説明

静電容量型距離センサ及び静電容量センサを備えた車高測定装置

【課題】静電容量の変化量に基づいて被測定面と静電容量センサとの間の距離を正確に測定することのできる静電容量型距離センサを提供すること。
【解決手段】静電容量センサ1により検出された静電容量の変化を検出電圧に変換する第1のCV変換器3と、被測定面Aからのオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器6と、第1のCV変換器3と第2のCV変換器6からの差分電圧を検出する差分増幅器5とを備えている。静電容量の変化量に基づいて被測定面Aと静電容量センサ1との間の距離を正確に測定することができる。また、オフセット距離をメカニカルな機構によらずに非接触方式で直接的に測定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型距離センサ及び静電容量センサを備えた車高測定装置に関し、より詳細には、静電容量の変化量に基づいて被測定面と静電容量センサとの間の距離を正確に測定することのできる静電容量型距離センサ及び静電容量センサを備えた車高測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両、特に自動車の車高の変化を検出するものとしては、従来から磁気センサを用いたものが提案されている。例えば、特許文献1に記載のものは、車体側又は車輪側に固定された磁気センサと、この磁気センサの周囲を円運動するように設けられた磁石と、車高の変化を磁石の回転に変換する運動変換手段と、磁気センサからの電圧信号に基づいて磁気センサに対する磁石の回転角度を車高として検出する検出手段を備えたものである。つまり、この特許文献1のものは、サスペンションの上下運動(直線運動)をメカニカルな機構により回転運動に変えて、その回転角度から車高の変化量を測定する構造になっている。
【0003】
また、静電容量を用いて物体までの距離を検知する静電容量型変位センサが提案されている。例えば、特許文献2に記載のものは、検知電極と物体までの距離により定まる静電容量と、検知電極が入力端に接続され帰還抵抗を有するシュミットトリガインバータを設け、このシュミットトリガインバータの帰還抵抗と静電容量値によって定まる周波数で発振させ、この発振周波数を周期カウンタで計測することによって、物体までの距離を検出するものである。
【0004】
また、静電容量型センサを用いて自動車の障害物への衝突を防止する静電容量型検出装置が提案されている。例えば、特許文献3に記載のものは、自動車の前部と後部のバンパーに電極を配置し、この電極の近傍に物体が存在していた場合にこれを検出することができるというものである。
【0005】
【特許文献1】実開平2−35003号公報
【特許文献2】特開平6−34307号公報
【特許文献3】特開2001−264448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1のものは、車高の変化を検出するという点では、本発明と目的を同じくするものであるが、センサとして磁気センサを用いており、しかも、メカニカルな機構を用いているため非接触な検出が不可能であり、経年変化量が増加するという問題があった。
【0007】
また、上述した特許文献2及び3のものは、静電容量型センサを用いている点で非接触な検出は可能であるが、静電容量型センサが自動車の後輪又はバンパーに取り付けられているため、ハーネスの引き回しが増えるという問題があった。しかも、特許文献2及び3のものは、物体の存在、つまり、物体の「有」「無」を検知するだけであって、接地面と静電容量センサとの間の静電容量の微妙な変化量を正確に検知することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、静電容量の変化量に基づいて被測定面と静電容量センサとの間の距離を正確に測定することのできる静電容量型距離センサ及び静電容量センサを備えた車高測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被測定面との間の静電容量の変化量を検出する静電容量センサを備えた静電容量型距離センサにおいて、前記静電容量センサにより検出された静電容量の変化を検出電圧に変換する第1のCV変換器と、前記被測定面からのオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器と、前記第1のCV変換器と前記第2のCV変換器からの差分電圧を検出する差分増幅器とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1のCV変換器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記差分増幅器からの差分電圧の所定範囲以外の電圧をクリップするリミッタと、該リミッタからのリミット信号を所望のゲインに基づいて増幅する可変増幅器とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記可変増幅器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、予め決められた前記被測定面からのオフセット距離に応じた前記オフセット容量を設定するオフセット調整回路を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記オフセット調整回路は、前記差分電圧に基づいて、前記設定したオフセット容量を更に調整することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、前記可変増幅器で増幅された出力信号の値をリニア値に変換する演算制御部と、該演算制御部に接続され、予め決められた前記オフセット距離のデータを記憶するメモリとを備え、前記オフセット容量は、該メモリに記憶された前記オフセット距離のデータに基づいて設定されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、環境温度変化を検出する温度センサを備え、該温度センサが前記演算制御部に接続され、前記オフセット調整回路のオフセット容量及び前記第1のCV変換器のゲイン並びに前記可変増幅器のゲインは、前記温度センサからの温度検出信号に基づいて調整されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、車両の車高との間の静電容量の変化量を検出する静電容量センサを備えた車高測定装置において、前記静電容量センサにより検出された静電容量の変化を検出電圧に変換する第1のCV変換器と、前記車高長であるオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器と、前記第1のCV変換器と前記第2のCV変換器からの差分電圧を検出する差分増幅器とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記第1のCV変換器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の発明において、前記差分増幅器からの差分電圧の所定範囲以外の電圧をクリップするリミッタと、該リミッタからのリミット信号を所望のゲインに基づいて増幅する可変増幅器とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の発明において、前記可変増幅器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする。
【0021】
また、請求項13に記載の発明は、請求項9乃至12のいずれかに記載の発明において、予め決められた前記被測定面からのオフセット距離に応じた前記オフセット容量を設定するオフセット調整回路を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記オフセット調整回路は、前記差分電圧に基づいて、前記設定したオフセット容量を更に調整することを特徴とする。
【0023】
また、請求項15に記載の発明は、請求項11又は12に記載の発明において、前記可変増幅器で増幅された出力信号の値をリニア値に変換する演算制御部と、該演算制御部に接続され、予め決められた前記オフセット距離のデータを記憶するメモリとを備え、前記オフセット容量は、該メモリに記憶されたデータに基づいて設定されることを特徴とする。
【0024】
また、請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の発明において、環境温度変化を検出する温度センサを備え、該温度センサが前記演算制御部に接続され、前記オフセット容量及び前記第1のCV変換器のゲイン並びに前記可変増幅器のゲインは、前記温度センサからの温度検出信号に基づいて調整されることを特徴とする。
【0025】
また、請求項17に記載の発明は、請求項9乃至16のいずれかに記載の発明において、前記車両用のオートレベリング機能を有するヘッドライトの直下に前記静電容量センサを配置したことを特徴とする。
【0026】
また、請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の発明において、前記演算制御部は、前記オートレベリング機能の制御用の電子制御ユニットに接続されていることを特徴とする。
【0027】
また、請求項19に記載の発明は、請求項17又は18に記載の車高測定装置を備えたことを特徴とする自動車用のヘッドライトのオートレベリング装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、静電容量センサにより検出された静電容量の変化を検出電圧に変換する第1のCV変換回路と、被測定面からのオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器と、第1のCV変換器と第2のCV変換器からの差分電圧を検出する差分増幅器とを備えているので、静電容量の変化量に基づいて被測定面と静電容量センサとの間の距離を正確に測定することのできる静電容量型距離センサ及び静電容量センサを備えた車高測定装置を実現することができる。また、オフセット距離をメカニカルな機構によらずに非接触方式で直接的に測定が可能となる。
【0029】
また、静電容量センサを用いることにより、従来のメカニカルな機構が無くなり、非接触な測定が可能となるので経年変化量も減少する。また、ハーネスの引き回しが減るため小型車での適応も可能となる。また、静電容量センサの設置場所を自動車のヘッドライドの直下に配置することができ、工場出荷時やメンテナンス時などの調整が簡素化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0031】
<実施例1;静電容量型距離センサ>
図1は、本発明の実施例1に係る静電容量型距離センサを説明するためのブロック図である。本実施例1の静電容量型距離センサは、被測定面Aとの間の静電容量Cdの変化量を検出する静電容量センサ1を備えたものである。静電容量センサ1は、被測定面(例えば、GND)Aとの間の静電容量を検知するためのセンサ部(電極)1aとシールド部1bとから構成され、このシールド部1bは、外部ノイズを除去する目的で、センサ部1aの周囲を取り囲むようにして配置されている溝部を介して設けられたもので、シールドドライブ回路2に接続されている。
【0032】
静電容量センサ1のセンサ部1aには、静電容量センサ1により検出された静電容量Cdの変化を検出電圧に変換する第1のCV変換器3が接続されている。
【0033】
この第1のCV変換器3は、静電容量Cdに接続されたスイッチング素子SW31とSW32を有するスイッチトキャパシタ方式のCV変換器で、センサ部1aを構成する静電容量Cdが演算増幅器31の非反転入力端子に接続され、非反転入力端子とグランド間にはスイッチング素子SW32が接続され、非反転入力端子と出力端子間にはスイッチング素子SW31と可変容量素子C3が並列に接続され、反転入力端子はアナロググランドに接続されている。
【0034】
演算増幅器31の出力端は、差分増幅器5に接続されている。また、差分増幅器5には、被測定面からのオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器6が接続されている。
【0035】
この第2のCV変換器6は、スイッチング素子SW61とSW62を有するスイッチトキャパシタ方式のCV変換器で、スイッチング素子SW62が演算増幅器61の非反転入力端子とグランド間に接続され、非反転入力端子と出力端子間にはスイッチング素子SW61と容量素子C6が並列に接続され、反転入力端子はアナロググランドに接続されている。また、演算増幅器31、61には、この演算増幅器31、61のオフセットをキャンセルするためのオフセットキャンセル部4a,4bが接続されている。
【0036】
オフセット調整回路7は、予め決められた被測定面Aからのオフセット距離に応じたオフセット容量を設定するもので、第2のCV変換器6に接続され、演算制御部11からの制御信号に基づいて第2のCV変換器6のオフセット容量を設定するように構成されている。
【0037】
図2は、本発明の静電容量型距離センサに用いられるオフセット調整回路の構成図である。このオフセット調整回路7は、キャップバンク及びバリキャップを含むものである。
【0038】
このオフセット調整回路7は、測定範囲の中心となる基準値として第2のCV変換器6のオフセット容量を与える機能を有するものであって、キャップバンクC71乃至C7n、バリキャップC7、及びMOSトランジスタMOS71〜MOS7nで構成される。キャップバンクC71乃至C7nを粗調用に、バリキャップC7は微調用に用いるものであり、キャップバンクC71乃至C7nにより所望の容量値を粗く設定でき、バリキャップC7によりその容量値を更に微細に設定できる。これらのキャップバンクC71乃至C7n及びバリキャップC7は、スイッチとしてMOSトランジスタ71乃至7nが接続されており、各スイッチは不揮発性メモリ12に格納されたデータに基づき演算制御部11によって開閉制御される。差分増幅器5は、第1のCV変換器3と第2のCV変換器6からの差分電圧を検出するためのものである。この第1のCV変換器3のゲインは、差分電圧に基づいて調整される。
【0039】
リミッタ9aは、フィルタ回路8を介して、差分増幅器5からの差分電圧をクリップするためのものである。このリミッタ9aは、電圧をクリップするために、測定範囲の上限値及び下限値を有するウインドウが設定されている。差動電圧がウインドウ内にあればそのまま出力するが、ウインドウの上限値以上または下限値以下の差動電圧が入力された場合は所定の値に電圧クリップされる。ウインドウの範囲は、第2のCV変換器6のオフセット容量、すなわち、測定範囲の中心となる基準値に対し、予め所定の範囲となるように設定しておいても良いし、演算制御部11を介して外部から任意に設定してもよい。
【0040】
可変増幅器9bは、リミッタ9aからのリミット信号を増幅するためのものであって後段のA/D変換器10への入力レベルを調整するためのものである。この可変増幅器9bのゲインは、差分増幅器5により検出された第1のCV変換器3と第2のCV変換器6からの差分電圧に基づいて調整される。
【0041】
演算制御部11には、A/D変換器10を介して可変増幅器9bで調整された出力信号をリニア値に変換するためのものであって、静電容量の特性(ノンリニア)をリニアな特性に変換する回路が内蔵されている。また、この演算制御部11には、プログラマブル補正回路11aとサンプリング時間/平均回数設定回路11bが含まれている。プログラマブル補正回路11aは、静電容量センサの感度バラツキ、オフセットバラツキ、温度変動に伴う出力のバラツキなどを補正するためのものである。また、サンプリング時間/平均回数設定回路11bは、外部ノイズ対策のために、A/D変換器10を介して可変増幅器9bで調整された出力信号に対して、サンプリング時間の可変を行うと共に、その信号の平均化を行うものである。
【0042】
不揮発性メモリ12は、演算制御部11に接続され、予め設定されたオフセット距離のデータを記憶するためのものである。また、この不揮発性メモリ12には、オフセット距離のデータの他に、第1のC/V変換器3の可変容量素子C3(感度調整値)及び差分増幅器5のゲイン値、リミッタ9aによる測定範囲値(ウインドウの幅)、可変増幅器9bのゲイン値などが格納されている。また、静電容量の特性(ノンリニア)をリニアな特性に変換する回路における調整・補正データが格納されている。
【0043】
オフセット調整回路7は、A/D変換器10を介して可変増幅器9bで調整された出力信号に基づいて第2のCV変換器6のオフセット容量を調整することもでき、例えば、A/D変換器10からの出力信号がオフセット等により所望の値からずれている場合に演算制御部11からの制御信号によりオフセット容量を補正するものである。
【0044】
温度センサ13は、環境温度変化を検出するためのものである。この温度センサ13は、演算制御部11に接続され、オフセット距離のデータの他に、第1のC/V変換器3の可変容量素子C3(感度調整値)、リミッタ9aによる測定範囲値(ウインドウの幅)、可変増幅器9bのゲイン値などは、この温度センサ13からの温度検出信号に基づいて調整されるように構成されている。
【0045】
このような構成において、センサ部1aで検知された静電容量Cdは、第1のC/V変換器3で静電容量を電圧に変換される。この第1のC/V変換器3は、被測定面Aとセンサ部1aとの距離に応じた感度調整機能を有し、演算制御部11からの制御信号により可変コンデンサC3の容量を可変することによって感度調整をするものである。予め設定された感度調整の基となる変換値は、差分増幅器5で予め設定された距離オフセットの調整値との差を取り、この差分値がフィルタ回路8を通って、リミッタ9aで測定範囲分が取り出され、可変増幅器9bでダイナミックレンジが調整される。可変増幅器9bは、A/D変換器10のビット数に合わせるようにダイナミックレンジを調整し、この調整値は、A/D変換器10を介して演算制御部11に入力される。
【0046】
また、この演算制御部11は、ノンリニア値を距離値に準ずるリニアな値に変換する。また、この演算制御部11は、静電型容量センサ1やその後の信号処理を行う処理IC、外部部品などの個体ばらつき、温度センサ13により検出された環境温度変化などを予め学習する機能を有している。つまり、演算制御部11は、ばらつき(静電型容量センサの個体値、環境温度、外部部品の個体値)に対して、補正や調整を行う回路を有している。
【0047】
また、演算制御部11には、不揮発性メモリ12が接続されていて、これらの補正や調整されたデータを、不揮発性メモリ12に格納する機能を有している。これらの調整データは、外部機器からの書換えを可能とする。
【0048】
これにより、工場出荷時の初期調整をデジタル化することを可能とし、工程数の削減に貢献できる。また、短時間の路面変化や外部誘電に対して不感帯を持つことが出来るため耐外部ノイズの向上に繋がる。
【0049】
A/D変換器10のデジタル信号は、演算制御部11を介して外部に出力することができる。また、演算制御部11には、D/A変換器14が接続され、演算制御部11からのデジタル信号をアナログ信号に変換して、アナログ信号を外部に出力することもできる。
【0050】
<実施例2;車高測定装置>
本発明の実施例2である静電容量センサを備えた車高測定装置は、図1に示した静電容量型距離センサを車高測定に適用した実施例である。
【0051】
本実施例2の車高測定装置は、車両、特に自動車の車高とGND(接地面A)との間の静電容量の変化量を検出する静電容量型センサを備えたものである。この車高測定装置は、図1に示した構成と同じ構成を有し、オフセット距離を車高長としたものである。
【0052】
図3は、静電容量型センサとGNDとの間の車高に応じて変化する静電容量を示した図である。センサ部(電極)1aとGNDAとの間が変化すれば、その間で静電容量が生じる。この静電容量Cdは次式で示される。
Cd=εS/d
【0053】
ここで、Sは電極1aの面積、dは物体までの距離、εは空気中の誘電率を示している。
【0054】
つまり、静電容量Cdは、距離dに応じて変化量(ダイナミックレンジ)が減少する。本実施例2は、車高に応じての静電容量のオフセットを、オフセット調整回路7により任意に設定可能とする。また、感度調整機能を有する第1のCV変換器3と、測定範囲幅用のリミッタ9aと、ゲイン調整機能を有する可変増幅器9bを有することにより、このオフセットを中心とした測定幅を、ダイナミックレンジの変化に応じて、任意に設定可能とする。
【0055】
図3を参照に、感度調整及びゲイン調整の調整方法を具体的に説明する。
車高値(車高の中心値)が、例えば、150mmの場合、演算制御部11は、不揮発性メモリ12からそれに応じたデータ値を読み出し、オフセット調整回路7へ制御信号が出力される。オフセット調整回路7は、その制御信号に基づいて第2のCV変換器6のオフセット容量を設定する。
【0056】
第1のCV変換器3は、測定した静電容量Cdの静電容量を電圧に変換し、差分増幅器5は、第1のCV変換器3からの電圧と第2のCV変換器6からの電圧との差分電圧を検出する。図3に示すように、静電容量Cdは車高dに反比例する、すなわち、差分増幅器5からの差動電圧も車高dに反比例する。
【0057】
次に、リミッタ9aは、例えば、車高の中心値150mmに対し±50mmの測定範囲となるように設定されたウインドウに基づき、フィルタ回路を介した差分増幅器5からの差分電圧をリミットする。リミット後の信号は、可変増幅器9b、A/D変換器10を介して演算制御部11に入力される。
【0058】
演算制御部11は、A/D変換器10からの信号に基づき、第1のCV変換器3の可変容量素子C3を調節することにより感度調整を行うと共に、可変増幅器9bのゲインを調整することによりゲイン調整を行う。車高dに対する静電容量Cd(車高dに対する差分増幅器5からの差動電圧)のグラフの変化量が小さいときは可変容量素子C3の容量値を大きくし、変化量が大きいときは可変容量素子C3の容量値を小さくして、粗く調節した後に、可変増幅器9bによりA/D変換器10のビット数に合わせるように細かく調整して、図3に示すように、所望の変化量になるように調節する。
【0059】
これにより、車高に反比例する静電容量のダイナミックレンジを一定とすることが可能となり、正確な距離測定を可能とする。また、リミッタ9aにより測定範囲外は不感帯となり、耐ノイズ性の向上にも繋がる。
【0060】
自動車の車種によって、表1に示すような種々の異なる車高値を有する。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、車種(小型乃至大型)により車高が異なるため、車種に応じて車高の中心値(静電容量のオフセット)を設定する必要がある。処理ICは、この車高の中心値を設定可能とするキャップバンクやバリキャップを備えたオフセット調整回路7を備えている。つまり、様々な車種(小型〜大型)に適応するために、第2のC/V変換器6にはオフセット調整機能を有するオフセット調整回路7が接続されている。
【0063】
これらのオフセット容量は、演算制御部11により設定可能としている。この機能は、工場出荷時の初期調整をデジタル化可能とし、工程数の削減に貢献する。また、経年変化に因る車高の減少に対しても外部機器からの調整/書換えを可能とする。
【0064】
第1のCV変換器3によりCV変換された値は、図3に示すようにノンリニアな状態である。外部ECUでのデータ加工を簡略化させるために、この処理ICはリニア変換回路を有している。このリニア変換回路は、テーブルデータや演算回路から構成されている。また、ECU(電子制御ユニット;electronic control unit)とのI/Fは、デジタルとアナログ双方に対応する。
【0065】
本実施例2の車高測定装置は、D/A変換器14及びECU I/F15を備えており、これらのD/A変換器14及びECU I/F15は、演算制御部11に接続されている。D/A変換回路14は、演算制御部11からのデジタル信号をアナログ信号に変換するもので、アナログ値を外部機器に出力するものである。また、外部ECU I/F15は、デジタルデータとして外部機器I/Fを通して出力するもので、後述する自動車のヘッドライトのオートレベリング機能を実現するためのECUに接続されている。
【0066】
図4は、本発明の実施例2に係る車高測定装置を自動車に搭載した構成図で、自動車用のオートレベリング機能を有するヘッドライトの直下に静電容量センサを配置したものである。図中符号40は車高測定装置、41は静電容量型センサ、42は処理IC、43はECU、44はヘッドライト、45は車輪、46は自動車本体を示している。なお、処理IC42は、図1に示した静電容量センサ1以外の処理部をIC化したもので、ECU I/F15又はD/A変換器14を介して、ECU43に制御信号を供給するように構成されている。
【0067】
オートレベリング機能は、乗員や荷物によって車両姿勢が変わっても、ヘッドライトの光軸を自動的に一定の高さに保つ機構である。車両の前後方向の傾斜(ピッチ角)に基づいて、光軸傾動調整用のアクチュエータを駆動制御することで、ヘッドランプの光軸をピッチ角相当相殺する方向に自動的に傾動調整する。この種のヘッドランプでは、例えば、光源を挿着したリフレクターがランプボディに対し水平傾動軸周りに傾動可能に支持されるとともに、アクチュエータによってリフレクター(ヘッドランプ)の光軸が水平傾動軸周りに傾動できる構造となっている。そして、ピッチ角検出手段や車速センサやこれらからの検出信号に基づいてアクチュエータの駆動を制御する制御部等を車両に設けて構成され、ヘッドランプ(リフレクター)の光軸が路面に対し常に一定の状態となるように調整するようになっている。
【0068】
しかしながら、従来のオートレベリング装置では、乗員や荷物によって車両姿勢が変わって光軸が望ましいレベリング位置より上向きに固定された場合は、運転者にとっては視認性がよいが、対向車にとってはまぶしいため危険である。逆に、光軸が下向きに固定された場合は、対向車に迷惑をかけないが、視認距離が短く、障害物の発見が遅れて危険であるという問題があった。
【0069】
このような問題を解決するためには、表1に示したように車種によって種々の車高値を有するため、そのような車種に応じた車高値の設定と、車両姿勢の変化に応じたオフセットの正確な設定が必要とされていた。そこで、本実施例2の車高測定装置をヘッドランプの直下に配置することにより、ハーネスの引き回しが減るため小型車での適応も可能となる。また、メカニカルな機構が無くなるため、設置容量の減少が可能となり、接地面と静電容量センサとの間の絶対値測定を可能とする。
【0070】
以上は、本発明の静電容量型距離センサの適用として車高測定装置について説明したが、これ以外にも他の距離センサとして利用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例1に係る静電容量型距離センサを説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の静電容量型距離センサに用いられるオフセット調整回路の構成図である。
【図3】静電容量型センサとGNDとの間の車高に応じて変化する静電容量を示した図である。
【図4】本発明の実施例2に係る車高測定装置を自動車に搭載した構成図で、自動車用のオートレベリング機能を有するヘッドライトの直下に静電容量センサを配置した構成図である。
【符号の説明】
【0072】
1 静電容量センサ
1a センサ部(電極)
1b シールド部
2 シールドドライブ回路
3 第1のCV変換器
4a,4b オフセットキャンセル部
5 差分増幅器
6 第2のCV変換器
7 オフセット調整回路
8 フィルタ回路
9a リミッタ
9b 可変増幅器
10 A/D変換器
11 演算制御部
11a プログラマブル補正回路
11b サンプリング時間/平均回数設定回路
12 不揮発性メモリ
13 温度センサ
14 D/A変換器
15 ECU I/F
31、61 演算増幅器
40 車高測定装置
41 静電容量型センサ
42 処理IC
43 ECU
44 ヘッドライト
45 車輪
46 自動車本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定面との間の静電容量の変化量を検出する静電容量センサを備えた静電容量型距離センサにおいて、
前記静電容量センサにより検出された静電容量の変化を検出電圧に変換する第1のCV変換器と、前記被測定面からのオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器と、前記第1のCV変換器と前記第2のCV変換器からの差分電圧を検出する差分増幅器とを備えたことを特徴とする静電容量型距離センサ。
【請求項2】
前記第1のCV変換器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型距離センサ。
【請求項3】
前記差分増幅器からの差分電圧の所定範囲以外の電圧をクリップするリミッタと、該リミッタからのリミット信号を所望のゲインに基づいて増幅する可変増幅器とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量型距離センサ。
【請求項4】
前記可変増幅器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする請求項3に記載の静電容量型距離センサ。
【請求項5】
予め決められた前記被測定面からのオフセット距離に応じた前記オフセット容量を設定するオフセット調整回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電容量型距離センサ。
【請求項6】
前記オフセット調整回路は、前記差分電圧に基づいて、前記設定したオフセット容量を更に調整することを特徴とする請求項5に記載の静電容量型距離センサ。
【請求項7】
前記可変増幅器で増幅された出力信号の値をリニア値に変換する演算制御部と、該演算制御部に接続され、予め決められた前記オフセット距離のデータを記憶するメモリとを備え、前記オフセット容量は、該メモリに記憶された前記オフセット距離のデータに基づいて設定されることを特徴とする請求項3又は4に記載の静電容量型距離センサ。
【請求項8】
環境温度変化を検出する温度センサを備え、該温度センサが前記演算制御部に接続され、前記オフセット調整回路のオフセット容量及び前記第1のCV変換器のゲイン並びに前記可変増幅器のゲインは、前記温度センサからの温度検出信号に基づいて調整されることを特徴とする請求項7に記載の静電容量型距離センサ。
【請求項9】
車両の車高との間の静電容量の変化量を検出する静電容量センサを備えた車高測定装置において、
前記静電容量センサにより検出された静電容量の変化を検出電圧に変換する第1のCV変換器と、前記車高長であるオフセット距離に応じたオフセット容量を検出電圧に変換する第2のCV変換器と、前記第1のCV変換器と前記第2のCV変換器からの差分電圧を検出する差分増幅器とを備えたことを特徴とする車高測定装置。
【請求項10】
前記第1のCV変換器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする請求項9に記載の車高測定装置。
【請求項11】
前記差分増幅器からの差分電圧の所定範囲以外の電圧をクリップするリミッタと、該リミッタからのリミット信号を所望のゲインに基づいて増幅する可変増幅器とを備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の車高測定装置。
【請求項12】
前記可変増幅器のゲインは、前記差分電圧に基づいて調整されることを特徴とする請求項11に記載の車高測定装置。
【請求項13】
予め決められた前記被測定面からのオフセット距離に応じた前記オフセット容量を設定するオフセット調整回路を備えたことを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の車高測定装置。
【請求項14】
前記オフセット調整回路は、前記差分電圧に基づいて、前記設定したオフセット容量を更に調整することを特徴とする請求項13に記載の車高測定装置。
【請求項15】
前記可変増幅器で増幅された出力信号の値をリニア値に変換する演算制御部と、該演算制御部に接続され、予め決められた前記オフセット距離のデータを記憶するメモリとを備え、前記オフセット容量は、該メモリに記憶されたデータに基づいて設定されることを特徴とする請求項11又は12に記載の車高測定装置。
【請求項16】
環境温度変化を検出する温度センサを備え、該温度センサが前記演算制御部に接続され、前記オフセット容量及び前記第1のCV変換器のゲイン並びに前記可変増幅器のゲインは、前記温度センサからの温度検出信号に基づいて調整されることを特徴とする請求項15に記載の車高測定装置。
【請求項17】
前記車両用のオートレベリング機能を有するヘッドライトの直下に前記静電容量センサを配置したことを特徴とする請求項9乃至16のいずれかに記載の車高測定装置。
【請求項18】
前記演算制御部は、前記オートレベリング機能の制御用の電子制御ユニットに接続されていることを特徴とする請求項17に記載の車高測定装置。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の車高測定装置を備えたことを特徴とする自動車用のヘッドライトのオートレベリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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