説明

静電容量式タッチパネルとその製造方法

【課題】検出電極間の浮遊容量を完全に取り除き、浮遊容量が増加する検出電極の検出感度を上げるタッチパネル入力装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】第1電極の両側に沿って配線される一対の第3グランドパターンは、第1電極に直交する第2電極との交差領域で、第1コート部を挟み第1電極の第1連結パターンの他側に配線される第4グランドパターンにより電気接続されるので、マトリックス状に第1電極と第2電極とが配線される絶縁基板上に、更に第1電極及び第2電極と絶縁してグランドパターンが網目状に配線され、検出電極間の浮遊容量が除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力操作の入力操作体が接近して浮遊容量が増大する検出電極を検出し、その検出電極の配置位置から入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルとその製造方法に関し、更に詳しくは絶縁基板上の直交するXY方向の二次元の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のディスプレーに表示されたアイコンなどを指示入力するポインティングデバイスとして、指などの入力操作体が入力操作面の検出電極に接近することによる静電容量の変化から、非接触で入力操作面への入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルが知られている。
【0003】
従来の静電容量式タッチパネルは、多数のX側電極とY側電極を絶縁基板上に互いに絶縁して交差するようにマトリックス状に配置し、指などの入力操作体が接近して浮遊容量が増加するX側電極とY側電極を検出し、その電極の配置位置に入力操作が行われたものとして、絶縁基板への入力操作位置を検出している(特許文献1)。
【0004】
この静電容量式タッチパネル100では、図8に示すように、多数のX側電極に接続するX軸入力スイッチ101と、多数のY側電極に接続するY軸入力スイッチ102を、順次切り換え制御し、発振回路103から所定のパルス電圧を多数のX側電極及びY側電極へ印加して走査すると同時に、印加した電極の他側をスイッチ104、105を切り換えて演算回路106に接続し、他側の電位を読み取る。
【0005】
指などの入力操作体が接近する電極では、浮遊容量が増大するので、パルス電圧を印加して電極に流れる電流の一部は、浮遊容量を通して流れ、演算回路106で検出する他側の電位は、入力操作体を接近させる前の電位より低下する。絶縁基板上には、多数のX側電極とY側電極が交差してマトリックス状に配置されているので、絶縁基板へ入力操作体を接近させると、少なくともY方向に沿って配線されるX側電極とX方向に沿って配線されるY側電極のそれぞれいずれかの電極の他側電位が低下し、演算回路106は、電位が低下したX側電極とY側電極の配置位置から、XY座標で表す入力操作位置を検出する。
【0006】
ここで、入力操作体が接近することにより増加する検出電極の浮遊容量は、10pF以下の微小値であり、浮遊容量を検出しようとする電極に直交する他方の電極との浮遊容量や外部ノイズの影響を受け易く、検知感度が低下する問題があった。
【0007】
そこで検出電極を配置した絶縁基板の背面にシールド層を配置して外部ノイズから遮蔽したタッチパネルが特許文献2に開示されている。
【0008】
また、特許文献1に記載の静電容量式タッチパネル100では、シールド電極切り換え制御回路107を設けて、パルス電圧を印可して走査する電極(例えばX側電極)に対して直交する他側の電極(例えばY側電極)を接地し、計測する電極に直交する電極をシールド電極として、上記他方の電極との浮遊容量や外部導電体の影響を減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−175784号公報
【0010】
【特許文献2】特開2009−086184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、検出電極を配置した絶縁基板の背面にシールド層を設けたタッチパネルは、図9に示すように、シールド層201と検出電極202が静電容量結合し、検出電極と入力操作体203間の10pF以下の浮遊容量Cxに対して、各検出電極とシールド層間に無視できない数10pFの静電容量C1、C2が生じ、検出感度が低下するものであった。
【0012】
また、計測する電極に直交する電極をシールド電極とする静電容量式タッチパネル100は、シールド電極(例えばY側電極)となるグランドラインが、浮遊容量の増加を検出する電極(例えばX側電極)と直交方向に配線されているので、検出する電極(例えばX側電極)間の浮遊容量C3(図9参照)は、他側の電極をシールド電極としても発生し、検出感度の低下を改善することはできない。入力操作位置の検出精度を上げるために狭ピッチで多数の検出電極を配列することが望まれる一方、各検出電極について検出しようとする浮遊容量は、入力操作体と対向する面積に比例するので、可能な限り絶縁基板上の表面積を拡大させる必要があり、その結果、隣り合う検出電極間が接近して上記浮遊容量C3の増大が避けられないものであった。
【0013】
更に、従来の静電容量式タッチパネル100では、X方向とY方向の入力操作位置を検出する毎に、他側の検出電極を接地させる必要があり、余分なシールド電極切り換え制御回路107を備える必要があるとともに、切り換え制御が煩わしく、また、一方向にそってのみグランドラインが形成されるものであるので、外部からのノイズを充分に遮断することができないものであった。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、検出電極間の浮遊容量を完全に取り除き、浮遊容量が増加する検出電極の検出感度を上げるタッチパネル入力装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の静電容量式タッチパネルは、互いに直交する方向に沿って、絶縁基板上にマトリックス状に配線される複数の第1電極及び複数の第2電極と、第1電極と第2電極とが交差する交差領域で、第1電極と第2電極との間に配設され、交差する第1電極と第2電極とを絶縁する絶縁コートとを有し、各第1電極と各第2電極の浮遊容量の変化を検出し、浮遊容量が変化した第1電極と第2電極の絶縁基板上の配設位置から、絶縁基板へ被検出体を接近させる入力操作の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルであって、絶縁基板上の隣り合う第1電極の間に第1電極の配線方向に沿って配線され、交差領域で絶縁コートを介して第2電極の他側に配線されて第2電極と絶縁する複数の第1グランドパターンと、絶縁基板上の隣り合う第2電極の間に第2電極の配線方向に沿って配線され、交差領域で絶縁コートを介して第1電極の他側に配線されて第1電極と絶縁される複数の第2グランドパターンとを備え、複数の各第1グランドパターンと各第2グランドパターンとは、互いに交差する絶縁基板上の部位で電気接続することを特徴とする。
【0016】
隣り合う第1電極間又は第2電極間にそれぞれ第1グランドパターンと第2グランドパターンが配線されるので、隣り合う電極間に浮遊容量が発生せず、高い精度で第1電極若しくは第2電極と被検出体間の浮遊容量の変化を検出できる。
【0017】
第1グランドパターンと第2グランドパターンは、交差領域で第1電極と第2電極を絶縁する絶縁コートを介して交差する他側の第2電極若しくは第1電極と絶縁して配線されるので、マトリックス状に第1電極と第2電極とが配線される絶縁基板上に、更に第1電極及び第2電極と絶縁してグランドパターンがマトリックス状に配線される。
【0018】
また、請求項2に記載の静電容量式タッチパネルは、互いに直交する方向に沿って、絶縁基板上にマトリックス状に配線される複数の第1電極及び複数の第2電極と、第1電極と第2電極とが交差する交差領域で、第1電極と第2電極との間に配設され、交差する第1電極と第2電極とを絶縁する絶縁コートとを有し、各第1電極と各第2電極の浮遊容量の変化を検出し、浮遊容量が変化した第1電極と第2電極の絶縁基板上の配設位置から、絶縁基板へ被検出体を接近させる入力操作の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルであって、各第1電極は、交差領域に向かって細幅となる菱形状の複数の第1パターン本体と、交差領域で第1パターン本体間を第1電極の配線方向に沿って一体に連続させる帯状の第1連結パターンとを有し、各第2電極は、絶縁基板上で第1パターン本体に相補する菱形状の複数の第2パターン本体と、交差領域で第1連結パターンを跨ぎ、第2パターン本体間を第2電極の配線方向に沿って接続する帯状の第2連結パターンとを有し、第1電極の輪郭と第2パターン本体との隙間に沿って、各第1電極の両側に第3グランドパターンを配線し、交差領域で絶縁コートの第1コート部を第1連結パターンを跨いで架け渡すとともに、第2コート部を第1連結パターンの両側の第3グランドパターンまで跨いで架け渡し、第1電極の両側に沿って配線される一対の第3グランドパターン間を電気接続する第4グランドパターンを、第1コート部を挟んで第1連結パターンの他側に配線し、第2連結パターンを、第2コート部を挟んで第1連結パターン及び第3グランドパターンの他側に配線することを特徴とする。
【0019】
第1電極の第1パターン本体と第2電極の第2パターン本体は、絶縁基板上で互いに相補する菱形状に形成されるので、絶縁基板の露出面積が少なく、効率的に多数の各電極のパターンが配線される。
【0020】
隣り合う第1電極間若しくは第2電極間に、それぞれ他側の第2電極若しくは第1電極が配線されるので、その間に大きな浮遊容量は発生しない。また、隣り合う第1電極と第2電極間に第3グランドパターンが配線されるので、これらの電極間にも浮遊容量が発生せず、高い精度で第1電極若しくは第2電極と被検出体間の浮遊容量の変化を検出できる。
【0021】
交差領域で第1コート部を介して第1連結パターンの他側に配線される第4グランドパターンにより、第1電極の両側に沿って配線される一対の第3グランドパターン間が電気接続されるので、マトリックス状に第1電極と第2電極とが配線される絶縁基板上に、更に第1電極及び第2電極と絶縁するグランドパターンが網目状に配線される。
【0022】
また、請求項3に記載の静電容量式タッチパネルは、第1電極と第3グランドパターン及び/又は第2電極と第4グランドパターンが同一導電材料で形成されることを特徴とする。
【0023】
第1電極と第3グランドパターン若しくは第2電極と第4グランドパターンは、それぞれ絶縁コートの同一側に配線されるので、同一導電材料とすることによって、同一の工程で両者を形成できる。
【0024】
また、請求項4に記載の静電容量式タッチパネルの製造方法は、絶縁基板の各交差領域に、第1電極と第3グランドパターンと第2パターン本体とからなる第1層を形成する第1工程と、各交差領域に絶縁コートの第1コート部と第2コート部とからなる第2層を形成する第2工程と、各交差領域に、第2連結パターンと第4グランドパターンとからなる第3層を形成する第3工程とからなり、第1工程、第2工程、第3工程の順、又は第3工程、第2工程、第1工程の順に、第1層と第2層と第3層を積層し、各工程で積層方向で対向する各部を電気接続し、請求項2に記載の静電容量式タッチパネルを製造することを特徴とする。
【0025】
絶縁コートからなる第2層の両側に、導電パターンからなる第1層及び第3層を積層するので、各層を、互いに電気接続させる第2パターン本体及び第4グランドパターン間と、第3グランドパターン及び第4グランドパターン間の一部を積層方向で重ね、絶縁させる導電パターン間に第2層の第1コート部若しくは第2コート部を介在させる形状とすることによって、複雑な積層構造の請求項2に記載の静電容量式タッチパネルが簡単な工程で製造される。
【0026】
また、請求項5に記載の静電容量式タッチパネルの製造方法は、第1層の第1電極と第3グランドパターンと第2パターン本体及び/又は第3層の第2連結パターンと第4グランドパターンが、同一導電材料で形成されることを特徴とする。
【0027】
第1層と第3層の各パターンを同一導電材料とすることによって、各層を一度の工程で形成できる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、隣り合う第1電極間又は第2電極間に浮遊容量が発生しないので、高い精度で第1電極若しくは第2電極と被検出体間の浮遊容量の変化を検出できる。
【0029】
また、絶縁基板上に第1電極及び第2電極と絶縁してマトリックス状にグランドパターンが配線されるので、マトリックス状のグランドパターンにより、第1電極若しくは第2電極への外部ノイズの侵入が遮蔽される。従って、必ずしもシールド層を絶縁基板の背面側に形成することなく、入力操作位置を検出でき、シールド層を形成しない場合には、第1電極若しくは第2電極とシールド層間に大きな浮遊容量が発生しないので、被検出体との浮遊容量の検出精度が高まる。
【0030】
請求項2の発明によれば、隣り合う第1電極間若しくは第2電極間に、それぞれ他側の第2電極若しくは第1電極が配線され、また、隣り合う第1電極と第2電極間には、第3グランドパターンが配線されるので、いずれの電極間にも大きな浮遊容量は発生せず、高い精度で第1電極若しくは第2電極と被検出体間の浮遊容量の変化を検出できる。
【0031】
また、絶縁基板上に第1電極及び第2電極と絶縁して網目状にグランドパターンが配線されるので、網目状のグランドパターンにより、第1電極若しくは第2電極への外部ノイズの侵入が遮蔽される。従って、必ずしもシールド層を絶縁基板の背面側に形成することなく入力操作位置を検出でき、シールド層を形成しない場合には、第1電極若しくは第2電極とシールド層間に大きな浮遊容量が発生しないので、被検出体との浮遊容量の検出精度が高まる。
【0032】
請求項3の発明によれば、第1電極と第3グランドパターン若しくは第2電極と第4グランドパターンを、それぞれ同一の工程で形成でき、製造工程を短縮できる。
【0033】
請求項4の発明によれば、絶縁基板上に3層を積層させるだけの簡単な工程で、請求項2に記載の静電容量式タッチパネルを製造できる。
【0034】
また、第1工程、第2工程、第3工程の順、又は第3工程、第2工程、第1工程の順に各層を積層させても請求項2に記載の静電容量式タッチパネルを製造できるので、静電容量式タッチパネルの特性や製造工程上の都合に合わせて任意に工程順を選択できる。
【0035】
請求項5の発明によれば、第1工程及び/又は第3工程を、それぞれ一度の積層工程とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の第1実施の形態に係る静電容量式タッチパネル1と入力操作位置検出回路10のブロック図である。
【図2】図2は、静電容量式タッチパネル1の交差領域1Aを示す要部平面図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施の形態に係る静電容量式タッチパネル20を製造する第1工程で積層する第1層を、(a)は、静電容量式タッチパネル20の全体で、(b)は、要部の交差領域20Aを拡大し、それぞれ示す説明図である。
【図4】図4は、静電容量式タッチパネル20を製造する第2工程で積層する第2層を、(a)は、静電容量式タッチパネル20の全体で、(b)は、要部の交差領域20Aを拡大し、それぞれ示す説明図である。
【図5】図5は、静電容量式タッチパネル20を製造する第3工程で積層する第3層を、(a)は、静電容量式タッチパネル20の全体で、(b)は、要部の交差領域20Aを拡大し、それぞれ示す説明図である。
【図6】図6は、静電容量式タッチパネル20の(a)は、全体を、(b)は、要部の交差領域20Aを拡大し、(c)は、交差領域20Aを更に拡大して、それぞれ示す平面図である。
【図7】図7は、静電容量式タッチパネル20の表面に配線されたグランドパターン25、26のみを図示する説明図である。
【図8】図8は、従来の静電容量式タッチパネル100を示すブロック図である。
【図9】図9は、従来の静電容量式タッチパネルについて、(a)は、入力操作を待機している状態で発生する静電容量を、(b)は、入力操作を行っている状態で発生する静電容量を、それぞれ比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の第1実施の形態に係る静電容量式タッチパネル1を、図1と図2を用いて説明する。図1に示すように、静電容量式タッチパネル1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面上に、それぞれ直交するXY方向に沿ってマトリックス状に配線された複数のX検出電極3、3・・とY検出電極4、4、・・と、X方向で隣り合うX検出電極3、3間に配線されるXグランドパターン5と、Y方向で隣り合うY検出電極4、4間に配線されるYグランドパターン6とを備えている。
【0038】
X検出電極3とY検出電極4とが交差する各交差領域1Aには、X電極3を交差するY検出電極4及びYグランドパターン6から絶縁するとともに、Xグランドパターン5を、交差するY検出電極4から絶縁する絶縁コート15(図2参照)が配設され、これにより各検出電極3、4は相互に絶縁し、又グランドパターン5、6からも絶縁して配線される。静電容量式タッチパネル1には、指などの入力操作体による入力操作位置を、浮遊容量が増加して入力されるコモンモードノイズが増加する検出電極3、4の位置から検出する入力操作位置検出回路10が接続されているが、その構成と動作は後述する。
【0039】
絶縁基板2は、表面に導電性のパターンが形成される材質であれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミドの可撓性のプラスチックシート等の種々の材料で構成することができるが、ここでは、入力操作面から背面側に配置される表示装置を目視可能なように透明なガラス基板で構成している。
【0040】
図2に示すように、絶縁基板2の表面上にX方向に等間隔で配線されるX検出電極3は、X方向に沿って台形のXパターン本体3aと、Y検出電極4と交差する交差領域1Aで、Y方向にXパターン本体3a間を一体に連結する細幅帯状のX連結パターン3bとからなり、X連結パターン3bで連結される一組のXパターン本体3aは、交差領域1Aの中心回りで点対称の形状となっている。
【0041】
また、絶縁基板2の表面上にY方向に等間隔で配線されるY検出電極4は、X検出電極3を絶縁基板2上で90度回転させた形状でX方向に連続して形成される。すなわち、Y検出電極4は、Y方向に沿って台形のYパターン本体4aと、交差領域1Aで、X方向にYパターン本体4a間を一体に連結する細幅帯状のY連結パターン4bとからなり、Y連結パターン4bで連結される一組のYパターン本体4aは、交差領域1Aの中心回りで点対称の形状となっている。
【0042】
X検出電極3とY検出電極4は、絶縁基板2上に配線可能な任意の導電材料で形成できるが、ここでは、ガラス基板である絶縁基板2上に印刷形成が可能であり、透明導電材料としてITO(Indium Tin Oxide)で形成している。
【0043】
図2に示すように、隣り合うパターン本体3a、4aにはわずかな隙間が形成され、この隙間にパターン本体3a、4aに対して所定の間隔を隔てて、各X検出電極3、3間に配線されるXグランドパターン5と、各Y検出電極4、4間に配線されるYグランドパターン6とが配線される。Xグランドパターン5とYグランドパターン6も、導電材料であればいずれで形成してもよいが、以下のように、それぞれX検出電極3若しくはY検出電極4と同一工程で形成するように、同一導電材料のITOで印刷形成している。
【0044】
本実施の形態では、絶縁基板2上に先にY検出電極4とその間にYグランドパターン6を形成しておき、X検出電極3とY検出電極4が交差する各交差領域1Aで、Y連結パターン4bとYグランドパターン6を跨ぐように、シリカ(SiO2)等の絶縁材料からなる絶縁コート15をその上層に印刷形成する。その後、図に示すように、X検出電極3のX連結パターン3bと、Xグランドパターン5のY連結パターン4bを跨ぐ部分がそれぞれ絶縁コート15上に配線されるように、X検出電極3とXグランドパターン5を絶縁基板2上の全体に配線する。また、各交差領域1Aで、Xグランドパターン5とYグランドパターン6が重ねて配線される部位は、Xグランドパターン5をYグランドパターン6で兼ね、両者が電気接続される。
【0045】
このようにして製造された静電容量式タッチパネル1は、絶縁基板2上にマトリックス状に複数のX検出電極3と複数のY検出電極4が配線され、その間にXグランドパターン5とYグランドパターン6が検出電極3、4と絶縁して格子状に配線される。Xグランドパターン5とYグランドパターン6はそれぞれ接地され、各検出電極3、4の上方から接近する入力操作体からのコモンモードノイズ以外のノイズが遮断されるとともに、検出電極3、4に接地したグランドパターン5、6が配線されるので、検出電極3、4間の浮遊容量が入力操作位置の検出に影響することがない。
【0046】
入力操作位置検出回路10は、図1に示すように、複数の各X検出電極3及びY検出電極4の一側に接続し、他側が接地された検出抵抗7と、各X検出電極3及びY検出電極4の他側に接続されたダイオード8及びユニティゲインアンプ9と、各X検出電極3に接続されるユニティゲインアンプ9の他側との接続を切り換えるX側マルチプレクサ11と、各Y検出電極4に接続されるユニティゲインアンプ9の他側との接続を切り換えるY側マルチプレクサ12と、A/D変換器13と、CPU14から構成されている。
【0047】
ユニティゲインアンプ9は、ダイオード8によってグランドレベルにクランプされた各X検出電極3及びY検出電極4の他側の入力側回路とその出力側の検出回路と分離するものである。X側マルチプレクサ11とY側マルチプレクサ12は、CPU14によりA/D変換器13との接続が制御され、これによりCPU14で選択接続されるユニティゲインアンプ9から出力される容量変化信号がA/D変換器13へ入力される。
【0048】
A/D変換器13は、入力される容量変化信号を二値化してCPU14へ出力し、CPU14は、入力される容量変化信号の包絡線のレベルを所定の電圧しきい値VTHと比較して、入力操作体が接近することによって静電容量が増加し、指から入力されるコモンモードノイズのレベルが上昇した検出電極3、4をX検出電極3とY検出電極4のそれぞれで検出し、その検出電極3、4の絶縁基板2上の配設位置から入力操作位置をXY方向で検出する。
【0049】
CPU14は、このようにして真検出した入力操作位置を、表示画面上のカーソル移動制御や電子機器の動作を制御するマイコンへ出力し、入力操作位置に応じた所定の処理を実行させる。
【0050】
入力操作による検出電極についての静電容量の変化は、静電容量がその面積に比例することから、限られた絶縁基板2上にできるだけ効率的に検出電極を配置させる必要があるが、上述の第1実施の形態に係る静電容量式タッチパネル1では、交差領域1Aに絶縁基板2が露出する無駄な部分が残されている。第2実施の形態に係る静電容量式タッチパネル20は、絶縁基板2上の略全てに無駄なくXY方向に交差する検出電極を配置したもので、以下、図3乃至図7を用いてこの静電容量式タッチパネル20を説明する。尚、第2実施の形態において、絶縁基板2と入力操作位置検出回路10は第1実施の形態と同一であるものとしてその説明を省略する。
【0051】
静電容量式タッチパネル20も第1実施の形態と同様に、絶縁基板2の表面上に、それぞれ直交するXY方向に沿って複数のX検出電極23、23・・及びY検出電極24、24、・・がマトリックス状に配線され、Y方向で隣り合うY検出電極24、24間に、Y検出電極24に沿って配線されるYグランドパターン25と、X検出電極23とY検出電極24とが交差する各交差領域20AでYグランドパターン25、25間を接続するXグランドパターン26とが配線されている。
【0052】
図6に示すように、絶縁基板2の表面上にX方向に等間隔で配線されるX検出電極23は、Y方向に沿って菱形のXパターン本体23aと、Y検出電極24と交差する交差領域20Aで、Y方向にXパターン本体23a間を一体に連結する細幅帯状のX連結パターン23bとからなり、絶縁基板2の表面上にY方向に等間隔で配線されるY検出電極24は、Xパターン本体23aとほぼ同一の菱形のYパターン本体24aと、交差領域20Aで、X方向にYパターン本体24a間を一体に連結する細幅帯状のY連結パターン24bとからなっている。従って、X検出電極23とY検出電極24とは、それぞれ互いに交差する各交差領域20Aに向かって細幅となり、各交差領域20Aで細幅帯状のX連結パターン23b若しくはY連結パターン24bにより連続する。
【0053】
第1実施の形態と同様に、絶縁基板2上に配線される上述の検出電極23、24及びグランドパターン25、26は、いずれも透明な導電材料であるITOにより形成している。
【0054】
また、X検出電極23とY検出電極24とが交差する各交差領域20Aには、X検出電極23を交差するY検出電極24及びYグランドパターン25から絶縁するとともに、Xグランドパターン26を、交差するY検出電極24から絶縁する絶縁コート27が配設され、これにより各検出電極23、24は相互に絶縁し、又グランドパターン25、26からも絶縁される。
【0055】
上述の図6に示す静電容量式タッチパネル20は、図3乃至図5の各製造工程を経て形成される。すなわち、図3に示す第1工程では、図3(a)に示すように、各交差領域20Aの位置に、X連結パターン23bとその両側に一対のXグランドパターン26がY方向に沿って印刷形成される。各X連結パターン23bは、Y方向の両側が図6(b)に示すXパターン本体23aの配置位置と重なり、また、一対のXグランドパターン26は、図6(b)に示すY連結パターン24bと交差し、Y方向の両側がYグランドパターン25と重なる位置に形成される。
【0056】
第2工程では、各交差領域20Aの位置に、第1行程で印刷形成したX連結パターン23bと一対のXグランドパターン26の各Y方向の両端部を残して、図4(a)(b)に示すシリカ(SiO2)等の絶縁材料からなる絶縁コート27を上方から重ねて印刷形成する。絶縁コート27は、X連結パターン23bより太幅でY検出電極24の両側に沿って配線される一組のYグランドパターン25、25を跨ぐ長さの長方形の第2コート部27Aと、Xグランドパターン26より太幅でY検出電極24を跨ぐ長さの長方形の一対の第1コート部27Bとで、図4(b)に示すように、十字形に形成されている。
【0057】
続いて第3工程で、Xパターン本体23a、Y検出電極24及びYグランドパターン25を上方から重ねて印刷形成する。Yグランドパターン25は、図5(a)(b)に示すように、X方向に沿って配線される各Y検出電極24の輪郭に沿って、Xパターン本体23aとの間に形成される波形の隙間にいずれとも絶縁して配線される。第3工程で、Xパターン本体23a、Y検出電極24及びYグランドパターン25を上方から印刷形成すると、各交差領域20Aにおいて、X連結パターン23bは、交差するY連結パターン24b及びその両側のYグランドパターン25との間に絶縁コート27が介在して絶縁されるとともに、絶縁コート27で覆われないその両側がXパターン本体23aと重なり、Xパターン本体23a間を電気接続するものとなる。また、X連結パターン23bとその両側に一対のXグランドパターン26は、交差するY連結パターン24bとの間に絶縁コート27が介在して絶縁されるとともに、絶縁コート27で覆われないその両側がYグランドパターン25と重なり、Y検出電極24に沿った一対のYグランドパターン25間を電気接続するものとなる。
【0058】
このように第1乃至第3工程を経て製造された静電容量式タッチパネル20は、絶縁基板2上にマトリックス状に複数のX検出電極23と複数のY検出電極24が配線され、その間にXグランドパターン26とYグランドパターン25とが図7に示すように検出電極23、24と絶縁して網目状に配線される。Xグランドパターン26とYグランドパターン25はそれぞれ接地されるので、各X検出電極23、24の上方から接近する入力操作体からのコモンモードノイズ以外のノイズが遮断されるとともに、検出電極23、24に接地したグランドパターン25が配線されるので、検出電極23、24間の浮遊容量が入力操作位置の検出に影響することがない。
【0059】
この第2の実施の形態で静電容量式タッチパネル20を製造する工程は、第3工程、第2工程を経て第1工程の順に形成してもよい。
【0060】
上述の第1、第2実施の形態では、絶縁基板2上に、検出電極と絶縁して格子状若しくは網目状のグランドパターン5、6、25、26が配線されるので、外部ノイズを充分に遮断することができるが、更に絶縁基板2の背面側からのノイズを完全に遮断するために、絶縁基板2の背面側に別に接地されたシールド層を形成してもよい。
【0061】
また、検出電極の浮遊容量の変化から入力操作位置を検出する入力操作位置検出手段は、上述のように、コモンモードノイズの増加から検出する方法に限らず、例えば、所定の検出信号を入力操作体若しくは検出電極の一側から入力し、浮遊容量の変化による検出信号の変化から検出するものであってもよい。
【0062】
また、上述の入力操作位置検出回路10において、検出抵抗7は、各X検出電極3及びY検出電極4とダイオード8の間に接続してもよく、各X検出電極3及びY検出電極4の他側の入力側回路とその出力側の検出回路と分離するユニティゲインアンプ9は、ゲートを入力回路側に接続するFET(電界効果トランジスタ)で代用してもよい。さらに、これらのユニティゲインアンプ9若しくはFETは、マルチプレクサ11、12とA/D変換器13の間に接続すれば、個々の検出電極3、4毎に用意する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
入力操作体を接近させることによる浮遊容量の微小変化から入力操作位置を非接触で検出する静電容量式タッチパネルに適している。
【符号の説明】
【0064】
1 静電容量式タッチパネル(第1実施の形態)
1A 交差領域
2 絶縁基板
3 X検出電極
4 Y検出電極
5 Xグランドパターン
6 Yグランドパターン
15 絶縁コート
20 静電容量式タッチパネル(第2実施の形態)
20A 交差領域
23 X検出電極
24 Y検出電極
25 Yグランドパターン
26 Xグランドパターン
27 絶縁コート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する方向に沿って、絶縁基板上にマトリックス状に配線される複数の第1電極及び複数の第2電極と、
第1電極と第2電極とが交差する交差領域で、第1電極と第2電極との間に配設され、交差する第1電極と第2電極とを絶縁する絶縁コートとを有し、
各第1電極と各第2電極の浮遊容量の変化を検出し、浮遊容量が変化した第1電極と第2電極の絶縁基板上の配設位置から、絶縁基板へ被検出体を接近させる入力操作の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルであって、
絶縁基板上の隣り合う第1電極の間に第1電極の配線方向に沿って配線され、交差領域で絶縁コートを介して第2電極の他側に配線されて第2電極と絶縁する複数の第1グランドパターンと、
絶縁基板上の隣り合う第2電極の間に第2電極の配線方向に沿って配線され、交差領域で絶縁コートを介して第1電極の他側に配線されて第1電極と絶縁される複数の第2グランドパターンとを備え、
複数の各第1グランドパターンと各第2グランドパターンとは、互いに交差する絶縁基板上の部位で電気接続することを特徴とする静電容量式タッチパネル。
【請求項2】
互いに直交する方向に沿って、絶縁基板上にマトリックス状に配線される複数の第1電極及び複数の第2電極と、
第1電極と第2電極とが交差する交差領域で、第1電極と第2電極との間に配設され、交差する第1電極と第2電極とを絶縁する絶縁コートとを有し、
各第1電極と各第2電極の浮遊容量の変化を検出し、浮遊容量が変化した第1電極と第2電極の絶縁基板上の配設位置から、絶縁基板へ被検出体を接近させる入力操作の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルであって、
各第1電極は、交差領域に向かって細幅となる菱形状の複数の第1パターン本体と、交差領域で第1パターン本体間を第1電極の配線方向に沿って一体に連続させる帯状の第1連結パターンとを有し、
各第2電極は、絶縁基板上で第1パターン本体に相補する菱形状の複数の第2パターン本体と、交差領域で第1連結パターンを跨ぎ、第2パターン本体間を第2電極の配線方向に沿って接続する帯状の第2連結パターンとを有し、
第1電極の輪郭と第2パターン本体との隙間に沿って、各第1電極の両側に第3グランドパターンを配線し、
交差領域で絶縁コートの第1コート部を第1連結パターンを跨いで架け渡すとともに、第2コート部を第1連結パターンの両側の第3グランドパターンまで跨いで架け渡し、
第1電極の両側に沿って配線される一対の第3グランドパターン間を電気接続する第4グランドパターンを、第1コート部を挟んで第1連結パターンの他側に配線し、
第2連結パターンを、第2コート部を挟んで第1連結パターン及び第3グランドパターンの他側に配線することを特徴とする静電容量式タッチパネル。
【請求項3】
第1電極と第3グランドパターン及び/又は第2電極と第4グランドパターンが同一導電材料で形成されることを特徴とする請求項2に記載の静電容量式タッチパネル。
【請求項4】
絶縁基板の各交差領域に、第1電極と第3グランドパターンと第2パターン本体とからなる第1層を形成する第1工程と、
各交差領域に絶縁コートの第1コート部と第2コート部とからなる第2層を形成する第2工程と、
各交差領域に、第2連結パターンと第4グランドパターンとからなる第3層を形成する第3工程とからなり、
第1工程、第2工程、第3工程の順、又は第3工程、第2工程、第1工程の順に、第1層と第2層と第3層を積層し、各工程で積層方向で対向する各部を電気接続し、請求項2に記載の静電容量式タッチパネルを製造することを特徴とする静電容量式タッチパネルの製造方法。
【請求項5】
第1層の第1電極と第3グランドパターンと第2パターン本体及び/又は第3層の第2連結パターンと第4グランドパターンは、同一導電材料で形成されることを特徴とする請求項4に記載の静電容量式タッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−128896(P2011−128896A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286817(P2009−286817)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】