説明

静電容量方式ペン

【課題】ユーザがペンの接触点を見ることができ、タッチパネルの面に対するペン本体の角度を自由に取ることが可能であり、細かい文字を書くことが容易であるような、静電容量方式ペンを提供すること。
【解決手段】導電性のペン本体の先端部に連接し電気的に導通された、最小包含円の直径が3mm以上パネル接触部を備え、パネル接触部の中心付近を透明又は中空にする。パネル接触部を最小包含円柱の直径が1mm以下であるような棒状体を介してペンの先端部に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを備えた電子機器の操作に用いられる静電容量方式ペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末、PDA、タブレットPC等、タッチパネルを備えた電子機器は広く普及している。タッチパネルの操作は、人間の指によって行うこともできるが、文字を書く場合などはペンを用いる方が使い易い。タッチパネルには静電容量式のものが広く用いられ始めた。静電容量式タッチパネルの操作に用いるペンには、人間の指が持つのと同様の導電性が必要である。かかる導電性のデバイスとして、静電容量方式ペンが用いられる。
静電容量式タッチパネルは一定面積以上の区域に静電容量の変化が生じたことを感知して動作するため、静電容量方式ペンのタッチパネルに接触する部分には3mm程度以上の幅が必要である。従来の静電容量方式ペンは、ペンの先端部を太くしてこの幅を確保していたため、以下の問題があった。(1)ペンの先端部が画面を覆ってしまい、ユーザはペンの接触点(タッチパネルが接触点と認識する箇所)を見ることができない。このため、微細な座標を指定する(ペンを接触させる)場合には正確な指定が困難である。(2)タッチパネルの面に対してペン本体をほぼ垂直に向ける必要があり、使いづらい。
【0003】
特許文献1には、ペン本体とジョイントを介して連接された導電板をタッチパネルに接面させる静電容量方式ペンが開示されている。かかる静電容量方式ペンは、タッチパネルの面に対するペン本体の角度を自由に取ることができ、上記(2)の問題を解決している。しかし、導電板が画面を覆ってしまうのでユーザがペンの接触点を見ることができないことは従来の静電容量方式ペンと同様である。上記(1)の問題が解決されない。
【0004】
非特許文献1には、透明な導電版をタッチパネルに接面させる静電容量方式ペンが開示されている。かかる静電容量方式ペンによれば、ユーザがペンの接触点を見ることができる。上記(1)の問題を解決している。しかし、上記(2)の問題については、導電版をペン本体に対して斜めに設けることで緩和しているが解決していない。
更に、非特許文献1の静電容量方式ペンは、ユーザがペンの接触点を見ることができるようにするため、すなわちペン本体が接触点を覆うことを防止するため、導電版の中心部でなく周縁部がペン本体と接続されている。このため、通常のペン(ボールペン、シャープペンシル等)を用いて紙に文字を書く時のようなペン本体と接続されたペン先で文字を書くという感覚で文字を書くことができない。すなわち、以下の問題が発生している。(3)文字を書く場合に、書きづらい。特に画数の多い細かい文字を書くことが困難である。
【0005】
以上のとおり、上記(1)、(2)の問題を共に解決するような静電容量方式ペンは知られていなかった。更に、上記(3)の問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−199571号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Transparent Capacitive Touch Panel Stylus:http://www.degi.com.tw
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、ユーザがペンの接触点を見ることができ、タッチパネルの面に対するペン本体の角度を自由に取ることが可能であり、細かい文字を書くことが容易であるような、静電容量方式ペンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の静電容量方式ペンは、
先端部にパイプを備えた導電性のペン本体と、
タッチパネルと接触する平面部分(接触平面)を含む板状体と前記板状体の接触平面とは反対側に突起した棒状体とから成るパネル接触部とを備え、
前記板状体と前記棒状体とは角度可変に接合され、
前記板状体と前記棒状体とが接合する部分(接合箇所)は前記接触平面のうちの導電性の部分(接触導電面)の重心点の周辺にあり、
前記棒状体が前記パイプに嵌入されることにより前記ペン本体と前記接触導電面とが電気的に導通され、
前記棒状体が前記パイプから取外されることにより前記ペン本体とパネル接触部とが分離され、
前記接触導電面の最小包含円の直径が3mm以上であり、
前記棒状体の最小包含円柱の直径が1mm以下であり、
前記接合箇所の周辺においては前記パネル接触部のペン本体側からタッチパネルを視認可能であることを特徴とする。
【0010】
接触導電面がタッチパネルに接触することで、操作を行う。接触導電面の最小包含円の直径が3mm以上なので、接触導電面は最小でも3mmの幅を有し、その接触によりタッチパネルは静電容量の変化が生じたことを感知する。ここで、「最小包含円」とは、タッチパネルの表面において接触導電面との接点の全てを包含するような円のうちで直径が最小のものを言う。
ペンの接触点の厳密な座標はタッチパネルに依存して変動し得るが、どのタッチパネルにおいても接触導電面の重心点付近である。ペン本体の先端部に嵌入される棒状体の先端(接合箇所)が接触導電面の重心点の周辺にあるので、ユーザはペン本体と接続されたペン先(接合箇所)で文字を書くという感覚を得ることができる。また、棒状体の最小包含円柱の直径がシャープペンシルの芯やボールペンのインク排出部の太さと同様に1mm以下であるので、ユーザは十分に細いペン先で文字を書くという感覚を得ることができる。以上により上記(3)の問題を解決している。
また、接合箇所の周囲においてはペン本体側からタッチパネルを視認可能であるので、上記(1)の問題を解決している。ここで、「周辺」とは接触点の座標としてタッチパネルに依存して変動し得る範囲の近傍を言う。
また、板状体と棒状体とは角度可変に接合されるので、上記(2)の問題を解決している。なお、下記実施例に示すとおり、角度可変に接合することは各種の方法により可能である。
【0011】
パネル接触部は、使用中に破損してしまい易い。ペン本体と分離可能であれば、パネル接触部が破損してしまった場合にはパネル接触部を交換してペン本体を引き続き使用することができる。
【0012】
本発明の静電容量方式ペンのパネル接触部は、以下を含むさまざまな構成が可能である。
前記接触導電面が2つの同心円の間にある金属板であり、前記金属板と前記同心円の中心を結ぶ2本以上の導電性のワイヤが前記同心円の中心において束ねられ、更に延長されて前記棒状体を構成する。
前記板状体と前記棒状体とが透明な導電性ゴムにより一体成形されたものである。
前記板状体がその全部又は一部に伝導膜の加工を施した透明な樹脂であり、該伝道幕の加工を施した部分が前記接触導電面である。
【0013】
本発明の静電容量方式ペンは、
前記パイプを押出/引入するノック機構を前記ペン本体に備えたことを特徴とする。
パイプ及び棒状体は細くて破損しやすいので、非使用時にはノック機能を用いてペン本体内に格納しておくことが好ましい。パイプを格納した状態でも板状体は格納されず、ペン先が太いかのような感じではあるが静電容量方式ペンを用いての操作は可能である。通常はパイプを格納した状態で使用し、細かい文字を書く時のみにパイプを露出して使用するという使用法も考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の静電容量方式ペンによれば、ユーザがペンの接触点を見て微細な座標を正確に指定することができ、タッチパネルの面に対するペン本体の角度を自由に取ることができ、容易に細かい文字を書くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、静電容量方式ペンを示す図である。(実施例1)
【図2】図2は、静電容量方式ペンの断面図である。(実施例1)
【図3】図3は、パネル接触部を示す図である。(実施例1)
【図4】図4は、静電容量方式ペンの使用状態を示す図である。(実施例1)
【図5】図5は、パネル接触部を示す図である。(実施例2)
【図6】図6は、パネル接触部を示す図である。(実施例3)
【図7】図7は、パネル接触部を示す図である。(実施例4)
【図8】図8は、静電容量方式ペンを示す図である。(実施例5)
【図9】図9は、静電容量方式ペンの使用状態を示す図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を用いた静電容量方式ペンの実施例を示す。
【実施例1】
【0017】
図1は、静電容量方式ペンを示す図である。ペン本体1に電気的に導通された板状体2に設けられた接触導電面がタッチパネルの面に触れることにより、静電容量方式ペンとして機能する。板状体2は、透明な導電性樹脂である。
図2は、静電容量方式ペンの断面図である。パイプ5に棒状体3が嵌入されている。棒状体3は、板状体2と角度可変に接合されている。板状体2と棒状体3とがパネル接触部を構成する。なお、棒状体3の太さは1mm以下である。
棒状体3をパイプ5から取外すことができる。取外した場合、パネル接触部はペン本体1から分離される。
【0018】
図3は、パネル接触部を示す図である。棒状体3は4本のワイヤを束ねたものであり、ワイヤの先が板状部2に透明なテープで接着されている。ワイヤの屈曲により、棒状体3と板状体2とのなす角度は可変になる。
板状体2は、透明な導電性樹脂であり、棒状体3と反対側の面(図の下側の面)は平面である。この平面が接触導電面となる。接触導電面は、板状体2、棒状体3、パイプ5を介してペン本体1と電気的に導通されている。
【0019】
図4は、静電容量方式ペンの使用状態を示す図である。図に示すように、タッチパネル50に表示された文字を、透明な板状体2を超して読み取ることができる。
【0020】
この実施例の静電容量方式ペンによれば、ユーザがペンの接触点を見て微細な座標を正確に指定することができ、タッチパネルの面に対するペン本体の角度を自由に取ることができ、容易に細かい文字を書くことが可能となる。
また、パネル接触部が破損してしまった場合にはパネル接触部を交換してペン本体を引き続き使用することができる。
【実施例2】
【0021】
本実施例2から実施例4までは、パネル接触部に係るものである。パネル接触部以外は実施例1と同様である。
【0022】
図5は、パネル接触部を示す図である。図(a)はパネル接触部を表す斜視図、図(b)はパネル接触部2の接触平面(図(a)の下側の面)を表す図である。
接触導電面7は、図(b)においてハッチングを施した部分であり、2つの同心円の間にある金属板である。図(b)においてハッチングを施した部分以外の部分は中空である。
中空部分には導電性のワイヤ8が張られている。4本のワイヤ8は、同心円の中心において束ねられ、更に延長されて棒状体3を構成する。金属板及びワイヤが板状部2を構成する。
図(b)に基づいて説明すると、接触導電面7の重心点は同心円の中心である。ここでワイヤが束ねられて接合箇所6となる。接合箇所6においては、図(a)のように棒状体3が接合している。ワイヤの屈曲により、棒状体3と板状体2とのなす角度は可変になる。
ワイヤを除いて中空であるので、接合箇所6の周辺において、ペン本体側からタッチパネルを視認可能である。
【実施例3】
【0023】
図6は、パネル接触部を示す図である。図(a)はパネル接触部を表す斜視図、図(b)はパネル接触部2の接触平面(図(a)の下側の面)を表す図である。
板状体2と棒状体3とは、透明な導電性ゴムにより一体成形されたものである。
接触導電面7は、図(b)においてハッチングを施したとおり、接触平面全体となり、その重心点は円の中心である。ここに棒状部3が接合して接合箇所6となる。
材質がゴムなので、棒状体3と板状体2とのなす角度は可変になる。板状体2は透明なので、接合箇所6の周辺において、ペン本体側からタッチパネルを視認可能である。
【実施例4】
【0024】
図7は、パネル接触部を示す図である。図(a)はパネル接触部を表す斜視図、図(b)はパネル接触部2の接触平面(図(a)の下側の面)を表す図である。
板状体2は導電性のない透明な樹脂である。接触平面の、図に星型で表された部分には伝導膜の加工が施されており、図の星型と中央部を結ぶ直線の部分にも伝導膜の加工が施されている。
図(b)に基づいて説明すると、接触導電面7は星型及び直線の部分であり、全体としての重心点は円の中心である。
棒状体3は実施例1と同様に4本のワイヤである。ワイヤは円の中心付近において直線状に施された伝導膜に導通するように板状体に埋め込まれている。ワイヤの屈曲により、棒状体3と板状体2とのなす角度は可変になる。
板状体2は透明なので、接合箇所6の周辺において、ペン本体側からタッチパネルを視認可能である。
【実施例5】
【0025】
本実施例は、ノック機構に係るものである。
図8は、静電容量方式ペンを示す図である。ペン本体1は、ノック機構を備えている。ノック10を押すことによりパイプ5が押出/引入され、ノック10を押す都度に図の(a)及び(b)の状態に交互に遷移する。
【0026】
図9は、静電容量方式ペンの使用状態を示す図である。パイプ5が押出された状態(図の(a))、引入られた状態(図の(b))のいずれの状態でも静電容量方式ペンとして機能する。(a)の状態は細かい文字を書くのに適し、(b)の状態はパイプ5及び棒状体3を保護しつつ静電容量方式ペンを使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
ユーザがペンの接触点を見て微細な座標を正確に指定することができ、タッチパネルの面に対するペン本体の角度を自由に取ることができ、容易に細かい文字を書くことが可能となる静電容量ペンであり、携帯電話端末のユーザ等による利用が期待される。
【符号の説明】
【0028】
1 ペン本体
2 板状体
3 棒状体
4 胴部
5 パイプ
6 接合箇所
7 接触導電面
8 ワイヤ
10 ノック

50 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にパイプを備えた導電性のペン本体と、
タッチパネルと接触する平面部分(接触平面)を含む板状体と前記板状体の接触平面とは反対側に突起した棒状体とから成るパネル接触部とを備え、
前記板状体と前記棒状体とは角度可変に接合され、
前記板状体と前記棒状体とが接合する部分(接合箇所)は前記接触平面のうちの導電性の部分(接触導電面)の重心点の周辺にあり、
前記棒状体が前記パイプに嵌入されることにより前記ペン本体と前記接触導電面とが電気的に導通され、
前記棒状体が前記パイプから取外されることにより前記ペン本体とパネル接触部とが分離され、
前記接触導電面の最小包含円の直径が3mm以上であり、
前記棒状体の最小包含円柱の直径が1mm以下であり、
前記接合箇所の周辺においては前記パネル接触部のペン本体側からタッチパネルを視認可能であることを特徴とする、静電容量方式ペン。
【請求項2】
前記接触導電面が2つの同心円の間にある金属板であり、
前記金属板と前記同心円の中心を結ぶ2本以上の導電性のワイヤが前記同心円の中心において束ねられ、更に延長されて前記棒状体を構成することを特徴とする、請求項1に記載の静電容量方式ペン。
【請求項3】
前記板状体と前記棒状体とが透明な導電性ゴムにより一体成形されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量方式ペン。
【請求項4】
前記板状体がその全部又は一部に伝導膜の加工を施した透明な樹脂であり、該伝道幕の加工を施した部分が前記接触導電面であることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量方式ペン。
【請求項5】
前記パイプを押出/引入するノック機構を前記ペン本体に備えたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電容量方式ペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−242903(P2011−242903A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112759(P2010−112759)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(707002097)
【Fターム(参考)】