説明

静電霧化装置

【課題】加湿空気に加えて帯電微粒子水を放出して人体に潤いを与えると共に消臭、除菌効果が期待できる。帯電微粒子水の生成が安定して効果的にできる。
【解決手段】静電霧化装置4は、放電電極3と、冷却部5及び放熱部9を備えた熱交換部7と、前記冷却部5により空気中の水分を結露させて、前記放電電極3に供給された水に高電圧を印加する高電圧印加部16と、を備える。静電霧化装置4は、加湿空気を生成する加湿手段2をさらに備え、前記放電電極3及び前記放熱部9を、当該加湿空気が流れる加湿空間8に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化現象を利用して帯電微粒子水を生成する静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロサイズの大径のミストと、静電霧化装置を用いたナノサイズの小径のミスト(帯電微粒子水)とを同時に放出するようにした加湿機が特許文献1により知られている。
【0003】
上記特許文献1に示された従来例においては、大径ミスト吐出口と小径ミスト吐出口とをそれぞれ別々に設け、加湿機本体内に設けた釜を加熱することで、大径ミストを発生させ、この大径ミストを大径ミスト吐出口から外部に吐出するようになっており、また静電霧化装置で発生させた小径のミストを小径ミスト吐出口から外部に吐出するようになっている。そして、加湿機内に備えられた静電霧化装置は、上記大径ミストの一部が供給されて大径ミストを凝集する水凝集部と、水凝集部で生成した凝集水を水搬送部を介して放電電極に供給し、放電電極に高電圧を印加することで放電電極に供給された水を静電霧化して小径ミストを生成して上記のように小径ミスト吐出口から外部に放出するようになっている。
【0004】
しかしながら、上記従来例にあっては、凝集部で生成した水を水搬送部を介して放電電極の先端部まで搬送する必要があり、長期間使用していくと水搬送部や放電電極が目詰まりしたりして放電電極の先端への水の供給が十分行われなくなる可能性がある。また、放電電極も水搬送部で放電電極の後端に搬送された水を放電電極の先端部まで毛細管現象などを利用して送る必要があるため、多孔質材料で形成したり、細孔を形成したりする必要があり、このため、放電電極を形成するための材料の制約や、孔明け加工が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−361009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、加湿空気に加えて帯電微粒子水を放出して人体に潤いを与えると共に消臭、除菌効果が期待でき、しかも、帯電微粒子水の生成が安定して効果的にできる静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る静電霧化装置は、放電電極3と、冷却部5及び放熱部9を備えた熱交換部7と、前記冷却部5により空気中の水分を結露させて、前記放電電極3に供給された水に高電圧を印加する高電圧印加部16と、を備えた静電霧化装置4において、加湿空気を生成する加湿手段2をさらに備え、前記放電電極3及び前記放熱部9を、当該加湿空気が流れる加湿空間8に配置したことを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、放電電極3を冷却して加湿空間8内の加湿空気を放電電極3に結露水として生成させるので、安定して確実に放電電極3に水を供給してナノサイズの帯電微粒子水を生成して加湿手段2で生成した大径のマイクロサイズのミストである加湿空気と共に放出できる。この場合、帯電微粒子水はナノサイズなので人体に潤いを与え、また、ラジカルを含んでいるので、消臭、除菌効果を発揮する。しかも、このように放電電極3を冷却して放電電極3に空気中の水分を結露させることで水を供給するものにおいて、本発明においては、冷却部5側に放電電極3を設けて放電電極3を冷却して空気中の水分を結露させるための熱交換部7を設け、熱交換部7の放熱部9も加湿空間8に配置するので、放熱部9における放熱が加湿空気の吸熱効果で向上し、この結果、放電電極3の冷却効率が向上し、効率的に放電電極3に結露水を生成することができる。
【0009】
また、共通の加湿空間8内に放電電極3と、熱交換部7の放熱部9を配置することが好ましい。
【0010】
このように放電電極3と、熱交換部7の放熱部9を配置する加湿空間8が共通となっていることで、静電霧化装置4の構造が簡単となる。
【0011】
また、異なる加湿空間8a、8b内にそれぞれ放電電極3と熱交換部7の放熱部9を配置し、放電電極3を配置した加湿空間8aよりも、熱交換部7の放熱部9を配置する加湿空間8bの温度を低くすることが好ましい。
【0012】
このような構成とすることで、放熱部9における放熱がより効果的に行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静電霧化装置は、安定して結露水を生成でき、帯電微粒子水を安定して生成することができるものであって、加湿空気に加えて帯電微粒子水を放出して人体に潤いを与えると共に消臭、除菌効果が期待でき、しかも、熱交換部の放熱部も加湿空間に配置するので、上記帯電微粒子水の生成が安定して効果的にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の静電霧化装置の一使用例の断面図である。
【図2】同上の全体斜視図である。
【図3】本発明の静電霧化装置の概略構成図である。
【図4】本発明の静電霧化装置の他の使用例の断面図である。
【図5】同上の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
図1には本発明の一実施形態が示してある。加湿機本体1には一端部が吸い込み口10となり、他端部が吐出口11となった流路12が設けてあり、該流路12の途中にファン13と、加湿空気を生成するための加湿手段2が設けてある。
【0017】
図1に示す実施形態では加湿機本体1内に設けた水貯蔵部14内の水を加湿手段2により加湿して流路12内に加湿空気を発生させ、ファン13の運転により生じる流路12を流れる空気流に乗って加湿空気として吐出口11から吐出されるようになっている。
【0018】
なお、水貯蔵部14の水が消費されるとその分だけ水タンク15から水が補給されるようになっている。
【0019】
上記流路12の加湿手段2よりも下流側は加湿空気が流れる部分、つまり加湿空間8となっている。
【0020】
この加湿空間8には放電電極3に供給された水を静電霧化することで帯電微粒子水を生成する静電霧化装置4が配置してある。
【0021】
静電霧化装置4は空気中の水分を結露させて放電電極3に水を供給し、高電圧印加部16により高電圧を印加して放電電極3に供給された水を静電霧化することで帯電微粒子水を生成するようになっている。ここで、静電霧化装置4には冷却部5と放熱部9とを備えたペルチェユニットのような熱交換部7を設け、熱交換部7の冷却部5を放電電極3側に設け、冷却部5で放電電極3を冷却することで空気中の水分を結露させて放電電極3に結露水を生成させるようになっている。
【0022】
図3には本発明に用いる静電霧化装置4の概略構成図が示してある。
【0023】
熱交換部7であるペルチェユニットは、熱伝導性の高いアルミナや窒化アルミニウムからなる絶縁板の片面側に回路を形成してある一対のペルチェ回路板27を、互いの回路が向き合うように対向させ、多数列設してあるBiTe系の熱電素子28を両ペルチェ回路板27間で挟持すると共に隣接する熱電素子28同士を両側の回路で電気的に接続させ、ペルチェ入力リード線29を介してなされる熱電素子28への通電により一方のペルチェ回路板27側から他方のペルチェ回路板27側に向けて熱が移動するように構成したものである。更に、上記一方の側のペルチェ回路板27の外側には冷却部5を接続してあり、また、上記他方の側のペルチェ回路板27の外側には放熱部9が接続してあり、実施形態では放熱部9として放熱フィンの例が示してある。ペルチェユニットの冷却部5には放電電極3の後端部が接続してある。
【0024】
放電電極3は絶縁材料からなる筒体30で囲まれており、筒体30の周壁には筒体30内外を連通する窓30aが設けてある。また、筒体30の先端開口部にリング状をした対向電極25が配設され、放電電極3の軸心の延長線上にリング状の対向電極25のリングの中心が位置するように放電電極3と対向電極25とが対向していて筒体30内が霧化空間となっている。
【0025】
上記静電霧化装置4は、ペルチェユニットに通電することで、冷却部5が冷却され、冷却部5が冷却されることで放電電極3が冷却され、空気中の水分を結露して放電電極3に水(結露水)を供給するようになっている。
【0026】
このように放電電極3に水が供給された状態で上記放電電極3と対向電極25との間に高電圧を印加すると、放電電極3と対向電極25との間にかけられた高電圧により放電電極3の先端部に供給された水と対向電極25との間にクーロン力が働いて、水の液面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。このようにテーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、これによりこの部分に生じるクーロン力が大きくなり、更にテーラーコーンを成長させる。このようにテーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水を大量に生成される。
【0027】
生成された帯電微粒子水は流路12を流れる加湿空気の流れに乗って吐出口11から加湿対象空間に吐出される。
【0028】
加湿対象空間に放出された帯電微粒子水を含む加湿空気は、加湿対象空間の加湿をすると共に、帯電微粒子水はナノメータサイズのミストであるため非常に小さく、また、活性種を有しているため、加湿対象空間を浮遊して加湿対象空間内の隅々まで飛翔し、加湿対象空間内の臭いの成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌する。特に、帯電微粒子水はナノメータサイズの水粒子であるため、水の浸透により、加湿対象空間の壁面や加湿対象空間内に存在する物の内部に浸透して壁や物の内部に蓄積している臭い成分やアレルゲン物質等の分解、不活性化、あるいはウイルスや菌の抑制あるいは除菌ができる。
【0029】
ここで、本発明においては、放電電極3及び放熱部9を加湿機本体1内の加湿空間8に配置してあるので、放電電極3を冷却して加湿空間8内の加湿空気を放電電極3に結露水として生成させることになり、安定して確実に放電電極3に水を供給してナノサイズの帯電微粒子水を生成して加湿手段2で生成した大径のマイクロサイズのミストである加湿空気と共に放出して室内を加湿でき、この場合、帯電微粒子水はナノサイズなので人の肌や喉に潤いを与え、また、ラジカルを含んでいるので、消臭、除菌効果を発揮するものであり、特に、ナノサイズの帯電微粒子水は遠くまで飛翔し、壁やカーテンの奥深くまで浸透し、壁やカーテンに染み込んだ臭いも確実に脱臭することができる。また、ペルチェユニットよりなる熱交換部7の放熱部9も加湿空間8に配置するので、放熱部9における放熱が加湿空気の吸熱効果で向上し、この結果、冷却部5の冷却効率が向上し、放電電極3の冷却効率が向上することになる。したがって、必要な量の結露水を生成するに当って省エネルギーが図れることになる。
【0030】
次に、図4、図5に基づいて本発明の他の実施形態につき説明する。
【0031】
加湿機本体1には釜40とヒータ41とよりなる加湿手段2が設けてあり、ヒータ41で釜40を加熱することで、釜40内の水を加熱蒸発させて水蒸気を発生させようになっている。図中42は釜40内の水を加熱蒸発することで発生させた高温の水蒸気が流れるための流路であり、一端部が釜40の上面部に連通し且つ他端部が合流室43となり、合流室43の下流側が加湿機本体1の外面に開口した吐出口44となっている。
【0032】
加湿機本体1にはファン45により送られる風が流れる送風路46が設けてあり、送風路46の先端部の送風口46aが合流室43内に開口している。送風口46aは合流室43内において合流室43の下流側(つまり吐出口44側)に向けて横向きに開口している。
【0033】
加湿機本体1には更に静電霧化装置4の放電電極3を配置する静電霧化空間47と、静電霧化装置4に設けた熱交換部7の放熱部9を配置する放熱部配置空間48とが設けてある。
【0034】
放電電極3を配置する静電霧化空間47は上記合流室43に連通しており、更に、静電霧化空間47は加湿機本体1に開口する帯電微粒子水放出口53を介して外部と連通している。
【0035】
なお、静電霧化装置4は前述の実施形態と同様の構造であるので、詳細な説明は省略する。
【0036】
流路42には放熱部配置空間48と連通する連通部49が設けてある。また、送風路46から分岐流路50が分岐してあり、分岐流路50の先端開口51が放熱部配置空間48に連通している。これら連通部49、先端開口51はいずれも放熱部配置空間48内において放熱部9よりも上流側に位置している。また、図に示す実施形態では連通部49が先端開口51よりも上流側に位置している。放熱部配置空間48は加湿機本体1に開口する出口用開口52を介して外部と連通している。
【0037】
また、静電霧化空間47と放熱部配置空間48とは仕切りにより仕切られているが、図4、図5に示す実施形態では静電霧化装置の筒体30が仕切りとなっており、また、この実施形態では、筒体30の周壁に設けた窓30aを介して静電霧化空間47と合流室43とが連通している。
【0038】
釜40内の水を加熱することで水蒸気が発生すると、高温の水蒸気は流路42を通って合流室43に流れ、一方、ファン45を運転することで送風路46を経て送風口46aから合流室43内に流れ、合流室43内で上記高温の水蒸気と送風口46aから送風された空気流とが合流し、吐出口44から外部に向けて吐出される。このようにして吐出口44から加湿対象空間に吐出される水蒸気はマイクロサイズのミストであるため、加湿対象空間を効果的に加湿することができる。
【0039】
上記合流室43において空気流と合流した高温の水蒸気の一部は静電霧化空間47に流れ込む。このように水蒸気が流れ込むことで静電霧化空間47は加湿空間8(8a)となる。つまり、放電電極3は加湿空間8a内に配置されていることになる。したがって、冷却部5を冷却して放電電極3を冷却すると、静電霧化空間47内に流れ込んだ水蒸気を結露させて結露水を生成することで放電電極3に安定して水を供給することができる。このように放電電極3に水が供給された状態で高電圧を印加することで、静電霧化によりナノメータサイズの帯電微粒子水を生成する。生成された帯電微粒子水は帯電微粒子水放出口53から加湿対象空間に放出される。
【0040】
一方、流路42を流れる高温の水蒸気の大部分は上記のように合流室43に流れるが一部は連通部49から放熱部配置空間48に流れ込み(したがって、放熱部配置空間48は加湿空間8(8bとなる))、更に、送風路46から分岐流路50を通って先端開口51から放熱部配置空間48に空気流が流れ込み、該空気流により流路42から入った水蒸気が冷やされ、放熱部9と熱交換をして放熱部9を冷却し、出口用開口52から加湿対象空間に排出される。
【0041】
ここで、本実施形態においては、放電電極3を配置した加湿空間8aよりも、熱交換部7の放熱部9を配置する加湿空間8bの温度を低くなるように設定してある。すなわち、放電電極3を配置した加湿空間8aよりも、熱交換部7の放熱部9を配置する加湿空間8bの温度を低くなるように、連通部49から放熱部配置空間48に流れ込む高温の水蒸気と、分岐流路50を経て放熱部配置空間48に流れ込む空気流との混合割合、合流室43における高温の水蒸気と空気流の混合割合の関係をあらかじめ設定してある。
【0042】
これにより放熱部9を加湿空間8bに配置することで加湿空気の吸熱効果により放熱部9による放熱を効果的に行うと共に加湿空気の温度を低下させることで放熱部9における放熱がより効果的に行えることになる。
【0043】
なお、添付図面に示す実施形態では放電電極と対向電極との間に高電圧を印加して帯電微粒子水を生成する静電霧化装置4の例を示したが、対向電極を設けない場合であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
2 加湿手段
3 放電電極
4 静電霧化装置
5 冷却部
7 熱交換部
8 加湿空間
8a 加湿空間
8b 加湿空間
9 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、冷却部及び放熱部を備えた熱交換部と、前記冷却部により空気中の水分を結露させて、前記放電電極に供給された水に高電圧を印加する高電圧印加部と、を備えた静電霧化装置において、加湿空気を生成する加湿手段をさらに備え、前記放電電極及び前記放熱部を、当該加湿空気が流れる加湿空間に配置したことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
共通の加湿空間に放電電極と、熱交換部の放熱部を配置して成ることを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。
【請求項3】
異なる加湿空間内にそれぞれ放電電極と熱交換部の放熱部を配置し、放電電極を配置した加湿空間よりも、熱交換部の放熱部を配置する加湿空間の温度を低くして成ることを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169574(P2011−169574A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28644(P2011−28644)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2007−80654(P2007−80654)の分割
【原出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】