説明

静電散逸セラミック素子及びエレクトロニクス素子等の製造方法

本発明の特徴は、表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□である安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む静電散逸セラミック素子に見いだすことができる。安定化ジルコニアは、60〜95重量%の量で存在できる。本発明のさらに別の特徴は、安定化ジルコニアと、抵抗率変更剤と、散乱材料とを含む静電散逸セラミック材料に見いだすことができる。安定化ジルコニアは、セラミック材料の60〜95重量%の量で存在できる。抵抗率変更剤は、5〜30重量%の量で存在できる。散乱材料は、静電散逸セラミック材料の少なくとも2容積%を占めることができる。この素子は、ハード・ドライブなどのエレクトロニクス素子の製造に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、静電荷を安全に放電するための静電放電散逸特性を有するセラミック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
技術がますます発達している時代にあって、静電放電は損害をもたらしたり危険だったりする可能性がある。静電放電(ESD)は、可燃性材料を点火させたり、エレクトロニクス素子(部品)に損傷を与えたり、クリーンな環境中で汚染物質を引き付けたり、物質同士を互いにくっつけたりする可能性がある。こうしたことの損害額は非常に大きくなる可能性がある。
【0003】
静電荷は、摩擦電気プロセスを通じて蓄積される可能性がある。摩擦電気プロセスでは、互いに接触している表面にはそれぞれ反対の電荷が生じる。このような表面が離れると、電荷の差が残る。また、磁場その他の影響によっても電荷が蓄積する可能性がある。
【0004】
敏感なエレクトロニクス製品の損傷は、こうした静電荷が放電されるときに発生する可能性がある。静電放電により、半導体デバイスの電気特性が変化し、劣化したり破壊されたりする可能性がある。静電放電により、エレクトロニクス・システムの動作がおかしくなり、装置の動作不良や故障につながる可能性もある。クリーン・ルーム環境における帯電した表面は、汚染物質を引き付けて保持することができるため、その環境からその汚染物質を除去することは難しい。静電荷は、シリコン・ウエハやエレクトロニクス回路の表面に汚染物質を引き付ける可能性もある。こうした汚染物質は、ランダムな欠陥を引き起こし、製品の歩留まりを低下させる可能性がある。静電荷は、織物製造プロセスや可燃性粉末製造プロセスにおいて危険である可能性もある。
【0005】
ESDによって損傷した製品の損害は多大な額に上る可能性がある。ある見積もりによると、エレクトロニクス産業に対するESDによる損傷の金額は、毎年何10億ドルにもなる。それに付随する修理、再製作、輸送、労働、諸経費のコストも含めると、ESDによる損害は非常に大きい。
【0006】
ESDの制御は、エレクトロニクス産業において特に重要であるが、この産業は比較的要求が厳しいため、高密度で強度があるESDに安全な材料であって、自動化されたさまざまなエレクトロニクス素子製造プロセスの要求を良好に満足させるものを必要としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の事実に鑑みて、一般に、要求の厳しい用途(例えばエレクトロニクス産業)での使用に適した特性を持つ、改善された静電放電散逸材料を提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□である安定化ジルコニア・ベースと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む静電散逸セラミック素子(コンポーネント)に見いだすことができる。安定化ジルコニアは、60〜95重量%の量で存在できる。
【0009】
本発明のさらに別の特徴は、安定化ジルコニアと、抵抗率変更剤と、散乱材料とを含む静電散逸セラミック材料に見いだすことができる。安定化ジルコニアは、セラミック材料の60〜95重量%の量で存在できる。抵抗率変更剤は、5〜30重量%の量で存在でき、また、散乱材料は、静電散逸セラミック材料の少なくとも2容積%を占めることができる。
【0010】
本発明のさらに別の特徴は、エレクトロニクス素子の製造方法に見いだすことができる。この方法は、エレクトロニクス素子を支持するための支持装置を用意することと、そのエレクトロニクス素子を加工することとを含んでいる。支持装置は、60〜95重量%の安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む。支持装置の表面抵抗率は、1×105〜1×1012Ω/□であり得る。
【0011】
本発明の特徴は、ハード・ドライブの製造方法にも見いだすことができる。この方法は、ハード・ドライブ素子を支持するための支持体を用意することと、そのハード・ドライブ素子を加工することとを含んでいる。支持体は、60〜95重量%の安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む静電散逸セラミック材料を有している。この静電散逸セラミック材料の表面抵抗率は、1×105〜1×1012Ω/□である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、添付の図面を参照することによってより良好に理解でき、また、多くの目的、特徴、利点が当業者により明らかとなるであろう。なお、図面中、同じ参照記号は同様のものまたは同じものを表わす。
【0013】
本発明の一実施態様によると、安定化ジルコニア・ベースと散乱材料を含む静電散逸セラミック素子が提供される。安定化ジルコニア・ベースは、素子の60〜95重量%を占めており、散乱材料は、素子の少なくとも2容積%を占めている。この素子は、抵抗率変更剤も含むことができる。この静電散逸セラミック素子は、表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□であり、1×104〜1×1011Ωcmの体積抵抗率を有することができる。
【0014】
安定化ジルコニアは、2.6モル%〜10モル%の安定化金属酸化物を用いて安定化させることができる。安定化金属酸化物としては、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、希土類の酸化物、例えばランタン、セリウム、スカンジウム、ネオジミウム、イッテルビウム、エルビウム、ガドリニウム、サマリウム及びジスプロシウムの酸化物、アルカリ土類の酸化物、例えばマグネシア、カルシアなどがある。さらに詳しく述べると、酸化イットリウムを2〜10モル%の割合で使用することができる。その量は、場合によっては2.5〜4.5モル%であり、特別な場合には、なかんずく、2.6、2.8、3.0モル%である。イットリアで一部を安定化させたジルコニア(Y-PSZ)は、正方晶系構造になったジルコニア部分による優れた力学特性を有する。この力学特性は、構造機能を担うのに用いても利点があるため、ESDに安全な材料において有利である。
【0015】
一実施態様では、散乱材料は、薄い色であり、屈折率が小さく、難しいセラミック加工に対して安定性がある。散乱材料は、セラミック加工を実施する条件下では、セラミック・ベースやあらゆる抵抗低下材料と実質的に反応してはならない。そのような散乱材料としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、アルミン酸亜鉛、アルミン酸マグネシウム、安定なリン酸塩、例えばリン酸イットリウム、安定なケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム、安定なアルミノケイ酸塩、例えばアルミノケイ酸ベリリウム、そして安定なフッ化物、例えばフッ化カルシウムなどが挙げられる。これらの材料は、焼結させる混合物にそのままの状態で添加することができ、さもなければ、これらの材料の構成成分を添加し、その場で反応させることもできる。例えばアルミナと酸化亜鉛の混合物をジルコニアに添加すると、焼結の間にアルミン酸亜鉛が生成するであろう。
【0016】
散乱材料の屈折率は、ベースであるセラミック材料の屈折率とは実質的に異なることができる。屈折率は、少なくとも0.25異なることができる。しかし、屈折率は、0.3、0.5、あるいはそれ以上異なっていてもよい。例えばYAG、アルミン酸亜鉛、そしてアルミン酸マグネシウムの屈折率は、それぞれ、1.83、1.879、1.72である。これらの屈折率はどれも、ジルコニアの屈折率(2.2)とは少なくとも0.25だけ異なっている。具体的な散乱材料の屈折率を以下の表に列挙する。
【0017】
【表1】

【0018】
散乱材料はまた、ベースのセラミック材料および任意の抵抗率変更剤との反応性を実質的に有しないことができ、また、セラミックの処理温度よりも高い融点を有することができる。例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)は、イットリアで安定化させたジルコニアと酸化亜鉛が3%存在しているとき、例えば1200℃又は1400℃という高温条件下で安定である。他方で、例えば酸化アルミニウムのような散乱材料は、この条件下で酸化亜鉛と反応してアルミン酸亜鉛を形成することができる。このように、好ましい散乱材料は、ベース材料、抵抗率変更剤、加工条件に応じて変更可能である。
【0019】
散乱材料の粒径は、材料の有効性に影響を与える可能性がある。大きな粒径は、光を散乱させる上で有効性がより小さく、小さな粒径も散乱の際の有効性がより小さい可能性がある。散乱材料は、粒径が50nm〜5μmのときに最も有効であり得る。粒径はまた、0.2μm〜2μmであってもよい。
【0020】
素子の一例として、可視スペクトルの特定の領域で比較的拡散反射率が大きな薄色の素子をあげることが可能である。この素子は、CIE 1976L*a*b*スケールに基づく明度L*が50を超えることができる。明度L*は、75または80を超えてもよい。この素子は、可視スペクトルの青と緑の領域で拡散反射率が他の領域よりも大きくなっていてもよい。例えば拡散反射率は、450nmで20%を超えることができる。
【0021】
素子の一例として、比較的緻密で強度が大きなものも可能である。相対密度は、理論密度の95%を超えることができる。例えば相対密度は、理論密度の98、99又は99.5%よりも小さくない値が可能である。強度は、3mm×4mm×50mmの棒(バー)での四点曲げ試験に基づき、少なくとも600MPaであることができる。例えば強度は、700MPa、800MPa、900MPa、または1100MPa超であることができる。
【0022】
ジルコニア単独では抵抗率が大きすぎ、静電気を蓄積させて電荷を放電する際の安全性を低下させる傾向がある。添加物を利用すると、抵抗率を小さくできる。用途に応じ、好ましい抵抗率は、1×105〜1×1012Ω/□(表面抵抗率)の範囲、そして1×104〜1×1011Ωcm(体積抵抗率)の範囲で変えることができる。添加物は、ベース組成物中で独立した第2の相を形成するような導電性または半導性の離散粒子相から形成される。抵抗率変更剤は、なかんずく、例えば金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属オキシカーバイド、金属オキシナイトライド、金属オキシカーボナイトライドのような材料を含むことができる。ベース材料と抵抗率変更剤添加物のさまざまな組み合わせを以下の表に記載する。異なる抵抗率変更剤、またはさまざまな抵抗率変更剤とベース材料の組み合わせは、材料の抵抗率に異なる影響を与えることができる。さらに、さまざまな材料とその組み合わせは、所定の波長における拡散反射率や色の明度に異なる影響を与えることができる。例えば酸化亜鉛(ZnO)は、ジルコニアをベースとした材料の添加物として特に有効である。しかしZnOは、別のベース材料、例えばアルミナとは同じ挙動を示さない可能性があるか、さもなければ、別のベース材料と反応する可能性がある。
【0023】
【表2】

【0024】
さまざまな具体的な実施態様において、抵抗率変更剤を10〜40容積%の量で添加することができる。例えばY-PSZに対して酸化亜鉛を15〜35容積%の量で添加することができる。別の例では、LaMNO3を20〜30容積%の量で添加することができ、LaCrO3は10〜40容積%の量で添加することができ、ZrCは10〜25容積%の量で添加することができ、BaO・6Fe2O3は約25容積%の量で添加することができる。イットリアで安定化して強靭化したジルコニア多結晶(Y-TZP)をベース材料とする一実施態様では、酸化スズと酸化亜鉛が好ましい。というのも、これらの化合物はより安価であり、より毒性が少なく、色がより明るいからである。
【0025】
特別な一実施態様では、静電散逸セラミック素子は、70〜85重量%の安定化ジルコニアと、15〜25重量%の酸化亜鉛と、2容積%を超えるYAGとを含むことができる。
【0026】
別の特別な一実施態様では、静電散逸セラミック材料は、60〜95重量%の安定化ジルコニアと、5〜30重量%の抵抗率変更剤と、少なくとも2容積%の散乱材料とを含むことができる。例えば抵抗率変更剤のタイプ、抵抗率変更剤の量、加工条件のような条件に応じ、材料の表面抵抗率は、1×105〜1×1012Ω/□であることができる。体積抵抗率は、1×104〜1×1011Ωcmであることができる。この材料は、CIE 1976L*a*b*スケールに基づく明度L*50を有することができる。この材料の拡散反射率は、450nmで20%を超えることも可能である。この材料の相対密度は、95、98、99%よりも大であることができる。
【0027】
別の例示的な一実施態様では、セラミック材料は、60〜95重量%のジルコニアと、散乱材料とを含むことができる。表面抵抗率は1×105〜1×1012Ω/□であり得る。散乱材料の屈折率は、ジルコニアの屈折率と少なくとも0.25だけ異なっていてよい。体積抵抗率は、1×104〜1×1011Ωcmであり得る。この静電散逸セラミック材料は、50よりも大きな明度L*を有することができ、450nmでの拡散反射率は20%よりも大である。また、この材料の密度は、98%を超えることが可能である。
【0028】
別の例の静電散逸セラミック材料は、表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□であり、相対密度が少なくとも98%であり、そしてセラミック・ベースと、0.2〜10重量%の散乱材料とを含んでいる。散乱材料としては、なかんずく、YAG、アルミン酸亜鉛、アルミン酸マグネシウム、リン酸イットリウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ベリリウム又はフッ化カルシウムをあげることが可能である。散乱材料としては、特に、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩又はフッ化物をあげることが可能である。
【0029】
本発明の1つの面によると、特定の部品、例えばツール、キャリア及びパーツは、ESD安全の、すなわち静電散逸性の材料でできている。十分に強靭でありかつ機械的に丈夫なESDに安全な材料は、緻密であるか、空隙が少ない傾向がある。本発明により、例えば、色がより明るくて緻密なセラミックスを得ることができる。この産業において、多くのプロセスが視覚システムを利用して自動化されている。視覚システムは、パーツの位置を有効に決めるのに材料同士のコントラストに頼ることがしばしばある。パーツ、ツール、自動化メカニズム、加工表面の間のコントラストが大きいと、自動化されたシステムの動作を向上させることができる。例えば磁気記録ヘッドの色は実質的に黒色である。薄色のESD散逸ツールを利用すると、光学的認知と視覚システムの性能を向上させることができる。
【0030】
本発明の別の面は、エレクトロニクス素子の製造方法に見ることができる。この方法は、エレクトロニクス素子を支持するための支持装置(サポート)を用意することと、そのエレクトロニクス素子を加工することとを含んでいる。支持装置は、60〜95重量%の安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含んでいる。支持装置の表面抵抗率は、1×105〜1×1012Ω/□であり得る。
【0031】
支持装置は、ジグ、ツール、キャリア、または他の製造部品であることができる。一例を示すと、エレクトロニクス素子は、磁気抵抗ヘッドである。処理には、磁気抵抗ヘッドを支持する面のラッピングまたは機械加工を含むことができる。
【0032】
本発明の一面は、ハード・ドライブの製造方法にも見ることができる。この方法は、ハード・ドライブ素子を支持するための支持体を用意することと、そのハード・ドライブ素子を処理することとを含んでいる。支持体は、65〜90重量%の安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む静電散逸材料を有している。この静電散逸材料は、表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□である。
【0033】
ハード・ドライブ素子としては、例えば磁気抵抗ヘッドをあげることが可能である。処理としては、ラッピング、機械加工、ピック・アンド・プレイスプロセスなどを含むことが可能である。支持体は、ジグであってもよい。
【実施例】
【0034】
実施例1
3モル%の酸化イットリウムで安定化させたジルコニアと、酸化亜鉛と、イットリウム・アルミニウム・ガーネットのそれぞれの粉末を、それぞれ、70重量%、17.5重量%、12.5重量%の比率で混合した。82%の安定化ジルコニアと、18%の酸化亜鉛とからなる対照も調製した。対照とサンプルをプレスしてペレットにし、1時間にわたって1400℃で焼成し、アルゴン中で1350℃にて45分間にわたって200MPaで熱間圧縮した。このプロセスにより、相対密度が98%を超えるサンプルと対照が得られた。次に、表面抵抗が2MWを超えるまで、サンプルを空気中で650℃にてアニールした。表面抵抗は、プロスタット社(ベンソンヴィル、イリノイ州)のPRF-912表面抵抗プローブを用いて測定した。結果を以下の表に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
ハンター・アソシエイツ・ラボラトリー社(レストン、ヴァージニア州)のミニスキャンXEプラス分光器を用い、サンプルと対照からの拡散反射率を測定した。図1に示すように、サンプルS1からの拡散反射率は、平均として、対照材料からの拡散反射率よりも大きい。特にスペクトルの青側端部では、サンプルからの拡散反射率は対照材料からの拡散反射率よりも顕著に大きい。CIEによるL*、a*、b*の値を以下の表に示す。L*の測定値は明度を示しており、0〜100の間で変化する。100は白色であり、1は黒色である。a*の測定値は、プラスのときは赤く、マイナスのときは緑であることを示している。b*の測定値は、プラスときは黄色で、マイナスのときは青いことを示している。サンプルは、対照と比較可能な明度を示す。しかし、サンプルは、対照よりも赤がより強く、黄色がより弱い。
【0037】
【表4】

【0038】
実施例2
実施例1と同じ処理サイクルを利用し、多数のサンプルを調製した。サンプルの組成は以下の表に示してある。それぞれの場合において、材料のバランスは、酸化亜鉛が18.7重量%と酸化ジルコニウムが81.3重量%の混合物である。表の最後の欄は、散乱材料とサンプルの他の成分が互いに溶け合う量は多くないと仮定した場合の、添加した散乱材料の体積率である。添加物とともに追加の酸化亜鉛も添加し、酸化亜鉛の体積率を20%に維持した。ここでも互いに溶け合うことは無視している。
【0039】
【表5】

【0040】
熱間圧縮サイクルの後、サンプルの表面を研削し、サンプルを650℃にて、表面抵抗が1MWを超えるまで、空気中で加熱した。ミニスキャンXEプラス分光器を用いて拡散反射率のスペクトルを測定した。CIEによるL*、a*、b*の値を以下の表に示す。MWを単位として表わした表面抵抗は、1.16〜703MWの間で変化することがわかる。L*の測定値は、75.14〜85.79である。a*の測定値は、-1.71〜1.15であり、b*の測定値は、10.85〜40.34である。450nmにおける拡散反射率は、20.2%〜43.27%である。これらの結果をグラフとして図2と図3に示す。
【0041】
【表6】

【0042】
図2は、450nmにおける拡散反射率に対する散乱材料添加物の効果を示している。横軸は、添加物の容積%を表し、一方、縦軸は、拡散反射率の割合を表す。YAGの容積%を大きくしていくと、拡散反射率は20%から43.27%まで増大することがわかる。アルミン酸亜鉛またはアルミン酸マグネシウムを約10容積%添加したきの450nmにおける拡散反射率は、それぞれ28.51%と39.63%である。比較的少量のイットリウム・アルミニウム・ガーネットでさえ、拡散反射率に影響がある。好ましい範囲は、2容積%を超える添加物である。
【0043】
図3は、明度L*に対する添加物の効果を示している。横軸は添加物の容積%を表わし、縦軸はL*を表わしている。ここでも、YAGの量を増やしていくとL*の値が大きくなる。アルミン酸亜鉛またはアルミン酸マグネシウムが10容積%の時点で、L*の値はそれぞれ85.79と75.14である。これら実施例のそれぞれにおいて、添加物の粒径は5μm未満である。一般に、粒径は0.05μm〜5μmであり得、0.2μm〜2μmであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】対照と実施例の材料について拡散反射率を比較したグラフである。
【図2】拡散反射率に対する添加物の効果を示すグラフである。
【図3】明度L*に対する添加物の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□である安定化ジルコニアを60〜95重量%含み、かつ少なくとも2容積%の散乱材料を含む静電散逸セラミック素子。
【請求項2】
前記散乱材料の屈折率が、ジルコニアの屈折率と少なくとも0.25異なっている、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項3】
体積抵抗率が1×104〜1×1011Ωcmである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項4】
明度L*が約50よりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項5】
明度L*が約75よりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項6】
理論密度の約95%よりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項7】
理論密度の約98%よりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項8】
理論密度の約99%よりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項9】
450nmでの拡散反射率が20%よりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項10】
前記散乱材料の粒径が約0.05μm〜約5μmである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項11】
前記散乱材料の粒径が約0.2μm〜約2μmである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項12】
前記散乱材料が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、アルミン酸亜鉛、アルミン酸マグネシウム、リン酸イットリウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ベリリウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項13】
前記散乱材料が、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩及びフッ化物からなる群から選択される、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項14】
前記散乱材料の融点が約1200℃を超えており、1200℃ではジルコニアと実質的に反応しない、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項15】
抵抗率変更剤をさらに含む、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項16】
酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化カドミウムからなる群から選択される抵抗率変更剤をさらに含む、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項17】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが600MPaよりも大きい、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項18】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが少なくとも800MPaである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項19】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが少なくとも900MPaである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項20】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが少なくとも1100MPaである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項21】
70〜85重量%の安定化ジルコニアと、15〜25重量%の酸化亜鉛と、少なくとも2容積%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとを含む、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項22】
60〜95重量%の安定化ジルコニアと、5〜30重量%の抵抗率変更剤と、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む静電散逸セラミック素子。
【請求項23】
前記散乱材料の屈折率が、ジルコニアの屈折率と少なくとも0.25異なっている、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項24】
表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□である、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項25】
明度L*が約50よりも大きい、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項26】
理論密度の約95%よりも大きい、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項27】
450nmでの拡散反射率が20%よりも大きい、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項28】
前記散乱材料の粒径が約0.05μm〜約5μmである、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項29】
前記散乱材料が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、アルミン酸亜鉛、アルミン酸マグネシウム、リン酸イットリウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ベリリウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項30】
前記散乱材料が、2〜10容積%の静電散逸セラミック材料を含む、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項31】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが600MPaよりも大きい、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項32】
70〜85重量%の安定化ジルコニアと、15〜25重量%の酸化亜鉛と、少なくとも2容積%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとを含む、請求項22に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項33】
エレクトロニクス素子の製造方法であって、
表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□であり、60〜95重量%の安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含むエレクトロニクス素子を支持するための支持装置を用意することと;
前記エレクトロニクス素子を加工することと;
を含む方法。
【請求項34】
前記支持装置がキャリアである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記支持装置がジグである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記エレクトロニクス素子が磁気抵抗ヘッドである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記加工がラッピングである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記加工が磁気抵抗ヘッド搭載面の機械加工である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
ハード・ドライブの製造方法であって、
表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□であり、60〜95重量%の安定化ジルコニアと、少なくとも2容積%の散乱材料とを含む静電散逸セラミック材料を備えたハード・ドライブ素子を支持するための支持体を用意することと;
前記ハード・ドライブ素子を加工することと;
を含む方法。
【請求項40】
前記ハード・ドライブ素子が磁気抵抗ヘッドである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記加工がラッピングである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記加工がピック・アンド・プレイスプロセスである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記支持体がジグである、請求項39に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化ジルコニアを60〜95重量%含み、かつジルコニアの屈折率よりも少なくとも0.25小さい屈折率を有する散乱材料を少なくとも2容積%含み、そして1×105〜1×1012Ω/□の表面抵抗率及び50よりも大きい明度L*を有している、静電散逸セラミック素子。
【請求項2】
体積抵抗率が1×104〜1×1011Ωcmである、請求項1に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項3】
明度L*が75よりも大きい、請求項1又は2に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項4】
理論密度の95%よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項5】
理論密度の98%よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項6】
理論密度の99%よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項7】
450nmでの拡散反射率が20%よりも大きい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項8】
前記散乱材料の粒径が0.05μm〜5μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項9】
前記散乱材料の粒径が0.2μm〜2μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項10】
前記散乱材料の融点が1200℃を超えており、1200℃ではジルコニアと実質的に反応しない、請求項1〜9のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項11】
抵抗率変更剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項12】
酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化カドミウムからなる群から選択される抵抗率変更剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項13】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが600MPaよりも大きい、請求項1〜12のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項14】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが少なくとも800MPaである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項15】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが少なくとも900MPaである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項16】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが少なくとも1100MPaである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項17】
70〜85重量%の安定化ジルコニアと、15〜25重量%の酸化亜鉛と、少なくとも2容積%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項18】
60〜95重量%の安定化ジルコニア及び少なくとも2容積%の、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、アルミン酸亜鉛、アルミン酸マグネシウム、リン酸イットリウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ベリリウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される散乱材料を含み、そして1×105〜1×1012Ω/□の表面抵抗率を有している、静電散逸セラミック素子。
【請求項19】
60〜95重量%の安定化ジルコニア及び少なくとも2容積%の、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩及びフッ化物からなる群から選択される散乱材料を含み、そして1×105〜1×1012Ω/□の表面抵抗率を有している、静電散逸セラミック素子。
【請求項20】
60〜95重量%の安定化ジルコニアと、5〜30重量%の抵抗率変更剤と、少なくとも2容積%の、ジルコニアの屈折率よりも少なくとも0.25小さい屈折率を有する散乱材料とを含み、そして50よりも大きい明度L*を有している、静電散逸セラミック素子。
【請求項21】
表面抵抗率が1×105〜1×1012Ω/□である、請求項20に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項22】
理論密度の95%よりも大きい、請求項20又は21に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項23】
450nmでの拡散反射率が20%よりも大きい、請求項20〜22のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項24】
前記散乱材料の粒径が0.05μm〜5μmである、請求項20〜23のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項25】
前記散乱材料が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、アルミン酸亜鉛、アルミン酸マグネシウム、リン酸イットリウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ベリリウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される、請求項20〜24のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項26】
前記散乱材料が、2〜10容積%の静電散逸セラミック材料を含む、請求項20〜25のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項27】
四点曲げ試験に基づく曲げ強さが600MPaよりも大きい、請求項20〜26のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項28】
70〜85重量%の安定化ジルコニアと、15〜25重量%の酸化亜鉛と、少なくとも2容積%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとを含む、請求項20〜27のいずれか1項に記載の静電散逸セラミック素子。
【請求項29】
エレクトロニクス素子の製造方法であって、
60〜95重量%の安定化ジルコニア及び少なくとも2容積%の、ジルコニアの屈折率よりも少なくとも0.25小さい屈折率を有する散乱材料を含み、そして1×105〜1×1012Ω/□の表面抵抗率及び50よりも大きい明度L*を有している、エレクトロニクス素子を支持するための支持装置を用意することと;
前記エレクトロニクス素子を加工することと;
を含む方法。
【請求項30】
前記支持装置がキャリアである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記支持装置がジグである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記エレクトロニクス素子が磁気抵抗ヘッドである、請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記加工がラッピングである、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記加工が磁気抵抗ヘッド搭載面の機械加工である、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ハード・ドライブの製造方法であって、
60〜95重量%の安定化ジルコニア及び少なくとも2容積%の、ジルコニアの屈折率よりも少なくとも0.25小さい屈折率を有する散乱材料を含み、そして1×105〜1×1012Ω/□の表面抵抗率及び50よりも大きい明度L*を有している静電散逸セラミック材料を備えた、ハード・ドライブ素子を支持するための支持体を用意することと;
前記ハード・ドライブ素子を加工することと;
を含む方法。
【請求項36】
前記ハード・ドライブ素子が磁気抵抗ヘッドである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記加工がラッピングである、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記加工がピック・アンド・プレイスプロセスである、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項39】
前記支持体がジグである、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526270(P2006−526270A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514929(P2006−514929)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/016130
【国際公開番号】WO2004/105052
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】