説明

非ピクセル型ガンマ検出器用の較正マップを生成するシステム及び方法

【課題】非ピクセル型ガンマ検出器の再較正時間を短縮する較正方法を提供する。
【解決手段】方法100は、参照放射性同位体で得られる直線性較正マップ及び一様性較正マップを決定するステップ102と、放出される放射線エネルギーの異なるもう一つの放射性同位体で得られる直線性較正マップ及び一様性較正マップを決定するステップ104とを含み、デルタ・マップが、上記ステップ102及び104で得られた較正マップに基づいて算出される。再較正時には、参照放射性同位体の新たな較正マップが決定されるが、もう一つの放射性同位体で得られる較正マップはデルタ・マップに基づいて作成し、較正に必要な時間を短縮することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書に開示される主題は、ガンマ・カメラに関し、さらに具体的には、非ピクセル型ガンマ・カメラ用の直線性マップ及び一様性マップを算出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非ピクセル型ガンマ・カメラは典型的には、ヨウ化ナトリウム(NaI)から形成される単結晶シンチレータを含んでいる。ガンマ事象時には、この結晶からの発光が光電子増倍管(PMT)のアレイによって検出されて信号を発生し、この信号をコンピュータによって積算して事象の位置及び合計エネルギを決定する。しかしながら、この信号は典型的には、PMTアレイの曲率応答及びPMT同士の間の間隙のため非直線となる。このようなものとして、検出される事象位置は実際の事象位置から変動し、これにより、補正を行なわなければこの信号から作成される画像の品質が劣化する。
【0003】
事象位置を補正するために、画像データに較正マップが適用される。様々な形式のマップを用いることができる。エネルギ・マップは、測定されたエネルギを実際のエネルギへ変換する。直線性マップは、測定された位置を実際の位置へ変換する。一様性マップは、補正係数を適用して画像を平滑化する又は平坦化することにより検出器の不完全性又は非一様性を補正する。典型的には、これらのマップは、初期較正時に複数の放射性同位体の各々について作成されて、後に行なわれるカメラの較正のためにコンピュータに記憶され、特定のカメラ又はシステムに特有のものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7819581号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラが経年変化してPMTの交換を含めた修理を受けると、これらのマップが正確でなくなる。例えば、マップの不正確さによって、直線が曲線として検出されたり、放射性同位体の放出ピークにずれが生じたりする場合がある。従って、現場作業員は、カメラによって検出されるべき各々の放射性同位体毎にカメラを再較正しなければならない。かかる再較正にはかなりの量の時間が掛かる。また、カメラによって検出され得る放射性同位体の各々毎にデータを取得することはしばしば困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態において、非ピクセル型ガンマ検出器用の較正マップを与える方法が提供され、この方法は、非ピクセル型ガンマ検出器について、参照放射性同位体についての較正マップを決定するステップと、参照放射性同位体の較正マップに、もう一つの放射性同位体に対応するデルタ・マップを適用することにより、このもう一つの放射性同位体についての較正マップを作成するステップとを含んでいる。デルタ・マップは、参照放射性同位体と他の放射性同位体との間の関係に基づく。
【0007】
他の様々な実施形態では、非ピクセル型ガンマ検出器用の少なくとも一つのデルタ・マップを作成する方法が提供され、この方法は、参照放射性同位体の少なくとも一つの較正マップを決定するステップと、もう一つの放射性同位体の少なくとも一つの較正マップを決定するステップとを含んでいる。次いで、参照放射性同位体の較正マップと他の放射性同位体の較正マップとの間の関係に基づいてデルタ・マップを算出する。
【0008】
さらに他の様々な実施形態では、非ピクセル型ガンマ検出器用の較正マップを与える較正モジュールが提供され、この較正モジュールは、非ピクセル型ガンマ検出器について、参照放射性同位体についての較正マップを決定するように構成されている。次いで、参照放射性同位体の較正マップに、もう一つの放射性同位体に対応するデルタ・マップを適用することにより、このもう一つの放射性同位体についての較正マップを作成し、デルタ・マップは、参照放射性同位体ともう一つの放射性同位体との間の関係に基づく。
【0009】
他の様々な実施形態では、複数の放射性同位体について、着脱式コリメータを有する核医学カメラのための一様性補正の方法が提供される。この方法はコリメータ一様性を算出するステップを含んでおり、このステップは、参照放射性同位体線源を用いて、コリメータを検出器から取り外した状態で、参照エネルギにおける核医学カメラ検出器の参照固有一様性を測定し、参照放射性同位体一様線源(flood source)を用いて、コリメータを検出器に設置した状態で、参照エネルギにおける核医学カメラ検出器の参照複合一様性を測定して、測定された複合一様性を測定された固有一様性で除算することによりコリメータについてのコリメータ一様性を算出することにより行なわれる。この方法はまた、第二の放射性同位体線源を用いて、コリメータを検出器から取り外した状態で、第二のエネルギにおける核医学カメラ検出器の第二の固有一様性を測定するステップを含んでいる。測定された第二の固有一様性を算出されたコリメータ一様性と乗算することにより、第二のエネルギの場合にこのコリメータについての第二の複合一様性を算出する。次いで、コリメータが設置されているときに第二の放射性同位体のエネルギ範囲において核医学カメラ検出器によって取得される画像を、算出された第二の複合一様性を用いて補正する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】様々な実施形態による較正マップを生成する方法を示す流れ図である。
【図2】様々な実施形態による較正マップを生成するもう一つの方法を示す流れ図である。
【図3】図1及び図2の方法を具現化し得るイメージング・システムの概略ブロック図である。
【図4】図1の方法の較正結果を示す画像の図である。
【図5】標準的な較正の後に取得される例示的な画像の図である。
【図6】光学機械的な変化の後に取得される例示的な画像の図である。
【図7】様々な実施形態の直線性及び一様性較正手順を適用した後に取得される例示的な画像の図である。
【図8】様々な実施形態による較正マップを生成する方法を示すブロック図である。
【図9】他の様々な実施形態による較正マップを生成する方法を示すもう一つのブロック図である。
【図10】複数の例示的な放射性同位体についてのピーク・エネルギを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以上の概要及び以下の幾つかの実施形態の詳細な説明は、添付図面と併せて読むとさらに十分に理解されよう。図面が様々な実施形態の機能ブロックの線図を示す範囲までにおいて、機能ブロックは必ずしもハードウェア・サーキットリの間の区分を示す訳ではない。従って、例えば、機能ブロックの1又は複数(例えばプロセッサ又はメモリ)が、単体のハードウェア(例えば汎用信号プロセッサ若しくはランダム・アクセス・メモリ、又はハードディスク等)として具現化されてもよいし、多数のハードウェアとして具現化されてもよい。同様に、プログラムは独立型プログラムであってもよいし、オペレーティング・システムのサブルーチンとして組み込まれていてもよいし、インストールされているソフトウェア・パッケージの機能等であってもよい。尚、様々な実施形態は図面に示されている構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【0012】
本書で用いる場合には、単数形で記載されており単数不定冠詞を冠した要素またはステップという用語は、排除を明記していない限りかかる要素又はステップを複数備えることを排除しないものと理解されたい。さらに、「一実施形態」に対する参照は、所載の特徴を同様に組み入れている追加の実施形態の存在を排除しないものと解釈されたい。また、反対に明記されていない限り、特定の特性を有する一つの要素若しくは複数の要素を「含んでいる(comprising)」又は「有している(having)」実施形態は、この特性を有しないような追加の要素も包含し得る。
【0013】
また、本書で用いられる「画像を再構成する」との表現は、画像を表わすデータが生成されるが可視画像は形成されないような実施形態を排除するものではない。従って、本書で用いられる「画像」との用語は、可視画像及び可視画像を表わすデータの両方を広く指す。但し、多くの実施形態は少なくとも1枚の可視画像を形成する又は形成するように構成されている。
【0014】
図1及び図2にそれぞれ示す方法100及び200は、様々な実施形態に従って非ピクセル型ガンマ検出器を較正するための較正マップの生成を行なう。本書に記載される較正方法に用いられる画像情報は、例えば図3に示すようなイメージング・システム250によって取得され得る。イメージング・システム250は、中央開口254を有する一対の検出器252のような1又は複数の検出器を含んでいる。開口254は、患者256のような対象を内部に収容するように構成されている。検出器252は非ピクセル型検出器である。非ピクセル型検出器252は、単光子放出計算機式断層写真法(SPECT)画像データを取得するように構成され得る。検出器252は、ヨウ化ナトリウム(NaI)又は他の適当な材料から形成され得る。様々な実施形態において、複数の光電子増倍管(PMT)258が検出器252と共に設けられている。
《直線性補正》
イメージング・システム250はまた、方法100(図1に示す)及び方法200(図2に示す)を含め、較正マップを生成する様々な実施形態を具現化する較正モジュール262を含んでいる。明確に述べると、図1に示す方法100を用いて直線性マップを生成し、図2に示す方法200を用いて一様性マップを生成する。較正モジュール262は、イメージング・システム250に結合されているプロセッサ264(例えばワークステーション)と関連して具現化されてもよいしプロセッサ264に搭載されて具現化されていてもよい。選択随意で、較正モジュール262は、プロセッサ264に結合されている又はプロセッサ264に設置(インストール)されているモジュール又は装置として具現化され得る。動作時には、1又は複数の画像データセット266であり得る検出器252からの出力が較正モジュール262へ送信される。較正モジュール262は、較正マップを生成し且つ/又は利用して、検出器252に関係する雑音を識別して除去した後に、取得された画像データセット266から補正済み画像268を形成する。さらに明確に述べると、この実施形態の例では、較正モジュール262は、直線性マップ、一様性マップ、及び/又はエネルギ・マップの一つを生成し、次いで、これらのマップを用いて補正済み画像268を形成する。較正モジュール262は、画像データセット266を受け取るように結合されている又は構成されている任意のコンピュータにインストールされた一組の命令又はアルゴリズムとして具現化されてよく、コンピュータは、例えばイメージング・システム250に結合されて該システム250の動作を制御するワークステーションである。
【0015】
以下の議論において、「統合(integration)」との用語は、製造施設においてカメラ又は検出器を構築する工程、及び当該検出器の初期較正の工程を一般に指す。場合によっては、大きな修理の後に、統合工程が現場で繰り返される。しかしながら、通常動作では、製品寿命にわたって較正の更新のみが必要とされる。尚、統合工程及び更新工程にはかなりの時間、労力及び経費が費やされ、これらの時間、労力及び経費を単純化して縮小すると有利であることを特記しておく。場合によっては、例えば幾つかの放射性同位体が手近にないときに又は時間の節約のために、較正ステップの幾つかを実行しないことにより較正精度(従って画質)を代償にすることがある。本発明の実施形態の幾つかの目的は、較正精度を低下させずに(又は最小限にしか低下させずに)統合工程又は較正工程を短縮する改善された較正工程を提供することにある。図1を詳細に参照すると、方法100は、ブロック102において較正モジュール262を用いて参照放射性同位体(本書では基底放射性同位体とも呼ぶ)の統合直線性マップを決定するステップを含んでいる。この実施形態の例では、参照放射性同位体はテクネチウムである。但し、当業者には認められるように、他の放射性同位体、例えばコバルト又はバリウムを参照放射性同位体として用いてもよい。本書で「統合」について言及するときには、この用語はイメージング・システムの製造、組み立て又は初期設置時に実行される工程を一般に指す。
【0016】
直線性マップは、直線性マップを生成する公知の適当な方法を用いて作成され、放射性同位体の各々毎に1又は複数のエネルギ・ピークについて作成される。明確に述べると、幾つかの実施形態では、直線性マップは穿孔ファントムを撮像することにより作成され、この穿孔ファントムは、検出器の感受表面に隣接して配置される二次元配列を成す孔を有する平坦な鉛シートから形成され、検出器の表面から一定の距離において検出器の表面の中心に位置する放射性同位体線源(例えば参照放射性同位体)からの実質的に一様で殆ど平行なガンマ放射線に曝露される。代替的には、直線性マップは、検出器の一つの次元に平行になるように配置された細い平行なスリットの配列を有するファントムを先ず撮像し、次いでこの初回の撮像時の方向に直交するように配置された細い平行なスリットの配列を有するファントムを撮像することにより作成され得る。
【0017】
取得画像をファントムの既知の孔(又はスリット)位置と比較することにより、直線性補正マップを作成することができる。直線性補正マップは、特定の検出器の全体的な構築及び特有のばらつきに起因する検出器に関係する系統的歪み及び偶発的歪みの補正を可能にする。直線性マップは、各々の検出事象を、測定されるPMT信号から算出された(例えばAnger型アルゴリズム又は他のアルゴリズムによって)「測定位置」から、ガンマ・フォトンが2D検出器表面に吸収された推定される真の位置である「補正済み位置」にマッピングすることを可能にする。尚、一般的には、直線性マップは特定のエネルギ窓において動作するときの特定の検出器幾何学的構成に特有のものであることを特記しておく。
【0018】
直線性ファントムの1又は複数の画像を用いて直線性マップを作成し、後にこの直線性マップを用いて、測定された放出事象の位置と実際の事象の位置との間の差に基づいて画像歪みを補償する。直線性マップは、補正済み又は補償済み画像を形成するために画像に適用される1又は複数の行列の形態として与えられ得る。
【0019】
未補正画像の歪みが解析される場合には、歪みに対する第一の主な寄与は検出器の実際の物理的構築に関係する。この歪みは、PMTの位置、NaI結晶の厚み、PMTの形式及び寸法、並びに検出器に用いられているガラス窓の厚み等のようなパラメータによって生じ、また影響される。この歪みは同じ形式の全ての検出器に共通であって、エネルギにも特定の検出器にも独立である。この一次の歪みをD1(x,y)と表現することができる。
【0020】
二次の歪みはフォトン・エネルギに関係する。歪みのエネルギ依存性の根本的原因は、高いエネルギにあるフォトンほど検出器の深くに進入する可能性が高く、PMTの間での光分布が深さ依存型であることにある。エネルギ関係のばらつきは同じ形式の全ての検出器に共通であり、エネルギにおいて近似的に線形である。例えば、エネルギE0でのマップを作成し、このマップを用いてE′=E0+dEにおいて測定された画像を補正する場合に、補正済み画像には何らかの歪みD2(x,y)が観測される。この歪みの線形性から、d2(x,y)を検出器形式に特有の関数であるとするとD2(x,y)=dE*d2(x,y)が得られる。
【0021】
様々な実施形態によれば、少なくとも二つの異なるエネルギにおいて同じ形式の複数の検出器からの線形性画像を測定することにより、第一及び第二の形式の歪みを特性決定することができる。
【0022】
第三の形式の歪みD3{i}(x,y)は、各々の特定の検出器iに特有であって、当該検出器の構成要素及び構築に関係付けられる。例えば、全てのPMTが同じ利得、同じPMTの位置の許容範囲を有する訳ではないこと、特定のPMTはPMT面にわたって一様でない光感度を有し得ること、及びPMTと境界面を接するのに用いられる光学定数(optical index)整合グリースの欠陥等に関係付けられる。第三の歪みはエネルギにも依存し得るが、この検出器特有のエネルギ歪み(D4{I,dE}(x,y))は低次の変化を有するものであるため無視してよい。
【0023】
エネルギE′=E0+dEにおける特定の検出器iの歪みは次式のように近似される。
【0024】
Distortion{i, E' = E + dE}(x, y)
~ D1(x, y) + dE * d2(x, y) + D3{i}(x, y) + D4{i, dE}(x, y)
~ D1(x, y) + dE * d2(x, y) + D3{i}(x, y)
式中、D4{i,dE}(x,y)は無視される。
【0025】
この歪み解析から、二つの異なるエネルギすなわちE′=E0+dE及びE0において同じ検出器iから作成される直線性マップ同士を減算することにより、ベクトル型デルタ・マップ(Delta{i,E′(x,y)}が得られることは明らかであり、すなわち、
Delta{i, E'}(x, y) = Distortion{i, E' = E0 + dE}(x, y) - Distortion{i, E0}(x, y) =>
~ D1(x, y) + dE * d2(x, y) + D3{i}(x, y) - D1(x, y) + D3{i}(x, y)
~ dE * d2(x, y)
である。従って、
Delta{i, E'}(x, y) = dE * d2(x, y) + 無視可能な四次補正
となる。
【0026】
従って、図1へ戻り、ブロック104において、少なくとも一つの他のエネルギ、例えばもう一つの放射性同位体(放射性同位体A)のエネルギについての統合直線性マップが作成される。次いで、ブロック106では、上述の参照放射性同位体の統合直線性マップと放射性同位体Aの統合直線性マップとの間の関係に基づいてデルタ・マップ又は差マップを作成する。この実施形態の例では、直線性マップは、放射性同位体Aの特定のピーク・エネルギについて作成される。他の実施形態では、放射性同位体Aの各々のピーク・エネルギ毎に直線性マップを作成してもよい。例えば、図10に示すように、テクネチウムは約140.5keVに単一の大きいエネルギ・ピークを有するが、タリウム及びガリウムのような他の放射性同位体は単一よりも多い大きいエネルギ・ピークを有する。
【0027】
尚、デルタ・マップを算出する最初のステップ(統合工程)は典型的には、例えば初期較正工程時に検出器の製造地及び/又は試験地において行なわれ、試作品について1回測定され又はシミュレーションによって算出され得ることを特記しておく。様々な実施形態において、デルタ・マップは、放射性同位体Aの統合直線性マップから参照放射性同位体の統合直線性マップを減算することにより算出される。この差の計算は次式に基づいて行なわれ得る。
【0028】
Del_isotope A = linearity_map_Isotope A - linearity_map_Ref
式中、Del_isotope Aは一つの直線性マップ(参照放射性同位体に対応する)からもう一つの直線性マップ(放射性同位体Aに対応する)への変換のためのデルタ・マップであり、linearity_map_Isotope Aは、初期較正時の放射性同位体Aの統合直線性マップであり、linearity_map_Refは、初期較正時の参照放射性同位体の統合直線性マップである。
【0029】
尚、様々な実施形態において、デルタ・マップはX係数及びY係数を含む行列から成ることを特記しておく。従って、減算工程は、行列の各々の要素毎に別個に実行される。例えば、上にさらに詳細に記載されているように、参照放射性同位体直線性マップのX係数は放射性同位体A直線性マップのX係数から減算され、参照放射性同位体直線性マップのY係数は放射性同位体A直線性マップのY係数から減算される。
【0030】
次いで、ブロック108において、デルタ・マップをイメージング・システム250に関連して例えばイメージング・システム250のメモリの内部に記憶させる。他の実施形態では、デルタ・マップはイメージング・システム250と共に用いられるソフトウェアに記憶されてもよい。すると、このデルタ・マップを用いて、イメージング・システム250の検出器又は同様の検出器幾何学的構成を有するイメージング・システムのような他のイメージング・システムの検出器を再較正することができる。再較正時には、再較正直線性マップはブロック110において参照放射性同位体について決定されるだけでよい(他の放射性同位体については決定されなくてよい)。従って、例えば現場での再較正時に、ステップ112において次式を用いて参照放射性同位体の再較正直線性マップにデルタ・マップを加算する(例えば行列加算工程において)ことができる。
【0031】
Isotope_A_recal_linearity_map = Ref_recal_linearity_map + Del_isotope A
式中、Isotope_A_recal_linearity_mapは放射性同位体Aの再較正直線性マップであり、Ref_recal_linearity_mapは参照放射性同位体の再較正直線性マップであり、Del_isotope Aは参照放射性同位体の直線性を放射性同位体Aの直線性マップへ変換するためのデルタ・マップである。
【0032】
幾つかの実施形態では、本書においてさらに詳細に記載されるように、平均デルタ・マップ関数(〈Delta{E′}(x,y)〉)を数個(N個)の検出器について算出して、(N個の)検出器の任意のものと共に利用可能な放射性同位体Aについての平均デルタ・マップを与えることができ、(〈Delta{E′}(x,y)〉)は次のように定義される。
【0033】
<Delta{E'}(x, y)> =
[Delta{1, E'}(x, y) + Delta{2, E'}(x, y) + ... + Delta{N, E'}(x, y)] / N ~
dE * d2(x, y)
式中、無視可能な四次補正の効果は、殆ど完全に「平均によって消去(averaged out)」される。加えて、存在する統計学的雑音も減少する。
【0034】
尚、「平均」〈Delta{E′}(x,y)〉は、特定の基底エネルギ「E0」に関係付けられることを特記しておく。従って、かかる幾つかの関数を、異なる参照エネルギE0から開始して定義することができる。例えば、エネルギのスパンが極めて大きいカメラは2以上の参照エネルギにおいて較正されることができ、これらの較正の各々が異なるエネルギ範囲において用いられる。
【0035】
加えて、「平均」〈Delta{E′}(x,y)〉は特定のエネルギ差「dE」にも関係付けられることを特記しておく。従って、かかる幾つかの関数を、同じ参照エネルギE0であるが異なるdEから開始して定義することができる。例えば、エネルギのスパンが参照エネルギE0の上下にあるカメラは、二つの異なるDelta{E′}(x,y)を用いて較正されることができ、すなわち、
・E0に関して負のdEにおいて算出され、E0よりも低いエネルギについて用いられるNegDelta{E′}(x,y)、及び
・E0に関して正のdEにおいて算出され、E0よりも高いエネルギについて用いられるPosDelta{E′}(x,y)
を用いて較正され得る。一旦、
<d2(x, y)> = <Delta{E' = E0 + dE}(x, y)> / dE
から平均〈d2(x,y)〉が求まったら、他の任意のエネルギでの較正を、
<Delta{E' = E0 + dE'}(x, y)> = dE' * <d2(x, y)>
によって得ることができることを特記しておく。このように、今まで測定されたことのないエネルギを含めた任意のエネルギを補正することができる。
【0036】
〈Delta{E′}(x,y)〉の計算は、例えば製造施設において製造時に通常業務として較正された多数の検出器のデータベースを用いて実行される。従って、エネルギEにおける新たな検出器kの基底直線性のみを測定することにより、この検出器の歪み(Distortion{k,E}(x,y))を構築することができる。すなわち、
Distortion{k, E0}(x, y) ~ D1(x, y) + D3{k}(x, y)
となる。
【0037】
次いで、この新たな検出器について、複数の放射性同位体又はエネルギ・レベルの各々についての測定を行なわずに、新たなエネルギE′=E0+dEを
Distortion{k, E'}(x, y) ~ Distortion{k, E0}(x, y) + <Delta{E'}(x, y)>
~ D1(x, y) + D3{k}(x, y) + dE * d2(x, y)
によって定義してエネルギ・マップを近似することができる。
【0038】
このようなものとして、例えば欠陥PMTを交換する又は他の構成要素を交換することにより検出器kを修理するときに、この検出器を新たなk′検出器として扱うことができる。このように、主たる変化は、項D3{k}(x,y)から項D3{k′}(x,y)への変化となるものと仮定することができる。
【0039】
このように、直線性マップを一つのみのエネルギE0について
Distortion{k', E0}(x, y)
によって測定して、全ての他のエネルギE′についての直線性マップを
a.Distortion{k', E'}(x, y) ~ Distortion{k', E0}(x, y) + <Delta{E'}(x, y)>
又は
b.Distortion{k', E'}(x, y) ~ Distortion{k', E0}(x, y) + Delta{k, E'}(x, y)
の何れかによって構築することにより、新たな検出器を再較正することができる。
【0040】
尚、この較正及び再較正は、幾つかのエネルギE0及びE′について実行され得ることを特記しておく。一般的には、様々な実施形態において、エネルギE′マップの推定は、E0とは大幅には異ならないエネルギE0(又は数学的に表現するとE′〜E0)において測定される基底マップから実行される。このように、基底マップ及びデルタ・マップは、一つ又は二つのエネルギ範囲について作成され得る。従って、DEをdEと等しくないとして、新たなエネルギE″=E0+DEにおける検出器kについての直線性マップを作成するために、マップDistortion{k,E″}(x,y)を
Distortion{k, E"}(x, y) ~ Distortion{k, E0}(x, y) + DE * <Delta{E'}(x, y) / dE>
= D1(x, y) + D3{i}(x, y) + DE * d2(x, y)
によって近似することができる。
【0041】
様々な実施形態における基底マップ及び対応するデルタ・マップは、容易に得られる放射性同位体、例えば病院において広く入手可能なTcのエネルギにおいて取得されるように選択される。
【0042】
従って、図1へ戻り、デルタ・マップが二つの放射性同位体(参照放射性同位体A及び放射性同位体B)について既知であり、デルタ・マップが放射性同位体A又はB以外のもう一つの放射性同位体(放射性同位体C)について要求される又は望まれる場合に、放射性同位体Cの直線性マップを変換するためのデルタ・マップは、ブロック114において放射性同位体A及びBに関係付けられるデルタ・マップから補間によって求められる。明確に述べると、図10の表700を参照すると、放射性同位体Cが参照番号702に示すようにタリウム(Tl)であり、ピーク・エネルギ・レベルが参照番号706に示すように放射性同位体Aのピーク・エネルギ・レベル(Amの59.5keV)と参照放射性同位体のピーク・エネルギ・レベル(Tcの140.5keV)との間に位置する70.8keVである場合に、放射性同位体Cに関係付けられるデルタ・マップは次式を用いて作成される。
【0043】
Del_Isotope_C = Ref_map(x, y)
+ F(E - ERef, del_isotope_A(x, y), del_isotope_B(x, y))
式中、Del_Isotope_Cは、特定のピーク・エネルギ70.8keV(図10を参照されたい)にある放射性同位体Cの直線性マップを変換するためのデルタ・マップであり、del_isotope_A及びdel_isotope_Bは二つの放射性同位体A及びBを変換するためのデルタ・マップであり、Ref_map(x, y)は参照放射性同位体の直線性マップであり、Fは、放射性同位体Aの特定のエネルギ(59.5keV)及び放射性同位体Bの特定のエネルギ(356.0keV)(図10を参照されたい)にある既知のデルタ・マップdel_isotope_A及びdel_isotope_Bを補間する補間関数である。
【0044】
放射性同位体A、B及びCの特定のピーク・エネルギの間の線形関係に基づいて、放射性同位体Cの直線性マップを変換するためのデルタ・マップは、放射性同位体A及びBから一次補間によって求められ得る。他の実施形態では、補間は三次であっても四次であってもよい。従って、二つの放射性同位体すなわち放射性同位体A及びBのみの直線性マップを変換するデルタ・マップは、初期較正時に若しくは試作品について、又はシミュレーションを用いて算出される必要があり、これらのデルタ・マップのみをイメージング・システムに記憶させる。次いで、ブロック116において、放射性同位体Cのデルタ・マップを参照放射性同位体の新たな直線性マップに加算することにより実行中に(on the fly)又は再較正地において、放射性同位体Cの直線性マップが算出される。
【0045】
もう一つの例として、Tc99m(140keV)、Am241(59.5keV)、及びBa133(356keVピーク)(図10を参照されたい)について工場で基底直線性マップを測定して平均することができる。すると、二つのデルタ・マップ
<Delta(Tc => Am)> = <Distortion(59.5) - Distortion(140)>、及び
<Delta(Tc => Ba)> = <Distortion(356) - Distortion(140)>
が作成される。
【0046】
再較正時に、93.3、184.6及び300.2にピークを有するGa67(図10を参照されたい)について、新たな検出器kの新たなマップを作成する。各々のエネルギ・ピークが別個のマップに関連付けられる。先ず、マップDistortion{k,140}が測定される。すると、
Distortion{k, 93.3} =
Distortion{k, 140} + <Delta(Tc => Am)> * (140 - 93.3) / (140 - 59.5)、
Distortion{k, 184.6} =
Distortion{k, 140} + <Delta(Tc => Ba)> * (140 - 184.6) / (140 - 356)、及び
Distortion{k, 300.2} =
Distortion{k, 140} + <Delta(Tc => Ba)> * (140 - 300.2) / (140 - 356)
が得られる。
【0047】
他の実施形態では、複数の放射性同位体A1〜ANの各々についてデルタ・マップを算出して、各々のマップをシステムに記憶させることができる。従って、補間を用いるのではなく、各々のマップを用いてブロック112においてこれらの放射性同位体の各々についてシステムを再較正することができる。
【0048】
好適実施形態では、直線性補正は、各々の事象について当該事象のエネルギEmに依存して実行される。この実施形態によれば、処理されるべき各々の事象について、参照エネルギE0からのエネルギ差はdEm=Em−E0と算出される。事象位置歪みは、
Distortion{E}(x, y) = Distortion{E0}(x, y) + dEm * <d2(x, y)>
と算出される。この場合には、〈d2(x,y)〉(及び選択随意でE0)は、Emが位置する範囲によって選択され得る。
【0049】
幾つかの実施形態では、〈d2(x,y)〉自体をエネルギの関数として補間によって求めてもよい。これらの実施形態では、〈d2(x,y)〉についての幾つかの測定が、参照エネルギE0からの様々なエネルギ差において実行される。放物線近似(又は他の近似)を当技術分野で公知のように用いて歪みをフィッティングして、例えば
Distortion{E}(x, y) = Distortion{E0}(x, y) + dEm * <d2'(x, y)> + dEm^2 * <d2"(x, y)>
と表現することができる。
《一様性補正》
方法200(図2に示す)を参照して述べると、ブロック202においてデルタ・マップを算出して、決定された参照放射性同位体の統合一様性マップに基づいて検出器の一様性マップ又は感度マップを生成することができる。また、ブロック204において、少なくとも一つの他の放射性同位体(放射性同位体A)についての統合一様性マップを算出する。一様性マップは一般的には、特定の検出器、特定のコリメータ、及び特定のエネルギ窓に関係付けられる。
【0050】
感度マップS{コリメータ=C、検出器=D、エネルギ=E}(x,y)は、
S{C, D, E}(x, y) = C{C}(x, y) * s{D, E}(x, y)
のように構成されるものと仮定される。式中、C{C}(x,y)はコリメータ感度関数(僅かな程度まででエネルギ依存性である)であり、s{D,E}(x,y)は結晶の固有感度関数であってエネルギ依存性である。
【0051】
様々な実施形態は特定の検出器に関するものであるので、指数Dを消去すると下記のようになる。
【0052】
S{C, E}(x, y) = C{C}(x, y) * s{E}(x, y)
また、s{E}(x,y)はさらに、s{E}(x,y)=s{E0}(x,y)*delta{E}(x,y)と表現され、式中、s{E0}(x,y)は参照エネルギE0での固有検出器感度であり、delta{E}(x,y)はエネルギ依存性の変化を表わす。s{E0}(x,y)はPMTの経年変化等によって時間的に変化し得るが、delta{E}(x,y)は、時間的に変化しない弱い(〜1)系統的関数を表わす。従って、
S{Cx, Ex}(x, y) = C{Cx}(x, y) * s{E0}(x, y) * delta{Ex}(x, y)
となる。
【0053】
初期較正又は統合時には、S{C,E}(x,y)は直接的に測定されてもよいし、間接的に測定されてもよい。例えば、測定は、コリメータ「C」の上部のエネルギ「E」の一様線源を用いて行なわれ得る。しかしながら、かかる測定は、一様線源が全ての放射性同位体について利用可能である訳でないため困難である場合があり、またこの工程は、コリメータがフォトンの小部分(コリメータ形式に依存して〜1:10,000)の進入しか許さないため時間が掛かる。このように、長い曝射時間で限定されたエネルギ数についてのみ直接的にS{C,E}(x,y)を測定することが可能である。しかしながら、直接的な測定は、コリメータ隔壁の進入不均一性を正確に説明する。
【0054】
代替的には、S{C,E}(x,y)は、コリメータC0を所定の位置に配置した状態でE=E0にある一様線源及びコリメータC0を用いてS{C0,E0}(x,y)を直接的に測定し、コリメータを取り外して、E=E0を有し検出器(コリメータなし)から離隔して配置された点線源を用いてs{E0}を測定して、コリメータC0のコリメータ応答C{C0}(x,y)=S{C0,E0}(x,y)/s{E0}(x,y)を算出することにより間接的に測定され得る。
【0055】
次いで、図2のブロック204において、エネルギE=E1を有するもう一つの放射性同位体について、エネルギE=E1を有し検出器(コリメータなし)から離隔して配置された点線源を用いて、検出器応答s{E1}を測定する。次いで、エネルギE1でのコリメータC0についての感度マップすなわちS{C0,E1}(x,y)=C{C0}(x,y)*s{E1}(x,y)を算出する。これらのステップを繰り返して、エネルギE2の点線源等を用いてS{C0,E2}(x,y)を得る。次いで、この工程をカメラに供給されている又はカメラに設置されている全てのコリメータC0、C1、C2等について繰り返す。次いで、ブロック208において、以下のマップをカメラと共に与える。
【0056】
s{E0}(x, y),
S{C0, E0}(x, y), S{C0, E1}(x, y), S{C0, E2}(x, y)...
S{C1, E0}(x, y), S{C1, E1}(x, y), S{C1, E2}(x, y)...
S{C2, E0}(x, y), S{C2, E1}(x, y), S{C2, E2}(x, y)..., 等。
【0057】
尚、幾つかのマップS{C,E′}(x,y)が直接的な測定を用いて得られ、幾つかのマップが間接的な測定を用いて得られてもよいことを特記しておく。従って、マップS{C,E′}(x,y)を再度作成する必要がある場合には常に、以下の工程を実行することができる。すなわち、ブロック210において、コリメータを取り外し、エネルギE0の点線源を用いて、新たな固有感度s′{E0}(x,y)を各々の検出器ヘッドについて別個に測定する。全ての新たな感度マップS′{Cx,Ex}(x,y)を
S'{Cx, Ex}(x, y) = S{Cx, Ex}(x, y) * s'{E0}(x, y) / s{E0}(x, y)
に従って再計算する。
【0058】
このようなものとして、ブロック212において再較正感度/一様性マップを作成する。新たな感度マップS′{Cx,Ex}(x,y)は、
S'{Cx, Ex}(x, y) = C{Cx}(x, y) * s'{Ex}(x, y) = C{Cx}(x, y) * s'{E0}(x, y) * delta{Ex}(x, y)
と表現され得る。というのは、コリメータC{Cx}(x,y)及び検出器系統的エネルギ偏差delta{Ex}(x,y)は、検出器の経年変化又は修理によって極く僅かしか又は全く影響を受けないからである。但し、
S{Cx, Ex}(x, y) * s'{E0}(x, y) / s{E0}(x, y) =
[C{Cx}(x, y) * s{E0}(x, y) * delta{Ex}(x, y)] * s'{E0}(x, y) / s{E0}(x, y) =
C{Cx}(x, y) * s'{E0}(x, y) * delta{Ex}(x, y) = S'{Cx, Ex}(x, y)
となる。
【0059】
また、これらの感度マップを、ブロック206において次式を用いてデルタ・マップへ変換してもよい。
【0060】
Del_isotope = Isotope_A_integration / Ref_integration
Isotope_A_recal = Ref_recal * Del_isotope
式中、Del_isotopeは放射性同位体Aのデルタ・マップであり、Isotope_A_integrationは放射性同位体Aの統合一様性マップであり、Ref_integrationは参照放射性同位体の統合一様性マップであり、Isotope_A_recalは放射性同位体Aの再較正一様性マップであり、Ref_recalは参照放射性同位体の再較正一様性マップである。これらのデルタ・マップは、ブロック208においてシステムに記憶され、ブロック212において新たな感度マップを作成するのに用いられる。
【0061】
他の実施形態では、幾つかの放射性同位体のデルタ・マップを他の放射性同位体のデルタ・マップから補間によって求めもよい。尚、一様性マップは、ピクセル単位で作成されることを特記しておく。この実施形態の例では、各々の放射性同位体A1〜ANの一様性マップは、参照放射性同位体の単一の一様性マップ、及び初期較正時に収集された各々の放射性同位体に関係付けられるデータに基づいて算出される。
【0062】
図4は、イメージング・システムによって形成される画像を較正の前後で示す。これらの画像は、標準的な直線性較正によって取得された放射性同位体画像300、及び様々な実施形態による直線性較正を用いて取得された放射性同位体画像302を示す。加えて、デルタ・マップを加算せずにTc直線性マップを用いて取得された画像304も示す。図4では、提示した画像は一様性補正を行なわないで形成されている。図4で分かるように、様々な実施形態の方法によって取得された画像302は、直線性マップを適用する標準的な方法と少なくとも同じ画質を与える(画像300で分かる)。しかしながら、本書に記載される方法は、参照放射性同位体及びデルタ・マップのみを用いてイメージング・システムを再較正することにより、イメージング・システムを再較正することに関連する時間及び経費が少なくて済む。標準的な取得及び本書に記載されている直線性取得の一様性、直線性及び分解能の定量的な測定は、類似の値を結果として生ずる。
【0063】
図5〜図7は、一様性マップを作成する所載の方法を用いた結果を示す。イメージング・システムを1週間にわたり停止させ、次いで、光学機械的不安定性(24時間の回転)及び光学的不安定性(新たなグリース)の下で用いた。検出器においては、2個のPMTを交換した。図5〜図7は、ガリウム(Ga)放射性同位体について得られた結果を示す。明確に述べると、3段階で測定されたGaの3枚の画像すなわち標準的な較正の後の参照画像500、光学機械的な変化の後の画像502、及び本書に記載される方法を適用した後の画像504を示す。図7の画像504で分かるように、所載の方法によって取得される画像は、図5で分かるように検出器を再較正する標準的な方法と同じ画像分解能を提供する。しかしながら、本書に記載される方法は、参照放射性同位体のみを用いたイメージング・システムの再較正しか必要としない。
【0064】
このように、様々な実施形態に従って様々な形式の較正マップを生成することができる。図8は、様々な実施形態に従って較正マップを生成するブロック図600を示す。明確に述べると、初期較正時に一様性マップを生成するために、参照(基底)放射性同位体602及び放射性同位体A604の両方について統合較正マップを作成する。次いで、放射性同位体A606に関係付けられるデルタ・マップが、例えば方法100及び200に関してさらに詳細に記載したようにして放射性同位体A及び参照放射性同位体との間の関係に基づいて作成される。新たな較正(新たな放射性同位体についてのもの)又は再較正(撮像又は交換による検出器ドリフトを補償するためのもの)の際には、参照放射性同位体608の新たなマップ又は再較正マップが生成される。次いで、再較正マップ608とデルタ・マップ606との間の関係を利用して、放射性同位体A610の新たなマップ又は再較正マップを形成する。
【0065】
本発明の好適実施形態によれば、コリメータ一様性C{Cx}(x,y)は、幾つかの又は全てのエネルギについて幾つかの又は全てのコリメータについては無視される。この場合には、C{Cx}(x,y)=1.00であるものと仮定する。
【0066】
この仮定は新型コリメータの場合に有効である。本実施形態では、統合工程は、無装備の(naked)検出器を測定することのみを含んでいる。コリメータは、病院に直接供給されて病院で試験される(好ましくはコバルト一様線源によって)。コリメータは、仕様通りに動作しない場合には不合格となり交換される。本発明のこの実施形態によれば、固有(コリメータなし)一様性マップが、複数のエネルギE0、E1、E2、…、Enにおいて統合時に測定される。作成されるマップSi{E0}(x,y)、Si{E1}(x,y)、Si{E2}(x,y)…は、検出器と共に供給される。
【0067】
検出器が較正を必要とする場合には、参照エネルギE0のみを再測定して、マップSi′(E0)(x,y)を作成する。全てのエネルギEkについての全ての他のマップは、
Si'{Ek}(x, y) = Si{Ek}(x, y) * Si'{E0}(x, y) / Si{E0}(x, y)
を計算することによりSi′に更新される。
【0068】
図9は、様々な実施形態に従って較正マップを生成するもう一つのブロック図650を示す。明確に述べると、直線性マップを生成するために、初期較正時に、参照(基底)放射性同位体652、放射性同位体A1 654、及び放射性同位体A2 656について統合較正マップを生成する。次いで、放射性同位体A1 658に関係付けられるデルタ・マップを、例えば方法100に関してさらに詳細に記載したようにして放射性同位体A1と参照放射性同位体との間の関係に基づいて作成し、また放射性同位体A2 660に関係付けられるデルタ・マップを、放射性同位体A2と参照放射性同位体との間の関係に基づいて作成する。次いで、もう一つの放射性同位体である放射性同位体Bに関係付けられるデルタ・マップ662を、デルタ・マップ658及び660に基づいて補間によって求める。再較正時には、参照放射性同位体664の新たなマップ又は再較正マップが生成される。次いで、再較正マップ664と放射性同位体B662のデルタ・マップとの間の関係を用いて、放射性同位体B666の新たなマップ又は再較正マップを形成する。補間デルタ・マップは、例えば現在検出されているエネルギ・レベルに基づいて、記憶されている補間デルタ・マップは用いずに動的に(例えば実行中に)生成されてもよい。
【0069】
図10は、特定のピーク・エネルギを複数の例示的な放射性同位体について示す表である。明確に述べると、列702は放射性同位体の一覧を与えている。これらの放射性同位体のうち、テクネチウム、ガリウム、ヨウ素及びタリウムは患者の検討に広く用いられている。コバルト、アメリシウム、バリウム及びガドリニウムは典型的には、検出器の較正に用いられる。列704は、各々の放射性同位体の半減期を列挙し、また列706は各々の放射性同位体のピーク・エネルギを掲げており、大小のピーク・エネルギを示している。
【0070】
様々な実施形態の少なくとも一つの技術的効果は、非ピクセル型ガンマ検出器の再較正時間の短縮を可能にすることである。明確に述べると、初期較正時に、放射性同位体A1〜ANと参照放射性同位体との間の関係を表わすデルタ・マップが作成される。従って、再較正時には、参照放射性同位体についての新たな較正マップを作成するだけで済む。この新たなマップ、及びデルタ・マップに基づいて、各々の放射性同位体を用いてシステムを再較正する必要なく、放射性同位体A1〜ANについて新たな較正マップが算出される。このように、デルタ・マップを用いて、一つの放射性同位体についての較正マップを変換してもう一つの放射性同位体についての較正マップを形成することができる。この実施形態の例では、較正マップは直線性マップ及び/又は一様性マップの何れであってもよい。
【0071】
様々な実施形態、並びに/又は構成要素例えばモジュール、若しくは内蔵の構成要素及び制御器は、1又は複数のコンピュータ又はプロセッサの一部として具現化されてもよい。コンピュータ又はプロセッサは、計算装置、入力装置、表示ユニット、及び例えばインターネットにアクセスするためのインタフェイスを含み得る。コンピュータ又はプロセッサはマイクロプロセッサを含み得る。マイクロプロセッサは通信バスに接続され得る。コンピュータ又はプロセッサはまた、メモリを含み得る。メモリは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)及び読み出し専用メモリ(ROM)を含み得る。コンピュータ又はプロセッサはさらに、記憶装置を含んでいてよく、記憶装置はハード・ディスク・ドライブであっても、フロッピィ・ディスク・ドライブ及び光ディスク・ドライブ等のような着脱式記憶ドライブであってもよい。記憶装置はまた、コンピュータ又はプロセッサにコンピュータ・プログラム又は他の命令を読み込む他の同様の手段であってよい。
【0072】
本書で用いられる「コンピュータ」又は「モジュール」との用語は、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、ASIC、論理回路、及び本書に記載された諸作用を実行することが可能な他の任意の回路又はプロセッサを用いたシステムを含む任意のプロセッサ方式のシステム又はマイクロプロセッサ方式のシステムを含み得る。上の例は例示のみのためのものであり、従って「コンピュータ」との語の定義及び/又は意味を如何なる方法でも限定するものではない。
【0073】
コンピュータ又はプロセッサは、入力データを処理するために1又は複数の記憶要素に記憶されている一組の命令を実行する。記憶要素はまた、所望又は必要に応じてデータ又は他の情報を保持することができる。記憶要素は、処理機械の内部の情報源又は物理メモリ素子の形態にあってよい。
【0074】
上述の一組の命令は、本発明の様々な実施形態の方法及び工程のような特定の動作を実行するように処理機械としてのコンピュータ又はプロセッサに命令する様々な命令を含み得る。一組の命令は、ソフトウェア・プログラムの形態にあってよい。ソフトウェアは、システム・ソフトウェア又はアプリケーション・ソフトウェアのような様々な形態にあってよい。さらに、ソフトウェアは、別個のプログラム又はモジュールの集合、より大きなプログラムの内部のプログラム・モジュール又はプログラム・モジュールの一部の形態にあってよい。ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジュール型プログラミングを含み得る。処理機械による入力データの処理は、利用者の命令に応答して行なわれてもよいし、以前の処理の結果に応答して行なわれてもよいし、他の処理機械によって発行された要求に応答して行なわれてもよい。
【0075】
本書で用いられる「ソフトウェア」及び「ファームウェア」との用語は互換可能であり、コンピュータによる実行のためにRAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含めたメモリに記憶された任意のコンピュータ・プログラムを含んでいる。上述のメモリ形式は例示のみのためのものであって、従ってコンピュータ・プログラムの記憶に利用可能なメモリの形式について限定するものではない。
【0076】
以上の記載は例示説明のためのものであって制限するものではないことを理解されたい。例えば、上述の各実施形態(及び/又は各実施形態の諸観点)を互いに組み合わせて用いてよい。加えて、本発明の様々な実施形態の範囲を逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の様々な実施形態の教示に合わせて適応構成する多くの改変を施すことができる。本書に記載されている材料の寸法及び形式は、本発明の様々な実施形態の各パラメータを定義するためのものであるが、これらの実施形態は限定するものではなく例示する実施形態である。以上の記載を吟味すれば、当業者には他の多くの実施形態が明らかとなろう。従って、本発明の様々な実施形態の範囲は、特許請求の範囲に関連して、かかる特許請求の範囲が網羅する均等構成の全範囲と共に決定されるものとする。特許請求の範囲では、「including包含する」との用語は「comprising含む」との用語の標準英語の同義語として、また「in whichこのとき」との用語は「whereinここで」との用語の標準英語の同義語として用いられている。さらに、特許請求の範囲では、「第一」、「第二」及び「第三」等の用語はラベルとして用いられているに過ぎず、これらの用語の目的語に対して数値的要件を課すものではない。さらに、特許請求の範囲の制限は、「手段プラス機能(means-plus-function)」形式で記載されている訳ではなく、かかる特許請求の範囲の制限が、「〜のための手段」に続けて他の構造を含まない機能の言明を従えた文言を明示的に用いていない限り、合衆国法典第35巻第112条第6パラグラフに基づいて解釈されるべきではない。
【0077】
この書面の記載は、最適な態様を含めて本発明の様々な実施形態を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明の様々な実施形態を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の様々な実施形態の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0078】
100、200 方法
250 イメージング・システム
252 検出器
254 開口
256 患者
258 管(PMT)
262 較正モジュール
264 プロセッサ
266 画像データセット
268 補正済み画像
300 放射性同位体画像
302、304、500、502、504 画像
600 ブロック図
602 (基底)放射性同位体
604 放射性同位体A
606 デルタ・マップ
608 再較正マップ
610 放射性同位体Aのマップ
650 ブロック図
652 (基底)放射性同位体
654 放射性同位体A1
656 放射性同位体A2
658、660、662 デルタ・マップ
664 再較正マップ
666 放射性同位体Bのマップ
700 表
702 放射性同位体
704 ピーク・エネルギ/%
706 半減期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ピクセル型ガンマ検出器(252)用の較正マップを与える方法(100)であって、
非ピクセル型ガンマ検出器(252)について、参照放射性同位体についての較正マップを決定するステップ(102)と、
前記参照放射性同位体の前記較正マップに、もう一つの放射性同位体に対応するデルタ・マップであって、前記参照放射性同位体と前記もう一つの放射性同位体との間の関係に基づくデルタ・マップを適用することにより、前記もう一つの放射性同位体についての較正マップを作成するステップ(116)と
を備えた方法。
【請求項2】
各々が複数の放射性同位体又はエネルギ・ピークの一方に関係付けられる複数のデルタ・マップが、前記非ピクセル型ガンマ検出器(252)に結合されているシステム(250)に記憶されている、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記デルタ・マップは、同じ検出器幾何学的構成を有する非ピクセル型ガンマ検出器に対応する、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
二つの放射性同位体についてのデルタ・マップが、前記検出器(252)に結合されているシステム(250)に記憶されており、第三の放射性同位体の前記デルタ・マップを生成するように、前記システムに記憶されている前記第一及び第二の放射性同位体の前記デルタ・マップを補間するステップ(114)をさらに含んでいる請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第三の放射性同位体の前記デルタ・マップは特定のピーク・エネルギにおいて補間により求められる、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記較正マップは直線性マップであり、もう一つの放射性同位体についての較正マップを作成する前記ステップは、前記参照放射性同位体の前記較正マップに前記デルタ・マップを加算することをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記デルタ・マップは、前記もう一つの放射性同位体の較正マップから前記参照放射性同位体の較正マップを減算することにより決定される、請求項6に記載の方法(100)。
【請求項8】
もう一つの放射性同位体についての較正マップを作成する前記ステップは、検出器ピクセル毎に前記較正マップを作成することをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記参照放射性同位体はテクネチウムである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記較正マップは一様性マップであり、前記参照放射性同位体の前記較正マップにデルタ・マップを適用する前記ステップは、前記参照放射性同位体の前記較正マップを前記もう一つの放射性同位体の前記デルタ・マップと乗算することをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−137814(P2011−137814A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282499(P2010−282499)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】