説明

非常に高い皮膚浸透率を有するレチノイド及びレチノイド様化合物の正に荷電した水溶性プロドラッグ

【課題】一般式(31)‘構造31’のレチノイド又はレチノイド様化合物の新規な正に荷電したプロドラッグの設計と合成。
【解決手段】これらのプロドラッグの正に荷電したアミノ基は、水における薬剤の溶解性を著しく増大するだけでなく、膜のホスフェート頭部基における負電荷に結合する。この結合は、膜をほんの少し妨害し、プロドラッグの親油性部分のための空間を作ることができる。膜分子が移動する場合、プロドラッグの結合のために膜にほんの少し‘亀裂が入る’ことになる。これにより、プロドラッグが膜に挿入される。プロドラッグは、ヒト又は動物において、レチノイド又はレチノイド様化合物治療可能な状態を治療するのに医薬的に使用され得る。プロドラッグは、いかなる種類の医学的治療にも経皮的に投与することができ且つレチノイド又はレチノイド様化合物のほとんどの副作用を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチノイド又はレチノイド様化合物の正に荷電した水溶性プロドラッグの調製及びヒト又は動物において、レチノイド又はレチノイド様化合物治療可能な状態を治療するための医薬使用に関する。より詳細には、本発明は、レチノイド又はレチノイド様化合物の速い皮膚浸透を可能にするためにある。
【背景技術】
【0002】
レチノイドは、頭部と尾部のように結合される四つのイソプレノイド単位からなる種類の化合物である。レチノイドには、オールトランスレチノイン酸(トレチノイン)、シス異性体レチノイン酸、例えば、13-シス-レチノイン酸(イソトレチノイン)、9-シス-レチノイン酸(アリトレチノイン)、ビタミンA(レチノール)、4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]安息香酸(ベキサロテン、Targretin(登録商標))、レチナール、レチフェロール、(E,E,E)-7-(2-n-プロポキシ-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-3-イル)-6-フルオロ-3-メチルオクタ-2,4,6-トリエン酸、アダパレン(6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸)、非環式レチノイド[(2E,4E,6E,l0E)-3,7,11,15-テトラメチル-2,4,6,10,14-ヘキサデカペンタエン酸]、エチル(E,E,E)-7-(2-n-プロポキシ-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-3-イル)-6-フルオロ-3-メチルオクタ-2,4,6-トリエノエート、及びこれらの誘導体が、天然と合成の双方含まれる。レチノイド活性を有する種々の合成レチノイド又はレチノイド様化合物は、種々の特許に記載されている(米国特許第5,648,563号; 同第5,648,385号; 同第5,618,839号; 同第5,559,248号; 同第5,616,712号; 同第5,616,597号; 同第5,602,135号; 同第5,599,819号; 同第5,556,996号; 同第5,534,516号; 同第5,516,904号; 同第5,498,755号; 同第5,47O,999号; 同第5,468,879号; 同第5,455,265号; 同第5,451,605号; 同第5,426,118号; 同第5,407,937号; 同第5,399,586号; 同第5,399,561号; 同第5,39I,753号)。レチノイドは、視覚、生殖、代謝、分化、骨の発達、及び胚発生中のパターン形成を含む生命の過程の多くに不可欠である。ビタミンA(レチノール)やレチナールは、体内で化学平衡状態にあり、等価な抗眼球乾燥活性を有する。レチノールは、網膜においてオプシン、桿体色素と結合して、ロドプシンを形成し、これは暗闇に対する視覚適応に必要である。ビタミンA欠乏は、夜盲症、角膜軟化症、皮膚の角質化と乾燥、感染症に対する耐性の低下、発育遅延、骨の肥厚、副腎皮質ステロイドの産生の減弱、及び胎児の先天異常により確認される(PDR Generics, 1996, second edition, Medical Economics, Montvale, New Jersey,pg3094)。
【0003】
局所トレチノイン(オール-トランス-レチノイン酸)は、微小面皰(microcomedo)形成の減少により卵胞上皮細胞の粘着性を減少させ、面皰(comedones)の排出を引き起こす卵胞上皮細胞のターンオーバーを増加させる有糸分裂活性を刺激する。トレチノインは、尋常性座瘡、光による老化(photoaging)、色素沈着過度による斑点(肝斑)や早期のしわ、薬剤誘発光過敏性、乾癬、表皮の創傷治癒、眼球乾燥症、ケロイド、角質増殖皮膚疾患の治療における局所適用に必要である(PDR Generics, 1996, second edition, Medical Economics, Montvale, New Jersey, pg 298l)。イソトレチノインは、皮脂腺機能及び角質化を阻止する。イソトレチノインが、手に負えないひどい嚢腫性座瘡、基底細胞癌、子宮頸癌、菌状息肉腫(皮膚T細胞性リンパ腫)、ダリエ病、葉状魚鱗癬、毛孔性紅色粃糠疹、単純ヘルペス感染症、グローバー病、扁平苔癬、不応性酒さ、手掌足底角化症、白斑扁平上皮皮膚癌、及び色素性乾皮症の治療に必要である。アリトレチノイン(9-シス-レチノイン酸)は、すべて既知の細胞内レチノイド受容体サブタイプ(RAR、RAR、RAR、RXR、RXR、RXR)に結合しこれらを活性化する天然に存在する内在性レチノイドである。活性化されると、これらの受容体は、正常細胞も新生物性細胞も細胞分化と増殖の過程を制御する遺伝子の発現を調節する転写因子として機能する。アリトレチノインは、試験管内でカポジ肉腫(KS)細胞の増殖を阻止する。アリトレチノインは、カポジ肉腫や骨髄異形成症候群の治療に用いられる。レチフェロール誘導体は、過剰増殖性皮膚疾患、例えば、乾癬、基底細胞癌、角化異常症や角化症、腫瘍性疾患、皮脂腺の疾患、例えば、アクネや脂漏性皮膚炎、光損傷と関連している疾患、日光暴露、しわの作用、弾性線維症及び早期老化によって損傷を受けた皮膚の治療に用いられる(Hilpert, et a1.、米国特許第6437142号)。アダパレンは、尋常性座瘡の局所治療に用いられる。非環式レチノイドは、二次原発腫瘍の予防に用いられる(Yasutoshi Muto, et al., the New England Journal of Medicine,340, l046 (1999))。(E,E,E)-7-(2-n-プロポキシ-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-3-イル)-6-フルオロ-3-メチルオクタ-2,4,6-トリエン酸は、2型糖尿病や他の代謝異常の治療に用いることができる(Deng T, et al., Biol. Pharm. Bull. 28(7), 1192, 2005)。Targretin(登録商標)経口製剤は、皮膚T細胞リンパ腫瘍(CTCL)、頭頸部癌、全身性カポジ肉腫、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、及び腎臓細胞癌の治療に用いられる。局所Targretinは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療に用いられる。
【0004】
薬剤を投与する別の一方法は、局所送達である。局所薬剤送達は、いくつかの利点を有する。この方法は、肝臓や胃腸管における初回通過代謝で引き起こされる薬剤の不活性化を避けるのに役立つ。これは、薬剤の適切な濃度の局所送達を全身曝露でなく意図された作用部位に与えることができる。経口薬剤と関連している追加の問題は、疼痛又は炎症の遠位領域を効果的に治療するために、血流において達成されなければならない濃度レベルが有意でなければならないことであることをFishman(Fishman; Robert (米国特許第7,052,715号)が示した。これらのレベルは、疼痛又は損傷の特定の部位を正確な目標とすることが可能である場合に必要となるレベルよりもずっと高い。Yeagerは、男性の勃起障害の治療に浸透促進剤を用いてPGEを送達しようと試みた(Yeager, James L. 米国特許第6,693,135号)。Susan Milosovichらは、親油性部分と生理的pHにおいてプロトン化した形で存在する第三級アミン基を有するテストステロニル-4-ジメチルアミノブチレート.HCl(TSBH)を設計し調製した。彼らは、プロドラッグ(TSBH)が薬剤(TS)自体より〜60倍速くヒト皮膚を通って拡散することを見い出した[Susan Milosovich, et al., J. Pharm. Sci., 82, 227(1993)]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レチノイド又はレチノイド様化合物は、アクネ、光老化、乾癬、魚鱗癬、脱毛、種々の癌を含む種々の健康状態を治療するために用いられる。
残念なことに、レチノイド又はレチノイド様化合物は、あまりにも親油性で、実際に水に不溶である。膜は、二層であり、親水性頭部基(head group)が両側の水性領域に外に向いている。レチノイドは、親油性膜に入ることができるが、類似性による膜の部分として、親油性層にとどまり、細胞の内部のサイトゾルに効率的に入ることができない。高度の不飽和のために、レチノイドは、紫外線、空気、及び酸化剤に非常に感受性がある。レチノイドの局所適用後、膜には入るが、細胞の内部に入らない。太陽光線、空気、又は酸化剤は、レチノイドの化学反応を誘導し、皮膚発赤、灼熱感覚、剥がれ、ひび割れ、水ぶくれ又はかゆみを引き起こす。経口的に服用する場合、肝臓と胃腸管における化合物の化学分解を意味する初回通過代謝が、数分でそれらを破壊し不活性化し得る。レチノイドの経口投与は、不必要な全身曝露を生じ、多くの副作用を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レチノイド又はレチノイド様化合物の新規な正に荷電したプロドラッグの設計と調製及びその医薬用途に関する。9-シス-レチノイン酸(アリトレチノイン)、13-シス-レチノイン酸(イソトレチノイン)、オール-トランス-レチノイン酸(トレチノイン)、ビタミンA(レチノール)、レチフェロール、アダパレン、非環式レチノイド又はレチノイド様化合物のプロドラッグは、一般式(l〜27)‘構造1〜27’を有する:
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
【化5】

【0012】
【化6】

【0013】
【化7】

【0014】
【化8】

【0015】
【化9】

【0016】
【化10】

【0017】
【化11】

【0018】
【化12】

【0019】
【化13】

【0020】
【化14】

【0021】
【化15】

【0022】
【化16】

【0023】
【化17】

【0024】
【化18】

【0025】
【化19】

【0026】
【化20】

【0027】
【化21】

【0028】
【化22】

【0029】
【化23】

【0030】
【化24】

【0031】
【化25】

【0032】
【化26】

【0033】
【化27】

【0034】
構造1〜27において、Rは、分枝鎖又は直鎖、-(CH2)n-であり、ここで、n=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…、-(CH2)n-中のいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R1及びR2は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシル基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、或いは一緒に用いられ、-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R3は、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、ここで、いかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; Xは、O、S、又はNHであり; X1は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、NO、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はC1-6アルキルオキシであり; X2は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はC1-6アルキルオキシであり; X3は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6アルキルオキシであり; X4は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6アルキルオキシであり; X5は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6アルキルオキシであり; X6は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6アルキルオキシであり; R4は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR6COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6ハロゲン化アルキルであり; R5は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R6、COR6、COOR6、NR6COR4、SOR6、SR6、PO3R6R6'、SOR6、SR6、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6ハロゲン化アルキルであり; R11は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR6COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6ハロゲン化アルキルであり;
【0035】
R12は、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR6COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はC1-6ハロゲン化アルキルであり; R6及びR6'は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、OH、Cl、Br、F、I、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR7COR5、SOR5、SR5、PO3R7R7'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はハロゲン化アルキルであり、或いは一緒に用いられ、酸素(=O)又は-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR7R7'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R7及びR7'は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、Cl、Br、F、I、OH、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR6COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はハロゲン化アルキルであり、或いは一緒に用いられ、酸素(=O)又は-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R8及びR8'は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、Cl、Br、F、I、OH、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はハロゲン化アルキルであり、或いは一緒に用いられ、酸素(=O)又は-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R9及びR9'は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、Cl、Br、F、I、OH、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はハロゲン化アルキルであり、或いは一緒に用いられ、酸素(=O)又は-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R10及びR10'は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、Cl、Br、F、I、OH、NO2、CN、SO2R5、COR5、COOR5、NR4COR5、SOR5、SR5、PO3R6R6'、SOR5、SR5、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、又はハロゲン化アルキルであり、或いは一緒に用いられ、酸素(=O)又は-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; Tは、CH2=C、CH=CH、C(CH3)=CH、C≡C、C=O、C=S、CONH、CSNH、COO、OCO、COS、COCH2又はCH2COであり; A-は、Cl-、Br-、F-、I-、AcO-、シトラート又はいかなる負のイオンでもあり; 側鎖における二重結合は、Z又はE構造を有していてもよく; すべてのR、R1、R2、R3、R4、-(CH2)n-基は、分枝鎖又は直鎖であり、C、H、O、S、N、及び他の原子を含有していてもよく、単一結合、二重結合、三重結合及び環系を含有していてもよい。
【0036】
胃腸管からにしても他の部位からにしても、薬剤吸収には、分子形態の薬剤がバリヤ膜全体を通過することが必要である。薬剤は、最初に溶解しなければならず、薬剤が望ましい生物薬剤学的特性を有する場合には、高濃度の領域から低濃度の領域に膜を横断して通過し、血液循環又は体循環に入る。すべての生体膜は、主な成分として脂質を含有する。膜形成において優位な役割を果たす分子は、すべてホスフェート含有の高度に極性の頭部基、ほとんどの場合、二つの高度に疎水性の炭化水素尾部を有する。膜は、二層であり、親水性頭部基が両側の水性領域に外に向いている。非常に親水性の薬剤は、膜の疎水性層を通過することができず、非常に疎水性の薬剤は、類似性のために膜の部分として疎水性層にとどまり、内側のサイトゾルに効率的に入ることができない。
【0037】
本発明の目的は、皮膚表面上の利用可能な水分における溶解度及び膜と皮膚バリヤを通る浸透率を増加させることによって、レチノイド又はレチノイド関連化合物を経皮的に(局所適用)投与可能にすることである。レチノイド又は関連化合物のこれらの新規なプロドラッグは、共通して二つの構造的特徴を有する: これらは、親油性部分と生理的pHにおいてプロトン化した形(親水性部分)で存在する第一、第二、又は第三アミン基を有する。このような親水-親油バランスは、膜バリヤを効率的に通過するために必要である[Susan Milosovich, et al., J. Pharm. Sci., 82, 227(1993)]。正に荷電したアミノ基は、主に、水における薬剤の溶解度を増加させる。多くの場合、順序の最も遅い段階或いは律速段階が薬剤の溶解である。レチノイドや関連化合物は、皮膚表面上に利用可能な水分において非常に難溶解性を有し、分子形態で皮膚のバリヤを効率的には通過しない。これらが皮膚の膜に入る場合には、類似性のために膜の部分としてそこにとどまり、サイトゾル、細胞の内側の半流動濃縮水溶液又は懸濁液に効率的に入ることができない。これらの新規のプロドラッグが溶液、スプレー、ローション、軟膏、エマルジョン又はゲルのような剤形で経皮的に投与される場合には、直ちに皮膚表面上の利用可能な水分に溶解する。これらのプロドラッグのアミノ基における正電荷は、膜のホスフェート頭部基における負電荷に結合する。従って、膜の外側の局所濃度は、非常に高く、高濃度の領域から低濃度の領域へのこれらのプロドラッグの通過を容易にする。これらのプロドラッグが膜に入る場合、親水性部分がプロドラッグをサイトゾルに押し込む。皮膚の膜の外側にどどまるのが短いために、プロドラッグは、皮膚の灼熱、疼痛、かゆみ又は浸潤を引き起こさず、皮膚は、太陽光に感受性がない。ヒト皮膚を通るこれらのプロドラッグの浸透率は、試験管内で、前後部大腿領域のヒト皮膚組織(360-400μm厚)から分離した修正フランツ(Franz)細胞を用いることにより測定した。投与液は、2mlの2%ウシ血清アルブミン/生理食塩水からなり、600rpmで撹拌した。皮膚に浸透するこれらのプロドラッグや親薬剤の累積量と時間を特定の高性能液体クロマトグラフィー法によって求めた。エタノールとpH 7.4-ホスフェート緩衝液(0.2M)(v/v、70/30)のO.2mL混合液中のレチノイドのプロドラッグの一部の5%溶液又はレチノイドの5%懸濁液からなる供与体を用いた結果を、図1に示す。ヒト皮膚を通って拡散するN,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBr、N,N-ジエチルアミノエチルl3-シス-レチノエート.HBr、N,N-ジエチルアミノエチルオール-トランス-レチノエート.HBr、レチニルN,N-ジメチル-2-アミノアセテート.HCl、N,N-ジエチルアミノエチル4-[l-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HCl、9-シスレチノイン酸(アリトレチノイン)、13-シス-レチノイン酸(イソトレチノイン)、オール-トランス-レチノイン酸(トレチノイン)、ビタミンA(レチノール)及びベキサロテン(Targretin(登録商標))に対して、それぞれO.72mg、0.85mg、1.25mg、1.21mg、0.35mg、0.005mg、0.005mg、0.005mg、0.005mg、及び0.001mg/cm2/hの見掛けフラックス値を算出した。プロドラッグは、レチノイドより350倍速くヒト皮膚を通って拡散する。結果は、ジアルキルアミノエチル基における正電荷が、膜と皮膚バリヤ全体を薬剤が通過するのに非常に重要な役割を有することを示している。
【0038】
新規なプロドラッグのマウスの皮膚における刺激作用或いは不快症状について、一日二回ヌードマウスの背中に0.1mlの1%の各試験薬剤/エタノールを局所適用した後の1週間の間で評価した。N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBr、N,N-ジエチルアミノエチルl3-シス-レチノエート.HBr、N,N-ジエチルアミノエチルオール-トランス-レチノエート.HBr、レチニルN,N-ジメチル-2-アミノアセテート.HCl、N,N-ジエチルアミノエチル4-[l-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HClには刺激作用或いは不快症状のいかなる徴候も全くなかった。
【0039】
良好なプロドラッグは、容易に親薬剤に戻らなければならない。試験管内血漿加水分解研究を、以下のように行った。10mgのプロドラッグを、0.1mlの0.2MpH7.4ホスフェート緩衝液に溶解した。37℃に予熱した1mlのヒト血漿を、この混合物に添加した。この混合物を、37℃で水浴に保持した。2分の間隔毎に、0.2mlの試料を取り、0.4mlのメタノールに添加して、血漿タンパク質を沈降させた。試料を、5分間遠心分離し、HPLCによって分析した。加水分解の半減期は、N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBrが10分+/-1分、N,N-ジエチルアミノエチル13-シス-レチノエート.HBrが8分+/-2分、N,N-ジエチルアミノエチルオール-トランス-レチノエート.HBrが9分+/-1分、レチニルN,N-ジメチル-2-アミノアセテート.HClが13分+/-2分、N,N-ジエチルアミノエチル4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HCl.が11分+/-2分である。
【0040】
Targretin(登録商標)(ベキサロテン)は、いくつかの細胞活性に重要な役割を果たす、RXRと呼ばれるレチノイド受容体のサブクラスを選択的に活性化する。これらの活性の最も重要なものの一つは、プログラム細胞死、或いは‘アポトーシス’と呼ばれ、自然過程によって不必要な細胞を体がそれ自体で除去する。Targretin(登録商標)は、局所製剤も経口製剤もリガンドにより開発されている。局所的Targretinは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療に用いられる。更に、Targretin経口製剤は、CTCL、頭頸部癌、全身性カポジ肉腫、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌の治療に用いられる。アリトレチノイン(9-シス-レチノイン酸)は、すべて既知の細胞内レチノイド受容体サブタイプ(RARa、RARb、RARg、RXRa、RXRb、RXRg)に結合し活性化する天然に存在する内在性レチノイドである。活性化されると、これらの受容体は、正常細胞と新生物性細胞の両方において細胞分化と増殖の過程を制御する遺伝子の発現を調節する、転写因子として機能する。アリトレチノイドは、カポジ肉腫、AIDS関連カポジ肉腫、他の皮膚癌、乳癌、他の癌の治療に用いられる。
【0041】
これらのプロドラッグの抗腫瘍活性を評価するために、ヒト乳癌細胞(BCAP-37、3-4mm3の腫瘍組織をそれぞれのマウスに用いた)をヌードマウス(BALB)に皮下異種移植した。1日後、エタノール/0.2M pH 7.4ホスフェート緩衝液(v/v、70/3O)中の50μlの1% N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBrとN,N-ジエチルアミノエチル4-[l-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HClを、ヒト乳癌細胞移植領域(前脚の近く) に一日二回局所的に適用した。28日後、対照グループ(n=7)は、1O0%の発生率(平均腫瘍サイズは、13±2mm×l2±2cmであった)を示したが、N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBr又はN,N-ジエチルアミノエチル4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HClで治療した試験グループ(n=7)には腫瘍が全く見られなかった。最も重要なことは、薬剤を投与したマウスがいかなる不快症状或いは刺激作用を示さなかったことである。治療したグループの平均重量は、25±2グラムであり、対照グループは、23±3グラムである。結果から、これらのプロドラッグが非常に弱い副作用を有することがわかる。
【0042】
他の実験において、ヒト結腸癌細胞(LS174J、3-4mm3の腫瘍組織をそれぞれのマウスに用いた)を、ヌードマウス(BALB)に皮下異種移植した。1日後、エタノール/0.2M pH 7.4ホスフェート緩衝液(v/v、70/3O)中の50μlの1% N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBrとN,N-ジエチルアミノエチル4-[l-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HClを、ヒト結腸癌細胞移植領域(前脚の近く) に一日二回局所的に適用した。28日後、対照グループ(n=7)は、1O0%の発生率(平均腫瘍サイズは、22±4mm×20±3mmであった)を示したが、N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBr又はN,N-ジエチルアミノエチル4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HClで治療した試験グループ(n=7)には腫瘍が全く見られなかった。
【0043】
レチノイドは、全て市販のものである。上で示した一般式(1、2、3、5、6、7、8、9、l0、11、12、16、17、22、23、24、25、26、又は27)‘構造1、2、3、5、6、7、8、9、l0、11、12、16、17、22、23、24、25、26、又は27’の化合物は、レチノイン酸又は関連化合物から、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のカップリング試薬を用いて一般式(28)の化合物‘構造28’と反応させることにより調製され得る。
【0044】
【化28】

【0045】
式中、Rは、分枝鎖又は直鎖、-(CH2)n-であり、ここで、n=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…、-(CH2)n-中のいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R1及びR2は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシル基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、或いは一緒に用いられ、-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; Xは、O、S、又はNHである。
【0046】
上記に示される一般式(4、13、14、15、20、又は21)‘構造4、13、14、15、20、又は21’の化合物は、レチノールや関連化合物から、一般式(29)‘構造29’の化合物と反応させることにより調製され得る。
【0047】
【化29】

【0048】
式中、Rは、分枝鎖又は直鎖、-(CH2)n-であり、ここで、n=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…、-(CH2)n-中のいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R1及びR2は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシル基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、或いは一緒に用いられ、-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R3は、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、ここで、いかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; Zは、F、Cl、Br又はIであり; A-は、Cl-、Br-、F-、I-、AcO-、シトラート、又はいかなる負のイオンでもある。
【0049】
XがOである場合、上記に示される一般式(1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、16、17、22、23、24、25、26、又は27)‘構造1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、16、17、22、23、24、25、26、又は27’は、レチノイン酸又は関連化合物の金属塩、有機塩基塩、又は固定化塩基塩から、一般式(30)‘構造30’の化合物と反応させることにより調製され得る。
【0050】
【化30】

【0051】
式中、Rは、分枝鎖又は直鎖、-(CH2)n-であり、ここで、n=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…、-(CH2)n-中のいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R1及びR2は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシル基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、或いは一緒に用いられ、-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R3は、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、ここで、いかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR6R6'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; Zは、F、Cl、Br、I、又はp-トルエンスルホニルであり; A-は、Cl-、Br-、F-、I-、AcO-、シトラート、又はいかなる負のイオンでもある。
【発明の効果】
【0052】
本発明におけるレチノイド又はレチノイド様化合物のこれらのプロドラッグは、親油性部分と生理的pHにおいてプロトン化した形で存在する親水性部分(アミン基)を有する。これらのプロドラッグの正に荷電したアミノ基は、二つの主な利点を有する。第一に、これは、主に水における薬剤の溶解度を増加させる; これらの新規なプロドラッグが、溶液、スプレー、ローション、軟膏、エマルジョン又はゲルのような剤形で経皮的に投与される場合には、直ちに皮膚、眼、生殖器部、口、鼻、又は身体の他の部分上の水分と混合する。第二に、これらのプロドラッグのアミノ基における正電荷が、膜のホスフェート頭部基における負電荷に結合する。従って、膜の外側の局所濃度が非常に高く、高濃度領域から低濃度領域にこれらのプロドラッグの通過を容易にする。これらのプロドラッグが膜に入る場合、親水性部分がプロドラッグをサイトゾル、半流動濃縮水溶液又は懸濁液に押し込む。皮膚、眼、生殖器部、口、鼻又は身体の他の部分にとどまることが短いために、プロドラッグは、かゆみ、灼熱感又は疼痛を引き起こさない。実験結果は、90%を超えるプロドラッグが数分で親薬物に戻ったことを示す。プロドラッグは、非常に良好な吸収速度を有し、経皮投与が初回通過代謝を避けるので、プロドラッグは、同じ用量のレチノイド又はレチノイド様化合物より強くなる。これらのプロドラッグの経皮投与の他の著しい利点は、特に小児に、薬剤を投与することが非常に容易になることである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】フランツ細胞において単離されたヒト皮膚組織を通過する、N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBr(5%溶液、A)、N,N-ジエチルアミノエチル13-シス-レチノエート.HBr(5%溶液、B)、N,N-ジエチルアミノエチルオール-トランス-レチノエート.HBr(5%溶液、C)、レチニルN,N-ジメチル-2-アミノアセテート.HCl(5%溶液、D)、N,N-ジエチルアミノエチル4-[l-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HCl(5%溶液、E)、9-シス-レチノイン酸(5%懸濁液、F)、13-シス-レチノイン酸(5%懸濁液、G)、オールト-ランス-レチノイン酸(5%懸濁液、H)、ビタミンA(5%懸濁液、I)、及びベキサロテン(5%懸濁液、J)の累積量(n=5)。いずれの場合にも、媒体は、エタノール/pH 7.4ホスフェート緩衝液(0.2M)(v/v、7O/30)とした。
【図2】構造31、ここで、Retは、レチノイド又はレチノイド様化合物である、Rは、分枝鎖又は直鎖、-(CH2)n-、ここで、n=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…、アリール基又はヘテロアリール基であり; R1及びR2は、単独で用いられ、同じか又は異なり、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシル基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり、或いは一緒に用いられ、-(CH2)n-であり、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10…、及びいかなるCH2も、O、S、CH=CH、C≡C、CR4R3'、アリール基又はヘテロアリール基、又は他の環系で置換されていてもよい; R3は、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり; R4は、H、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれか一つ、アリール基又はヘテロアリール基であり; Xは、O、S、又はNHであり; A-は、Cl-、Br-、F-、I-、AcO-、シトラート、又はいかなる負のイオンでもあり; 全てのR、R1、R2、R3又は-(CH2)n-基は、分枝鎖又は直鎖であり、C、H、O、S、又はN原子を含んでいてもよく、単結合、二重結合、三重結合を有していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(最良の形態)
N,N-ジエチルアミノエチル9-シス-レチノエート.HBrの調製
32.2g(0.1モル)の9-シス-レチノレイン酸ナトリウムを100mlのアセトニトリルに溶解した。この反応混合物に26.1g(0.1モル)の2-ブロモ-N,N-ジエチルエチルアミン.HBrを添加した。この混合液を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた。残留物に200mlのエタノールを添加する。ろ過によって固形物を除去する。この溶液を蒸発乾固する。この反応混合物に100mlの酢酸エチルを添加した。ヘキサン(100ml)を添加した。ろ過によって固体の生成物を集めた。乾燥後、36gの所望の生成物(75%)を得た。吸湿性生成物。元素分析: C26H42BrNO2; MW: 480.52. 計算値% C: 64.99; H: 8.81; Br: 16.63; N: 2.91; O: 6.66; 実測値 % C:65.03; H: 8.80; Br: 16.60; N: 2.89; O: 6.68。
【0055】
(発明の形態)
N,N-ジエチルアミノエチル13-シス-レチノエート.HBrの調製
32.2g(0.1モル)の13-シス-レチノレイン酸ナトリウムを100mlのアセトニトリルに溶解した。この反応混合物に26.1g(0.1モル)の2-ブロモ-N,N-ジエチルエチルアミン.HBrを添加した。この混合液を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた。残留物に200mlのエタノールを添加する。ろ過によって固形物を除去する。この溶液を蒸発乾固する。この反応混合物に100mlの酢酸エチルを添加した。ヘキサン(100ml)を添加した。ろ過によって固体の生成物を集めた。乾燥後、38gの所望の生成物(79.l%)を得た。吸湿性生成物。元素分析: C26H42BrNO2; MW: 480.52. 計算値% C: 64.99; H: 8.81; Br: 16.63; N: 2.91; O: 6.66; 実測値 % C:65.03; H: 8.80; Br: 16.60; N: 2.89; O: 6.68。
【0056】
N,N-ジエチルアミノエチルオール-トランス-レチノエート.HBrの調製
32.2g(0.1モル)のオール-トランス-レチノレイン酸ナトリウムを100mlのアセトニトリルに溶解した。この反応混合物に26.1g(0.1モル)の2-ブロモ-N,N-ジエチルエチルアミン.HBrを添加した。この混合液を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた。残留物に200mlのエタノールを添加する。ろ過によって固形物を除去する。この溶液を蒸発乾固する。この反応混合物に100mlの酢酸エチルを添加した。ヘキサン(100ml)を添加した。ろ過によって固体の生成物を集めた。乾燥後、35gの所望の生成物(72.9%)を得た。吸湿性生成物。元素分析: C26H42BrNO2; MW: 480.52. 計算値% C: 64.99; H: 8.81; Br: 16.63; N: 2.91; O: 6.66; 実測値 % C:65.03; H: 8.80; Br: 16.60; N: 2.89; O: 6.68. 480.52。
【0057】
レチニルN,N-ジエチル-2-アミノアセテート.HClの調製
28.6g(0.1モル)のレチノールを300mlのアセトニトリルに溶解した。この反応混合物に25mlのトリエチルアミンを添加した。この反応混合物に16gのN,N-ジメチルアミノアセチルクロライド塩酸塩を添加した。この混合液を室温で5時間撹拌した。ろ過によって固形物を除去した。この溶液を蒸発乾固した。この残留物に500mlの酢酸エチルを添加した。この混合物に200mlの5%炭酸ナトリウム溶液を撹拌しながら添加した。有機溶液を集め、水洗した(乾燥後、31gの所望の生成物を得た(75.5%)。吸湿性生成物; 元素分析: C24H38ClNO2; MW: 408.02. 計算値% C: 70.65; H: 9.39; Cl: 8.69; N: 3.43; O: 7.84; 実測値 % C:70.60; H: 9.46; Cl: 8.71; N: 3.42; O: 7.81。
【0058】
N,N-ジエチルアミノエチル4-[l-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]ベンゾエート.HClの調製
34.9 g(0.1モル)の4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]安息香酸(ベキサロテン; Targretin(登録商標))を300mlのクロロホルムに溶解した。この反応混合物に20.6gのN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドを添加した。この反応混合物に11.6gのジメチルアミノエタノールを添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。ろ過によって固形物を除去した。このクロロホルム溶液を5%NaHCO3(2×lOOml)及び水(3×100ml)で洗浄した。この有機溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過によって硫酸ナトリウムを除去した。この反応混合物に3.6gのHClガス/エーテル(100ml)を撹拌しながら添加した。ろ過によって固体の生成物を集めた。乾燥後、40gの所望の生成物(85.8%)を得た。吸湿性生成物; 元素分析: C30H42ClNO2; MW: 484.11. 計算値 % C:74.43; H: 8.74; Cl: 7.32; N: 2.89; O: 6.61; 実測値 % C: 74.39; H: 8.76; Cl: 7.29; N: 2.91, O: 6.65。
【産業上の利用可能性】
【0059】
一般式(l〜27)‘構造1〜27’のプロドラッグは、レチノイド又はレチノイド様化合物より優れている。これらは、ヒト又は動物において、レチノイド又はレチノイド様化合物治療可能な状態を治療するのに医薬として使用され得る。これらは、アクネ、アクネ瘢痕、乾癬、魚鱗癬、湿疹、角化異常症、前癌病変、化学的予防、いぼ、サルコイドーシスの治療、光により老化した皮膚の治療、光により老化した皮膚の予防、年代的に老化した皮膚、脱毛、及び種々の癌の治療に用いることができる。


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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−515716(P2010−515716A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545245(P2009−545245)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050122
【国際公開番号】WO2008/087493
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509023539)
【Fターム(参考)】