説明

非グリコシル化ヒトαフェトプロテイン、その製造方法および使用方法

本発明は、非グリコシル化ヒトαフェトプロテイン、その産生法、および使用を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非グリコシル化ヒトα-フェトプロテイン、トランスジェニック動物および植物におけるその産生、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
α-フェトプロテイン(AFP)は、卵黄嚢および胎児肝臓によって産生される70 kDaの糖タンパク質である。AFPは、胎児血清においてミリグラムレベルで存在し、出生時に成体血清において通常認められるナノグラムレベルまで減少する。成体血清中のレベルの増加は、卵黄嚢腫瘍、肝腫、または肝再生を示している。胎児発達の際のAFPの役割はわかっていないが、AFPは、母体による免疫攻撃または母体からのエストロゲンの作用から妊娠胎児を保護することが示唆されている。
【0003】
インビトロおよびインビボ実験から、AFPは、標的細胞、AFPの相対的濃度、ならびに他のサイトカインおよび増殖因子の有無に応じて、細胞増殖刺激活性と阻害活性の双方を有することが示されている。例えば、AFPは、多くのタイプの腫瘍細胞の増殖を阻害することができ、特にエストロゲン刺激細胞増殖を阻害する。逆に、AFPは、正常な胎児線維芽細胞の増殖を刺激する。AFPはまた、免疫抑制および免疫増殖作用の双方を有することも示されている。
【0004】
AFPの様々な生物学的特性を利用するために、この分子の十分量を効率的にかつ費用効果の高い方法で得ることが必要であろう。真核細胞において野生型AFPを発現させると、一般的に、一つのアスパラギン残基(アミノ酸233位)でのAFPの異なるグリコシル化のためにいくつかのイソ型が産生されることから、組換え系におけるAFPの発現は難しいことが判明した。原核細胞系におけるAFPの発現では典型的に、凝集して正しい内部ジスルフィド結合を有しない、誤って折り畳まれた不活性なタンパク質が産生される。この誤って折り畳まれたAFPは、ジスルフィド結合16個が形成される条件で精製および再生しなければならず、これは難しく時間がかかるプロセスであり、それによって有用な活性タンパク質の全体的な収率は非常に低くなる。AFPの非グリコシル化型は、グリコシル化型と同じ生物特性を示し、グリコシル化の多様性がないことによってより標準化された一貫した産物が得られることから、商業的生産にとって非グリコシル化AFPが好ましい。したがって、商業的および治療的応用のために非グリコシル化ヒトAFPを産生する効率的な方法が必要である。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、非グリコシル化ヒトα-フェトプロテイン(ng.HuAFP)またはその非グリコシル化断片をコードする実質的に純粋な核酸分子を特徴とする。一つの態様において、ng.HuAFPをコードする核酸分子には、配列番号:5に記載の核酸配列のヌクレオチド45〜1874位が含まれる。
【0006】
本発明はまた、非グリコシル化ヒトα-フェトプロテインを含むポリペプチドを特徴とする。本発明のこの特徴の一つの態様において、ポリペプチドは、実質的に純粋であり、配列番号:6に記載のアミノ酸配列を有する。もう一つの態様において、ポリペプチドは実質的に純粋であり、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する。
【0007】
本発明にはさらに、非グリコシル化組換え型HuAFPの生物活性断片および類似体が含まれる。一つの態様において、非グリコシル化組換え型HuAFPの生物活性断片には、配列番号:15(ドメインII)、配列番号:16(ドメインI+II)、または配列番号:17(ドメインII+III)に記載のアミノ酸配列、または二つもしくはそれ以上のアミノ酸配列が含まれる。
【0008】
本発明はまた、(i)配列番号:5に記載の核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子、(ii)ng.HuAFPコード配列に機能的に結合し、且つng.HuAFPの発現を可能にするプロモーター、および(iii)細胞によるng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列を含む実質的に純粋な核酸分子を特徴とする。一つの態様において、細胞は原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母細胞(例えば、ピチア・パストリス(Pichia pastoris))もしくは動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳類細胞))である。望ましい態様において、細胞は、細胞培養培地(すなわち非生体液)にng.HuAFPを分泌する。もう一つの態様において、真核細胞は、トランスジェニック動物(例えば、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、またはラマのような哺乳類)に存在する。さらにもう一つの態様において、細胞は、トランスジェニック動物における生体液産生細胞であり、プロモーターは生体液産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にし、そしてリーダー配列はトランスジェニック動物の生体液(例えば、乳汁、尿、血液、またはリンパ)中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。
【0009】
一つの態様において、ng.HuAFPを発現する細胞はトランスジェニック動物であって、ng.HuAFPの発現を促進するプロモーターは、動物の乳汁産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする乳汁産生細胞特異的プロモーターであり、およびリーダー配列は、動物の乳汁中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。もう一つの態様において、ng.HuAFPを発現する細胞はトランスジェニック動物であって、ng.HuAFPの発現を促進するプロモーターは、動物の尿産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする尿産生細胞特異的プロモーターであり、およびリーダー配列は、動物の尿中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。さらにもう一つの態様において、ng.HuAFPを発現する細胞はトランスジェニック動物であって、ng.HuAFPの発現を促進するプロモーターは、動物の血液産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする血液産生細胞特異的プロモーターであり、およびリーダー配列は、動物の血液中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。なおもう一つの態様において、ng.HuAFPを発現する細胞はトランスジェニック動物であって、ng.HuAFPの発現を促進するプロモーターは、動物のリンパ産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にするリンパ産生細胞特異的プロモーターであり、およびリーダー配列は、動物のリンパ中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。
【0010】
本発明のもう一つの特徴は、ng.HuAFPを発現して生体液(例えば、乳汁、尿、唾液、精液もしくは膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、もしくは尿膜内の液、血液、汗、および涙液;または例えば、滲出液もしくは排水、木部、篩部、樹脂、および花蜜を含む、植物によって産生される水溶液)に分泌する非ヒトトランスジェニック生物である。一つの態様において、トランスジェニック生物は哺乳類(例えば、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、もしくはラマ)、トリ、は虫類、両生類、または植物である。もう一つの態様において、ng.HuAFPは、以下を含むトランスジーンから発現される:(i)配列番号:5に記載される核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子;(ii)生体液中にタンパク質を分泌する生物の細胞によるng.HuAFPの発現を可能にするように、ng.HuAFPコード配列に機能的に結合したプロモーター;および(iii)生物の細胞による生体液中へのng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列。さらにもう一つの態様において、プロモーターは、乳汁、尿、血液、またはリンパ特異的プロモーターであり、リーダー配列は生物の乳汁、尿、血液、またはリンパのそれぞれへのng.HuAFPの分泌を可能にする。さらにもう一つの態様において、生物はマウスまたはヤギである。
【0011】
本発明はまた、ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類の乳汁、尿、血液、またはリンパを特徴とする。一つの態様において、ng.HuAFPは可溶性であり、その乳汁、尿、血液、またはリンパ産生細胞が以下を含むトランスジーンを発現する、非ヒトトランスジェニック哺乳類によって産生される:(i)配列番号:5に記載される核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子、(ii)ng.HuAFPコード配列に機能的に結合し、且つ哺乳類の乳汁、尿、血液、またはリンパ産生細胞によるng.HuAFPの発現を可能にする乳汁、尿、血液、またはリンパ特異的プロモーター;および(iii)哺乳類の乳汁、尿、血液、またはリンパ中への乳汁、尿、血液、またはリンパ産生細胞によるng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列。
【0012】
本発明はまた、以下の段階によってng.HuAFPを産生する方法を特徴とする:(a)(i)配列番号:5に記載される核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子、(ii)細胞によるng.HuAFPの発現を可能にするように、ng.HuAFPコード配列に機能的に結合したプロモーター、および(iii)細胞によるng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列を含むトランスジーンを形質導入した細胞を提供する段階;ならびに(b)細胞がng.HuAFPを発現かつ分泌するように、形質導入細胞を増殖させる段階。
【0013】
一つの態様において、細胞は原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母細胞(例えば、ピチア・パストリス)もしくは哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、または乳汁、尿、血液、もしくはリンパ産生細胞))である。
【0014】
本発明はまた、以下の段階によってng.HuAFPを産生する方法を特徴とする:(a)(i)配列番号:5に記載される核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子、(ii)トランスジェニック生物の生体液産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にするように、ng.HuAFPコード配列に機能的に結合したプロモーター;および(iii)トランスジェニック生物の生体液中への生体液産生細胞によるng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列を有するトランスジーンを含む、トランスジェニック生物(例えば、哺乳類(例えば、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、もしくはラマ)、トリ、は虫類、両生類、または植物)を提供する段階;ならびに(b)トランスジェニック生物からng.HuAFPを含む生体液を回収する段階。
【0015】
一つの態様において、生体液は、乳汁、尿、唾液、精液もしくは膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、もしくは尿膜内の液、血液、汗、または涙液;または例えば、滲出液もしくは排水、木部、篩部、樹脂、および花蜜を含む、植物によって産生された水溶液である。望ましい態様において、生体液は乳汁、尿、血液、またはリンパであり、ng.HuAFPは乳汁、尿、血液、またはリンパからそれぞれ精製される。もう一つの態様において、プロモーターは、トランスジェニック生物の乳汁、尿、血液、またはリンパ産生細胞においてそれぞれ、ng.HuAFPの発現を可能にする乳汁、尿、血液、またはリンパ特異的プロモーターである。さらにもう一つの態様において、トランスジェニック生物は、ng.HuAFPを発現して、二つまたはそれ以上の生体液(例えば、乳汁および尿、乳汁および血液、尿および血液、または乳汁、尿、および血液)に分泌する。
【0016】
本発明のもう一つの特徴は、細胞培養培地から精製されたng.HuAFPの治療的有効量を患者に投与することによって、ng.HuAFPを必要とする患者を治療する方法である。
【0017】
本発明のもう一つの特徴は、トランスジェニック非ヒト生物(例えば、哺乳類(例えば、マウス、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、オウシもしくはラマ)、トリ、は虫類、両生類、または植物)から得られるng.HuAFPを含む、生体液(例えば、乳汁、尿、唾液、精液もしくは膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、もしくは尿膜内の液、血液、汗、および涙液;または例えば、滲出液もしくは排水、木部、篩部、樹脂、および花蜜を含む、植物によって産生された水溶液)またはその抽出物の治療的有効量を患者に投与することによって、ng.HuAFPを必要とする患者を治療する方法である。望ましい態様において、ng.HuAFPは、配列番号:8に記載される配列を有する。もう一つの態様において、生体液は乳汁である。さらにもう一つの態様において、ng.HuAFPは、トランスジェニック非ヒト生物の生体液(例えば、哺乳類の乳汁、尿、血液、またはリンパから精製されたng.HuAFP)から精製される。様々な望ましい態様において、方法は、免疫学的障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症、癌細胞の増殖を阻害もしくは治療するために、骨髄細胞増殖を誘導するために(例えば、骨髄移植後、または化学療法もしくは放射線治療のような骨髄毒性治療の投与後)、または免疫抑制剤として(例えば、自己反応性免疫細胞の増殖を阻害するため、移植された臓器の拒絶(例えば、移植片対宿主病)を阻害するため、または自己免疫障害(例えば、リウマチ性関節炎、筋ジストロフィー、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、多発性硬化症、インスリン依存性真性糖尿病、もしくは乾癬)を阻害もしくは治療するために)用いてもよい。
【0018】
本発明はまた、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有するng.HuAFPを含む治療的組成物を特徴とする。
【0019】
本発明はまた、疾患を有すると診断された、または疾患を有する(例えば、癌、リウマチ性関節炎、筋ジストロフィー、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、多発性硬化症、インスリン依存型真性糖尿病、または乾癬)個体を治療するための医薬品の製造における、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有するng.HuAFPの使用を特徴とする。
【0020】
本発明はまた、細胞増殖を増強するため(例えば、骨髄細胞の増殖を誘導するため(例えば、骨髄移植後、または化学療法剤もしくは放射線治療のような骨髄毒性治療を行った後))の医薬品の製造における、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有するng.HuAFPの使用を特徴とする。
【0021】
本発明はまた、免疫抑制剤として用いるため(例えば、自己免疫細胞増殖を阻害するため、または移植臓器の拒絶(例えば、移植片対宿主病)を阻害するため)の医薬品の製造における、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有するng.HuAFPの使用を特徴とする。
【0022】
本発明の全ての特徴に関する態様において、ng.HuAFPは組換え型(r.ng.HuAFP)である。
【0023】
本発明の全ての特徴において、生物は動物(例えば、哺乳類、トリ、は虫類、もしくは両生類)、または植物である。例としての哺乳類には、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、およびラマが含まれる。例としてのトリには、ニワトリ、七面鳥、ガチョウ、ダチョウ、ウズラ、およびアヒルが含まれる。例としての植物には、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、ウマゴヤシ(Medicago)、イチゴ(Fragaria)、ササゲ(Vigna)、ハス(Lotus)、オノブリキス(Onobrychis)、ジャジクソウ(Trifolium)、トリゴネラ(Trigonella)、ミカン(Citrus)、アマ(Linum)、ゼラニウム(Geranium)、キャッサバ(Manihot)、ニンジン(Daucus)、アブラナ(Brassica)、ダイコン(Raphanus)、カラシ(Sinapis)、ロウトウ(Atropa)、トウガラシ(Capsicum)、ヒヨス(Hyoscyamus)、トマト(Lycopersicon)、タバコ(Nicotiana)、ナス(Solanum)、ペチュニア(Petunia)、ジギタリス(Digitalis)、マジョラナ(Majorana)、シオホリウム(Ciohorium)、ヒマワリ(Helianthus)、レタス(Lactuca)、イヌムギ(Bromus)、キンギョソウ(Antirrhinum)、ヘテロカリス(Heterocallis)、ネメシア(Nemesia)、ペラルゴニウム(Pelargonium)、キビ(Panicum)、チカラシバ(Pennisetum)、ラナンキュラス(Ranunculus)、キオン(Senecio)、サルピグロッシス(Salpiglossis)、キュウリ(Cucumis)、ブロワリア(Browaalia)、ダイズ(Glycine)、ライグラス(Lolium)、トウモロコシ(Zea)、コムギ(Triticum)、モロコシ(Sorghum)、またはチョウセンアサガオ(Datura)属の種が含まれる。植物はまた、針葉樹、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、タバコ、レタス、ヒマワリ、ナタネ、アマ、ワタ、テンサイ、セロリ、ダイズ、アルファルファ、ハス、キュウリ、ニンジン、ナス、カリフラワー、西洋ワサビ、アサガオ、ポプラ、クルミ、リンゴ、ブドウ、アスパラガス、コメ、トウモロコシ、キビ、タマネギ、オオムギ、カモガヤ、オート麦、ライ麦、コムギ、トウモロコシ、アルファルファ、芝草、アカウキクサ、浮稲(floating rice)、ホテイアオイ、およびスイカからなる群より選択することができ、または栄養増殖することができる水性植物もしくは水中で増殖する顕花植物から選択することができる。
【0024】
本発明の他の望ましい態様において、生体液は、乳汁、尿、唾液、精液、膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、または尿膜によって取り囲まれる液、血液、汗、涙液、植物滲出液、排水、木部、篩部、樹脂、または花蜜である。望ましくは、生体液は乳汁である。
【0025】
本発明の他の望ましい態様において、生物は哺乳類であって、ng.HuAFPは、生物の生体液中に分泌されるタンパク質の産生に関与する哺乳類の細胞(例えば、乳汁産生細胞、尿産生細胞、血液、またはリンパ産生細胞)によって発現される。望ましい態様において、ng.HuAFPは、乳汁特異的プロモーターの制御下で哺乳類の乳汁産生細胞によって発現され、これは、αS-1カゼインプロモーター、αS2-カゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、γカゼインプロモーター、κカゼインプロモーター、乳清酸性タンパク質(WAP)プロモーター、αラクトアルブミンプロモーター、β-ラクトアルブミンプロモーター、およびマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)の長末端反復(LTR)プロモーターからなる群より選択することができる。これらのプロモーターのいずれか一つの制御下でのng.HuAFPの発現は、哺乳類の乳汁中へのポリペプチドの分泌を可能にする。
【0026】
他の望ましい態様において、ng.HuAFPは、尿特異的プロモーターの制御下で哺乳類の尿産生細胞によって発現され、これは、ウロプラキンIIプロモーターおよびウロモジュリンプロモーターからなる群より選択することができる。これらのプロモーターのいずれか一つの制御下でのng.HuAFPの発現は、哺乳類の尿中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。
【0027】
さらに他の望ましい態様において、ng.HuAFPは、血液特異的プロモーター(例えば、アルブミンプロモーターおよびα-フェトプロテインプロモーター)の制御下で哺乳類の血液産生細胞によって発現される。さらにもう一つの望ましい態様において、ng.HuAFPは、リンパ球特異的プロモーターの制御下で哺乳類の血液産生細胞によって発現される。これらのプロモーターのいずれか一つの制御下でのng.HuAFPの発現は、哺乳類の血液中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。
【0028】
なお他の望ましい態様において、ng.HuAFPは、リンパ特異的プロモーターの制御下で哺乳類のリンパ産生細胞によって発現される。リンパ特異的プロモーターの制御下でのng.HuAFPの発現は、哺乳類のリンパ中へのng.HuAFPの分泌を可能にする。
【0029】
なお他の態様において、生物はトリであって、ng.HuAFPは、卵白アルブミンプロモーターまたはapo-Bプロモーターからなる群より選択されうるトリ特異的プロモーターの制御下でトリの細胞によって発現される。これらのプロモーターのいずれか一つの制御下でng.HuAFPが発現されると、羊水、または卵の卵黄嚢、絨毛膜、もしくは尿膜によって取り囲まれる液にng.HuAFPを分泌させることができる。
【0030】
本発明のなおさらなる態様において、生物は植物であり、ng.HuAFPは、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、CaMV 19Sプロモーター、T-DNAマンノピンシンターゼプロモーター、グルタチオン-S-トランスフェラーゼイソ型II(GST-II-27)プロモーター、デキサメタゾン(DEX)プロモーター、細胞プロモーター、カルコンシンターゼプロモーター(CHS)、PATATINプロモーター、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター、オクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター、ジャガイモ(Solanum tuberosum)の葉/茎(ST-LS)1プロモーター、ダイズ熱ショックタンパク質hsp 17.5-E、hsp 17.3-Bプロモーター、パラスポニア・アンデルソニ(Parasponia andersoni)ヘモグロビンプロモーター、フェニルアラニンアンモニアリアーゼプロモーター、ペチュニア5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ遺伝子プロモーター、蔗糖シンターゼプロモーター、クロロフィルa/b(Cab)プロモーター、トウモロコシrbcSプロモーター、マメrbcS-3Aプロモーター、リブロースビスホスフェートカルボキシラーゼ小サブユニット(ssRUBICSO)の光誘導型プロモーター、アブシジン酸(ABA)反応性遺伝子配列プロモーター、ABA-誘導型HVA1プロモーター、ABA-誘導型HVA22プロモーター、rd29Aプロモーター、23-kDaゼイン遺伝子プロモーター、インゲンマメβ-ファセオリン遺伝子プロモーター、栄養保存タンパク質(vspB)プロモーター、シロイヌナズナcdc2aプロモーター、シロイヌナズナSAG12プロモーター、病原体誘導型PR-1プロモーター、b-1,3グルカナーゼプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)Iプロモーター、ADH IIプロモーター、リゾビウム・メリロチ(Rhizobium meliloti)FIXD遺伝子プロモーター、rol Aプロモーター、rol Bプロモーター、およびrol Cプロモーターからなる群より選択することができる植物特異的プロモーターの制御下で植物細胞によって発現される。これらの植物特異的プロモーターのいずれか一つの下でng.HuAFPが発現されると、植物の葉、茎、根、もしくは果実においてng.HuAFPを産生することができるのみならず、植物の浸出液もしくは排水、または植物の木部、篩部、樹脂、もしくは花蜜にng.HuAFPを分泌させることができる。
【0031】
他の態様において、ng.HuAFPは、誘導型プロモーターの制御下で発現され、それによって発現に対して時間的および/または空間的制御を提供する。望ましい態様において、誘導型プロモーターは、熱ショックタンパク質プロモーター、メタロチオネインプロモーター、MMTV-LTRプロモーター、およびエクジソンプロモーターからなる群より選択される。ng.HuAFPの発現を調節する他の様式には、ムリステロンAおよびテトラサイクリン/ドキシサイクリン選択を用いることが含まれる。
【0032】
本発明の他の特徴および長所は、以下の詳細な説明および請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0033】
定義
「生体液」とは、哺乳類、鳥類、両生類、またはは虫類のような生物によって産生される水溶液を意味し、これは水溶液に囲まれている細胞によって分泌されるタンパク質を含む。生体液の例には、例えば、乳汁、尿、唾液、精液、膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、または尿膜内の液、血液、汗、および涙液;と共に、例えば滲出液もしくは排水、木部、篩部、樹脂、および花蜜を含む、植物によって産生された水溶液が含まれる。動物組織の抽出物と共に、苗条、葉、根、茎、および種子を含む任意の植物構造の水溶性または有機溶媒溶解性抽出物を含む植物抽出物もさらに含まれる。植物抽出物はまた、滲出液または排水に由来してもよい。
【0034】
「生体液産生細胞」とは、生体液に取り囲まれ、生体液中にタンパク質を分泌する細胞を意味する。
【0035】
「血液産生細胞」とは、タンパク質を血液中に分泌する細胞(例えば、肝上皮細胞、脾臓上皮細胞、骨髄細胞、胸腺上皮細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞(例えば、リンパ球(例えば、BまたはTリンパ球)および赤血球))を意味する。
【0036】
「血液特異的プロモーター」は、タンパク質を血液中に分泌する細胞(例えば、肝上皮細胞、脾臓上皮細胞、骨髄細胞、胸腺上皮細胞、血管内皮細胞、およびリンパ球(例えば、BまたはTリンパ球))における遺伝子の発現を天然に指示するプロモーターを意味する。血液特異的プロモーターの例は、アルブミンプロモーター/エンハンサーであり、これは外因性の遺伝子の肝臓特異的発現を得るために記述され、用いられている(例えば、Shenら、DNA 8:101〜108, 1989;Tanら、Dev. Biol. 146:24〜37, 1991;McGraneら、TIBS 17:40〜44, 1992;Jonesら、J. Biol. Chem. 265:14684〜14690, 1990;およびShimadaら、FEBS Letters 279:198〜200, 1991を参照されたい)。α-フェトプロテイン遺伝子プロモーターも同様に特に有用である。
【0037】
「胚的細胞」とは、生物の体細胞および生殖系列細胞の全てに対して前駆体となりうる細胞を意味する。例としての胚的細胞は、胚幹細胞(ES細胞)および受精卵である。好ましくは、本発明の胚的細胞は、哺乳類の胚的細胞である。
【0038】
本明細書において遺伝子またはポリペプチドを参照して用いられる「外因性」とは、動物に通常存在しない遺伝子またはポリペプチドを意味する。例えば、ng.HuAFPはヤギに対して外因性である。
【0039】
「発現ベクター」とは、プロモーターに機能的に結合したng.HuAFPコード配列を、コードされるr.ng.HuAFPが宿主細胞内で発現されるように、宿主細胞内に移入するために用いられる、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、または人工染色体に由来する遺伝子操作されたプラスミドまたはウイルスを意味する。
【0040】
「ヒトα-フェトプロテイン」、「HuAFP」、または「rHuAFP」は、Genbankアクセッション番号V01514(配列番号:4)に記載される成熟α-フェトプロテイン(アミノ酸19〜609位)と実質的に同じアミノ酸配列を有し、Genbankアクセッション番号V01514(配列番号:3)に記載され、Morinagaら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4604〜4608, 1983)において報告されるcDNA配列のヌクレオチド99〜1874位によってコードされるポリペプチドを意味する。
【0041】
非グリコシル化HuAFPポリペプチドに適用される「断片」とは、長さが少なくとも5個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも20個、50個または100個の連続するアミノ酸、および最も好ましくは長さが少なくとも200〜400個またはそれ以上の連続するアミノ酸を意味し、望ましくは、配列番号:4のアミノ酸233位でアスパラギン残基の代わりにグルタミン残基が含まれる。HuAFP断片および類似体は、好ましくは生物活性を保持する。HuAFPの断片および類似体は、例えば米国特許第5,965,528号および同第5,384,250号に記述される。
【0042】
対象となる組換え型HuAFP断片には、ドメインI(アミノ酸1位(Arg)〜198位(Ser)、配列番号:9)、ドメインII(アミノ酸199位(Ser)〜390位(Ser)、配列番号:15)、ドメインIII(アミノ酸391位(Gln)〜591位(Val)、配列番号:11)、ドメインI+II(アミノ酸1位(Arg)〜390位(Ser)、配列番号:16)、ドメインII+III(アミノ酸199位(Ser)〜591位(Val)、配列番号:17)、およびrHuAFP断片I(アミノ酸267(Met)〜591位(Val)、配列番号:14)が含まれるがこれらに限定されない。上記の組換え型HuAFPの番号付けは、シグナル配列のアミノ酸1〜18位を欠損する成熟AFPの配列に基づく。したがって、HuAFP断片の1位のアルギニン残基は、前駆体AFPのアミノ酸19位に対応する。上記のHuAFP断片は、配列番号:4の233位のアスパラギン残基を、例えばグルタミンに置換することによって非グリコシル化断片として産生することができる。断片の活性は、通常の技術およびアッセイを用いて実験的に評価する。
【0043】
「ヒトα-フェトプロテイン前駆体」とは、Genbankアクセッション番号V01514(配列番号:2)に記載されるアミノ酸1〜609位と実質的に同じアミノ酸配列を有し、Genbankアクセッション番号V01514(配列番号:1)に記載されるcDNA配列のヌクレオチド45〜1874位によってコードされるポリペプチドを意味する。
【0044】
「リーダー配列」または「シグナル配列」は、タンパク質分泌シグナルをコードして、ng.HuAFPをコードする下流の核酸分子に機能的に結合した場合に、ng.HuAFPの分泌を指示する核酸配列を意味する。リーダー配列は、天然のヒトα-フェトプロテインリーダー、人工的に由来するリーダーであってもよく、またはng.HuAFPコード配列の転写を誘導するために用いられるプロモーターと同じ遺伝子から、もしくは細胞から通常分泌されるもう一つのタンパク質から得てもよい。
【0045】
「リンパ産生細胞」とは、リンパ液中にタンパク質を分泌する細胞(例えば、リンパ管の上皮細胞およびリンパ節の細胞、リンパ球(例えば、BおよびTリンパ球)、およびマクロファージ)を意味する。
【0046】
「リンパ特異的プロモーター」は、リンパ管にタンパク質を分泌する細胞(例えば、リンパ管の上皮細胞およびリンパ節の細胞、リンパ球(例えば、BおよびTリンパ球)、およびマクロファージ)において遺伝子の発現を天然に指示するプロモーターを意味する。
【0047】
「乳汁産生細胞」は、乳汁中にタンパク質を分泌する細胞(例えば、乳腺上皮細胞)を意味する。
【0048】
「乳汁特異的プロモーター」は、乳汁中にタンパク質を分泌する細胞(例えば、乳腺上皮細胞)における遺伝子の発現を本来指示するプロモーターを意味し、これには例えば、カゼインプロモーター、例えばαカゼインプロモーター(例えば、αS-1カゼインプロモーターおよびαS2-カゼインプロモーター)、βカゼインプロモーター(例えば、ヤギβカゼイン遺伝子プロモーター(DiTullio, BioTechnology 10:74〜77, 1992))、γカゼインプロモーター、およびκカゼインプロモーター;乳清酸性タンパク質(WAP)プロモーター(Gortonら、BioTechnology 5:1183〜1187, 1987);βラクトグロブリンプロモーター(Clarkら、BioTechnology 7:487〜492, 1989)、およびα-ラクトアルブミンプロモーター(Soulierら、FEBS Letts. 297:13, 1992)が含まれる。同様に、乳腺組織において特異的に活性化され、このように、本発明に従って有用であるプロモーター、例えばマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)の長末端反復(LTR)プロモーターも含まれる。
【0049】
「機能的に結合した」とは、適当な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が調節配列に結合した場合に遺伝子発現を許容するように、遺伝子と一つまたはそれ以上の調節配列とが結合していることを意味する。
【0050】
「植物」は、植物全体、植物の一部、植物細胞、植物細胞の群を意味する。本発明の方法において用いることができるクラスの植物は一般的に、単子葉植物および双子葉植物の双方を含む、形質転換技術に対して感受性がある高等植物のクラスと同じくらい広い。これには、多倍数体、二倍体、および半数体を含む、様々な倍数性レベルの植物が含まれる。
【0051】
「プロモーター」は、転写を指示するために十分な最小の配列を意味する。同様に、プロモーター依存的遺伝子発現を、細胞タイプ特異的、組織特異的、時間特異的、または外部シグナルもしくは物質によって誘導可能にするために十分であるプロモーター要素が、本発明に含まれる。そのような要素は、天然の遺伝子の5'、3'、またはイントロン配列領域に存在してもよい。
【0052】
「精製」または「実質的に純粋な」とは、生体液(例えば、乳汁、尿、血液、リンパ、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、または尿膜に取り囲まれた液体、排液、木部、篩部、樹脂、または樹液)に分泌されたng.HuAFPが、生体液において本来認められる他の成分(例えば、タンパク質、脂質、および水)から部分的または完全に分離されており、このように生体液において認められる非精製ng.HuAFPと比較してng.HuAFPの有効濃度を増加させることを意味する。
【0053】
「非グリコシル化ヒトα-フェトプロテイン」または「ng.HuAFP」は、配列番号:4のアミノ酸233位でアスパラギン残基からグルタミン残基への変異(配列番号:6に記述されるように)を含み、それによって単一のグリコシル化部位を消失させることを除き、上記の成熟ヒトα-フェトプロテインと実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。前駆体非グリコシル化ヒトα-フェトプロテインの核酸配列には、配列番号:5に記載される配列のヌクレオチド45〜1874位が含まれる。
【0054】
「ng.HuAFP分泌シグナル」、「ng.HuAFPシグナルペプチド」、「ng.HuAFPリーダー」、または「ng.HuAFPシグナル配列」とは、Genbankアクセッション番号V01514(ヌクレオチド45〜98位によってコードされる)に記載されるアミノ酸1〜18位と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。タンパク質分泌シグナルは、タンパク質成熟および細胞外分泌の際にng.HuAFPから切断される。
【0055】
「実質的に純粋な核酸分子」とは、本発明の核酸分子が由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて、遺伝子に隣接する遺伝子を含まない核酸分子を意味する。したがって、この用語には、例えばベクター、自律複製するプラスミドもしくはウイルス、または原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNAに組み入れられる、または他の配列とは無関係に、異なる分子として存在する(例えば、cDNA、またはPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ消化によって産生されたゲノムもしくはcDNA断片)組換えDNA分子が含まれる。同様に、遺伝子に対して天然でない、またはさらなるポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含むハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAと共に、対応するmRNAが含まれる。
【0056】
「治療的有効量」は、患者に投与した場合に、ヒトα-フェトプロテインによって調節される生物活性を阻害または刺激する非グリコシル化ヒトα-フェトプロテインまたはその断片の量を意味する。そのような生物活性には、新生物もしくは自己反応性免疫細胞の増殖を阻害すること、または細胞(例えば、骨髄細胞)の増殖を刺激することが含まれる。治療的有効量は、医薬品の適応、投与期間、および投与経路を含む多数の要因に応じて変化する可能性がある。例えば、ng.HuAFPは、0.1 ng〜10 g/kg体重の範囲で全身投与することができ、好ましくは1 ng〜1 g/kg体重、より好ましくは10 ng〜100 mg/kg体重、および最も好ましくは25μg〜10 mg/kg体重の範囲で全身投与することができる。
【0057】
「形質転換」、「トランスフェクション」または「形質導入」とは、外来分子を細胞に導入する任意の方法を意味する。リポフェクチン、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、核移入(例えば、Campbellら、Biol. Reprod. 49:933〜942, 1993;Campbellら、Nature 385:810〜813, 1996を参照されたい)、プロトプラスト融合、燐酸カルシウム沈殿、形質導入(例えば、バクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、または他のウイルス輸送)、電気穿孔、およびバイオリスティック(biolistic)形質転換は、用いてもよい当業者に公知の方法のほんの数例である。
【0058】
「形質転換された細胞」、「トランスフェクトされた細胞」、または「形質導入された細胞」とは、その中にng.HuAFPをコードする核酸分子が、組換えDNA技術によって導入されている細胞(または細胞の子孫)を意味する。核酸分子は、宿主染色体に安定に組み入れられてもよく、またはエピソームとして維持されてもよい。
【0059】
「トランスジーン」は、意図的に細胞またはその先祖に挿入され、その細胞から発達する動物のゲノムの一部となる核酸分子の任意の小片を意味する。そのようなトランスジーンには、トランスジェニック動物に対して部分的もしくは完全に外因性(すなわち異物)である遺伝子が含まれてもよく、または動物の内因性の遺伝子に対して同一性を有する遺伝子を表してもよい。
【0060】
「トランスジェニック」とは、細胞またはその先祖に人工的に挿入され、その細胞から発達する動物のゲノムの一部となる核酸分子を含む任意の細胞を意味する。好ましくは、トランスジェニック動物はトランスジェニック哺乳類(例えば、マウス、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、オウシ、またはラマ)である。好ましくは、核酸分子(トランスジーン)は、核ゲノムに人工的に挿入されるが、トランスジーンはまた、エピソームとして維持されてもよい(例えば、エプスタイン-バーウイルスoriPのような複製開始点を含むベクターにおいて運ばれる)。
【0061】
「尿産生細胞」は、タンパク質を尿中に分泌する細胞(例えば、膀胱または腎上皮細胞)を意味する。
【0062】
「尿特異的プロモーター」とは、尿中にタンパク質を分泌する細胞(例えば、膀胱上皮細胞)における遺伝子の発現を天然に指示するプロモーターを意味する。尿特異的プロモーターの例は、ウロプラキンII遺伝子プロモーターおよびウロモジュリン遺伝子プロモーターである。
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、生物活性非グリコシル化ヒトα-フェトプロテイン(ng.HuAFP)、ng.HuAFPをコードする核酸配列、およびng.HuAFPを産生する方法を特徴とする。本発明の方法には、細胞(例えば、原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母細胞(例えば、ピチア・パストリス)もしくは哺乳類細胞))におけるng.HuAFPの産生が含まれる。ng.HuAFPを産生するために用いることができる原核細胞においてrHuAFPを産生する方法は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,384,250号および同第6,331,611号に認められうる。哺乳類細胞においてng.HuAFPを産生するために用いることができる方法は、米国特許出願第09/936,020号において認められうる。様々な哺乳類発現系および哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させる方法に関する詳細な記述は、Ausubelら(「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons, Inc., New York, pp.16.12.1〜16.20-16およびA.5.23-A.5.30, 1997)に提供される。
【0064】
本発明の方法にはまた、トランスジェニック生物、特に反芻動物(例えば、ウシ、ヒツジ、およびヤギ)、ウマ、ラクダ、オウシ、ラマ、ブタ、ウサギ、およびマウスのような哺乳類におけるng.HuAFPの産生が含まれるが、トリ(例えば、ニワトリ、七面鳥、ガチョウ、ウズラ、アヒル、およびダチョウ)、両生類、は虫類、および植物における産生も含まれる。トランスジーンは、前駆体AFPの251位またはシグナル配列を欠損する成熟AFPの233位で、グルタミンの代わりにアスパラギンの置換を含むように改変されたヒトAFPコード領域を含むng.HuAFPを含む。ng.HuAFPコード領域は転写プロモーターを含む核酸配列の下流で融合される。プロモーターとタンパク質コード領域のあいだには、タンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列が存在する。用いるプロモーターおよび分泌シグナルに応じて、ng.HuAFPの発現は、生体液、例えば乳汁、尿、血液、リンパ、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、または尿膜によって取り囲まれる液体、またはトランスジェニック生物の排水への分泌を可能にする。転写エンハンサー、転写および翻訳ターミネーター配列、mRNAの安定性を増強する3'非翻訳領域、および発現を増強するイントロンのようなさらなる核酸エレメントも同様に、トランスジェニック構築物に含まれてもよい。ng.HuAFPは、トランスジェニック動物において発現され、生体液(例えば、乳汁、尿、血液、リンパ等)に分泌され、これを回収して生体液から精製することができる。
【0065】
トランスジェニック生物の生体液(例えば、乳汁、尿、およびリンパ)にng.HuAFPが分泌されることによって、その精製は容易となり、そのいくつかが毒性、発癌性、または感染性となる可能性がある血液産物および培養培地添加剤を除去する必要がなくなる。その上、ng.HuAFPを含む乳汁は、ヒトまたは他の哺乳類によって直接消費されてもよい。尿中におけるng.HuAFPの発現によって、ng.HuAFPの産生に雄性および雌性動物の双方を用いることができる。さらに、ng.HuAFPは、動物が尿を産生し始めるや否や産生される。最後に、尿からのng.HuAFPの精製は、尿のタンパク質含有量が通常低いことから、比較的簡単である。
【0066】
トランスジェニック構築物
乳腺組織におけるng.HuAFPトランスジーン発現のための有用なプロモーターには、乳汁タンパク質のような乳腺特異的タンパク質の発現を天然に促進するプロモーターが含まれるが、乳汁中へのトランスジーン産物の分泌を可能にする如何なるプロモーターも用いてもよい。これらには、乳清酸性タンパク質(WAP)、αS1-カゼイン、αS2-カゼイン、βカゼイン、κカゼイン、β-ラクトグロブリン、およびα-ラクトアルブミンの発現を天然に指示するプロモーターが含まれる(例えば、Drohanら、米国特許第5,589,604号;Meadeら、米国特許第4,873,316号;およびKaratzasら、米国特許第5,780,009号を参照されたい)。
【0067】
尿組織においてng.HuAFPトランスジーンの発現のために有用なプロモーターは、ウロプラキンおよびウロモジュリンプロモーター(Kerrら、Nat. Biotechnol. 16:75〜79, 1998;およびZbikowskaら、Transgenic Res. 11:425〜435, 2002)であるが、尿中へのトランスジーン産物の分泌を可能にする如何なるプロモーターも用いてもよい。
【0068】
トランスジーン構築物は、好ましくは、プロモーターから下流にリーダー配列を含む。リーダー配列は、タンパク質分泌シグナルをコードする核酸配列であり、ng.HuAFPをコードする下流の核酸分子に機能的に結合すると、ng.HuAFP分泌を指示する。リーダー配列は、ng.HuAFPをコードする核酸分子の転写を指示するために用いたプロモーターと同じ遺伝子(例えば、乳汁特異的タンパク質をコードする遺伝子)から得てもよい。または、天然のヒトAFPタンパク質分泌シグナル(Genbankアクセッション番号V01514のアミノ酸1〜19位)をコードするリーダー配列を用いてもよい:Genbankアクセッション番号V01514のヌクレオチド45〜101位は、天然のヒトAFPタンパク質分泌シグナルをコードする。他の選択肢には、細胞から通常分泌される任意の他のタンパク質からのタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列、人工的タンパク質分泌シグナルをコードする人工的リーダー配列、またはハイブリッドリーダー配列(例えば、ヤギβ-カゼインとヒトAFPリーダー配列との融合体)を用いることが含まれる。
【0069】
さらに、トランスジーン構築物には、好ましくは転写終了部位、転写されたmRNAのポリアデニル化シグナル、および翻訳終了シグナルが含まれる。トランスジーンはまた、ng.HuAFP mRNAの安定性を増加させる任意の3'非翻訳領域(UTR)、例えばウシ成長ホルモン遺伝子、乳タンパク質遺伝子、またはグロビン遺伝子の3' UTRをコードしてもよい。
【0070】
トランスジーン構築物はまた、ウイルス(例えば、SV40)または哺乳類(例えば、カゼイン)遺伝子のエンハンサーのような、トランスジーンの転写領域から上流または下流に転写エンハンサーを含んでもよい。
【0071】
トランスジーン構築物にはさらに、トランスジーンの発現レベルを増加させるイントロンが含まれてもよい。転写開始部位と翻訳開始部位のあいだ、翻訳終止コドンの3'、またはトランスジーンのコード領域内にイントロンを配置してもよい。イントロンには、5'スプライス部位(すなわち、ドナー部位)、3'スプライス部位(すなわち、アクセプター部位)、および好ましくは二つの部位のあいだに少なくとも100ヌクレオチドが含まれなければならない。当技術分野において、トランスジーンの発現を増加させることがわかっている如何なるイントロン(例えば、反芻動物カゼイン遺伝子のイントロン)も用いてもよい。
【0072】
ng.HuAFPトランスジーンは、環状プラスミド、コスミドベクター、またはウイルスに由来するベクターのような他のベクターにおいて運ばれてもよい。ベクターは、原核細胞および真核細胞においてその増殖を促進するさらなる配列、例えば薬物選択マーカー(例えば、大腸菌におけるアンピシリン耐性、または哺乳類細胞におけるG-418耐性)、および複製開始点(例えば、原核細胞における複製のためのcolE1、および哺乳類細胞における複製のためのoriP)を含んでもよい。
【0073】
動物プロモーター
乳腺組織におけるng.HuAFPの発現にとって有用なプロモーターには、乳タンパク質のような乳腺特異的ポリペプチドの発現を本来促進するプロモーターが含まれるが、ng.HuAFPを乳汁に分泌させる如何なるプロモーターも用いることができる。これらには、例えば乳清酸性タンパク質(WAP)、αS1-カゼイン、α-S2カゼイン、βカゼイン、κカゼイン、β-ラクトグロビン、α-ラクトアルブミン(例えば、Drohanら、米国特許第5,589,604号;Meadeら、米国特許第4,873,316号;およびKaratzasら、米国特許第5,780,009号を参照されたい)の発現を本来指示するプロモーター、ならびに米国特許第5,750,172号に記載のプロモーターが含まれる。齧歯類における主要な乳清タンパク質である乳清酸性タンパク質(WAP;Genbankアクセッション番号X01153)は、妊娠後期および授乳期の乳腺において唯一高レベルで発現される(Hobbsら、J. Biol. Chem. 257:3598〜3605, 1982)。望ましい乳腺特異的プロモーターに関するさらなる情報に関しては、例えば、Richardsら、J. Biol. Chem. 256:526〜532, 1981(α-ラクトアルブミンラット);Campbellら、Nucleic Acids Res. 12:8685〜8697, 1984(ラットWAP);Jonesら、J. Biol. Chem. 260:7042〜7050, 1985(ラットβカゼイン);Yu-Lee & Rosen、J. Biol. Chem. 258:10794〜10804, 1983(ラット、γカゼイン);Hall、Biochem. J. 242:735〜742, 1987(ヒトα-ラクトアルブミン);Stewart、Nucleic Acids Res. 12:3895〜3907, 1984(ウシα-slおよびκカゼインcDNA);Gorodetskyら、Gene 66:87〜96, 1988(ウシβカゼイン);Alexanderら、Eur. J. Biochem. 178:395〜401, 1988(ウシκカゼイン);Brignonら、FEBS Lett. 188:48〜55, 1977(ウシαS2-カゼイン);Jamiesonら、Gene 61:85〜90, 1987;Ivanovら、Biol. Chem. Hoppe-Seyler 369:425〜429, 1988、およびAlexanderら、Nucleic Acids Res. 17:6739, 1989(ウシβ-ラクトグロビン);およびVilotteら、Biochimie 69:609〜620, 1987(ウシαラクトアルブミン)を参照されたい。様々な乳タンパク質遺伝子の構造および機能は、Mercier & Vilotte、J. Dairy Sci. 76:3079〜3098, 1993によって論評されている。発現を最適化するためにさらなる隣接配列が有用である場合、そのような配列はプローブとして既存の配列を用いてクローニングすることができる。異なる生物からの乳腺特異的調節配列は、プローブとして公知の同源のヌクレオチド配列または同源のタンパク質に対する抗体を用いて、そのような生物からのライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。
【0074】
ng.HuAFPの発現および乳汁中への分泌にとって有用なシグナル配列は、乳汁特異的シグナル配列である。望ましくは、シグナル配列は、乳汁特異的シグナル配列から、すなわち乳汁に分泌される産物をコードする遺伝子から選択される。最も望ましくは、乳汁特異的シグナル配列は、上記の乳汁特異的プロモーターに関連する。シグナル配列の大きさは、本発明にとって重要ではない。必要なことは、例えば乳腺組織においてng.HuAFPを分泌させるために、配列が十分な大きさであればよい点である。例えば、カゼイン類、例えばα、β、γ、またはκカゼイン、βラクトグロブリン、乳清酸性タンパク質、およびラクトアルブミンをコードする遺伝子からのシグナル配列は、本発明において有用である。他の分泌型タンパク質、例えば肝細胞、腎細胞、または膵細胞によって分泌されるタンパク質からのシグナル配列も同様に用いることができる。
【0075】
尿組織における組換えポリペプチドトランスジーンの発現にとって有用なプロモーターは、ウロプラキンおよびウロモジュリンプロモーター(Kerrら、Nat. Biotechnol. 16:75〜79, 1998;Zbikowskaら、Biochem. J. 365:7〜11, 2002;およびZbikowskiら、Transgenic Res. 11:425〜435, 2002)であるが、尿中へのトランスジーン産物の分泌を可能にする如何なるプロモーターも用いてもよい。
【0076】
血液産生または血清産生細胞(例えば、肝上皮細胞)によるng.HuAFPの発現および血液中への分泌にとって有用なプロモーターは、アルブミンプロモーター(例えば、Shenら、DNA 8:101〜108, 1989;Tanら、Dev. Biol. 146:24〜37, 1991;McGraneら、TIBS 17:40〜44, 1992;Jonesら、J. Biol. Chem. 265:14684〜14690, 1990;およびShimadaら、FEBS Letters. 279:198〜200, 1991)であるが、トランスジーン産物を血液中に分泌させる如何なるプロモーターも用いてもよい。天然のα-フェトプロテインプロモーターも同様に用いることができる(例えば、Genbankアクセッション番号:AB053574;AB053573;AB053572;AB053571;AB053570;およびAB053569を参照されたい)。
【0077】
精液におけるng.HuAFPの発現にとって有用なプロモーターは、米国特許第6,201,167号に記述されている。
【0078】
有用なトリ特異的プロモーターは卵白アルブミンプロモーターおよびapo-Bプロモーターである。他のトリ特異的プロモーターは、当技術分野で公知である。卵白アルブミンプロモーターは、ng.HuAFPの発現を指示するために用いることができ、これは卵の卵白に沈着される。apo-Bプロモーターも同様に、肝臓における組換えポリペプチドの発現を指示するために用いることができるが、この場合は最終的に卵黄に沈着されるであろう。トリの卵は、以下の理由から大量の組換えポリペプチドを発現するための最適な媒体である:(1)大量のタンパク質が各卵に充填される、(2)卵は容易に非侵襲的に回収され、長期間保存することができる、および(3)卵は無菌的であり、乳汁とは異なり、細菌混入物を含まない。詳しく述べると、各卵に関して、トリは卵管においてアルブミン3 gを産生することができ、その50%より多くが卵白アルブミンである。別の3 gが肝臓において産生され(血清リポタンパク質)、卵黄に沈着する。さらに、トリは典型的に哺乳類との進化的距離のために、哺乳類のタンパク質を免疫学的に認識しないことから、トリにおけるng.HuAFPの発現は、トリの生存および健康に如何なる有害な作用も及ぼさない可能性がある。
【0079】
本発明の方法において有用な他のプロモーターには、誘導型プロモーターが含まれる。一般的に、組換えタンパク質は、ほとんどの真核細胞発現系において構成的に発現される。誘導型プロモーターまたはエンハンサーエレメントを加えると、ng.HuAFPの発現に対して時間的または空間的制御が得られ、発現のもう一つのメカニズムを提供する。誘導型プロモーターには、熱ショックタンパク質、メタロチオネイン、およびMMTV-LTRが含まれるが、誘導型エンハンサーエレメントには、エクジソン、ムリステロンAおよびテトラサイクリン/ドキシサイクリンのエンハンサーエレメントが含まれる。
【0080】
Tet-OnおよびTet-Off遺伝子発現系(Clontech)は、本発明の方法において有用である誘導型系の一例である。この系は、オン(構成的にオフ、Tcによって誘導される)またはオフ(構成的にオン、Tcまたはドキシサイクリンによって抑制される)様式でng.HuAFPの発現を維持するために、テトラサイクリン(Tc)反応性エレメントを利用する。
【0081】
選択マーカーはまた、形質転換されている細胞を容易に同定するために、ng.HuAFPトランスジーンに組み入れることができる。選択マーカーは一般的に、二つの機能的カテゴリー、劣性および優性、に分類される。劣性マーカーは通常、宿主細胞(「マーカー」産物または機能を欠損する細胞)において産生されない産物をコードする遺伝子である。チミジンキナーゼ(TK)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)、およびヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)のマーカー遺伝子はこのカテゴリーに入る。優性マーカーには、増殖抑制化合物(抗生物質、薬物)に対する耐性を付与するおよび/または代謝的に制限された環境に限って宿主細胞の増殖を許容する産物をコードする遺伝子が含まれる。このカテゴリー内で一般的に用いられるマーカーには、メソトレキセートに対する耐性を付与する変異体DHFR遺伝子;ミコフェノール酸/キサンチン含有培地での宿主細胞の増殖を許容するキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼのgpt遺伝子;およびG418、ゲンタマイシン、カナマイシン、およびネオマイシンに対する耐性を付与することができるアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼに関するneo遺伝子が含まれる。
【0082】
トランスジェニック動物の作製
トランスジェニック構築物は通常、マイクロインジェクション(Ogataら、米国特許第4,873,292号)によって細胞に導入される。次に、マイクロインジェクションした胚を適当な雌性動物に移入すると、トランスジーンが組み入れられた胚の発達段階に応じて、トランスジェニックまたはキメラ動物が出生する。キメラ動物を交配させて、真の生殖系列トランスジェニック動物を作製することができる。
【0083】
トランスジェニック動物発生のいくつかの方法において、トランスジーンは、受精卵の前核に導入される。マウスのようないくつかの動物に関して、受精はインビボで行われ、受精卵を外科的に摘出する。他の動物では、卵子を、生きているまたは死んだばかりの(例えば、屠殺場で)動物から採取してインビトロで受精させることができる。
【0084】
または、トランスジーンは、胚幹細胞(ES細胞)に導入することができる。トランスジーンは、電気穿孔、マイクロインジェクション、核移入、または当業者に公知である細胞のトランスフェクションのために用いられる任意の他の技術によって、そのような細胞に導入することができる。形質転換細胞を、それらが起源となる動物からの胚盤胞と混合することができる。形質転換細胞は胚に定着して、いくつかの胚では、これらの細胞は得られたキメラ動物の生殖系列を形成する(Jaenisch, R., Science 240:1468〜1474, 1988)。
【0085】
ng.HuAFPトランスジーンを含むES細胞はまた、除核した受精卵に移植するための核の起源として用いて、このように、トランスジェニック動物を作製してもよい。より一般的に、胚、胎児、または生体組織に由来して、rHuAFPトランスジーンを含む如何なる半数体細胞を、除核した受精卵に導入してもよい。クローニングした胚を適当な雌性動物に移植して妊娠させると、完全なトランスジェニック動物が得られる(Wilmutら、Nature 385:810〜813, 1997)。
【0086】
一般的に、如何なるトランスジーンの発現もその組み込み位置およびコピー数に依存する。適当なトランスジーン発現レベルおよび組織特異的トランスジーン発現パターンを有するトランスジェニック動物を、従来の方法(例えば、前核注射またはキメラ胚の作製)によって得た後、同じトランスジーンの発現レベルおよびパターンを有する子孫を得るために動物を交配させる。このアプローチには、いくつかの制限がある。第一に、子孫へのトランスジーンの伝幡は、トランスジェニック生殖細胞を欠損するトランスジェニックキメラでは起こらない。第二に、ヘテロ接合トランスジェニック創始動物を非トランスジェニック動物と交配させるために、子孫の半分がトランスジェニックとなるに過ぎない。第三に、トランスジェニック子孫の数は、妊娠期間および妊娠あたりの子孫の数によってさらに制限される。最後に、有用なトランスジェニック子孫の数は、性別によってさらに制限される可能性がある;例えば、乳汁において発現されるng.HuAFPを産生するためには雌性動物のみが有用である。これらの制限を考慮すると、核移入技術は、比較的短期間で遺伝的に同一である多くの雌性トランスジェニック動物を作製することができる長所を提供する。
【0087】
その乳汁中にng.HuAFPを発現する動物はまた、分娩後の動物の乳腺組織にトランスジーンを直接移入することによって作製してもよい(Karatzasら、米国特許第5,780,009号)。そのような動物は、その生殖系列にトランスジーンを含まず、したがってトランスジェニック子孫を生じない。
【0088】
如何なる動物も本発明において有用に用いることができる。望ましくは、大量の生体液(例えば、乳汁)を産生する動物が好ましい。望ましい動物は、トリ、は虫類および両生類と共に、反芻類、有蹄類、家畜哺乳類、および酪農動物である。適したトリには、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥、ウズラ、アヒル、およびダチョウが含まれる。特に望ましい動物には、マウス、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、オウシ、およびラマが含まれる。当然、これらの動物のそれぞれは、ng.HuAFPの発現に関して他の動物ほど有効でない可能性がある。例えば、特定の生体液特異的プロモーター(例えば、乳汁、尿、血液、もしくはリンパ特異的プロモーター)またはシグナル配列は、ある哺乳類では他の哺乳類より有効である可能性がある。しかし、当業者は、本発明の教示および先行技術において認められる教示に従うことによって、そのような選択を容易に行うことができる。ng.HuAFPが、トランスジェニック動物の乳汁、尿、血液、またはリンパに分泌される場合、動物は、毎年少なくとも1リットル、より望ましくは少なくとも10リットル、25リットルもしくは50リットル、および最も望ましくは100リットル、500リットル、1000リットルもしくは10,000リットルまたはそれ以上の乳汁、尿、血液、またはリンパを産生できなければならない。望ましくはng.HuAFPは、生物によって産生された産物、例えば乳汁、尿、血液、羊水、または卵の卵黄嚢、絨毛膜、もしくは尿膜に取り囲まれている液体から回収されるが、種子、毛髪、組織、または卵子からも回収することができる。
【0089】
二つまたは三つの生体液(例えば、乳汁と尿、乳汁と血液、または乳汁、尿、および血液)においてng.HuAFPを産生するトランスジェニック動物を作製してもよい。そのような動物を作製する一つの方法は、乳汁産生細胞、尿産生細胞、または血液産生細胞のいずれかから組換えポリペプチドを発現および分泌することができるプロモーターによって指示されるng.HuAFP核酸分子から選択される、三つまでの構築物によって動物の胚細胞を形質転換することである。この方法では、二重または三重形質転換細胞を用いて、その生体液の一つまたはそれ以上においてng.HuAFPを発現することができるトランスジェニック動物を作製する。
【0090】
したがって、哺乳類(例えば、反芻類)受精卵に、例えば乳汁特異的プロモーター、尿特異的プロモーター、血液特異的プロモーター、またはリンパ特異的プロモーターの一つまたはそれ以上の制御下で、ng.HuAFPを発現する二つまたは三つの核酸分子をマイクロインジェクション(または同時マイクロインジェクション)する。生成されたトランスジェニック動物は、その乳汁、尿、血液、またはリンパにおいてng.HuAFPを分泌/産生するであろう。これは、トランスジェニック動物単位あたりに産生されるng.HuAFPの総産出量を増加させるであろう。
【0091】
一つまたはそれ以上の生体液においてng.HuAFPを産生することができるそのような動物を作製する第二の方法は、生体液産生細胞(例えば、乳汁産生細胞、尿産生細胞、血液産生細胞、またはリンパ産生細胞)においてng.HuAFPを発現および分泌することができる構築物を有する胚幹細胞を個々に作製することである。次に、形質転換されたES細胞タイプの一つまたはそれ以上をそれらが起源となる動物からの胚盤胞と混合すると、キメラ動物が得られ、これをホモ接合性が得られるまで交配させてもよい。
【0092】
このタイプの二重または三重発現動物は、多くの長所を有する。第一に、いずれの性の動物も、出生後から連続的に、例えば尿または血液においてng.HuAFPを産生し、雌性動物は授乳成体として、例えば乳汁においてng.HuAFPをさらに産生することができるであろう。第二に、個々の任意の雌性動物によって産生されるng.HuAFPの量は、組換えポリペプチドを変化させる必要性に応じて、増加(授乳を誘導することによって)または減少(授乳を誘導しないことによって)させてもよい。
【0093】
トランスジェニック動物の作製プロトコールは、例えばWhite and Yannoutsos、「Current Topics in Complement Research:64 th Forum in Immunology」、pp.88〜94;Bader and Ganten、「Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology」、Supp.3:S81〜S87, 1996;「Transgenic Animal Technology、A Handbook」、1994, Carl A. Pinkert編、Academic Press, Inc.;米国特許第5,523,226号;米国特許第5,530,177号;米国特許第5,573,933号;PCT出願国際公開公報第93/25071号;およびPCT出願国際公開公報第95/04744号に認められうる。トランスジェニック動物を作製するその他の方法は当技術分野で公知である(例えば、Loveら、Biotechnology 12:60〜63, 1994;Naitoら、Mol. Reprod. Dev. 39:153〜161, 1994;Changら、Cell Biol. Int. 21:495〜499, 1997;Carscienceら、Development 117:669〜675, 1993;Painら、Cell, Tissues, Organs 165:212〜219, 1999;Pettiteら、Development 108:185〜189, 1990;Pettiteら、「Transgenic Animal Research Conference III」(Tahoe City), pp.32〜33, 2001;Wrightら、BioTehcnology 9:830〜83, 1991;Purselら、J. Anim. Sci. 71 Suppl 3:1〜9, 1993;Wallら、Theriogenology 5:57〜968, 1996;Campbellら、Nature 380:64〜66、1996;Wilmutら、Nature 385:810〜813, 1997;Cibelliら、Science 280:1256〜1258, 1998;およびWakayamaら、Nature 394:369〜374, 1998を参照されたい)。
【0094】
ng.HuAFPを発現するトランスジェニック動物のスクリーニング
候補トランスジェニック動物を作製した後、その細胞がトランスジーンを含み、発現する動物を検出するために、それらをスクリーニングしなければならない。動物組織におけるトランスジーンの有無は、典型的に、サザンブロット分析または候補トランスジェニック動物からのDNAのPCR増幅を用いることによって検出される(例えば、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons, New York, NY, 1988;同様にLubonら、米国特許第5,831,141号を参照されたい)。乳汁、尿、血液、またはリンパにおけるng.HuAFPの発現は、如何なる標準的な免疫学的アッセイ、例えば、ヒトAFPに対する抗体を用いるELISAまたはウェスタンブロッティング分析によって決定してもよい(例えば、Murgitaら、米国特許第5,384,250号およびAusubelら、上記を参照されたい)。乳汁中でのトランスジーンコードタンパク質のELISAに基づく検出の実際の例に関しては、米国特許第5,589,604号を参照されたい。
【0095】
トランスジェニック植物
藻類、樹木、鑑賞植物、温帯果樹、熱帯果樹、野菜、マメ科植物、十字花科植物、単子葉植物、双子葉植物、または商業的もしくは農業的に重要な任意の植物が含まれるがこれらに限定されない、多くの任意の植物宿主を用いて、本発明の構築物を用いてng.HuAFPを産生することができる。適した植物種の特定の例には、針葉樹、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、タバコ、レタス、ヒマワリ、菜種、亜麻、ワタ、テンサイ、セロリー、ダイズ、アルファルファ、ハス、キュウリ、ニンジン、ナス、カリフラワー、西洋ワサビ、アサガオ、ポプラ、クルミ、リンゴ、ブドウ、アスパラガス、コメ、トウモロコシ、キビ、タマネギ、オオムギ、カモガヤ、オート麦、ライ麦、コムギ、トウモロコシ、アルファルファ、芝草、栄養増殖が可能な水生植物、アカウキクサ、フローティングライス、ホテイアオイ、スイカ、水中で増殖する顕花植物、ならびにシロイヌナズナ、ウマゴヤシ、ササゲ、イチゴ、ハス、オノブリキス、ジャジクソウ、トリゴネラ、ミカン、アマ、ゼラニウム、キャッサバ、ニンジン、アブラナ、ダイコン、カラシ、ロウトウ、トウガラシ、ヒヨス、トマト、タバコ、ナス、ペチュニア、ジギタリス、マジョラナ、シオホリウム、ヒマワリ、レタス、イヌムギ、キンギョソウ、ヘテロカリス、ネメシア、ペラルゴニウム、キビ、チカラシバ、ラナンキュラス、キオン、サルピグロッシス、キュウリ、ブロワリア、ダイズ、ライグラス、トウモロコシ、コムギ、モロコシ、またはチョウセンアサガオ属の種が含まれるがこれらに限定されない。
【0096】
植物抽出物は、ng.HuAFPを産生することができる如何なるトランスジェニック植物に由来してもよい。さらに、下記のように、トランスジェニック構築物を、ng.HuAFPを産生するために植物において発現させてもよく、これを植物組織または植物の分泌物から単離することができる。
【0097】
植物プロモーター
様々な植物プロモーターが、米国特許第5,391,725号;同第5,536,653号;同第5,589,583号;同第5,608,150号;同第5,898,096号;同第6,072,050号;同第6,184,440号、および同第6,331,663号のような様々な特許に記述されているように、異なる植物から同定および単離されている。望ましい植物プロモーターには、強い、非組織または発達特異的植物プロモーター(例えば、多くのまたは全ての植物組織タイプにおいて強く発現するプロモーター)が含まれる。望ましい植物プロモーターには、実質的に全ての植物組織において高レベルでの発現を可能にするカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S)および19S(CaMV 19S)遺伝子プロモーターが含まれる(Benefeyら、Science 250:959〜966, 1990;Odellら、Nature 313:810〜812, 1985;Jensenら、Nature 321:669〜674, 1986;Jeffersonら、EMBO J. 6:3901〜3907, 1987;およびSandersら、Nuc. Acids Res. 14:1543〜1558, 1987)。CaMV35Sプロモーターにおいて、ドメインA(-90〜+8)によって付与される発現は、根組織において特に強いことが判明したが、ドメインB(-343〜-90)によって付与される発現は、種子および実生の子葉、ならびに胚軸の導管組織において最も強いように思われた(Benfeyら、EMBO J 8:2195〜2202, 1989)。その上、このプロモーターの活性は、CaMV 35Sプロモーターの複製によってさらに増加させる(すなわち2〜10倍)ことができる(例えば、Kayら、Science 236:1299, 1987;Owら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4870, 1987;およびFangら、Plant Cell 1:141, 1989を参照されたい)。
【0098】
他の望ましい植物プロモーターには、例えば、T-DNAマンノピンシンターゼプロモーターおよび様々な誘導体;外からの毒性緩和剤の適用に反応して活性化されるトウモロコシグルタチオン-S-トランスフェラーゼイソ型II(GST-II-27)遺伝子プロモーターのような誘導型プロモーター(国際公開公報第93/01294号、ICI Ltd);生育途中の植物に適用することができる特定の化学物質によって誘導されることが示されているGST-II-27遺伝子プロモーター;デキサメタゾン(DEX)プロモーター(Aoyamaら、Plant Journal 11:605〜612, 1997);伸長組織特異的プロモーター(例えば、細胞プロモーター);カルコンシンターゼプロモーター(CHS);および伸長しつつある組織および臓器における発現が望ましい場合に用いることができるジャガイモのPATATINプロモーター(Rocha-Sosaら、EMBO J. 8:23〜29, 1989)が含まれる。
【0099】
他の適した植物プロモーターには、例えばノパリンシンターゼ(NOS)およびオクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター(これらは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導プラスミドにおいて運ばれる;Ha and An, Nucleic Acids Res. 17:215〜224, 1989;およびAnら、Plant Physiol. 88:547〜552, 1988);ジャガイモの葉/茎(ST-LS)1遺伝子(Stockhausら、Plant Cell 1:805〜814, 1989);ダイズ熱ショックタンパク質hsp 17.5-Eまたはhsp17.3-Bプロモーター(Gurleyら、Mol. Cell Biol. 6:559〜565, 1986);パラスポニア・アンデルソニヘモグロビンプロモーター(Landsmannら、Mol. Gen. Genet. 214:68〜73, 1988);創傷に反応してならびに通常の木部および花の発達の際にフェニルプロパノイド誘導体を蓄積する特定の細胞タイプにおいて活性であるように思われるフェニルアラニンアンモニアリアーゼプロモーター(Bevanら、EMBO J. 8:1899〜1906, 1989);ペチュニア5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ遺伝子プロモーター(Benfey and Chua、Science 244:174〜181, 1989);および蔗糖シンターゼプロモーターが含まれる。これらのプロモーターは全て、植物において発現されている様々なタイプのDNA構築物を作製するために用いられている(例えば、PCT出願国際公開公報第84/02913号を参照されたい)。
【0100】
特定の適用に関して、ng.HuAFPの産生を、適当な植物組織において、適当なレベルで、または適当な発達時期に調節することが望ましいかも知れない。この目的に関して、それぞれが環境、ホルモン、および/または発達の合図に反応して調節されることが示されている、その調節配列において具体化される独自の明確な特徴を有する遺伝子プロモーターの分類が存在する。これらには、熱調節遺伝子発現(例えば、Takahashi and Komeda, Mol. Gen. Genet. 219:365〜372, 1989)、光調節遺伝子発現(例えば、シロイヌナズナCab2光合成葉特異的プロモーター;Schaffner and Sheen, Plant Cell 3:997〜1012, 1991によって記述されるトウモロコシrbcSプロモーター;マメrbcS-3A;リブロースビスホスフェートカルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO、非常に豊富な植物ポリペプチド;Coruzziら、EMBO J. 3:1671〜1679, 1984;およびHerrera-Estrellaら、Nature 310:115〜120, 1984)の光誘導型プロモーター;集光性クロロフィルタンパク質複合体のクロロフィルa/b結合タンパク質(Cab)(Apelら、Eur. J. Biochem. 85:581〜588, 1978;Stiekemaら、Plant Physiol. 72:717〜724, 1983;Thompsonら、Planta 158:487〜500, 1983;およびJonesら、EMBO J. 4:2411〜2418, 1985);またはSimpsonら、EMBO J. 4:2723, 1985によって記述されるマメにおいて発見されたクロロフィルa/b-結合タンパク質遺伝子);ホルモン調節遺伝子発現(例えば、Marcotteら、Plant Cell 1:969〜976, 1989によって記述されるコムギEm遺伝子のアブシジン酸(ABA)反応性配列;Straubら、Plant Mol. Biol. 26:617〜630, 1994;Shenら、Plant Cell 7:295〜307, 1995によって記述される、オオムギおよびシロイヌナズナに関して記述されるABA-誘導型HVA1およびHVA22、ならびにrd29Aプロモーター);創傷誘導遺伝子発現(例えば、Siebertzら、Plant Cell 1:961〜968, 1989によって記述されるwunIのプロモーター);臓器特異的遺伝子発現、に関与する遺伝子プロモーター;トウモロコシからの23 kDaゼイン遺伝子;またはBustosら、Plant Cell 1:839〜853, 1989によって記述されるインゲン豆β-ファセオリン遺伝子;Sadkaら、Plant Cell 6:737〜749, 1994によって記述される栄養貯蔵タンパク質プロモーター(ダイズvspB)、サイクリングプロモーター(例えば、Hemerlyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3295〜3299, 1992によって記述されるシロイヌナズナcdc2aプロモーター);老化特異的プロモーター(例えば、Ganら、Science 270:1986〜1988, 1995によって記述されるシロイヌナズナSAG12プロモーター);種子特異的プロモーター(例えば、内胚葉特異的もしくは胚特異的プロモーター);または病原体誘導型プロモーター(例えば、PR-1もしくはb-1,3グルカナーゼプロモーター)が含まれる。
【0101】
植物細胞の形質転換において広く用いられている他の二つのプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、AdhIおよびAdhIIのプロモーターである。いずれの遺伝子も嫌気生活の開始後に誘導される。本発明のさらにもう一つの態様において、改変または人工植物プロモーターに機能的に結合したng.HuAFPトランスジーン構築物によって植物を形質転換することが有利であるかも知れない。典型的に、そのようなプロモーターは、異なる植物プロモーターの構造エレメントを組換えることによって構築され、天然の植物プロモーターには認められない独自の発現パターンおよび/またはレベルを有する(例えば、cis-調節エレメントをプロモーターコアと組み合わせることによって構築された人工プロモーターに関してSalinaら、Plant Cell 4:1485〜1493, 1992を参照されたい)。
【0102】
米国特許第4,782,022号に記述されるようにリゾビウム・メリロチ(Rhizobium meliloti)FIXD遺伝子プロモーターを含む特定の細菌プロモーターが、植物において発現されることが認められている。rolA、B、およびCプロモーターと呼ばれるいくつかのプロモーター配列が、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)において同定されている(例えば、Schmullingら、Plant Cell 1:665〜670, 1989;およびSugayaら、Plant Cell Physiol. 30:649〜654, 1989を参照されたい)。上記のSugayaらによって記述され、細菌のRiプラスミド上に存在するrol Cプロモーターは、篩部細胞において発現されることが認められている。他の適したプロモーターは、当業者に周知であると思われる。
【0103】
同様に本発明に従って、ng.HuAFPは、ng.HuAFP核酸配列を任意の適したシグナルペプチドに融合させることによって得られる発現植物細胞から分泌させてもよい。
【0104】
本発明のng.HuAFPトランスジーン構築物を発現するための材料は、American Type Culture Collection(Rockland, MD)を含む広範囲の起源から;または多くのシード会社、例えばW. Atlee Burpee Seed Co.(Warminster, PA)、Park Seed Co.(Greenwood, SC)、Johnny Seed Co.(Albion, ME)、またはNorthrup King Seeds(Harstville, SC)から入手可能である。
【0105】
トランスジェニック植物を作製する方法は、例えば、Ausubelら、上記;Weissbach and Weissbach, 「Methods for Plant Molecular Biology」、Academic Press, 1989;Gelvinら、「Plant Molecular Biology Manual」、Kluwer Academic Publishers, 1990;Kindle, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1228〜1232, 1990;Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biology 42:205, 1991;およびBioRad(Hercules、CA)Technical Bulletin #1687(Biolistic Particle Delivery Systems)に記述されている。発現媒体は、例えば、「Cloning Vectors:A Laboratory Manual」(Pouwelsら、1985, Supp. 1987);Clontech Molecular Biology Catalog(Catalog 1992/93 Tools for the Molecular Biologist, Palo Alto, CA);および上記に引用される参考文献において提供される媒体から選択してもよい。他の発現構築物は、Fraleyら(米国特許第5,352,605号)によって記述されている。
【0106】
トランスジェニック植物を確立するために適した多くのベクターが公的に入手可能である;そのようなベクターは、Pouwelsら、上記、Weissbach and Weissbach、上記、およびGelvinら、上記に記述されている。これらの植物発現ベクターは、本発明において用いるために改変することができ、これらには(1)ng.HuAFPをコードする核酸配列、(2)プロモーター(例えば、誘導型もしくは構成的、病原体もしくは創傷誘導型、環境もしくは発達調節型、または細胞もしくは組織特異的発現を付与するプロモーター)、(3)ng.HuAFPの分泌を指示するシグナル配列、(4)優性選択マーカー、(5)転写開始部位、(6)リボソーム結合部位、(7)RNAプロセシングシグナル、(8)転写終了部位、および/または(9)ポリアデニル化シグナルが含まれる。プロモーターおよびシグナル配列は、ng.HuAFP核酸配列に機能的に結合している。
【0107】
発達的、細胞、組織、ホルモン、または環境的発現が望ましい応用では、適当な5'上流の非コード領域を、他の遺伝子、例えば分裂組織発達、種子発達、胚発達、または葉の発達の際に調節される遺伝子から得る。
【0108】
植物発現ベクターにはまた、任意で、効率的なRNA合成および蓄積にとって重要であることが示されているRNAプロセシングシグナル、例えばイントロンが含まれうる(Callisら、Genes and Dev. 1:1183〜1200, 1987)。RNAスプライス配列の位置は、植物におけるng.HuAFPトランスジーン発現レベルに強く影響を及ぼしうる。この事実を考慮すると、遺伝子発現レベルを調節するためにng.HuAFPトランスジーンにおける調節因子コード配列の上流または下流に、イントロンを配置してもよい。
【0109】
さらに、発現ベクターには、植物遺伝子の5'および3'領域に一般的に存在する5'および3'調節制御配列が含まれうる(Anら、Plant Cell 1:115〜122, 1989)。例えば、mRNAの安定性を増加させるために、3'ターミネーター領域を発現ベクターに含めてもよい。そのような一つのターミネーター領域は、ジャガイモのPI-IIターミネーター領域に由来してもよい。さらに、他の一般的に用いられるターミネーターは、オクトピンまたはノパリンシンターゼシグナルに由来する。
【0110】
植物発現ベクターはまた、典型的に、形質転換されたそれらの細胞を同定するために用いられる優性選択マーカー遺伝子を含む。植物系にとって有用な選択マーカーには、抗生物質耐性遺伝子をコードする遺伝子、例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン、またはスペクチノマイシンに対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。光合成欠損株においては、光合成にとって必要な遺伝子も同様に選択マーカーとして用いてもよい。最後に、殺虫剤耐性をコードする遺伝子を選択マーカーとして用いてもよい;有用な殺虫剤耐性遺伝子には、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ酵素をコードして、広域殺虫剤BASTA(登録商標)(Hoechst AG、Frankfurt, Germany)に対する耐性を付与するbar遺伝子が含まれる。
【0111】
選択マーカーの効率的な使用は、特定の選択物質に対する植物細胞の感受性を決定すること、および形質転換細胞の全てではないがほとんどを効率的に殺すこの物質の濃度を決定することによって容易となる。タバコの形質転換に関する抗生物質のいくつかの有用な濃度には、例えば75〜100 μg/ml(カナマイシン)、20〜50 μg/ml(ハイグロマイシン)、または5〜10 μg/ml(ブレオマイシン)が含まれる。殺虫剤耐性に関して形質転換体を選択するための有用な戦略は、例えば、Vasil I.K.,「Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants」, Vol I, II, III, 「Laboratory Procedures and Their Applications」, Academic Press, New York, 1984に記述されている。
【0112】
植物の形質転換
植物発現ベクターの構築によって、ベクターを宿主に導入して、それによってトランスジェニック植物を作製するためにいくつかの標準的な方法が利用可能である。一般的に、Methods in Enzymology Vol 153(「Recombinant DNA Part D」)1987、Wu and Grossman編、Academic Pressおよび欧州特許第693554号を参照されたい。これらの方法には、(1)アグロバクテリウム媒介形質転換(A.ツメファシエンスまたはA.リゾゲネス)(例えば、Lichtenstein and Fuller, 「Genetic Engineering」, vol 6, PWJ Rigby編、London, Academic Press, 1987;Lichtenstein C.P. and Draper, J、「DNA Cloning」, vol II, D.M. Glover編、Oxford, IRI Press, 1985;Horschら、Science 233:496〜498, 1984;およびFraleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4803, 1983を参照されたい);(2)粒子送達システム(例えば、Gordon-Kammら、Plant Cell 2:603, 1990;およびKleinら、Nature 327:70〜73, 1987;またはBioRad Technical Bulletin, 1687,上記を参照されたい);(3)マイクロインジェクションプロトコール(例えば、Greenら、上記を参照されたい);(4)ポリエチレングリコール(PEG)技法(例えば、Draperら、Plant Cell Physiol. 23:451, 1982;Paszkowskiら、EMBO J. 3:2712〜2722, 1984;およびZhang and Wu, Theor. Appl. Genet. 76:835, 1988を参照されたい);(5)リポソーム媒介DNA取り込み(例えば、Freemanら、Plant Cell Physiol. 25:1353, 1984を参照されたい);(6)電気穿孔プロトコール(例えば、Gelvinら、上記;Dekeyserら、上記;Frommら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5824, 1985;Frommら、Nature 319:791, 1986;Sheen, Plant Cell 2:1027, 1990;およびJang and Sheen, Plant Cell 6:1665, 1994を参照されたい);ならびに(7)攪拌法(例えば、Kindle、上記を参照されたい)およびフローラルディップ法(例えば、Clough and Bent, Plant J. 16:735〜743, 1998を参照されたい)が含まれる。形質転換法は、本発明にとって重要ではない。効率的な形質転換を提供する如何なる方法を用いてもよい。穀物または他の宿主細胞を形質転換するためにより新しい方法が利用できれば、それらを直接応用してもよい。
【0113】
以下は、一つの特定の技術、アグロバクテリウム媒介植物形質転換を概要する実施例である。この技術によって、植物細胞のゲノムに移入される遺伝子を操作する一般的プロセスは二相において行われる。第一に、クローニングおよびDNA改変段階は大腸菌において行い、対象遺伝子構築物を含むプラスミドを、アグロバクテリウムへの結合または電気穿孔によって移入する。第二に、得られたアグロバクテリウム株を用いて植物細胞を形質転換する。このように、一般的な植物発現ベクターに関して、プラスミドは、アグロバクテリウムにおいて複製できるようにする複製開始点、および大腸菌において機能的な高コピー数の複製開始点を含む。これによって、植物にその後導入するためにアグロバクテリウムに移入する前に、大腸菌におけるトランスジーンの産生および試験を容易にすることができる。耐性遺伝子、一つは細菌において選択するため、例えばストレプトマイシン、およびもう一つは植物において機能し、例えばカナマイシン耐性または殺虫剤耐性をコードする遺伝子を、ベクターにおいて運ぶことができる。同様に、ベクターには、一つまたはそれ以上のトランスジーンを付加するための制限エンドヌクレアーゼ部位、およびアグロバクテリウムの移入機能によって認識された場合に、植物に移入されるDNA領域の境界を定める方向性のT-DNA境界配列も存在する。
【0114】
もう一つの例において、植物細胞は、クローニングされたDNAが沈殿するタングステンのマイクロ発射物を細胞に撃つことによって形質転換してもよい。撃つために用いられるバイオリスティック装置(Biolistic Apparatus、Bio-Rad)では、火薬の充填(22口径のPower Piston Tool Charge)または空気による爆風によって、銃身を通してプラスチック性のマクロ発射物が駆動される。その上にDNAが沈殿しているタングステン粒子浮遊液の少量をプラスチック製のマクロ発射物の前に配置する。マクロ発射物を、マクロ発射物が通過するには小さすぎる穴を有するアクリル性の停止板で発火させる。その結果、プラスチック製のマクロ発射物が停止板に激突して、タングステンのマイクロ発射物はプレートの穴の中をその標的に向かって進行し続ける。本発明に関して、標的は如何なる植物細胞、組織、種子、または胚となりうる。マイクロ発射物上で細胞に導入されたDNAは、核または葉緑体のいずれかに組み入れられる。
【0115】
一般的に、植物細胞におけるトランスジーンの移入および発現は、当業者にとって通常の実践であり、植物における遺伝子発現研究において、ならびに農業および商業的に重要な改良植物変種を作製するために主要なツールとなった。
【0116】
トランスジェニック系統を、ng.HuAFP発現レベルに関して評価することができる。発現陽性植物を同定および定量するために、RNAレベルでの発現が最初に決定される。標準的なRNA分析技術を用い、これにはトランスジーンRNA鋳型のみを増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR増幅アッセイ、およびトランスジーン特異的プローブを用いる溶液ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、Ausubelら、上記を参照されたい)が含まれる。次に、RNA陽性植物を、特異的抗体を用いるウェスタンイムノブロット分析によってタンパク質発現に関して分析する(例えば、Ausubelら、上記を参照されたい)。さらに、トランスジェニック組織内での発現部位の位置を特定するために、ng.HuAFP特異的ヌクレオチドプローブおよび抗体をそれぞれ用いて、標準的なプロトコールに従うインサイチューハイブリダイゼーションおよび免疫細胞化学を行うことができる。
【0117】
トランスジェニック植物の再生
植物発現ベクターによって形質転換した植物細胞は、標準的な植物組織培養技術に従って、例えば単細胞、カルス組織、または葉片から再生することができる。ほぼ如何なる植物からの様々な細胞、組織、および臓器も、首尾よく培養して植物全体を再生できることは当技術分野で周知である。そのような技術は例えば、Vasilら、上記;Greenら、上記;Weissbach and Weissbach、上記;Gelvinら、上記;Methods in Enzymology, vol 153, Wu and Grossman編、Academic Press, 1987;およびMethods in Enzymology, vol 118, Wu and Grossman編、Academic Press, 1987に記述される。培養プロトプラストからの植物再生は、Evansら、「Handbook of Plant Cell Cultures」1:124〜176, MacMillan Publishing Co, New York, 1983;Davey、Protoplasts(1983)- Lecture Proceedings, pp 12〜29, Birkhauser, Basal, 1983;Dale、Protoplasts(1983)- Lecture Proceedings, pp 31〜41, Birkhauser, Basel, 1983;およびBinding, Plant Protoplasts, pp.21〜73, CRC Press, Boca Raton, 1985に記述される。
【0118】
生体液からのAFPの精製
ng.HuAFPは、アフィニティクロマトグラフィーのような標準的なタンパク質精製技術(例えば、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク州、1998を参照されたい;同様に、Lubonら、米国特許第5,831,141号も参照されたい)、またはタンパク質精製に関する当業者に既知の他の方法を用いて、トランスジェニック生物の生体液から精製してもよい。単離した後、ng.HuAFPは、望ましければ例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC;例えばFisher、「Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology.」、Work and Burdon編、Elsevier, 1980を参照されたい)によってさらに精製することができる。精製後、ng.HuAFPは少なくとも80%純粋、好ましくは90%純粋、より好ましくは95%純粋、および最も好ましくは99%純粋である。
【0119】
トランスジェニック生物の生体液から精製したng.HuAFPの使用
トランスジェニック生物(例えば、哺乳類)の生体液(例えば、乳汁、尿、血液、またはリンパ)に分泌された、または生体液から精製されたng.HuAFPを、治療物質として用いてもよい。例えば、本発明の方法によって産生されたng.HuAFPを、癌細胞の増殖を阻害するために、骨髄細胞の増殖を誘導するために(例えば、骨髄移植後、または化学療法もしくは放射線治療のような骨髄毒性治療の実施後)、または免疫抑制剤として(例えば、自己反応性免疫細胞の増殖を阻害するため、移植された臓器の拒絶(例えば、移植片対宿主病)を阻害するため、またはリウマチ性関節炎、筋ジストロフィー、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、もしくはインスリン依存型真性糖尿病を治療するため)、それを必要とする患者に投与してもよい。
【0120】
生体液(例えば、乳汁、尿、血液、またはリンパ)に存在する、またはそこから精製されたng.HuAFPの有効量を、単独で、または薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と併用して、または当業者に既知の任意の簡便な手段によって他の治療物質と併用して投与してもよい。
【0121】
ng.HuAFP、またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量の薬学的製剤は、投与経路に適合した薬学的に許容される担体と混合して、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、または皮内、皮下注射、吸入、または点眼液もしくはインプラントを用いることによって)、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下、または局所投与することができる。ng.HuAFPの治療的有効量を含む薬学的製剤は、望ましくは皮下、筋肉内、または静脈内投与される。
【0122】
製剤を作製するために当技術分野で周知の方法は、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、(第18版)、A. Gennaro編、1990, Mack Publishing Company, Easton, PAにおいて認められる。経口での使用が意図される組成物は、薬学的組成物の製造に関する当技術分野で公知の任意の方法に従って、固体または液体剤形で調製してもよい。組成物は、より美味しい調製物を提供するために、任意で甘味料、着香料、着色料、香料および/または保存剤を含んでもよい。経口投与のための固体投与剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、ng.HuAFPを少なくとも一つの不活性な薬学的に許容される担体または賦形剤と混合する。これらには、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、蔗糖、デンプン、燐酸カルシウム、燐酸ナトリウム、またはカオリンのような不活性希釈剤が含まれてもよい。結合剤、緩衝剤、および/または潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)も同様に用いてもよい。錠剤および丸剤はさらに、腸溶コーティングによって調製することができる。経口で用いることを意図する組成物は、レシピエントの血流中へのng.HuAFPの吸収を促進するために増強剤と共に調製してもよい。
【0123】
経口投与のための液体投与剤形には、薬学的に許容される乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤、および軟ゼラチンカプセルが含まれる。これらの剤形は、水または油性媒体のような当技術分野で一般的に用いられる不活性希釈剤を含む。そのような不活性希釈剤の他に、組成物にはまた、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤のような補助剤が含まれうる。
【0124】
非経口投与のための剤形には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、または乳液が含まれる。適した溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、水素添加ナフタレン、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが含まれる。そのような製剤は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含んでもよい。生体適合性、生体分解性のラクチドポリマーであるラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを用いて、組成物におけるng.HuAFPまたは他の活性化合物の放出を制御してもよい。ng.HuAFPを含む組成物に関する他のおそらく有用な非経口送達系には、エチレンビニル酢酸コポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システム、およびリポソームが含まれる。
【0125】
液体剤形は、例えば細菌保持フィルターによって濾過することによって、滅菌物質を組成物に組み入れることによって、または組成物を放射線照射もしくは加熱することによって滅菌することができる。または、それらはまた、滅菌固体組成物の形で製造することができ、これを使用直前に滅菌水または他のいくつかの注射用媒体に溶解することができる。
【0126】
直腸または膣内投与のための組成物は、望ましくは活性物質の他に、コカ(coca)バターまたは坐剤用ロウのような賦形剤を含んでもよい坐剤である。鼻腔内または舌下投与のための組成物も同様に、当技術分野で既知の標準的な賦形剤によって調製される。吸入のための剤形は、賦形剤、例えば乳糖を含んでもよく、例えばポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩、およびデオキシコール酸塩を含む水溶液であってもよく、または点鼻液もしくはスプレーの剤形で、またはゲルとして投与するための油性溶液であってもよい。
【0127】
組成物に存在するng.HuAFPの量は変更することができる。当業者は、正確な個々の用量は、投与時間、投与経路、製剤の特性、排泄速度、被験者の状態の特性、ならびに患者の年齢、体重、健康および性別を含む多様な要因に応じて幾分調節してもよいことを認識するであろう。一般的に、0.1μg/kg〜100 mg/kg体重までの用量レベルを1回量として、または複数回に分割して毎日投与する。ほとんどの治療に関して、10 μg/kg〜5.0 mg/kg体重の非経口用量が週に1回または2回投与されると想像される。疾患によっては、1ヶ月に1回までの投与を行う高用量の投与(5 mg/kgまで)が想像される。様々な投与経路および治療される疾患の異なる有効性を考慮して、必要な用量には広い変動があると予想される。例えば、経口投与は一般的に、静脈内注射より高い用量レベルを必要とすると予想されるであろう。これらの用量レベルの変動は、当技術分野で周知である標準的な経験的な最適化ルーチンを用いて調節することができる。一般的に、ng.HuAFPの正確な治療的有効量は、先に同定された要因を考慮して主治医によって決定されるであろう。
【0128】
ng.HuAFPは、例えば米国特許第5,672,659号および米国特許第5,595,760号に記載されるように、徐放性製剤において投与することができる。即時放出または徐放性組成物の使用は、治療される病態のタイプに依存する。病態が急性または亜急性障害からなる場合、持続的放出組成物より即時放出型による治療が望ましいであろう。または、予防的または長期的な治療の場合、徐放性組成物が一般に望ましいであろう。
【0129】
実施例
以下の実施例は本発明を説明することを意味する。実施例は本発明を如何なるようにも制限することを意味しない。
【0130】
実施例1:組換え型ヒトAFP(rHuAFP)および非グリコシル化ヒトAFP(ng.HuAFP)を発現するトランスジェニック動物の作製
材料および方法
組換えDNA技法
組換えDNA技法は、Sambrook, Fritsch, and Maniatis(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に従って行った。ゲノムおよびcDNAライブラリーを、ヒトAFP遺伝子(Genbankアクセッション番号#M16110)の開始(5')、中央、および末端(3')のコードエキソンに由来する放射標識オリゴヌクレオチドプローブによってスクリーニングした。これらの三つのプローブの配列を以下に示す:

【0131】
ヒトAFP遺伝子のクローニング
ヒトAFPの遺伝子は、ほぼ19 kbに及び、イントロン14個が介在するエキソン15個(コード14個)を含む。ヒトAFP遺伝子の完全な配列は、Gibbsら(Biochemistry 26:1332〜1343, 1987)によって報告されており、Genbankアクセッション番号M16110に記載されている。遺伝子は当初、約15 kbの二つの断片においてクローニングされた後、これを混合すると、発現されたタンパク質が得られた。
【0132】
インサートの平均の大きさが9〜23 kbのヒト胎盤ゲノムライブラリー(Stratagene, La Jolla, CA)を、まず、ヒトAFP遺伝子の開始、中央、および末端でのエキソンを認識する一連の相補的オリゴヌクレオチドプローブによってスクリーニングした。初回スクリーニングでは、如何なる陽性クローンも得られなかった。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてより大きい二つのDNAプローブを作製して、ヒトゲノムDNAからのAFP遺伝子の開始および末端領域を増幅した。次に、これらのプローブによってライブラリーをスクリーニングすると、共にヒトAFP遺伝子の長さに及ぶ、大きさが約15 kbの重なり合う二つのλファージクローンが得られた(図2)。
【0133】
ヒトAFPの完全長のコード領域を含み、翻訳開始配列を欠損するDNA断片は、鋳型としてpHuAFP(Murgitaら、米国特許第5,384,250号において記述)のようなHuAFP cDNA(Genbankアクセッション番号J00077)を含むプラスミドおよび以下のオリゴヌクレオチドプライマー:

を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって得られる。
【0134】
それぞれのPCR反応は、DNA鋳型34 μl、10 pmol/μl 5'プライマー10μl、10×反応緩衝液10 μl、1 mM dNTP 20μl、DMSO 2 μl、およびDNA鋳型1 μl、10 pmol/μl 5'プライマー10 μl、10 pmol/μl 3'プライマー10 μl、グリセロール1μl、DMSO 10 μl、およびpfu DNAポリメラーゼ1 μlを含む。アニーリング、伸長、および変性温度はそれぞれ、Gene Amp PCRシステム9600を用いて50℃、72℃、および94℃を30サイクルである。PCR反応から得られた1783-bp DNAをXho Iによって消化して、0.7%TAEアガロースゲルから断片を単離した後、ジーンクリーン(Geneclean)法(Bio 101;Vista, CA)を用いて製造元の説明書に従ってゲル抽出を行うことによって精製した。
【0135】
ゲノムDNA構築物の構築
rHuAFPコード配列の長さに及ぶ重なり合う二つのλファージクローンを同定した。これらのファージインサートをその後の操作のためにsupercosベクターにサブクローニングした(図1、gtc913およびgtc912)。gtc913における開始ATGの上流の5'隣接領域からの余分の配列、およびgtc912における最後のエキソンの下流の余分の3'隣接配列を除去した。さらに、翻訳の効率的な開始を確実にするために、5'末端にコザック配列を加えた。これは、適当な配列をその後切除するために遺伝子配列に制限酵素「リンカー」を挿入して、隣接する配列を無傷のまま残すことによって行った(図1)。第二に、5'および3'小片を、二つのインサートに対して共通であってそれらを共に結合させて完全な遺伝子を形成させる酵素を用いて、それぞれのベクターから切除した。酵素BglIは、5'小片の3'末端で1回切断し、同時に3'小片の5'末端で1回切断することから、この酵素を用いた。得られた二つの断片をβ-カゼイン発現ベクター(GBC350)においてXhoI部位で結合させて、BC934を作製した。BC934の内部BlpI断片を個々に操作することによって、233位での通常のグリコシル化部位を、ギャップを有する変異誘発を用いてNからQに変化させた。次に、三つのBlpI断片を適切な方向に再度ライゲーションするとBC1055が得られた(図2Aおよび図2B)。
【0136】
トランスジーンベクター(図1を参照されたい;Meadeら、米国特許第5,827,690号を参照されたい)は、遺伝子のコード部分の代わりにXhoI部位を有する変化したヤギβ-カゼイン遺伝子を含む。ヤギβ-カゼイン遺伝子から欠失した部分は、エキソン2におけるTaq I部位からエキソン7におけるPpu MI部位までに及ぶ。エキソン2は、アミノ酸15個の分泌シグナルの他に翻訳開始コドンを含む。ヤギβ-カゼイン/ヒトAFPトランスジーンを作製するために、Xho I/Xho I HuAFP cDNAを、Xho I部位でヤギβ-カゼイン遺伝子のエキソン2および7のあいだにライゲーションする。完全なトランスジーンは、6.2 kb 5'ヤギβ-カゼイン配列、1.8 kb HuAFP cDNA、および7.1 kb 3'ヤギβ-カゼイン隣接配列を含む。
【0137】
マイクロインジェクションおよびトランスフェクションのためのDNAの調製
トランスジーンDNAは、SalIおよびNotI(New England Biolabs, Beverly, MA)によってプラスミドを完全に消化することによって、ベクター骨格から分離した。次に、消化物を、泳動緩衝液として1×TAE(Maniatisら、1982)を用いてアガロースゲルにおいて電気泳動した。発現カセットに対応するDNA断片を含むゲルの領域を、UV光(長波長)の下で可視化した。対象DNAを含むバンドを切除して、1×TAEにおける電気的溶出によってDNAを単離した。この技法をそれぞれの発現カセットに適用した。
【0138】
電気的溶出の後、DNA断片を濃縮した後精製した。最終溶出は、マイクロインジェクション緩衝液(10 mMトリス、pH 7.5、0.2 mM EDTA)125 μlを用いて行った。マイクロインジェクションのための保存溶液の少量を、各断片の最終濃度が0.5 ng/mlとなるように、マイクロインジェクションの直前にマイクロインジェクション緩衝液において希釈した。
【0139】
トランスジェニックマウス作製:胚の収集、核移入、および胚移入
核移入の場合、体細胞を胎児組織または皮膚生検から単離して、形質導入し、上記のようにさらに特徴を調べた。rHuAFPまたはng.HuAFP構築物を含む形質導入および特徴付けした体細胞を、核移入技法において用いるために培養した。雄性前核に、マイクロインジェクション緩衝液において希釈したDNAをマイクロインジェクションした。
【0140】
CD1雌性マウスを過剰排卵させて、受精卵を卵管から採取した。採取した卵子をMII卵母細胞の中期板の機械的除去によって除核した。除核した卵母細胞(細胞質体)を、個々に単離された形質導入体細胞(カリオプラスト)によって再構成した。再構成した後、カプレット(除核した卵母細胞と体細胞)を、電気的パルスによって共に融合すると、それによって再構成した胚が同時に活性化された。活性化した胚を培養した。再構成した胚を24〜48時間培養(CZB培地)において維持して、胚移入前の胚の生存率および発達に関して評価するか、または偽妊娠レシピエントCD1雌性マウスの卵管に直ちに移入した。
【0141】
核移入技法および胚の培養後、生存および発達途中の胚を適したレシピエント動物に移入した。2細胞胚20〜30個または1細胞胚40〜50個を各レシピエント雌性マウスのCLとは反対側の卵管に、ガラスピペットによって卵管の正確なカニュレーションによって少量の培地において移入して、それらを妊娠満期まで生育させた。
【0142】
創始動物の同定
マウスの尾の組織からプロテナーゼK消化の後にNaCl抽出およびエタノール沈殿によってゲノムDNAを単離して、トランスジーンに限って存在するβ-カゼイン/α-フェトプロテイン結合DNA配列を検出するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって分析した。ヤギの耳組織および白血球を同様に処理したが、DNAは、飽和エタノール、フェノール:イソアミルアルコール、およびクロロホルムによって連続的に抽出した後、エタノール沈殿を行った。PCR反応に関して、ゲノムDNA約250 ngを、Taqポリメラーゼ1.0単位を含むPCR緩衝液(20 mMトリス、pH 8.3、50 mM KCl、1.5 mM MgCl2、100 mMデオキシヌクレオチド三燐酸、および濃度600 nMの各プライマー)50 mlにおいて希釈して、標準的なPCRサイクリング条件を用いてMJ Research DNA Engineにおいて増幅した。以下のプライマーをPCR反応において用いた:

【0143】
サザンブロット分析
ゲノムDNA 5 μgをEcoRI 100単位によって消化した後、0.8%アガロースゲルによって電気泳動を行った。次に、ゲルを0.4 N NaOHにおいて毛細管作用によって荷電ナイロンメンブレン(Genescreen Plus、New England Nuclear)にブロットして、UVクロスリンクした(Stratalinker, Stratagene)。20 μg/ml変性ニシン精子DNAを含むハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、20 mM燐酸ナトリウム、1×デンハルト溶液、0.5%SDS)においてプレハイブリダイゼーションした後、プローブを加えて、ブロットを42℃で一晩インキュベートした。ブロットを以下のように洗浄した:1×SSC、1%SDSにおいて室温で20分間を1回、0.5×SSC、0.5×SDSにおいて室温で20分間を1回、および0.1×SSC、0.1%SDSにおいて65℃で各20分間を3回。洗浄後、ブロットをオートラジオグラフした。
【0144】
ウェスタンブロッティング
Harlow and Lane(「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Laboratory, 1988)のイムノブロッティング技法を、タンパク質の免疫学的検出のために用いた。乳汁試料をPBSにおいて1:20倍希釈した後、2×SDSゲルローディング緩衝液(50 mMトリス塩酸、pH 6.8、2%SDS、10%グリセロール、10%β-メルカプトエタノール)と1:1混合して、65℃で2分間加熱して、SDS-PAGEを行った。ゲルにおけるタンパク質を、転写緩衝液(50 mMトリス、380 mMグリシン、0.1%SDS、20%メタノール)においてエレクトロブロッティングによってImmobilon Pメンブレンに転写した。免疫染色の場合、メンブレンをブロッキング緩衝液(0.01%Tween-20を含むPBS中に4%脱脂粉乳、BioRad, Hercules, CA)と共に室温(RT)で1時間インキュベートした。次にメンブレンを抗hAFP抗体(ブロッキング緩衝液において1:5000)と共にRTで1時間インキュベートした。dH2Oにおいて手短に3回洗浄した後、メンブレンを二次抗体(ブロッキング緩衝液において1:10000)と共にRTで1時間インキュベートした。次に、メンブレンをdH2Oにおいて各4分間を3回洗浄して、PBS/Tween-20において1回洗浄し、最後にdH2Oにおいて6回またはそれ以上洗浄した後、化学発光基質(ECL)によって発色した後オートフルオログラフィーを行った。
【0145】
ゲノムDNA構築物に由来するトランスジェニックマウスの分析
ゲノム構築物BC1055に由来するトランスジェニック雌性マウスを、PCRによって同定し、表1に記載する。これらの動物の乳汁をウェスタンブロットによって分析し、既知濃度のhAFP標準物質との比較によって発現レベルを推定した。この発現分析の結果を表1および表2、ならびに図3(rHuAFP)および図4(ng.HuAFP)に示す。発現分析は通常、トランスジーンの伝幡およびモザイク性に関して試験するために、最初の創始動物の第二世代雌性動物について行う。第二世代における発現レベルの減少は、多数のトランスジーン組み込み部位の分離によると考えられ、これらの症例ではより低い発現部位が次世代に受け継がれた。
【0146】
(表1)マウス乳汁発現結果−BC934構築物

【0147】
(表2)マウス乳汁発現結果−BC1055構築物

【0148】
ヤギ胎児線維芽細胞の単離およびng.HuAFPトランスジーンのトランスフェクション
ヤギ胎児線維芽細胞を、妊娠したヤギのヤギ胎児組織から単離した(Genzyme Transgenic Corporation)。ng.HuAFPトランスジーン(BC1055)のDNA断片およびネオマイシン耐性遺伝子を調製して、トランスジーンDNA断片1〜2 μg/細胞106個を、リポフェクタミンを用いてヤギ胎児線維芽細胞に同時形質導入した。ネオマイシン耐性細胞のコロニーをG418選択後に単離した。単離したクローンを増殖させて、選択した細胞株を凍結保存した。これらの細胞株に、トランスジーンの有無を決定するために、BC1055特異的プライマーを用いてPCR分析を行った。さらに、細胞株のFISH分析を行って、トランスジーンの組み込みを確認した(下記を参照されたい)。
【0149】
トランスジェニック創始ヤギの作製
トランスジェニックヤギは、原核細胞DNAを含まずに精製されたヤギβ-カゼイン-HuAFPの15.1 kb断片を、10 mMトリス、pH 7.5、0.1 mM EDTAにおいて1.0 μg/mlの濃度で、採取した胚の前核に注入することによって作製した。次に、注入した胚をレシピエント雌性動物に移入した。トランスジーンの有無を検出するために、血液からのゲノムDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびサザンブロット分析によって分析することによって、創始(F0)トランスジェニックヤギを同定した。PCR分析に関して、HuAFP cDNAを作製するために用いた同じ二つのオリゴヌクレオチドを反応において用いた。サザンブロット分析の場合、DNAを1%TBEアガロースゲルにおいて分画して、ニトロセルロースにブロットし、ランダムプライミングした32P-標識1.8 kb HuAFP cDNAによってプロービングした。同定された創始動物を非トランスジェニック動物と交配させて、トランスジェニック子孫を作製することができる。または、上記のようにトランスジェニック子孫を核移入によって得てもよい。トランスジーンの伝幡は、上記のように血液および他の組織からのゲノムDNAを分析することによって検出することができる。
【0150】
創始ヤギF093の遺伝子分析
健康な雌性ヤギ(F093)は2002年3月11日に生まれた。このヤギがng.HuAFPトランスジーンを有するか否かを決定するために、血液および耳の組織のPCR分析を行った。最初に二つのPCRプライマー組を同時に用いた。第一の組は、図5のダイアグラムに示すように、トランスジーンに対して特異的であり、得られた332 bpの産物は5'β-カゼインおよび5'ng.HuAFP配列の接合部に及ぶ。第二のプライマー組は、トランスジーン構築物には存在しないヤギβ-カゼインのエキソン7を認識して、439 bpの産物を生じる。図6Aおよび6Bは、ng.HuAFPトランスジーンが、ヤギF093の血液および耳の試料の双方に存在することを示している。予め特徴を調べてある形質導入細胞株を陽性対照として用いた。ng.HuAFPトランスジーンを有することが示されている流産児からの耳組織も同様に、陽性対照として用いた。
【0151】
遺伝子型を確認した後、コピー数を推定して、著しいトランスジーンの再配列を除外するためにサザンブロット分析を行った(図7)。用いたDNAプローブは、トランスジーンおよび内因性のヤギβ-カゼイン遺伝子において認められる3'β-カゼイン遺伝子のXhoI/HindIII断片であった(図2、3' BCプローブ)。トランスジーンと内因性遺伝子との相対強度を比較することによって、トランスジーンのコピー数を推定することができる。内因性の遺伝子シグナルは、二倍体ゲノムにおける遺伝子2コピーを表す。図7において認められうるように、F093試料における二つのバンドは、強度が全く類似であるように思われる。走査型濃度測定(Molecular Dynamics)により、比が1:1(F026流産児は密度測定により13:1の比を有する)であることが確認される。
【0152】
蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)分析
標準的な培養および調製技法を用いて、ヤギF093の培養血リンパ球から分裂中期および間期核を得た。核をスライドガラスに載せて、ヒトAFPに関するゲノム配列の8 kbを含む構築物に由来するジゴキシゲニン標識プローブとハイブリダイズさせた。結合したプローブを、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体を用いて増幅し、チラミド結合フルオレセインイソチオシアネート(FITC、緑色蛍光色素)によって検出した。核を4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、青色色素)によって対比染色した。FISH画像はMetaMorphソフトウェアを用いて得た。
【0153】
トランスジーンを示す分裂中期染色体および間期の核のFISH画像を図8に示す。トランスジーンシグナルは、中等度から大きい大きさの常染色体上の「q」末端に向かって位置する。FISH分析は、単一のトランスジーン組み込み部位の存在と一致する。
【0154】
乳汁分泌の誘導
12月齢またはそれより大きい雌性動物を、ホルモン療法および手での刺激によって12日間にわたって乳汁分泌するように誘導する。最初の4日間、動物に、100%エタノールに溶解した0.1 mg/kgエストラジオール17-βおよび0.25 mg/kgプロゲステロンの皮下注射を行う。この1日量を朝および夕方の注射に分割する。乳房を1日1回触診して、毎朝5〜10分間乳首を手で刺激する。乳汁分泌トランスジェニック雌性動物を1日2回手で搾乳して、乳汁を-20℃で凍結保存する。
【0155】
タンパク質の精製
rHuAFPまたはng.HuAFPを含むトランスジェニックヤギ乳汁を、接線流濾過によって透明にして、カゼインミセルおよび他の混入タンパク質を除去した。得られたrHuAFPまたはng.HuAFPを含む濾液(乳清分画)を22 μmフィルターによって濾過する。20 mMイミダゾール、pH 6.7の等量を加えることによってpHおよびイオン強度を調節して、rHuAFPまたはng.HuAFPを、20 mMイミダゾール、pH 6.7によって平衡にしたPharmacia Blue SEPHAROSE(登録商標)6ファストフロービーズを含むカラムの中に溶液を通過させることによって、乳清分画から精製する。流出液におけるrHuAFPまたはng.HuAFPを、20 mMイミダゾール、pH 6.7によって平衡にしたPharmacia Q HPビーズを含むカラムによって捕獲する。rHuAFPまたはng.HuAFPは、pH 6.7の20 mMイミダゾールにおいて0〜250 mM NaClの勾配によって溶出する。ウェスタンブロット、ELISA、またはクーマシーブルー染色SDS-PAGEゲルによって決定したrHuAFPまたはng.HuAFPを含む分画をプールして、NaCl濃度を725 mMに調節する。これらのプールされた分画を、1 M NaCl、20 mMイミダゾール、pH 6.7によって平衡にしたPharmacia Phenyl HiSubビーズを含むカラムに適用する。rHuAFPまたはng.HuAFPをpH 6.7の20 mMイミダゾールにおいて1〜10 mM NaClの勾配によって溶出する。ウェスタンブロット、ELISA、またはクーマシーブルー染色SDS-PAGEゲルによって決定したrHuAFPまたはng.HuAFPを含む分画をプールして、限外濾過によって濃縮する。
【0156】
rHuAFPまたはng.HuAFPの最終精製は、濃縮した試料を、燐酸緩衝生理食塩液において平衡にしたSUPERDEX(登録商標)200HRカラムに適用することによって得られる。ウェスタンブロット、ELISA、またはクーマシーブルー染色SDS-PAGEゲルによって決定したrHuAFPまたはng.HuAFPを含む分画をプールする。
【0157】
先に示した結果は、組換え型の天然ヒトAFPと共に組換え型非グリコシル化型ヒトα-フェトプロテイン(ng.HuAFP)が、いくつかの系統のトランスジェニックマウスの乳汁においてゲノム「ミニ遺伝子」としてクローニングされて発現されることを証明している。この遺伝子の発現はヤギβ-カゼイン調節エレメントの制御下である。非モザイクマウス(トランスジーンをその後の世代に伝幡することができるマウス)における発現レベルは1.0〜20 mg/mlの範囲であった。これまでの試験から予想されたように、ゲノム発現構築物は、高レベルのng.HuAFP発現を生じるように思われるが、ng.HuAFP発現はまた、cDNA構築物に由来する動物においても非常に高かった(5〜10 mg/ml)。全ての構築物からのトランスジーン産物は、hAFP特異的抗体に対して免疫反応性であった。
【0158】
本発明者らはまた、マウスにおいてng.HuAFPの高レベルを発現するために用いられる同じゲノムトランスジーンを有する創始トランスジェニックヤギを作製した。このヤギF093からのいくつかの組織の遺伝子分析は、ヤギが実際にトランスジェニックであり、単一の組み込み部位にng.HuAFPトランスジーンを約2コピー有することを確認している。
【0159】
その他の態様
以降に記載する刊行物は、組換えタンパク質を乳汁に分泌するトランスジェニック動物の作製、検出、および分析と共に、組換えタンパク質の精製に関して記述している。これらの刊行物は参照により本明細書に組み入れられる:Hurwitzら、米国特許第5,648,243号(ヤギ);Meadeら、米国特許第5,827,690号(ヤギ);DiTullioら、米国特許第5,843,705号(ヤギ);Clarkら、米国特許第5,322,775号(ヒツジ);Garnerら、米国特許第5,639,940号(ヒツジ);Deboerら、米国特許第5,633,076号(ウシ);およびDrohanら、米国特許第5,589,604号(ブタおよびマウス)。参照により本明細書に組み入れられる、Kerrら、Nat. Biotechnol. 16:75〜79、1998は、組換えタンパク質を尿中に排泄するトランスジェニック動物の作製および分析と共に、組換えタンパク質の精製に関して記述している。
【0160】
本明細書において言及した全ての刊行物および特許出願は、それぞれの独立した刊行物または特許出願が明確にそして個々に参照により組み入れられることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0161】
本発明は、その特定の態様に関連して記述してきたが、さらなる改変を行うことが可能であり、本出願は、一般的に本発明の原則に従う、および本発明が属する技術分野において公知または慣例的な実践に含まれ、本明細書において先に記述した本質的な特徴に当てはまる可能性がある本開示からのそのような逸脱を含む、本発明の如何なる変更、使用、または適応も含むと意図されると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】ゲノムhAFPβカゼイン発現構築物BC934を産生するためにhAFPを含むベクターの操作を示す図である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、rHuAFPまたはng.HuAFPの発現および乳汁中への分泌のためのヤギβカゼイン/rHuAFPトランスジーン(図2A)、およびβ-カゼイン/ng.HuAFPトランスジーン(図2B)の構造を示す図である。
【図3】トランスジェニックマウス乳汁試料におけるrHuAFPの存在を示すウェスタンブロットの画像である。レーン1〜3:hAFP。レーン1:hAFP 50 ng(0.5 mg/ml相当量);レーン2:hAFP 100 ng(1.0 mg/ml相当量);レーン3:hAFP 200 ng(2.0 mg/ml相当量);レーン4:陰性(非トランスジェニック)マウス乳汁;レーン5〜10:rHuAFP。レーン5:BC934-1-7、d9(4μL−1:40);レーン6:BC934-1-8、d9(4μL−1:40);レーン7:BC934-1-56、d9(4μL−1:40);レーン8:BC934-1-59、d9(4μL−1:40);レーン9:BC934-1-63、d9(4μL−1:40);レーン10:BC934-1-64、d9(4μL−1:40)。
【図4】トランスジェニックマウス乳汁試料におけるng.HuAFPの存在を示すウェスタンブロットの画像である。レーン1:hAFP (50 ng);レーン2:hAFP (100 ng);レーン3:分子量標準物質;レーン4:陰性(非トランスジェニック)マウス乳汁;レーン5〜10:ng.HuAFP。レーン5:BC1055-1-9(4μL−1:40);レーン6:BC1055-1-10(4μL−1:400);レーン7:BC1055-1-37(4μL−1:400);レーン8:BC1055-1-44(4μL−1:40);レーン9:BC1055-1-74(4μL−1:40);レーン10:BC1055-1-85(4μL−1:40)。
【図5】BC1055(ng.HuAFP)構築物の略図、および5'βカゼインと5'ng.HuAFP配列との接合部に及ぶ332 bpのPCR産物(「PCR産物」と表示)の位置を示す図である。同様に、サザンブロット分析のために用いられるPCRプライマー3' BCプローブの位置も示す。
【図6】図6Aおよび図6Bは、ng.HuAFPトランスジーンを含む創始ヤギF093から採取した血液および耳組織のPCR分析の結果を示す写真である。図6Aは、hAFP特異的プライマー対(322 bp産物)と共にヤギエキソン7プライマー対(410 bp産物)を用いた二本鎖PCR分析の結果を示す。図6Bは、hAFP特異的プライマー対のみを用いたPCR分析の結果を示す。双方の実験における鋳型DNAは同じであった。レーン1:DNAのサイズ標準物質;レーン2:非トランスジェニックヤギ血液試料;レーン3:hAFP陽性ヤギ細胞株(クローン7);レーン4:hAFP陽性流産児F026からの耳組織;レーン5:F093からの血液組織;およびレーン6:F093からの耳組織。
【図7】創始ヤギF093のサザンブロット分析の結果を示す画像である。DNA 5μgをEcoRIによって消化して、電気泳動によって分離し、Genescreen Plus(New England Nuclear)にブロッティングした。次に、ブロットをヤギβ-カゼインプローブとハイブリダイズさせて、洗浄し、オートラジオグラフした。レーン1:λHindIII、分子量マーカー;レーン2:非トランスジェニックヤギ耳組織DNA;レーン3:F026、hAFP陽性流産児の耳組織DNA;レーン4:F093創始ヤギ血液DNA。
【図8】図8Aおよび図8Bは、創始ヤギF093の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)分析の結果を示す写真である。図8Aは、F093培養白血球の分裂中期染色体の代表的な例を示す。トランスジーンシグナルは、白い点および矢印によって示される。染色体をDAPI染色によって可視化する。倍率:1000倍。図8Bは、F093培養白血球の間期核の代表的な視野を示される。トランスジーンシグナルは白色であり、矢印によって示す。核におけるDNAをDAPI染色によって可視化する。倍率:1000倍。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非グリコシル化ヒトα-フェトプロテイン(ng.HuAFP)またはその非グリコシル化断片をコードする核酸分子。
【請求項2】
配列番号:5に記載される配列の45〜1874位のヌクレオチドを含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
(i)ng.HuAFPをコードする核酸配列、
(ii)該ng.HuAFPコード配列に機能的に結合し、且つng.HuAFPの発現を可能にするプロモーター、および
(iii)細胞による該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含む、核酸分子。
【請求項4】
細胞が大腸菌である、請求項3記載の核酸分子。
【請求項5】
細胞が真核細胞である、請求項3記載の核酸分子。
【請求項6】
真核細胞が酵母細胞または動物細胞である、請求項5記載の核酸分子。
【請求項7】
動物細胞がトランスジェニック動物に存在する、請求項6記載の核酸分子。
【請求項8】
トランスジェニック動物が哺乳類である、請求項7記載の核酸分子。
【請求項9】
哺乳類が、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、またはラマである、請求項8記載の核酸分子。
【請求項10】
細胞が、トランスジェニック動物における生体液産生細胞であり、プロモーターが、該生体液産生細胞においてng.HuAFPの発現を可能にし、かつリーダー配列が、トランスジェニック動物の生体液中への該ng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項3記載の核酸分子。
【請求項11】
生体液が、乳汁、尿、血液、またはリンパである、請求項10記載の核酸分子。
【請求項12】
細胞が、トランスジェニック動物に存在し、プロモーターが、該動物の乳汁産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする乳汁特異的プロモーターであり、かつリーダー配列が、該動物の乳汁中への該ng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項3記載の核酸分子。
【請求項13】
細胞が、トランスジェニック動物に存在し、プロモーターが、該動物の尿産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする尿特異的プロモーターであり、かつリーダー配列が、該動物の尿中への該ng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項3記載の核酸分子。
【請求項14】
細胞が、トランスジェニック動物に存在し、プロモーターが、該動物の血液産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする血液特異的プロモーターであり、かつリーダー配列が、該動物の血液中への該ng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項3記載の核酸分子。
【請求項15】
細胞が、トランスジェニック動物に存在し、プロモーターが、該動物のリンパ産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にするリンパ特異的プロモーターであり、かつリーダー配列が、該動物のリンパ中への該ng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項3記載の核酸分子。
【請求項16】
配列番号:4の233位でグルタミン残基を含む非グリコシル化HuAFP(ng.HuAFP)。
【請求項17】
配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項18】
非グリコシル化ヒトα-フェトプロテインの実質的に純粋な生物活性断片。
【請求項19】
断片が、配列番号:15(ドメインII)、配列番号:16(ドメインI+II)、または配列番号:17(ドメインII+III)に記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列の二つもしくはそれ以上を含む、請求項18記載のポリペプチド。
【請求項20】
ng.HuAFPを発現して生体液中に分泌する非ヒトトランスジェニック真核生物。
【請求項21】
トランスジェニック生物が哺乳類である、請求項20記載のトランスジェニック生物。
【請求項22】
哺乳類が、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、またはラマである、請求項21記載のトランスジェニック生物。
【請求項23】
生体液が、乳汁、尿、血液、またはリンパである、請求項21記載のトランスジェニック生物。
【請求項24】
ng.HuAFPが、
(i)ng.HuAFPをコードする核酸配列、
(ii)該ng.HuAFPコード配列に機能的に結合して、かつ生体液中にタンパク質を分泌するトランスジェニック生物の細胞によるng.HuAFPの発現を可能にするプロモーター、および
(iii)該トランスジェニック生物の細胞による該生体液中への該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンから発現される、請求項21記載のトランスジェニック生物。
【請求項25】
プロモーターが、乳汁、尿、血液、またはリンパ特異的プロモーターであって、かつリーダー配列が、それぞれ、乳汁、尿、血液、またはリンパ中へのng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項24記載のトランスジェニック生物。
【請求項26】
プロモーターが、乳汁特異的プロモーターであって、かつリーダー配列が、乳汁中へのng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項24記載のトランスジェニック生物。
【請求項27】
トランスジェニック生物がヤギである、請求項26記載のトランスジェニック生物。
【請求項28】
プロモーターが、尿特異的プロモーターであって、かつリーダー配列が、尿中へのng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項24記載のトランスジェニック生物。
【請求項29】
哺乳類がヤギである、請求項28記載のトランスジェニック生物。
【請求項30】
プロモーターが、血液特異的プロモーターであって、かつリーダー配列が、血液中へのng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項24記載のトランスジェニック生物。
【請求項31】
哺乳類がヤギである、請求項30記載のトランスジェニック生物。
【請求項32】
プロモーターが、リンパ特異的プロモーターであって、かつリーダー配列が、リンパ中へのng.HuAFPの分泌を可能にする、請求項24記載のトランスジェニック生物。
【請求項33】
哺乳類がヤギである、請求項32記載のトランスジェニック生物。
【請求項34】
ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類の乳汁。
【請求項35】
ng.HuAFPが可溶性であり、かつトランスジェニック非ヒト哺乳類によって産生され、該トランスジェニック非ヒト哺乳類の乳汁産生細胞が、
(i)ng.HuAFPをコードする核酸配列、
(ii)該ng.HuAFPコード配列に機能的に結合する乳汁特異的プロモーター、および
(iii)該哺乳類の乳汁中への該乳汁産生細胞による該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンを発現する、請求項34記載の乳汁。
【請求項36】
ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類の尿。
【請求項37】
ng.HuAFPが可溶性であり、かつトランスジェニック非ヒト哺乳類によって産生され、該トランスジェニック非ヒト哺乳類の尿産生細胞が、
(i)ng.HuAFPをコードする核酸配列、
(ii)該ng.HuAFPコード配列に機能的に結合する尿特異的プロモーター、および
(iii)該哺乳類の尿中への該尿産生細胞による該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンを発現する、請求項36記載の尿。
【請求項38】
ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類の血液。
【請求項39】
ng.HuAFPが可溶性であり、かつトランスジェニック非ヒト哺乳類によって産生され、該トランスジェニック非ヒト哺乳類の血液産生細胞が、
(i)ng.HuAFPをコードする核酸配列、
(ii)該ng.HuAFPコード配列に機能的に結合する血液特異的プロモーター、および
(iii)該哺乳類の血液中への該血液産生細胞による該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンを発現する、請求項38記載の血液。
【請求項40】
ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類のリンパ。
【請求項41】
ng.HuAFPが可溶性であり、かつトランスジェニック非ヒト哺乳類によって産生され、該トランスジェニック非ヒト哺乳類のリンパ産生細胞が、
(i)ng.HuAFPをコードする核酸配列、
(ii)該ng.HuAFPコード配列に機能的に結合するリンパ特異的プロモーター、および
(iii)該哺乳類のリンパ中への該リンパ産生細胞による該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンを発現する、請求項40記載の血液。
【請求項42】
以下の段階を含む、ng.HuAFPを産生する方法:
(a)(i)配列番号:5に記載の核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子、
(ii)該ng.HuAFPコード分子に機能的に結合して、かつ細胞による該ng.HuAFPの発現を可能にするプロモーター、および
(iii)該細胞による該ng.HuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンを形質導入された細胞を提供する段階;ならびに
(b)該ng.HuAFPを発現かつ分泌する該形質導入細胞を増殖させる段階。
【請求項43】
細胞が大腸菌である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
細胞が真核細胞である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
真核細胞が酵母細胞または動物細胞である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
酵母細胞がピチア・パストリス(Pichia pastoris)である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
細胞がng.HuAFPを細胞培養培地中に分泌する、請求項43記載の方法。
【請求項48】
動物細胞が、乳汁産生細胞、尿産生細胞、血液産生細胞、またはリンパ産生細胞である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
以下の段階を含む、ng.HuAFPを産生する方法:
(a)(i)配列番号:5に記載の核酸配列の45〜1874位のヌクレオチドを含むng.HuAFPをコードする核酸分子、
(ii)該ng.HuAFPコード分子に機能的に結合して、トランスジェニック生物の生体液産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にするプロモーター、および
(iii)該生体液産生細胞による該rHuAFPの分泌を可能にするタンパク質分泌シグナルをコードするリーダー配列
を含むトランスジーンを含む、トランスジェニック生物を提供する段階;ならびに
(b)該トランスジェニック生物から該ng.HuAFPを含む生体液を回収する段階。
【請求項50】
生体液が、乳汁、尿、血液、またはリンパである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
生体液が乳汁である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
ng.HuAFPが乳汁から精製される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
プロモーターが、トランスジェニック生物の乳汁産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする乳汁特異的プロモーターである、請求項49記載の方法。
【請求項54】
生体液が尿である、請求項50記載の方法。
【請求項55】
ng.HuAFPが尿から精製される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
プロモーターが、トランスジェニック生物の尿産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする尿特異的プロモーターである、請求項49記載の方法。
【請求項57】
生体液が血液である、請求項50記載の方法。
【請求項58】
ng.HuAFPが血液から精製される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
プロモーターが、トランスジェニック生物の血液産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にする血液特異的プロモーターである、請求項49記載の方法。
【請求項60】
生体液がリンパである、請求項50記載の方法。
【請求項61】
ng.HuAFPがリンパから精製される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
プロモーターが、トランスジェニック生物のリンパ産生細胞におけるng.HuAFPの発現を可能にするリンパ特異的プロモーターである、請求項49記載の方法。
【請求項63】
ng.HuAFPを含む細胞培養培地から精製されたng.HuAFPの治療的有効量を患者に投与する段階を含む、ng.HuAFPを必要とする患者を治療する方法。
【請求項64】
ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類の乳汁の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、ng.HuAFPを必要とする患者を治療する方法。
【請求項65】
ng.HuAFPを含む非ヒト哺乳類の生体液から精製されたng.HuAFPの治療的有効量を患者に投与する段階を含む、ng.HuAFPを必要とする患者を治療する方法。
【請求項66】
生体液が、乳汁、尿、血液、またはリンパである、請求項65記載の方法。
【請求項67】
配列番号:8記載のアミノ酸配列を含むng.HuAFPを含む、治療的組成物。
【請求項68】
免疫障害を治療するための医薬品の製造における、配列番号:8記載のアミノ酸配列を含むng.HuAFPの使用。
【請求項69】
免疫障害がHIVである、請求項68記載の使用。
【請求項70】
自己免疫障害を治療するための医薬品の製造における、配列番号:8記載のアミノ酸配列を含むng.HuAFPの使用。
【請求項71】
自己免疫障害が、リウマチ性関節炎、筋ジストロフィー、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、多発性硬化症、インスリン依存性真性糖尿病、または乾癬である、請求項70記載の使用。
【請求項72】
免疫抑制剤の製造における、請求項8記載のアミノ酸配列を含むng.HuAFPの使用。
【請求項73】
免疫抑制剤が、自己反応性免疫細胞増殖または移植片対宿主病を阻害または治療する、請求項72記載の使用。
【請求項74】
化学療法または放射線療法の副作用を緩和するための医薬品の製造における、請求項8記載のアミノ酸配列を含むng.HuAFPの使用。
【請求項75】
細胞増殖を増強するための医薬品の製造における、請求項8記載のアミノ酸配列を含むng.HuAFPの使用。
【請求項76】
細胞がng.HuAFPを細胞培養培地中に分泌する、請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−527998(P2006−527998A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521212(P2006−521212)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/023474
【国際公開番号】WO2005/010165
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506024308)メリマック ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】