説明

静電塗装装置および静電塗装装置の塗装方法

【課題】静電塗装装置において、プラズマ照射を有効に利用して液体の塗布性能を向上させる。
【解決手段】被塗布体(20)の表面に沿って移動する走査ヘッド(15)に、該走査ヘッド(15)の走査方向の前方から後方へ向かって順にプラズマ電極(25)と噴霧ノズル(30)とを隣接して配列した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装装置及び塗装方法に関し、特に静電塗装前の対象物に前処理を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、噴霧状の液体と対象物との間に所定の電圧を印加して該液体を対象物に塗布する静電塗装装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この静電塗装装置では、液体と対象物との間に生じる静電気力を利用して対象物に液体を塗布している。
【0003】
ところで、この液体の塗布性能をさらに向上させるため、液体を塗布する前の対象物にプラズマを照射することが考えられる。これにより、プラズマの活性種が対象物の表面に当たって該表面が活性化して対象物に液体が沈着しやすくなる。又、このプラズマの照射によって、対象物の表面にあるゴミを除去することで、対象物に液体が付着しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−183874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このプラズマ照射による対象物の活性状態は短時間で失活してしまう。このため、上記静電塗装装置において、上述したプラズマ照射を用いて液体の塗布性能を向上させることが困難であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電塗装装置において、プラズマ照射を有効に利用して液体の塗布性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ヘッド部(15)と、上記ヘッド部(15)に対して相対移動が可能に配設された対象物(20)と、上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するプラズマ電極(25)と、上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するとともに上記対象物(20)に塗布される噴霧用液体が供給される噴霧ノズル(30)と、上記プラズマ電極(25)と上記対象物(20)との間、及び上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加し、上記プラズマ電極(25)から上記対象物(20)へ向かってプラズマを照射させるとともに上記噴霧用液体を帯電した霧化状態で噴霧させて上記対象物の表面に塗布させる電圧印加部(40)とを備えた静電塗装装置を前提としている。そして、上記噴霧ノズル(30)及び上記プラズマ電極(25)の両方を動作させるときの上記ヘッド部(15)に係る相対移動方向の前方から後方へ向かって順にプラズマ電極(25)と噴霧ノズル(30)とを隣接して配列したことを特徴としている。
【0008】
第1の発明では、上記ヘッド部(15)に係る相対移動方向の前方から後方へ向かって順にプラズマ電極(25)と噴霧ノズル(30)とを隣接させて配列した。ここで、上記ヘッド部(15)の相対移動方向とは、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)の両方を動作させるときの移動方向であるので、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)の一方を動作させるときの移動方向は含まれない。
【0009】
このように、上記プラズマ電極(25)が上記噴霧ノズル(30)の前方に位置するので、上記対象物(20)にプラズマ照射した後に噴霧状の液体を噴霧することが可能になる。又、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧ノズル(30)とを隣接させることで、プラズマ照射の後に素早く噴霧状の液体が対象物(20)に塗布される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記プラズマ電極(25)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴としている。
【0011】
第2の発明では、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧用液体とを同極性にすることにより、上記噴霧ノズル(30)から噴霧された液体で上記プラズマ電極(25)が汚染されなくなる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記プラズマ電極(25)を保護する保護カバー(21)を備え、上記保護カバー(21)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴としている。
【0013】
第3の発明では、上記保護カバー(21)を上記噴霧用液体と同じ極性にしている。この保護カバー(21)で液体によるプラズマ電極(25)の汚染を防止するとともに、この保護カバー(21)も液体で汚染されなくなる。
【0014】
第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、上記電圧印加部(40)は、上記噴霧ノズル(30)の先端部に電界を形成して該先端部から液体が噴霧されるように、上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加することを特徴としている。
【0015】
第4の発明では、静電噴霧によって液体を対象物(20)に塗布する。この静電噴霧の場合には、例えば帯電した液体をノズルの形状のみで噴霧する場合に比べて、各噴霧粒子の粒子径を小さく且つ各噴霧粒子を確実に帯電することができる。
【0016】
このことから、上記各噴霧粒子の粒子径を小さくすることで該噴霧粒子が対象物(20)へ向かう際の慣性力を弱めるとともに、この慣性力の弱い噴霧粒子を確実に帯電させることができる。以上より、噴霧粒子がプラズマ電極(25)に近づくのを確実に抑制することができるようになる。
【0017】
第5の発明は、ヘッド部(15)と、該ヘッド部(15)に対して相対移動が可能に配設された対象物(20)と、上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するプラズマ電極(25)と、上記プラズマ電極(25)に隣接して上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するとともに上記対象物(20)に塗布される噴霧用液体が供給される噴霧ノズル(30)と、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加し、上記プラズマ電極(25)から上記対象物(20)へ向かってプラズマを照射させるとともに上記噴霧用液体を帯電した霧化状態で噴霧させて上記対象物の表面に塗布させる電圧印加部(40)とを備えた静電塗装装置の塗装方法を前提としている。
【0018】
そして、上記プラズマ電極(25)が前方となって上記噴霧ノズル(30)が後方となる向きに、上記ヘッド部(15)及び上記対象物(20)を相対移動させる移動工程を備えていることを特徴としている。
【0019】
第5の発明では、上記プラズマ電極(25)を上記噴霧ノズル(30)の前方に位置させながら上記ヘッド部(15)を移動させることにより、上記対象物(20)にプラズマ照射した後に噴霧状の液体を噴霧することが可能になる。又、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧ノズル(30)とを隣接させることで、プラズマ照射の後に素早く噴霧状の液体が対象物(20)に塗布される。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、上記プラズマ電極(25)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴としている。
【0021】
第6の発明では、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧用液体とを同極性にすることにより、上記噴霧ノズル(30)から噴霧された液体で上記プラズマ電極(25)が汚染されなくなる。
【0022】
第7の発明は、第5又は第6の発明において、上記プラズマ電極(25)を保護する保護カバー(21)を備え、上記保護カバー(21)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴としている。
【0023】
第7の発明では、上記保護カバー(21)を上記噴霧用液体と同じ極性にしている。この保護カバー(21)で液体によるプラズマ電極(25)の汚染を防止するとともに、この保護カバー(21)も液体で汚染されなくなる。
【0024】
第8の発明は、第5から第7の何れか1つの発明において、上記電圧印加部(40)は、上記噴霧ノズル(30)の先端部に電界を形成して該先端部から液体が噴霧されるように、上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加することを特徴としている。
【0025】
第8の発明では、静電噴霧によって液体を対象物(20)に塗布する。この静電噴霧の場合には、例えば帯電した液体をノズルの形状のみで噴霧する場合に比べて、各噴霧粒子の粒子径を小さく且つ各噴霧粒子を確実に帯電することができる。
【0026】
このことから、上記各噴霧粒子の粒子径を小さくすることで該噴霧粒子が対象物(20)へ向かう際の慣性力を弱めるとともに、この慣性力の弱い噴霧粒子を確実に帯電させることができる。以上より、噴霧粒子がプラズマ電極(25)に近づくのを確実に抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
上記第1及び第5の発明によれば、プラズマ電極(25)と噴霧ノズル(30)とを隣接させた状態で上記ヘッド部(15)に配設することにより、プラズマ照射による対象物(20)の活性状態が失活しないうちに素早く噴霧状の液体を対象物(20)に塗布することができる。これにより、このプラズマ照射を有効に利用して液体の塗布性能を向上させることができる。
【0028】
また、上記第2及び第6の発明によれば、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧用液体とを同極性にすることにより、上記噴霧用液体で上記プラズマ電極(25)が汚染されるのを防ぐことができる。これにより、プラズマ電極(25)から照射されるプラズマの量を低下させることなく、噴霧状の液体を対象物(20)に塗布することができる。
【0029】
また、上記第3及び第7の発明によれば、上記保護カバー(21)を設けることにより、上記噴霧用液体によるプラズマ電極(25)の汚染を防止することができる。又、この保護カバー(21)と上記噴霧用液体とを同極性にすることにより、上記噴霧用液体による保護カバー(21)の汚染を防止することができる。これにより、プラズマ電極(25)から照射されるプラズマの量を低下させることなく、噴霧状の液体を対象物(20)に塗布することができる。
【0030】
また、上記第4及び第8の発明によれば、静電噴霧で液体を対象物(20)に塗布することにより、液体の噴霧粒子が対象物(20)へ向かう際の慣性力を弱めるとともに、この慣性力の弱い噴霧粒子を確実に帯電させることができる。これにより、この噴霧粒子がプラズマ電極(25)に近づくのを確実に抑制することができ、上記噴霧用液体によるプラズマ電極(25)の汚染をより一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本実施形態に係る静電塗装装置の概略構成図であり、薄膜形成状態を示す構成図である。
【図2】図2は、本実施形態の変形例1に係る静電塗装装置の概略構成図であり、薄膜形成状態を示す構成図である。
【図3】図3は、本実施形態の変形例2に係る走査ヘッドの外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
本実施形態の静電塗装装置(10)は、対象物である被塗布体(20)に汚れ防止膜などの機能性の薄膜を形成するものである。この静電塗装装置(10)は、図1に示すように、走査ヘッド(ヘッド部)(15)と噴霧ノズル(30)とプラズマ電極(25)と電圧印加部(40)とを備えている。
【0034】
上記被塗布体(20)は、ガラス等の絶縁体で構成され、例えば、平坦な板状に形成され、表面が薄膜形成面になっている。
【0035】
上記走査ヘッド(15)は、上記被塗布体(20)の薄膜形成面に対向するように配置されている。又、この走査ヘッド(15)は、上記静電塗装装置(10)が有する走査レール(16)に移動自在に支持されている。そして、この走査ヘッド(15)は、上記被塗布体(20)の薄膜形成面に沿うように往復移動する。
【0036】
上記噴霧ノズル(30)は、該噴霧ノズル(30)の先端が上記被塗布体(20)の薄膜形成面に対向するように、上記走査ヘッド(15)に取り付けられている。この噴霧ノズル(30)には、被塗布体(20)に塗布するための噴霧用液体が供給される。この噴霧用液体は、例えば、溶媒に薄膜となる成分分子が均一に溶解したものである。
【0037】
上記プラズマ電極(25)は、該プラズマ電極(25)の先端が上記被塗布体(20)の薄膜形成面に対向し且つ上記噴霧ノズル(30)に隣接するように、上記走査ヘッド(15)に取り付けられている。尚、図1の矢印は、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)の両方を動作させるときの上記走査ヘッド(15)の移動方向である。そして、この移動方向の前方となる位置に上記プラズマ電極(25)が配置され、この移動方向の後方となる位置に上記噴霧ノズル(30)が配置される。
【0038】
上記電圧印加部(40)は、電源(41)と、該電源(41)に接続された放電電極(42)及び対向電極(43)とを備えている。上記放電電極(42)は、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)である。つまり、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)は、上記走査ヘッド(15)を介して上記電源(41)と導通している。上記対向電極(43)は、上記被塗布体(20)の裏面に導電体(50)を介して接続されている。又、上記対向電極(43)は接地されて接地電極を構成する。
【0039】
又、上記電圧印加部(40)に内蔵された切換スイッチにより、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)の両方に高電圧を印加したり、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧ノズル(30)の一方に高電圧を印加することが可能である。
【0040】
そして、上記電圧印加部(40)では、上記プラズマ電極(25)と上記被塗布体(20)との間に所定の高電圧を印加することにより、上記プラズマ電極(25)から上記被塗布体(20)の薄膜形成面へ向けてプラズマが照射される。
【0041】
又、上記電圧印加部(40)では、上記噴霧ノズル(30)の噴霧用液体と上記被塗布体(20)との間に所定の高電圧を印加することにより、上記噴霧ノズル(30)の先端部に電界が形成され、この先端部から霧状の上記噴霧用液体が帯電した状態で被塗布体(20)へ噴霧される。つまり、上記静電塗装装置(10)は、噴霧ノズル(30)の噴霧用液体を所定の加圧状態とし、この加圧状態の噴霧用液体に高電圧を印加すると、帯電された霧化粒子(11)となって大気に噴霧され、この帯電された霧化粒子(11)が対向電極(43)である被塗布体(20)の表面に付着するように構成されている。この構成では、静電噴霧方式によって被塗布体(20)に薄膜を形成する。又、上記走査ヘッド(15)と上記プラズマ電極(25)とには、霧化粒子(11)と同極性の電位が印加される。
【0042】
さらに、上記被塗布体(20)の裏面に設けられる導電体(50)は、対向電極(43)が接続されている。上記導電体(50)は、被塗布体(20)の薄膜形成面に対応して設けられ、両面が平坦な平板状に形成され、上記噴霧用液体と上記被塗布体(20)との間に電圧を印加した際、静電気力によって被塗布体(20)に密着する。
【0043】
上記被塗布体(20)に薄膜を形成する場合、該被塗布体(20)の薄膜形成面の帯電状況によって霧化粒子(11)である帯電粒子の沈着性が異なる。したがって、均一な薄膜を形成するためには、上記被塗布体(20)の薄膜形成面の帯電電位を一定に保持する必要がある。
【0044】
上記被塗布体(20)の薄膜形成面の帯電電位を安定させるためには、接地電極である対向電極(43)との距離を一定または密着させる必要がある。そこで、本実施形態においては、対向電極(43)が接続された導電体(50)を被塗布体(20)の裏面に密着させて設けるようにしている。そして、上記薄膜形成後に被塗布体(20)の徐電を行うために導電体(50)、つまり、対向電極(43)が接地されている。
【0045】
−運転動作−
次に、上記静電塗装装置(10)の成膜動作について、成膜方法と共に説明する。
【0046】
先ず、上記被塗布体(20)は、その薄膜形成面にプラズマ電極(25)及び噴霧ノズル(30)が対向するように配置される。そして、上記噴霧ノズル(30)に噴霧用液体を供給する一方、上記被塗布体(20)の裏面に導電体(50)を密着させて設ける。
【0047】
その後、薄膜形成工程に移り、上記電圧印加部(40)によって上記噴霧ノズル(30)と上記導電体(50)との間、及び上記プラズマ電極(25)と上記導電体(50)との間に所定電圧が印加され、上記プラズマ電極(25)から上記被塗布体(20)へ向けてプラズマが照射されると同時に上記噴霧ノズル(30)から上記被塗布体(20)へ向けて噴霧用液体が噴霧される。そして、上記走査ヘッド(15)が、上記被塗布体(20)の薄膜形成面に沿って、上記プラズマ電極(25)が前方となって上記噴霧ノズル(30)が後方となる向き(図1の矢印方向)へ移動する。
【0048】
これにより、上記プラズマ電極(25)からのプラズマ照射による上記薄膜形成面の活性化及び上記薄膜形成面のゴミの除去が行われた直後に、上記噴霧ノズル(30)から噴霧用液体が噴霧されて上記薄膜形成面に付着する。このように、上述したプラズマ照射の後に素早く噴霧用液体を噴霧することにより、上記薄膜形成面に噴霧用液体が沈着しやすくなる。
【0049】
その後、薄膜積層工程に移り、上記プラズマ電極(25)からのプラズマ照射を停止させて上記噴霧ノズル(30)から噴霧用液体が噴霧を継続させる。そして、上記走査ヘッド(15)が、上記噴霧ノズル(30)が前方となって上記プラズマ電極(25)が後方となる向き(図1の矢印と反対方向)へ移動する。これにより、上記薄膜形成面の薄膜の上にさらに薄膜が積層される。尚、この薄膜積層工程は、薄膜の厚みに応じて適宜に行われる。
【0050】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、プラズマ電極(25)と噴霧ノズル(30)とを隣接させた状態で上記ヘッド部(15)に配設することにより、プラズマ照射による被塗布体(20)の活性状態が失活しないうちに素早く噴霧用液体を被塗布体(20)に塗布することができる。これにより、このプラズマ照射を有効に利用して液体の塗布性能を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧用液体とを同極性にすることにより、上記噴霧用液体で上記プラズマ電極(25)が汚染されるのを防ぐことができる。これにより、プラズマ電極(25)から照射されるプラズマの量を低下させることなく、噴霧状の液体を被塗布体(20)に塗布することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、静電噴霧で液体を被塗布体(20)に塗布することにより、液体の噴霧粒子が被塗布体(20)へ向かう際の慣性力を弱めるとともに、この慣性力の弱い噴霧粒子を確実に帯電させることができる。これにより、この噴霧粒子がプラズマ電極(25)に近づくのを確実に抑制することができ、上記噴霧用液体によるプラズマ電極(25)の汚染をより一層抑制することができる。
【0053】
−実施形態の変形例1−
図2に示す変形例1では、上記プラズマ電極(25)を保護する保護カバー(21)が設けられている。そして、この保護カバー(21)が、上記走査ヘッド(15)及び上記走査レール(16)を介して上記電源(41)と導通している。これにより、上記保護カバー(21)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加される。
【0054】
この変形例1によれば、上記保護カバー(21)を設けることにより、上記噴霧用液体によるプラズマ電極(25)の汚染を防止することができる。又、この保護カバー(21)と上記噴霧用液体とを同極性にすることにより、上記噴霧用液体による保護カバー(21)の汚染を防止することができる。これにより、プラズマ電極(25)から照射されるプラズマの量を低下させることなく、噴霧状の液体を被塗布体(20)に塗布することができる。
【0055】
−実施形態の変形例2−
図3に示す変形例2では、上記ヘッド部(15)に溶媒乾燥用のプラズマ電極(26)が設けられている。
【0056】
具体的に、上記噴霧ノズル(30)及び上記プラズマ電極(25)の両方を動作させるときの上記ヘッド部(15)に係る移動方向の前方から後方へ向かって順に、上記プラズマ電極(25)と上記噴霧ノズル(30)と上記乾燥用のプラズマ電極(26)とが隣接して配列されている。これにより、プラズマ照射による被塗布体(20)の活性状態が失活しないうちに素早く噴霧用液体を被塗布体(20)に塗布した後で、上記乾燥用のプラズマ電極(26)を用いて、その塗布した噴霧用液体を素早く乾燥させることができる。
【0057】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0058】
上記実施形態では、静電噴霧方式で上記被塗布体(20)に噴霧用液体を塗布していたが、これに限定されず、例えば、予め帯電させた噴霧用液体を噴霧器で噴霧させる方式でもよい。この場合であっても、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0059】
上記実施形態では、上記電圧印加部に内蔵されたスイッチによって、高電圧を印加する対象を上記噴霧ノズル(30)及び上記プラズマ電極(26)の両方又は一方に切り換えていたが、これに限定されず、上記噴霧ノズル(30)及び上記プラズマ電極(26)の各々に上記電圧印加部を設けてもよい。各々の電圧調整を個別に行うことができる。
【0060】
上記実施形態では、上記被塗布体(20)を固定して上記走査ヘッド(15)を移動させたが、これに限定されず、上記被塗布体(20)を移動させて上記走査ヘッド(15)を固定してもよい。この場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、静電塗装前の対象物に前処理を行う静電塗装装置および塗装方法について有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 静電塗装装置
15 走査ヘッド(ヘッド部)
20 被塗布体(対象物)
25 プラズマ電極
30 噴霧ノズル
25 プラズマ電極
40 電圧印加部
42 放電電極
43 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部(15)と、
上記ヘッド部(15)に対して相対移動が可能に配設された対象物(20)と、
上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するプラズマ電極(25)と、
上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するとともに上記対象物(20)に塗布される噴霧用液体が供給される噴霧ノズル(30)と、
上記プラズマ電極(25)と上記対象物(20)との間、及び上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加し、上記プラズマ電極(25)から上記対象物(20)へ向かってプラズマを照射させるとともに上記噴霧用液体を帯電した霧化状態で噴霧させて上記対象物の表面に塗布させる電圧印加部(40)とを備え、
上記噴霧ノズル(30)及び上記プラズマ電極(25)の両方を動作させるときの上記ヘッド部(15)に係る相対移動方向の前方から後方へ向かって順にプラズマ電極(25)と噴霧ノズル(30)とを隣接して配列したことを特徴とする静電塗装装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記プラズマ電極(25)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴とする静電塗装装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記プラズマ電極(25)を保護する保護カバー(21)を備え、
上記保護カバー(21)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴とする静電塗装装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
上記電圧印加部(40)は、上記噴霧ノズル(30)の先端部に電界を形成して該先端部から液体が噴霧されるように、上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加することを特徴とする静電塗装装置。
【請求項5】
ヘッド部(15)と、該ヘッド部(15)に対して相対移動が可能に配設された対象物(20)と、上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するプラズマ電極(25)と、上記プラズマ電極(25)に隣接して上記ヘッド部(15)に設けられて上記対象物(20)に対向するとともに上記対象物(20)に塗布される噴霧用液体が供給される噴霧ノズル(30)と、上記プラズマ電極(25)及び上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加し、上記プラズマ電極(25)から上記対象物(20)へ向かってプラズマを照射させるとともに上記噴霧用液体を帯電した霧化状態で噴霧させて上記対象物の表面に塗布させる電圧印加部(40)とを備えた静電塗装装置の塗装方法であって、
上記プラズマ電極(25)が前方となって上記噴霧ノズル(30)が後方となる向きに、上記ヘッド部(15)及び上記対象物(20)を相対移動させる移動工程を備えていることを特徴とする静電塗装装置の塗装方法。
【請求項6】
請求項5において、
上記プラズマ電極(25)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴とする静電塗装装置の塗装方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、
上記プラズマ電極(25)を保護する保護カバー(21)を備え、
上記保護カバー(21)には、上記噴霧用液体と同極性の電位が印加されていることを特徴とする静電塗装装置の塗装方法。
【請求項8】
請求項5から7の何れか1つにおいて、
上記電圧印加部(40)は、上記噴霧ノズル(30)の先端部に電界を形成して該先端部から液体が噴霧されるように、上記噴霧用液体と上記対象物(20)との間に所定の電圧を印加することを特徴とする静電塗装装置の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71105(P2013−71105A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214486(P2011−214486)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】