説明

静電印刷装置

【課題】低コストかつコンパクトな構成で、正確かつ綺麗な印刷を行うことができる静電印刷装置を提供する。
【解決手段】静電印刷装置1は、被印刷物が載置される印刷ステージ10と、水平方向に延びるガイドシャフト33を有する固定フレーム30と、可動フレーム20とを備えている。可動フレーム20は、所定の印刷パターンが形成されたスクリーン21A,21B,21Cをガイドシャフト33の軸方向に並べて保持するスクリーンユニット22と、スクリーンユニット22をガイドシャフト33の軸方向に滑動可能とするとともに、ガイドシャフト33を中心として回転可能とするベアリング部25とを有している。静電印刷装置1は、スクリーン21A,21B,21Cを印刷ステージ10の上方の印刷位置に位置決めする位置決め機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電印刷装置、特に静電力を利用して粉体インキを被印刷物の表面に付着させ、文字や図形などの印刷パターンを被印刷物の表面に印刷する静電印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電力を利用して粉体インキを被印刷物の表面に付着させ、文字や図形などの印刷パターンを被印刷物の表面に印刷する静電印刷装置が知られている。従来の静電印刷装置では1色の粉体インキによる印刷しかできないため、被印刷物に多色印刷を行おうとする場合には、使用する色の数だけ静電印刷装置を設置する必要がある。
【0003】
図1は、従来の静電印刷装置を用いて3色印刷を行う場合の装置構成を示す縦断面図である。図1に示す例では、まず、静電印刷装置200aにおいて1色目の印刷を行った後、被印刷物100が載せられたパレット150を次の静電印刷装置200bに移送し、この静電印刷装置200bにおいて2色目の印刷を行う。そして、静電印刷装置200bにおける2色目の印刷の終了後、更にパレット150を次の静電印刷装置200cに移送し、この静電印刷装置200cにおいて3色目の印刷を行う。このように、従来の静電印刷装置を用いて多色印刷を行う場合には、複数の静電印刷装置を設置して、それぞれの静電印刷装置でそれぞれの色による印刷が行われる。
【0004】
上述したように、従来の静電印刷装置を用いて多色印刷を行う場合には、使用する色の数だけ静電印刷装置を設置する必要があり、広い設置スペースが必要となり、多色印刷を行うためのコストも非常に高くなってしまう。
【0005】
また、被印刷物が載せられたパレットを次の静電印刷装置に移送する際に、スクリーンに対してパレットの位置がずれてしまったり、移送の際の振動や衝撃などによりパレット内での被印刷物の位置がずれてしまったりすることがある。このような場合には、色によって印刷位置が異なることとなるので、被印刷物に対して正確で綺麗な印刷をすることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、低コストかつコンパクトな構成で、正確かつ綺麗な印刷を行うことができる静電印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、低コストかつコンパクトな構成で、正確かつ綺麗な印刷を行うことができる静電印刷装置が提供される。この静電印刷装置は、被印刷物が載置される印刷ステージと、水平方向に延びるガイドシャフトを有する固定フレームと、可動フレームとを備えている。この可動フレームは、それぞれ所定の印刷パターンが形成された複数のスクリーンを上記ガイドシャフトの軸方向に並べて保持するスクリーンユニットと、上記スクリーンユニットを上記ガイドシャフトの軸方向に滑動可能とするとともに、上記ガイドシャフトを中心として回転可能とするベアリング部とを有している。また、静電印刷装置は、上記複数のスクリーンのそれぞれを上記印刷ステージの上方の印刷位置に位置決めする位置決め機構と、上記スクリーンと上記印刷ステージとの間に電圧を印加する電源とを備えている。この場合において、上記位置決め機構は、互いに当接する1対の部材を複数組有していてもよい。
【0008】
上記固定フレームは、上記ガイドシャフトを支持するシャフトサポートをさらに有していてもよい。この場合において、上記複数のスクリーンがそれぞれ上記印刷位置に位置決めされたときの上記ベアリング部の位置に対応して複数の開口を上記シャフトサポートに形成してもよい。
【0009】
また、上記固定フレームは、上記ガイドシャフトを中心として上記スクリーンユニットを回転させて持ち上げるリフト機構をさらに有していてもよい。この場合において、上記リフト機構は、上記可動フレームの一部を押圧して上記スクリーンユニットを回転させる押圧子と、上記押圧子を付勢するスプリングとを含んでいてもよい。また、上記リフト機構は、上記スクリーンユニットが所定の位置よりも上方に持ち上げられた場合に、上記押圧子と上記可動フレームの一部との接触を解除するように構成されていることが好ましい。さらに、上記固定フレームは、上記スクリーンユニットが所定の位置よりも上方に持ち上げられるのを防止するブロックを有していてもよい。また、上記静電印刷装置は、上記スクリーンユニットが所定の位置よりも押し下げられたときに該スクリーンユニットに接触して上記電源による電圧の印加を開始し、上記リフト機構により上記スクリーンユニットが持ち上げられたときに該スクリーンユニットとの接触が外れて上記電源による電圧の印加を停止するスイッチをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のように複数の静電印刷装置を設置することなく、1つの静電印刷装置で多色印刷を行うことができる。したがって、設置スペースを小さくしてコンパクトな構成にすることができ、また必要とされる高圧直流電源や各種の機器類も1つで足りるため、多色印刷を行うためのコストを大幅に削減することが可能となる。
【0011】
また、被印刷物を静止させた状態で、異なる色の粉体インキによる印刷が可能となり、また、それぞれのスクリーンも位置決め機構により正確に位置決めされるので、色によって印刷位置がずれてしまうことがない。したがって、被印刷物に対して正確かつ綺麗な印刷をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る静電印刷装置の実施形態について図2から図11を参照して詳細に説明する。なお、図2から図11において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0013】
図2は本発明の一実施形態における静電印刷装置1を示す正面図、図3は図2の平面図、図4は図2の側面図である。図2から図4に示すように、静電印刷装置1は、被印刷物が載置される印刷ステージ10と、水平方向に移動可能な可動フレーム20と、可動フレーム20を支持する固定フレーム30とを備えている。印刷ステージ10には直流電源(図示せず)が接続されており、この印刷ステージ10上に菓子などの被印刷物が載置される。
【0014】
図5は固定フレーム30の一部を示す正面図、図6は図5の平面図である。図2から図6に示すように、固定フレーム30は、ベースプレート31と、ベースプレート31を支持する1対の支柱32A,32Bと、水平方向に延びるガイドシャフト33と、ガイドシャフト33をベースプレート31上で支持するシャフトサポート34と、印刷ステージ10の後方で垂直に延びる1対のリアプレート35A,35Bとを有している。
【0015】
図7は可動フレーム20を示す正面図、図8は図7の平面図である。図7および図8に示すように、可動フレーム20は、固定フレーム30のガイドシャフト33の軸方向に並べられた3つのステンシルスクリーン21A,21B,21Cと、これらのステンシルスクリーン21A,21B,21Cを保持するスクリーンユニット22と、スクリーンユニット22の上面に設けられたハンドル23と、スクリーンユニット22に取り付けられた断面L字状の基部24とを有している。それぞれのステンシルスクリーン21A,21B,21Cは、導電性の材質から形成されており、それぞれのステンシルスクリーン21A,21B,21Cには、文字や図形などの所定の印刷パターンがメッシュ網によって形成されている。これらのステンシルスクリーン21A,21B,21Cの電位は接地電位とされる。
【0016】
基部24の下面には、固定フレーム30のガイドシャフト33の軸方向に沿って3つのベアリング部25が取り付けられており、このベアリング部25は固定フレーム30のガイドシャフト33に取り付けられている。このベアリング部25は、スクリーンユニット22をガイドシャフト33の軸方向に滑動可能とし、ガイドシャフト33を中心として回転可能とするものである。
【0017】
印刷ステージ10は、1対のステージアーム11により支持されており、このステージアーム11はハンドル(図示せず)により上下方向の位置が調整可能となっている。したがって、ハンドルを操作することにより印刷ステージ10と可動フレーム20のスクリーンユニット22との間の距離を調整できるようになっている。また、印刷ステージ10の下方には、電源スイッチ12Aや電圧制御スイッチ12B、電圧メータ12Cなどが組み込まれたベース12が配置されている。
【0018】
図4に示すように、リアプレート35Aの上部には、リンク部材41Aが軸42を中心として回転可能に取り付けられている。このリンク部材41Aの端部には、可動フレーム20の基部24の上面を押圧してガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させる押圧子としての押圧ローラ43Aと、第1のステンシルスクリーン21Aを印刷ステージ10の上方の印刷位置に位置決めするための第1のストッパ44Aとが設けられている。このリンク部材41Aは、リアプレート35Aに取り付けられた2つのスプリング45Aによって下方に付勢されている。これにより、押圧ローラ43Aは、図9に示すように、可動フレーム20の基部24の上面を下方に押圧して、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させ、これを持ち上げるようになっている。
【0019】
同様に、図3に示すように、他方のリアプレート35Bの上部には、リンク部材41Bが軸42を中心として回転可能に取り付けられている。このリンク部材41Aの端部には、可動フレーム20の基部24の上面を押圧してガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させる押圧子としての押圧ローラ43Bと、第2のステンシルスクリーン21Bを上記印刷位置に位置決めするための第2のストッパ44Bと、第3のステンシルスクリーン21Cを上記印刷位置に位置決めするための第3のストッパ44Cとが設けられている。このリンク部材41Bは、リアプレート35Bに取り付けられた2つのスプリング45Bによって下方に付勢されている。これにより、押圧ローラ43Bは、可動フレーム20の基部24の上面を下方に押圧して、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させ、これを持ち上げるようになっている。
【0020】
このように、本実施形態においては、押圧ローラ43A,43Bとスプリング45A,45Bにより、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させて持ち上げるリフト機構が構成されている。このリフト機構によりスクリーンユニット22を容易に持ち上げることが可能となる。また、図9に示すように、ベース12の上端部には接触式のスイッチ14が設けられており、このスイッチ14は、スクリーンユニット22が所定の位置よりも押し下げられたときに該スクリーンユニット22に接触するようになっている。スイッチ14がスクリーンユニット22に接触すると、直流電源によってスクリーン21A,21B,21Cと印刷ステージ10との間に電圧が印加される。また、リフト機構によりスクリーンユニット22が持ち上げられると、スイッチ14とスクリーンユニット22との接触が外れ、直流電源による電圧の印加が停止される。
【0021】
図8に示すように、可動フレーム20は、基部24の一方の端部24Aの上面に設けられた第1のガイド部材26Aと、基部24の他方の端部24B近傍の上面に設けられたL字アーム状の第2のガイド部材26Bと、基部24の他方の端部24Bの上面に設けられた第3のガイド部材26Cとを有している。図7に示すように、第2のガイド部材26Bは、第3のガイド部材26Cに取り付けられた軸28を中心として回転可能に構成されており、実線で示したガイド位置と2点鎖線で示した起立位置の2つの状態をとることができるようになっている。
【0022】
ここで、図8に示すように、第1のガイド部材26Aは上述した第1のストッパ44Aに当接するガイド面27Aを有し、第2のガイド部材26Bは第2のストッパ44Bに当接するガイド面27Bを有し、第3のガイド部材26Cは第3のストッパ44Cに当接するガイド面27Cを有している。図10に示すように、第1のストッパ44Aが第1のガイド部材26Aのガイド面27Aに当接する位置で、スクリーンユニット22内の第1のステンシルスクリーン21Aが印刷ステージ10の上方に位置するようになっている。また、図3に示すように、第2のストッパ44Bが第2のガイド部材26Bのガイド面27Bに当接する位置で、スクリーンユニット22内の第2のステンシルスクリーン21Bが印刷ステージ10の上方に位置するようになっている。さらに、図11に示すように、第3のストッパ44Cが第3のガイド部材26Cのガイド面27Cに当接する位置で、スクリーンユニット33内の第2のステンシルスクリーン21Cが印刷ステージ10の上方に位置するようになっている。
【0023】
このように、本実施形態では、互いに当接する第1のガイド部材26Aと第1のストッパ44Aとにより、スクリーンユニット22内の第1のステンシルスクリーン21Aを印刷ステージ10の上方の印刷位置に位置決めする位置決め機構が構成され、互いに当接する第2のガイド部材26Bと第2のストッパ44Bとにより、第2のステンシルスクリーン21Bを印刷位置に位置決めする位置決め機構が構成され、互いに当接する第3のガイド部材26Cと第3のストッパ44Cとにより、第3のステンシルスクリーン21Cを印刷位置に位置決めする位置決め機構が構成されている。
【0024】
図5および図6に示すように、シャフトサポート34には、ガイドシャフト33の軸方向とは垂直な方向に貫通する5つの開口51〜55が形成されている。これらの開口51〜55は、可動フレーム20のベアリング部25に対応して形成されており、第1のステンシルスクリーン21Aが上記印刷位置にあるときは、開口51〜53が形成された部分に3つのベアリング部25が位置するようになっている。したがって、この位置では、シャフトサポート34がベアリング部25に干渉することなく、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させることができる。また、同様に、第2のステンシルスクリーン21Bが印刷位置にあるときは、開口52〜54が形成された部分に3つのベアリング部25が位置するようになっており、第3のステンシルスクリーン21Cが印刷位置にあるときは、開口53〜55が形成された部分に3つのベアリング部25が位置するようになっている。なお、ベアリング部25の個数は図示したものに限られるものではない。また、シャフトサポート34の開口もベアリング部25に対応して設けられていればよく、その個数は図示したものに限られない。
【0025】
このような構成の静電印刷装置1を用いて被印刷物の多色印刷を行う場合の動作について説明する。まず、印刷ステージ10に菓子などの被印刷物を載置する。この被印刷物は菓子などの食品に限られるものではなく、例えば工業製品であってもよい。
【0026】
次に、図9に示すように、スクリーンユニット22を上方に持ち上げる。このとき、上述したリフト機構によりスクリーンユニット22を容易に持ち上げることができる。ここで、リンク部材41A,41Bは所定の角度範囲内で回転可能となっており、スクリーンユニット22が所定の位置からさらに上方に持ち上げられると、押圧ローラ43A,43Bと可動フレーム20の基部24の上面との接触が解除されるようになっている。この状態では、押圧ローラ43A,43Bと基部24の上面との接触が解除されているため、スクリーンユニット22をガイドシャフト33の軸方向に容易に移動することができる。なお、図9に示すように、リアプレート35A,35Bにはブロック46が取り付けられており、可動フレーム20の基部24の端部がこのブロック46に係止することにより、スクリーンユニット22が過度に上方に持ち上げられるのが防止されている。
【0027】
上述したように、押圧ローラ43A,43Bと基部24の上面との接触が解除された状態で、第1のガイド部材26Aのガイド面27Aが第1のストッパ44Aに当接するまで、スクリーンユニット22をガイドシャフト33の軸方向に移動する。第1のガイド部材26Aのガイド面27Aが第1のストッパ44Aに当接したら、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させて押し下げ、第1のステンシルスクリーン21Aを印刷ステージ10の上方の印刷位置に移動させる(図10に示す状態)。
【0028】
ここで、図4および図9に示すように、固定フレーム30のベース12には、上方に延びるストッパ棒13が設けられているため、スクリーンユニット22が過度に押し下げられて印刷ステージ10上の被印刷物に接触してしまうことが防止される。
【0029】
第1のステンシルスクリーン21Aが印刷位置にある状態で、第1のステンシルスクリーン21Aの上面に1色目の粉体インキを散布し、この粉体インキをウレタンスポンジブラシなどによりステンシルスクリーンに擦り込む。このような粉体インキとしては、天然色素または合成色素を含んだ可食性インキ、ココア粉、小麦粉、抹茶粉、シュガー粉、あるいは工業用の粉体インキなど、用途に応じて種々の粉体を用いることができる。
【0030】
このとき、スクリーンユニット22によりベース12の上端にあるスイッチ14が押され、直流電源によって第1のステンシルスクリーン21Aと印刷ステージ10との間に直流高電圧、例えば5000〜6000Vの高電圧が印加され、ステンシルスクリーン21Aと印刷ステージ10との間に静電界が形成される。第1のステンシルスクリーン21Aに擦り込まれた粉体インキはステンシルスクリーン21Aのメッシュ網から下方に押し出されるが、メッシュ網を通過し荷電された粉体インキは、上記静電界によって対電極である印刷ステージ10、すなわち被印刷物に向けて加速され、1色目の粉体インキが被印刷物に付着する。このようにして1色目の印刷が完了する。
【0031】
1色目の印刷の完了後、図9に示すように、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させて上方に持ち上げる。これにより、スイッチ14とスクリーンユニット22との接触が外れて直流電源による高電圧の印加が停止される。そして、第2のガイド部材26Bのガイド面27Bが第2のストッパ44Bに当接するまで、スクリーンユニット22をガイドシャフト33の軸方向に移動する。このように、本実施形態においては、スクリーンユニット22に接触するスイッチ14により、印刷を行うときにのみ高電圧が印加され、スクリーンユニット22を移動するときには必ず高電圧の印加が停止されるので、作業者の安全が確保される。第2のガイド部材26Bのガイド面27Bが第2のストッパ44Bに当接したら、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させて押し下げ、第2のステンシルスクリーン21Bを印刷ステージ10の上方の印刷位置に移動させる(図3に示す状態)。そして、上述と同様にして、第2のステンシルスクリーン21Bの上面に2色目の粉体インキを散布し、これを第2のステンシルスクリーン21Bに擦り込む。このとき、直流電源によって第2のステンシルスクリーン21Bと印刷ステージ10との間に直流高電圧が印加され、2色目の粉体インキが被印刷物に付着する。このようにして2色目の印刷が完了する。
【0032】
2色目の印刷の完了後、図9に示すように、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させて上方に持ち上げると、直流電源による高電圧の印加が停止される。そして、軸28を中心として第2のガイド部材26Bを回転させて持ち上げる。この状態で、第3のガイド部材26Cのガイド面27Cが第3のストッパ44Cに当接するまで、スクリーンユニット22をガイドシャフト33の軸方向に移動する。第3のガイド部材26Cのガイド面27Cが第3のストッパ44Cに当接したら、ガイドシャフト33を中心としてスクリーンユニット22を回転させて押し下げ、第3のステンシルスクリーン21Cを印刷ステージ10の上方の印刷位置に移動させる(図11に示す状態)。そして、上述と同様にして、第3のステンシルスクリーン21Cの上面に3色目の粉体インキを散布し、これを第3のステンシルスクリーン21Cに擦り込む。このとき、直流電源によって第3のステンシルスクリーン21Cと印刷ステージ10との間に直流高電圧が印加され、3色目の粉体インキが被印刷物に付着する。このようにして3色目の印刷が完了する。
【0033】
上述したように、本実施形態では、3つのステンシルスクリーン21A,21B,21Cを用いて3色印刷を行うことができる。なお、ステンシルスクリーンの数を変更することにより、任意の色数の多色印刷を行うことができる。また、本実施形態のようにそれぞれのステンシルスクリーンには異なる色の粉体インキを散布して多色印刷を行ってもよいし、あるいは、それぞれ異なる種類の粉体インキを散布して印刷を行ってもよい。
【0034】
このように、本発明に係る静電印刷装置によれば、1つの静電印刷装置で多色印刷を行うことができる。したがって、設置スペースを小さくしてコンパクトな構成にすることができ、また必要とされる高圧直流電源や各種の機器類も1つで足りるため、多色印刷を行うためのコストを大幅に削減することが可能となる。
【0035】
また、被印刷物を印刷ステージ10に載置したまま静止させた状態で、異なる色の粉体インキによる多色印刷が可能となり、また、それぞれのステンシルスクリーン21A,21B,21Cも上述した位置決め機構により正確に位置決めされる。したがって、色によって印刷位置がずれてしまうことがなく、被印刷物に対して正確かつ綺麗な印刷をすることができる。
【0036】
なお、上述の実施形態においては、ステンシルスクリーンの電位を接地電位とした例を説明したが、これに限られるものではなく、ステンシルスクリーンに直流電源を接続し、印刷ステージの電位を接地電位とすることもできる。
【0037】
また、上述の実施形態においては、スクリーンユニット22内のステンシルスクリーン21A,21B,21Cを印刷位置に位置決めする位置決め機構を、可動フレーム20に設けられたガイド部材26A,26B,26Cとストッパ44A,44B,44Cにより構成する例について説明したが、位置決め機構はこれに限られるものではない。例えば、可動フレーム20に設けた突起(雄部材)と固定フレーム30に設けたV字溝(雌部材)とにより位置決め機構を構成してもよいし、あるいは、可動フレーム20に設けたV字溝(雌部材)と固定フレーム30に設けた突起(雄部材)とにより位置決め機構を構成してもよい。
【0038】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の静電印刷装置を用いて3色印刷を行う場合の装置構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における静電印刷装置を示す正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】図2に示す静電印刷装置における固定フレームの一部を示す正面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図2に示す静電印刷装置における可動フレームを示す正面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】図2に示す静電印刷装置において可動フレームが持ち上げられている状態を示す側面図である。
【図10】図2に示す静電印刷装置において可動フレームの第1のステンシルスクリーンが印刷位置にあるときの状態を示す平面図である。
【図11】図2に示す静電印刷装置において可動フレームの第3のステンシルスクリーンが印刷位置にあるときの状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 印刷ステージ
13 ストッパ棒
14 スイッチ
20 可動フレーム
21A,21B,21C ステンシルスクリーン
22 スクリーンユニット
24 基部
25 ベアリング部
26A,26B,26C ガイド部材
27A,27B,27C ガイド面
30 固定フレーム
33 ガイドシャフト
34 シャフトサポート
41A,41B リンク部材
43A,43B 押圧ローラ
44A,44B,44C ストッパ
45A,45B スプリング
46 ブロック
51〜55 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物が載置される印刷ステージと、
水平方向に延びるガイドシャフトを有する固定フレームと、
それぞれ所定の印刷パターンが形成された複数のスクリーンを前記ガイドシャフトの軸方向に並べて保持するスクリーンユニットと、前記スクリーンユニットを前記ガイドシャフトの軸方向に滑動可能とするとともに、前記ガイドシャフトを中心として回転可能とするベアリング部とを有する可動フレームと、
前記複数のスクリーンのそれぞれを前記印刷ステージの上方の印刷位置に位置決めする位置決め機構と、
前記スクリーンと前記印刷ステージとの間に電圧を印加する電源と、
を備えたことを特徴とする静電印刷装置。
【請求項2】
前記固定フレームは、前記ガイドシャフトを支持するシャフトサポートをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の静電印刷装置。
【請求項3】
前記シャフトサポートには、前記複数のスクリーンがそれぞれ前記印刷位置に位置決めされたときの前記ベアリング部の位置に対応して複数の開口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の静電印刷装置。
【請求項4】
前記位置決め機構は、互いに当接する1対の部材を複数組有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の静電印刷装置。
【請求項5】
前記固定フレームは、前記ガイドシャフトを中心として前記スクリーンユニットを回転させて持ち上げるリフト機構をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の静電印刷装置。
【請求項6】
前記リフト機構は、
前記可動フレームの一部を押圧して前記スクリーンユニットを回転させる押圧子と、
前記押圧子を付勢するスプリングと、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の静電印刷装置。
【請求項7】
前記リフト機構は、前記スクリーンユニットが所定の位置よりも上方に持ち上げられた場合に、前記押圧子と前記可動フレームの一部との接触を解除するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の静電印刷装置。
【請求項8】
前記固定フレームは、前記スクリーンユニットが所定の位置よりも上方に持ち上げられるのを防止するブロックをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の静電印刷装置。
【請求項9】
前記スクリーンユニットが所定の位置よりも押し下げられたときに該スクリーンユニットに接触して前記電源による電圧の印加を開始し、前記リフト機構により前記スクリーンユニットが持ち上げられたときに該スクリーンユニットとの接触が外れて前記電源による電圧の印加を停止するスイッチをさらに備えたことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の静電印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−23949(P2008−23949A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201947(P2006−201947)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成18年6月6日〜9日 社団法人日本食品機械工業会主催の「2006国際食品工業展」に出品
【出願人】(596159153)ベルク工業有限会社 (6)
【Fターム(参考)】