説明

非アシル化グレリン抗体及びその治療への使用

中和エピトープは非アシル化グレリンのアミノ酸1−3内に同定される。このエピトープと結合する抗体は本発明の範囲内にあり、マウス、キメラ若しくはヒト化抗体、その抗体の免疫複合体又はその抗原結合断片であってよい。本発明の抗体は、例えば2型インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)、プラダー−ウィリー症候群、摂食障害、過食症及び拒食症を含む、肥満及びその関連障害の治療又は予防に有用である。更に、そのような抗体は、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体の治療上有効量を投与することにより、不安、胃運動障害(例えば過敏性腸症候群及び機能性消化不良を含む)インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アンドロゲン過多症、多嚢胞卵巣症候群、癌及び心血管障害を含む他の障害の治療又は予防にとって有用な抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野に、特にグレリンに対するモノクローナル抗体の分野に関する。より詳しくは、本発明は、選択的に非アシル形態のグレリン又はその前駆体と結合するが、アシル化された形態のグレリンと結合しないか又は不十分に結合する、抗グレリンモノクローナル中和抗体に関する。本発明の抗体は、マウス、キメラ若しくはヒト化抗体、その抗体の免疫複合体又はそれらの抗原結合断片であってよい。本発明の抗体は、哺乳動物における肥満の治療、又は、グレリン(特に非アシル化グレリン)の存在が、望ましくない病理学的効果を生じさせるか、又は関与する症状、若しくは非アシル化グレリン濃度の減少が望ましい治療効果に関与する症状の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
グレリンは、3番目(配列番号17参照)のアミノ酸においてn−オクタノイル基の修飾を有する、28アミノ酸のペプチドである。グレリンホルモンはアシル化されると、脳下垂体の成長ホルモン分泌促進物質レセプター(GHS−R1a)と結合し、成長ホルモンの放出をもたらす。グレリンの非アシル化形態は、GHS−R1aレセプターを結合しない。(Kojima他、ネイチャー402:656−660(1999))。グレリンの他の活性は、プロラクチン及び副腎皮質ホルモン(ACTH)分泌の刺激、下垂体−性腺系に対する効果、食欲の刺激、エネルギーバランス、睡眠及び挙動に対する効果、胃の自働及び酸分泌の制御、膵臓の外分泌及び内分泌機能に対する効果、糖代謝の制御、心臓血管系に対する効果及び腫瘍細胞の激増の調節を含む(Encyclopedia of Endocrine Diseases(2004),Vol.3,295−299.Martini,Luciano編)。
【0003】
アシル化形態のグレリンは、マウスに投与した際に脂肪の堆積をもたらす(Tschop、M.ら、Nature 407:908−913(2000))。グレリンは、最初に胃において合成され、血中を循環する。血中グレリン濃度は、動物の絶食時に増加し(Kojimaら、Nature 402:656−660,1999)、摂食の前にピークに達し(Cummingsら、NEJM,346:1623−1630,2002)、再度摂食すると即座に減少する(Shiiyaら、J.Clin.Endocrinol.Metab.87:240−244,2002)。胃バイパス手術を受け、体重の最高36%を喪失した人における、グレリン濃度の顕著な減少及びグレリン分泌の前食事ピークの損失が示されている。プラダー−ウィリー症候群(制御不能の食欲を有し、高度の肥満を引き起こす遺伝的疾患)の患者では、グレリン濃度が極めて高い(Cummingsら、NEJM,346:1623−1630,2002)。これらの観察結果は、グレリンが食欲増進において鍵となる役割を果たすことを示すものである。更に、グレリンは代謝効率の増加が必要とされるときに視床下部に信号を送ると考えられている(Mullerら、Clin Endocrinol.55:461−467,2001)。
【0004】
現在、肥満の治療方法はあまり存在しない。体重を管理する現有の治療オプションは、食事療法、肉体的運動の増加及び行動療法を含む。残念なことに、これらの治療はほとんど不成功に終わり、失敗率は95%に達する。この失敗は、その症状が、食欲増加、高カロリー食品の嗜好、肉体的運動の減少及び脂質生合成の増加に関与する遺伝的要因と強く関係するという事実に帰結させることができる。このことは、そのような症状を克服するための努力とは関係なく、これらの遺伝形質を継承している人々は肥満になる傾向があることを示す。胃バイパス手術は、ごく限られた肥満患者に利用可能である。しかしながら、この種の手術は大手術を必要とし、情緒的な問題につながり得、また患者が要望に応じて直ちに変更することができない。更に、この試験治療でさえ、しばしば失敗することもある(Kriwanek、Langenbecks Archiv.Fur Chirurgie、38:70−74(1995)参照)。薬物療法オプションは少なく、有用性も限られている。更に、これらの薬の慢性的使用は薬剤耐性につながり、並びにそれらの長期間投与は副作用につながりうる。また、薬が中断されると、体重はしばしば元に戻る。
【0005】
肥満、肥満関連の障害、並びに他の摂食障害を治療する手段が、臨床において強く必要とされている。グレリンは、食欲を増強する役割のため、治療的な介入にとって望ましい標的となる。特に、グレリンに対するモノクローナル抗体は、そのような治療法を提供することができる。ヒト化されたこの種のモノクローナル抗体は、治療上特に重要である。更に、グレリンは配列上及び機能上、種間で非常に保存されている。ゆえに、この種の抗体がヒトのみならず、例えば家畜(例えば犬)及び食肉用動物(例えば牛、豚、羊)を含む他の哺乳動物においても、この種の障害の治療に有用である。この種の抗グレリン抗体は、例えば2型インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)、プラダー−ウィリー症候群、摂食障害、過食症及び障害性の満腹を含む、肥満及び関連した障害の治療に役立ちうる。更に、この種の抗体は他の障害の治療又は予防に役立ちうる。そのような障害には、不安、胃の運動障害(例えば過敏性腸症候群及び機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アンドロゲン過多症、多嚢胞性卵巣症候群、癌及び心血管障害が含まれる。最後に、本発明の抗グレリンモノクローナル抗体は、非アシル化グレリンの低濃度又は低活性に由来するいかなる疾患又は障害の治療又は予防に役立ちうる。
【0006】
国際公開第01/07475号パンフレット(EP公開第1197496号)は、ヒトを含むグレリンの様々な種のアミノ酸配列を教示し、またグレリンはアミノ末端(天然のヒトグレリンではセリン)から3番目のアミノ酸においてアシル化(一般にO−n−オクタン酸による)されていることを開示している。国際公開第01/07475号パンフレットはまた、グレリンのアミノ末端の4アミノ酸がグレリンの受容体結合活性にとって重要なことを示している。上記特許出願は更に、情報伝達を誘導する、脂肪酸修飾されたグレリンのペプチドと反応する抗体、並びにグレリンの測定又は検出へのこの種の抗体の使用を教示している。国際公開第01/87335号パンフレットは、肥満の治療に、抗グレリン抗体を含む、グレリンと特異的に結合する物質の使用を教示している。
【0007】
国際公開第2005/016951号パンフレット(発明の名称:「抗グレリン抗体」、出願人:イーライ・リリー社)は、アシル化ヒトグレリンと比較し、非アシル化されたヒトグレリンと選択的に結合する抗グレリンモノクローナル抗体、並びにそれが肥満及び肥満関連障害の治療に有用であることを教示する。この種の抗体は、マウス、キメラ及びヒト化抗体を含む。
【0008】
国際公開第03/051389号パンフレットは、非アシル化グレリンの投与により、グレリン活性が若干阻害され、食後のインスリン抵抗性の誘導を防止又は減らすことができ、また一部の患者の体重を減少させることができることを教示する。
【0009】
村上らは、肥満ラットに、脳室内注入によって、ラットグレリンのアシル化されたアミノ末端の11アミノ酸に対する抗グレリンポリクローナル抗体を投与している(J.Endocrinology 174:283−288(2002))。その著者らは、それによるラットにおける摂食及び体重の減少を示すことに成功した。Broglioらは、非アシル化グレリンがアシル化グレリンの代謝には作用するが、神経内分泌には作用しないことを発見した(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 89(6):3062−3065,2004)。特に彼らは、非アシル化グレリンが成長ホルモン、プロラクチン及びACTHのアシル化グレリンとの反応に影響を及ぼさないが、ヒトのインシュリン分泌及び血糖値に対するアシル化グレリンの作用には拮抗しうることを発見した。これは、グレリンが、アシル化されるか否かに依存して、インシュリン分泌/感受性及びグルコースホメオスタシスへの二重効果を有することができることを示す。最後に、非アシル化グレリンは、心血管への活性(細胞増殖を調整する能力)を有し、脂肪細胞レベルにて直接作用する脂質生成を刺激する影響力を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非アシル化グレリンの減少又は総グレリン濃度の減少に由来する障害又は症状の有効な治療方法は、現在限られている。非アシル化グレリンに対するモノクローナル抗体は、この種の障害に対する有効な治療法を提供しうるものである。治療上の応用としては特に、この種のモノクローナル抗体のキメラ又はヒト化形態が挙げられる。グレリンは、配列上及び機能的にも、種間で非常に保存されている。したがって、この種の抗体がヒトのみならず、例えば家畜(例えば犬及びネコ)、競技用の動物(例えば馬)及び食肉用の動物(例えばウシ、豚及び羊)を含む他の哺乳動物におけるこの種の障害の治療に有用であり、特に、抗体のフレームワーク及び定常部が、実質的に抗体が治療上適用される動物種由来であるときに有用である。
【0011】
本発明は、選択的に非アシル化グレリンと結合することが可能な抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、選択的に哺乳動物由来の非アシル化グレリンと結合する、抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。この種の抗体は、本明細書において、「本発明のモノクローナル抗体」又は「本発明の抗体」と称される。本発明のモノクローナル抗体は、マウス、キメラ若しくはヒト化されたもの、この種の抗体の免疫複合体又はそれらの抗原結合断片であってもよい。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、純粋又は実質的に純粋な状態として存在する。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、アミノ酸1〜3(配列番号17)にわたる領域の中で非アシル化グレリン(タンパク質前駆体又は成熟タンパク質のいずれか)と結合し、これにより非アシル化グレリン又はその部分に関連する少なくとも一つのin vitro、in vivo又はin situにおける生物学的活性又は性質と拮抗し、又は中和する。
【0013】
本発明のモノクローナル抗体は、アシル化グレリンよりも(比較的)非アシル化グレリンと選択的に結合する。好ましくは、この種の抗体は、例えばELISA、競争的ELISA又はBIAcore(登録商標)解析から測定されるK値に関し、アシル化グレリンよりも高い親和性又は特異性で非アシル化グレリンと結合する。更に、本発明のモノクローナル抗体は、結合したアシル化グレリンと比較し、結合した非アシル化グレリンに関して好ましいKon、Koff又はK値を有することができる。好ましくは、本発明の抗体は、アシル化グレリンと交差反応を起こさないか、又は約5%、4%、3%、2%、1%又はより少ないレベルでアシル化グレリンと交差反応を起こし得る。本発明の抗体は、好ましくはBIAcore解析によるK値において、約1×10−9M、約1×10−10M、約1×10−11M又は約1×10−12M、すなわち約1×10−9M〜約1×10−12Mの範囲である。一実施態様において、本発明の抗非アシル化モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、アシル化グレリンと比較して選択的に非アシル化グレリン又は非アシル化グレリンタンパク質前駆体と結合し、また
a)約5%以下のレベルでアシル化グレリンとの交差反応を起こすか、
b)アシル化グレリンとの結合より少なくとも約20倍高い親和性で非アシル化グレリンと結合するか、
c)約1×10−9Mの解離定数(K)を有するか、又は
d)約50μg/mL未満で、in vitro又はin vivoで非アシル化グレリンの生物学的活性を阻害する。
【0014】
他の実施態様において、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、
a)約5%以下のレベルでアシル化グレリンと交差反応を起こし、
b)アシル化グレリンとの結合より少なくとも約20倍高い親和性で非アシル化グレリンと結合し、
c)約1×10−9Mの解離定数(K)を有し、及び
d)約50μg/mL未満で、in vitro又はin vivoで非アシル化グレリンの生物学的活性を阻害する。
【0015】
他の実施態様において、本発明の抗非アシル化モノクローナル抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(「LCVR」)ポリペプチドを含む。
【0016】
他の実施態様において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(「HCVR」)ポリペプチドを含む。
【0017】
他の実施態様では、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチド及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを含む。
【0018】
他の実施態様において、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト非アシル化グレリン又はヒト非アシル化グレリンの一部との結合において、配列番号2及び10の配列を有する2つのポリペプチドを含む競合抗体との間で競争的することができるものである。
【0019】
他の実施態様において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体のLCVRは、配列番号4、6及び8(表1参照)の各配列を有するペプチド群から選択される1つ、2つ又は3つのペプチドを含む。好ましくは、該抗体に存在する、配列番号4中の配列を有するペプチドは、LCVR CDR1の配列のものである。好ましくは、該抗体に存在する、配列番号6中の配列を有するペプチドは、LCVR CDR2の配列のものである。好ましくは、該抗体に存在する、配列番号8中の配列を有するペプチドは、LCVR CDR3の配列のものである。LCVRは、フレームワーク配列を更に含む。ヒトの治療に使用するヒト化抗体において、フレームワーク配列は、実質的にヒト由来のものであってもよい。ヒト以外の動物に用いる抗体では、フレームワーク領域配列は、実質的に治療が行われる動物のゲノム配列に由来するものであってよい。
【0020】
他の実施態様において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体のHCVRは、配列番号12、14及び16(表1参照)の各配列を有するペプチド群から選択される1つ、2つ又は3つのペプチドを含む。好ましくは、該抗体に存在する、配列番号12中の配列を有するペプチドは、HCVR CDR1である。好ましくは、該抗体に存在する、配列番号14中の配列を有するペプチドは、HCVR CDR2である。好ましくは、該抗体に存在する、配列番号16中の配列を有するペプチドは、HCVR CDR3である。HCVRは、フレームワーク配列を更に含む。ヒトの治療に使用するヒト化抗体において、フレームワーク配列は、実質的にヒト起源であってもよい。ヒト以外の動物に用いる抗体では、フレームワーク配列は、実質的に治療が行われる動物のゲノム配列に由来するものであってよい。
【0021】
本発明の一実施態様において、配列番号4、6、8、12、14、及び16の配列の、6つのペプチドを含む、抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体が提供される。好ましくは、該抗体で、配列番号4中の配列を有するペプチドはLCVR CDR1に位置し、配列番号6中の配列を有するペプチドはLCVR CDR2に位置し、配列番号8中の配列を有するペプチドはLCVR CDR3に位置し、配列番号12中の配列を有するペプチドはHCVR CDR1に位置し、配列番号14中の配列を有するペプチドはHCVR CDR2に位置し、また配列番号16中の配列を有するペプチドはHCVR CDR3に位置する。
【0022】
本発明の抗非アシル化モノクローナル抗体は、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgM及びIgDからなる群から選択されるものの重鎖定常領域を更に含んでもよい。本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、κ又はλ軽鎖定常領域を更に含んでもよい。抗体がヒトの治療に用いられるとき、定常領域は、好ましくは実質的にヒト由来である。抗体がヒト以外の動物の治療に用いられるとき、定常領域は、好ましくは実質的にその抗体が治療に用いられる動物由来である。
【0023】
本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、完全な抗体(すなわち完全長)、実質的に完全な抗体、Fab断片、F(ab’)断片又は単鎖Fv断片を、含んでも、それらから本質的に構成されても、又は構成されてもよい。好ましい実施態様において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、キメラ抗体である。より好ましい実施態様において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、抗体に存在するフレームワーク配列及び定常領域配列が実質的にヒト起源である、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、好ましくは完全長の抗体である。あるいは、抗体に存在するフレームワーク領域(又はその部分)及びいかなる定常領域も、その抗体が治療に使用される動物(例えば家畜(例えばイヌ、ネコ))、競技用動物(例えばウマ)及び食肉用動物(例えばウシ、ブタ、ヒツジ)のゲノムから実質的に由来してもよい。
【0024】
他の実施態様において、本発明は、本発明の抗体のLCVR、本発明の抗体のHCVR、又は本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体をコードする核酸を含む、単離された核酸分子を提供する(表5)。本発明のLCVRをコードする典型的なポリヌクレオチドは、配列番号1の配列を有する。本発明のHCVRをコードする典型的なポリヌクレオチドは、配列番号9の配列を有する。
【0025】
他の実施態様において、本発明はベクターを、好ましくは、以下に限定されないが、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド、組換え発現ベクター、酵母発現ベクター又はレトロウイルス発現ベクターを提供する。あるいは、本発明のベクターは、本発明のLCVRをコードするポリヌクレオチド及び/又はHCVRをコードするポリヌクレオチドを含む。LCVR及びHCVRをコードする配列が共に同じベクターに存在するとき、それらは、それら両方が使用可能な状態で連結されている単一のプロモーターから転写されてもよく、又は独立に、それらが使用可能な状態で別々のプロモーターに連結した状態で転写されてもよい。LCVR及びHCVRをコードする配列が同じベクターに存在し、それら両方が使用可能な状態で連結している単一のプロモーターから転写される場合、LCVRはHCVRに対して5’側でもよく、又はLCVRはHCVRに対して3’側でもよい。更に、ベクターのLCVR及びHCVRのコード領域は、いかなるサイズ又は内容のもリンカー配列によって切り離されてもよい。好ましくは、この種のリンカーは、存在する場合、内部リボソーム結合部位をコードするポリヌクレオチドである。
【0026】
他の実施態様において、本発明は、本発明の核酸分子を含む宿主細胞を提供する。好ましくは、本発明の宿主細胞は、本発明の核酸分子を含む一つ以上のベクター又は構築物を含む。本発明の宿主細胞は、本発明のベクターが(例えば形質転換、形質導入、感染により)導入された細胞であり、該ベクターは本発明の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド及び/又は本発明のHCVRをコードするポリヌクレオチドを含むものである。本発明はまた、本発明の2つのベクターが導入された宿主細胞を提供し、その一つは本発明の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチドを含み、もう一つは本発明の抗体に存在するHCVRをコードするポリヌクレオチドを含み、各々が使用可能な状態でプロモーター配列に結合している。宿主細胞の種類としては、哺乳動物、細菌、植物及び酵母の細胞を含む。好ましくは、宿主細胞はCHO細胞、COS細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、酵母細胞又はいずれの好ましい細胞種の派生体又は子孫である。
【0027】
他の実施態様において、本発明は本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を調製する方法であって、本発明の宿主細胞(すなわち本発明のベクターで形質転換、形質導入又は感染した宿主細胞)を、本発明のモノクローナル抗体の発現にとって適切な条件に保ち、それによりこの種の抗体が発現されることを含む方法を提供する。該方法は、本発明のモノクローナル抗体を細胞又は、好ましくは、この種の細胞を増殖させる培地から分離する工程を更に含んでもよい。
【0028】
本発明は、好ましくはヒト以外の動物、より好ましくは齧歯類、更に好ましくはマウスに、(i)配列番号17の配列を有するペプチドからなる免疫原ペプチド、又は(ii)配列番号17の配列を有するペプチドの27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、又は3つの隣接するアミノ酸からなる免疫原ペプチド、を注射することによって本発明の抗体を生産する方法を含む。好ましくは、この種の免疫源ペプチドは、少なくとも成熟型の非アシル化グレリンのアミノ酸残基1−3(それがアシル化されないという点で、第3のアミノ酸がアシル化グレリンの同じ位置のアミノ酸と異なる)、又は(iii)任意の哺乳動物の成熟型の非アシル化グレリンのアミノ酸1−3からなる免疫源ペプチド、又は(iv)任意の哺乳動物の成熟型の非アシル化グレリンのアミノ酸1−3からなる免疫源ペプチドにわたる。好ましくは、該免疫源ペプチドは、第3のアミノ酸が同じ哺乳動物のアシル化グレリンの同じ位置に存在するアミノ酸と(それがアシル化されないという点で)異なるアミノ酸残基にわたる。抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、公知のいかなる技術、好ましくはハイブリドーマ合成を使用して、免疫した動物から得られる。抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、成熟した非アシル化グレリン若しくはその免疫源ペプチドを含む部分、又はその免疫源ペプチドとの結合能を利用し、例えばバクテリオファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母ディスプレイ、バクテリアルディスプレイ、ELISAなどの利用可能な任意の方法でスクリーニングされる。抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、アシル化グレリンに対するその結合能と比較し、特異的又は選択的に非アシル化グレリンと結合する能力により選択される。本発明は更に、このプロセスによって作製されるモノクローナル抗体に関する。好ましくは、この種のモノクローナル抗体は、例えばELISA、競争ELISA又はBIAcoreのK値などの当業者に知られている方法によって測定したとき、そのアシル化グレリンとの結合よりも、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100倍大きく(5〜100倍大きく)非アシル化グレリンと結合し、より好ましくは、少なくとも約150、200又は250倍大きく(150〜250倍大きく、合計5〜250倍より大きく)非アシル化グレリンと結合する。最も好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、従来技術により得られるいかなる結合実験でのバックグラウンドのレベル以上には、アシル化グレリンと結合しない。
【0029】
本発明の任意の方法によって作られるこの種の抗体は、少なくともそのフレームワーク及び/又は定常領域の部分が、モノクローナル抗体を生成するために免疫されるのと異なる哺乳動物に由来するキメラ抗体に更に変更することができ、また本発明の範囲内に含まれると考えられる。本発明の抗体はヒト化することができ、そこではそのマウスCDR領域が実質的にヒトのフレームワーク領域内に存在し、また定常領域が、それが抗体に存在する限りにおいて、実質的にヒト由来である。本発明の抗体は、マウスのCDR領域が、その抗体が治療上用いられる動物の生殖細胞系の配列に由来するフレームワーク領域及び定常領域(それが抗体に存在する限りにおいて)中に存在してもよい。
【0030】
本発明には、様々な形態の抗体が含まれる。例えば、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、全長の抗体(例えば免疫グロブリン定常領域を有する)又は抗体断片(例えばF(ab’))であってよい。この種の抗体の全ての形が本発明の用語「抗体」の範囲内に含まれるものと理解される。更に、抗体を公知技術の方法に従って検出可能なラベルで標識し、固相に固定し、及び/又は、異種化合物(例えば酵素又は毒素)と接合してもよい。
【0031】
本発明には、モノクローナル抗体の診断における使用が含まれる。1つの診断用途において、本発明は、非アシル化グレリンタンパク質の存在を検出する方法であって、非アシル化グレリンタンパク質を含むと思われる測定用試料を本発明の抗非アシル化グレリン抗体と接触させ、サンプル中の標的に対する抗体との特異的な結合を検出することを含む方法を提供する。本発明の抗非アシル化グレリン抗体は、測定用試料の結合値を、非アシル化グレリンの既知量を含むサンプルに該抗体を結合させて作成した標準曲線と比較することにより、試験試料中の非アシル化グレリンの濃度の測定に用いることができる。本発明は更に、本発明の抗体及び、好ましくは(例えば測定用試料中の)非アシル化グレリンタンパク質を検出する抗体を使用することに関する説明書を含むキットを提供する。
【0032】
他の実施態様において、本発明は、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む。そのような医薬組成物において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は有効成分であり、すなわち唯一の有効成分であってもよい。好ましくは、医薬組成物は、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を純粋又は実質的に純粋な状態で含む。治療用の組成物は滅菌され、また凍結乾燥してもよい。
【0033】
その必要で、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトの非アシル・グレリン活性の抑制方法であって、該哺乳動物に治療上有効量又は予防上有効量の本発明の抗非アシルグレリンモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む方法を提供する。本発明は更に、非アシル化グレリンのそのレセプターへの結合から生じるシグナル伝達の抑制によって改善される疾患又は障害の治療又は予防方法であって、この種の治療又は予防を必要とする患者(例えばヒト)に本発明のモノクローナル抗体の治療上又は予防上有効な量を投与することを含む方法を提供する。本発明における「治療又は予防」の用語は、通常の又は異常な非アシル化グレリン濃度と関連する、又は非アシル化グレリン活性の阻害により利益を得る、又は既存の非アシル化グレリン濃度の変化により利益を得る疾患又は障害を指す。本発明は、患者(好ましくはヒト)における、プロラクチン及び副腎皮質ホルモン(ACTH)分泌、下垂体の性腺系に対する効果、食欲の刺激、エネルギーバランス、睡眠及び挙動に対する効果、胃の自働運動及び酸分泌の制御、膵臓の外分泌及び内分泌機能に対する効果、糖代謝の制御、及び哺乳動物の腫瘍細胞の激増の調節に関連する障害を治療する方法を提供する。具体的には、本発明の抗体によって治療又は予防される疾患又は障害は、肥満及び、例えば2型インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)プラダー−ウィリー症候群、摂食障害、過食症及び障害性の満腹を含む関連障害を含むが、これに限定されるものではない。加えて、この種の抗体は治療又は他の障害の予防策に役立つことがありえる。そして、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体の治療上有効量を管理することによって不安、胃自動運動性障害(例えば、過敏性腸症候群及び機能性消化不良を含むこと)インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アンドロゲン過多症、多嚢胞の卵巣の症候群、癌及び心血管障害を含む。例えば、本発明は、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を、例えば肥満及び2型インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)プラダー−ウィリー症候群、摂食障害、過食症及び障害性の満腹を含む関連障害の治療のために哺乳動物(好ましくはヒト)に投与される医薬の製造への使用を含む。更に、この種の抗体は、哺乳動物における、例えば不安、胃運動障害(例えば過敏性腸症候群及び機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アンドロゲン過多症、多嚢胞性卵巣症候群、癌及び心血管障害を含む他の障害を、該哺乳動物(好ましくはヒト)の患者に本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体の治療上又は予防上有効な量を投与することによって治療又は防止することに対して有用でありうる。本発明はまた、包装資材及び該包装資材中に包装された本発明の抗体を含む製造部品であって、その包装資材は抗体が特に非アシル化グレリン活性を中和するか又は非アシル化グレリンの濃度を低下させることを示す添付文書を含んでいるものを含む。あるいは、上記の添付文書は、アシル化グレリンと結合するよりも(比較的)非アシル化グレリンと選択的に結合することによって、抗体がアシル化グレリン活性よりも(比較的)非アシル化グレリン活性を選択的に中和するか、又はアシル化グレリンの濃度を低下させるよりも(比較的)非アシル化グレリンの濃度を選択的に低下させることを更に示してもよい。本発明は、本願明細書において開示される実施態様のあらゆる並べ替え及び組み合わせを含む。
【0034】
本発明の更なる適用範囲は、下記の詳細な説明から明確になるであろう。しかしながら、本発明の範囲内での様々な改変や変更の態様が、その詳細な説明から当業者にとり明らかとなるため、以下の詳細な説明及び実施例は、本発明の好ましい実施例を示すものの、例示のみを目的として開示されるものと理解すべきである。
(図面の簡単な説明)
【0035】
上記及び他の態様、特徴及び本発明の効果が、添付の図面と組み合わせた上で以下の詳細な説明から十分に理解されるが、それらの全ては例示のみを目的としてなされるものであり、本発明を限定するものではない。
【0036】
図1は、非アシル化グレリンへのFab 5611の結合を測定するための、アシルグレリン、非アシル化グレリン、並びにアシルグレリンのアミノ酸2〜28及び3〜28を使用した競争的ELISAの結果を示す(実施例2にて説明)。
【0037】
図2は、非アシル化グレリンへのFab 5611の結合を測定するための、非アシル化グレリン、1−8の(cys)非アシル化グレリン、4−28(cys)及び9−28を使用した競争的ELISAの結果を示す(実施例2にて説明)。
【0038】
図1の「2−28のアシルグレリン」及び「3−28のアシルグレリン」は各々、分子のN末端における端から1又は2個のアミノ酸を欠失したアシルグレリン(配列番号17)を指す。図2の「1−8の(cys)非アシル」は、C末端に付加的なシステイン残基を有する、配列番号17のアミノ酸1−8からなる非アシル化グレリン断片を指す。「4−28(cys)」は、C末端に付加的なシステイン残基を有する、アミノ酸4−28からなるグレリン断片を指す。「9−28」は、配列番号17のアミノ酸9−28からなるグレリン断片をいう。
【0039】
図3は、Fab 5611及びアシルグレリン及び非アシル化グレリンを有するモノクローナル抗体E8を用いた競争的ELISA分析法の結果を示す(実施例2にて説明)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下の発明の詳細な説明は、本発明に関連する当業者を補助するためのものである。しかしながら、以下の詳細な説明は、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。なぜなら、本願明細書において記載される実施態様の修正変更が、その技術的思想又は本発明の発見の範囲から逸脱することなく、当業者によってなされうるからである。
【0041】
本願明細書において各々の引例の内容は、それらの全部が参照によって本願明細書に援用される。
【0042】
本発明は、哺乳動物の非アシル化グレリンに選択的に結合するモノクローナル抗体又はその機能性断片(例えば抗原結合断片)に関する。本発明のモノクローナル抗体が結合する抗原性のエピトープは、少なくとも成熟した非アシル化グレリンのアミノ酸残基1−3に局所化される。一つの実施態様において、本発明のモノクローナル抗体は、非アシル化グレリン受容体へのリガンド(例えば非アシル化グレリン)の結合をブロックするか、又は非アシル化グレリンの生物的活性を阻害する。
【0043】
本発明の抗体は、成熟した非アシル化グレリン又はその部分と選択的に結合し、その親和性は、少なくとも約1×10−8M、好ましくは少なくとも約1×10−9M、より好ましくは少なくとも約1×10−10M、すなわち、少なくとも約1×10−8M〜約1×10−10Mへの範囲である。好ましくは、本発明の抗体は、従来技術で公知のいかなる標準的な結合試験でのバックグラウンドのレベル以上にアシル化グレリンと結合しない。一つの実施態様において、本発明の抗体は、in vitro又はin vivoにおける非アシル化グレリン生物的活性を約150μg/mL未満で、好ましくは約100μg/mL未満で、より好ましくは90、80、70、60、又は50μg/mL未満で、更により好ましくは約20μg/mL未満で、すなわち約20μg/mL〜約150μg/mLの範囲内、及びその部分範囲内において抑制する効果を示す。
【0044】
天然型の全長の抗体は、4つのペプチド鎖、すなわち2つの重(H)鎖(50−70kDaの完全長)及び2つの軽(L)鎖(25kDaの完全長)が、ジスルフィド結合によって相互に結合して構成されている免疫グロブリン分子である。各鎖のアミノ末端部は、主に抗原認識に関与する約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部は、主にエフェクター機能を担う定常領域を構成する。
【0045】
軽鎖は、κ又はλと分類され、特定の定常領域によって特徴づけられる。重鎖はγ、μ、α、δ又はεと分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEと規定する。
【0046】
各重鎖のタイプは、特定の定常領域によって特徴づけられる。各重鎖は、重鎖可変領域(本願明細書において「HCVR」)及び重鎖定常領域を含んでなる。重鎖定常領域は、IgG、IgD及びIgAにおいては3つの領域(CH1、CH2及びCH3)、及びIgM及びIgEにおいては4つの領域(CH1、CH2、CH3及びCH4)を含んでなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本願明細書において「LCVR」)及び軽鎖定常領域を含んでなる。軽鎖定常領域は、1つの領域(CL)からなる。HCVR及びLCVRの領域は、相補性決定領域(CDRs)と称される超可変領域に更に分割することができ、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域と共に点在している。各HCVR及びLCVRは、3つのCDRs及び4つのFRs(アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配列)を含んでなる。各領域に対するアミノ酸の割当ては、公知の慣例(例えばKabat、”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)又はChothia numbering scheme(Al−Lazikaniらに記載のJ.Mol.Biol.273:927−948,1997)、また、インターネットサイトhttp:www.rubic.rdg.ac.uk/〜andrew/bioinf.org/absを参照)に従う。特定の抗原を結合する抗体の機能は、総合的に6つのCDRsにより測定される。抗原特異的な3つのCDRsのみを含む単一の可変ドメインでも抗原を認識し、結合する能力を有しうるが、完全なFabと比較し低い親和性である。
【0047】
本明細書で用いられる、抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体に対する「抗体」(又は簡単に、「本発明のモノクローナル抗体」)という用語は、モノクローナル抗体を指す。本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」は、齧歯類、好ましくはマウス抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体又はヒト化抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体は、例えば公知技術のハイブリドーマ技術、並びに組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術又は従来技術において公知のこれらの技術の組み合わせを使用して行うことができる。本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術によって生産される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」とは、例えば単一のコピー又はクローン(例えばいかなる真核生物、原核生物又はファージクローン)に由来する抗体を指し、及びそれが作製される方法のことではない。「モノクローナル抗体」は、完全な(完全であるか完全長)抗体、実質的に完全な抗体、又は抗原結合部(例えばげっ歯類の抗体、キメラ抗体若しくはヒト化抗体のFab断片、Fab’断片若しくはF(ab’))を含む抗体の部分又は断片であってもよい。
【0048】
本発明における、「抗原−結合部」又は「抗原結合断片」又は「抗原−結合領域」又は「抗原−結合領域」は、それぞれ本願明細書において、抗体分子の部分であって、抗原と相互作用するアミノ酸残基を含み、抗原のための親和性及び特異性を抗体に付与するものを指す。この抗体部は、抗原−結合性の残基の適当なコンフォメーションを維持するのに必要な「フレームワーク」のアミノ酸残基を含む。好ましくは、本発明の抗体の抗原−結合領域のCDRは、げっ歯類由来である。他の実施態様において、抗原−結合領域は、ウサギ、ラット又はハムスターを含む他のヒト以外の種に由来してもよいが、これに限定されない。更にまた、本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」は、単鎖Fv断片であってもよく、リンカー配列を有するLCVR及びHCVRをコードするDNAを連結させることにより作製することができる(Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp269−315,1994を参照)。断片が特定されるか否かに関係なく、本明細書で用いられる用語「抗体」は、単鎖の形態と同様に、そのような断片を含むものと理解される。タンパク質がその標的(すなわちエピトープ又は抗原)に特異的又は選択的に結合する能力を保持する限り、それは、用語「抗体」の範囲内で含まれる。抗体は、グリコシル化されてもされなくても本発明の範囲内に含まれる。「モノクローナル抗体」は、均一であるか実質的に均一な(又は純粋な抗体であって、すなわち、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、より好ましくは少なくとも約97%又は98%、最も好ましくは少なくとも99%の抗体が同一で、同じ抗原又はエピトープにおいてELISAにおいて競争するものを指す。このように、本発明の均一又は実質的に均一な抗体は、約90%〜約99又は100%同一の抗体又はそのいかなる部分範囲も含む。本願明細書において使用される「特異的に結合する」又は「選択的に結合する」の用語は、特異的な一対の結合における1つの構成要素が、その特異的な結合パートナー以外の分子と顕著に結合しない状況を指す。上記用語はまた、例えば本発明の抗体の抗原−結合ドメインは特定の多くの抗原によって担持されるエピトープに特異的である場合にも適用でき、そのケースの場合、その抗原−結合ドメインを有している特異的な抗体はエピトープを担持している様々な抗原に結合することが可能である。したがって、本発明のモノクローナル抗体は、特異的に非アシル化グレリンと特異的に及び/又は選択的に結合する一方で、アシル化グレリンとは結合又は特異的結合を行わない。
【0049】
一つの実施態様において、本発明のモノクローナル抗体は、非アシル化グレリンではないタンパク質又はペプチド(例えばアシル化グレリン)と、約20%未満(より好ましくは、セント交差反応性につき19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1についてより少ない)の交差反応性(すなわちこの種のタンパク質又はペプチドに対する約20%未満〜約1%未満又はそのいかなる部分範囲における交差反応性)を有する。好ましくは、本発明の抗体は、競争ELISA又はBIAcore解析によって測定した場合、非アシル化グレリンと、アシル化グレリンよりも少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100倍以上の強度で結合し、より好ましくは、アシル化グレリンよりも少なくとも約150、200又は250倍の強度で結合する。最も好ましくは、本発明の抗体は、当業者に利用可能ないかなる結合試験のバックグラウンドレベルよりも大きいレベルでアシル化グレリンと結合しない。
【0050】
本発明の抗体に関する「生物的性質」又は「生物学的特徴」のフレーズ、又は「活性」又は「生理活性」の用語は、本願明細書において交換可能に使用され、抗体のエピトープ/抗原親和性及び特異性(例えば非アシル化グレリン又は配列番号17中で示される配列からなるペプチドと結合する抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体)、in vivo、in vitro又はin situで非アシル化グレリンの活性と拮抗する能力、抗体のin vivoでの安定性及び免疫源性、を含むが、これに限定されるものではない。従来技術において認識される抗体の他の定義可能な生物的性質又は特徴は、例えば、交差反応性(すなわち、目標とされたペプチドのヒト以外のホモログ、又は通常の他のタンパク質又は組織との)、及び哺乳動物細胞におけるタンパク質の高い発現量を維持する能力を含む。上述した特性又は特徴は、ELISA、競争ELISA、BIAcore表面プラズモン共鳴分析、非限定的なin vitro及びin vivoでの中和分析、受容体結合、サイトカイン又は生育因子の産生及び/又は分泌、ツメガエルアニマルキャップの発生、細胞情報伝達、及びヒト、霊長類又は他の必要となるいかなる供給源からの組織切片を用いた免疫組織化学を含むがこれに限らない一般に用いられる技術を使用して観察、測定又は評価されうる。
【0051】
本発明の抗体の活性に関して本願明細書において使用される「阻害する」又は「中和する」の用語は、例えば限定されないが、生物的活性若しくは特性、又は疾患若しくは症状を含む、阻害の対象となるものの進行又は重症度を、実質的に拮抗、禁止、防止、抑制、減速、崩壊、除去、停止又は逆転させる能力を指す。核酸又はタンパク質(例えば抗体)に関連して使用される「分離されて」の用語は、同定され、通常その天然給源に存在する少なくとも一つの夾雑物質から分離された核酸配列又はタンパク質を指す。
【0052】
好ましくは、「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性(例えば、本発明の医薬組成物は、非アシル化グレリンと特異的に結合し、非アシル化グレリン以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない、単離された抗体を含む。)を有する別の抗体を実質的に含まない抗体である。
【0053】
「カバット番号付け」及び「カバット標識」及び「カバットによるEUインデックス」の用語は、本願明細書において相互に交換して使用できる。当業者に認識されるこれらの語は、Igのアミノ酸残基に番号を付与するシステムを指し、例えば、本願明細書の図2において反映される(Kabatら、Ann.NY Acad.Sci.190:382−93(1971)、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991))。
【0054】
他のポリヌクレオチドとの機能的な関係を有するときに、ポリヌクレオチドは「使用可能に連結される」という。例えば、配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーター又はエンハンサーがコード配列に使用可能に連結される。
【0055】
「個体」、「対象」及び「患者」(本願明細書において相互に交換して使用可能)の用語は、哺乳動物(マウス、サル、ヒト、哺乳動物の家畜、哺乳動物の競技用の動物及び哺乳動物のペットを含むがこれに限らない)を指す。好ましくは、上記用語はヒトを指す。
【0056】
「ベクター」という用語は、連結された他の核酸を輸送できる核酸分子が含まれ、プラスミド及びウィルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞にて自律増殖ができ、一方他のベクターは宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それにより宿主ゲノムに伴って複製される。更に、特定のベクターは、使用可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。この種のベクターは本明細書において、「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と称され、典型的なベクターが公知となっている。
【0057】
「宿主細胞」の用語には、本発明のいかなる単離されたポリヌクレオチド又は本発明のHCVR、LCVR又はモノクローナル抗体を含むあらゆる組換えベクターの受け入れ先でもある、個別の細胞又は細胞培養が含まれる。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を含むが、その子孫は、自然の、偶然の、人為的な突然変異及び/又は変化により、親細胞と必ずしも完全に(形態学的に、又は全体のDNA対において)同一であるわけではない。宿主細胞には、in vivo、in situ又はin vitroで、組換えベクター又はポリヌクレオチドにより形質転換、形質導入又は感染され、本発明のモノクローナル抗体又はその軽鎖又は重鎖を発現する細胞が含まれる。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞(安定して宿主染色体に導入されてもされなくてもよい)を、「組換え宿主細胞」と呼んでもよい。本発明に用いられる好適な宿主細胞は、CHO細胞(例えばATCC番号 CRL−9096)、NS0細胞、SP2/0セル、COS細胞(ATCC番号で例えばCRL−1650、CRL−1651)及びHeLa細胞(ATCC番号 CCL−2)である。本発明に用いられるその他の宿主細胞には、植物細胞、酵母細胞、他の哺乳動物細胞及び原核細胞が含まれる。
【0058】
本発明の抗体が結合するエピトープ(「本発明の非アシル化グレリンエピトープ」)は、あらゆる哺乳動物(好ましくはヒト)の種の成熟型の非アシル化グレリンのペプチドに存在するアミノ酸1−3の範囲内に位置する。該エピトープを結合する抗体は、アシル化グレリンとの結合と比較し、特異的又は選択的に非アシル化グレリンと結合する。
【0059】
「エピトープ」という用語は、抗体により認識され、抗体の一つ以上の抗原結合領域において結合されうる、分子の部分を指す。エピトープはしばしば、分子(例えばアミノ酸又は糖鎖側鎖)の化学的に活性を有する表層基を含み、特異的な三次元構造上の特性並びに特異的な電荷特性を有する。「阻害エピトープ」及び/又は「中和エピトープ」は、エピトープであって、in vivo、in vitro又はin situにおいて、完全な分子(この場合非アシル化グレリン)の存在下、抗体に結合することによって、分子又はその分子を含む有機体の生物的活性の損失又は低下をもたらすものを指す。
【0060】
本明細書で用いられる「エピトープ」の用語は更に、動物、好ましくは哺乳動物(例えばマウス又はヒト)の抗原性及び/又は免疫原性を有するポリペプチドの部分を指す。本明細書で用いられる「抗原性エピトープ」の用語は、例えばイムノアッセイ法などのいかなる公知技術によって測定したとき、抗体が特異的に結合できるポリペプチドの部分として定義される。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性を有する必要はないが、免疫原性を有してもよい。本明細書で用いられる「免疫原のエピトープ」の用語は、公知技術のいかなる方法によって測定したとき、動物の抗体反応を誘発するポリペプチドの部分として定義される(例えばGeysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002(1983)を参照)。本発明のヒト非アシル化グレリン抗原性エピトープは、配列番号17で示されるアミノ酸配列を有する。あらゆる哺乳動物の種における本発明の非アシル化グレリン抗原性エピトープは、成熟形態の非アシル化グレリンのアミノ酸1−3からなるペプチド内に存在する。
【0061】
本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、成熟型の非アシル化グレリンのアミノ酸1−3に存在することがわかっている抗原性エピトープと結合する。本発明の非アシル化グレリンの免疫原及び/又は抗原性エピトープには、配列番号17に示される配列のアミノ酸1−3が含まれる。好ましくは、免疫原のエピトープは第3のアミノ酸に至るが、それは、アシル化されないという点で、アシル化グレリンの同じ位置のアミノ酸とは異なる。
【0062】
本発明の免疫原のエピトープも、抗原性のエピトープであると考えられる。抗原性エピトープには、成熟型の非アシル化グレリンのアミノ酸1−3の外側に付加的な非アシル化グレリンの残基が含まれてもよいが、本発明のモノクローナル抗体は、これらの付加的な残基が非アシル化グレリンに特異的に結合していることを必要としない。本発明のモノクローナル抗体は、ELISA分析、競争ELISA分析又はBiacoreによりK値の分析により測定したとき、アシル化グレリンとの結合よりも、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100倍大きく、より好ましくは、アシル化グレリンとの結合よりも、約150、200又は250倍大きく(例えばより大きな親和性又はより大きな特異性で)、非アシル化グレリンと結合する。
【0063】
成熟した非アシル化グレリンのアミノ酸1−3(境界を含む)にわたる領域、又は本願明細書において記載されている免疫原エピトープを含むいかなるペプチドが、本発明のモノクローナル抗体を産生させるための免疫源ペプチド(好ましくは、担体蛋白質(例えばKLH)に接合)として使用できる。上記免疫源ペプチドを用いて、ヒト以外の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスに免疫することができる。その後、抗非アシル化グレリン抗体は、免疫された動物から分離され、非アシル化グレリンのアミノ酸1−3と特異的に結合する抗体を単離するための公知の方法でスクリーニングされる。
【0064】
通常、ハイブリドーマは、適切な不死化細胞株(例えば骨髄腫細胞株(例えばSP2/0))と、免疫された動物の抗体産生細胞とを融合させることによって作製できる。抗体産生細胞、好ましくは、脾臓又はリンパ節細胞は、目的抗原によって免疫された動物から得られる。融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択培養条件を使用して単離し、限界希釈法によってクローニングできる。所望の結合性を有する抗体を生産する細胞は、適切なアッセイ法によって選抜できる。この種の単離及びスクリーニング方法は公知である。強化された技術(例えばファージディスプレイ(Matthews DJ 及びWells JA、Science.260:1113−7,1993)、リボソームディスプレイ(Hanesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:14130−5,1998)、バクテリアルディスプレイ(Samuelson Pら、Journal of Biotechnology.96:129−54,2002)又は酵母ディスプレイ(Kieke MCら、Protein Engineering,10:1303−10,1997))を用いたライブラリーからの抗体断片の選抜が、古典的なハイブリドーマ技術に替わる有用な技術として知られている(最近ではLittle Mら、Immunology Today,21:364−70,2000を参照)。本発明の抗体は、公知の方法を使用して、キメラ化又はヒト化した形に変形することができる。
【0065】
ヒト化又は人工抗体を含む、成熟した非アシル化グレリンのアミノ酸1−3と結合する抗体を生産又は単離する他の適切な方法を用いてもよく、例えば、組換え抗体(例えば単鎖Fv又はFab)をライブラリーから選択する方法、又は、ヒト化抗体(例えばJakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−2555,1993、Jakobovitsら、Nature,362:255−258,1993、Lonbergら、米国特許第5,545,806号、Suraniら、米国特許第5,545,807号)のレパートリーを産生できるトランスジェニック動物(例えばマウス)への免疫に依存する方法が含まれる。単鎖抗体、キメラ、ヒト化又は霊長類化(CDR移植された)抗体、並びに、異なる種に由来する部分を含むキメラ又はCDR移植された単鎖抗体若しくはその類似体は、本発明に、又はその「抗体」の用語に含まれる。これらの抗体の様々な部分は、合成的に、従来技術によって化学的に結合することができ、又は遺伝子工学的な技術を使用して隣接するタンパク質として調製できる。例えば、キメラ又はヒト化された鎖をコードする核酸を発現させ、隣接するタンパク質を生産させることができる。例えば米国特許第4,816,567号、ヨーロッパ特許第0125023B1号、米国特許第4,816,397号、ヨーロッパ特許第0120694B1号、国際公開第86/01533号、ヨーロッパ特許第0194276B1号、米国特許番号5,225,539号、ヨーロッパ特許第0239400B1号及び米国特許番号5,585,089号及び5,698,762号を参照。また、Newman,Rら、BioTechnology,10:1455−1460,1993の霊長類化抗体に関する記載、及びLadnerら、米国特許第4,946,778、Bird,R.Eら、Science,242:423−426,1988の単鎖抗体に関する記載を参照。
【0066】
更に、抗体の機能性断片(キメラ、ヒト化、霊長類化又は単鎖抗体の断片を含む)を産生させることもできる。前述の抗体の機能性断片には、全長の抗体に由来する結合機能及び/又は生物学的機能の少なくとも一つが保持されている。好適な機能性断片は、その対応する全長抗体の抗原結合能(例えば哺乳動物の成熟型の非アシル化グレリンと結合する能力)が保持されている。特に好適な機能性断片は、哺乳動物の成熟型非アシル化グレリンに特有の一つ以上の機能又は生理活性(例えば結合活性、シグナル伝達活性及び/又は細胞応答の刺激)を阻害する能力が保持されている。例えば、一実施態様において、機能性断片は、成熟型非アシル化グレリンとその一つ以上のリガンドとの相互作用を阻害でき、及び/又はレセプターによって媒介される一つ以上の機能を阻害できる。
【0067】
哺乳動物の成熟した非アシル化グレリンに対する結合又はその部分ができる抗体断片には、Fv、Fab、Fab’及びF(ab’)が含まれるが、これに限定されるものではなく、また本発明の範囲に含まれる。この種の断片は、酵素分解又は組換え技術によって生産できる。例えば、パパイン又はペプシンによる分解により、Fab又はF(ab’)断片を生産することができる。抗体は、一つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を使用して、様々な切断型の形態で生産してもよい。例えば、F(ab’)の重鎖部をコードするキメラの遺伝子は、重鎖のCH1領域及びヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。
【0068】
好ましい実施態様において、本発明は、上記の方法から得られる抗成熟型非アシル化グレリンモノクローナル抗体であって、好ましくは非アシル化グレリン又はその部分と、例えば固相BIAcore表面プラズモン共鳴により測定した場合、少なくとも約1×10−10M、好ましくは少なくとも約1×10−9M及びより好ましくは、少なくとも約1×10−8M、すなわち、少なくとも約1×10−10M〜約1×10−8M、からの範囲の少なくともの親和性において結合し、それが成熟型非アシル化グレリンの生物的活性に拮抗する能力を有するものである。
【0069】
本発明の好適なモノクローナル抗体は、配列番号2のペプチド配列を含むLCVR及び/又は配列番号10のペプチド配列を含むHCVRを有する。更にまた、本発明のモノクローナル抗体は、配列番号2及び10に示される配列を有する2つのポリペプチドを含むモノクローナル抗体の存在により、成熟したヒト非アシル化グレリン(又はその部分)との結合を競争的に阻害されるものである。
【0070】
他の実施態様において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体のLCVRは、配列番号4、6及び8(表1参照)に示される配列からなる群から選択されるペプチドのうちの1つ、2つ又は3つのペプチドを含む。本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体のHCVRは、配列番号12、14及び16に示される配列からなる基から選択されるペプチドのうちの1つ、2つ又は3つのペプチドを含む。
【0071】
好ましい実施例において、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。あるいは、抗体に存在するフレームワーク及びいかなる定常領域も、抗体が治療目的で適用される動物のゲノムから実質的に得ることができる。好適な抗体は全長の抗体である。
【0072】
本発明はまた、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体又はその部分を発現する細胞株に関する。本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株の作製及び単離は、公知の標準的な技術を使用して行うことができる。好適な細胞株は、COS、CHOを含むSP2/0、NS0及び酵母、(公的な寄託機関、例えばATCC(American Type Culture Collection,Manassas,VA)から入手可能である)。
【0073】
多種多様な宿主発現系(原核生物(細菌)及び真核生物発現システム(例えば酵母、バキュロウイルス、植物、哺乳動物及び他の動物細胞、遺伝子移入動物、及びハイブリドーマ細胞、並びにバクテリオファージディスプレイ発現系を含む)が、本発明の抗体の発現に使用することができる。細菌の発現ベクターの適切な例はpUC119であり、適切な真核生物発現ベクターは、弱いDHFR選抜系を伴う修飾型のpcDNA3.1ベクターである。他の抗体発現システムもまた公知であり、本発明に含まれる。
【0074】
本発明の抗体は、組換え免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の宿主細胞における発現により調製することができる。抗体を組換え技術により発現させるためには、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び/又は重鎖をコードするDNA断片を移送する一つ以上の組換え発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換、形質導入又は感染させる等の操作を行い、軽鎖及び/又は重鎖を宿主細胞において発現させる。重鎖及び軽鎖を、1つのベクターを用い、異なるプロモーターと使用可能にそれぞれに連結させて発現させてもよいし、又は、重鎖及び軽鎖を、2つのベクターを用い、異なるプロモーターと使用可能にそれぞれ連結させ、それぞれ、一つは重鎖を発現させ、一つは軽鎖を発現させる形で、発現させることができる。あるいは、重鎖及び軽鎖は、異なる宿主細胞において発現させてもよい。好ましくは、組換え抗体は宿主細胞の培地に分泌され、そこから抗体を回収又は精製することができる。標準的な組換えDNAの手法を用いて、抗体の重及び軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組み込み、そのベクターを宿主細胞に導入する。この種の標準的な組換えDNA技術は、例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis編、Molecular Cloning; A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates,1989に記載されている。
【0075】
HCVR領域をコードする単離されたDNAは、HCVRをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする他のDNA分子と使用可能に連結することによって、全長の重鎖遺伝子に変形させることができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、従来技術において公知である。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991)を参照。例えば標準的なPCR増幅によって、これらの領域を含むDNA断片を得ることができる。上記の重鎖定常領域は、いかなるタイプ(例えばIgG、IgA、IgE、IgM又はIgD)、クラス(例えばIgG、IgG、IgG及びIgG)若しくはサブクラスに属する定常領域、又はKabat(上記)に記載のいかなるアロタイプ異型でもよい。あるいは、抗原結合部分は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv又は単鎖Fv断片(scFv)でもよい。Fab断片の重鎖遺伝子の場合、HCVRをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域だけをコードする他のDNA分子と使用可能に連結してもよい。
【0076】
LCVR領域をコードする単離されたDNAは、LCVRをコードするDNAを軽鎖定常領域(CL)をコードする他のDNA分子に使用可能に連結することによって、全長の軽鎖遺伝子(同様にFab軽鎖遺伝子)に変形することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、従来技術において公知である。上記のKabatの文献を参照。これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であってよい。
【0077】
scFv遺伝子を作製するために、HCVR−及びLCVRをコードするDNA断片が可撓性リンカーをコード(例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser3)をコード)する他の断片に使用可能に連結され、それにより、可撓性リンカーでLCVR及びHCVR領域が連結された状態で、隣接する単鎖タンパク質としてHCVR及びLCVR配列を発現させることができる。Birdら、Science 242:423−6,1988、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83,1988、McCaffertyら、Nature 348:552−4,1990を参照。
【0078】
本発明の抗体の発現において、軽鎖及び/又は重鎖の部分若しくは全長をコードするDNA(上記の通り得られる)を発現ベクターに挿入し、それによりその遺伝子は、転写及び翻訳制御配列と使用可能に連結される。発現ベクター及び発現制御配列は、発現に使用する宿主細胞と互換性を持つよう選択される。抗体の軽鎖遺伝子及び抗体の重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入してもよいが、典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法によって発現ベクターに挿入される。更に、組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体の軽鎖及び/又は重鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードしてもよい。抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体の軽鎖及び/又は重鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端に対して、使用可能に読み枠を合わせて連結する形でベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンのシグナルペプチド又は異なるもののシグナルペプチドであってよい。
【0079】
抗体の重鎖及び/又は軽鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞の抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を有する。「制御配列」の用語は、必要に応じて、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現調節要素(例えばポリアデニル化シグナル)を含むものとして意図される。発現ベクターの設計は、制御配列の選抜を含み、形質転換される宿主細胞の選択及び要求されるタンパク質発現のレベルのような要因に依存する。哺乳動物由来の宿主細胞での発現に好適な制御配列には、哺乳動物細胞のタンパク質の高発現を導くウィルス由来の要素(例えばサイトメガロウイルス(CMV)、Simian Virus 40(SV40)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス後期主要プロモーター(AdMLP))及びポリオーマウイルス属プロモーター及び/又は由来エンハンサー)が含まれる。
【0080】
本発明の組換え発現ベクターには、抗体の重鎖及び/又は軽鎖遺伝子及び制御配列に加え、付加的な配列、例えば宿主細胞中のベクター及び一つ以上の選択可能なマーカー遺伝子の複製を調節する配列(例えば複製開始点)を含めてもよい。選択可能なマーカー遺伝子により、ベクターが導入された宿主細胞の選抜が容易になる。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子の存在により、ベクターが導入された宿主細胞に薬剤(例えばG418、ハイグロマイシン又はメトトレキセート)に対する耐性が付与される。好適な選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選抜/増幅による、DHFR欠損の宿主細胞に使用)、neo遺伝子(G418選抜に使用)、及びグルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子(GS陰性細胞株(例えばNS0)における選抜/増幅)が含まれる。
【0081】
軽鎖及び/又は重鎖の発現において、重鎖及び/又は軽鎖をコードする発現ベクターを、標準的な技術(例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストランによるトランスフェクション、形質導入、感染など)によって宿主細胞に導入することができる。本発明の抗体を原核生物又は真核生物宿主細胞において発現させることが理論的に可能であるが、真核細胞が好適であり、最も好ましくは哺乳動物の宿主細胞である。その理由は、この種の細胞の使用により、適切にフォールディングされ、免疫学的に活性を有する抗体が形成され、分泌される可能性が高いことである。本発明の組換え抗体を発現させるための好適な哺乳動物由来の宿主細胞には、例えば、DHFRを選択マーカーとして使用(例えばKaufman及びSharp、J.Mol.Biol.159:601 21,1982に記載)したChinese Hamster Ovary(CHO細胞)(DHFR−CHO細胞を含む、Urlaub及びChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−20,1980に記載)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2/0細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されると、抗体は、宿主細胞を、宿主細胞が抗体を発現するのに十分な一定期間培養すること、又は、より好ましくは、宿主細胞を増殖させる培地に抗体の分泌をさせることによって得られる。抗体は、標準的な精製方法を使用し、宿主細胞及び/又は培地から回収することができる。
【0082】
また、宿主細胞を用いて、従来技術により完全な抗体の部分又は断片(例えばFab断片又はscFv分子)を生産することもできる。上記工程の変法もまた本発明の範囲内であることが理解されるであろう。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖の両方をコードするDNAを用いて宿主細胞をトランスフェクションさせることも望ましいと解される。組換えDNA技術を用いて、軽及び重鎖のいずれか又は両方のうち、非アシル化グレリンとの結合のために必要でないものの部分又は全てに関するDNAコーディングを取り除いてもよい。この種の切除されたDNA分子から発現される分子もまた、本発明の抗体に含まれる。
【0083】
本発明の抗体の組換え発現の好適なシステムにおいて、抗体の重鎖及び抗体の軽鎖をコードする組換え発現ベクターは、例えば、リン酸カルシウムによる形質移入によってDHFR−CHO細胞に導入される。抗体の重及び軽鎖遺伝子は、組換え発現ベクター上で、遺伝子の高い転写を誘導するために、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えばSV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する、例えばCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節因子、又はSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節因子)に各々使用可能に連結される。組換え発現ベクターはまたDHFR遺伝子を有し、それにより、ベクターを使用してトランスフェクションしたCHO細胞の、メトトレキセート選抜/増幅による選抜を可能にする。選抜された形成転換宿主細胞を、抗体の重鎖及び軽鎖の発現のために培養し、更に完全な抗体を培地から回収する。標準的な分子生物学技術を用いた場合、組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞をトランスフェクションし、形質転換体を選抜して、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。本発明の抗体又はその抗原結合部はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック動物(例えばマウス)(例えばTaylorら、Nucleic Acids Res.20:6287−95,1992)において発現させてもよい。
【0084】
発現を行った後、完全な抗体、それらの二量体、個々の軽及び重鎖又は本発明の他の形の免疫グロブリンを、硫安塩析、イオン交換、親和性、逆相、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法などを含む技術の標準的技術に従って精製することができる。製薬用途には、少なくとも約90%、92%、94%又は96%の均一性を有する実質的に純粋な、最も好ましくは98%〜99%以上の均一性を有する、免疫グロブリンが好適である。ペプチドを目的通りに部分的又は均一に純化した後、本発明が目的とするような治療又は予防に使用することができる。
【0085】
本発明において、「キメラ抗体」の用語は、一価、二価又は多価の免疫グロブリンを含む。一価のキメラ抗体は、ジスルフィド架橋でキメラの軽鎖がキメラの重鎖と結合して形成される二量体である。二価のキメラ抗体は、少なくとも一つのジスルフィド架橋で結合する、2つの重鎖−軽鎖二量体によって形成される四量体である。
【0086】
ヒトに用いられる抗体のキメラの重鎖には、少なくともヒト重鎖定常領域(例えばCH1又はCH2)の一部と連結している、ヒト以外の抗体の重鎖に由来する非アシル化グレリンに特異的な抗原−結合領域含まれる。ヒトに用いられる抗体のキメラの軽鎖には、非アシル化グレリンに特異的なヒト以外の抗体の軽鎖に由来し、ヒト軽鎖定常領域(CL)の少なくとも一部と連結している抗原結合領域が含まれる。
【0087】
同じ又は異なる可変領域における結合性特異性を有するキメラの重鎖及び軽鎖を有する抗体、断片又は誘導体は、公知の方法により、個々のポリペプチド鎖を適切に集合させることにより調製することができる。
【0088】
この方法により、キメラの重鎖を発現する宿主はキメラの軽鎖を発現する宿主とは別に培養され、免疫グロブリン鎖は別々に回収され、その後集合させられる。あるいは、その宿主を共に培養し、培地においてそれらの鎖を即座に集合させ、その後集合した免疫グロブリン又は断片を回収することも可能である。
【0089】
キメラ抗体産生方法は、公知技術である(米国特許第6,284,471号、5,807,715号、4,816,567号及び4,816,397を参照)。
【0090】
好ましい実施例において、少なくとも、接合(J)領域と共に機能的に再編成された可変(V)領域のような、ヒト以外の起源の抗原−結合領域をコードする第1のDNA部分、及びそれが連結する、米国特許第6,284,471号に記載の、ヒトの定常(C)領域の少なくとも1部をコードする第2のDNA部分を含む遺伝子が作製される。
【0091】
好ましくは、治療目的のために使用される本発明の抗体は、それが治療に使われる哺乳動物に由来する抗体中に存在するフレームワーク及び定常領域の配列を有し、それにより、哺乳動物において治療な抗体に対する免疫反応が誘導される可能性を減少させることができる。
【0092】
ヒト化抗体は特に研究が進められているが、その理由は、医療用途に有用であると考えられることや、齧歯類の抗体の場合にしばしば観察されるヒトの抗マウス抗体反応を回避できることである。本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、異なる起源の抗体の部分を含むが、少なくとも一つの部分がヒト起源である免疫グロブリンを意味する。例えば、上記ヒト化抗体には、必要な特異性を有するヒト以外の起源(例えばマウス)の抗体、及びヒト起源の抗体に由来する部分を含めることができ、従来の技術(例えば合成反応)によって化学的に結合させるか、又は遺伝子工学的手法を使用して隣接するポリペプチドとして調製することにより得られる。好ましくは、「ヒト化抗体」はヒト以外の抗体(好ましくは、マウスモノクローナル抗体)由来のCDRsを有し、その一方で、フレームワーク及び定常領域は、それが存在する(又はその顕著若しくは相当な部分(すなわち少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%又は99%)である)場合には、該抗体がヒト細胞又はそれ以外から得られるにせよ、ヒトの生殖細胞の免疫グロブリン領域(例えばInternational ImMunoGeneTics Database参照)又はその組換え若しくは変異型に由来する核酸配列情報によってコードされる。ヒト化抗体は完全な抗体、実質的に完全な抗体、抗原結合部位を含む抗体の一部、又はFab断片、Fab’断片、F(ab’)又は単鎖Fv断片を含む抗体の一部であってよい。ヒト化抗体の作製において、CDRの両末端のアミノ酸が、ヒトの産生細胞系において、フレームワーク配列の部分に隣接するアミノ酸によって置換されうることが考えられる。
【0093】
ヒト化抗体は、従来技術で通常使用される方法によりin vitro変異導入(又はヒトIg配列によるトランスジェニック動物が使われるときは、in vivoでの体細胞突然変異導入)を行うことができ、それにより、HCVRのフレームワーク領域及びヒト化組換え抗体のLCVR領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系HCVR及びLCVR配列に関連する配列に由来するものの、in vivoでヒト抗体産生細胞系レパートリーに天然に存在しえない配列となる。HCVRのこの種のアミノ酸配列及びヒト化組換え抗体のLCVRフレームワーク領域は、ヒト生殖細胞系配列と、少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%又は、最も好ましくは少なくとも99%の同一性であると解される。
ヒト化抗体は、ヒトの治療において、非ヒト化及びキメラ抗体にはない、少なくとも以下の3つの利点が考えられる:
(i)エフェクター部がヒト由来であるため、ヒト免疫系の他の構成要素(例えば、補体依存性細胞障害又は抗体依存性細胞障害によってより能率的に標的細胞を破壊するもの)と好適に相互作用できること、
(ii)ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク又は定常領域を異物のように認識することがなく、したがって、この種の注入された抗体に対する抗体反応は、全部が外部由来の非ヒト抗体又は部分的に外部由来のキメラ抗体に対するもの以下であること、
及び、(iii)注入された非ヒト抗体は、ヒトの循環器中でヒト抗体の半減期より非常に短い半減期であることが報告されていること。注入されたヒト化抗体は、天然に存在するヒト抗体に非常に類似する半減期を有するため、少量かつ少ない頻度での投与が可能となる。
【0094】
いくつかの場合において、ヒト化により抗体の抗原への結合が負の影響を受けることもある。好ましくは、本発明のヒト化された抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体は、マウスの親抗体と比較し、約50%以上の、好ましくは約30%以上の、最も好ましくは約25%、20%、15%、10%又は5%以上の、非アシル化グレリンへの結合親和性、すなわち、好ましくはFab 5611と比較し、約50%以上から約5%以上の範囲の、非アシル化グレリンへの結合親和性を有する。好ましくは、本発明のヒト化抗体は、本願明細書において記載されているFab 5611と同じエピトープと結合する。この種の抗体は、成熟した非アシル化グレリン又は配列番号17で示される配列を有するペプチドについて、Fab 5611と、結合を競合する能力に基づき同定できる。一般に、ヒト化抗体は、本発明の非アシル化グレリンのエピトープと結合する抗体のHCVR及びLCVRをコードする核酸配列を得、該HCVR及びLCVR(ヒトでない)のCDRを同定し、この種のCDRをコードする核酸配列を、選抜されたヒトのフレームワークをコードする核酸配列に導入することによって得られる。好ましくは、ヒトのフレームワークのアミノ酸配列は、得られる抗体がヒトのin vivoでの投与に適するように選択される。これは、例えば、この種のヒトのフレームワーク配列を含む抗体の上記使用に基づいて決定されうる。好ましくは、ヒトのフレームワーク配列は、それ自身顕著な免疫原を有さない。
【0095】
あるいは、ヒト化される抗体のフレームワークのアミノ酸配列は、公知のヒトのフレームワーク配列のそれらと比較され、CDR−グラフティングに使用されるそのヒトのフレームワーク配列は、親抗体(例えば非アシル化グレリンと結合するマウスの抗体)のそれらと非常に類似の、含まれているそれらの配列に基づいて選択される。従来技術において、多数のヒトのフレームワーク配列が単離され、それらの配列が報告されている。これは、得られるCDRグラフティングされたヒト化抗体であって、親抗体(例えばマウス)のCDRが選択されたヒトのフレームワーク(あるいは可能であればヒトの定常領域)と融合しているものが、実質的に抗原と結合する構造を保持し、ゆえに親抗体の結合親和性を保持する可能性を高めるものである。抗原結合親和性を顕著な程度で保持するためには、選択されたヒトのフレームワーク領域は、好ましくはin vivoでの投与に適する(すなわち免疫原性を有しない)と思われるものである。
【0096】
いずれの方法においても、好ましくはマウスの抗非アシル化グレリン抗体のHCVR及びLCVR領域をコードするDNA配列が得られる。免疫グロブリンをコードする核酸配列をクローニングする方法は、公知である。この種の方法には、例えば、適当なプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、クローニングされる免疫グロブリンのコード配列の増幅を含めてもよい。免疫グロブリンの核酸配列、特にマウスのHCVR及びLCVR配列の増幅に適しているプライマーは、文献において報告されている。この種の免疫グロブリンのコード配列がクローニングされた後、それらは公知の方法によって配列決定される。
【0097】
CDR及びヒト化される抗体のフレームワークをコードするDNA配列が同定されると、CDRをコードするアミノ酸配列がそれから同定され(核酸配列及び遺伝暗号に基づき、また以前の抗体配列との比較によって推定される)、CDRをコードする核酸配列は選択されたヒトのフレームワークのコード配列に挿入される。これは、適当なプライマー及びリンカーを用いて行うことができる。所望の核酸配列のライゲーションのためのプライミングに適しているプライマー及びリンカーを選択する方法は、従来技術における当業者の能力の範囲内でよい。
【0098】
CDRをコードする配列が選択されたヒトのフレームワークをコードする配列に挿入された後、得られる「ヒト化」可変重鎖及び可変軽鎖の配列をコードするDNA配列を発現させ、非アシル化グレリンと結合するヒト化Fv又はヒト化抗体が生産される。典型的には、ヒト化HCVR及びLCVRは、完全な抗非アシル化グレリン抗体分子の一部として、すなわち、ヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質として発現され、そのコードDNA配列は、市販のライブラリーから得られたもの、例えばDNA配列を得る上記の方法のうちの1つを使用して得られたもの、又は公知のものである。しかしながら、上記HCVR及びLCVR配列は、定常領域の配列を欠損させて発現させ、ヒト化抗非アシル化グレリンのFvを生産することもできる。にもかかわらず、ヒトの定常領域の配列との融合が潜在的に望ましく、それは、得られるヒト化抗非アシル化グレリン抗体がヒトにおいてエフェクター機能を有するからである。
【0099】
公知の配列のタンパク質をコードするDNAの合成方法は、公知である。この種の方法を使用して、目的のヒト化HCVR及びLCVR配列をコードするDNA配列(定常領域の有無を問わない)が合成され、更に組換え抗体の発現に適するベクター系で発現される。これは、目的のヒト化されたHCVR及びLCVR配列が、ヒト定常領域の配列を有する融合タンパク質として発現され、機能的な(抗原と結合する)抗体又は抗体断片が生じるために組み合わされることを可能にするいかなるベクター系に対しても有効である。
【0100】
ヒトの定常領域の配列は公知で、文献において報告されている。好適なヒトの軽鎖の定常配列には、軽鎖の定常配列のκ及びλ鎖の配列が含まれる。好適なヒトの重鎖の定常部の配列には、ヒトγ1、ヒトγ2、ヒトγ3及びヒトγr、それらの変異型であって、改変された効果又は機能(例えば強化されたin vivoでの半減期、減少したFc受容体との結合など)を提供するものが含まれる。
【0101】
ヒトのフレームワーク領域は、存在する場合、好ましくは抗原結合領域ドナーと類似又は同等の領域と配列類似性を有するヒト抗体可変領域に由来する。ヒト化抗体のヒト起源部分のフレームワーク領域に用いる他の給源には、ヒト可変部のコンセンサス配列(例えばKettleborough,C.Aら、Protein Engineering 4:773−783 (1991)、Carterら、国際公開第94/04679号)が含まれる。例えば、非ヒト由来の部分を得るために用いる、抗体又は可変領域の配列は、Kabatら、”Sequences of Proteins of Immunological Interest”(Fifth Edition,NIH,U.S. Government Printing Office(1991))にて開示されるヒト配列と比較できる。特に好ましい実施態様では、ヒト化抗体鎖のフレームワーク領域は、非ヒト由来のドナーの可変領域に対して、少なくとも約60%の全体配列同一性、好ましくは少なくとも70%の全体配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の全体配列同一性を有するヒト可変領域に由来する。ヒトの部分はまた、ヒト以外のドナーの同等の部分(例えばFR)と比較したとき、使用されている特定の部分(例えばFR)の範囲内で、少なくとも約65%の配列同一性及び、好ましくは少なくとも約70%の配列同一性を有するヒト抗体に由来してもよい。
【0102】
ある場合には、選択されたヒトのフレームワークに(非アシル化グレリンを結合する抗体からの)CDRを融合させることによって得られるヒト化抗体により、非アシル化グレリンに対する所望の親和性を有するヒト化抗体が提供される。しかしながら、抗原との結合を強化するために、選択されたヒトのフレームワークの特定の残基を更に修飾することは、必要であり、また望ましい。好ましくは、親抗体(例えばマウス)のフレームワーク残基のうち、結合部の構造を維持し又は影響を及ぼすようなものは保持されている。これらの残基は親抗体又はFab断片のX線結晶解析によって確認することができ、それにより抗原結合部位の三次元構造が確認される。
【0103】
更に、マウス抗体のヒト化に関係する使用可能な方法を記載した参考文献として、例えばQueenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2869,1991、米国特許第5,693,761号、米国特許第4,816,397号、米国特許第5,225,539号及びコンピュータープログラムであるABMOD及びENCAD(Levitt,M、J.Mol.Biol.168:595−620,1983に記載)が存在する。
【0104】
本発明の抗体は、治療、診断及び本願明細書に記載のような試験への用途に有用である。本発明の抗体は、ヒト非アシル化グレリンの発現(過剰、過小又は通常の発現)に関連する障害又は疾患の診断に用いることができる。同様の方法で、本発明の抗体を使用し、非アシル化グレリンに関連する症状の治療を受けている患者の非アシル化グレリン濃度をモニターすることができる。臨床検査法には、本発明及びラベルの抗体を利用し、サンプル(例えばヒト体液)、又は細胞若しくは組織エキス中の非アシル化グレリンを検出する方法が含まれる。結合組成物(例えば抗体)は、使用に際し、修飾してもしなくてもよく、検出可能部分を共有結合又は非共有結合させることによって標識される。検出可能部分は、直接又は間接的に、検出可能なシグナルを生じうるいかなるものでもよい。例えば、検出可能部分は、例えば放射性同位元素(例えばH、14C、32P、35S若しくは125I)、又はアルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ若しくは西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素、又はフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン若しくはルシフェリンのような蛍光又は化学発光化合物でもよい。検出可能な部分と抗体とを隔離的に接合するための公知のいかなる方法を使用してもよく、Hunterら、Nature 144:945,1962、Davidら、Biochemistry 13:1014,1974、Painら、J.Immunol.Meth.40:219,1981及びNygren,J、Histochem.And Cytochem.30:407,1982に記載の方法が含まれる。
【0105】
非アシル化グレリンを測定するための様々な通常のプロトコル(例えばELISA、RIAs及びFACSを含む)は、従来技術において公知で、非アシル化グレリン発現の変化した又は異常なレベルを診断するための基礎を提供するものである。通常又は標準の発現値は、公知のいかなる技術を使用して測定してもよく、例えば、抗原・抗体複合体の形成に適切な条件下で非アシル化グレリンのポリペプチドを含むサンプルを抗体と結合させる技術により行われる。抗体には、検出可能な物質によるラベルが直接又は間接的に結合しており、抗体の結合又は非結合の検出が容易となる。好適な検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光材料及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、好適な補欠分子団複合体の例にはストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ、適切な蛍光物質の例にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンが含まれ、発光材料の例にはルミノールが含まれ、更に放射性物質の例には125I、131I、35S又はHが含まれる(例えばZola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,CRC Press,Inc.(1987)を参照)。
【0106】
形成される標準の複合体の量は、様々な方法、例えば光度測定装置により数値化される。次いで、患者において発現される非アシル化グレリンのポリペプチドの量、コントロール及びサンプル(例えば生検を行われた組織由来)中の数値を上記標準値と比較する。標準及び患者値の間の偏差から、特定の障害、状態、症状、症候群又は疾患と、ある一定のレベルの非アシル化グレリンポリペプチドの発現(又はその欠如)量と相関させるためのパラメータを確立する。
【0107】
障害、状態、症状、症候群又は疾患の存在が確認されて治療プロトコルが開始されると、分析を定期的に繰り返し、非アシル化グレリンの発現レベルをモニターする。連続的な分析から得られる結果は、数日から数ヶ月又は数年にわたる期間の治療の有効性を示すために用いられる。特定の障害に関し、生検を行った組織又は患者の体液(例えば血清又は尿)中の非アシル化グレリン量の変化の存在により、障害、状態、症状、症候群又は疾患の進行の素因が示され、又は実際の臨床症状が現れる前にこの種の障害、状態、症状、症候群又は疾患を発見する手段を提供することができ、又は本発明の抗体に治療上反応しそうな患者を定めることができる。より詳細な早期発見により早期治療が可能となり、それにより細胞増殖又は疾患の更なる進行を防止及び/又は改善する。
【0108】
本発明の抗体は、患者への投与に適する医薬組成物に組み込むことができる。この種の抗体はすなわち、この種の組成物における唯一の薬学的な活性成分であってもよく、すなわち本発明の抗体を単独で用いてもよい。あるいは、本発明の抗体は、互いに組み合わせて用いることもできる。更に、本発明の抗体化合物は、単回で又は複数回の服用にて、単独又は薬学的に許容できる担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組み合わせて投与できる。投与される医薬組成物は、選択された投与様式に適するように設計され、適宜、分散剤、バッファー、表面活性剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などの、薬学的に許容できる希釈液、担体及び/又は医薬品添加物が使われる。この種の組成物は、従来の技術(例えばRemington、The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995中に記載が存在し、当業者に公知の製剤技術が解説されている)に従って設計される。
【0109】
本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を含む医薬組成物は、疾病の危険を有する又は発症している患者に対して、本願明細書において記載するように、標準的な経腸及び非経口的投与方法(経口的、静脈、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉注射、鼻腔内、バッカル、舌下腺又は坐薬投与を含む)により投与される。
【0110】
本発明の医薬組成物は、好ましくは「治療上有効量」若しくは「予防上有効量」の本発明の抗体、又は抗体の組み合わせを有する。「治療上有効量」とは、所望の治療効果を得るのに十分(量的及び時間的に必要)な量を指す。抗体の治療上有効量は、疾病状態、年齢、性及び個人の体重のような要因、並びに患者において所望の反応を誘発する抗体又は抗体部の能力に従って変化させることができる。また、治療上有効量とは、治療上有益な効果が、抗体によるいかなる毒性又は有害性をも上回るだける量のことでもある。「予防上有効量」とは、所望の予防効果を得るのに十分(量的及び時間的に必要)な量を指す。典型的には、罹患前又は罹患の初期段階の患者に予防的投与量が用いられることから、その予防上有効量は、治療上有効量よりも少ないと考えられる。
【0111】
治療上有効量は、少なくとも、治療効果を患者に与えるのに必要な、最小量の活性薬剤中であるが、毒性量未満である。換言すると、治療上有効量とは、哺乳動物において好ましくはヒトの症状を治療する量のことであって、その症状とは、非アシル化グレリンの存在によって生じる又は原因となる望ましくない病理学的効果となる、又は、非アシル化グレリンレベルの減少が哺乳動物、好ましくはヒトにとって有益な治療効果となる症状であり、例えば、2型インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)、プラダー−ウィリー症候群、摂食障害、過食症及び拒食症含むがこれに限らない、肥満及び関連障害が挙げられる。更に、この種の抗体は他の障害(不安、胃運動障害(例えば過敏性腸症候群及び機能性消化不良含む)、インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アンドロゲン過多症、多嚢胞性卵巣症候群、癌及び心血管障害を含む)の治療又は予防に有用でありうる。
【0112】
本発明の抗体の投与経路は、経口、非経口、吸入又は局所投与であってよい。好ましくは、本発明の抗体は、非経口適用に適する医薬組成物に配合することができる。本明細書で用いられる非経口的投与の用語には、静脈内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内、腹腔内の投与が包まれる。静脈内又は腹腔内又は皮下注射による周辺全身送達が好ましい。この種の注入に使用する適切な媒介剤は、従来技術の通りである。
【0113】
医薬組成物は通常、設けられている容器(例えば、密封バイアル又はシリンジを含む)中で、製造及び貯蔵条件下で滅菌され及び安定でなければならない。従って、医薬組成物は、組成物を調製した後でフィルター滅菌を行うか、又は微生物学的に適する方法による処理を行うことができる。静脈内注入のための典型的組成物には、250〜1000mLの液体(例えば滅菌されたリンガー氏液、生理食塩水、デキストロース溶液及びハンクス液)、並びに治療上有効な投与量(例えば1〜100mg/mL抗体濃度)が含まれてもよい。投与量は、疾患のタイプ及び重症度によって変化させることができる。医療上公知の通り、患者ごとに使用される投与量は、多くの要因(患者の体の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、健康状態及び併用している他剤を含む)に依存する。典型的な投与量は、例えば、約0.001〜約1000μgの範囲であってよいが、特に上述した要因を考慮した場合には、この典型範囲以下又は以上の投与量も想定されうる。毎日の非経口の薬剤投与計画は、約0.1μg/kg〜約100mg/kg完全体重、好ましくは約0.3μg/kg〜約10mg/kg、より好ましくは約1μg/kg〜1mg/kg、更により好ましくは約0.5〜10mg/kg体重/日であってよい。定期的な評価によって進行をモニターしてもよい。少なくとも数日にわたる反復投与において、症状に応じ、希望通りに疾病の徴候が抑制されるまで処置を反復する。しかしながら、他の薬剤投与計画も有用でありえ、本発明から除外されない。所望の投与量は、担当者が希望する薬物動態学的な崩壊パターンに応じ、単回の丸薬投与、複数回の丸薬投与、又は抗体の連続注入投与によって輸送してもよい。
【0114】
これらの示唆された抗体量は、主に治療上の裁量に委ねられる。適切な投与量及び計画を選択する際の主な要因は、得られる結果である。この場合において考慮される要因には、治療対象となる特定の障害、治療対象となる特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、抗体の送達部位、抗体の特定のタイプ、投与方法、投与計画及び医師に公知の他の要因が含まれる。
【0115】
本発明の治療薬は、貯蔵のために凍結又は乾燥でき、使用前に適切な滅菌済の媒介剤を用いて再調製することができる。凍結乾燥法及び再調製は、多少の抗体活性の喪失につながりうる。投与量は、補償するように調整されなければならない。通常、pHは6〜8の間が好ましい。
【0116】
非アシル化グレリンは、神経内分泌、代謝及び他の関連障害又は疾患に対して重要な役割を果たす(Broglioら、Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 89(6):3062−3065,2004、Gaunaら、Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 89(10):5035−5042,2004、Asakawaら、Gut 54(1):18−24,2005、Chenら、Gastroenterology 129(1):8−25,2005)。ゆえに、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体を含む医薬組成物は、この種の障害を処理するために用いることができ、又は、非アシル化グレリンの存在により生じる、又は原因となる、望ましくない病理学的効果の治療、又は、非アシル化グレリン濃度の減少が哺乳動物に対する治療効果となる症状の治療に有用でありえる。抗非アシル化グレリン抗体は必要に応じて、このペプチドの半減期が増加するような設計をしてもよく、それにより潜在的に活性時間が延長される。
【0117】
本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体又はそれらの組み合わせを、非アシル化グレリン活性が有害であるか、又は、非アシル化グレリンの生理活性レベルの減少により利益を得るような、上述障害のうちの少なくとも1つを、治療又は予防するために使用することが、本発明に含まれる。更に、上述した障害のうちの少なくとも1つを治療する薬剤の製造に使用される、本発明の抗非アシル化グレリンモノクローナル抗体の使用が含まれる。
【0118】
「治療」、「治療する」などの用語は、本発明において、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、その疾患又は症状を完全又は部分的に予防するという意味において予防的と称することができ、及び/又は、疾患及び/又は疾患に起因する悪い情動を部分的又は完全に治療するという意味において治療的と称することができる。本明細書で用いられる「治療」の用語には、特にヒトにおいて、疾患又は症状の治療のための本発明の化合物の哺乳動物への投与であって、
(a)まだ疾患を有すると診断されていない疾患の身体において上記疾患が発症するのを防止すること、
(b)上記疾患を阻害する、すなわちその進行を止めること、及び
(c)疾患から開放する(すなわち疾患若しくは障害を後退させる、又は徴候若しくは合併症を緩和する)こと、を含む投与が含まれる。投与計画は、最適な所望の反応(例えば治療又は予防的な反応)が得られるように調整できる。例えば、単回で丸薬を投与してもよく、時間ごとに複数回に分割して投与してもよく、又は治療状態の緊急性の度合いに従って投与量を減少又は増加できる。
【0119】
以下の実施例は、説明のみを目的として提供されるものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0120】
抗非アシル化グレリンFab及びモノクローナル抗体の合成
Fab合成
【0121】
本願明細書において開示されるCDR及びフレームワーク配列は、Omniclonal(商標)の抗体技術(バイオサイト社、サンディエゴ、CA)を使用して免疫したC57Bl6野生型マウスにて産生される抗体RNAに由来する、抗体ライブラリーから単離されるFab断片のクローンから同定された。9番目のHis残基(配列番号17)をn−オクタン酸でアシル化したヒトのグレリンによってマウスを免疫した。このペプチドの抗原性を高めるため、キーホールリンペットヘモシニアンを、標準的な方法に従いC末端のシステインを介してペプチドにコンジュゲートさせた。
【0122】
表1は、Fab 5611の、LCVR及びその中に含まれるCDR1、2及び3、並びにHCVR及びその中に含まれるCDR1、2及び3の核酸及び対応するアミノ酸配列を示す。LCVR及びHCVRの中の、CDRをコードする核酸の領域を下線で示す。
表1:Fab 5611核酸およびアミノ酸配列
【表1】

【表2】

【0123】
モノクローナル抗体の合成
【0124】
E8マウスのIgGモノクローナル抗体のクローニングを、以下の通り行った。
【0125】
Fab 5611を、PCR鋳型として用い、Fabの重鎖及び軽鎖可変領域を増幅した。
以下のプライマーを設計、合成した。
5611HCF(重鎖正方向プライマー)tccaggatccaccggtcaggttcagctgcaacagtctgag(配列番号18)
5611HCR(重鎖逆方向プライマー)ccaggggctagcggatagacagatgggggtgtcgt(配列番号19)
5611LCF(軽鎖正方向プライマー)tccaggatccaccggtgaccttgtgctgacacagtctcct(配列番号20)
5611LCR(軽鎖逆方向プライマー)gcagaattcggtttaaactcactaacactcattcctgttgaagctcttgac(配列番号21)
【0126】
重鎖可変領域について得られたPCR増幅断片を、BamHI及びNheIによって切断し、マウスIgG1の分泌及び定常ドメインに必要なκシグナルを含む、BamHI/NheI断片を発現ベクターにクローニングした。軽鎖可変領域について得られたPCR増幅断片を、BamHI及びEcoRIによって切断し、分泌に必要なκシグナルを含むBamHI/EcoRI断片を発現ベクターにクローニングした。全長の重及び軽鎖のコンストラクト(構築物)の配列を確認し、E8マウスIgG mAbの産生に使用した。全ての手順は、標準的な分子生物学で用いられるクローニング/発現技術を使用して行った。
【実施例2】
【0127】
ELISAアッセイ
【0128】
非アシル化グレリンの0.4μg/mL(HO中)溶液60μLを、Greiner MultiBind microtiter plate(450−655061)の各ウェルに添加し、その表面上で乾燥させた。アッセイプレートをインキュベーターに設置し、37℃で一晩乾燥させた。その翌日、アッセイプレートを洗浄し(洗浄バッファー:0.1%Tween 20(トリス緩衝生理食塩水(TBS)))、ブロッキング(カゼイン/PBS(Pierce社37528))した。
【0129】
グレリン又はグレリンのアナログを、カゼイン/PBS中、様々な濃度(図1から3参照)で、10nMのFab 5611又は10nMのE8モノクローナル抗体(図3を参照)と組み合わせた。図1の「2−28アシル化グレリン」及び「3−28アシル化グレリン」はそれぞれ、分子のN末端の1又は2アミノ酸を欠失させたアシル化グレリン(配列番号17)を指す。図2において、「1−8(cys)非アシル化」は、C末端に付加的なシステイン残基を有する、配列番号17のアミノ酸1−8からなる非アシル化グレリン断片を指す。「4−28(cys)」は、C末端に付加的なシステイン残基を有する、アミノ酸4−28からなるグレリン断片を指す。「9−28」とは、配列番号17のアミノ酸9−28からなるグレリン断片を指す。グレリン、グレリンアナログ及びFabの希釈は、カゼイン/PBSによって行った。これらの混合物は、室温で1時間、別々のプレートにおいてインキュベートした。
【0130】
ブロッキング溶液をアッセイプレートから除去し、グレリン/Fab混合物を50μLずつ、複数枚のプレートに添加した。これを室温で30分間静置した。分析プレートを3回洗浄し、次いでヤギ抗マウスκ−HRP(Southern Biotechnology社製(1050−05)、1:2000希釈)を添加した。これを室温で1時間インキュベートした。プレートを4回洗浄し、OPD基質(シグマ社、P−6912)を用いて反応させた。反応を100μLの1N HClで停止させ、ウェルの吸光度を490nm(Molecular Device社、SpectraMax250)で測定した。
【0131】
Fab 5611が、アッセイプレートに混合物を添加する前にグレリン又はグレリンの類似体と結合する場合、プレートにコーティングされた非アシル化グレリンに結合Fab 5611が少なくなる。それにより、ヤギ抗マウスκ−HRP抗体とのインキュベート及びOPD基質による反応後の、490nmの吸光度の減少が見られる。
【0132】
図1に示すように、Fab 5611による吸光度シグナルを減少させるためには、非アシル化グレリンがアシル化グレリンよりも多く必要である。データはまた、アシル化グレリンの第1の(N末端)アミノ酸が除去された場合(2−28アシル化グレリン)、Fab 5611との結合が不十分になることを示す。
【0133】
図2のデータは、1−8(cys)非アシル化グレリン及び1−28非アシル化グレリンはFab 5611と結合し、より多くの1−8(cys)非アシル化グレリンが、1−28非アシル化グレリンと比較し吸光度シグナルの減少に必要であることを示す。データはまた、4−28(cys)及び9−28の断片が、試験された濃度でFab 5611と結合しないことを示し、そのことから、Fab 5611が選択的に非アシル化グレリンと結合し、またそのN末端アミノ酸が結合に非常に重要であることが示される。
【0134】
E8抗体が混合物を分析プレートに添加する前にグレリン又はグレリンアナログと結合する場合、プレートにコーティングされている非アシル化グレリンに結合できるE8抗体はより少なくなる。それにより、ヤギ抗マウスκ−HRP抗体によるインキュベート及びOPD基質との反応後の、490nmの吸光度の減少が見られる。
【0135】
図3に示すように、Fab 5611及びE8抗体は、グレリンよりも非アシル化グレリンを非常に特異的に認識する。以上を総合すると、図1及び2のデータから、Fab 5611が非アシル化グレリンのアミノ酸1−8の範囲内存在するエピトープと結合することが示される。
【0136】
図3のデータから、Fab 5611及びE8抗体は、アシル化グレリンよりも非アシル化グレリンと特異的に結合することが示される。
【実施例3】
【0137】
モノクローナルFab及び抗体のアフィニティー測定
【0138】
親和性(K)及び本発明の抗非アシル化グレリンFab及びモノクローナル抗体のKon及びKoff率を、CM5センサーチップを含むBIAcore(登録商標)2000計測器を使用して測定した。BIAcoreは、表面プラズモン共鳴の光学的性質を利用り、デキストランバイオセンサーマトリックス内における、相互作用分子のタンパク質濃度の変化を検出するものである。強調される場合を除き、全ての試薬及び材料はBIAcore(登録商標)AB社(Upsala、スウェーデン)から購入した。全ての測定を25℃で行った。ラット又はヒトの非アシル化グレリンを含むサンプルを、HBS−EPバッファー(150mM塩化ナトリウム、3mM EDTA、0.005%(w/v) P−20(表面活性剤)及び10mM HEPES(pH7.4))に溶解した。捕捉抗体(ヤギ抗マウスκ(Southern Biotechnology社))を、アミン−カップリング反応によりフローセル上へ固定した。フローセル(1−4)を、0.1M N−ヒドロキシスクシニミド:0.1M 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル−N−エチルカルボジイミドの1:1混合物の、10μL/分における流動中で7分間活性化した。ヤギ抗マウスκ(10mM 酢酸ナトリウム(pH4.5)中、30μg/mL)を、10μL/分の流速で、4つ全てのフローセルに手動で注入した。面密度をモニターし、全てのフローセルが4500〜5000の応答単位(RU)の面密度に到達するまで、ヤギ抗マウスκを各セルに必要に応じて注入した。表面を、1Mのエタノールアミン−HCl(pH8.5)を7分間注入(10μL/分)してブロッキングした。非共有結合的に結合したヤギ抗マウスκを完全に除去するため、15μLの10mMのグリシン(pH1.5)を二回注入した。動態試験に使用するランニングバッファーには、10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、0.005% P−20が含まれる。
【0139】
動態的結合のデータ収集を、物質移動効果を最小化するために、最大流速(100μL/分)及び低い面密度で行った。各分析サイクルは、以下から構成される。
(i)10μL/分の流速で、フローセル2、3及び4上に、Fab(バイオサイト社)のそれぞれ5〜10μLの5μg/mL溶液を注入し、Fabを300〜350RUにおいて捕獲し、
(ii)ヒト非アシル化グレリン(50nM〜1.56nMまで、2倍希釈系列による濃度範囲)を4つ全てのフローセル(フローセル1を対照フローセルとする)に200μL注入(2分)し、
(iii)10分間溶解(バッファー流入による)させ、
(iv)10mM グリシン(pH1.5)を15秒間注入し、ヤギ抗マウスκ表面を再生し、
(v)ランニングバッファーを30秒間ブランク注入し、
(vi)次のサイクルのスタート前の2分間安定化させる。
シグナルを、フローセル2−フローセル1、フローセル3−フローセル1、及びフローセル4−フローセル1としてモニターした。サンプル及びバッファーによるブランクを、複数回、無作為に注入した。データをBIA evaluation 3.1ソフトウェアを使用して処理し、データをCLAMP global解析ソフトウェアの1:1結合モデルに適合させた。
【0140】
ヒト非アシル化(デスアシル)グレリンとFab 5611の、Kon、Koff及びKを表2に示す。
表2:Fab 5611/ヒト非アシル化グレリン

【0141】
ヒト非アシル化グレリンとE8モノクローナル抗体の、Kon、Koff及びKを表3に示す。
表3:E8/ヒト非アシル化グレリン

【実施例4】
【0142】
FLIPRによるin vitro活性分析
【0143】
in vitro FLIPR(登録商標)カルシウムアッセイシステム(Molecular Devices社)を、ヒトの非アシル化グレリン受容体を安定して発現するトランスフェクション細胞と共に用いた。この分析は、細胞内のカルシウム濃度の変化を測定するものであり、それにより非アシル化グレリン/受容体の結合及び本発明のFabの有無におけるシグナル伝達を検出する。この機能的な分析法は更に、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合部が結合するエピトープの位置をマッピングするために用いることもできる。
【0144】
細胞を、T−150フラスコにつき50〜90×106細胞となるまで、培地(選択薬剤を有するDMEM/F12(3:1)、5%ウシ胎児血清)にて増殖させた。その後細胞をトリプシン処理し、洗浄し、Biocoat black poly−D−lysineコーティングプレート(ウェル当たり60,000細胞/100μL増殖培地)に分注した。細胞を、5%のCO、37℃の条件で約20時間インキュベートした。培地をプレートから除去し、150μL HBSS(ギブコ社、14025)を各ウェルに添加し、更に除去した。更に染色液を含むローディングバッファー(5μM Fluo−AM4(Molecular Devices)、0.05%のプルロニックのFLIPRバッファー(カルシウム含有ハンクス液(HBSS、ギブコ14025)及び0.75%のBSA(ギブコ))溶液)を、各ウェル当たり50μLずつ添加し、細胞に取り込ませた。プレートを、5% COで37℃の条件下で1時間更にインキュベートした。その後ウェルをHBSSによって二回洗浄し、FLIPRバッファーをウェル当たり50μLずつ添加した。
【0145】
サンプルを、7.2μLのカルシウム濃縮液(CaCl(2HO)の水溶液(3.7mg/ml)とHBSSを1:1に混合し、フィルター滅菌)を、60μLのFab(濃度を変化)及び非アシル化グレリンの3.75% BSA/50% HBSS溶液16.8μLと組み合わせて調製した。サンプル溶液の最終濃度は、0.75% BSA、及びFLIPRバッファーとほぼ同じカルシウム濃度であった。細胞を有する板を、FLIPR装置にロードする前に15秒間振とうした。50μLの試料溶液は、細胞を有するウェル中の50μLのFLIPRバッファーに添加し、Fluorometric Imaging Plate Reader(Molecular Devices)を用いて測定した。
【0146】
溶液にFabが存在しない場合、又は無関係な抗体が存在する場合、全長の非アシル化グレリンは細胞上のレセプターと結合でき、細胞からのシグナル伝達が発生し、その結果、比較的高い分析値となって表れる。Fabが存在する場合、溶液中の全長の非アシル化グレリンと結合し、レセプターに対する全長の非アシル化グレリンの結合が阻害され、その結果、細胞からのシグナル伝達が阻害され、比較的低い分析値となって表れる。
【0147】
Fabエピトープを決定するために上記分析を使用する際には、全長の非アシル化グレリンを、活性を有する非アシル化グレリン断片に置換してもよい。Fabが存在する場合、溶液の非アシル化グレリン断片と結合し、レセプターに対する非アシル化グレリン断片の結合が阻害され、その結果、細胞からのシグナル伝達が阻害され、比較的低い分析値となって表れる。
【0148】
更に、Fabエピトープは、不活性型非アシル化グレリン断片とFabとを組み合わせ、それが全長の非アシル化グレリンの結合を阻害するFabの能力をブロックするか否かを観察することによっても決定することができる。ペプチド(すなわち非アシル化グレリンの断片)が溶液に添加され、Fabがペプチドと結合する場合、全長の非アシル化グレリンのレセプターへの結合が阻害されず、細胞からのシグナル伝達が阻害されず、分析値が比較的高くなる。
【0149】
本発明を以上のように記載したが、同内容の様々な変法が可能であることは明らかである。そのような変法は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とは考えられず、当業者にとって明らかであるこの種の全ての変形は、下記の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】非アシル化グレリンへのFab 5611の結合を測定するための、アシルグレリン、非アシル化グレリン、並びにアシルグレリンのアミノ酸2〜28及び3〜28を使用した競争的ELISAの結果を示す。
【図2】非アシル化グレリンへのFab 5611の結合を測定するための、非アシル化グレリン、1−8の(cys)非アシル化グレリン、4−28(cys)及び9−28を使用した競争的ELISAの結果を示す。
【図3】Fab 5611及びアシルグレリン及び非アシル化グレリンを有するモノクローナル抗体E8を用いた競争的ELISA分析法の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル化グレリンと比較し選択的に非アシル化グレリン又は非アシル化グレリンプロタンパク質と結合し、
a)約5%またはそれ以下のレベルでアシル化グレリンと交差反応するか、
b)アシル化グレリンとの結合より少なくとも約20倍高い親和性で非アシル化グレリンと結合するか、
c)約1×10−9Mの解離定数(K)を有するか、又は
d)約50μg/mL未満で、in vitro又はin vivoで非アシル化グレリンの生物的活性を阻害する、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
a)約5%またはそれ以下のレベルでアシル化グレリンと交差反応するか、
b)アシル化グレリンとの結合より少なくとも約20倍高い親和性で非アシル化グレリンと結合するか、
c)約1×10−9Mの解離定数(K)を有するか、又は
d)約50μg/mL未満で、in vitro又はin vivoで非アシル化グレリンの生物的活性を阻害する、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
約1%またはそれ以下のレベルでアシル化グレリンと交差反応する、請求項1又は2記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
アシル化グレリンと交差反応しない、請求項1又は2記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
アミノ酸残基1−3を含む非アシル化グレリンのエピトープと結合する、請求項1乃至4のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
非アシル化グレリンとの結合に関し、請求1乃至5のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片と競合するモノクローナル抗体。
【請求項7】
IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgM及びIgDからなる群から選択される重鎖定常領域を含む、請求項1乃至6のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
κ又はλ軽鎖定常領域を含む、請求項1乃至7のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
抗原結合断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片及び単鎖Fv断片からなる群から選択される、請求項1乃至8のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
ヒト化されている、請求項1乃至9のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
以下のアミノ酸配列を有するペプチドを含んでなる、請求項1乃至10のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片:
a)配列番号4(軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1に位置)、
b)配列番号6(LCVRのCDR2に位置)、
c)配列番号8(LCVRのCDR3に位置)、
d)配列番号12(重鎖可変領域(HCVR)のCDR1に位置)、
e)配列番号14(HCVRのCDR2に位置)、及び
f)配列番号16(HCVRのCDR3に位置)。
【請求項12】
該軽鎖可変領域が配列番号2に示される配列のペプチドを含む、請求項11記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
該重鎖可変領域が配列番号10に示される配列のペプチドを含む、請求項11記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
【請求項15】
請求項14記載の単離された核酸分子を含んでなる発現ベクター。
【請求項16】
請求項15記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
請求項1乃至13のいずれか一項記載の抗体若しくはその抗原結合断片、並びに薬学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項18】
該モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が有効成分である、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
薬剤として使用される、請求項1乃至13のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
哺乳動物における肥満、インスリン非依存型糖尿病、プラダー−ウィリー症候群、過食症又は拒食症の治療薬の製造用の、請求項1乃至13のいずれか一項記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項21】
該哺乳動物がヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ及びブタからなる群から選択される、請求項20記載の使用。
【請求項22】
該哺乳動物がヒトである、請求項21記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−520204(P2008−520204A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541279(P2007−541279)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/040468
【国際公開番号】WO2006/055347
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】