとは、注目している画素とその近傍の階調値の差分を用いた演算により、画像中の線や縁を強調するフィルタである。
【0093】
一般的に、2次元平面の格子点(x,y)を変数とする画像データu(x,y)に対してフィルタh(x,y)を用いてフィルタ処理を行なうと、以下の式2に示すように、画像データν(x,y)を生成する。ここで、以下の式1において、‘*’は畳込み積分(コンボリューション)を表す。
【0094】
【数1】

・・・(式2)

【0095】
本実施形態に係る静脈パターンの抽出では、上記の差分フィルタとして、1次空間微分フィルタや2次空間微分フィルタ等の微分フィルタを用いてもよい。1次空間微分フィルタは、注目している画素について、横方向と縦方向の隣接している画素の階調値の差分を算出するフィルタであり、2次空間微分フィルタは、注目している画素について、階調値の差分の変化量が大きくなっている部分を抽出するフィルタである。
【0096】
上記の2次空間微分フィルタとして、例えば、以下に示すLog(Laplacian of Gaussian)フィルタを用いることが可能である。Logフィルタ(式4)は、ガウス関数を用いた平滑化フィルタであるガウシアン(Gaussian)フィルタ(式2)の2次微分で表される。ここで、以下の式3において、σはガウス関数の標準偏差を表し、ガウシアンフィルタの平滑化の度合いを表す変数である。また、以下の式4におけるσは、式3と同様にガウス関数の標準偏差を表すパラメータであり、σの値を変化させることで、Logフィルタ処理を行なった場合の出力値を変化させることができる。
【0097】
【数2】

・・・(式3)


・・・(式4)

【0098】
また、上記の静脈パターン抽出の後処理は、例えば、差分フィルタ適用後の撮像画像に対してなされる閾値処理や、2値化処理や、細線化処理等を含む。かかる後処理を経て、静脈パターンのスケルトンを抽出することが可能となる。
【0099】
なお、本実施形態に係る静脈パターン抽出部137は、上述のようなフィルタのフィルタ特性(例えば、各フィルタを表した式における係数の値等)を、温度推定部129から伝送された温度に関する情報に応じて変更してもよい。上述のように、高温となることで生じる熱雑音の増加に伴い、静脈画像補間部135により適切な画像の補間処理が施される。これらの補間処理によって、静脈パターンの抽出の際に利用される常温時の設定のままのフィルタでは、適切な静脈パターンの抽出処理が行えない場合も生じうる。そこで、静脈パターン抽出部137がフィルタ特性を温度に関する情報に応じて変更することで、高温下での撮像画像であっても適切な静脈パターンの抽出を行うことが可能となる。
【0100】
静脈パターン抽出部137は、このようにして抽出した静脈パターンやスケルトンを、後述する認証部139等に伝送する。また、静脈パターン抽出部137は、抽出した静脈パターンやスケルトンを、後述する記憶部141に記憶してもよい。なお、静脈パターン抽出部137は、上述の各処理を行なうに当たって生成したパラメータや処理の途中経過等を、記憶部141に記憶してもよい。
【0101】
認証部139は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。認証部139は、静脈パターン抽出部137により生成された静脈パターンを既に登録されているテンプレートと照合して、静脈パターンの認証を行う。
【0102】
認証部139は、静脈パターン抽出部137により生成された静脈パターンと、既に記録されている静脈パターンのテンプレートとに基づいて、生成された静脈パターンの認証を行なう。認証部139は、後述する記憶部141に対して登録静脈パターンの開示を要求し、取得した登録静脈パターンと、静脈パターン抽出部137から伝送された静脈パターンとの比較を行なう。登録静脈パターンと伝送された静脈パターンとの比較は、例えば以下に示す相関係数を算出し、算出した相関係数に基づいて実行することが可能である。認証部139は、比較の結果登録静脈パターンと伝送された静脈パターンが類似している場合には、伝送された静脈パターンの認証に成功したと判断し、類似していない場合には、認証に失敗したと判断する。
【0103】
相関係数は、以下の式5で定義されるものであり、2つのデータx={x},y={y}間の類似度を示す統計学指標であって、−1から1までの実数値をとる。相関係数が1に近い値を示す場合には、2つのデータは類似していることを示し、相関係数が0に近い値を示す場合には、2つのデータは類似していないことを示す。また、相関係数が−1に近い値を示す場合には、2つのデータの符号が反転しているような場合を示す。
【0104】
【数3】

・・・(式5)


:データxの平均値

:データyの平均値

【0105】
また、認証部139は、認証結果を認証時刻等と関連づけて、認証履歴として記憶部141に記録してもよい。かかる認証履歴を生成することで、誰がいつ静脈パターンの認証を要求したのか、ひいては、誰がいつ静脈撮像装置10を利用したのか、を知ることが可能となる。
【0106】
さらに、認証部139は、あるユーザから得られた静脈パターンについて所定の回数以上認証に失敗した場合、認証処理が所定の回数以上失敗した旨を警告部131に伝送する。このような情報を警告部131に伝送することで、環境温度による熱膨張などが原因で正常な静脈認証処理ができないと判断された場合に、静脈撮像装置10のユーザに対して認証が正常にできない可能性がある旨を警告することができる。
【0107】
記憶部141は、静脈撮像装置10のユーザの登録静脈パターンや、当該登録静脈パターンに関連付けられた他のデータを記憶する。また、これらのデータ以外にも、撮像部により生成された静脈撮像データや、静脈画像補間部133が生成した静脈画像や、静脈パターン抽出部137が抽出した静脈パターン等が記録されてもよい。また、記憶部141には、静脈画像補間部135が行う補間処理に必要な各種のプログラムやデータ等が記録されていてもよい。更に、記憶部141は、これらのデータ以外にも、静脈撮像装置10が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等を、適宜記憶することが可能である。この記憶部141は、撮像部、画像処理部、認証処理部に設けられた各処理部が、自由に読み書きを行うことが可能である。
【0108】
[特定の画素からのデータの取得について]
ここで、図9〜図10を参照しながら、特定の画素からデータを取得する方法について、詳細に説明する。図9および図10は、特定の画素からデータを取得する方法について説明するための説明図である。
【0109】
本実施形態に係る静脈撮像装置10の撮像素子109は、多層型の素子となっている。例えば図9には、撮像素子109が3層からなる多層型素子である場合の例を示している。
【0110】
本実施形態に係る静脈撮像装置10では、撮像素子10は、指の長さ方向、すなわち、図中のy軸に沿った方向にライン走査を行う。以降、図中のy軸に沿った方向を、垂直方向と称することとし、垂直方向に対して直交する方向、すなわち、図中のx軸に沿った方向を、水平方向と称することとする。
【0111】
図9に示したように、本実施形態に係る静脈撮像装置10では、駆動制御部121によって、水平ライン単位で、撮像データが、垂直同期の時間軸に沿って出力される。すなわち、ある水平方向に沿って配設された画素は、図9に示した第1層にデータが同期して出力され、ある水平方向に沿って配設された画素は、第2層にデータが出力され、ある水平方向に沿って配設された画素は、第3層にデータが出力される。このように、駆動制御部121による制御によって、撮像素子109は、多層化した出力を行うことができる。
【0112】
そのため、画素選択部133が駆動制御部121に対して選択したい画素に関する情報を伝送し、駆動制御部121が、多層型素子のある層による出力を選択し、かつ、水平ライン上で、特定の画素をタイミング制御によって選択することが可能となる。
【0113】
なお、図9に示した例では、垂直同期ラインを分割駆動する方法について説明したが、図10に示したように、水平ライン内での回路的な分割駆動を行うことも可能である。
【0114】
図10に示した例では、同一の水平ライン上に存在する画素111は、水平第1層にデータを出力するものと、水平第2層にデータを出力するものと、水平第3層にデータを出力するものの3種類が存在する。そのため、駆動制御部121は、多層型素子のある層による出力を選択し、かつ、垂直ライン上で、特定の画素を選択するためのタイミング制御を行うことで、任意の画素からのデータを選択することができる。
【0115】
また、垂直ライン内での分割駆動と、水平ライン内での分割駆動とを組み合わせて用いることも可能である。
【0116】
以上、本実施形態に係る静脈撮像装置10の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0117】
なお、上述のような本実施形態に係る静脈撮像装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、マイクロレンズアレイ、近赤外光照射光源、撮像素子等を備えた撮像装置を制御可能なパーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0118】
なお、本実施形態に係る静脈撮像装置10は、例えば、コンピュータやサーバ等の情報処理装置、携帯電話やPHS等の携帯端末や携帯情報端末(PDA)、現金自動預払機(ATM)、入退室管理装置に実装されていてもよい。また、本実施形態に係る静脈撮像装置10は、ゲーム機器やゲーム機器のコントローラ等の各種装置に実装されてもよい。
【0119】
また、上述の説明では、テンプレートとして登録されている登録静脈パターンが、静脈撮像装置10内に記録されている場合について説明した。しかし、登録静脈パターンは、DVDメディア、Blu−rayメディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック、または、SDメモリカード等の記録媒体や、非接触型ICチップを搭載したICカードまたは電子機器等に記録されていてもよい。また、登録静脈パターンは、静脈撮像装置10とインターネット等の通信網を介して接続されたサーバに記録されていてもよい。
【0120】
<静脈画像補間方法について>
続いて、図11を参照しながら、本実施形態に係る静脈撮像装置が実施する静脈画像補間方法について、詳細に説明する。図11は、本実施形態に係る静脈画像補間方法について説明するための流れ図である。
【0121】
まず、静脈撮像装置10の使用者は、静脈撮像装置10のマイクロレンズアレイ101上に指などの生体の一部を載置する。静脈撮像装置10の撮像部は、載置された生体の一部の撮像処理を行う(ステップS101)。
【0122】
また、静脈撮像装置10の熱雑音出力前処理部125は、撮像素子109の熱雑音出力データ生成領域153から出力されるデータに対して、所定時間分の熱雑音出力データを累積加算する累積処理、または、熱雑音出力データに対するピーク処理を行う。また、熱雑音測定部127は、熱雑音出力前処理部125から伝送された熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の測定処理を行う(ステップS103)。熱雑音測定部127は、熱雑音の測定結果を駆動制御部121および温度推定部129へと伝送する。ここで、駆動制御部121は、伝送された熱雑音の測定結果に応じて、撮像素子109の駆動制御を行う(ステップS105)。
【0123】
続いて、温度推定部129は、熱雑音測定部127から伝送された熱雑音の測定結果に基づいて、撮像時の温度を推定する(ステップS107)。また、温度推定部129は、推定した温度に基づいて、S/N比の低下の度合い等をあわせて推定してもよい。温度推定部129は、温度の推定結果や、S/N比の低下の度合いの推定結果等を含む温度に関する情報を、警告部131、画素選択部133、静脈画像補間部135および静脈パターン抽出部137に伝送する。
【0124】
温度に関する情報が伝送された警告部131は、温度の推定結果について判定を行い(ステップS109)、警告が必要となる閾値を超えているか否かを判断する。警告が必要となる温度となっている場合には、静脈撮像装置10は、表示画面に警告を出力する(ステップS111)。
【0125】
警告が必要となるほどの温度となっていない場合には、画素選択部133は、伝送された温度に関する情報に基づいて、画素の選択処理を行う。より詳細には、画素選択部133は、マイクロレンズアレイ101を構成するそれぞれのマイクロレンズ103について、一つのマイクロレンズ103に対応する複数の画素の中から、静脈画像の生成に用いる撮像データを出力している画素を選択する。
【0126】
次に、静脈画像補間部135は、画素選択部133により選択された画素から得られる撮像データを用いて、静脈画像を生成する。続いて、静脈画像補間部135は、生成した静脈画像について、撮像時の温度に応じた画像の補間処理を行う(ステップS113)。具体的には、静脈画像補間部135は、複数のフレーム画像を積分処理したり、ノイズの除去処理を行ったり、周辺画素を用いた画像の補間処理を行ったりする。
【0127】
画像の補間処理が終了すると、静脈画像補間部135は、補間処理が施された静脈画像を、静脈パターン抽出部137に伝送する。静脈パターン抽出部137は、撮像時の温度に応じて静脈パターンの抽出に用いられるフィルタのフィルタ特性を変更しながら、伝送された静脈画像の中から、静脈パターンを抽出し(ステップS115)、認証部139へと伝送する。
【0128】
認証部139は、静脈パターン抽出部137から伝送された静脈パターンと、記憶部141等に格納されている登録静脈パターン(テンプレート)とを用いて、伝送された静脈パターンの認証処理を行う(ステップS117)。
【0129】
以上説明したような手順で、高温時の熱雑音による画質の劣化を自動的に補間することができる。
【0130】
なお、上述の説明では、生体の撮像の後に熱雑音の測定や撮像時の温度の推定を行う場合について説明したが、静脈撮像装置10は、生体の撮像に先立って、予め熱雑音の測定や撮像時の温度の推定を行っても良い。
【0131】
<ハードウェア構成について>
次に、図12を参照しながら、本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置10のハードウェア構成について、詳細に説明する。図12は、本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置10のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0132】
静脈撮像装置10は、マイクロレンズアレイ101、近赤外光照射光源105および撮像素子109以外に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、情報処理装置10は、更に、ホストバス907と、ブリッジ909と、外部バス911と、インターフェース913と、入力装置915と、出力装置917と、ストレージ装置919と、ドライブ921と、接続ポート923と、通信装置925とを備える。
【0133】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919、またはリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、静脈撮像装置10内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。
【0134】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0135】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、静脈撮像装置10の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。静脈撮像装置10のユーザは、この入力装置915を操作することにより、静脈撮像装置10に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0136】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置917は、例えば、静脈撮像装置10が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、静脈撮像装置10が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0137】
ストレージ装置919は、静脈撮像装置10の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0138】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、静脈撮像装置10に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、メモリースティック、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0139】
接続ポート923は、機器を静脈撮像装置10に直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、i.Link等のIEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS−232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、静脈撮像装置10は、外部接続機器929から直接各種データを取得したり、外部接続機器929に各種データを提供したりする。
【0140】
通信装置925は、例えば、通信網931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
【0141】
以上、本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置10の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0142】
<まとめ>
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、撮像素子が摂氏70度などといった過酷な環境下に存在する場合であっても生体の撮像や認証を可能とするために、撮像素子の動作状況を自動的に取得する静脈撮像装置を実現可能である。撮像素子の動作状況を自動的に取得することで、適応型の駆動方法や画像信号処理を行うことが可能となり、温度依存のない生体認証用の画像取得および認証処理が可能となる。
【0143】
本発明の各実施形態に係る撮像素子には、静脈撮像データを生成する撮像領域とは別に外部の光を遮断した領域が設定されており、この領域のノイズ(熱雑音)検出を行うことで、動作温度によるノイズ増加を検出する。本実施形態に係る静脈撮像装置は、検出されたノイズによって装置の相対的な温度変化が推定できるため、この温度変化情報により撮像素子の駆動制御方法や画像信号処理方法を変化させることができる。
【0144】
本発明の各実施形態に係る静脈撮像装置は、画像センサと同等の専用画素のノイズレベルを計測することで、シャッタースピードやフレームの累積加算処理、画像信号処理などを正確に実行可能である。また、ノイズを検出するための領域は、撮像素子内に配置できることから、装置の製造コストに影響のない構造が可能となる。また、ノイズに関するデータの取り込みを撮像データの取り込みと時分割処理することで、ノイズに関するデータの取り込み用の駆動回路を、撮像データ取り込み用の駆動回路と共有することができる。
【0145】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0146】
10 静脈撮像装置
101 マイクロレンズアレイ
103 マイクロレンズ
105 近赤外光照射光源
107 指向性制御板
109 撮像素子
111 画素
121 駆動制御部
123 画素データ分割部
125 熱雑音出力前処理部
127 熱雑音測定部
129 温度推定部
131 警告部
133 画素選択部
135 静脈画像補間部
137 静脈パターン抽出部
139 認証部
141 記憶部
151 静脈撮像データ生成領域
153 熱雑音出力データ生成領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光レンズがアレイ状に配設されたレンズアレイと、
前記レンズアレイの端部に設けられ、生体の一部に対して近赤外光を照射する近赤外光照射光源と、
前記レンズアレイによって集光された前記生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて前記静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する撮像素子と、
前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定する熱雑音測定部と、
前記熱雑音測定部により測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定する温度推定部と、
前記静脈撮像データ生成領域により生成された前記静脈撮像データを用いて前記静脈の撮像画像を生成し、前記温度推定部により推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈の撮像画像の補間処理を行う静脈画像補間部と、
を備える、静脈撮像装置。
【請求項2】
前記静脈画像補間部は、前記温度推定部により推定された前記撮像温度に基づいて、所定時間分の前記静脈の撮像画像の積分処理および前記静脈の撮像画像からのノイズ除去処理の少なくとも何れかを行う、請求項1に記載の静脈撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、一つのレンズアレイに対して前記静脈撮像データ生成領域に位置する複数の画素が対応しており、
前記静脈画像補間部は、前記静脈の撮像画像の生成に用いられた前記静脈撮像データを出力した画素の周辺に位置する画素から出力された前記静脈撮像データを利用して前記補間処理を行う、請求項1および2に記載の静脈撮像装置。
【請求項4】
前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに対して、前記熱雑音測定部によって前記熱雑音を定量的に処理するための前処理を行う熱雑音出力前処理部を更に備える、請求項1に記載の静脈撮像装置。
【請求項5】
前記熱雑音出力前処理部は、所定時間分の前記熱雑音出力データを累積加算する累積処理、または、前記熱雑音出力データに対するピーク処理の少なくともいずれかを実行する、請求項4に記載の静脈撮像装置。
【請求項6】
少なくとも前記撮像素子の駆動制御を行う駆動制御部を更に備え、
前記駆動制御部は、前記熱雑音測定部により測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記撮像素子の受光時間およびフレームレートの少なくとも何れかの制御を行う、請求項1に記載の静脈撮像装置。
【請求項7】
前記静脈の撮像画像から静脈パターンを抽出する静脈パターン抽出部を更に備え、
前記静脈パターン抽出部は、前記温度推定部により推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈パターンの抽出に用いられるフィルタのフィルタ特性を変更する、請求項1に記載の静脈撮像装置。
【請求項8】
前記温度推定部から出力された前記撮像温度が所定の閾値以上であった場合に警告を発する警告部を更に備える、請求項1に記載の静脈撮像装置。
【請求項9】
複数の受光レンズがアレイ状に配設されたレンズアレイと、前記レンズアレイの端部に設けられ、生体の一部に対して近赤外光を照射する近赤外光照射光源と、前記レンズアレイによって集光された前記生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて前記静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する撮像素子と、を備えた静脈撮像装置の前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定するステップと、
測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定するステップと、
前記静脈撮像データ生成領域により生成された前記静脈撮像データを用いて前記静脈の撮像画像を生成し、推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈の撮像画像の補間処理を行うステップと、
を含む、静脈画像補間方法。
【請求項10】
複数の受光レンズがアレイ状に配設されたレンズアレイと、前記レンズアレイの端部に設けられ、生体の一部に対して近赤外光を照射する近赤外光照射光源と、前記レンズアレイによって集光された前記生体内で散乱され静脈を透過した近赤外光に基づいて前記静脈の撮像データを生成する静脈撮像データ生成領域と、遮光された前記画素からなる領域であり、前記遮光された画素から出力される出力値である熱雑音出力を生成する熱雑音出力データ生成領域と、を有する撮像素子と、を備えた静脈撮像装置を制御するコンピュータに、
前記熱雑音出力データ生成領域から出力された前記熱雑音出力データに基づいて、熱雑音の大きさを測定する熱雑音測定機能と、
前記熱雑音測定機能により測定された前記熱雑音の大きさに基づいて、前記静脈の撮像処理が行われた撮像温度を推定する温度推定機能と、
前記静脈撮像データ生成領域により生成された前記静脈撮像データを用いて前記静脈の撮像画像を生成し、前記温度推定機能により推定された前記撮像温度に基づいて、前記静脈の撮像画像の補間処理を行う静脈画像補間機能と、
を実現させるためのプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−267087(P2010−267087A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117986(P2009−117986)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】