説明

非ゼロバックグラウンドのペプチドによる免疫応答レベルの安定な定量化及び検出

本発明は、抗原特異的T細胞に結合するための特異的抗原性ペプチドを含むMHCクラスI及びクラスIIのHLA被覆ビーズ及び適切な陰性対照ペプチドを含むキットに関する。また、被覆ビーズを作製するための方法及び使用方法を提供する。これらのビーズの適用は、細胞活性化とシグナル伝達、サイトカイン分泌、増殖、及び細胞傷害性活性等の機能活性を誘発するために、末梢血細胞集団の刺激並びにin vitro刺激培養に及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部、米国政府に対する支援によりなされ、米国政府は、本発明に関心を有し得る。
【0002】
本出願は、表題「非ゼロバックグラウンドのペプチドによる免疫応答レベルの安定な定量化及び検出」の米国仮出願番号60/696,508号への優先権を主張し、その全体を参照することによって本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、T細胞への提示のためのMHC分子と結合すると、T細胞由来の安定な、非ゼロバックグラウンドの免疫応答を引き起こす、短ペプチドに関する。本発明は、また、このペプチドとMHC分子を含む複合体、並びにクロマトグラフィー及び他のビーズと結合する複合体に関する。さらに、本発明は、本発明のペプチド及びビーズによる免疫アッセイを定量化する方法、及び安定な非ゼロバックグラウンドの免疫応答を引き起こす新規のペプチドを同定する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
癌の免疫療法のための臨床試験で成功した評価に対する重要な態様の1つは、ワクチンによって誘発された進行中のin vivo免疫応答の重要なパラメータをモニターする能力である。ペプチドワクチンの投与を受けた個体の免疫学的モニタリングのための古典的なアッセイは、増殖、上清へのサイトカイン分泌(ELISA)、細胞傷害性、及び抗体応答等のin vitroでの細胞培養に基づいたアッセイから、主に構成されていた。これらのアッセイにおける患者末梢血液細胞のin vitroでの操作、及び任意のデータを得る前の血液試料の獲得からの「実時間距離」は、ワクチン及び結果として生じる免疫応答について、有益且つ直接関連する洞察を認識することを困難にしてきた。改良された試薬及びプロトコルと共に新規に開発された技術は、現在、より迅速で、より少ない操作の免疫応答の評価に利用できる。
【0005】
MHC分子は、クラスI分子又はクラスII分子のいずれかに分類される。クラスIIMHC分子は、主として、Bリンパ球、マクロファージ等の細胞上に明確に存在する。クラスIIMHC分子は、CD4−ヘルパーTリンパ球によって認識され、且つヘルパーTリンパ球の増殖(同様の細胞の成長又は複製)及び提示された特定の免疫原性ペプチドへの免疫応答の増幅を誘導する。クラスIMHC分子は、ほとんどすべての有核細胞上に発現され、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、次いでCTLは「外来性」抗原を有する細胞の溶解を誘発する。CTLは、特に、腫瘍拒絶反応において及びウイルス感染と戦う際に重要である。CTLは、無傷の外来抗原それ自体ではなくMHCクラスI分子に結合したペプチド断片の形で抗原を認識する。抗原は、通常、細胞内で内因的に合成されたタンパク質由来であり、次いでそれらのタンパク質は、細胞質内でペプチド小断片に分解される。
【0006】
MHCクラスI分子に対する結合モチーフを有する免疫原性ペプチドは、一般的に、約8〜約11個のアミノ酸残基であって、且つ適切なMHC対立遺伝子によってコードされるタンパク質の結合に関与する保存残基を含む。いくつかの潜在的な標的タンパク質上のエピトープを、保存「アンカー」アミノ酸を用いて同定することができる。明確に規定されたアンカーアミノ酸残基を有する抗原の例には、前立腺特異抗原(PSA)、B型肝炎コア抗原及びB型肝炎表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、悪性黒色腫抗原(MAGE−1)、エプスタインバーウイルス抗原、ヒト免疫不全1型ウイルス(HIVI)、並びに乳頭腫ウイルス抗原由来のペプチドが含まれる。これらのペプチドは、invivo及びex vivoでの治療的並びに診断的適用のための医薬品組成物に有用であることが知られている(米国特許第6,037,135号参照)。
【0007】
免疫応答の検出及び測定のための最も確立され、高く評価された新規の試薬は、MHCの二量体及び四量体であり、これらは抗原特異的Tリンパ球の特異的検出及び定量化を可能にする。免疫応答の観点から、二量体及び四量体分析による抗原特異的T細胞の計数は、それだけでは、これらの細胞に関連した機能的な免疫学的活性についてのいかなる情報も提供することはできない。しかし、改良された細胞内染色のプロトコルと最小の操作による末梢血液細胞の迅速な刺激とを組み合わせて使用すると、二量体及び四量体分析は、これら細胞内のサイトカイン分泌の検出を可能にする潜在能力を有する。
【0008】
抗原特異的T細胞によるサイトカイン分泌の検出に関して、一般に2つの方法がある。第1の方法は、サイトカイン反応の表現型特徴及び機能的特徴の両方を提供する潜在能力を有するフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン(ICC)分泌である。この方法の限界は、それが刺激の期間及び状態に依存し、染色プロセスの間にサイトカイン分泌活性のピークの最適検出のために推定され、可能である、どちらかといえば「制限された」狭い時間枠を有することである。
【0009】
第2の方法は、細胞を培養内で刺激し、サイトカイン分泌をELISPOT方法によって長時間にわたりモニターして、長期間にわたる分泌及び分泌されたサイトカインの捕獲を可能にし、それによって機能活性の改善された検出をもたらす。光学機器及びデジタル画像解析ソフトウェアの進歩により、特異的抗原ペプチド刺激に応答してサイトカインを分泌する細胞を計数するためにELISPOTアッセイを用いることによって複数の研究室の間で、あるレベルの標準化を達成することができることが期待される。
【0010】
最近の学会での彼らの知見に基づき、Society of Biological Therapy(SBT)は、これからの臨床試験は、ペプチドワクチン臨床試験の免疫学的モニタリングにおいて免疫細胞の表現型(四量体又は二量体分析等)の分析及び機能的分析(ICC及びELISPOT等)のための直接方法を活用することを目指すべきであると推奨した。
【0011】
SBTは、主として長期にわたるin vitro操作及び培養条件の理由から、増殖アッセイ及び細胞傷害性アッセイ等の他のアッセイの評価を下げた。しかし、in vitro操作の数を最小限に抑えることができ、管理可能な一貫性を有する刺激試薬が利用できるようになれば、これらのアッセイは、また、重要になり、情報を与えるようになる可能性を有する。
【0012】
したがって、ペプチドワクチンの免疫学的モニタリングのために、増殖アッセイ及び細胞傷害性アッセイの利用を含めて、免疫応答の間、免疫細胞に関連する機能活性を検出し、且つ正確に測定するための改良された方法を提供することが望ましい。
【0013】
細胞、抗体、抗原、タンパク質、糖質、核酸等の生体分子を単離又は分離するためには種々の方法がある。磁気分離手法は、一般的に、液体培地内に含まれる強磁性粒子を分離するために磁場の印加を含む。分子の混合集団を含む溶液中に存在する1つ又は複数の標的分子の磁気分離は、周知であり、必要な材料はすべて市販されている(米国特許番号6,110,380号及び6,126,835を参照)。さらに詳細には、標的生体分子の分離は、磁気粒子及び磁気分離装置を用いて行われていた。しかし、その磁気分離は、生体分子の混合集団及び標的生体分子に対して十分な結合特異性と親和性を有するリガンド(磁気分離試薬)で被覆された磁気粒子を含む液体の使用に限定されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この明細書に具体化し、広範に記載するように、本発明は、T細胞への提示のためのMHC分子に結合すると、安定な、非ゼロバックグラウンドの免疫応答を引き起こす、短ペプチドに関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
単離されたMHCクラスI分子由来のペプチドを同定するための従来の方法(例えば、米国特許番号6,037,135号を参照)は、免疫応答アッセイの免疫学的モニタリングでの使用のために陰性対照群実行用のペプチドを同定する方法は開示していない。本発明は、サイトカイン分泌を検出するための培養中の細胞を刺激する現在の方法に関連する問題及び欠点を克服する。本発明は、免疫アッセイにおいてHLA被覆ビーズ(例えばDYNALビーズ)を用いるための、及びバックグラウンド又は「逸脱した」刺激応答をモニタリングするための適切な陰性ペプチドを同定するための、新規の用具及び方法を提供する。その特定の実施形態では、本発明は、HLA分子に関連して取り込まれ、処理され、提示される抗原性ペプチドレベルの濃度、量、及び/又は質において一貫性を確保するための方法を提供する。本発明は、抗原特異的T細胞を刺激するための、及び通常の抗原提示細胞で見られるペプチド提示の「未知の」レベル及び/又は質と関連する矛盾を回避するための人工的「刺激性細胞」を提供する。本発明は、また、3つのペプチドを同定するプロセスを提供し、それらのペプチドは、バックグラウンド又は「逸脱した」刺激性応答のモニタリング、及びex vivo ELISPOTアッセイにおいてそれらの抗原特異的ビーズと共に試験される2種類の陰性対照ビーズを生成するために、HLA分子内でこれらのペプチドのうちから2つを事前に折り畳むプロセスのモニタリングで使用することが可能である。
【0016】
本発明は、広範囲なペプチドについてのワクチンの試験をモニターするために有益である。本発明は、一貫した製品が様々な研究者によって使用され、それによって、結果を、したがって、別々の研究室間で比較し得るように、キット又は試薬として使用し得る。アッセイのex vivoの性質は、また、診断において広範な使用を提供する。
【0017】
本発明はまた、新規の磁気分離方法を提供する。従来の手段は、分離のために標的生体分子に結合するためのリガンドを用いることに制限されていた。本発明では、ビーズは、磁気分離のためにビーズを抗原特異的T細胞に結合するために、特異的抗原ペプチドを含むMHCクラスIHLA、又は特異的抗原ペプチドを含むMHCクラスIIHLAで被覆されている。ビーズは、マウス試験用にMHCクラスIH−2及びクラスII I−A/I−E分子で、及び霊長類試験用にMAMU MHCで被覆することもできる。
【0018】
本発明の他の実施形態及び利点は、以下に記載する発明の説明に一部は記載され、この説明から一部は明らかになり得、又は発明の実施から学ばれ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
定義
用語「アンカーアミノ酸」は、本明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、短いペプチドのアミノ酸(例えば修飾された又は非修飾の)で、そのペプチド内のその位置は、好ましくは、MHC分子の結合間隙内のMHC分子の近接アミノ酸に対して最適な結合親和性を提供し、その親和性は、免疫応答の生成でT細胞への提示のためのMHC分子とペプチドとの適切な結合に必要であるアミノ酸を意味するよう使用する。
【0020】
用語「抗原」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、免疫応答を誘導する能力がある物質を意味するよう使用する。
【0021】
用語「ビーズ」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、イオン及び非イオン物質、陰イオン及び陽イオン交換物質、親和性物質、サイズ排除物質、セファロース(登録商標)、セファデックス(登録商標)、アガロース、セルロース、吸着/分配物質、活性化物質、樹脂、これらの物質由来のナノ粒子構造体及び複合体、並びにそれらの組合せを含むがこれに限定されない、クロマトグラフィーマトリックス材料を意味するよう使用する。
【0022】
用語「生体分子」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、真核及び原核細胞;ミトコンドリア、膜、及び他の細胞部分等の細胞内構造物;ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖質、脂質、核酸、脂肪酸、及び糖タンパク質、リポタンパク質、抗体、細胞因子、アプタマーを含む複合分子等の分子、及び医薬化合物と薬物、並びに前述分子の任意の組合せを含むがこれに限定されない、生体物質由来の物質、又は生体物質から採取された物質を意味するよう使用する。
【0023】
用語「C末端アミノ酸」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、そのアミノ基は、ペプチド結合の形成に関与するが、依然として遊離型のカルボキシル基を有するアミノ酸を意味するよう使用する。直鎖ペプチドでは、C末端は慣習的に右側に書かれる。
【0024】
用語「細胞傷害性」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、ある物質が、細胞の死、溶解、又は破壊を誘導できる程度を意味するよう使用する。
【0025】
用語「ELISA」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、enzyme linked immunosorbent assay(酵素免疫測定法)の略語を意味するよう使用する。これは、ある物質を検出可能な(例えば有色の)生成物に変化させる結合酵素によって、結合抗原又は抗体を検出する血清学的アッセイである。
【0026】
用語「ELISPOT」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、プラスチック表面に結合した抗体又は抗原の上に細胞を配置する、ELISA法の改変法を意味するよう使用する。抗原又は抗体は、細胞が分泌する生成物を捕捉する。次いでそれは、好ましくは無色の基質を切断する酵素結合抗体を用いて局在する有色点を生成することによって検出し得る。
【0027】
用語「エピトープ」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、抗体によって認識される抗原上の部位を意味するよう使用する。エピトープは、抗原決定基とも呼ばれる。
【0028】
用語「HLA」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、ヒト白血球抗原を意味するよう使用する。
【0029】
用語「H−2」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、サブ領域K、I、及びDを含むマウスの17番染色体上にある主要組織適合性複合体を意味するよう使用する。
【0030】
用語「IL」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、種々の細胞に影響する白血球によって生産される一種のサイトカインであるインターロイキンを意味するよう使用する。
【0031】
用語「免疫応答」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、抗原への免疫系の反応を意味するよう使用する。
【0032】
用語「MHC」を、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、主要組織適合性複合体を意味するよう使用する。MHCは、免疫応答で抗原提示を制御する、すべての又は少なくとも大部分の哺乳類(例えばヒト、霊長類、マウス)の遺伝子集団である。ヒトにおいて、クラスI分子は、HLA−A、B、及びCと呼び、クラスII分子は、HLA−DP、DQ、及びDRと呼び、及びクラスIII分子は、非古典的MHC分子である。マウスMHC分子は、H−2と呼ぶ。
【0033】
本発明の抗原を参照すると、用語「非ゼロバックグラウンド」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、最小の抗原性活性を示す、in vitro免疫アッセイから生成される応答の程度を意味する。
【0034】
用語「N末端アミノ酸」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、そのカルボキシル基がペプチド結合の形成に関与するが、遊離アミノ基を有するアミノ酸を意味するよう使用する。直鎖ペプチドでは、N末端は慣習的に左側に書かれる。
【0035】
免疫応答を参照すると、用語「安定な」は、明細書及び特許請求の範囲の目的で、本明細書では、試験抗原に関して一貫した、再現性のある免疫応答を意味するよう使用する。
【0036】
好ましい実施形態
免疫応答は、免疫系で最も周知の、且つ最もよく研究された分子機構のうちの1つである。この十分な理解にもかかわらず、免疫応答プロファイルは、同じ抗原に対する免疫応答をアッセイする場合、複数の研究室で、及び同じ研究室内でさえ、大きく変化する。
【0037】
驚くことに、結合した抗原のないMHC分子の対照を提供することによってでなく、安定であるが、非ゼロバックグラウンドの応答を引き起こす抗原に結合したMHC分子を提供することによって、特定の系の免疫応答を標準化し得ることが発見された。このような抗原のみが、一貫して、且つ再現的に、バックグラウンドの活性だけを示すが、特定の系のアーチファクトによる異常は示さない免疫応答を引き起こす。この非ゼロバックグラウンドの活性は、試験抗原の抗原性を、感受性を持ち、正確に、且つ定量的に測定することが可能な、対照又はベースラインとして使用できる。
【0038】
本発明の1つの実施形態は、免疫アッセイにおいて安定な、非ゼロバックグラウンドの応答を引き起こす短いペプチドを含む。本発明のこれらの短いペプチドは、免疫応答を誘発するために細胞集団への提示のためのMHC分子との結合を可能にする、任意の大きさであってよい。本発明のペプチドは、好ましくは、長さが6〜36個のアミノ酸からなる単一のペプチド配列を含み、好ましくは、少なくとも2個のアンカーアミノ酸を含む。一般に、配列が大きいほど、提示のための適切なMHC分子との結合に必要なアンカーアミノ酸の数も大きくなる。より好ましくは、ペプチドは、2〜5個のアンカーアミノ酸を有する、長さが8〜25個のアミノ酸である。さらにより好ましくは、配列は10〜20個のアミノ酸であって、2〜4個のアンカーアミノ酸を含む。7、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、及び35個のアミノ酸からなるペプチド配列も企図され、1、2、3、4、5、6個又はそれ以上のいずれかのアンカーアミノ酸を含む。配列は、大部分は天然のアミノ酸を含むであろうが、1つ又は複数(又はすべて)の非天然の、合成の、及び/又は修飾されたアミノ酸も、本発明のペプチド配列を構成し得る。ペプチドが、ある程度の免疫応答を誘発できるならば、アミノ酸は、修飾又は他の分子に結合されていてもよい。本発明の好適な実施形態において、短いペプチドは、8〜10個の天然のアミノ酸からなる配列を有し、位置1、2、又は3に少なくとも1個、及び位置7、8、9、又は10(ペプチドのN末端からC末端へ数える場合)に、少なくとももう1個の2個のアンカーアミノ酸を含む。別の好適な実施形態は、N末端から2〜5の任意の位置に少なくとも1個のアンカーアミノ酸を、及びC末端から2〜7の任意の位置に少なくとももう1個のアンカーアミノ酸を有する、7〜24個のアミノ酸からなるペプチドである。ペプチド鎖に沿ったアンカーアミノ酸の他の好ましい位置は、22〜28個のアミノ酸からなるペプチドでは、アミノ酸の位置12と17(N末端からか数える)の間にあり、30〜36個のアミノ酸からなるペプチドでは、アミノ酸の位置22と25の間にある。
【0039】
アンカーアミノ酸は、当業者によって、ほとんどの任意のペプチドに対して同定することが可能である。例えば、2004年8月12日に公開された(及び、参照することによって完全に援用される)、米国特許出願公開第2004 0157273号は、MHC抗原への高親和性を有するペプチド配列のアミノ酸を同定することができる方法を提供する。そのようなペプチドに対して、ペプチドの特異的結合部位の予測のためのアルゴリズム開発で使用するために、親和性の係数を決定することが可能である。
【0040】
ヒトMHCクラスI分子(HLA−A2.1)の結晶構造の研究は、ペプチド結合溝が、クラスI重鎖のα1及びα2ドメイン(Bjorkmanら、Nature 329:506(1987))の折り畳みによって作製されることを示している。Buusら(Science 242:1065(1988))は、MHCからの結合ペプチドの酸性溶出のための方法を述べた。その後、Rammenseeと彼の共同研究者(FaIkら、Nature 351:290(1991))は、クラスI分子に結合した自然に処理されたペプチドを特徴付けるためのアプローチを開発した。他の研究者は、様々なHPLC画分においてより豊富なペプチドのアミノ酸の直接配列決定を、B型のクラスI分子から溶出したペプチドを従来の自動配列決定によって(Jardetzkyら、Nature 353:326(1991))、及びA2.1型を質量分析によって(Huntら、Science 225:1261(1992))、成功裏に達成した。MHCクラスIの自然に処理されるペプチドの特徴付けの再検討は、Rotzschke及びFalkによって提示された(Rotzschke及びFaIk、Immunol.Today 12:447(1991))。PCT公開番号WO97/34621(参照することによって本明細書に援用される)は、A2.1対立遺伝子に対する結合親和性を有するペプチドを述べる。Setteら(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:3296(1989))は、MHC対立遺伝子特異的モチーフが、MHC結合能を予測できることを示した。Schaefferら(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 86:4649(1989))は、MHC結合が、免疫原性に関連することを示した。その他(De Bruijnら、Eur.J.Immunol.、21:2963−2970(1991);Pamerら、991 Nature 353:852−955(1991))は、クラスI結合アミノ酸を、動物モデルにおいて潜在的免疫原性ペプチドの同定に適用することが可能であるという予備的証拠を提供した。これらの異なる対立遺伝子の組合せ頻度は、大きな画分又はおそらく、ヒトの異系交配集団の大部分に及ぶために十分高くなければならない、これらと他の研究から、当業者によって周知のすべては、ほとんどの場合、高親和性の結合部位であるMHC分子の溝に結合されるアミノ酸の一致が、決定し得ることである。最も好ましくは、これらは、アンカーアミノ酸である。
【0041】
本発明の別の実施形態は、本発明のペプチドをコードする核酸配列を含む。そのような核酸配列は、本発明のペプチドを大量に生産するために、発現系で使用し得る。そのような発現系は、原核生物若しくは真核生物であってもよく、又は1つ若しくは複数の修飾されたアミノ酸を含む配列を発現させるために設計し得る。
【0042】
本発明の別の実施形態は、MHC分子に結合した本発明のペプチドを含む。結合は、最も一般的には、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性若しくは親水性の相互作用、又はその組合せによる等の非共有結合である。しかしながら、結合は、互いにすぐ近くに存在するアミノ酸を共有的に結合するための周知の方法を用いて、共有結合にし得る。そのような方法は、化学処理、放射線曝露、又は他の周知の方法を含む。
【0043】
使用し得るMHC分子は、好ましくは、ヒト、霊長類、マウス、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、ヒツジ様若しくはヒツジ、ヤギ様若しくヤギを含むがこれらに制限されない哺乳類のMHC分子、及びサメのMHC分子、並びにそれらの組合せである。本発明のMHC分子は、クラスI、II、又はIII、HLA、H−2と分類される分子、及びそれらの組合せを含むが、これらに制限されない。クラスIMHC分子は、ほとんどすべての有核細胞上で発現され、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、CTLは、次いで抗原を有する細胞を破壊する。クラスIIMHC分子は、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ等の免疫応答の開始及び維持に関与する細胞上で主に発現される。クラスIIMHC分子は、ヘルパーTリンパ球によって認識され、ヘルパーTリンパ球の増殖及び示される特定の免疫原性ペプチドに対する免疫応答の増幅を誘導する。
【0044】
本発明の別の実施形態は、クロマトグラフィー媒体等の種々のビーズのいずれか等の固体構造、及びナノ粒子(図1を参照)等の生物学的又は化学構造に共有結合的又は非共有結合的に結合したMHC分子に結合した本発明のペプチドを含む。アガロース、セファデックス(登録商標)、セファロース(登録商標)、親和性物質、交換物質、in vivo用途で用いられるような生物由来物質、及び当業者にすべて周知のその他多数の物質で作製されるビーズを含むがこれらに制限されない、任意の種類の従来のビーズを使用してもよい。ビーズは、好ましくは、例えば、ビーズを抗原特異的T細胞に結合するためのHLA分子内に事前に折り畳まれたペプチドを含む。ビーズは、超常磁性でもよい、即ち、ビーズは、磁場内に配置された場合のみ磁気特性を示し、この磁場から取り出されると、残留磁気をまったく示さない。例えば、DYNAL Biotech製のビーズは、標的を鉄への毒物暴露から保護するポリマーシェルを有する。大きさ、形状、及び表面積の真の均一性(CV<3%)は、最適な到達性及び反応速度を提供し、迅速で効率的な結合を可能にする。真の球面形状及び定義された界面化学は、化学凝集反応と非特異的結合を最小化する。多数の利用可能なビーズの種類の特異的な特徴は、広範な種類の標的の磁気分離を容易にする。これらのビーズの利点は、結果の再現性及び品質を確保するユニークなバッチ対バッチの再現性を含み、磁気分離が静かで、カラム又は遠心をまったく必要としない。再現性は、一般的に、10%以内であり、好ましくは、5%以内、及びより好ましくは、1%又は2%以内である。同様のビーズ粒子は、また、BD Bioscience Pharmingenから磁気ナノ粒子(BD IMag粒子)として市販されている。IMag粒子のより小さなサイズの特徴は、細胞集団の単離及び精製に有用であるという別の利点を有しており、この利点は、次いで、細胞からのビーズの除去を必要とせずにフローサイトメトリー分析等の下流の適用へ移動されるか、又は直接取り入れられることができる。
【0045】
本発明の別の実施形態は、本発明のビーズを含むキットを含む。そのようなキットは、種々のMHC分子(例えば、ヒト{HLA}、マウス{H−2}、霊長類{MAMU−MHC}、等)のいずれかに結合し、in vitro又はin vivo免疫アッセイで使用するためのビーズと結合した好ましいペプチドで製造されることが可能である。これらのキットは、適切なバッファ及び所望の試験ペプチドとキットに入っている本発明の対照ペプチドとの直接、ヘッド対ヘッドの比較のための容器を含むこともある。共通の方法を提供することによって、抗原性の正確な程度を、対照ペプチドと比較して決定し、同じペプチド対照を使用した他の研究室で実施されたか、又は、他のアッセイにおいてさえ実施されたか、そのペプチドの他のすべての試験と比較することが可能である。
【0046】
本発明の別の実施形態は、本発明のペプチドに対する比較によって、試験抗原の抗原性を定量化するための方法を含む。ペプチドは、好ましくは、MHC分子と結合し、且つビーズと結合している。試験ペプチドも、同様又は同一の方法で、同一又は同様のMHC分子と結合し、及び同一又は同様のビーズ物質と結合している。方法は、ELISPOTアッセイ、ELISA、及び当業者には周知である免疫応答アッセイ等を含むがこれに制限されない、免疫アッセイを実施することを含む。アッセイは、本発明の対照ペプチドと比較し得る試験ペプチドの抗原性の程度を決定する。対照ペプチドは、下限測定のベースラインを確立し、そこから試験ペプチドの抗原性の正確な程度又は定量化が決定し得る。さらに、多数の異なる試験ペプチドの相対的な抗原性のデータベースを、1つ又は少数の対照ペプチドに対する比較によって確立することができる。
【0047】
本発明の別の実施形態は、安定な、非ゼロバックグラウンドの応答性抗原用のスクリーニング方法を含む。周知の市販されている免疫応答アッセイを使用して、当業者は、大量の抗原を選別することができ、且つ強い免疫原性反応を引き起こす抗原のスクリーニングの代わりに、本発明に従って安定な、非ゼロバックグラウンドの応答を引き起こす抗原を同定することができる。好ましい抗原は、ペプチド配列であるが、そのような抗原は、単純な若しくは複雑な有機化学物質若しくは無機化学物質、生物由来物質、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0048】
1つの具体的な実施形態では、本発明は、培養における拡大、DNA抽出と分析等、その後の適用のためにT細胞を抽出するために磁気系でMHCクラスIHLA被覆ビーズを作製し、使用するための方法を含む。さらに、本発明は、生化学的方法及び手順、並びに免疫アッセイによって検出可能な生化学反応及び機能活性につながる、及び結果になる、抗原特異的CD8T細胞の刺激で用いるためのMHCクラスIHLA被覆ビーズのための新規適用を含む。また、本発明は、MHCクラスIIHLA分子及び非古典的なMHC分子等の他のMHC分子で被覆される場合、ビーズが使用し得る他の適用を含む。
【0049】
癌、感染症、及び自己免疫の免疫療法のための臨床試験及びワクチン研究の診断、モニタリング、及び評価で成功した研究の1つの態様は、ワクチンによって誘発される進行中のin vivo免疫応答の重要なパラメータをモニターする能力である。ペプチドワクチン投与を受ける個体の免疫学的モニタリングのための古典的なアッセイは、増殖、上清中のサイトカイン分泌(ELISA)、細胞傷害性、及び抗体応答等のin vitro細胞培養に基づくアッセイから主に成っている。これらのアッセイは、一般的に、結果を得るために2日から2週間ほどかかり得る、末梢血液細胞を処理するためのいくつかの準備段階及びin vitro操作を含む。したがって、様々な研究室によって実施されるアッセイは、血液試料自体から、又は、アッセイの手順を実行する技術者から生じ得るかなりの数の変動及びアーチファクトが伴うことが極めて多い。免疫学的モニタリングの作業課題におけるそのような問題の発生は、試験されるワクチン及び結果として生じた免疫応答についての有益な科学的洞察を評価することを極めて困難にする。したがって、免疫学的応答のより迅速且つより少ない操作での評価は、ワクチン開発及び治療分野において進歩を達成するために、極めて望ましい。
【0050】
現在、抗原特異的T細胞によるサイトカイン分泌の検出方法は2つある。第1の方法は、サイトカイン反応の表現型特徴及び機能的特徴の両方を提供する潜在能力を有するフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン(ICC)分泌である。この方法の限界は、それがT細胞に送達される抗原性刺激性シグナルの強さ、及び染色のプロセス中にサイトカイン分泌活性のピークの最適検出を推定し、可能にする、どちらかといえば「制限的な」狭い時間枠に依存することである。
【0051】
第2の方法は、細胞を培養中に刺激しサイトカイン分泌をELISPOT方法により長時間にわたりモニターし、それによって長期間にわたって分泌及び分泌されたサイトカインの捕捉が可能になる方法である。光学計装及びデジタル画像解析ソフトウェアの進歩により、特異的抗原ペプチドの刺激に応答してサイトカインを分泌する細胞を計数するために、ELISPOTアッセイを用いることによって複数の研究室の間である一定レベルの標準化を達成することができることが期待される。ほとんどの場合、ELISPOTアッセイにおけるT細胞のペプチド特異的刺激は、末梢単核血球の亜集団としてすでに存在するB細胞、単球、及び樹枝状細胞等の抗原提示細胞(APC)によって達成される。T細胞の刺激に利用できるAPCの数を増加させる手段として、極めて頻繁に、樹枝状細胞又は単球の高度に精製された集団も調製され、且つ末梢血液試料の全集団の抗原性刺激のために使用し得る。ある場合には、抗原性ペプチドを、刺激相の間、APC上にパルスされ、又は培養物と混合される。次いで、このアプローチは、抗原性ペプチドが、抗原提示機構に送り込まれ、処理されて、細胞表面上で抗原特異的T細胞のT細胞受容体への最終的な提示のためにHLA分子上に載置されることを必要とする。この段階の重要性にもかかわらず、送り込まれ、処置され、次いで最終の重大な段階、即ち細胞表面でHLA分子と結合して提示される段階に到着する抗原性ペプチドのレベルの濃度及び/又は量と質において、任意のレベルの一貫性を確保するために利用できる方法はまったくない。さらに、これが最初の段階であり、且つそれに続く一連の後の下流の培養刺激条件でおそらく、最も重要な段階であるので、後のモニタリングアッセイにおいて免疫応答で見られる変動量の理由でもある。ここでの弱点は、もしペプチドの量又は質が重要であれば、ペプチドの変異及び不適切な提示に起因する。
【0052】
抗原が抗原特異的T細胞を刺激し、且つ通常の抗原提示細胞で見られるペプチド提示の可変で「未知」のレベル及び/又は質と関連した不一致を回避することを可能にするために、本発明は、人工的「刺激性細胞」を使用する。この細胞は、特異的ペプチドの周りに折り畳まれたHLA分子を規定量有し、そのすべては潜在的に発現し、目的の抗原性ペプチドを提示する。HLA被覆ビーズ(BD Biosciences PharmingenのDYNAL若しくはIMag粒子によって作製されたビーズ、又は他の市販のビーズ等)の利点は、それらが大量に生化学的に合成されることが可能であり、且つそれらの表面に提示される結合ペプチドを有するHLAの一貫性及び適切なレベルを品質管理プロセスによってモニターし得ることである。さらに、ほとんどすべてのHLA分子は、目的のペプチドを提示することになるので、1つ又は複数のT細胞受容体に同時に結合することが可能な複数のHLA分子の存在は、強力な刺激性の相互作用、及びうまく且つ一貫して起こるようにT細胞応答の誘発をもたらすシグナル伝達現象を確保、又は生成する。この様態は、また、同時刺激シグナル及び/又はサイトカインを必要としないこともある理由である。しかし、もし必要又は所望であれば、それらは、同時に又は培養に付加してビーズに組み入れる又は結合されることも可能である。
【0053】
そのような免疫アッセイで使用されるHLAビーズの限界は、バックグラウンド又は「逸脱」した刺激性応答をモニターするために使用することが可能な適切な陰性ペプチドが利用できることになろう。そのようなペプチドの同定は、それによってペプチドの最も広い変異性を認識させられる免疫T細胞の内因的な性質のために、しばしば、ほぼ不可能になり得る。本発明は、この問題を解決する。本発明は、この特定の目的のためにペプチドを同定する。
【0054】
実験からMHCクラスI分子に対して強い結合親和性を示した3つのペプチドを同定した。各ペプチド配列は、約8〜10個のアミノ酸(N末端から数える)を含み、且つ少なくとも2個のアンカーアミノ酸を含む。少なくとも1個のアンカーアミノ酸は、位置1、2、又は3にあり、及び少なくとももう1個は位置7、8、又は9にあった。これらのアンカーアミノ酸は、好ましくは、荷電され、それは、陽性又は陰性のいずれかの電荷であり得る。例えば、1個のペプチドは、位置2及び9にアンカーアミノ酸を持つ9個のアミノ酸から成る配列を有した。
【0055】
3つの同定されたペプチドは、対照ペプチドとして同様に十分にMHCに結合して、安定な非ゼロバックグラウンドの応答を誘発した。これら3つのペプチドのうち2つは、HLA分子に折り畳まれて、ビーズに結合し、2種の陰性対照ビーズを生成した。これらの種をex vivoELISPOTアッセイにおいて抗原特異的ビーズ及び未変性/単純ペプチドと共に試験した。
【0056】
ELISPOTアッセイ(IFN−γ、グランザイム、及びパーフォリン)でこれらのビーズ及び適切な陰性対照を利用するこの発想を発展させ且つ検証するための実験は、本発明を支持する。増殖及び細胞傷害性の生成のためのex vivo刺激並びに細胞活性化機能及び応答は、臨床試験及び調査研究の両方においてこれらのビーズのより広範な利用への適用性を高める。
【0057】
さらに、シグナル変換経路及び関連する成分の検出等、これらのビーズによって誘発される細胞活性化に関連する測定の包含、並びにカルシウム動員及びリン酸化等の生化学反応は、健全態及び病態における基礎研究調査及び臨床試験のために有益である。
【0058】
この明細書に記載されたすべてのアプローチ及び適用は、MHCクラスIIHLA分子及び非古典的MHC分子等の他のMHC分子で被覆したビーズにも同様に適用可能である。
【0059】
本発明の別の実施形態は、ペプチド、MHC分子と結合しているペプチド、及び/又はビーズに共有結合しているMHC分子と結合しているペプチドの患者へのin vivo投与に関する。これらのex vivo及びin vitro適用に基づき、トランスレーショナルな臨床応用の別のセットがあり、それによりビーズ及び/又はナノ粒子とのこれらMHC+ペプチドの複合体は、治療及び/又は病態の調節のためのin vivo臨床応用で利用される。第1に、縫合糸の合成で利用できる化合物(例えば、不活性物質)等の臨床的に使いやすい物質でできている球状ビーズの構造体への複合体の結合がある。これから及び同様の物質で作られたナノ粒子は、実際に多孔性であり得、したがって、例えばアジュバント、サイトカイン、CpG、医薬品、細胞傷害性薬物、DNA、RNA等の生物学的に刺激性のある薬剤、又は生物学的に有毒な物質の担体でもあり得る。したがって、本発明のMHC+ペプチド複合体をこれらの構造に結合させることによって、免疫応答(癌、感染症等に対する)を刺激するための、又は免疫応答(自己免疫、炎症性状態、臓器移植の拒絶反応を抑える等)を阻害するための抗原特異的細胞の増大又は破壊を標的にすることができる。本発明のペプチドは、不要な免疫応答の活動を停止させ、及び/又は調節し、迷走性の免疫応答を安定させるためにin vivoで用いられる。第2に、現在、臨床試験中のナノ粒子構造体は、脂質/複合脂質膜(ほとんどミセルと同様の)から作られており、それは、膜に挿入されたMHC+ペプチド複合体及び中に中空を有することができる。また、選択された特異的なMHC+ペプチドを有するこれらの構造も、適切なT細胞を標的とすることによって、及びアジュバント、サイトカイン、CpG、細胞傷害性薬物、DNA、RNA等のこれらの構造内に生物学的に刺激性の分子又は有毒な分子を含むことによって、免疫応答を刺激するため又は阻害するために、使用し得る。例えば、MHC分子との複合体にした、及び所望であれば、ビーズに共有結合させた本発明のペプチドの治療有効量又は予防有効量を、患者の免疫応答を刺激するため、又は阻害するために投与し得る。投与は、血流若しくは消化管等の他の体内域に直接に、可能な若しくは望ましい部位に非経口的に、筋肉内に、又は腫瘍内に、又はリンパ球若しくは炎症部位に、又はプライミング若しくは前処理を施す移植臓器に、注入によって可能である。ビーズと共に投与する場合、ビーズが遊走する先の体内域を局在させることも可能であり、それによって、磁気ビーズ、又は力線に応答するビーズ、又はその目的のために導入し得る若しくはそうでなければ体内で自然発生する、ある種の物質に単純に結合するビーズによって局所効果を最大化させる。
【0060】
本発明の別の実施形態は、本発明のペプチドをコードする核酸に関する。核酸は、DNA、RNA、又はPNA分子を含んでもよく、及び核酸分子の操作で、又はコードしたペプチドの発現で使用する付加的な配列をコードすることも可能である。
【0061】
本発明の別の実施形態は、本発明のペプチドに応答する抗体に関する。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルでもよく、及びビーズと同様の方法でinvivo適用において有用になり得る。
【0062】
以下の実施例は、本発明の実施形態を示すが、本発明の範囲を制限すると見なされてはならない。
【実施例】
【0063】
種々の特異的なペプチド(例えば、感染症抗原又は癌関連抗原)を含むビーズの組合せをパネル又はアレイとして使用する上述した様式で、基礎研究のために、又は応答をモニターするために、これらのビーズを特定の又は所与のセットで使用する、及び対照ペプチドを含むアプローチは、特許出願者による発見の新規の応用でもある。ビーズの具体的に定義されたパネルへの応答のための血液試料及び培養のスクリーニングは、健全態又は病態の評価及び診断において、免疫応答のモニタリングに有益であるばかりでなく、タンパク質由来の新規の特別注文の抗原性エピトープの発見の目的でも有益である。これらの実施例は、癌ワクチン接種におけるエピトープ拡散の研究、ワクチン接種療法及びアジュバンドに対する免疫応答の強化及び広幅化の研究、並びに種々の送達系及び潜在的に新規のワクチンペプチド(腫瘍抗原及び感染性微生物由来)の発見を含む。
【0064】
サイトカイン分泌(ELISA及びELISPOT)、増殖、及び細胞傷害性活性等の機能活性の誘発のための末梢血液細胞集団の刺激及びin vitro刺激培養は、標準的な及び新規の免疫アッセイ(フローサイトメトリー及び/又は放射能測定及び/又は比色測定等を含む)によって測定される。
【0065】
これらの測定は、臨床試験及び基礎研究調査のモニタリング等の免疫応答の理解及び評価のために利用される。臨床試験及び基礎研究調査の免疫学的モニタリングは、また、シグナル伝達経路及び関連する成分の調査/解明、並びに健全態及び病態両方からの免疫細胞におけるカルシウム動員研究を含む(米国特許第5,550,214号を参照)。
【0066】
別の実施形態では、ビーズ(例えばDYNALから市販されているもの)を、MHCクラスIIHLA分子に共有結合的に結合させる。MHCクラスIIHLA被覆ビーズを、一定の期間細胞集団にインキュベートし、その細胞集団の増殖を定量化する。試験ビーズを、一定の期間、試験細胞集団と共にインキュベートし、ここで、試験ビーズを、試験MHC分子で共有結合的に結合しており、試験細胞集団の増殖を定量化した。前述の試験ペプチドによって生じた増殖を定量化するために、細胞集団の増殖を試験集団から差し引く。サイトカイン分泌(ELISA及びELISPOT)、増殖、及び細胞傷害性活性等の機能活性を誘発するために末梢血液細胞集団の刺激及びin vitro刺激培養を、標準的な及び新規の免疫アッセイ(フローサイトメトリー及び/又は放射能測定等を含む)によって測定する。これらの測定を、臨床試験及び基礎研究調査のモニタリング等の免疫応答の理解及び評価のために利用する。臨床試験及び基礎研究調査の免疫学的モニタリングは、また、シグナル伝達経路及び関連する成分の調査/解明、並びに健全態及び病態両方からの免疫細胞におけるカルシウム動員研究を含む。
【0067】
別の実施形態では、実験を、ex vivoELISPOTアッセイの実行において刺激の非存在下(即ち培地)で、E75又はテロメラーゼペプチド+HLAビーズを用いて、又は単純ペプチド若しくは非複合体E75ペプチド若しくはテロメラーゼペプチドを用いて実施した。これらのDYNALビーズ+HLA+ペプチドが、IFNγ分泌細胞の検出のためのELISPOTアッセイにおいて健全な結果を誘発する能力があることを、試験結果は示した。これらの応答を、前立腺患者及び胸部癌患者由来末梢血液試料を用いるいくつかのアッセイにおいて再現した。ビーズは、DYNAL Biotechである必要はない。別の生化学製品製造者、BD Biosciences等も、ビーズを作製し得る。
【0068】
別の実施形態では、実験を、陰性対照ペプチドでのex vivoELISPOTアッセイの実行において、E75ペプチド又はテロメラーゼペプチド+HLAビーズを用いて実施した。これらの結果は、IFN−γ分泌細胞の健全な定量化が、この様式で取得し得る、若しくは測定し得る、又はこの系及びアプローチ(表1を参照)を用いて測定し得ることを示した。
【0069】
科学的メリットを有するこのような研究を実施するために、適切な「陰性対照」(即ち、陰性対照ペプチドと非共有的に結合するHLA分子を有するビーズ)、及び「正の対照」(即ち、既知の正の対照ペプチドを有するビーズ)をデザインし、作製して、利用することが必要である。これにより、血液細胞集団の刺激、及び免疫アッセイにおいて一貫した結果を得るための細胞培養に対して品質管理を行える試薬の標準的セットが提供される。これは、取得及び調製するのが難しく、時点から時点で極めて変化しやすい、抗原提示細胞としてペプチドをパルスした細胞集団を使用するのとは対照的である。ex vivo状況下でこれを行う本発明の能力は、このような方法(即ち、末梢血液から単離又は調製された細胞における免疫応答の直接ex vivoモニタリングのための)で、これらのビーズを使用することのさらなる新規の特徴である。
【0070】
ELISPOTアッセイにおいて安定の非ゼロバックグラウンドの応答を誘発するためのMHC抗原に関連するT細胞への提示(免疫応答を誘発するために、抗原は、Tリンパ球によって提示され且つ認識されることが必要である)のための理想的なペプチドは、アミノN末端から順に数えられる約8〜10個のアミノ酸から成る配列である。この配列は、少なくとも2個のアンカーアミノ酸を含み、そのうちの少なくとも1つは、位置1、2、又は3にあり、及びそのうちの少なくとももう1つは、位置7,8、又は9にある。安定な非ゼロバックグラウンドの応答は、誘発されたが、依然として、変わりやすい免疫応答刺激の結果を干渉しない応答があることを知るために望ましい。
【0071】
別の実施形態では、本発明は、そのようなペプチドの3分の2を提供し、それらは、次のアッセイに対する陰性対照ペプチドとして潜在的に使用し得る:{葉酸結合タンパク質(FBP)由来のE37:aa25〜33}NH2−RIAWARTEL−COOH}(配列番号1)、{葉酸結合タンパク質(FBP)由来のE39:aa191〜199}NH2−EIWTHSTKV−COOH}(配列番号2)野生型は、EIWTHSYKVである(配列番号3)。{テロメラーゼ由来のTert540:aa540〜548}NH2−I/LILAKFLHWL−COOH}(配列番号4)野生型は、EILAKFLHWLである(配列番号5)。このビーズ及びプロセスを、HLA分子の代わりにMHCクラスIH−2分子でビーズを被覆することによってマウス研究に関連して使用する、及びMAMU−MHC分子を用いて非ヒト霊長類研究で使用することも可能である。
【0072】
本発明の他の実施形態及び使用法は、本明細書に開示される発明の明細書と実行の考慮から、当業者にとって明らかである。すべての公開、米国及び外国の特許並びに特許出願を含む、本明細書に引用された参照は、参照によって、具体的に且つ完全に援用される。明細書及び実施例は、本発明の特許請求の範囲によって示される発明の真の範囲及び精神を有するもののみが模範的と見なされることを目的とする。
【0073】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態による、免疫療法のプロセス及び免疫応答の生成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ末端から数えて約6〜36個のアミノ酸の配列を含むペプチドであって、
前記配列が直線状であり、且つ少なくとも2個のアンカーアミノ酸を含み、
前記ペプチドが、MHC分子と結合してT細胞に提示されると、免疫学的応答アッセイにおいて安定な、非ゼロバックグラウンドの応答を誘発する
ペプチド。
【請求項2】
前記配列が、6〜24個のアミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記配列が、8〜10個のアミノ酸を含み、前記少なくとも2個のアンカーアミノ酸が、位置1、2、又は3、及び8、9、又は10にある、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記配列が、配列番号1を含む、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記配列が、配列番号2を含む、請求項3に記載のペプチド。
【請求項6】
前記配列が、配列番号4を含む、請求項3に記載のペプチド。
【請求項7】
前記免疫学的応答アッセイが、ELISPOTアッセイ、ELISAアッセイ、in vitroアッセイ、又はin vivoアッセイである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
核酸であって、請求項1のペプチドをコードする配列を含む核酸。
【請求項9】
さらに、MHC分子を含み、前記ペプチドが、T細胞への提示のために前記MHC分子と結合している、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
前記MHC分子が、クラスI若しくはクラスIIMHC分子又は非古典的なMHC分子である、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記MHC分子が、H−2分子又はMAMU−MHC分子である、請求項9に記載のペプチド。
【請求項12】
請求項9に記載のMHC分子が共有結合的に又は非共有結合的に結合しているビーズ。
【請求項13】
前記ビーズが、セファロースビーズ、アルゴースビーズ、磁気ビーズ、生物的球状粒子、化学的球状粒子、ナノ粒子、免疫学的不活性物質、縫合用材料、脂質及び脂質複合膜構造体、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載のビーズ。
【請求項14】
請求項12の前記ビーズを複数含むキット。
【請求項15】
さらに、別のMHC分子と非共有結合的に結合している試験ペプチドを含み、前記別のMHC分子が、前記ビーズに共有結合的に結合している、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
請求項1の前記ペプチドと特異的に結合する抗体。
【請求項17】
請求項12に記載の前記ビーズを形成する方法であって、
任意の順序で、
前記ビーズに前記MHC分子を共有結合的に結合することと、
前記ペプチドを前記MHC分子に非共有結合的に結合させることと
を含む方法。
【請求項18】
細胞集団が免疫応答の刺激に反応する細胞集団の増殖を刺激するための定量方法であって、
請求項12に記載の前記ビーズを前記細胞集団と共に一定の期間インキュベートし、且つ前記細胞集団の増殖を定量化することと、
試験ビーズを試験細胞集団と共に前記一定の期間インキュベートし、ここで、前記試験ビーズが、試験MHC分子に共有結合的に結合し、及び前記試験MHC分子が、試験ペプチドと非共有結合的に結合し、且つ前記試験細胞集団の増殖を定量化することと、
前記試験ペプチドによって引き起こされる増殖を定量化するために、前記試験集団から前記細胞集団の増殖を差し引くことと、
を含む定量方法。
【請求項19】
ELISPOTアッセイである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ELISAアッセイである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記MHC分子が、クラスI、クラスII、非古典的なMHC分子、及びH−2分子からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
増殖の定量が、フローサイトメトリー測定又は比色測定を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
サイトカイン分泌の定量が、細胞内サイトカイン分泌のフローサイトメトリー測定を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
定量化が、放射能測定を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
定量化が、生化学的測定を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記生化学的測定が、カルシウム動員アッセイである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
定量化が、フローサイトメトリー測定又は比色測定を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
免疫応答由来の細胞集団の増殖のために安定な、非ゼロバックグラウンドを決定するための定量方法であって、
請求項12に記載の前記ビーズを前記細胞集団と共に一定の期間インキュベートすることと、
前記細胞集団の増殖の量を定量化することと
を含む定量方法。
【請求項29】
ELISPOTアッセイである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
障害を治療するための治療法であって、患者の免疫応答を軽減又は調節するために、請求項12に記載の前記ビーズの治療有効量を前記患者に投与することを含む治療法。
【請求項31】
前記患者が、移植患者であり、前記免疫応答が、移植拒絶反応を予防するために低減される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記障害が、免疫系の疾患であり、治療が、前記患者の迷走性の免疫応答を調節する、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−500036(P2009−500036A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520331(P2008−520331)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/025982
【国際公開番号】WO2007/008488
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508006333)ザ ヘンリー エム. ジャクソン ファンデーション フォー ジ アドバンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】