説明

静電霧化装置

【課題】霧化量に相当する放電電流の検知精度を高め、その放電電流に基づく霧化量調整を好適に行うことができる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】放電部7a,7bと、その放電部7a,7bに液体を供給する液体供給部8a,8bと、放電部7a,7bにおける放電電流を検知する放電電流検知部12a,12bと、検知した放電電流に基づいて放電部7a,7bと液体供給部8a,8bとを制御する制御部10とが備えられ、放電電流検知部12a,12bが放電電流を検知するタイミングと、制御部10が液体供給部8a,8bを制御するタイミングとを異なるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を静電霧化させて放出する静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体供給部としてペルチェユニット等にて結露水が放電電極に供給されその放電電極にて放電が行われることで、帯電微粒子水が生成される静電霧化装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような静電霧化装置は、帯電微粒子水の生成量(霧化量)に相当する放電電流量を放電電流検知部にて検知し、その放電電流量に応じた検知信号を制御部に出力し、制御部は、その検知信号から霧化量を認識し、その時々の霧化量が最適となるようにペルチェユニットの駆動能力の調整やオンオフ制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放電電流検知部の検知信号に基づいてペルチェユニットの制御を行うため、検知信号にノイズが含まれていると、正確な放電電流量(霧化量)が検出できず、その時々の霧化量調整を好適に行うことができない。このため、検知信号からノイズを極力排除して、より正確な放電電流の検知が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、霧化量に相当する放電電流の検知精度を高め、その放電電流に基づく霧化量調整を好適に行うことができる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、放電部と、その放電部に液体を供給する液体供給部と、前記放電部における放電電流を検知する放電電流検知部と、検知した前記放電電流に基づいて前記放電部と前記液体供給部とを制御する制御部とを備える静電霧化装置であって、前記放電電流検知部が放電電流を検知するタイミングと、前記制御部が前記液体供給部を制御するタイミングとを異なるようにしたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、放電電流検知部が放電部の放電電流を検知するタイミングと、制御部が液体供給部を制御するタイミングとを異なるようにしたため、液体供給部の制御(駆動能力の調整やオンオフ制御)に起因する電源ノイズが、検知した放電電流(検知信号)に極力含まれなくなる。このため、放電電流の検知、即ち霧化量の検知がより正確となり、その放電電流に基づく霧化量調整が好適に行われるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の静電霧化装置において、前記放電部は複数備えられ、その放電部に対応して前記放電電流検知部及び前記液体供給部は複数備えられるものであることをその要旨とする。
【0010】
この発明では、放電部、その放電部に対応して放電電流検知部及び液体供給部が複数備えられるため、帯電微粒子水の放出量を増加させることが可能となる。またこのような複数構成においても、放電電流の検知精度が高く、霧化量調整が好適に行われる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の静電霧化装置において、前記放電部は2つ備えられ、その放電部に対応して前記放電電流検知部及び前記液体供給部はそれぞれ2つ備えられるものであり、前記各放電電流検知部は、交互に放電電流を検知することをその要旨とする。
【0012】
この発明では、放電部、その放電部に対応して放電電流検知部及び液体供給部が2つ備えられ、各放電電流検知部が交互に放電電流を検知するため、放電電流検知部が複数であっても容易に放電電流検知を行うことが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の静電霧化装置において、前記液体供給部を制御した次の検知のタイミングでは、その制御した前記液体供給部と対をなす前記放電部の放電電流の検知を行わないことをその要旨とする。
【0014】
この発明では、液体供給部を制御した次の検知タイミングでは、その制御した液体供給部と対をなす放電部の放電電流の検知を行わないため、制御直後の不安定な放電電流量(霧化量)の検知を防止でき、より正確な放電電流の検知を行うことが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の静電霧化装置において、前記複数の放電部に対し、放電させるための高電圧を印加する高電圧部は1つであることをその要旨とする。
【0016】
この発明では、複数の放電部にそれぞれ高電圧を印加する高電圧部が1つであるため、小型軽量で安価な構成とすることが可能となる。
請求項6に記載の発明は、1〜5のいずれか1項に記載の静電霧化装置において、前記液体供給部は、ペルチェユニットの冷却動作にて前記放電部の電極に結露を生じさせ結露水として供給する冷却装置にて構成されていることをその要旨とする。
【0017】
この発明では、ペルチェユニットによって放電部の電極が冷却され、放電部の電極に空気中の水分から結露を生じさせその結露水が静電霧化に用いられる。これにより、静電霧化のための液体をタンク等の貯留手段を用いることなく対応できるため、静電霧化装置の小型軽量化や、液体をその都度供給する手間を省略できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、霧化量に相当する放電電流の検知精度を高め、その放電電流に基づく霧化量調整を好適に行うことができる静電霧化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態における静電霧化装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態における液体供給部の制御タイミングと放電電流検知タイミングとの関係を示したタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、静電霧化装置1は、静電霧化による帯電微粒子水(ナノサイズのイオンミスト)の生成及び放出を行わせるべく電源回路2を通じて、高電圧部3と、液体供給部用電源回路4a,4bと、ファン5と、制御部用電源回路6とに電源供給が行われる。高電圧部3は、自身が1つに対して2つの放電部7a,7bに高電圧を印加し、各放電部7a,7bの放電電極7c,7dと対向電極7e,7fとの間でコロナ放電を生じさせる。2つの放電部7a,7bに対応させて2つの液体供給部8a,8bが備えられ、各液体供給部用電源回路4a,4bは各液体供給部8a,8bにそれぞれ電源供給を行う。本実施形態において液体供給部8a,8bはペルチェユニット(冷却装置)にて構成されている。
【0021】
このような放電部7a,7bと液体供給部8a,8bとからなる静電霧化部9は、ペルチェユニットよりなる液体供給部8a,8bの駆動により放電部7a,7b(放電電極7c,7d)を冷却して放電電極7c,7dの表面に結露を生じさせつつ、放電部7a,7bに高電圧部3から高電圧を印加して放電電極7c,7dの周りにコロナ放電を生じさせることで、結露水の静電霧化にて帯電微粒子水を生成している。この生成された帯電微粒子水はファン5の送風により使用者等に向けて放出される。このとき、放電部7a,7b及び液体供給部8a,8bが2つずつ設けられることから、より多くの帯電微粒子水の放出が可能となっている。尚、帯電微粒子水は、使用者の肌の角質層表面の隙間に浸透可能であり、使用者の肌に潤いとハリを与えて高い美容作用や健康作用が得られるものである。
【0022】
また本実施形態では、2つの放電部7a,7bに対して高電圧部3を1つとし、小型軽量で安価な構成としている。このため、高電圧部3が放電部7a,7bに電力供給を行う場合において、放電部が1つの場合と比較して2倍の出力電力が必要とされる。従って、放電部が1つの場合と同様の割合で出力調整を行うと時間が2倍かかるため、本実施形態の高電圧部3では時間当たりの出力調整を2倍とし、放電部が1つの場合と同様に2つの放電部7a,7bの出力調整が可能となっている。
【0023】
制御部10は、制御部用電源回路6からの電源供給に基づいて動作し、静電霧化動作を制御する高電圧部3及び液体供給部8a,8bと、静電霧化装置1の作動状態等の表示を行う表示部11との制御を行う。制御部10は、高電圧部3についてはその時々の目標放電電圧となるように制御を行い、液体供給部8a,8bについては放電電流検知部12a,12bからの検知信号を参照しながら制御している。
【0024】
ここで、放電電流検知部12a,12bは、対応する放電部7a,7bの各放電電流量を検知し、その放電電流量に基づく検知信号を制御部10に出力している。制御部10は、放電電流検知部12a,12bからの検知信号を受けて放電電流量を把握する。即ち、帯電微粒子水の生成量(霧化量)は放電電流と比例関係にあるため、制御部10はその放電電流量から霧化量を把握し、霧化量が目標値よりも多いときには液体供給部8a,8bの少なくとも1つの駆動能力を低下若しくは停止し、また霧化量が目標値から少なくなったときには液体供給部8a,8bの少なくとも1つの駆動能力を上昇若しくは停止していたものを稼働するよういうような制御を行い、その時々の霧化量が最適となるように制御する。
【0025】
また本実施形態では、放電電流検知部12a,12bによる放電電流(霧化量)の検知タイミングと、制御部10における液体供給部(ペルチェユニット)8a,8bの制御タイミングとがずらされている。図2に示すように、液体供給部8a,8bの制御は、時間ta,tb,tc,td…という一定周期で行われ、放電電流検知部12a,12bの検知は、時間tab,tbc,tcd…という一定周期で行われ、互いが例えば半周期ずれるように設定されている。
【0026】
図2に示す液体供給部8a,8b等の制御は一例であり、時間taにて液体供給部8aがオフし、液体供給部8bはオンのまま維持され、時間tbにて液体供給部8bがオフし、液体供給部8aはオフのまま維持される。また、時間tcにて液体供給部8aがオンし、液体供給部8bはオフのまま維持され、時間tdにて液体供給部8bがオンし、液体供給部8aはオンのまま維持される。従って、液体供給部8a,8bに対応する放電部7a,7bの放電電流量変化(霧化量変化)は液体供給部8a,8bがオフしてから緩やかに減少し、液体供給部8a,8bがオンしてから緩やかに増加する変化となる。
【0027】
このような液体供給部8a,8b等の制御に対し、放電電流検知部12a,12bの検知は、図2にて矢印で示すように、時間tabにて放電電流検知部12bが検知、時間tbcにて放電電流検知部12aが検知、時間tcdにて放電電流検知部12bが検知する。つまり、放電電流検知部12a,12bの検知は交互に行われ、また液体供給部8aを制御した次の検知タイミングでは放電電流検知部12bによる検知、液体供給部8bを制御した次の検知タイミングでは放電電流検知部12aによる検知というように、制御した液体供給部8a,8bと対をなす放電部7a,7bの放電電流の検知を行わないようにしている。
【0028】
このように放電電流検知部12a,12bによる放電電流(霧化量)の検知タイミングと、制御部10における液体供給部8a,8bの制御タイミングとをずらしたことで、液体供給部8a,8bの制御に起因する電源ノイズが、検知した放電電流(検知信号)に含まれることが抑えられる。このため、制御部10での放電電流の検知、即ち霧化量の検知がより正確となり、その放電電流に基づく制御部10の液体供給部8a,8bを介した霧化量調整が好適に行われるようになっている。また、液体供給部8a,8bを制御した次の検知タイミングでは、その制御した液体供給部8a,8bと対をなす放電部7a,7bの放電電流の検知を行わないようにしているため、制御直後の不安定な放電電流量(霧化量)の検知を防止でき、このことも正確な放電電流の検知に寄与し、霧化量調整をより好適に行うことが可能となっている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、放電電流検知部12a,12bが放電部7a,7bの放電電流を検知するタイミングと、制御部10が液体供給部8a,8bを制御するタイミングとを異なるようにしたため、液体供給部8a,8bの制御(駆動能力の調整やオンオフ制御)に起因する電源ノイズが、検知した放電電流(検知信号)に極力含まれなくなる。このため、放電電流の検知、即ち霧化量の検知がより正確となり、その放電電流に基づく霧化量調整を好適に行うことができる。
【0030】
(2)本実施形態では、放電部7a,7b、その放電部7a,7bに対応して放電電流検知部12a,12b及び液体供給部8a,8bが2つ備えられるため、帯電微粒子水の放出量を増加させることができる。
【0031】
(3)本実施形態では、放電電流検知部12a,12bが交互に放電電流を検知するため、放電電流検知部12a,12bが2つであっても容易に放電電流検知を行うことができる。
【0032】
(4)本実施形態では、液体供給部8a,8bを制御した次の検知タイミングでは、その制御した液体供給部8a,8bと対をなす放電部7a,7bの放電電流の検知を行わないため、制御直後の不安定な放電電流量(霧化量)の検知を防止でき、より正確な放電電流の検知に寄与できる。
【0033】
(5)本実施形態では、2つの放電部7a,7bにそれぞれ高電圧を印加する高電圧部3が1つであるため、小型軽量で安価な構成とすることができる。
(6)本実施形態では、液体供給部8a,8bペルチェユニットによって構成され、ペルチェユニットによって放電電極7c,7dが冷却され、放電電極7c,7dに空気中の水分から結露を生じさせその結露水が静電霧化に用いられる。これにより、静電霧化のための液体をタンク等の貯留手段を用いることなく対応できるため、静電霧化装置1の小型軽量化や、液体をその都度供給する手間を省略できる。
【0034】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、図2において制御部10は液体供給部8a,8bを停止若しくは稼動するオンオフ制御を行うものであったが、液体供給部8a,8bの駆動能力を低下若しくは上昇させる電圧制御を行ってもよい。
【0035】
・上記実施形態では、放電部7a,7bにそれぞれ対応する放電電流検知部12a,12bを備えたが、その時々において一方の検知であれば、放電電流検知部を1つに統合してもよい。
【0036】
・上記実施形態では、放電電流検知部12a,12bによる検知を交互としたが、同時に行ってもよい。
・上記実施形態では、2つの放電部7a,7bに対して高電圧部3を1つで構成したが、各放電部7a,7bに対して高電圧部3を個別に設けてもよい。
【0037】
・上記実施形態では、放電部7a,7bや液体供給部8a,8b等をそれぞれ2つ用いて構成したが、1つ若しくは3つ以上用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…静電霧化装置、3…高電圧部、7a,7b…放電部、7c,7d…放電電極(電極)、8a,8b…液体供給部、10…制御部、12a,12b…放電電流検知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電部と、その放電部に液体を供給する液体供給部と、前記放電部における放電電流を検知する放電電流検知部と、検知した前記放電電流に基づいて前記放電部と前記液体供給部とを制御する制御部とを備える静電霧化装置であって、
前記放電電流検知部が放電電流を検知するタイミングと、前記制御部が前記液体供給部を制御するタイミングとを異なるようにしたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の静電霧化装置において、
前記放電部は複数備えられ、その放電部に対応して前記放電電流検知部及び前記液体供給部は複数備えられるものであることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の静電霧化装置において、
前記放電部は2つ備えられ、その放電部に対応して前記放電電流検知部及び前記液体供給部はそれぞれ2つ備えられるものであり、
前記各放電電流検知部は、交互に放電電流を検知することを特徴とする静電霧化装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の静電霧化装置において、
前記液体供給部を制御した次の検知のタイミングでは、その制御した前記液体供給部と対をなす前記放電部の放電電流の検知を行わないことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の静電霧化装置において、
前記複数の放電部に対し、放電させるための高電圧を印加する高電圧部は1つであることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電霧化装置において、
前記液体供給部は、ペルチェユニットの冷却動作にて前記放電部の電極に結露を生じさせ結露水として供給する冷却装置にて構成されていることを特徴とする静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−31191(P2011−31191A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180770(P2009−180770)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】