説明

非バイパス侵襲性介入の結果として起こる介入を伴う狭窄症の予防法

【課題】本発明の目的は、完全なあるいは部分的な再狭窄の予防法、および/または一つかそれ以上の胸部痛のような再狭窄と関連した臨床の徴候の除去法、それによるPTCA、アテローム切除術、および/または動脈内膜切除術の恩恵の実施法を提供することである。
【解決手段】本発明は、非バイパス侵襲性介入後の再狭窄に関する。本発明はまた、非バイパス侵襲性介入の結果として起こる徴候的な胸部痛の回復法に関する。この方法は、所定時間でのドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物の毎日の量の投与と、血管の傷害を治癒することを可能にするのに少なくとも効果的である期間、投与を継続することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上記治療が必要な被験者動物(ヒトを含む)における、経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)、アテローム切除術または動脈内膜切除術後に、血管が再狭窄する割合の抑制法に関する。本発明はまた、非バイパス侵襲性介入、すなわち、経皮経管冠状動脈形成術、アテローム切除術または動脈内膜切除術の結果として起こる再狭窄後に生ずる、ヒト内の徴候的な胸部痛の回復法にも関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管疾患と非バイパス侵襲性介入
米国では、心筋梗塞(MI)が死のリーディングケースとなっている。ほとんどすべての心筋梗塞が、完全にアテローム性動脈硬化症に帰する。アテローム性動脈硬化症は、幼児期に始まるが、その病気が、主として心臓や脳といった影響されやすい器官への損害と結びつく臨床の徴候に帰着する、人生の末期まで顕在化しないゆっくりとした進行性の病気である。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、しばしば「動脈硬化症」としていわれているが、アテロームのあるいは繊維性の斑として知られる動脈壁内部の病変の形成に由来する。斑は主として、結合性の組織と平滑筋細胞によって囲まれた脂質とコレステロールの沈着物の芯から構成される。アテローム性動脈硬化症の病変の発達にとって重要な危険な要素の中には、高脂質血症、高リポタンパク血症、糖尿病、肥満症、高血糖症、高インスリン血症のような様々な代謝疾患がある。病変がサイズを増すにつれて、それらは、多様な臨床結果を導く動脈内の血液の流れを制限することができる。そのような結果の一つが、狭心症(胸部痛)や心筋梗塞といったそれ自体臨床で顕在化するであろう、冠状虚血である。そのような結果のもう一つには、大脳の梗塞(すなわち脳卒中)や虚血性脳障害を導くであろう大脳の虚血である。
【0004】
冠状動脈の重大な狭窄症は、経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)、バルーン血管形成術ともいう、またはアテローム切除術によって、治療できる。冠状心臓疾患のこれらの治療法は、冠状バイパス手術の主要な選択肢となっている。同様に、大脳の虚血を引き起こし、脳卒中を導くことができる狭窄は、アテローム切除術と同様の技術である動脈内膜切除術によって、取り除かれる。
【0005】
米国では、そこだけで、毎年およそ400,000人がPTCAを経験している。不幸にも、PTCAによって治療されたそれらの患者の25-50%が、動脈の再狭窄の結果として、六ヶ月以内に再発性虚血を経験している。
【0006】
再狭窄は、一部分、動脈形成術の間に起こる動脈の傷害による。この傷害の結果、病巣の、血漿成分の透過性の増加が起こり、血小板と単球が、内皮または内皮下の結合組織に付着するのを許容する。活性化した血小板と単球は、様々なよく効くサイトカイン(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インターロイキン-1(IL-1)、そして腫瘍懐死因子(TNF))を分泌し、その結果、繊維芽細胞と平滑筋細胞のその箇所への補充と、平滑筋細胞の過剰増殖を引き起こすであろう。平滑筋細胞は、コラーゲン、弾性繊維、そしてプロテオグリカンのような細胞外マトリックス成分を合成する。単球はまた、血管の内膜内にも移動して泡沫細胞に変形し、それらは活発に脂質を蓄積し細胞内脂質小胞に脂質を貯蔵するマクロファージを活性化する。高脂質血症もまた、今までのところは十分に明確とはいえないが、治療後の病変の発生に役割を担っていると思われる。再狭窄の結果、虚血の再発生と、狭心症を含むその徴候つまり異常な心電図記録を引き起こし、そして心筋梗塞を引き起こしうる。
【0007】
研究者たちは、様々な薬理学的、生物工学的、機械的アプローチにより、再狭窄を予防しようとしている。データによると、実りある努力にもかかわらず、再狭窄の割合をかなり減少するストラテジーは、いまだ創り出されていない。実際、近年、50以上の薬剤が再狭窄の予防を試みるため使われているが成功していない。
【0008】
本発明者の以前の研究
本発明者らとその共同研究者らは、一定のドーパミン増強化合物、および/または、プロラクチン抑制化合物(例えば、ブロモクリプチンのようなドーパミン作用剤)、および/または、プロラクチン促進剤(例えば、メトクロプラミドのようなドーパミン拮抗剤;5-ヒドロキシトリプトファンのようなセロトニン作用剤と前駆体)の投与と、特にそのような物質の所定時間での投与が、体脂肪貯蔵、肥満症、血漿トリグリセリドそしてコレステロールを減少し、高インスリン血症とインスリン抵抗性と同様に、アテローム性動脈硬化症を予防し緩和することができることを見出した。(米国特許第4,659,715号;第4,749,709号;第4,783,469号;第5,006,526号;第5,344,832号;そしてPCT出願 US92/11166参照)
【0009】
関連出願
共に係属している特許出願出願番号07/919,685では、プロラクチンの一日のリズムの神経性の位相振幅を修正しリセットするのに足りる期間、量において頃合いの一日の基準で、動物またはヒトの血流中に、プロラクチン(またはプロラクチンとグルココルチコステロイド("GC")の両方)を投与することによる、脂質代謝障害の調整法を開示する。この調整はインスリンの感受性を増大することに見出される。プロラクチンの投入は、インスリン感受性を増大し体脂肪貯蔵を減らすために、脂肪のないインスリン感受性のヒトのプロラクチン分泌ピーク(またはプロラクチンとグルココルチコステロイドのピーク、それぞれに)と時間において一致する、被験者の毎日のプロラクチン(またはプロラクチンとGC)の分泌プロフィールのピークをつくるように、時機を合わせる。出願番号07/719,745でも、ドーパミン作用剤とプロラクチン促進剤による治療を受けている被験者、特に慢性的あるいは周期的に甲状腺機能低下性である被験者に対する、甲状腺ホルモンの更なる投与を開示し請求している。
【0010】
共に係属している特許出願出願番号07/995,292と08/264,558では、被験者の毎日の循環しているプロラクチンプロフィールが、正常かどうかの決定法と、異常であると見出されるプロラクチンプロフィールの正常化法を開示する。関連部分では、本治療法は、覚醒時、治療を受けている被験者内のプロラクチン濃度が最高である時期より以前の、プロラクチン抑制化合物の投与を含み、そして夜間にプロラクチン濃度のピークが生ずるように引き起こすよう時機を合わせた、プロラクチン促進剤の投与も含むであろう。この治療の目的は、いかなる傷害にも苦しんでいない脂肪のない健康なヒトのプロラクチンプロフィールに、位相と振幅の点で似せたり近づけたりするように、患者のプロラクチンプロフィールを改変すること(「整えること」"sculpting")である。
【0011】
共に係属している特許出願出願番号08/263,607では、糖尿病の治療法として、ピレンゼピン、メチルスコポラミン、またはそれに似たムスカリン性(好ましくはM1)受容体拮抗剤の、単独あるいはプロラクチン抑制化合物と組み合わせた時機を合わせた投与による、脂質とグルコースの代謝の調整法を開示する。この出願はさらに、治療の中止後、結果として代謝の改善を維持するようプロラクチンの毎日のリズムを制御する、神経性の位相振幅のリセットを引き起こすために、十分な時間の間治療を継続することを開示する。
【0012】
共に係属している特許出願出願番号08/271,881では、プロラクチンのサーカディアンリズムと一つかそれ以上の免疫反応のそれとの間の、位相関係の調整法を開示する。この発明は、健康な若い被験者のプロラクチンのサーカディアンリズムに似せるため、それを正常化(またはリセット)することを含む。この発明はまた、プロラクチンのサーカディアンリズムを、所定の免疫反応の局面への増幅効果を発揮するような、免疫学的反応性に関する位相と振幅の関係に持ち込むように、それを操作することも含む。
【特許文献1】米国特許第4,659,715号
【特許文献2】米国特許第4,749,709号
【特許文献3】米国特許第4,783,469号
【特許文献4】米国特許第5,006,526号
【特許文献5】米国特許第5,344,832号
【特許文献6】PCT出願 US92/11166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、完全なあるいは部分的な再狭窄の予防法、および/または一つかそれ以上の胸部痛のような再狭窄と関連した臨床の徴候の除去法、それによるPTCA、アテローム切除術、および/または動脈内膜切除術の恩恵の実施法を提供することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、経皮経管冠状動脈形成術やアテローム切除術を経験後六ヶ月以内に、典型的に再発性冠状虚血を発生するヒトを含む、哺乳動物の薬理学的治療法を提供することである。
【0015】
もう一つの本発明の目的は、動脈内膜切除術を経験後六ヶ月以内に、再発性の大脳の虚血を発生するヒトを含む哺乳動物の、薬理学的治療法を提供することである。
【0016】
より特殊な本発明の目的は、上記治療が必要な哺乳動物内で起こるであろう胸部痛や一過性黒内障の、薬理学的抑制法または予防法を提供することである。
【0017】
もう一つのより特殊な本発明の目的は、アテローム性動脈硬化症の病変の圧迫や除去を経験した動脈の再狭窄の、薬理学的抑制法または予防法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
開示されるものは、(1)経皮経管冠状動脈形成術;(2)アテローム切除術;(3)動脈内膜切除術から成るグループより選択された非バイパス侵襲性処置を経験した哺乳動物(ヒトを含む)内の、再狭窄の予防法または制限法である。この方法は、昼間の7:00-22:00の時間の全てあるいは一部の間、被験者内の血液プロラクチン濃度を制限する、および/またはドーパミン活性を高めるように、時間と量を選択して、所定時間に、毎日の量のドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物を哺乳動物に投与することと、侵襲性処置に起こりやすい血管の傷害を治癒することを可能にするのに、少なくとも効果的である期間、投与を継続することを含む。
【0019】
また開示されるものは、1)経皮経管冠状動脈形成術;(2)アテローム切除術;(3)動脈内膜切除術から成るグループより選択された非バイパス侵襲性処置を経験したヒト内の、胸部痛の抑制法または除去法でもある。この方法は、昼間の7:00-22:00の時間の全てあるいは一部の間、被験者内の血液プロラクチン濃度を制限する、および/またはドーパミン活性を高めるように、時間と量を選択して、所定時間に、毎日の量のドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物をヒトに投与することと、侵襲性処置に起こりやすい血管の損傷を治癒することを可能にするのに、少なくとも効果的である期間、投与を継続することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ここに挙げた全ての特許、特許出願、参考文献は、それらの開示が物理的に本明細書中に存在しているごとく、それら全体が参考として取り込まれている。しかしながら矛盾がある場合には、本明細書が優先する。
【0021】
非バイパス侵襲性介入後の血管再狭窄が、哺乳動物被験者(ヒトを含む)に、24時間中の所定時間にドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物を投与することにより、部分的にあるいは完全に排除できることが、最近発見された。その所定時間は、少なくとも昼間(07:00-22:00)の重要な一部の間、上記被験者の血液プロラクチン濃度を減少させるか、および/またはドーパミン活性を増加させるかするために、計画されたものである。この投与はまた、非バイパス侵襲性介入に続いて起こる血管の再狭窄の結果として、ヒトが典型的に経験する胸部痛を部分的にあるいは完全に排除するのにも役に立つ。PTCA、アテローム切除術、動脈内膜切除術のような、血管(動脈)内の非バイパス侵襲性介入は、アテローム性の斑の機械的な切除または除去である。典型的には、上記処置を経験した被験者は、代謝異常に苦しむ。
【0022】
健康な(通常の)被験者、すなわち代謝異常に苦しんでいない、脂肪のない若いヒトは、強く予想可能である毎日のプロラクチン放出プロフィールを持っている。それはヒトでは、覚醒時間(昼間:07:00-22:00)の間の低くて比較的安定なプロラクチン濃度、次に来る夜間中のピークに至る鋭い上昇、その後朝までの(22:00-07:00)覚醒時間の濃度へのよりなだらかな徐々の減少によって、特徴付けられる。図1はヒト(曲線a:男性、曲線b:女性)の、正常または健康なプロラクチンプロフィールを表す。
【0023】
代謝異常に苦しんでいる被験者は、血漿プロラクチンの異常なサーカディアンリズムを持っている。これらの異常なプロフィールの大部分は、昼間の間の異常に高いプロラクチン濃度を含む。異常に高い昼間の濃度は、完全なプロフィールが患者から生成されれば、正常のプロフィールの一致点より少なくとも1SEMだけ正常の濃度よりも高い。そしてもし、3点から4点の鍵となるプロラクチン濃度だけ測定された場合には、少なくとも2SEMだけ高い。1SEMは、覚醒時間では、男性では1-2ng/ml、女性では1-3ng/mlである。
【0024】
異常に高い昼間のプロラクチン濃度の代わりに(あるいはそれに加えて)、代謝異常を持つ被験者の中には、異常に低い夜間のプロラクチン濃度を示すものもある。それは、完全なプロラクチンプロフィールが生成されれば、健康な患者の一致する濃度より少なくとも1SEM低い濃度であり、そしてもし、1点から2点の鍵となる夜間のプロラクチン濃度だけ測定された場合には、一致する健康な濃度より少なくとも2SEM低い濃度である。ヒト男性では、夜間のプロラクチン濃度の1SEMは、およそ3ng/mlであり、ヒト女性では、夜間のプロラクチン濃度の1SEMは、およそ3ng/mlと6ng/mlの間である。
【0025】
被験者のプロラクチンプロフィールは、24時間の期間の時点(好ましくは3時間間隔)での被験者由来の血液サンプルを集め、各血液のプロラクチン含有量をアッセイし、各サンプルからデータの点を生成するために、各サンプル内に存在するプロラクチン量に対する血液のサンプリング時間をプロットし、患者のプロラクチンプロフィールを形作るためデータの点をつなぐ(各点を通して曲線を合わせる)ことによって得られる。プロラクチンプロフィールの生成は、関連出願出願番号07/995,292と08/264,558に詳細が記述されている。
【0026】
プロラクチンプロフィールのベースラインは、好ましくは侵襲性介入前に、生成される。これが不可能な場合には、プロラクチンプロフィールは、介入後できるだけ早く、処置から30日以内、好ましくは10日以内に生成されるべきである。
【0027】
非バイパス侵襲性介入を経験した被験者の起こりうる再狭窄または胸部痛を予防するために、ドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物(例えばブロモクリプチン)を上記介入に続いて投与する。治療は実際、必要に応じて、介入より前に始めてもよい。後者の場合には治療は、介入に先立つ診断と同時に始めてもよい。
【0028】
「プロラクチン抑制化合物」は、直接または間接に被験者(ヒトを含む哺乳動物)内のプロラクチン分泌を阻害し、プロラクチンの枯渇を促進する物質を含むであろう。加えてこれらの化合物は、ドーパミンの活性を高めることが可能である。プロラクチン抑制化合物の非限定的な実施例は、ドーパミンと、一定の麦角関連性プロラクチン阻害化合物のような、ドーパミン増強化合物、ドーパミン作用剤(特にd2ドーパミン作用剤)を含む。
【0029】
d2ドーパミン作用剤の非限定的な実施例には、2-ブロモ-アルファ-エルゴクリプチン;6-メチル-8-ベータ-カルボベンジロキシ-アミノエチル-10-アルファ-エルゴリン;8-アシルアミノエルゴリン類、6-メチル-8-アルファ-(N-アシル)アミノ-9-エルゴリン;エルゴコルニン;9,10-ジヒドロエルゴコルニン;そしてD-2-ハロ-6-アルキル-8-置換エルゴリン類、例えばD-2-ブロモ-6-メチル-8-シアノメチルエルゴリン、がある。さらに、製薬学的に許容できる酸から形成されたプロラクチン阻害麦角関連性化合物の非毒性塩類もまた、本発明の実施に有用である。ブロモクリプチン、または2-ブロモ-アルファ-エルゴクリプチンは、本発明の実施に特に有用であるとわかった。
【0030】
もし非バイパス侵襲性介入を経験した被験者が、異常に低い夜間のプロラクチン濃度を示したら、プロラクチン促進剤(すなわち循環しているプロラクチンレベルを高める化合物)を投与する。この治療は、単独でも、プロラクチン抑制化合物の投与の付加物としても、そのような組み合わせが正当化された場合には、用いることが可能である、(すなわち、診断された被験者が、異常に高い昼間のプロラクチン濃度と、異常に低い夜間のプロラクチン濃度の両方を有する場合、または彼または彼女の昼間のプロラクチン濃度を減少するため、ドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物を用いた患者の治療により、夜間のプロラクチン濃度までも減少した場合)。重ねて、治療は介入に続いて直ちに始めるべきであるが、非バイパス侵襲性介入に先立つ診断と同時に始めてもよい。
【0031】
「プロラクチン促進剤」は、直接または間接にプロラクチンの分泌を刺激する、あるいはプロラクチンの除去を阻害する物質を含む。プロラクチン促進剤の非限定的な実施例には、プロラクチン;メラトニン;メトクロプラミド、ハロペリドール、ピモジド、フェノチアジン、ドンペリドン、スルピリド、そしてクロルプロマジンといったドーパミン拮抗剤;セロトニン作用剤(すなわちMAO阻害剤)、例えばパルギリン、合成モルフィネ類似体、メタドン;制吐剤、例えばメトクロプラミド、エストロゲン;そして様々な他のセロトニン作用剤、例えばトリプトファン、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)、フルオキシタン、そしてデクスフェンフルラミンを含む。さらに、製薬学的に許容できる酸から形成された上記プロラクチン促進化合物の非毒性塩類もまた、本発明の実施に有用である。メトクロプラミドは、本発明の実施に特に有用であるとわかった。
【0032】
「プロラクチン調節剤」とは、プロラクチン促進剤、プロラクチン抑制剤、またはその両方をいうであろう。
【0033】
治療中の哺乳動物では、一般的に、ドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物(例えば、ブロモクリプチン)、および/またはプロラクチン促進剤(例えば、メトロクロプラミド)の投薬は、別々に、それぞれ通常一日に一度与えられている。治療は少なくとも、介入によって傷ついた組織が治癒するまで、一般に6から24ヶ月続けるべきである。好ましいドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物(ブロモクリプチン)は、体重のkg.当たりおよそ3マイクログラムからおよそ200マイクログラム、好ましくはおよそ10マイクログラムからおよそ100マイクログラムの範囲にわたる、投薬濃度で毎日与えられる。そして、プロラクチン促進剤(例えば、メトロクロプラミド)は、一日につき体重のkg.当たりおよそ5マイクログラムからおよそ100マイクログラム、好ましくはおよそ10マイクログラムからおよそ50マイクログラムの範囲にわたる、投薬濃度で毎日与えられる。これにより、プロラクチン分泌プロフィールを修正したりあるいは改めたりする。これらの投薬は、サーカディアン血漿プロラクチンリズムをリセットするのに十分な期間継続する。
【0034】
治療中のヒトでは、ドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物(例えば、ブロモクリプチン)は、一般的に、体重のkg.当たりおよそ3マイクログラムからおよそ200マイクログラム、好ましくはおよそ10マイクログラムからおよそ100マイクログラムの範囲にわたる、投薬濃度で毎日与えられる。そして、プロラクチン促進剤たるメトロクロプラミドは、一日につき体重のkg.当たりおよそ5マイクログラムからおよそ100マイクログラム、好ましくはおよそ10マイクログラムからおよそ50マイクログラムの範囲にわたる、投薬濃度で毎日与えられる。
【0035】
上記治療(一つのまたは両方のタイプの薬剤を用いる)は、典型的には10日から普通約180日の範囲にわたる期間の間以上継続されるが、数年といったより長い期間継続してもよい。
【0036】
本発明を実施する上で、ドーパミン増強/プロラクチン抑制化合物、および/またはプロラクチン促進剤は、毎日患者に好ましくは経口で、あるいは皮下注射、静脈注射、または筋肉注射によって、投与される。各プロラクチン調節剤は、昼間のプロラクチン濃度を抑制するために、所定時間に、または一度以上の所定時間か回数で、一回または複数回投薬される。プロラクチン調節剤投与の量と回数は、必要であれば、その後に測定した被験者のプロラクチンプロフィール(または濃度)と、08/264,558に記述されている判定基準と指標基準に基づいて、調整してもよい。例えば、プロラクチン促進剤が、結果としてプロラクチン濃度を昼間高いままにしていたら、投与の量か回数あるいは両方を、これを避けるために調整するであろう。その目的は、対応する正常な濃度に似せるか近づけるために、異常な昼間の高いプロラクチン濃度を抑制すること、および/または異常に低い夜間の濃度を高めることである。治療の有効性の評価は、被験者の"鍵となる"プロラクチン濃度を対応する正常な濃度から差し引き(逆の場合も同じ)、その差異が2単位の平均の標準誤差を上回るどうかを測定することによってなされる。完全なプロラクチンプロフィールが生成されれば、この評価は、被験者のプロフィール上の任意の点と、正常なプロラクチン曲線上の対応する点の差異を求めるため差し引き、その差異が1SEMを上回るかどうかを測定することによってなされる;これの代わりに、評価は、被験者のプロフィールと正常なプロフィールの間の曲線下の領域の差異を比較することによってなされる。
【0037】
加えて、プロラクチンプロフィールまたは鍵となる濃度は、投与した調節剤のプロラクチン濃度を調整する効力を評価するために、治療の間定期的に測定する。好ましくは、上記測定を行って、上記プロフィールを治療の最初の三ヶ月間4週間毎に生成し、それからその後は24週間毎に生成する。
【0038】
以下の実施例が、範囲を限定することなく本発明を説明する。
【実施例】
【0039】
実施例1:平滑筋細胞増殖におけるブロモクリプチンの直接的影響
ラット平滑筋細胞(5×10)のin vitro調製物を、胎児子ウシ血清(2%)を加え、そしてプロラクチン、PDGF、またはプロラクチンプラスPDGFのいずれかを加えたDMEMで培養した。これらの培地調製物のそれぞれを、ブロモクリプチンの存在化と非存在化でインキュベートした。
【0040】
ブロモクリプチン(10−7から10−5M)を各培養物に加え、細胞を37℃で24時間インキュベートした。平滑筋細胞の増殖を、3H-チミジンの取り込みで評価し、コントロール(ブロモクリプチンを加えていないもの)と比較した。
【0041】
結果は以下の通りであった:
【0042】
10−7Mの投与量のブロモクリプチンでは、胎児子ウシ血清が平滑筋細胞増殖を刺激するのを阻害し、10−5Mの投与量では、プロラクチン、PDGF、またはプロラクチンプラスPDGFが平滑筋細胞増殖を刺激するのを30-50%だけ阻害した。
【0043】
本実験は、ブロモクリプチンが動脈壁平滑筋細胞増殖に対する直接的阻害効果をもつことを示す。理論的に裏付けられてはいないけれども、ブロモクリプチンは、Ca++の流入をブロックし、プロテインキナーゼCの活性を阻害し、あるいは、部分的に、細胞表面のD受容体に結合することにより、細胞内濃度(すなわち、平滑筋細胞に直接的に)に作用すると、発明者らは考えている。この直接的効果は、プロラクチン濃度を減少させるというブロモクリプチンの効力に加えて、そしてそれとは独立なものであり、再狭窄の予防というブロモクリプチンの効力に貢献する要素であると考えられる。
【0044】
実施例2:再狭窄予防と胸部痛排除のヒトのケーススタディ
被験者SC(42歳、180ポンド)は、徴候と心電図に基づいて診断された急性下壁心筋梗塞を被っていた。彼はTPAを用いて治療を受け、八日後、血管造影図が実施され、それにより左回旋動脈に99%の狭窄、左冠状動脈に50%の狭窄を伴う並みからひどいアテローム性動脈硬化症が示された。
【0045】
それから二日後PTCAが実行され、それにより血管造影で測定したところ、回旋動脈のもともとの側面積の約80%まで(すなわち、PTCA後の狭窄は20%)回旋動脈の管腔が再び開いた。
【0046】
PTCA後の血管造影の一週間後、タリウムストレス試験が実行され、それにより傷んだ箇所への血流が確認されたが、試験内で約九分の心電図異常という結果になった。その異常は、梗塞とは遠方の傷んだ心臓部と結びついていた。
【0047】
血漿脂質分析では、トリグリセリド濃度(約400ng/dl)と全コレステロール濃度(約250ng/dl)の上昇が示された。被験者に、カルジザム(Cardizam)30mg/日、メバコール(Mevacor)(40mg/日)とアスピリン(325mg/日)を投薬した。
【0048】
投薬の開始から二週間は、トリグリセリドとコレステロール濃度に重大な変化はみられなかったが、被験者が、緩やかな運動(1/2マイルの歩行)に誘発される胸部痛を経験し始めた。続く二週間で胸部痛は増し、このため運動を中止した。寒い気候もひどい胸部痛を誘発した。そこで、プロラクチンプロフィールが08:00-21:00の期間の間プロラクチン濃度の高まりを示した後、被験者に、ブロモクリプチン(08:00に1.25mg/日)とメトクロプラミド(23:00に5mg/日)を投与した。
【0049】
プロラクチン調節治療の開始後、胸部痛は急速にひいた。四週間後、ブロモクリプチン投与量を2.5mg/日に増加した。さらに六ヶ月後、全コレステロールは60%まで減少し、トリグリセリドは変化しなかった。昼間のプロラクチン濃度もまた50%まで抑制された。この時時期実行されたタリウムストレス試験とECGによると、PTCA後のECGと比較して血流の減少が示されず、そしてECG異常の前の時間周期が、わずかに増大した(9分から11.5分に)のが明らかであった。ストレス試験の間、胸部痛は全く経験されなかった。寒い気候に誘発される胸部痛もなくなった。被験者は、その健康状態に何の変化もなく、2.5年間プロラクチン調節治療を続けている。
【0050】
このケーススタディは、プロラクチン調節剤が胸部痛の抑制あるいは除去と、再狭窄の予防に有益な効果があることを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、ヒトの正常なまたは健康なプロラクチンプロフィールを表す。曲線"a"は健康な男性のプロフィールを、曲線"b"は健康な女性のプロフィールを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)経皮経管冠状動脈形成術、(ii)アテローム切除術、(iii)動脈内膜切除術から成るグループより選択された非バイパス侵襲性介入を受けた、哺乳動物における再狭窄の予防または制限のための、プロラクチン抑制化合物を含む試薬であって、
第一の所定時間に上記哺乳動物に毎日投与し、上記試薬の投与時間及び量が昼間の時間07:00-22:00の全部か一部の間の上記哺乳動物の血液プロラクチン濃度を抑制するために選択される、試薬。
【請求項2】
侵襲性介入に起こりやすい血管の傷害を治癒することを可能にするのに少なくとも十分な期間投与される、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
一年以上に亘る期間で投与される、請求項1または2に記載の試薬。
【請求項4】
一回の投与で投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項5】
複数回の投与で投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項6】
上記プロラクチン抑制化合物がブロモクリプチンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項7】
ブロモクリプチンの量が0.2から15mgの範囲である、請求項6に記載の試薬。
【請求項8】
ブロモクリプチンの量が0.8から8.0mgの範囲である、請求項7に記載の試薬。
【請求項9】
プロラクチン促進化合物を含む別の試薬を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の試薬を含むキット。
【請求項10】
上記プロラクチン促進化合物がメトクロプラミドである、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
メトクロプラミドの量が0.5から5.0mgの範囲である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
メトクロプラミドの量が0.5から2.0mgの範囲である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
(i)経皮経管冠状動脈形成術、(ii)アテローム切除術、(iii)動脈内膜切除術から成るグループより選択された非バイパス侵襲性介入を受けた、哺乳動物内の狭心症または一過性黒内障の抑制または除去のための、プロラクチン抑制化合物を含む試薬であって、
第一の所定時間に上記哺乳動物に毎日投与し、上記試薬の投与時間及び量が昼間の時間07:00-22:00の全部か一部の間の上記哺乳動物の血液プロラクチン濃度を抑制するために選択される、試薬。
【請求項14】
上記プロラクチン抑制化合物が、2-ブロモ-アルファ-エルゴクリプチン;6-メチル-8-ベータ-カルボベンジロキシ-アミノエチル-10-アルファ-エルゴリン;8-アシルアミノエルゴリン類、6-メチル-8-アルファ-(N-アシル)アミノ-9-エルゴリン;6-メチル-8-アルファ-(N-フェニル-アセチル)アミノ-9-エルゴリン;エルゴコルニン;9,10-ジヒドロエルゴコルニン;及びD-2-ハロ-6-アルキル-8-置換エルゴリン類から必須に成るグループから選択される請求項1から5及び13のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項15】
上記プロラクチン抑制化合物が、エルゴット関連D2ドーパミン作用剤である請求項1から5及び13のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項16】
上記プロラクチン促進化合物が、プロラクチン;メラトニン;ドーパミン拮抗剤;セロトニン作用剤;制吐剤;及びエストロゲンから必須に成るグループから選択される請求項9に記載のキット。
【請求項17】
上記ドーパミン拮抗剤が、メトクロプラミド、ハロペリドール、ピモジド、フェノチアジン、ドンペリドン、スルピリド、またはクロルプロマジンである請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記セロトニン作用剤が、パルギリン、合成モルフィネ類似体、メタドン、トリプトファン、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)、フルオキシタン、またはデクスフェンフルラミンである請求項16に記載のキット。

【図1】
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【公開番号】特開2007−182447(P2007−182447A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39648(P2007−39648)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【分割の表示】特願平8−536827の分割
【原出願日】平成8年5月30日(1996.5.30)
【出願人】(507022123)
【Fターム(参考)】