説明

静電フィルムで被覆された眼科レンズおよびそのようなレンズにエッジングを施す方法

本発明に基づく光学レンズは、摩擦または接触によって物理的に喪失可能な少なくとも1つの外層で、外層に静電的に付着する剥離可能な膜で被覆されたを含む
眼鏡への取り付け。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く光学レンズに関し、より具体的には保護用仮コーティングを含む主面を有し、さらに剥離可能な静電フィルムで被覆されている眼科レンズに関連する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、より具体的には眼科レンズは、レンズの凹凸の両方の光学的表面の形状を決定する成形および/または表面仕上げ/平滑化の一連の工程と、それに続く適切な表面処理によって得られる。
【0003】
眼科レンズの最終仕上げ工程は、レンズが収納されるガラスフレームにレンズを適合させるために所定の大きさに形作るために、レンズ(glass)の周縁を機械加工することを含むエッジング操作である。
エッジングは、通常、上記機械加工工程を行うダイアモンドホイールを含む研磨機上で行われる。
そのような操作において、レンズは軸方向に作用するブロッキング部材に保持される。
研磨ホイールと相対的なレンズの動作は、通常、所望の形状に達するようにデジタルでモニターされる。
動作中にレンズを安定して保持することは、基本的に不可避である。
【0004】
このため、エッジング操作の前に、レンズブロッキング工程が実行される。つまり、保持手段またはチャックがレンズの凸状の表面に配置される。
両面接着部材などの糊付きのチップのような保持パッドが、チャックとレンズの凸状の表面との間に設置される。
そのように準備されたレンズは、上記軸ブロッキング部材の1つの上に配置され、第2の軸ブロッキング部材は、一般的にエラストマー性である接合部を通じてその凹状の表面上でレンズを締めつける。
機械加工工程において接線方向のトルク力がレンズに生じ、レンズ保持手段が不充分だとチャックに対するレンズの回転を生じさせる可能性がある。
レンズの良好な保持は、主に、保持パッドとレンズの凸状の表面との界面での良好な密着に起因する。
【0005】
最終段階の眼科レンズは、通常、表面エネルギーを変化させる有機または無機の外層、たとえば汚染防止の疎水性および/または疎油性のコーティングなどを含む。
これらは、通常、表面エネルギーを低下させることによって脂肪質のしみの付着を防止し、脂肪質のしみを容易に除去できるようにするフルオロシラン系の物質である。
【0006】
そのような表面コーティング系は、それによってパッドと凸状の表面との界面の密着を変化させる効果があり、エッジング操作、特に他の材料と比べてエッジングにより大きな力が必要なポリカルボナートレンズのエッジング操作を充分に行うことが困難になる可能性がある。
エッジング操作が実行できなければ、そのままレンズの損失となる。
【0007】
15mJ/m以上の表面エネルギーを付与する仮保護層、特にフッ化物、酸化物、金属水酸化物の層、そして好ましくは、特許文献1に開示されているMgF2保護層およびマーキングインクまたはそのようなマーキングインクの接合剤である樹脂を、外層上に設けるのが好ましいのはこのためである。
【0008】
光学レンズ、より具体的には、他の機能層の密着性を増加させるプライマーコーティング、耐磨耗コーティングおよび反射防止コーティングなどの従来からの機能性コーティングを任意で1つ以上含み、疎水性および/または疎油性の表面コーティング、より具体的には汚染防止コーティングを含み、そのコーティングが少なくとも部分的に保護用仮コーティング、特に、エッジング操作を改善するもので被覆されている、眼科レンズは、それぞれ内部に保護コーティングが設けられた紙袋に保管され、運搬される。レンズを収納した各袋は、保管または出荷する時に互いに積み重ねられる。
【0009】
各袋内にある場合も含めて、レンズの保管または取り扱い時の摩擦または単なる押圧により保護用仮コーティングは、特に金属フッ化物外層、より具体的にMgF2保護層を含むコーティングの場合に失われ、それによってエッジング操作中に保持パッドとの密着が損なわれることが見出された。そのような喪失は目視で確認することができ、特にMgF外層の場合には、仮保護外層に裸眼で認識できる印が出現することによって、視覚的に確認できる。
【0010】
特許文献2は、接着テープを用いて印を隠すことによる、光学レンズの表面に印刷された消去可能な印の研磨操作中の保護を開示している。該接着テープは、高度に可塑化されたビニルフィルムなどの静電フィルムでもよい。
【特許文献1】仏国特許出願第0106534号明細書
【特許文献2】米国特許第5,792,537号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、摩擦および/または接触によって物理的に喪失しうる保護コーティング外層を有し、そのような喪失から、より具体的にはレンズが保管および/または取り扱いの際に、保護される光学レンズ、より具体的には眼科レンズを提供することである。
【0012】
本発明によれば、光学レンズは、レンズの少なくとも一部を被覆し、かつ摩擦および/または接触によって物理的に喪失しうる少なくとも1つの外層を含む仮保護コーティング外層、ただしフッ化マグネシウムを含有する下層と直接接触する金属酸化物および/または金属水酸化物の外層を除く、を含み、仮保護コーティング外層は外層に静電的に付着する剥離可能なフィルムで被覆されている。
【0013】
本発明の好ましい実施形態に基づき、外層は、金属フッ化物およびその混合物、金属酸化物およびその混合物、金属水酸化物およびその混合物、それらの金属フッ化物、金属酸化物および金属水酸化物のうち2つ以上の混合物、光学レンズ用マーキングインクならびにマーキングインクの結合剤となりうる樹脂から選択される材料からなる。
より好ましくは、仮保護コーティングの外層は金属フッ化物、金属酸化物または金属水酸化物からなる。
【0014】
ここで、“レンズ”の語は、多様の特徴のコーティングを1つ以上含むか裸であるかによって、処理済または未処理の、有機または無機のガラスレンズを意味する。
レンズが1つ以上の表面コーティングを含む場合、“レンズ上に層を成膜する”という文言は、レンズのコーティング外層上に層が成膜されることを意味する。
【0015】
表面エネルギーは、下記の参照文献に記載されているオーエンス・ウェンズ(Owens-Wendt)方法に従って算出される:“ポリマーの表面力エネルギーの推定(Estimation of the surface force energy of polymers)"、オーエンス(Owens) D.K., ウェンヅ(Wendt)R.G. (1969) J. APPL. POLYM. SCI, 13, 1741-1747。
【0016】
本発明に基づく光学レンズは、一般的に疎水性および/または疎油性の表面コーティングを含み、好ましくは、反射防止の単層または多層のコーティング上に成膜された疎水性および/または疎油性の両方の表面コーティングを含む。
実際には、疎水性および/または疎油性コーティングは、特に、無機材料からなる反射防止コーティングを含むレンズに、その強い汚れ傾向、たとえば油付着などを軽減するために被覆される。
上述のとおり、一般的に、疎水性および/または疎油性コーティングは、レンズの表面エネルギーを低下させる化合物を反射防止コーティングの表面上に被覆することによって得られる。
【0017】
そのような化合物は、例えば米国特許第4410563号、欧州特許第0203730号、欧州特許第749021号、欧州特許第844265号、欧州特許第933377号などの従来技術において広範に開示されている。
【0018】
フッ素含有基、より具体的にはペルフルオロカーボンまたはペルフルオロポリエーテル基を有するシラン系化合物は、最も頻繁に使用されている。
例えば、上述したフッ素含有基を1以上有する、シラザン、ポリシラザンまたはシリコーン化合物が挙げられる。
【0019】
公知の方法は、フッ素含有基とSi−R基(Rは−OH基またはその前駆体であり好ましくはアルコキシル基である)とを有する化合物を、反射防止コーティング上に成膜する方法である。このような化合物は、反射防止コーティング表面上で、直接的にまたは加水分解の後、重合および/または架橋反応しうる。
【0020】
ガラスの表面エネルギーを低下させるための化合物の被覆は、一般的に行われている前記化合物の溶液中でのクエンチ、遠心分離または特に気相析出によって行われる。一般的に、疎水性および/または疎油性コーティングは、10nm未満の厚みで、好ましくは5nm未満の厚みである。
【0021】
本発明は、好ましくは14mJ/m未満、より好ましくは12mJ/m以下の表面エネルギーを付与する疎水性および/または疎油性の表面コーティングを含むレンズで実施される。
仮保護コーティングは、レンズの表面エネルギーの値を、通常少なくとも15mJ/mの値に増加させる。
【0022】
仮保護コーティングは、レンズの2面の少なくとも1面全面を覆う領域または前記レンズの保持パッドと接触することが意図される領域のみに被覆することができる。
より具体的には、一般的に、エーコンと関連する保持パッドを、レンズの凸面上に戴置する。したがって、マスクなどの適切な技術を用いて、凸面全面、または、凸面の中心部のみを保護コーティングで被覆することが可能である。
【0023】
その成膜は、対応する領域を均等に被覆する、つまり、連続的な構造を有するが、フレーム形状などの非連続的な構造を有することもできる。
その場合、必要とされる保持パッドとの密着を充分にもたらす表面を有する不規則な成膜が形成される。
非連続構造の成膜物は、タンポグラフィーによって得られる。
【0024】
しかし、仮保護コーティング外層(本発明に係る)で被覆される領域は、その保護コーティングと保持パッドとの間の接触面が、パッドに対するレンズの密着性を充分に満たすべきである。
【0025】
仮保護コーティングは、パッドが密着すべきレンズの面、一般的にはレンズの凸面の少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、そして最も好ましくは全面を一般的に被覆する。
【0026】
仮保護コーティング外層の成膜により、エッジング可能なレンズが得られる。
つまり、本発明の方法に基づくエッジング操作後、レンズは、それが収納されるガラスフレームに適切に挿入されうる所定の大きさとなる。
【0027】
より具体的に、そのような結果が得られるのは、エッジング操作中、オフセットを最大で2°とする場合である。
最適なエッジング機能に対応するのは、オフセットが1°以下のレンズである。
【0028】
仮保護コーティングは、疎水性および/または疎油性のレンズの表面エネルギーの増加に適合するものであって、エッジング工程に続く操作中に除去しうるものであれば、どのような材料によっても形成することができる。
【0029】
むろん、材料は除去後のレンズの光学特性および表面特性が、仮保護コーティングが成膜される前にレンズが有していたものと全体的に同一となるように疎水性および/または疎油性コーティングの表面特性を決定的に劣化させることを回避しうるものとすべきである。
【0030】
好ましくは、仮保護コーティング外層は、無機外層、より具体的には、フッ化物または金属フッ化物の混合物、酸化物または金属酸化物の混合物または金属水酸化物または金属水酸化物の混合物、およびこれらのフッ化物と、酸化物と、水酸化物との混合物である。
フッ化物の例として、フッ化マグネシウムMgF、フッ化ランタンLaF、フッ化アルミニウムAlFまたはフッ化セリウムCeFが挙げられる。
有用な酸化物は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、チタニア(TiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、または酸化プラセオジウム(Pr)である。
アルミナおよび酸化プラセオジウムの混合物は好適である。
特に好適な材料は、ライボルド株式会社(Leybold Corporation)のPASO2である。
金属水酸化物の例として、Mg(OH)、Ca(OH)およびAl(OH)、好ましくはMg(OH)が挙げられる。
特に好ましい材料はMgFである。
【0031】
保護層は任意の好適な従来からの方法によって成膜できる。
一般的に、反射防止の疎水性および/または疎油性コーティングは蒸着によって真空チャンバ内で成膜されるが、同一の方法で仮保護層を成膜することによって、各操作を連続して行い、各工程間で余分なレンズの処理がないことが好ましい。
【0032】
無機材料からなる場合、保護コーティングの厚みは好ましくは50nm以下であり、一般的には1〜50nmの範囲で、より好ましくは5〜50nmの範囲である。
一般的に、保護コーティングの厚みが薄すぎる場合、表面エネルギーを充分に変更できないおそれがある。
その反対に、保護コーティングの厚みが厚すぎる場合、特に、本質的に無機質のコーティングにおいて、コーティングにより機械応力が発生する危険性があり、期待される特性に悪影響を与えることが発明者によって見出された。
【0033】
好ましくは、そして、より具体的には保護コーティングがレンズの各面の全面に成膜された場合、材料は、ある程度の透明性を有するので、前焦点計を使用するレンズ測定において従来どおりの度数測定ができる。
したがって、本発明に係るレンズは、ISO8980/3にしたがう、透過率が少なくとも18%、好ましくは少なくとも40%である。
【0034】
上記の無機材料に代わって、累進多焦点めがねに印をつけるために使用可能なインク、および/または、累進多焦点めがねに印をつけるために使用可能なインクの結合剤となりうる樹脂から選択された樹脂を使用してもよい。
その場合は、無機コーティングのみの場合よりもずっと厚い厚みに成膜することができる。
そのときの、所要厚みは5〜150nmの範囲とすることができる。
アルキド系樹脂が、特に好適である。
【0035】
上述のとおり、仮保護コーティング外層は単層または多層、特に2層にされうる。
該層はすべて無機質であることも、無機質と無機質との両方であることも可能である。そのような場合、好ましくは有機層は厚みの薄い無機層(5〜200nm)上に成膜され、より厚い厚み、典型的に0.2〜10μmを有することができる。
【0036】
上述のとおり、仮保護コーティング外層は摩擦および/または接触によって物理的に喪失性である。本発明における摩擦および/または接触によって物理的に喪失性とは、キンバリー・クラーク(KIMBERLY-CLARK)社のワイプオール(Wypall) L40(登録商標)の布を使用して、3kg/cmの圧力を維持しながら拭取り領域を5往復する動作からなる乾拭き(dry wiping)を行えばコーティングが除去されることを意味する。
【0037】
本発明はもろい、すなわち上記のWypallの布で60g/cmの圧力を維持しながら拭取り領域を5往復する乾拭きを行えば除去される仮保護コーティング外層を被覆する上で特に役立つ。
【0038】
次に、本発明の一実施形態に係る仮保護コーティング外層および剥離可能な静電フィルムが設けられた眼科レンズを示す図1を参照して他を説明する。
【0039】
本発明によれば、仮保護コーティング外層は、コーティング面に静電的に付着した剥離性フィルム(剥離性静電フィルム)で被覆されている。
そのような剥離可能な静電フィルムそのものは公知であり、可塑性材料、好ましくは高含量、すなわち少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%で、通常は30〜60重量%の範囲の可塑剤を含むポリ塩化ビニル(PVC)で作製された柔軟なフィルムである。
本発明に係る剥離可能な静電フィルムは、一般的に100〜200μmの範囲で、典型的に、ほぼ150μm程度の厚みを有する。
36重量%の可塑剤を含むPVCの剥離可能な静電フィルム(150μm厚)が商品名STICK 87015としてJAC社から販売されている。同社によって販売されている他の有用な膜は、商品番号87215のものである。
そのような静電フィルムは通常A4用紙の形状であり、そこからコーティング保護に供するために所望片を切出すことができる。
【0040】
そのような片について、フィルムの剥離を容易にするためにレンズの縁よりも外方に延びるグリップタブを設けることができる。
【0041】
驚くべきことに、仮保護コーティングの摩擦および接触に対する極めて敏感な喪失性にもかかわらず、仮保護コーティング、より具体的に、厚みが50nm以下の無機質の仮コーティング、特に具体的にMgFコーティングの態様において、該コーティングを喪失することなく、レンズ面からそのような保護フィルムを除去できることが分かった。
【0042】
図1を参照すると、凸状の表面が疎水性および/または疎油性コーティング(例えば、ペルフルオロ化合物)ならびに仮保護コーティング外層(例えば、MgF層)で被覆された例えばCR39(登録商標)(ジエチレングリコールビスアリルカルボナートコポリマー)系の眼科レンズ1が示されている。
【0043】
本発明に基づいて、仮保護コーティングの中心部はほぼ円状の主部3と該中心部3の円周からレンズ1の縁よりも外方に延びるグリップタブ4とを含む静電性の剥離性フィルム2で被覆されている。
そのようなタブ4は、仮保護コーティング外層を失わせる危険性なく剥離性フィルム2の除去を容易にする。
【0044】
本発明に係るレンズは、エッジング操作前に剥離性フィルムを除去すべきことと、最終工程で仮保護コーティングの除去操作を行わなくてはならないことを除けば、まったく従来どおりにエッジング操作を施すことができる。
仮保護層の除去工程は、液状媒体中で、または乾拭きによって、またはこれらの2つの手段を逐次実施することによって行うことができる。
液状媒体中の除去工程は、好ましくは、石鹸水溶液またはイソプロピルアルコールなどのアルコールで実施される。0.01〜1Nの範囲のモル濃度の酸性溶液、具体的にはオルトリン酸溶液も使用できる。
酸性溶液は、アニオン、カチオンまたは両性の界面活性剤も含みうる。
除去工程が実施される温度は多様であるが、一般的には室温で行われる。
仮保護コーティングの除去は、機械的処理、好ましくは超音波を使用することによって促進することもできる。
乾拭きによる除去には、好ましくはKimberly-Clark社が販売しているWYPALL 40(登録商標)の布が使用される。
【0045】
酸性溶液などの液状媒体での処理、乾拭き、またはその両方の組み合わせの後に、除去工程は、pHが実質的に7である水溶液を用いる洗浄工程を含んでもよい。
【0046】
仮保護層の除去工程の最後に、レンズは、初期レンズ、より具体的に疎水性および/または疎油性コーティングを含む初期レンズと同程度の、ほとんど同一とさえいえる光学特性および表面特性を示す。
【0047】
本発明は、光学レンズ、より具体的には眼科レンズをエッジングする方法とも関連し、以下の工程を含む:
−本明細書に記載される光学レンズを準備し、
−物理的に喪失性の外層を露出するために静電性の剥離フィルムを除去し、
−保持パッドを含むエッジングデバイス内に、保持パッドが物理的に喪失性の外層に密着するように光学レンズを置き、
−光学レンズをエッジングし、
−仮保護コーティングを除去し、
−エッジングされた最終的な光学レンズを回収する。
【実施例1】
【0048】
成膜は、CR39(登録商標)系の、ORMA(登録商標)15 Supra、眼科レンズであり、−2.00の度数と、65mmの直径とを有する、両面にポリシロキサン系の磨耗防止コーティングを有する基板上で行われる。
1−1 基板処理の説明
使用される真空処理装置は、電子銃、"End-Hall" Mark 2 Commonwealthタイプのイオン銃およびジュール効果蒸発源とを備えたバルザース(Balzers)社製BAK760である。
レンズは、回転トレー上に、凹面が蒸発源およびイオン銃に面するように配置される。
吸引操作は二次真空(secondary vacuum)に達するまで行われる。
基板の表面は、Mark 2イオン銃を用いた、アルゴンイオン銃での照射により活性化する。
【0049】
その後、イオン照射を中断し、電子銃で、高屈折率(HI)、低屈折率(BI)、高屈折率(HI)、低屈折率(BI):ZrO/SiO/ZrO/SiOの4つの反射防止光学層が連続的な蒸着を行う。
疎水性および疎油性コーティング層を、DAIKIN社から販売されているOptool DSX(登録商標)(ペルフルオロプロピレン単位を含む化合物)という商品名の製品の蒸着によって成膜する。
それにより得られる疎水性および疎油性コーティングの厚みは、2〜5nmの範囲である。
【0050】
最後に、仮外側保護層を蒸着によって成膜する。
成膜された材料は、Merck社から販売されているMgFの化学式を有する粒径1〜2.5nmの化合物である。
蒸着は、電子銃を使用して行われる。
成膜速度毎秒0.52nmで成膜される物理的な厚みは20nmである。
その後、封入物が再び加熱し、処理チャンバの雰囲気に戻す。
次にガラスを上下さかさまにし、凸面を処理領域に向ける。凸面を凹面と同様に処理する(上記の工程を再現する)。
【0051】
処理されたガラスの半分を、全く保護せずに袋に入れる。
【表1】

【0052】
1−2 静電フィルムの適用
図1で示されるようなタブを有する直径38mmの静電フィルムを、他の15個のレンズ上、レンズの凸面の中央に手で置く。
次にレンズをランズージー/ラーンシュタイン製糸工場(Landouzy/Papier Fabrik Lahnstein)の袋に装入する。
【表2】

【0053】
1−3 ガラスの保管
袋内の、フィルムなしのレンズ15個および静電フィルムを有するレンズ15個は、ボール箱内にレンズ30列(標準的な保管)に垂直に配置され、湿度測定法でも温度でも制御されない部屋で4ヶ月間保管される。
基板/袋の圧力は約200グラムである。
1−3 静電フィルムの除去およびレンズ検査工程
4ヶ月の保管期間後、レンズはすべて袋から取り出され、静電フィルムはタブで引き剥がすことによって手で“剥がされる”。
レンズはバルドマン(Waldmann)ランプ下で検査される。保護層の完全性は、反射によって視覚的に検査される。
保護層が無傷であれば、反射は青色で全面的に均一である。
保護層を喪失していると、反射が均一ではない。欠陥のサイズは1mm超の直径を有する。
次にレンズにエッジング操作が施される。
エッジング操作が適切に行われるかが記録される(保持パッドの密着性は失われていない)。
【0054】
【表3】

【実施例2】
【0055】
度数−2.00のポリカルボナートレンズ30個を、実施例1の1−1段落に記載されたように処理する。
1−1 静電フィルムの設置および袋内への収納
15個のレンズをなにも保護せずに袋に装入する。
【表4】

【0056】
残された他の15個のレンズについて、タブを有する直径38mmの静電フィルムを、レンズの凸状の表面の中央に手で設ける。
次にレンズを袋の中に装入する。
【表5】

【0057】
1−2 テスト
本テストの目的は、極端な輸送条件をシミュレートすることである。
テストの説明:
袋内のガラスを、凸面を下向きにしてプレート上に置く。次にプレート40を、急速に(16秒以内に)左から右に、そして反対方向に10cmの経路上を40回移動させる。
静電フィルムの除去およびガラス検査工程
テスト後、全ガラスを袋から取り出す。
タブを引き剥がして静電フィルムを手で剥がす。
ガラスを、Waldmannランプの下で検査する。
ガラスにその後エッジング操作を施す。
【0058】
【表6】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの表面を少なくとも一部被覆し、かつ摩擦および/または接触によって物理的に喪失されうる少なくとも1つの外層を含む仮保護コーティング外層、ただしフッ化マグネシウムを含有する下層と直接接触する金属酸化物および/または金属水酸化物の外層を除く、を含み、前記仮保護コーティング外層は該外層に静電的に付着する剥離可能なフィルムで被覆されている、光学レンズ。
【請求項2】
前記外層は、金属フッ化物およびその混合物、金属酸化物およびその混合物、金属水酸化物およびその混合物、それらの金属フッ化物、金属酸化物および金属水酸化物のうち2種類以上の物質の混合物、光学レンズ用マーキングインクならびにマーキングインクの結合剤を形成しうる樹脂から選択される樹脂からなる請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記金属フッ化物はMgF、LaF、AlFおよびCeF、好ましくはMgFから選択され、前記金属酸化物はMgO、CaO、TiO、Al、ZrOおよびPr、好ましくはMgOから選択され、前記金属水酸化物はMg(OH)、Ca(OH)およびAl(OH)、好ましくはMg(OH)から選択される請求項1または2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記外層が金属フッ化物、好ましくはMgFからなる請求項1に記載のレンズ。
【請求項5】
前記仮保護コーティング外層が無機質であり、50nm以下の厚みを有する請求項1から4のいずれかに記載のレンズ。
【請求項6】
前記仮保護コーティング外層の前記外層が少なくとも15mJ/mの表面エネルギーを有する請求項1から5のいずれかに記載のレンズ。
【請求項7】
前記仮保護コーティング外層が前記レンズの表面の少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、そして最も好ましくは全面を被覆する請求項1から6のいずれかに記載のレンズ。
【請求項8】
前記仮保護コーティング外層が多層コーティングである請求項1から7のいずれかに記載のレンズ。
【請求項9】
前記仮保護コーティング外層が蒸着により成膜される請求項1から8のいずれかに記載のレンズ。
【請求項10】
前記剥離可能な静電フィルムが、少なくとも1つの可塑剤を少なくとも20重量%含有する可塑性材料からなる柔軟なフィルムである請求項1から9のいずれかに記載のレンズ。
【請求項11】
前記可塑性材料フィルムが少なくとも1つの可塑剤を少なくとも30重量%、好ましくは30〜60重量%含有する請求項10に記載のレンズ。
【請求項12】
前記可塑性材料の柔軟なフィルムがポリ塩化ビニル(PVC)フィルムである請求項10または11に記載のレンズ。
【請求項13】
前記静電フィルムが100〜200μmの範囲の厚みを有する請求項1から13のいずれかに記載のレンズ。
【請求項14】
前記仮保護コーティング外層がレンズの疎水性および/または疎油性の表面コーティング上に形成される請求項1から13のいずれかに記載のレンズ。
【請求項15】
前記疎水性および/または疎油性の表面コーティングが14mJ/m以下、好ましくは12mJ/m以下の表面エネルギーを有する請求項14に記載のレンズ。
【請求項16】
前記疎水性および/または疎油性の表面コーティングが10nm以下、好ましくは5nm以下の厚みを有する請求項14または15に記載のレンズ。
【請求項17】
前記疎水性および/または疎油性の表面コーティングレンズの反射防止コーティング上に形成された請求項14から16のいずれかに記載のレンズ。
【請求項18】
−請求項1から17のいずれかに記載の光学レンズを提供し、
−前記物理的に喪失しうる外層を露出するために前記剥離可能な静電フィルムを除去し、
−保持パッドを含むエッジングデバイス内に、前記保持パッドが物理的に喪失しうる外層に密着するように前記光学レンズを置き、
−前記光学レンズをエッジングし、
−前記仮保護コーティングを除去し、
−前記エッジングした最終的な光学レンズを回収する
工程を含む光学レンズのエッジング方法。

【公表番号】特表2007−506998(P2007−506998A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527449(P2006−527449)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002426
【国際公開番号】WO2005/031441
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】