説明

静電気保護回路および携帯端末装置

【課題】帯電物などが接近したことを検知し、放電された静電気からデバイスを保護する静電気保護回路および携帯端末装置を得る。
【解決手段】配線パターン23に接続するデバイス20を静電気から保護する静電気保護回路であって、近接物体に帯電している静電気を検出する帯電検出部21と、前記デバイス20と前記配線パターン23との間に配設され、前記デバイス20と放電経路とを切り替えて前記配線パターン23に接続するスイッチ部22と、前記帯電検出部21の出力信号に基づいて前記スイッチ部22の切り替え接続を制御する制御部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電物が接近したときに電子デバイスを静電気から保護する静電気保護回路および静電気保護回路を備える携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯端末装置などのように、使用される環境が変化する装置は、静電気を帯電している物体と接近することがある。また上記のような装置は、様々な用途に応じたアンテナやコイルなどを備えている。特に、無線通信に用いる上記のアンテナやコイルなどは用途に応じた周波数特性を有している。
周波数特性を有している上記のような構成要素には、静電気の放電が起こり易くなり、上記の装置を構成しているデバイス等を装置外部から放電された静電気により破損する、あるいは正常な動作の障害になることがある。
【0003】
また、特許文献1には、電子機器の例えば液晶装置に静電気保護回路を備える技術が記載されている。この液晶装置は、装置外周部分を構成する張り出し領域に、外部の回路などと接続される複数の接続端子を備えている。
この接続端子に静電気による過電圧が発生し、過電圧に起因する過電流が表示領域に達することがないように、当該表示領域の上流側において、上記の接続端子から延設された配線パターンに接続している静電気保護回路を設けて、上記の過電流を電源ラインへ逃がすようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−274932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、アンテナ部やコイル部等を有するデバイスは、当該アンテナ部やコイル部に所定の周波数特性を有している。そのため、上記のアンテナ部やコイル部の周波数特性が静電気の誘導周波数に概ね適合すると、いずれかの物体等に帯電していた静電気がデバイスに放電し易くなり、このようなデバイスは静電気によって損傷する可能性が高くなるという問題点があった。
【0006】
また、静電気の侵入経路にデバイスを接続したままの状態で、静電気を電源ラインなどへ逃がすように回路構成したときには、静電気を上記の電源ラインなどへ逃がす保護素子を用いている。この保護素子は、容量成分を有しており、例えば、高周波回路、アンテナライン等に接続すると性能劣化をもたらすことがあるという問題点があった。
また、容量成分の小さな保護素子は、耐圧を高く構成することが難しく、そのため、上記のような保護素子を用いた場合には、微細化が進んで静電気耐性が厳しくなったデバイスを静電気から十分保護することは困難であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電物などが接近したことを検知し、放電された静電気からデバイスを保護する静電気保護回路および携帯端末装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点による静電気保護回路は、導電パターンに接続するデバイスを静電気から保護する静電気保護回路であって、近接物体に帯電している静電気を検出する帯電検出部と、前記デバイスと前記導電パターンとの間に配設され、前記デバイスと放電経路とを切り替えて前記導電パターンに接続するスイッチ部と、前記帯電検出部の出力信号に基づいて前記スイッチ部の切り替え接続を制御する制御部とを備える。
【0009】
好適には、前記導電パターンは、アンテナパターンおよび/または配線パターンを含む。
【0010】
好適には、前記デバイスは、ICカード機能を有する信号処理回路を含む。
【0011】
好適には、前記制御部は、前記帯電検出部が検出した帯電レベルが所定のレベルを超えたときに前記スイッチ部の切り替え動作を制御する。
【0012】
本発明の第2の観点による携帯端末装置1は、前記静電気保護回路を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、帯電物が接近したときにデバイスを静電気から確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態による静電気保護回路を有する携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
図示した携帯端末装置1は、通話等のデータ通信を行うアンテナ2、通話等のデータ通信をアンテナ2を用いて行う通信部3、通信内容等を表示する表示部4、および、音声入出力部5、ユーザに設定等の操作を行わせるキー操作部6を有している。
【0015】
また、携帯端末装置1は、通信動作等の制御データ等を記憶しているメモリ7、電子マネーの決済機能を有するICカード機能部8、当該携帯端末装置の各部に電力を供給する電源部9、および、前述の各部の動作を制御する制御部10を有している。
【0016】
ICカード機能部8は、図示を省略したリーダライタ等の外部装置と非接触型決済のRFID通信を行うループアンテナ11、およびループアンテナ11を用いて非接触型課金処理を行うICチップ8aによって構成されている。
【0017】
ICチップ8aは、ICカード機能の例えばフェリカ(登録商標)規格によって電子マネー決済の各処理を行う信号処理回路を備えて構成されている。
詳しくは、ICチップ8aは、上記のICカード機能に則した通信動作ならびに電子マネーの決済処理を制御するICカード制御部12、および、電子マネー決済に関する各データを記憶しているICカードメモリ13を有している。
【0018】
ICカード制御部12ならびにICカードメモリ13は、携帯端末装置1が前述のリーダライタの近傍、即ち電磁波を受信したときにループアンテナ11に発生する電力で動作するように接続構成されている。
また、ICカード制御部12ならびにICカードメモリ13は、携帯端末装置1の電源部9から供給される電力によって動作することも可能なように接続構成されている。
【0019】
メモリ7およびICカードメモリ13は、課金先、使用日時、課金の種別等を表す課金情報と、当該課金情報を蓄積させた使用履歴と、各課金情報に関連させた課金の種別を表す情報等とを記憶している。
なお、通信部3、表示部4、メモリ7、およびICチップ8aは、後述するデバイス20に相当する。
また、図1には、各部を構成する、あるいは各部の間に備えられる静電気保護回路、詳しくは後述する帯電検出部ならびにスイッチ部等の図示を省略している。
【0020】
図2は、本実施形態による携帯端末装置の構成を示すブロック図である。この図は、図1に示した携帯端末装置1に備えられる静電気保護回路の構成を示している。デバイス20は、図1に示した各部を構成するデバイスであり、例えば前述のようにICチップ8aである。
帯電検出部21は、例えば、表面電位計からなり、携帯端末装置1の図示されない筺体の内部に、また、外部から静電気が侵入することが多いと推測される部位、もしくは当該筺体外部に接近した帯電物を適確に検出することができる部位に配設されている。
また、帯電検出部21は、検出結果を示す信号を制御部10へ入力するように接続構成されている。
【0021】
スイッチ部22は、二つの端子もしくは接点を切り替え接続する切り替えスイッチであり、配線パターン23とデバイス20とを接続し、また、配線パターン23と接地素子24とを接続する。即ち、デバイス20が接続された接点aと接地素子24が接続された接点bとを切り替えて、配線パターン23に接続させるように構成されている。
また、スイッチ部22は、接点等に高周波信号を劣化させるほどの容量を有しておらず、またさらに、静電気等に十分耐えられる耐圧特性を有するように機構部分等が構成されている。
また、スイッチ部22は、上記の切り替え接続を制御部10の制御に応じて行うように構成されている。
【0022】
配線パターン23は、例えば、携帯端末装置1の電子デバイスを実装している基板に形成されている配線パターンである。具体的には、例えばループアンテナ11とICチップ8aとを接続する配線部分である。即ち、配線パターン23は、高周波信号を伝送する配線部分であり、高周波回路を構成する配線、あるいはアンテナ等と高周波回路等とを接続する配線パターンである。
【0023】
接地素子24は、例えばバリスタなどからなり、前述のようにスイッチ部22が第2の接点に配線パターン23が接続されると、当該配線パターン23を接地接続するように、当該携帯端末装置1のGNDパターン等に接続されている。
このように、スイッチ部22がデバイス20と配線パターン23との接続を遮断したとき、配線パターン23が静電気の放電経路に接続されるように構成する。
【0024】
なお、接地素子24は、配線パターン23が短絡状態とならないように適当な抵抗値を有しており、静電気などの過電圧を上記のGNDパターン等へ逃がす特性を有している。
また、スイッチ部22が配線パターン23を接地側へ切り替え接続したとき、この状態において配線パターン23に接続している各回路などは、接地されることになる。これらの回路が、直接接地されても損傷することがない場合には、接地素子24を省略してもよい。
【0025】
また、ここでは配線パターン23に発生した過電圧を、接地素子24を介して接地接続し、GNDパターン等へ逃がすように構成しているが、例えば適当な抵抗値を有する素子を介して、いずれかの電源パターンへ接続するように構成してもよい。
【0026】
図2に示した静電気保護回路を複数備え、携帯端末装置1の適当な位置に各々の回路、具体的には帯電検出部21および/またはスイッチ部22を配設してもよい。例えば、静電気保護回路を、静電気から保護するデバイス毎、あるいは、静電気が侵入し易い配線パターン毎に設け、当該携帯端末装置1に接近した帯電物から放電される静電気から有効にデバイスを保護するように構成する。
【0027】
次に動作について説明する。
[携帯端末装置の動作]
携帯端末装置1は、キー操作部6になされた操作内容に応じて制御部10が各部を制御し、例えば通信部3を制御して外部とのデータ等の送受信を行い、当該データが示す音声を音声入出力部5から出力する。
また、音声入出力部5へ入力された音声を所定のデータ形式に変換し、通信部3を用いて外部へ送信する。上記の通信動作を行うとき、通信先等の情報を表示部4に表示させる。
【0028】
また、制御部10は、このような通信動作を行うとき、メモリ7に記憶されている制御プログラム、通信先などに関するデータ等を用いる。
【0029】
[ICカード機能の動作]
携帯端末装置1を、課金システムを構成する例えば駅の改札機等の図示を省略したリーダライタにかざす。
上記のリーダライタにかざされた携帯端末装置1は、ICカード機能部8が作動して、リーダライタ等から発信されているICカード機能の規格に則ったRF電波を、ループアンテナ11を用いて受信する。
ICカード制御部12は、ループアンテナ11を介して前述のリーダライタから受信した課金情報/電子マネーの決済情報を元に、ICカードメモリ13に記憶されている電子マネーの残高情報を書き換えて電子マネーの決済を行う。
【0030】
ICカード機能部8は、前述の電子マネー決済を行うとき、携帯端末装置1の電源がON状態のときには当該電源部9から供給される電力を用いて動作する。また、携帯端末装置1の電源がOFF状態のときには、ループアンテナ11を用いてリーダライタから発せられている電磁波を電源電力として動作する。
ICカード機能部8、もしくはICチップ8aは、上記のように携帯端末装置1の電源がOFFまたはONのいずれの場合であっても、同様な課金体系、即ち同様な電子マネーの決済処理を行う。
【0031】
携帯端末装置1は、例えば前述のように動作する通信機能ならびにICカード機能を備えており、また、図示を省略したカメラを用いた撮像機能などの各機能を備えている。ここでは、携帯端末装置1を構成する上記の各部等によって実現される機能の動作説明を省略する。
【0032】
[デバイスを静電気から保護する動作]
図3〜図6は、本実施形態による静電気保護回路の動作を示す説明図である。図3〜図6に示した帯電物30は、正または負の電荷を帯電させている、即ち静電気を帯電している物体である。この帯電物30は、例えば、前述のリーダライタの外装部分、ユーザの指先、ユーザが身に付けている衣服などである。
帯電検出部21は、例えば、電源部9から電源電力を得て、制御部10などと供に常時稼働し、携帯端末装置1に接近する帯電物等の有無を監視する。
【0033】
制御部10は、通常、即ち、帯電検出部21の出力信号が、帯電物30を検出した旨を示していないときには、スイッチ部22を制御して図3(b)に示したようにデバイス20と配線パターン23とを接続する。
【0034】
前述のようにデバイス20が配線パターン23に接続された状態となっているとき、例えば、図3(a)に示したように帯電物30が破線の矢印方向に移動し、携帯端末装置1へ接近する。
【0035】
帯電検出部21は、図4(a)に示したように携帯端末装置1の近傍に帯電物30が接近すると、周辺電位の変化を検知する。即ち、帯電物30が帯電している電位を検知し、当該帯電物30の接近を検出した旨を示す信号を出力する。詳しくは、帯電検出部21は、帯電物30が帯電している静電気の電位を検出し、当該電位を示す信号を制御部10へ出力する。
【0036】
図4(a)に示した状態において、帯電物30が有している静電気を検知した制御部10は、当該検出した静電気の電位が所定のレベル以上であれば、図4(b)に示したように、スイッチ部22を制御して配線パターン23の接続切り替えを行う。具体的には、デバイス20と配線パターン23との接続を遮断し、当該配線パターン23を接地素子24を介して接地接続させる。
【0037】
制御部10は、上記の帯電検出部21の出力信号が示す静電気の電位が所定のレベル以上であるか否かを判定するときには、例えば予め設定されている閾値を用いる。
前述の閾値は、例えば制御部10自ら備える記憶手段などに記憶されており、携帯端末装置1に対して所定の距離まで接近した帯電物30から検出される電位に対応する値を有している。
換言すると、後述するように帯電物30から携帯端末装置1へ静電気の放電が起きる前の電位に対応する値を有している。
このような値の閾値を使用することにより、静電気の放電が起こる以前に制御部10がスイッチ部22を制御して、デバイス20と配線パターン23との接続を遮断することが可能になる。
【0038】
前述のように携帯端末装置1に帯電物30が近接していると、図5(a)に示したように帯電物30に帯電していた静電気が携帯端末装置1へ誘導され、静電気の放電が発生する。
静電気が放電するときの誘導周波数が、携帯端末装置1に備えられる高周波回路を構成する、例えばアンテナ部やコイル部に共振する周波数であった場合、上記のような高周波部品等に電磁誘導が発生する。
このように高周波部品等に共振して侵入した静電気は、例えば、前述のように高周波部品などに接続する配線パターン23に帯電する過電圧あるいは過電流を生じさせる。図5(b)では、前述のように配線パターン23へ侵入した静電気を矢印Aによって示している。
【0039】
このとき、スイッチ部22は、図5(b)に示したように配線パターン23を接地素子24へ接続しているので、配線パターン23に帯電している静電気、あるいは配線パターン23に生じた過電流は、接地素子24を介してGNDパターン等へ流れ込む。
このようにして、帯電物30から放電された静電気をGNDパターン等へ吸収させ、デバイス20に達しないようにする。
【0040】
前述のように静電気を放電することにより、図6(a)に示したように帯電物30が消滅する。なお、帯電していた物体は消滅していない。
図6(a)に示したように帯電物30が携帯端末装置1の近傍から無くなることにより、帯電検出部21の出力信号は、帯電物を検出した旨を示していない信号、即ち、高電位の静電気が検出されていない旨を示すものとなる。
【0041】
このような帯電検出部21の出力信号を入力した制御部10は、図6(b)に示したように、スイッチ部22を制御して接点の接続切り替えを行い、配線パターン23とデバイス20とを接続する状態にする。
【0042】
図3〜図6を用いて説明した動作は、配線パターン23へ静電気が侵入する場合であるが、例えば携帯端末装置1を構成するアンテナパターン等に侵入した静電気に対しても、同様にデバイス20を保護することができ、また、当該静電気をGNDパターン等へ吸収させることができる。
【0043】
図7は、本実施形態による携帯端末装置の構成を示す説明図である。この図は、携帯端末装置1を構成する筺体40の内部に備えられる基板41を示している。なお、筺体40の図中上側の開高部を塞ぐ筺体、即ち筺体40に係合する蓋部分をなす筺体の図示を省略している。
筺体40の内部に設置固定されている基板41は、前述の各部を構成するデバイス、電子部品等が実装されており、各々の機能を実現する電子回路が備えられている。また、基板41は、図中破線で示した当該基板41の裏面側にアンテナパターン42が設けられている。
【0044】
図1に示したループアンテナ11は、例えば、基板41の概ね中央部分において、当該基板41の裏面側にアンテナパターン42としと形成され、携帯端末装置1の背面側となるように配設されている。
【0045】
また、通信部3に接続されているアンテナ2は、ループアンテナ11と離間されて携帯端末装置1を構成する、いずれかの基板に設けられており、当該筺体の内壁に接触する、あるいは極めて上記の内壁に近い位置に配設されている。
【0046】
上記の各アンテナは、いずれも携帯端末装置1の筺体の内壁に近接して設けられている。このように配設されている各アンテナと接続されているデバイスを保護するために、前述のスイッチ部22を各配線パターンあるいはアンテナパターンの途中に設ける。
【0047】
前述の基板41には、図7に例示したように配線パターン23が設けられている。この配線パターン23は、例えば、基板外縁部分に配設されており、筺体40に基板41が格納されたとき、筺体40の内壁に近接する。
特に、ここで例示したように配設されている配線パターン23には、筺体40の外部から静電気が侵入し易い。そのため、デバイス20の端子等の近傍において、配線パターン23とデバイス20との間にスイッチ部22を設けて、デバイス20を静電気から保護するように構成するとよい。
【0048】
前述のように帯電物30に帯電している静電気は、例えば携帯端末装置1に接近したとき誘導周波数をもって放電される。
図8は、帯電物から静電気が放電される際の放電電流波形を示す説明図である。この図は、IEC61000−4−2規格に準拠する静電気放電イミュニティ試験により観測される放電電流波形の一例を表している。
図8において、横軸は経過時間[nsec]、縦軸は最初の放電ピーク電流値を100[%]として、各経過時間における放電電流の大きさを表している。
【0049】
空気中において、帯電物30から携帯端末装置1などの電子機器へ静電気が放電される際にも図8に示した電流波形と同様な放電電流が生じる。
図示した波形は、放電が開始されてから最初の放電ピーク電流に達するまで0.7〜1.0[nsec]を要している。また、最初のピーク電流に達した後、概ね30[nsec.]までの間に電流値が増減して振動するように変化し、概ね最初の放電ピーク電流値の半値に減少する。
また、放電電流値は、30[nsec]経過以降は徐々に減少し、60[nsec]経過時点で、放電ピーク電流値の1/4程度に減少する。
【0050】
前述のようにように変化する放電電流は、ICカード機能の規格である、例えばフェリカ(登録商標)規格において使用されている周波数13.56[MHz]の電磁波の周期の整数倍に適合する。即ち、放電電流が変化するときの周期が、ICカード機能にて用いている通信電波の周期の整数倍と概ね同様となり、ICカード機能用に備えたループアンテナ11などに共振する。
【0051】
前述のようにループアンテナ11などが放電電流の周期に共振することから、ループアンテナ11等には静電気が誘導され易くなり、前述のように帯電物30が接近すると、比較的頻繁に放電が起こることになる。
このことから、ICカード機能のデータ通信用の周波数を有する信号を取り扱う電子回路、特に高周波回路やアンテナ部、またこれらのデバイス等を接続する高周波伝送用の配線パターンには、通常以上に装置外部から静電気の放電によりGNDパターンに誘導気電力が発生し、デバイス等へ間接的に放電し易くなる。
【0052】
そのため、これらの高周波回路、高周波を取り扱うデバイス等には、前述のような静電気保護回路を備え、アンテナ等から侵入する静電気をGNDパターンなどへ吸収させる放電経路を設けておく必要がある。
上記のように、高周波回路等を成すデバイス20には外部から静電気が侵入し易いため、前述のような放電保護回路を備えておく。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、携帯端末装置1に接近した帯電物を検出する帯電検出部21と、デバイス20と放電経路とを切り替えて配線パターン23に接続するスイッチ部22と、帯電検出部21の検出結果に応じてスイッチ部22の切り替え動作を制御する制御部10とを備えた。
このことによって、帯電物30が携帯端末装置1に接近した時点でデバイス20と配線パターン23との接続を遮断し、また配線パターン23を放電経路に接続することができる。
【0054】
また、帯電物30が接近すると、静電気の放電が起き易い配線パターン23からデバイス20の接続を遮断しているので、静電気による過電圧あるいは過電流から、静電気耐性の弱いデバイス20を確実に保護することができる。
また、高周波信号の処理に障害が生じるほどの容量を有さず、また静電気の放電電圧に十分耐えられる機構部分を有するスイッチ部22を用いた。このことにより、高周波回路やアンテナ部のようにインピーダンスやリアクタンスの変動に敏感な部分においても、スイッチ部22を備えて高周波信号を処理するデバイス20を静電気から保護することができる。
【0055】
また、デバイス20と配線パターン23との接続を遮断したとき、配線パターン23に接地素子を接続するようにしたので、帯電物30が携帯端末装置1に近傍に存在しなくなった後に配線パターン23に帯電している過電圧を除去することができる。即ち、スイッチ部22が接地素子24からデバイス20へ接続切り替えを行ったときに、デバイス20が静電気によって破損することを防ぐことができる。
また、デバイス20が配線パターン23と接続されているときには、接地素子24は、デバイス20などの高周波信号を処理する部分に接続されていないので、接地素子24が高周波信号を劣化させる容量を有する接地素子24を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態による静電気保護回路を有する携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態による静電気保護回路の動作を示す説明図である。
【図4】本実施形態による静電気保護回路の動作を示す説明図である。
【図5】本実施形態による静電気保護回路の動作を示す説明図である。
【図6】本実施形態による静電気保護回路の動作を示す説明図である。
【図7】本実施形態による携帯端末装置の構成を示す説明図である。
【図8】帯電物から静電気が放電される際の放電電流波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1…携帯端末装置、2…アンテナ、3…通信部、4…表示部、5…音声入出力部、6…キー操作部、7…メモリ、8…ICカード機能部、8a…ICチップ、9…電源部、10…制御部、11…ループアンテナ、12…ICカード制御部、13…ICカードメモリ、20…デバイス、21…帯電検出部、22…スイッチ部、23…配線パターン、24…接地素子、30…帯電物、40…筺体、41…基板、42…アンテナパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターンに接続するデバイスを静電気から保護する静電気保護回路であって、
近接物体に帯電している静電気を検出する帯電検出部と、
前記デバイスと前記導電パターンとの間に配設され、前記デバイスと放電経路とを切り替えて前記導電パターンに接続するスイッチ部と、
前記帯電検出部の出力信号に基づいて前記スイッチ部の切り替え接続を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする静電気保護回路。
【請求項2】
前記導電パターンは、アンテナパターンおよび/または配線パターンを含むことを特徴とする請求項1に記載の静電気保護回路。
【請求項3】
前記デバイスは、ICカード機能を有する信号処理回路を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の静電気保護回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記帯電検出部が検出した帯電レベルが所定のレベルを超えたときに前記スイッチ部の切り替え動作を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の静電気保護回路。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の静電気保護回路を備えることを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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