説明

静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置

【課題】液晶表示装置に一体的に形成されるタッチパネルセンサを有し、薄膜化が可能であって、且つ、液晶を駆動させる際に発生させる低周波ノイズによるタッチパネルの誤作動を防止可能とする、静電容量式タッチパネル付き液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶を駆動させるために設けられる画素電極部において、1つの画素電極を複数に分割して副画素電極を形成し、各副画素電極にそれぞれ副スイッチング素子を設け、1つの画素電極内において、隣り合う副画素電極に印加される電圧の極性を反転させて、1つの画素電極内において信号を平均化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式タッチパネルセンサが、一体的に備わる液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、表示装置と座標検出装置を組み合わせた、入力デバイスとしてのタッチパネルを備える液晶表示装置の普及が進んでいる。具体的には、例えば、販売機、ATM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン等の表示画面において、画面に接触または接触に近い接近により入力を可能とする装置が例示される。上記タッチパネルを備える液晶表示装置は、通常、タッチパネルと液晶表示パネルとを個別に生産し、該液晶表示パネルの画面上(即ち液晶表示パネルの表示側基材面)にタッチパネルの接触側とは反対側の基材面を重ね、重なる2枚の基材面の外縁を接着し、基材間の非接着領域を空気層として組み立てられる。このように基材間に形成される空気層を介して液晶表示パネルとタッチパネルとを組み合わせてなるタッチパネルセンサ付き液晶表示装置(以下、従来技術1ともいう)が一般的であった(例えば、特許文献1)。
【0003】
ただし従来技術1では、表示パネルに別個のタッチパネルを重ねるため、結果として製造されるタッチパネル付き液晶表示装置の厚みが増大するという問題があり、薄型化への支障となっていた。
【0004】
これに対し、本出願人は、液晶表示装置と静電容量式タッチパネルとを一体的に製造する技術(従来技術2ともいう)を開発した(特許文献2)。従来技術2は、基材上に、まず静電容量式のタッチパネルセンサとして積層透明電極を形成し、次いで、絶縁性層などを介して着色層を形成し、さらに液晶駆動用の透明電極層を形成してなるカラーフィルタを基礎とするものである。そして、上記カラーフィルタと、別途製造された基材上に画素電極部を備える対向基板との間に液晶層を配置して、タッチパネル付き液晶表示装置が完成される。
【0005】
従来技術2は、タッチパネルセンサと着色層間に基材を備える必要がないので、従来技術1に比べて、表示パネルの厚みを薄くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−86184
【特許文献2】特開2010−72581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術2では、タッチパネルセンサにおける積層電極と、液晶駆動用の電極との距離が近接したことによる電気的な課題があることがわかった。
【0008】
即ち、静電容量式のタッチパネルセンサは、接触画面上において指などの導体の接触で発生する微小信号変化を検出する。一方、液晶表示装置において、液晶層を介して配置される液晶駆動用の透明電極層と画素電極部との間では、表示内容に応じて画素ごとに印加される電圧が異なり、この画素間における電圧の差異が低周波ノイズとして現れる。
【0009】
従来技術1のごとく、別個に製造された液晶パネルとタッチパネルとを、空気層を介して重ねて固定化させる場合には、両者間に基材が存在し、且つ、空気層が絶縁層の役割を担うため、上記低周波ノイズは、タッチパネルセンサに影響を及ぼすことがなかった。しかしながら、従来技術2のごとく、タッチパネルセンサと液晶表示パネルセンサとの間に基材が存在せず、両者が接近して配置される構成では、液晶表示パネルで発生する低周波ノイズを、タッチパネルセンサが信号として検出してしまう場合があり、誤作動を引き起こす可能性があった。尚、上記誤作動の問題は、主として、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を採用した場合における問題であった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、液晶表示装置に一体的に形成されるタッチパネルセンサを有し、薄膜化が可能であって、且つ、液晶を駆動させる際に発生させる低周波ノイズによるタッチパネルの誤作動を防止可能とする、静電容量式タッチパネル付き液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、液晶を駆動させるために設けられる画素電極部において、1つの画素電極を複数に分割して副画素電極を形成し、各副画素電極にそれぞれスイッチング素子を設け、1つの画素電極内において、隣り合う副画素電極に印加される電圧の極性を反転させて、1つの画素電極内において信号を平均化させることによれば、従来問題となっていた低周波ノイズを低減することができ、該低周波ノイズを信号として検知することによって生じるタッチパネルセンサの誤作動を防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、
(1)静電容量式タッチパネルセンサを備える液晶表示装置であって、第一基材と、上記第一基材上に該第一基材側から第一透明電極部、第一誘電体層、第二透明電極部を備える静電容量式タッチパネルセンサと、上記タッチパネルセンサ上に第二誘電体層を介して設けられる液晶駆動用透明電極層とを備える第一基板、第二基材と、上記第二基材上に直接または間接に形成される画素電極部とを備える第二基板、および上記第一基板と上記第二基板との間に配置される液晶層を有しており、上記画素電極部は、複数の画素電極と、該複数の画素電極それぞれに設けられるスイッチング素子を備えるアクティブマトリクス方式の画素電極部であって、1つの画素電極が2つ以上の副画素電極に分割されており、複数の副画素電極のそれぞれに副スイッチング素子が設けられており、1つの画素電極内において、隣り合う副画素電極に印加される電圧の極性が反転することを特徴とする静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置、
(2)静電容量式タッチパネルセンサを備える液晶表示装置であって、第一基材と、上記第一基材上に該第一基材側から第一透明電極部、第一誘電体層、第二透明電極部を備える静電容量式タッチパネルセンサと、上記タッチパネルセンサ上に第二誘電体層を介して設けられる2色以上の着色部が繰り返し整列してなる着色層と、液晶駆動用透明電極層とを備える第一基板、第二基材と、上記第二基材上に直接または間接に形成される画素電極部とを備える第二基板、および上記第一基板と上記第二基板との間に配置される液晶層を有しており、上記画素電極部は、1色の色画素電極を1画素単位として、複数の色画素電極と、該複数の色画素電極それぞれに設けられるスイッチング素子を備えるアクティブマトリクス方式の画素電極部であって、1つの色画素電極が2つ以上の副色画素電極に分割されており、複数の副色画素電極のそれぞれに副スイッチング素子が設けられており、1色の色画素電極内において、隣り合う副色画素電極に印加される電圧の極性が反転することを特徴とする静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置、
(3)上記画素電極が偶数の副画素電極に分割され、または、上記色画素電極が偶数の副色画素電極に分割されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静電容量式タッチパネル付き液晶表示装置は、表示側基板(第一基板)と、対向基板(第二基板)と、これらの間に配置される液晶層とから構成される液晶表示装置において、表示側基板内にタッチパネルセンサを設けることによって、タッチパネルセンサが液晶表示装置に一体的に設けられる構造を有している。従って、従来のタッチパネル付き液晶表示装置に比べて、厚みが小さく、薄型化が図られている。
【0014】
しかも、画素電極部における1つの画素電極が複数の副画素電極に分割されており、1つの画素電極内における複数の副画素電極に印加される電圧が隣り合う副画素電極ごとに反転されることから、1つの画素電極内において信号を平均化させることが可能であり、この結果、液晶駆動用の電極から発生していた低周波ノイズを低減させることができる。したがって、該低周波ノイズにより、タッチパネルセンサの誤作動を良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施態様である静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置を、基板面に略垂直に切断した際の断面概略図である
【図2】本発明の静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置における第一透明電極部および第二電極部の積層状態の一例を示す上面概略図である。
【図3】本発明の一実施態様である静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置における第二基板に設けられる画素電極部を含む回路図である。
【図4】本発明の別の実施態様である静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置における第二基板に設けられる画素電極部を含む回路図である。
【図5】本発明の静電容量式タッチパネル付き液晶表示装置の駆動を説明するための説明図である。
【図6】実施例1におけるタッチパネルセンサの検出回路を示すブロック回路図である。
【図7】実施例および比較例を評価するための可動式タッチパネル感応検査装置の側面図である。
【図8】タッチパネルセンサが接触を感知する前後において、感知される信号強度の変化示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を用いて、本発明に静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置(以下、単に「本発明の液晶表示装置」という場合がある)を実施するための形態について説明する。尚、以下に示す図面は、説明を容易にするために適宜、便宜的な寸法、あるいは寸法比で示す場合があるが、本発明を何ら限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施態様である静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置1(以下、単に「液晶表示装置1」と略する場合がある)を、基板面に略垂直に切断した際の断面図である。液晶表示装置1は、第一基板(表示側基板)30と、第二基板(対向基板)40と、これらの間に配置される液晶層20とから構成されている。液晶層20は、対面する第一基板30と第二基板40とをシール部材19により一定の距離をあけて張り合わせ、これよって確保された隙間に液晶材料を注入して形成される。図示はしないが、必要に応じて基板間の隙間を確保するために対面する基板面に柱状体を形成し、あるいは基板間にビーズ部材などを配置させてもよい。
【0018】
第一基板30には、第一基材2の一方側の面に、静電容量式タッチパネルセンサ用の第一透明電極部3と、第二透明電極部4とが第一誘電体層6を介して積層されている。本発明において液晶表示装置1内に一体的に設けられるタッチパネルセンサを構成する第一透明電極部3および第二透明電極部4は、公知の静電容量式タッチパネルセンサに採用され得る種々の透明積層電極の態様を任意選択して実施することができる。例えば、図2に示すように、図示しない第一基材2上に整列する複数のダイヤ形状がx方向に直線状に連結される複数列の第一透明電極部3と、第一透明電極部3を覆って設けられる第一誘電体層6と、第一誘電体層6上において整列する複数のダイヤ形状がy方向に直線状に連結される複数行の第二透明電極部4とにより構成される積層態様の例を示すものが例示されるが、これに限定されない。尚、複数の、第一透明電極部3、第二透明電極部4の少なくとも一端側には、それぞれ取出し電極5が設けられており、取出し電極部5は図示省略される金属配線と電気的に接続される。
【0019】
上述する第二透明電極部4を覆って、第二誘電体層9が設けられ、続いて、遮光領域を形成するブラックマトリクス(BM)7が、格子状に設けられ、BM7によって区画される透過領域を覆って、着色層8が形成されている。着色層8は、液晶表示装置1においてフルカラー表示を可能とするため、赤色着色部8R、緑色着色部8G、青色着色部8Bが、マトリックス状に整列して繰り返し配置されている。尚、BM7は、セル組した際に、対向する副画素電極に対応する間隔で設けることが望ましい。
【0020】
第一誘電体層6は、第一透明電極部3および第二透明電極部4間の電気的絶縁を目的に設ける層である。一方、第二誘電体層9は、電気的絶縁を発揮せしめるとともに、第二透明電極層4と、液晶駆動用透明電極層11との距離dを確保するために設けられる層である。これら誘電体層を構成するための材料としては、従来公知の透明の絶縁性層を形成することができる材料を適宜選択して用いることができ、例えば透明性の紫外線硬化性樹脂、あるいは透明性の熱硬化性樹脂などを適宜使用することができる。また形成方法は、その厚みにもよるが、特に第一誘電体層6は、スピンコート法により形成材料を基材面に塗布し、その後、フォトリソグラフィ手法により形成することが一般的である。一方、第二誘電体層9は、一定の厚みを確保したいため、スクリーン印刷法等により形成することが望ましいが、本発明の製造は、これに限定されるものではない。
【0021】
尚、本発明の液晶表示装置は、着色層を必ずしも必要とするものではなく、着色層を設けずに白黒表示の液晶表示装置としてもよく、あるいは一色の着色層からなる単色の液晶表示装置として構成してもよい。また、フルカラー表示の液晶表示装置の場合において、赤、緑、青の3色の着色部からなる着色層以外にも、赤、緑、青、白の4色の着色部(ただし、白は単なる透過部であってよい)からなる着色層、あるいは、シアン、マゼンダ、イエローの3色の着色部からなる着色層等であってよい。
【0022】
また上述では、フルカラー表示可能な着色層8を備える態様の第一基板30を示したが、本発明において白黒表示、あるいは一色表示などの第一基板を採用する場合であっても、第一基材上に、第一透明電極部、第一誘電体層、第二透明電極部を順次形成した後、次いで、第二誘電体層を形成し、さらにその上に、遮光領域であるブラックマトリクス形成してもよく、あるいは、第二誘電体層上に直接に液晶駆動用透明電極層を形成してもよい。
【0023】
着色層8上に必要に応じて保護層10を設けた後、液晶駆動用透明電極層11(所謂、ITO膜など)を設けて、必要に応じて駆動用液晶の配向性を規定する配向膜18を設け、第一基板30が構成される。以上のとおり、本発明における第一基板30は、従来の液晶表示装置におけるカラーフィルタに、タッチパネルセンサが一体的に設けられて構成されている。ここで一体的とは、図1に示すとおり、着色層8とタッチパネルセンサを構成する第二透明電極部4との間に基材が存在せずに、各層が積層されて構成されていることを意味する。このため、タッチパネルセンサ(タッチパネル部材)と液晶表示装置用カラーフィルタなどの表示側基板を別個に製造し、次いでこれらの一方側の基材面を貼り合わせて形成する従来のタッチパネルセンサ付き液晶表示装置に比べて、薄膜化が図られている。加えて、本構成では、基材2の片面に、カラーフィルタおよびタッチパネルセンサが形成されているため、必要に応じて、第一基板30が完成した後に、基材2を研磨によりさらに薄膜化することが可能となる。
【0024】
ただし、このように薄膜化が図られた結果、液晶駆動用透明電極層11の液晶層20とは反対側の面から第二透明電極部4までの距離dが短くなるために、液晶駆動用の電極側から発生する低周波ノイズを、タッチパネルセンサにおける電極部が感知してしまい、タッチパネルセンサの誤作動を招く恐れがあった。したがって、装置の態様にもよるが、従来技術において上記低周波ノイズをタッチパネルセンサが感知することを防止するためには、距離dを100μm以上とすることが求められていた。しかしながら、本発明の完成によって、後述するとおり、駆動用液晶電極側の低周波ノイズの発生を低減あるいは防止することが可能であるため、距離dを100μm未満、さらには、50μm以下、より望ましくは35μm以下と小さくすることができ、好適に薄膜化を図ることができる。
【0025】
また、従来技術1に代表される従来のタッチパネルセンサ付き液晶表示装置においては、互いに貼りあわされる基材が、照明等の環境光(外光)や映像光等を反射し得る界面となり映像の透過率を設計値より減少するなどの支障があったが、本発明ではこのような支障も解消される。
【0026】
一方、第二基板40は、第二基材12上に、画素電極部が設けられ、さらに必要に応じて画素電極部を覆って、駆動用液晶の配向性を規定する配向膜18を設けて構成されている。尚、第二基板40は、一般的に、TFT基板、あるいはアレイ基板などと呼ばれる液晶表示装置用基板である。上記画素電極部は、赤色画素電極(R画素電極)15、緑色画素電極(G画素電極)16、青色画素電極(B画素電極)17が、それぞれ赤色着色部8R、緑色着色部8G、青色着色部8Bに平面視上、重なる位置に設けられている(断面視では各着色部と各色画素電極部とが上下に対応している)。本発明において、特にフルカラー表示可能な態様が採用される場合には、1画素単位は、1色の画素電極に相当するものとして扱われる。即ち、図1を用いて言えば、1つのR画素電極15を1画素単位、1つのG画素電極16を1画素単位、1つのB画素電極17を1画素単位として扱う。
【0027】
本発明において、1画素単位に該当する画素電極は、2以上の副画素電極に分割され、それぞれの副画素電極に副スイッチング素子が設けられることを1つの特徴とする(以下、第一の特徴ともいう)。図1では、断面視上、赤色画素電極15は、2つの赤色副画素電極(R副画素電極)14Rを含み、緑色画素電極16は、2つの緑色副画素電極(G副画素電極)14Gを含み、青色画素電極17は、2つの青色副画素電極(B副画素電極)14Bを含んで構成されており、各副画素電極には、それぞれ、赤色副画素電極用副スイッチング素子(R副スイッチング素子)13R、緑色副画素電極用副スイッチング素子(G副スイッチング素子)13G、青色副画素電極用副スイッチング素子(B副スイッチング素子)13Bが設けられている。
【0028】
また本発明におけるさらなる特徴は、上述のとおり1つの画素電極を分割して構成する2以上の副画素電極について、隣り合う副画素電極に印加される電圧の極性が反転される点にある(以下、第二の特徴ともいう)。本発明の第一の特徴と第二の特徴とを説明するために、図3に、本発明の一実施態様における第二基板に設けられる画素電極部を含む回路図を示す。
【0029】
図3は、図示しない第二基材の一方側の面にR画素電極15、G画素電極16、B画素電極17がマトリックス状に整列して形成されてなる画素電極部を示すものである。図中、点線の四角枠で囲まれる1つのR画素電極15は、縦横2列に略等分され4つのR副画素電極14Rを含んで構成されている。また、G画素電極16、およびB画素電極17についても、同様に、1つの画素電極が4つの副画素電極に分割されて構成されている。また、それぞれの副画素電極には、副スイッチング電極が設けられて構成されている。即ち、本発明の第一の特徴が示されている。
【0030】
そして、1つのR画素電極15を構成する、4つのR副画素電極14Rは、互いに隣り合うR副画素電極14Rが異なる極性となるよう印加される電圧の極性を反転させるよう構成されている。各副画素電極に印加される電極の極性は、図中、プラス(+)とマイナス(−)とで示した。また、G画素電極16、およびB画素電極17についても、同様に、1つの画素電極を構成する4つの副画素電極は、1つの画素電極内において、互いに印加される電圧の極性が反転するよう構成されている。即ち、本発明の第二の特徴が示されている。
【0031】
本発明の液晶表示装置は、上述のとおり第一の特徴および第二の特徴を有することにより、1つの画素電極内において信号を平均化させることを可能とする。上述では、フルカラー表示可能な液晶表示装置1における本発明の特徴を具体的な態様を用いて説明したが、白黒表示、あるいは1色表示である本発明の液晶表示装置においても、同様に、1つの画素電極を複数に分割し、1つの画素電極内において、隣り合う副画素同士に印加される電圧の極性を反転せしめ、信号を平均化させることができる。この結果、液晶表示に関連する電極から発生する低周波ノイズを低減または防止することができ、該低周波ノイズをタッチパネルセンサが感知して誤作動を起こすという従来の問題を解決することができる。したがって、タッチパネルセンサ付き液晶表示装置において、上記第一の特徴および第二の特徴を備えることが重要である。
【0032】
本発明において、1つの画素電極を複数の副画素電極に分割する態様は、図3に示す態様に限定されるものではない。本発明においては、1つの画素電極を2以上の副画素電極に分割すればよく、分割数は偶数であると奇数であるとを問わない。ただし、1つの画素電極内において信号を平均化させるという趣旨からは、偶数個に分割され、隣り合う副画素電極の電圧の極性を反転させた場合の方が、より正確に信号を平均化させることができるため、好ましい。ただし、例えば、1つの画素電極を縦横3×3の副画素電極に分割するなど、1つの画素電極を奇数個に分割した場合であっても、信号の平均化の効果が発揮され、好適に低周波ノイズを低減することができる。
【0033】
また、1つの画素電極を構成する複数の副画素電極は、図3に示すように縦横同数に整列するよう分割されてもよいし、一方方向に並列する態様(例えば、4個の副画素電極が、横一列に並ぶなど)であってもよい。特に、図4に示す実施態様のごとく、列方向に並列する走査線GLの伸長方向に並列する方向に画素電極を分割して複数の副画素電極を並べることにより、さらに低周波ノイズを低減することが可能となり好適である。また、図3および図4では、複数の副画素電極は、いずれも略同面積に分割された態様を示したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、1つの画素電極を分割して形成される副画素電極の面積は、異なっていてもよい。
【0034】
尚、本発明の画素電極は、一般的に、列方向に並列する複数の信号線SLと、複数の信号線SLが接続する信号駆動回路74と、行方向に並列する複数の走査線GLと、複数の走査線GLが接続する走査駆動回路75とを有する。一方、各副画素電極には、それぞれ副スイッチング素子(図中、13R、13G、13Bとして示す)を有しており、各副スイッチング素子は、信号線SLおよび走査線GLと電気的に接続されている。一般的には、信号駆動回路74および走査駆動回路75は、コントローラ(図示せず)に接続され、該コントロールから出力されるクロック信号やラッチパルスなどの制御信号を受け、液晶表示の制御がなされる。上記画素電極部と回路との関係は、液晶表示装置の対向基板(所謂、TFT基板、アレイ基板)として公知の基板における態様と同様である。
【0035】
上述のとおり構成される液晶表示装置1は、一般的に、図5に示すとおり、表示面側60を上面にして、第一基材2と第二基材12との間の適切な位置に、フレキシブルプリント回路(FPC)73などの回路を介して、映像情報処理部70に接続される。また同様に、第一基材2と第二基材12との間の適切な位置に、フレキシブルプリント回路(FPC)83などの回路を介して、入力情報処理部80に接続される。またさらに、透過型液晶表示装置の場合には、第二基材12の背面側に面光源装置(バックライト)が設置される(図示せず)。あるいは、液晶表示装置1が反射型液晶表示装置である場合には、面光源装置は用いずに、画素電極にアルミニウムなどの反射板を用いるなど、従来公知の反射型液晶表示装置の態様を適宜採用してもよい。映像情報処理部70および入力情報処理部80は、液晶表示装置1の駆動を制御する制御部と理解することができる。
【0036】
表示側面60は、液晶表示による映像を表示するとともに、タッチパネルの入力面として機能する。一般的には、表示側面60の外周における一定領域が非表示領域62となり、非表示領域62で囲まれる領域が表示領域61となり、タッチパネルセンサが指などの接触または接触に近い状態にあることを感知する領域は、表示領域61と略同等である。
【0037】
映像処理部70は、映像情報に基づき液晶表示(画素表示)を制御するための液晶駆動回路72を含み、該映像情報に基づく映像を表示領域61に表示するよう駆動する。一方、入力情報処理部80は、タッチパネルセンサ駆動回路82を含み、指などの導体が表示領域61に接触あるいは接触に近い状態にある場合に、その位置を特定(検出)し得るよう構成されている。また、入力情報処理部80と映像処理部70とは、接続されており、入力情報処理部80において得られた入力情報を映像情報処理部70に送信し、入力情報に基づいた映像情報を作成し、当該映像情報に基づいた映像を、表示領域に表示することもできる。
【0038】
尚、上述する本発明の第二の特徴である、1つの画素電極を分割してなる2以上の副画素電極について、隣り合う副画素電極に、それぞれ印加される電圧の極性を反転させる極性反転回路は、通常、映像情報処理部70に設けられるが、これに限定されない。画素電極の極性を反転させる回路については、従来公知の技術に従い実施してよく、例えば、特願昭60−211423号、特許第4182100号、特開2002−333870号などに開示されているため、ここでは説明を割愛する。本発明において、特筆すべきは、タッチパネルセンサと、液晶表示パネルとを一体的に形成し、且つ、液晶表示パネルにおける画素電極において、1つの画素電極を2以上の副画素電極に分割し、さらに、1画素電極内における複数の副画素電極に印加される電圧の極性を反転させる点にあり、このように構成することによって、静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置の薄膜化と、薄膜化により発生するタッチパネルセンサの誤作動を防止することができる点にある。また特に、フルカラー表示可能な本発明の静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置においては、色画素電極を1画素単位とし、これを2以上の副画素電極に分割し、1つの色画素電極内において含まれる副画素電極に印加される電圧の極性を反転させることによって信号を平均化させることによって、より小さい領域内において信号の平均化が実現され、好適に低周波ノイズの発生を防止することができる。
【0039】
また、本発明の静電容量方式タッチパネルセンサ付液晶表示装置において、1画素電極を分割して2以上の副画素電極を設け、これらに印加される電圧の極性を反転させる構成以外は、従来公知の液晶表示装置に関する技術、およびタッチパネルセンサに関する技術を適宜選択して採用してよい。例えば、本発明において、図1に示す液晶表示装置1において、第一基材2の液晶層20とは反対側の面、および第二基材12の液晶層20とは反対側の面にそれぞれ偏光板を設けてもよいし、あるいは、上記偏光板を設けずに、着色層8の液晶層20側の面などに、光の位相差(リタデーション)変化に対して光学補償することができる位相差制御機能を有する位相層を設けてもよい。上記位相差層とは、架橋性液晶材料を塗布して所望の方向に配向させ、その状態で液晶材料を架橋させて固定化させて形成することができる。位相差制御機能層については、例えば、特開2007−332265、あるいは特開2007−206307に開示される。
【0040】
また第一基板30側に設けられる、着色層8、BM7、保護層10、液晶駆動用透明電極層11、配向膜18についても、従来公知の材料および製造方法を適宜選択して形成することができる。一方、第二基板40側に形成される各副画素電極、配向膜18についても製造方法および用いられる材料は、従来公知のものであってよい。また第一、第二基材は、透明性のガラス基材、あるいは透明性フィルムなどであってよく、第一、第二基材として、異なる材料より形成される基材を用いてもよい。また各副スイッチング素子としては、アクティブマトリクス方式のスイッチング素子として、薄膜トランジスタ(TFT)、薄膜ダイオード(TFD)などであってよく、TFTには、アモルファス・シリコンや、ポリ(多結晶)シリコンなどが好適に用いられる。加えて、第一基板30および第二基板40の間に設けられる液晶層20を構成する液晶材料についても、液晶表示装置の駆動用液晶材料として用いられ得る公知の材料を適宜使用してよい。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
(第一基板の作製)
第一基板の透明基材として、370mm×470mm、厚み0.5mmのガラス基材(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35)を準備し、超純水を用いて界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄した。尚、上記ガラス基材を用い、静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置が27面取りできるよう設計して以下のとおり作成し、そのうちの任意の一面を実施例1とした。
【0042】
(金属配線の製版)
外周配線部の抵抗を補助する金属配線として、銀パラジウム銅合金を上記ガラス基材全面にスパッタにより800nmの厚さで製膜した。引き続き、ポジ感光性材料(AZマテリアルズ社製)を用い、フォトリソグラフィ手法により、非表示領域に金属配線パターンと電極取り出し部のパターンを焼き付けた。さらにエッチャントとして関東化学製の混酸SEA−5を用い、不要部分を除去し、引き続いて不要となったポジ感光性材料を水酸化カリウム水溶液で剥離して金属配線パターンを形成した。
【0043】
(第一透明電極部の形成)
次に製版された金属配線上に、第一透明電極部を形成するために、銀パラジウム銅合金を用いて、金属配線を設けた側にスパッタにより全面に30nmの厚さでITOを製膜した。そして、金属配線と同様のポジ感光性材料を用いてフォトリソグラフィの手法により、ダイヤ形状が列方向に連続する複数のx電極からなるパターンで第一透明電極部を形成した。このとき、第一透明電極部を表示領域内に形成し、その端部が、非表示領域内に形成される上記金属配線と電気的に接続するようパターニングした。尚、ITOのエッチャントとしては塩化第二鉄水溶液を用いた。
【0044】
(第一誘電体層の製膜)
上述で形成した第一透明電極部を覆って、基材面略全面に透明性硬化性樹脂含有塗工材料(KOLON社製、カタログ番号A−13)を用いて、スピンコート法で塗布し、続いて、フォトリソグラフィ手法により、第一誘電体層を形成した。
【0045】
(第二透明電極部の形成)
さらに上記第一誘電体層上に、第二透明電極部を形成した。第二透明電極部は、第一透明電極部の連結方向と直行する方向においてダイヤ形状を連結して複数の列からなるパターンで形成したこと以外は、第一透明電極部と同様に形成した。尚、本実施例においてガラス基材上に形成する第一透明電極部、第一誘電体層、および第二透明電極部は、図2で示す積層態様を採用した。
【0046】
(第二誘電体層の製膜)
第二誘電体層は、透明性硬化性樹脂含有塗工材料として、十条ケミカル社製、カタログ番号レイキュア4100−3とレイキュア4100−2とを重量比95:5で混合した透明ペーストを用い、スクリーン印刷法により、膜厚み30μmになるよう形成した。
【0047】
(ブラックマトリクスおよび着色層の製膜)
次に上記誘電体層上面に、一般的な液晶表示装置におけるブラックマトリクス(BM)形成手法に倣い、下記BM形成用レジストを用いてBMを形成した。より具体的には、誘電体層上に、下記BM形成用レジストをスピンコート法により塗工し、次いで、乾燥、露光、現像、加熱の一連のプロセスからなるフォトリソグラフィの手法により、格子状のパターンで構成されるBMを形成した。尚、BMは、後述で記載する第二基板に設けられる色画素電極を分割してなる副色画素電極の態様にあわせて、1つのBMの格子内に1つの副色画素電極が対面可能なよう、デザインした。即ち、本実施例では、1つの色画素電極を縦横2×2に分割して4つの副色画素電極を設けることを予定するため、1つの色画素電極を取り囲むBMの格子内をさらに縦横2×2と区分する格子状のBMを形成した。BM層の膜厚みは、1.2μmとした。
【0048】
一般的な液晶表示装置における着色層形成手法に倣い、赤色着色部、緑色着色部、青色着色部が帯状のパターンで順に繰り返される配列となるよう構成される着色層を形成した。尚、各着色部の1本の帯の幅方向は、BMの格子2つ分を覆う幅で形成し、着色層の膜厚みは、2.0μmとした。
【0049】
(遮光画素確定層形成用レジスト)
下記に示すとおり、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合して、遮光画素確定層形成用レジストを調製した。尚、分散機としては、ペイントシェーカーを用いた。
・黒顔料・・・・・14.0重量部 (大日精化工業(株)製TMブラック♯9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部 (ビックケミー(株)製Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部 (昭和高分子(株)製VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部 (サートマー(株)製SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部 (綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部 (2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部 (4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部 (2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部 (エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0050】
続いて、保護層材料として、透明性硬化性樹脂含有塗工材料(KOLON社製、カタログ番号A−13)をスピンコート法により塗布して乾燥させて膜厚み1.5μmの保護層を形成した後、該保護層上に、ITOをスパッタリングして液晶駆動用透明電極層を形成し、配向性樹脂としてポリイミド樹脂を塗布し、乾燥させた後、ラビング処理して配向膜を形成し、これを第一基板とした。尚、第二透明電極部の液晶層側の面から、液晶駆動用透明電極層の液晶層とは反対側の面までの距離は、約33.5μmとした。これにポリイミド樹脂を転写し、焼成後、ラビング処理を施し、第一基板を作製した。
【0051】
(第二基板の作製)
第二基板の透明基材として、370mm×470mm、厚み0.5μmのガラス基材(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35)を準備し、超純水を用いて界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄した。
【0052】
上記ガラス基材上に、1つの色画素電極のサイズを100μm×300μm(スイッッチング素子部を含むサイズ)とし、この領域をさらに縦2×横2に略等分に4分割し、4つの副色画素電極を形成するよう設計した。そして、上記設計に従い、ITOよりなる副色画素電極部と、副色画素電極部ごとに設けられる副スイッチング素子部を、従来公知のアレイ基板プロセスに従い形成した。上記副色画素電極部および副スイッチング素子部全体を覆うようにポリイミド樹脂を塗布し、乾燥させた後、ラビング処理を施して配向膜を形成し、第二基板を作製した。
【0053】
(セル組工程)
上述のとおり作製した第一基板におけるBMで格子状に区画される領域と、第二基板における各副色画素電極とが、互いに対面するよう位置合わせし、基板間に液晶層を形成するための一定の間隔の隙間を確保した状態で、シール材により貼り合わせ、上記隙間に駆動用液晶材料を注入して液晶層を形成し、静電容量式タッチパネル付き液晶表示パネルを得た。
【0054】
次に、フレキシブルプリント回路(FPC)を用い、該FPCの端子と、第一基板の金属配線の端部とを電気的に接続して、FPCを基板にとりつけた。FPCの他端はタッチパネル信号検出回路を備えるタッチパネル制御用プリント基板に接続した。また、第二基板における色画素電極に映像情報を送るために、第二基板にFPCを接続し、且つFPCの他端を、液晶駆動回路(液晶表示専用のマイクロコントローラ)を備える液晶表示用プリント基板に接続した。上記液表表示用プリント基板には、1つの色画素電極領域内に設けられた4つの副色画素電極に関し、隣り合う副色画素電極同士において、互いに印加される電圧の極性を反転させるための極性反転機構を設けた。また、第一基板の透明基材(第一基材)の露出側面および第二基板の透明基材(第二基材)の露出面側に、液晶表示装置用の偏光板を貼り付けた。以上をもって本発明の静電容量式タッチパネル付き液晶表示パネルが完成し、これを実施例1とした。
【0055】
尚、本実施例1では、液晶表示装置を透過する光の偏光機能を発揮させるために、上述のとおり偏光板を用いたが、本発明はこれに限定されない。偏光板を使用する代わりに、例えば、第一基板の透明基材(第一基材)と液晶層との間の任意の位置に、架橋性液晶材料を所定の方向に配向させて固定化してなる位相差層を形成してもよい。
【0056】
ここで、実施例1のタッチパネルセンサ用プリント基板において、表示領域に指などの導体が接触した際の、接触位置の検出回路を示すブロック回路図を図6に示す。即ち、実施例1のタッチパネルセンサにおける接触位置の検出回路は、表示領域において設けられる、列方向に伸長する複数の第一透明電極部(図6中、センサ電極X1、X2、X3・・・と示す)と、行方向に伸長する複数の第二透明電極部(図6中、センサ電極Y1、Y2、Y3・・・と示す)とに接続する切り替え部、基準クロックによって指示される規定時間に基づき、定電流源から各センサへと流れる電流の接続のオン、オフを切り替えるための高速スイッチ、積分用コンデンサ、インパルスノイズを取り除くための低域通過フィルタ、基準電圧と積分用コンデンサの電圧を比較することで積分用コンデンサが基準電圧に達するまでの時間を認識するための比較器、各センサ電極を順次切り替えて、上記積分用コンデンサの電圧の上昇時間を検出することにより、容量の変化しているセンサ電極を検出し、接触位置を算出するためのタッチ検出演算処理部とを有して構成されている。尚、上記検出回路は、本発明における静電容量式タッチパネルセンサの検出回路の一態様であって、何ら本発明を限定するものではない。
【0057】
(比較例1)
格子状のBMの格子のサイズを、1つの色画素電極について分割せずに形成したこと(即ち、実施例1のBMの格子サイズに比べて、縦略2倍、横略2倍の大きさの格子としたこと)、および、各着色部の1本の帯の幅方向は、BMの格子1つ分を覆う幅で形成したこと以外、実施例1に用いた第一基板と同様の基板を作成し、比較例第一基板とした。
【0058】
また、1つの色画素電極のサイズを実施例1と同様に100μm×300μm(スイッチング素子部を含むサイズ)とし、この領域をさらに分割せず、隣り合う色画素電極それぞれに印加される電極を反転させたこと以外は、実施例1に用いた第二基板と同様の基板を作成し、比較例第二基板とした。
【0059】
上述のとおり得た、比較例第一基板におけるBMで区画された着色部と、比較例第二基板における各色画素電極とが、互いに対面するよう位置合わせしたこと以外は、実施例1と同様にセル組工程を実施し、静電容量式タッチパネル付き液晶表示パネルを得て、これを比較例1とした。
【0060】
<信号対雑音比S/Rの測定>
実施例1および比較例1として得た、静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置について、表示領域に導体が接触した際の信号対雑音比(S/R)を測定するために、図7に示す可動式タッチパネル感応検査装置101(以下、単に「検査装置101」ともいう)を作製した。検査装置101は、固定台102の上面に、支持棒104が鉛直方向に起立した状態で、その一端を固定させ、支持棒104に、ばね103を巻きつけるとともに、支持棒104が貫通可能な穴部が2箇所空いた可動台105を準備し、穴部間に導電性治具106を固定し、該穴部に支持棒を貫通させて作成される。可動台105は、ばね103の上端に置かれた状態で、モーターで上下に運動することができるよう構成されている。また導電性治具106は、人間の指に相当する微弱な電流が流れるよう配線されている。
【0061】
ここで、固定台102上に静電容量式タッチパネル付き液晶表示装置107を、表示領域を上面側にして設置し、可動台105を下方に移動させて導電性治具106の先端を表示領域面に接触させると、タッチパネルセンサが接触を信号として感知し、信号強度が増大する。即ち、縦軸に信号強度、横軸に時間をとり、タッチパネルが感知する信号の変化をグラフに表わすと、図8に示すとおり、導電性治具106の接触前の感知信号強度の平均値s1と、導電性治具106接触時の感知信号強度の平均値s2との差Sと、導電性治具106接触時における感知信号の最大振幅Nとの比率S/Nを求めることにより、タッチパネルセンサが感知する信号が、主として導電性治具106体の接触にのみ基づいた信号であるか、同時にノイズを拾っているかを判断することができる。
【0062】
上述に従い、検査装置101に、実施例1を、表示側領域を上面にして設置し、可動台105を下方に移動させて、導電性治具106の先端を表示領域の面に接触させたときのS/Nを求めた。尚、本実施例では、第一基板に接続されたタッチパネルセンサ用プリント基板を、さらにパソコンに接続し、タッチパネルセンサが感知する信号強度をモニタし、解析した。サンプリング周波数を100Hzとして、上記測定を10秒間にわたり5回実施して、求められたS/Nの平均値は、5.2であった。
【0063】
実施例1と同様に、比較例1においてもS/Nを5測定し、平均値を求めたところ3.1であった。
【0064】
上述の結果から、実施例1では、明らかに、導電性治具106が表示側領域に接触している時における信号強度の振れ幅が比較例1よりも小さく、比較例1では、導体の接触時に感知された信号以外にも有意にノイズを拾っていることが確認された。実施例1と比較例1とでは、実施例1が、1つの色画素電極を4つに分割して副色画素電極を設け、1つの色画素電極内における4つの副色画素電極間で電圧の極性を反転させたのに対し、比較例1が、色画素電極の分割をせずに、隣り合う色画素電極の極性を反転させたこと以外に、相違しないことから、実施例1の上記構成が、液晶表示に関する電極において発生するノイズを低減させ、結果として、タッチパネルセンサが感知するノイズを低減することができたと思われる。
【符号の説明】
【0065】
1:静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置、2:第一基材、3:第一透明電極部、4:第二透明電極部、5:取出し電極、6:第一誘電体層、7:ブラックマトリクス(BM)、8:着色層、8R:赤色着色部、8G:緑色着色部、8B:青色着色部、9:第二誘電体層、10:保護層、11:液晶駆動用透明電極層、12:第二基材、13R:赤色副画素電極用副スイッチング素子(R副スイッチング素子)、13G:緑色副画素電極用副スイッチング素子(G副スイッチング素子)、13B:青色副画素電極用副スイッチング素子(B副スイッチング素子)、14R:赤色副画素電極(R副画素電極)、14G:緑色副画素電極(G副画素電極)、14B:青色副画素電極(B副画素電極)、15:赤色画素電極(R画素電極)、16:緑色画素電極(G画素電極)、17:青色画素電極(B画素電極)、18:配向膜、19:シール部、20:液晶層、30:第一基板(表示側基板)、40:第二基板(対向基板)、60:表示側面、61:表示領域、62:非表示領域、70:映像情報処理部、71:液晶表示用プリント基板、72:液晶駆動回路、73:フレキシブルプリント回路(FPC)、74:信号側駆動回路、75:走査側駆動回路、80:入力情報処理部、81:タッチパネルセンサ用プリント基板、82:タッチパネルセンサ駆動回路、83:フレキシブルプリント回路(FPC)、101:可動式タッチパネル感応検査装置、102:固定台、103:ばね、104:支持棒、105:可動台、106:導電性治具、107:静電容量式タッチパネル付き液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量式タッチパネルセンサを備える液晶表示装置であって、
第一基材と、上記第一基材上に該第一基材側から第一透明電極部、第一誘電体層、第二透明電極部を備える静電容量式タッチパネルセンサと、上記タッチパネルセンサ上に第二誘電体層を介して設けられる液晶駆動用透明電極層とを備える第一基板、
第二基材と、上記第二基材上に直接または間接に形成される画素電極部とを備える第二基板、および
上記第一基板と上記第二基板との間に配置される液晶層を有しており、
上記画素電極部は、複数の画素電極と、該複数の画素電極それぞれに設けられるスイッチング素子を備えるアクティブマトリクス方式の画素電極部であって、1つの画素電極が2つ以上の副画素電極に分割されており、複数の副画素電極のそれぞれに副スイッチング素子が設けられており、
1つの画素電極内において、隣り合う副画素電極に印加される電圧の極性が反転することを特徴とする静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置。
【請求項2】
静電容量式タッチパネルセンサを備える液晶表示装置であって、
第一基材と、上記第一基材上に該第一基材側から第一透明電極部、第一誘電体層、第二透明電極部を備える静電容量式タッチパネルセンサと、上記タッチパネルセンサ上に第二誘電体層を介して設けられる2色以上の着色部が繰り返し整列してなる着色層と、液晶駆動用透明電極層とを備える第一基板、
第二基材と、上記第二基材上に直接または間接に形成される画素電極部とを備える第二基板、および
上記第一基板と上記第二基板との間に配置される液晶層を有しており、
上記画素電極部は、1色の色画素電極を1画素単位として、複数の色画素電極と、該複数の色画素電極それぞれに設けられるスイッチング素子を備えるアクティブマトリクス方式の画素電極部であって、1つの色画素電極が2つ以上の副色画素電極に分割されており、複数の副色画素電極のそれぞれに副スイッチング素子が設けられており、
1色の色画素電極内において、隣り合う副色画素電極に印加される電圧の極性が反転することを特徴とする静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置。
【請求項3】
上記画素電極が偶数の副画素電極に分割され、または、上記色画素電極が偶数の副色画素電極に分割されていることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式タッチパネルセンサ付き液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−257655(P2011−257655A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133345(P2010−133345)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】