説明

静電塗装装置

【課題】塗装ガンとロボットアームに対して、簡易な構成の高電圧発生装置により、それぞれ異なる電圧で静電高電圧を印加することができる静電塗装装置を提供する。
【解決手段】高電圧発生装置9は、高電圧出力端子22g・22hを備える、電圧を昇圧するための電圧昇圧部22と、入力端子37aと、接地端子37cと、入力端子37aと接地端子37cを接続する抵抗体38と、該抵抗体38の入力端子37aと接地端子37cの中間位置に接点を形成する接点部39あるいは可動接点部48と、を備える抵抗部37と、を備え、高電圧出力端子22gを、塗装ガン3に接続し、高電圧出力端子22hを、抵抗部37の入力端子37aに接続するとともに、抵抗部37の出力端子37bあるいは可動接点部48を、ロボットアーム4に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ガンとロボットアームに高電圧を印加しつつ静電塗装を行う静電塗装装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料を噴霧するための塗装ガンに静電高電圧を印加して、塗料を帯電させることにより静電塗装を行う静電塗装装置において、塗装ガンを変位可能に支持するロボットアームの汚れを防止するために、ロボットアームに対しても塗装ガンに印加する静電高電圧と同極性の静電高電圧を印加する技術が知られている。例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
【0003】
ロボットアームに静電高電圧を印加することにより、ロボットアームの周囲に電界を形成し、ロボットアームの周囲に浮遊する塗料のミストを反発させることによって、ロボットアームに塗料が付着することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗料のミストを反発させるための最適な印加電圧は、塗装ガンに印加する電圧と異なっているため、ロボットアームには、塗装ガンに印加するのとは異なる電圧を印加することが望ましい。このため、従来は、塗装ガンに静電高電圧を印加するための高電圧発生装置と、ロボットアームに静電高電圧を印加するための高電圧発生装置を別々に備える構成としており、静電塗装装置の複雑化および高コスト化を招く要因となっていた。
【0006】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、塗装ガンとロボットアームに対して、簡易な構成の高電圧発生装置により、それぞれ異なる電圧で静電高電圧を印加することができる静電塗装装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、塗料を噴霧するための塗装ガンと、該塗装ガンを変位可能に支持するためのロボットアームと、前記塗装ガンと前記ロボットアームに印加するための高電圧を発生させる高電圧発生装置と、を備える静電塗装装置であって、前記高電圧発生装置は、前記高電圧を出力するための第一および第二の出力部を備える、電圧を昇圧するための電圧昇圧部と、前記高電圧が入力される入力端子と、アースと接地される接地端子と、前記入力端子と前記接地端子を接続する電気的な抵抗体と、該抵抗体の前記入力端子と前記接地端子の中間位置に接点を形成する接点部と、を備える抵抗部と、を備え、前記第一の出力部を、前記塗装ガンに接続し、前記第二の出力部を、前記抵抗部の前記入力端子に接続するとともに、前記抵抗部の前記接点部を、前記ロボットアームに接続するものである。
【0009】
請求項2においては、前記抵抗体は、前記電圧昇圧部のアース経路に設けられる、リーク電流を低減するためのブリーダー抵抗器を兼ねるものである。
【0010】
請求項3においては、前記抵抗体は、直列に接続した複数の抵抗器により構成し、前記接点部を、各抵抗器を接続する各接続端子のいずれかに接続するものである。
【0011】
請求項4においては、前記抵抗体は、前記入力端子と前記接点部の間の抵抗値を任意に設定できる可変抵抗器により構成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、電圧昇圧部を一つだけ備える簡易な構成の高電圧発生装置で、塗装ガンとロボットアームに、それぞれ所望する高電圧を印加することができる。これにより、安価でコンパクトな静電塗装装置を提供できる。
【0014】
請求項2においては、高電圧発生装置をよりコンパクトに構成することができる。
【0015】
請求項3においては、簡易な構成で、ロボットアームに印加する高電圧の値を変更することができる。
【0016】
請求項4においては、簡易な構成で、ロボットアームに印加する高電圧の値をより詳細に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置における塗料汚れの防止状況を示す模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置に備えられる第一の実施形態に係る高電圧発生装置を示す模式図。
【図4】第一の実施形態に係る電圧昇圧部に第一の実施形態に係る抵抗部を接続した場合を示す模式図。
【図5】第一の実施形態に係る電圧昇圧部に第二の実施形態に係る抵抗部を接続した場合を示す模式図。
【図6】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置に備えられる第二の実施形態に係る高電圧発生装置を示す模式図。
【図7】第二の実施形態に係る電圧昇圧部を示す模式図。
【図8】第三の実施形態に係る電圧昇圧部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。
【0019】
図1および図2に示す如く、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1は、塗装を施す対象物である被塗装物(車体2)に対して、静電塗装を行うための装置であり、塗装ガン3、ロボットアーム4、高電圧発生装置9等を備えている。
尚、本実施形態では、自動車の車体2を塗装する用途に用いられる静電塗装装置1を例示して説明を行うが、本発明に係る静電塗装装置の用途をこれに限定するものではない。
【0020】
塗装ガン3は、被塗装物(車体2)に対して塗料を噴霧するための装置であり、ベルカップ3a、リング電極3b等を備えている。
塗装ガン3は、ベルカップ3aを図示しないエアモータ等の駆動手段により回転させて、ベルカップ3aの内面に展延させた流体塗料を遠心力で微粒化させることができる回転霧化型の塗装装置である。
【0021】
図1に示す如く、ロボットアーム4は、その下部において基台部7に回動可能に連結される上下アーム5と、該上下アーム5の上部にその後端部が回動可能に連結される水平アーム6とから構成され、前記上下アーム5、水平アーム6を各回動支点で回動させることで、前記水平アーム6の先端部に設けた塗装ガン3が、被塗装物(車体2)に対して変位させることができる構成としている。
【0022】
また、水平アーム6は、その先端部に塗装ガン3の連結筒3eが連結される第一アーム部6aと、その先端部に前記第一アーム部6aが連結される第二アーム部6bと、その先端部に前記第二アーム部6bが連結され、その後端部に前記上下アーム5が回動可能に連結される第三アーム部6cと、を有する構成としている。
【0023】
また、第一アーム部6aには、二つの屈折部6d・6eが設けられ、各屈折部6d・6eにおいて第一アーム部6aが屈折動作される構成となっており、これにより、塗装ガン3が、図1および図2中における時計方向、又は、反時計方向に角度を変更することができる構成としている。
【0024】
また、塗装ガン3が先端に取り付けられる連結筒3eは、第一アーム部6aに対して、軸方向に回転駆動される構成としており、塗装ガン3が、連結筒3eの軸を中心として角度を変更することができる。これにより、塗装ガン3の被塗装物(車体2)に対する角度を自由に設定できる構成としている。
【0025】
また塗装ガン3とロボットアーム4には、高電圧発生装置9が接続されている。
高電圧発生装置9は、塗装ガン3およびロボットアーム4に印加する高電圧を発生させるための装置であり、電圧を生じさせるとともに電圧を制御するための部位である電圧発生部21と、該電圧発生部21において発生した電圧を昇圧するための部位である電圧昇圧部22を備えている。
【0026】
そして、本実施形態において、高電圧発生装置9のうち電圧昇圧部22は、第二アーム部6bの内部に配置されており、電圧発生部21は、ロボットアーム4の外部に配置されている。そして、ロボットアーム4の各部6b・6cおよび上下アーム5内に低電圧ケーブル23を配線するとともに、上下アーム5の途中から低電圧ケーブル23を外部に引き出して、低電圧ケーブル23によって電圧発生部21と電圧昇圧部22を接続する構成としている。
【0027】
また、ロボットアーム4の各部6a・6bおよび塗装ガン3の内部に高電圧ケーブル10・11を配線し、各高電圧ケーブル10・11によって、電圧昇圧部22を塗装ガン3とロボットアーム4にそれぞれ接続する構成としており、これにより、高電圧を塗装ガン3とロボットアーム4に印加する構成としている。
【0028】
そして、塗装ガン3は、高電圧発生装置9により、負極性の静電高電圧が印加されることによって、該塗装ガン3から噴霧する塗料の粒子を負極側に帯電させることができる。
そして、負極側に帯電した塗料と接地された(即ち、電位が0Vである)被塗装物(車体2)との間で形成される静電界を利用して、車体2に対する静電塗装を行う構成としている。
【0029】
図2に示す如く、また塗装ガン3は、高電圧発生装置9により静電高電圧が印加されることによって、塗装ガン3と導通しているリング電極3bにも、静電高電圧が印加される。
このため、リング電極3bに形成される複数の針状電極3c・3c・・・の先端部から放射状に静電界が形成される。そして、この静電界によって、塗料ミストを静電反発させることによって、塗装ガン3に塗料ミストが付着することを防止する構成としている。
【0030】
さらに、高電圧発生装置9は、ロボットアーム4の第一アーム部6aにも接続されており、該第一アーム部6aに、塗装ガン3と同じ負極性の高電圧が印加される。
高電圧発生装置9により、第一アーム部6aに静電高電圧が印加されることによって、第一アーム部6aと導通しているリング電極8にも、静電高電圧が印加される。
このため、リング電極8に形成される複数の針状電極8a・8a・・・の先端部から放射状に静電界が形成される。そして、この静電界によって、塗料ミストを静電反発させることによって、第一アーム部6aに塗料ミストが付着することを防止する構成としている。
【0031】
ここで、塗装ガン3と第一アーム部6aでは、各部の周囲に浮遊する塗料ミストが有する電荷に差異が生じている。即ち、塗装ガン3の周囲には、該塗装ガン3から噴霧された直後の高電荷を保持した状態の塗料ミストが比較的多く存在している。一方、第一アーム部6aの周囲には、該塗装ガン3から噴霧された後、被塗物等に一旦接近して電荷を放出した状態の塗料ミストが比較的多く存在している。
このため、塗装ガン3と第一アーム部6aでは、効果的に静電反発させることができる電位が異なるため、第一アーム部6aには、塗装ガン3に比して電圧が低い高電圧を印加することが望ましい。
【0032】
従来は、塗装ガン3と第一アーム部6aに、それぞれ別の高電圧発生装置を接続することによって、塗装ガン3と第一アーム部6aに対して、それぞれ異なる電圧の高電圧を印加する構成としていた。即ち、塗装ガン3のための電圧発生部と電圧昇圧部を備える高電圧発生装置と、第一アーム部6aのための電圧発生部と電圧昇圧部を備える高電圧発生装置を備える構成としていた。
しかしながら、本発明に係る静電塗装装置1では、一つの電源発生部と電源昇圧部のみを備える高電圧発生装置9によって、二つの異なる電圧の高電圧を出力できる構成としている。
【0033】
次に、本発明に係る静電塗装装置に備えられる高電圧発生装置の第一の実施形態について、図3〜図5を用いて、さらに詳細に説明をする。
図3に示す如く、第一の実施形態に係る高電圧発生装置9である高電圧発生装置9Xは、電圧発生部21と、電圧昇圧部22と、低電圧ケーブル23等を備えている。
【0034】
電圧発生部21は、塗装ガン3およびロボットアーム4に印加するための高電圧のもととなる電圧を発生させるための部位であり、電源部27、増幅器28、CPU29、RAM30、リレー31、プッシュプル発振装置32、電圧センサ33、電流センサ34、バンドパスフィルタ35・36等を備えている。
【0035】
電圧昇圧部22は、電圧発生部21によって発生させた電圧を昇圧するための部位であり、高電圧トランス24、高電圧発生用の整流器および倍率器であって複数のコンデンサやダイオード等の組合せによって構成されたコッククロフトウォルトン回路(CW回路)25等を備えている。
また、図4に示す如く、高電圧トランス24は、一次巻線24a、二次巻線24bを備えており、二次巻線24b側にCW回路25が接続されている。
【0036】
そして、図3および図4に示す如く、電圧発生部21は、一次巻線24aのセンター相(以下、CT相と呼ぶ)に対する作動電圧を出力するための出力端子21a、一次巻線24aのドライブA相(以下、DA相と呼ぶ)に対するドライブ信号を出力するための出力端子21b、一次巻線24aのドライブB相(以下DB相と呼ぶ)に対するドライブ信号を出力するための出力端子21cを備えている。
さらに、電圧発生部21は、CPU29に対してCW回路25の全発生電流値を示す電流フィードバック信号(以下、IM信号と呼ぶ)を入力するための入力端子21d、CPUに対してCW回路25によって昇圧した後の高電圧値を示す電圧フィードバック信号(以下、VM信号と呼ぶ)を入力するための入力端子21e、電圧発生部21を接地するための接地端子21f等を備えている。
【0037】
また、電圧昇圧部22は、高電圧トランス24の一次巻線24aのCT相に接続される入力端子22a、一次巻線24aのDA相に接続される入力端子22b、一次巻線24aのDB相に接続される入力端子22cを備えている。
さらに、電圧昇圧部22は、CW回路25の全発生電流値を示すIM信号を出力するための出力端子22d、CW回路25によって昇圧した後の高電圧値を示すVM信号を出力するための出力端子22e、CW回路25を接地するための接地端子22f等を備えている。
【0038】
また、本実施形態に係る高電圧発生装置9Xでは、電圧昇圧部22として、第一の実施形態に係る電圧昇圧部22Xを採用することができる。
電圧昇圧部22Xでは、CW回路25を接地端子22fと接続して、塗装ガン3等に帯電した電荷をアースに逃がす構成としている。そして、CW回路25と接地端子22fとを接続する接地ライン上には、リーク電流を抑制するためのブリーダー抵抗器26を備える構成としている。
そしてさらに、電圧昇圧部22Xでは、CW回路25によって生成した高電圧を出力するための各端子である2系統の高電圧出力端子22g・22hを備えている。
【0039】
低電圧ケーブル23は、電圧発生部21と電圧昇圧部22(本実施形態では、電圧昇圧部22X)とを電気的に接続するための各種ケーブルの束であり、CT入力線(CT)23a、DA入力線(DA)23b、DB入力線(DB)23c、IM信号線(IM)23d、VM信号線(VM)23e、コモン線(COM)23f等によって構成されている。
【0040】
CT入力線23aは、電圧発生部21によって生成した作動電圧を一次巻線24aのCT相に入力するためのケーブルであり、電圧発生部21の出力端子21aと電圧昇圧部22Xの入力端子22aの間に接続されている。
【0041】
DA入力線23bは、電圧発生部21によって生成したドライブ信号を一次巻線24aのドライブA相に入力するためのケーブルであり、電圧発生部21の出力端子21bと電圧昇圧部22Xの入力端子22bの間に接続されている。
【0042】
DB入力線23cは、電圧発生部21によって生成したドライブ信号を一次巻線24aのドライブB相に入力するためのケーブルであり、電圧発生部21の出力端子21cと電圧昇圧部22Xの入力端子22cの間に接続されている。
【0043】
IM信号線23dは、電圧昇圧部22Xで生成したIM信号をCPU29に入力するためのケーブルであり、電圧発生部21の入力端子21dと電圧昇圧部22Xの出力端子22dの間に接続されている。
【0044】
VM信号線23eは、電圧昇圧部22Xで生成したVM信号をCPU29に入力するためのケーブルであり、電圧発生部21の入力端子21eと電圧昇圧部22Xの出力端子22eの間に接続されている。
【0045】
さらに、コモン線23fは、電圧発生部21および電圧昇圧部22Xをアースに接地して、共通の基準電位(0V)を設定するためのケーブルであり、電圧発生部21の接地端子21fと電圧昇圧部22Xの接地端子22fの間に接続されている。
【0046】
ここで、高電圧発生装置9による高電圧の発生状況について、図3および図4を参照しながら説明をする。
電圧発生部21は、電源部27により発生する出力電圧をCPU29からの指令値に応じて増幅器28によって調整して、作動電圧を生成する。ここで生成される作動電圧は、該作動電圧の供給ライン上に設けられた電圧センサ33および電流センサ34により測定され、その測定値がCPU29にフィードバックされることによって、作動電圧を指令値に一致させるようにCPU29によって調整されている。
【0047】
また、増幅器28に対するCPU29からの指令値は、前述したIM信号やVM信号がCPU29にフィードバックされて、CPU29により各フィードバック信号やRAM30に記憶されている条件等に基づいて演算を行うことによって求めている。
このIM信号およびVM信号等は、バンドパスフィルタ35・36等を介してCPU29に入力される。
【0048】
また電圧発生部21は、一次巻線24aの各ドライブ相に入力するためのドライブ信号を、CPU29からの指令値に応じて、プッシュプル発振装置32によって生成する。
また、プッシュプル発振装置32に対するCPU29からの指令値は、前述したIM信号やVM信号がCPU29にフィードバックされて、CPU29により各フィードバック信号やRAM30に記憶されている条件等に基づいて演算を行うことによって求めている。
【0049】
このような構成により、高電圧トランス24の一次巻線24aに所定の交流電圧を供給することができる。これにより、二次巻線24bに接続されたCW回路25によって、供給された一次巻線24aに供給された作動電圧をコンデンサおよびダイオードの接続段数に応じて所定の倍率まで昇圧し、CW回路25の図4中における点AB間において、所定の電圧値である直流高電圧を発生させることができる。
【0050】
ここで、電圧昇圧部22Xにおいて、出力点Bに接続された2系統の各出力端子22g・22hのうち、一方の高電圧出力端子22gは、塗装ガン3に対して印加する高電圧を出力するための端子である。そして、高電圧出力端子22gと塗装ガン3を高電圧ケーブル10によって接続する構成としている。
【0051】
また他方の高電圧出力端子22hは、ロボットアーム4(より詳しくは、第一アーム部6a)に対して印加する高電圧を出力するための端子である。
そして、高電圧出力端子22hには、高電圧ケーブル12によって、抵抗部37を接続する構成としており、該抵抗部37を介して、第一アーム部6aに高電圧を印加する構成としている。
また、高電圧発生装置9Xでは、抵抗部37として、第一の実施形態に係る抵抗部37Xを採用することができる。
【0052】
抵抗部37は、電圧昇圧部22によって昇圧した高電圧を、ロボットアーム4に印加するのに適した電圧に調整するための役割を果たす部位であり、抵抗体38を備える構成としている。
そして、第一の実施形態に係る抵抗部37Xでは、抵抗体38として、複数(本実施形態では6個)の接続端子40〜45によって直列に接続された複数(本実施形態では5個)の抵抗器38a・38a・・・からなる第一の実施形態に係る抵抗体38Xを備える構成としている。
【0053】
そして、直列に接続された複数の抵抗器38a・38a・・・の一端部に配置された接続端子40は、抵抗部37Xの入力端子37aに接続され、また他端部に配置された接続端子45は抵抗部37Xの接地端子37cに接続されている。
そして、入力端子37aは、高電圧ケーブル12によって、電圧昇圧部22Xの高電圧出力端子22hに接続され、接地端子37cはアースに接続されている。
また抵抗体38Xを構成する各接続端子40〜44のうち、いずれかに接点部39を接続する構成としている。接点部39は、抵抗部37Xの出力端子37bに接続されている。
そして、抵抗部37Xの出力端子37bとロボットアーム4を高電圧ケーブル11で接続する構成としている。
【0054】
そして、各接続端子40〜44のうち、いずれかに接続した接点部39から、ロボットアーム4に印加するのに適した印加電圧を取り出して、出力端子37bから高電圧を出力して、ロボットアーム4に高電圧を印加する構成としている。
【0055】
例えば、本実施形態では、同じ(即ち、同じ抵抗値である)抵抗器を5個直列に接続する構成としており、出力点Bにおける電圧(即ち、高電圧出力端子22hから出力される電圧)の値を100%とすると、図4中に示す接続端子41に接点部39を接続した場合の出力電圧は、出力点Bにおける電圧の80%の電圧値となり、同様にその他の各接続端子42・43・44に接点部39を接続した場合の出力電圧は、出力点Bにおける電圧のそれぞれ60%、40%、20%の電圧値となる。また、接続端子40に接点部39を接続した場合は、出力点Bにおける電圧と同じ(即ち、100%)電圧値となる。
【0056】
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1において、抵抗体38Xは、直列に接続した複数の抵抗器38a・38a・・・により構成し、出力端子37bを、各抵抗器38a・38a・・・を接続する各接続端子40〜44のいずれかに接続するものである。
このような構成により、簡易な構成で、ロボットアーム4に印加する高電圧の値を変更することができる。
【0057】
尚、本実施形態では、同じ(即ち、同じ抵抗値である)抵抗器38a・38a・・・を5個直列接続する構成の抵抗体38Xを例示しているが、抵抗体38Xの構成を、抵抗器の個数によって限定するものではなく、また、異なる抵抗値を有する複数の抵抗器によって抵抗体38Xを構成し、出力する高電圧の値をロボットアーム4に印加するのにより適した電圧に調整することも可能である。
【0058】
また、本実施形態では、電圧昇圧部22から出力する高電圧出力を2系統として、ロボットアーム4に対応する高電圧出力端子22hに抵抗部37を接続する場合を例示しているが、ロボットアーム4以外にさらに汚れ防止を施したい部位があるような場合には、電圧昇圧部22から3系統以上の高電圧を出力して、増設した高電圧の出力系統ごとに抵抗部37を接続する構成とすることも可能である。
【0059】
ここで、第一の実施形態に係る高電圧発生装置9Xにおいて、抵抗部37の構成を変更した別実施形態について、図5を用いて説明をする。
図5に示す如く、本実施形態に係る高電圧発生装置9Xでは、電圧昇圧部22Xに接続する抵抗部37として、第二の実施形態に係る抵抗部37Yを採用している。
【0060】
抵抗部37Yは、抵抗体38として第二の実施形態に係る抵抗体38Yを使用している点で前述した第一の実施形態に係る抵抗部37Xと相違している。尚、抵抗部37Yは、その他の構成については、第一の実施形態に係る抵抗部37Xと共通している。
【0061】
抵抗部37は、電圧昇圧部22によって昇圧した高電圧を、ロボットアーム4に印加するのに適した電圧に調整するための役割を果たす部位であり、第二の実施形態に係る抵抗部37Yは、抵抗体38として一つの可変抵抗器38bを使用する構成としている。
可変抵抗器38bは、入力端子46および接地端子47を備えており、該入力端子46と接地端子47を繋ぐ内部抵抗38cの途中において、接点位置を任意に変更できる可動接点部48を備えている。そして、内部抵抗38cに対する可動接点部48の位置を変更することによって、入力端子46と可動接点部48の間の抵抗値を任意に変更することができる構成としている。
【0062】
そして、可変抵抗器38bは、入力端子46が抵抗部37Yの入力端子37aに接続され、また接地端子47が、抵抗部37Yの接地端子37cに接続されている。
そして、入力端子37aは、電圧昇圧部22Xの高電圧出力端子22hに接続され、接地端子37cはアースに接続されている。
また、可動接点部48は、抵抗部37Yの出力端子37bに接続されており、抵抗部37Yの出力端子37bとロボットアーム4を高電圧ケーブル11で接続する構成としている。
【0063】
そして、可変抵抗器38bによって、印加電圧を任意の電圧に調整して、出力端子37bからロボットアーム4に印加するのに適した高電圧を出力して、ロボットアーム4に高電圧を印加する構成としている。
【0064】
例えば、本実施形態では、出力点Bにおける電圧(即ち、高電圧出力端子22hから出力される電圧)の値を100%とすると、図5中に示す可動接点部48から取出した電圧は、可動接点部48の配置位置に応じて0〜100%の電圧値となる印加電圧を取り出すことができる。つまり、可変抵抗器38bによれば、高電圧出力端子22hから出力される電圧を0〜100%の間で連続的に変化させた上で取り出すことが可能となっている。
【0065】
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1において、抵抗体38Yは、入力端子37aと出力端子37bの間の抵抗値を任意に設定できる可変抵抗器38bにより構成するものである。
このような構成により、簡易な構成で、ロボットアーム4に印加する高電圧の値をより詳細に変更することができる。
【0066】
次に、本発明に係る静電塗装装置に備えられる高電圧発生装置の第二の実施形態について、図6〜図8を用いて、説明をする。
前述の如く、第一の実施形態に係る高電圧発生装置9Xでは、ブリーダー抵抗器26を備える構成としている(図3〜図5参照)。
ブリーダー抵抗器26は、高電圧発生装置9Xによる高電圧の印加を停止させたときに、塗装ガン3やロボットアーム4に帯電した電荷を除去するために設けられる接地ラインにおいて、リーク電流を抑制するために設けられる電気的な抵抗体である。
【0067】
通常の静電塗装を行っている時におけるリーク電流を極力低減させるために、ブリーダー抵抗器26には、出力点Bと塗装ガン3の間に設けられる抵抗器22kに比して十分に大きな抵抗値を有する抵抗器を用いるようにしている。
一般的には、例えば、抵抗器22kが40MΩ程度の抵抗値であるのに対して、ブリーダー抵抗器26は2GΩ程度の抵抗値としている。
【0068】
抵抗部37は、入力端子37aから入力される高電圧を任意の電圧値に調整して出力端子37bから出力するために、抵抗体38の一端部を入力端子37aに接続するとともに、抵抗体38の他端部をアースに繋がる接地端子37cに接続する構成としている。このため、抵抗部37に備えられる抵抗体38は、ブリーダー抵抗器26の役割を果たし得るものとなっている。
【0069】
そこで、図6に示す如く、第二の実施形態に係る高電圧発生装置9である高電圧発生装置9Yでは、抵抗部37(より詳しくは、抵抗体38)をブリーダー抵抗器として兼用する構成とし、抵抗部37を電圧昇圧部22と別体で備えるのではなく、抵抗部37を電圧昇圧部22に内蔵させて、従来ブリーダー抵抗器が配置されていた接地ライン上において、抵抗部37をブリーダー抵抗器に置換して配置する構成としている。
【0070】
図6および図7に示す如く、第二の実施形態に係る高電圧発生装置9Yでは、電圧昇圧部22として、従来、ブリーダー抵抗器が配置されていた接地ライン上に抵抗部37を内蔵する第二の実施形態に係る電圧昇圧部22Yを採用する構成としている。
電圧昇圧部22Yでは、抵抗部37として、前述した第一の実施形態に係る抵抗部37Xを使用する構成としている。
【0071】
電圧昇圧部22Yにおいて、抵抗部37Xの入力端子37aは、高電圧出力端子22hに接続され、接地端子37cは、接地端子22fを介してアースに接続されている。
また電圧昇圧部22Yにおいて、抵抗体38Xを構成する各接続端子40〜44のうち、いずれかに接続した接点部39は、抵抗部37Xの出力端子37bに接続されている。
そして、抵抗部37Xの出力端子37bとロボットアーム4を高電圧ケーブル11で接続する構成としている。
【0072】
そして、電圧昇圧部22Yでは、各接続端子40〜44のうち、いずれかに接続した接点部39から、ロボットアーム4に印加するのに適した印加電圧を取り出して、出力端子37bから高電圧を出力して、ロボットアーム4に高電圧を印加する構成としている。
【0073】
電圧昇圧部22Yを採用する高電圧発生装置9Yは、前述した高電圧発生装置9Xに比して、抵抗部37を別体で備えなくてもよい分、よりコンパクトに構成することができ、また、ブリーダー抵抗器を削減することができるため、より少ない部品点数で高電圧発生装置9を構成することができるというメリットを有している。
【0074】
ここで、第二の実施形態に係る高電圧発生装置9Yにおいて、電圧昇圧部22の構成を変更した別の実施形態について、図8を用いて説明をする。
図8に示す如く、本実施形態に係る高電圧発生装置9Yでは、電圧昇圧部22として、第三の実施形態に係る電圧昇圧部22Zを採用している。
電圧昇圧部22Zは、電圧昇圧部22に内蔵する抵抗部37として、前述した第二の実施形態に係る抵抗部37Yを使用する構成としている。
【0075】
電圧昇圧部22Zにおいて、可変抵抗器38bを備える抵抗部37Yの入力端子37aは、高電圧出力端子22hに接続され、接地端子37cは、接地端子22fを介してアースに接続されている。
また、電圧昇圧部22Zにおいて、可動接点部48は、抵抗部37Yの出力端子37bに接続されている。
そして、抵抗部37Yの出力端子37bとロボットアーム4を高電圧ケーブル11で接続する構成としている。
【0076】
そして、電圧昇圧部22Zでは、可変抵抗器38bによって、印加電圧を任意の電圧に調整して、出力端子37bからロボットアーム4に印加するのに適した高電圧を出力して、ロボットアーム4に高電圧を印加する構成としている。
【0077】
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1の各電圧昇圧部22Y・22Zにおいて、各抵抗体38X・38Yは、各電圧昇圧部22Y・22Zのアース経路に設けられる、リーク電流を低減するためのブリーダー抵抗器(従来のブリーダー抵抗器26)を兼ねるものである。
このような構成により、高電圧発生装置9をよりコンパクトに構成することができる。
【0078】
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1は、塗料を噴霧するための塗装ガン3と、該塗装ガン3を変位可能に支持するためのロボットアーム4と、塗装ガン3とロボットアーム4に印加するための高電圧を発生させる高電圧発生装置9(高電圧発生装置9Xあるいは高電圧発生装置9Y)と、を備えるものであって、高電圧発生装置9は、高電圧を出力するための第一および第二の各出力部である高電圧出力端子22g・22hを備える、電圧を昇圧するための電圧昇圧部22(各電圧昇圧部22X・22Y・22Z)と、高電圧が入力される入力端子37aと、アースと接地される接地端子37cと、入力端子37aと接地端子37cを接続する電気的な抵抗体38(抵抗体38Xあるいは抵抗体38Y)と、該抵抗体38の入力端子37aと接地端子37cの中間位置に接点を形成する接点部39あるいは可動接点部48と、を備える抵抗部37(抵抗部37Xあるいは抵抗部37Y)と、を備え、高電圧出力端子22gを、塗装ガン3に接続し、高電圧出力端子22hを、抵抗部37の入力端子37aに接続するとともに、抵抗部37の出力端子37bあるいは可動接点部48を、ロボットアーム4に接続するものである。
このような構成により、電圧昇圧部22を一つだけ備える簡易な構成の高電圧発生装置9で、塗装ガン3とロボットアーム4に、それぞれ所望する高電圧を印加することができる。これにより、安価でコンパクトな静電塗装装置1を提供できる。
【0079】
このように、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1では、汚れ防止対策を施したい部位が塗装ガン3とロボットアーム4のように2系統存在する場合であっても、一つの電圧昇圧部22で賄うことが可能になるため、ロボットアーム4内の電圧昇圧部22や低電圧ケーブル23を収容するスペースに余裕が生まれるとともに、内部配線の本数も減少するため、配線作業を容易に行えるようになり、保守管理の容易化が実現できる。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1では、ロボットアーム4をスリム化して、よりコンパクトな装置構成を実現することも可能になるため、静電塗装装置の製造コストの低減等に寄与することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 静電塗装装置
3 塗装ガン
4 ロボットアーム
9 高電圧発生装置
21 電圧発生部
22 電圧昇圧部
22g 高電圧出力端子
22h 高電圧出力端子
26 ブリーダー抵抗器
37 抵抗部
37a 入力端子
37b 出力端子
37c 接地端子
38 抵抗体
38a 抵抗器
38b 可変抵抗器
39 接点部
40 接続端子
41 接続端子
42 接続端子
43 接続端子
44 接続端子
45 接続端子
48 可動接点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴霧するための塗装ガンと、
該塗装ガンを変位可能に支持するためのロボットアームと、
前記塗装ガンと前記ロボットアームに印加するための高電圧を発生させる高電圧発生装置と、
を備える静電塗装装置であって、
前記高電圧発生装置は、
前記高電圧を出力するための第一および第二の出力部を備える、電圧を昇圧するための電圧昇圧部と、
前記高電圧が入力される入力端子と、アースと接地される接地端子と、前記入力端子と前記接地端子を接続する電気的な抵抗体と、該抵抗体の前記入力端子と前記接地端子の中間位置に接点を形成する接点部と、を備える抵抗部と、
を備え、
前記第一の出力部を、前記塗装ガンに接続し、
前記第二の出力部を、前記抵抗部の前記入力端子に接続するとともに、前記抵抗部の前記接点部を、前記ロボットアームに接続する、
ことを特徴とする静電塗装装置。
【請求項2】
前記抵抗体は、
前記電圧昇圧部のアース経路に設けられる、リーク電流を低減するためのブリーダー抵抗器を兼ねる、
ことを特徴とする請求項1に記載の静電塗装装置。
【請求項3】
前記抵抗体は、
直列に接続した複数の抵抗器により構成し、
前記接点部を、
各抵抗器を接続する各接続端子のいずれかに接続する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電塗装装置。
【請求項4】
前記抵抗体は、
前記入力端子と前記接点部の間の抵抗値を任意に設定できる可変抵抗器により構成する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−50949(P2012−50949A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197099(P2010−197099)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(309007818)友信工機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】