非常停止回路装置
【課題】非常停止回路装置において、簡単な構成により、非常停止回路に対して非常停止スイッチ部の着脱を容易とすると共に、低コスト化を図る。
【解決手段】本装置1は、ボタンが押されることにより自己の内部回路を開路する複数の非常停止スイッチ部2と、スイッチ部2が互いに直列接続され、前記いずれかのスイッチ部2が開路されることにより、負荷5が接続された電気回路10を非常停止として遮断する非常停止回路3と、を備える。非常停止スイッチ部2は非常停止回路3に対して着脱自在であり、いずれかの非常停止スイッチ部2が取り外された状態においては非常停止回路3におけるスイッチ部2を取り外した回路部分を短絡させ、該スイッチ部2が装着された状態においては短絡を開放する短絡開放切替手段4を備え、短絡開放切替手段4は、各非常停止スイッチ部2毎に設けられ、スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替える。
【解決手段】本装置1は、ボタンが押されることにより自己の内部回路を開路する複数の非常停止スイッチ部2と、スイッチ部2が互いに直列接続され、前記いずれかのスイッチ部2が開路されることにより、負荷5が接続された電気回路10を非常停止として遮断する非常停止回路3と、を備える。非常停止スイッチ部2は非常停止回路3に対して着脱自在であり、いずれかの非常停止スイッチ部2が取り外された状態においては非常停止回路3におけるスイッチ部2を取り外した回路部分を短絡させ、該スイッチ部2が装着された状態においては短絡を開放する短絡開放切替手段4を備え、短絡開放切替手段4は、各非常停止スイッチ部2毎に設けられ、スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷動作を非常時に停止させる非常停止回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械装置等において緊急に可動部や発熱部などの動作を停止させる手段として非常停止ボタンが用いられる。非常停止ボタンが物理的に押下されると、制御回路に対する直接割込みが発生して装置が停止する。非常停止ボタンは、規模の大きい機械装置では、作業者がすぐに押すことができるように、装置周辺に複数設置される。通常、複数個の非常停止ボタンはシリーズに接続されるので、保守や調整のためにいずれかの非常停止ボタンを切離す場合、非常停止ボタンが抜けた間を物理的につないで短絡する手間が発生する。ところで、プログラム機器の信頼性を向上させ、特定の規格に沿ったバス上に非常停止ボタンを接続することが考えられる。この方法では、一般の機械制御と同様にプログラマブルに非常停止ボタンなどの回路の取り外しを実現でき、物理的に短絡させる手間を省くことができる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】神余浩夫、茂木剛著「安全シーケンサ“MELSEC Safety”」三菱電機技報2007年4月号第41頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した非特許文献1に示されるような信頼性を高めたプログラム機器による回路を用いる方法では、信頼性向上のために複数のCPUを用いて機器を構成することなどからコストが高く、また、使用できるプログラム機器が限られることから使用部品などの選定が制約されるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、非常停止回路に対して非常停止スイッチ部の着脱が容易で低コストの非常停止回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、ボタンが押されることにより回路を開路する複数の非常停止スイッチ部と、これらのスイッチ部が互いに直列接続されており、前記いずれかのスイッチ部が開路されることにより、負荷が接続された電気回路を非常停止として遮断する非常停止回路と、を備えた非常停止回路装置において、前記非常停止スイッチ部は非常停止回路に対して着脱自在であり、前記いずれかの非常停止スイッチ部が取り外された状態においては非常停止回路における該スイッチ部を取り外した回路部分を短絡させ、該スイッチ部が装着された状態においては前記短絡を開放する短絡開放切替手段を備え、前記短絡開放切替手段は、前記各非常停止スイッチ部毎に設けられ、該スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記短絡と開放を切り替えるものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の非常停止回路装置において、前記短絡開放切替手段は、リレー回路を有し、前記非常停止スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記リレー回路を動作させることにより前記短絡と開放を切り替えるものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の非常停止回路装置において、前記非常停止スイッチ部の着脱の状態を表示する表示器を備えたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常停止回路装置において、前記非常停止スイッチ部と非常停止回路の相互に着脱される着脱部において、前記非常停止スイッチ部側は凸形状を成し、非常停止回路側は前記凸形状に嵌合する凹形状を成しているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、短絡開放切替手段が非常停止スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、非常停止回路に対して非常停止スイッチ部の着脱が容易であり、また、高価なプログラム機器などを用いることなく物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、低コストの非常停止回路装置を実現できる。また、短絡開放切替手段が各非常停止スイッチ部毎に設けられているので、複数個存在する非常停止スイッチ部から任意のものを任意の個数だけ自由に切離すことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、接続か非接続かを検出する特殊形状の接続部品などを用いることなく、市販の電気回路部品を用いて低コストで短絡開放切替手段を実現できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、取り外されて無効となっている非常停止スイッチ部の部分を容易に判断することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、電圧が印加されている可能性のある非常停止回路側における凹形状部には手や物が接触しにくく、非常停止スイッチ部が接続されていない場合に、電極などに不用意に触れて感電することや漏電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図2】同上装置の適用例を示す回路図。
【図3】同上装置の他の適用例を示す回路図。
【図4】第2の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図5】第3の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図6】(a)は第4の実施形態に係る非常停止スイッチ部を取り外した状態の回路図、(b)は同スイッチ部を取り付けた状態の回路図。
【図7】同上非常停止スイッチ部の変形例を示す回路図。
【図8】(a)は同上非常停止スイッチ部のさらに他の変形例を取り外した状態の回路図、(b)は同スイッチ部を取り付けた状態の回路図。
【図9】第5の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図10】第6の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図11】同上装置の適用例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1、図2は第1の実施形態に係る非常停止回路装置を示し、図3は変形例を示す。図1、図2に示すように、非常停止回路装置1は、ボタンが押されることにより自己の内部回路を開路する複数の非常停止スイッチ部2(単に、スイッチ部2とも記す)と、これらのスイッチ部2が互いに直列接続され、いずれかのスイッチ部2が開路されることにより、負荷5が接続された電気回路10を非常停止として遮断する非常停止回路3と、を備えている。
【0016】
非常停止スイッチ部2は、1端面に接点を配置した電極2a,2bと、常時閉の押しボタン開閉スイッチ20と、電極2aから開閉スイッチ20を経由して電極2bに至る回路2cと、電極2a,2bの接点を配した端面から突出する凸部材21とを備え、これらを一体化して構成されている。電極2a,2b間は、開閉スイッチ20のボタンが押されると回路2cが開路されて互いに絶縁され、押されていないときには互いに導通されている。非常停止スイッチ部2は非常停止回路3に対して着脱自在の構造を有する。図1、図2には、一部のスイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態が示されている。
【0017】
非常停止回路3は、両端に正負の電圧が印加される1本の電気回路10に、開閉スイッチ11と、電磁リレー30と、複数の短絡開放切替手段4とを備えて、これらを直列接続して構成されている。開閉スイッチ11は、非常停止回路装置1そのものを動作開始させるスイッチであり、また、電気回路10を遮断して負荷5を強制的に非常停止することができるスイッチでもある。電磁リレー30は、電磁コイル3a側が電気回路10に接続されており、接点3b側には負荷5を非常停止する非常停止出力回路31が回路3cを介して接続されている。接点3bは、通常、常時開接点(a接点)が用いられるが、常時閉接点(b接点)とすることもできる。また、電磁リレー30は、ソリッドステートリレーとすることもできる。また、非常停止出力回路31を省略して、電磁リレー30の出力によって直接、負荷5を非常停止するようにしてもよい。この場合、電磁リレー30が非常停止出力回路31と見做される。なお、図中の正負の符号は、直流電源に接続されるという意味であり、いずれの端子が正か負かを決めるものではない。
【0018】
短絡開放切替手段4は、いずれかの非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態においては非常停止回路3におけるスイッチ部2を取り外した回路部分を短絡させ、スイッチ部2が装着された状態においては短絡を開放する。短絡開放切替手段4は、電気回路10を開放して成る2つの接点10a,10bを短絡させる短絡片4cと、接点10a,10bのそれぞれから分岐した電極4a,4bとを備えている。電極4a,4bの接点は、非常停止スイッチ部2の電極2a,2bの接点の配置に対応させて非常停止回路3に配設されている。非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態においては、電気回路10を開放して成る2つの接点10a,10bが短絡片4cによって短絡される。スイッチ部2が装着された状態においては、短絡片4cがスイッチ部2の凸部材21によって移動されて接点10a,10b間が開路(開放)されると共に、電極4a,4bと電極2a,2bとが互いに電気的に接続される。つまり、短絡開放切替手段4は、各非常停止スイッチ部2を配置する場所毎に設けられ、スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替える。
【0019】
非常停止スイッチ部2は、非常停止回路3に装着された状態において、スイッチ部2の電極2a,2b、回路2c、および開閉スイッチ20が、短絡片4cに代わって電気回路10の接点10a,10b間を電気的に短絡する。この状態で、非常停止スイッチ部2の開閉スイッチ20のボタンが押されると、接点10a,10b間、従って、電気回路10が回路され、負荷5が非常停止される。このように、ある非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に接続(装着)された場合、当該の非常停止スイッチ部2については、その接続部における電気回路10の接点10a,10b間の回路は開き、接続された非常停止スイッチ部2が、非常停止スイッチとして有効な状態となる。逆に、ある非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に接続されていない場合、非常停止回路3側の対応する接続部における接点10a,10b間の回路は閉路とされ、当該接続部においては非常停止スイッチ部2が無効な状態となり、他の接続部に接続された有効な非常停止スイッチ部2によって非常停止回路3が構成される。
【0020】
非常停止回路装置1を適用したシステムの動作を説明する。非常停止回路装置1は、上記構成のもとで、いずれかの非常停止スイッチ部2のボタンが押されることにより非常停止回路3が電気回路10を遮断する。電気回路10が遮断されると、電気回路10に接続された負荷5は、その接続部(本実施例の場合、電磁リレー30)を介して、少なくとも非常停止すべきとの非常停止信号を受けるか、または、直接、非常停止される。負荷5は、非常停止用の信号を受けると、安全性や復旧時の作業を最小とするなどの観点に基づく負荷5毎の個々の態様のもとで、非常停止される。非常停止回路装置1は、複数の非常停止スイッチ部2を空間的に広がった大規模の負荷5の周辺に分散させて配置することにより、負荷5の動作を広範囲の場所において緊急停止できるシステムを、容易に構築することができる。
【0021】
図3に示す例は、負荷5が複数のユニットからなり、各ユニット負荷5(ユニット化された負荷5)が非常停止スイッチ部2と一緒に非常停止回路3から取り外し可能とされている例を示す。また、この例では、非常停止スイッチ部2だけを非常停止回路3から取り外すことも可能とされている。負荷5として、機械加工装置の他に、化学処理、洗浄、加熱冷却、組立、分解などの種々の処理を行う装置を対象とすることができる。そこで、複数の工程を含む組立ラインのシステムであって、各工程毎に1つまたは複数の処理ユニット負荷5を含む場合に、各ユニット負荷5毎に非常停止スイッチ部2を設けて非常停止回路装置1を備えたシステムを構成する。各ユニット負荷5は、その配置寸法や配置方法など、特に、電気的インターフェースや機械的インターフェースを共通化して、配置等に互換性のあるものとされている。そこで、例えば、ロボットセル生産システムをユニット負荷5によって構成し、非常停止回路装置1を備えたものとする。このようなユニット負荷5を有するシステムにおいて、いずれかのユニット負荷5を保守点検したり、交換したり、生産調整のために停止したり、再稼働させたりすることが、非常停止回路3から非常停止スイッチ部2を着脱することにより、短期間のシステム停止のみで、または、なんらシステム停止をすることなく、容易に行えるようになる。
【0022】
本実施形態の非常停止回路装置1によれば、短絡開放切替手段4が非常停止スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、非常停止回路3に対して非常停止スイッチ部2の着脱が容易であり、また、高価なプログラム機器などを用いることなく物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、低コストの非常停止回路装置1を実現できる。また、短絡開放切替手段4が各非常停止スイッチ部2毎に設けられているので、複数個存在する非常停止スイッチ部2から任意のものを任意の個数だけ自由に切離すことができる。なお、図2、図3における本実施形態の適用例を示す回路は、以下に示す第2乃至第5の実施形態の装置の適用例とすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態の非常停止回路装置1は、第1の実施形態とは短絡開放切替手段4をリレー回路40を用いて構成する点が異なり、他は同様である。すなわち、本実施形態における短絡開放切替手段4は、非常停止スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によってリレー回路40を動作させることにより、非常停止スイッチ部2の着脱部における電気回路10の短絡と開放を切り替える。リレー回路40は、常時閉接点(b接点)型の電磁リレーであり、その接点10cが電気回路10に直列接続(すなわち回路中に挿入)されている。接点10cの両側から分岐された電極4a,4b、および非常停止スイッチ部2側の電極2a,2b、凸部材21、開閉スイッチ20の構成は第1の実施形態と同様である。リレー回路40は、接点10cを開閉するための電磁コイル4fと、電磁コイル4fに通電する線路に設けられた電極4d,4eと、前記電極4d,4e間を短絡させる短絡片4cとを備えている。
【0024】
非常停止回路装置1が動作中であって非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に装着された状態においては、短絡片4cがスイッチ部2の凸部材21によって移動されて電極4a,4b間が短絡され、電磁コイル4fが励磁されて接点10cが開路(開放)されると共に、電極4a,4bと電極2a,2bとが互いに電気的に接続されている(図4の下部参照)。また、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態においては、電磁コイル4fは非励磁状態であり、接点10cは短絡状態(閉状態)とされている(図4の上部参照)。このように、短絡開放切替手段4は、スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作に基づいてリレー回路40を動作させ、電気回路10の短絡と開放を切り替える。リレー回路40は、ソリッドステートリレーとすることもできる。本実施形態の非常停止回路装置1によれば、市販の電気回路部品(電磁リレー)を用いて低コストで短絡開放切替手段4を実現できる。
【0025】
(第3の実施形態)
図5は第3実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態の非常停止回路装置1は、第1または第2の実施形態の非常停止スイッチ部2における凸部材21に代えて、互いに短絡された電極2d,2eを、電極2a,2bの接点の配置面側に配置して備え、短絡開放切替手段4における短絡片4cに代えて、電極4d,4eの接点を電極4a,4bの接点の配置面側に配置して備えるものである。このような短絡開放切替手段4と非常停止スイッチ部2の構成によると、非常停止スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替える構成を、短絡片4cのような可動部のない、より単純な構造によって非常停止回路装置1を構成できる。
【0026】
(第4の実施形態)
図6、図7、および図8は第4の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態は、上述の第1乃至第3の実施形態における非常停止スイッチ部2と非常停止回路3の相互に着脱される着脱部において、非常停止スイッチ部2側は凸形状を成し、非常停止回路3側は前記凸形状に嵌合する凹形状を成すように構成したものである。図6(a)に示すように、非常停止スイッチ部2側の着脱部は、電極2a,2bの接点を配置した電極保持部22である。非常停止回路3側の着脱部は、短絡開放切替手段4における電極4a,4bの接点を配置保持した電極保持部とこの電極保持部よりも突出してこれを囲む外壁部41との部分である。図6(b)に示すように、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3側、従って短絡開放切替手段4側に装着された状態において、外壁部41は電極保持部22の外周を囲む配置となる。図7、図8(a)(b)は、それぞれ変形例を示す。図8(a)(b)の例は、電極そのものに凹凸形状を付与するものであり、短絡開放切替手段4における電極xを凹形状とし、非常停止スイッチ部2における電極yを凸形状とし、外壁部41と電極保持部22の嵌合に加え、電極x,yが互いに嵌合する構成としたものである。
【0027】
本実施形態によれば、電圧が印加されている可能性のある非常停止回路3側における凹形状部には手や物が接触しにくく、非常停止スイッチ部2が接続されていない場合に、非常停止回路3側の電極などに不用意に触れて感電することや漏電を防止できる。
【0028】
(第5の実施形態)
図9は第5の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態は、第4の実施形態において、非常停止スイッチ部2の着脱の状態を表示する表示器6を備えたものであり、他の点は同様である。表示器6を動作させるために、短絡開放切替手段4を構成するリレー回路40は、2極接点、すなわち、常時閉接点10bに加えて、常時開接点6aを有している。非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に装着されることにより、電極4d,4e間が短絡されて電磁コイル4fが動作し、接点6aが閉じられて表示器6が点灯し、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外しされることにより、電磁コイル4fが停止し、接点6aが開かれて表示器6が消灯する。表示器6は、例えば、ランプや発光素子(LED)を用いることができる。本実施形態によれば、非常停止スイッチ部2が接続された接続部については、表示器6が点灯し、その状態を知ることができ、また、無効となっている非常停止スイッチ部2部分を容易に判断することができる。このような表示器6は、短絡開放切替手段4に電磁リレーを用いるかどうかに関わらず、他の実施形態においても同様に備えることができる。すなわち、リレー回路40の接点6aの代わりに、非常停止スイッチ部2の着脱に応じて表示器6を点灯、消灯させるための接点を設ければよい。
【0029】
(第6の実施形態)
図10、図11は第6の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態は、負荷5が複数のユニットからなる第1の実施形態における図3に示した例の変形である。すなわち、押しボタン式の非常停止スイッチ部2は、そのスイッチ部2を構成する開閉スイッチ20に連動する非常停止スイッチ70を更に備えており、この点が第1の実施形態と異なる。スイッチ20のボタンが押されると、スイッチ20の接点が開路(短絡開放)されると共に、スイッチ70の接点も開路される。ユニット負荷5は、当該負荷5を制御するユニット制御回路51を有する。ユニット制御回路51は、スイッチ70の接点の開路によって、例えば、電磁リレー7を介して、非常停止される。電磁リレー7は、スイッチ70の接点に回路7c(線路)によって直列接続された電磁コイル7aと、電磁コイル7aの活性化によって閉路される常時開接点7bとを有する。接点7bは、回路7dによってユニット制御回路51に接続されている。スイッチ20のボタンが押されることにより、スイッチ70と電磁リレー7とを介してユニット制御回路51、すなわちユニット負荷5が非常停止される。
【0030】
上述のように行われるユニット負荷5の非常停止は、ユニット負荷5が非常停止スイッチ部2と共に非常停止回路3から、電気的に、または空間的に、切り離されて単独で動作されている場合においても、開閉スイッチ20、従ってこれに連動したスイッチ70によって、行うことができる。本実施形態の非常停止回路装置1によれば、いずれかのユニット負荷5を保守点検したり、交換したり、生産調整のために停止したり、再稼働させたりすることが、容易に行えるようになる。なお、電磁リレー7は、必ずしも必須ではなく、スイッチ70をユニット制御回路51に直結して非常停止させるようにすることもできる。また、接点7bはユニット制御回路51の態様により常時閉接点とすることもできる。
【0031】
非常停止回路装置1は、非常停止スイッチ部2、従ってユニット負荷5が非常停止回路3に接続されている場合に、非常停止出力回路31からの非常停止信号をユニット制御回路51に送信して、非常停止することができる。この場合、ユニット負荷5は、内外二重の停止信号を受けることになる。また、非常停止スイッチ部2は、ユニット負荷5と一緒に非常停止回路3から切り離されずに、単独で、非常停止スイッチ部2のみが非常停止回路3から切り離されるようにすることもできる(図11参照)。この場合、電磁リレー7とスイッチ70とを接続する回路7cをフレキシブルにしたり、接離用のコネクタや接点を設けたりすればよい。
【0032】
なお、本発明は、上記各実施形態で説明した構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から電気的に分離される前に、電気回路10におけるスイッチ部2を取り外した回路部分の短絡を、短絡開放切替手段4によって完了する構成とすることにより、非常停止回路装置1と、これを適用した負荷5とが動作中に、これらを動作停止させることなく、非常停止スイッチ部2を非常停止回路3から取り外すことができる。同様に、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に対して電気的に接続された後に、電気回路10の当該回路部分を開路(開放)する構成とすることにより、非常停止回路装置1と、これが適用した負荷5とが稼働中に、これらを停止させることなく、非常停止スイッチ部2を非常停止回路3から取り外すことができる。
【0033】
上述のように短絡または開路のタイミングを調整するには、例えば、第1および第2の実施形態におけるように凸部材21を用いる場合、凸部材21を後退可能としておく。スイッチ部2を外す場合には、事前に凸部材21を一時的に後退させることにより突出量を減少させて電気回路10の該当部分を短絡させ、また、スイッチ部2を装着する場合には、同様に一時的に突出量を減少させた状態でスイッチ部2を装着し、その後、凸部材21を通常の突出量とすることにより電気回路10の該当部分を開放することができる。なお、非常停止スイッチ部2の開閉スイッチ20を開閉するボタンは、押すことに限らず、引いたり、回したり、倒したりして、何らかの操作によってスイッチ20を開閉操作できるものであればよく、任意の形状や任意の動作機構のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 非常停止回路装置
2 非常停止スイッチ部(スイッチ部)
3 非常停止回路
4 短絡開放切替手段
6 表示器
10 電気回路
40 リレー回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷動作を非常時に停止させる非常停止回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械装置等において緊急に可動部や発熱部などの動作を停止させる手段として非常停止ボタンが用いられる。非常停止ボタンが物理的に押下されると、制御回路に対する直接割込みが発生して装置が停止する。非常停止ボタンは、規模の大きい機械装置では、作業者がすぐに押すことができるように、装置周辺に複数設置される。通常、複数個の非常停止ボタンはシリーズに接続されるので、保守や調整のためにいずれかの非常停止ボタンを切離す場合、非常停止ボタンが抜けた間を物理的につないで短絡する手間が発生する。ところで、プログラム機器の信頼性を向上させ、特定の規格に沿ったバス上に非常停止ボタンを接続することが考えられる。この方法では、一般の機械制御と同様にプログラマブルに非常停止ボタンなどの回路の取り外しを実現でき、物理的に短絡させる手間を省くことができる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】神余浩夫、茂木剛著「安全シーケンサ“MELSEC Safety”」三菱電機技報2007年4月号第41頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した非特許文献1に示されるような信頼性を高めたプログラム機器による回路を用いる方法では、信頼性向上のために複数のCPUを用いて機器を構成することなどからコストが高く、また、使用できるプログラム機器が限られることから使用部品などの選定が制約されるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、非常停止回路に対して非常停止スイッチ部の着脱が容易で低コストの非常停止回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、ボタンが押されることにより回路を開路する複数の非常停止スイッチ部と、これらのスイッチ部が互いに直列接続されており、前記いずれかのスイッチ部が開路されることにより、負荷が接続された電気回路を非常停止として遮断する非常停止回路と、を備えた非常停止回路装置において、前記非常停止スイッチ部は非常停止回路に対して着脱自在であり、前記いずれかの非常停止スイッチ部が取り外された状態においては非常停止回路における該スイッチ部を取り外した回路部分を短絡させ、該スイッチ部が装着された状態においては前記短絡を開放する短絡開放切替手段を備え、前記短絡開放切替手段は、前記各非常停止スイッチ部毎に設けられ、該スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記短絡と開放を切り替えるものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の非常停止回路装置において、前記短絡開放切替手段は、リレー回路を有し、前記非常停止スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記リレー回路を動作させることにより前記短絡と開放を切り替えるものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の非常停止回路装置において、前記非常停止スイッチ部の着脱の状態を表示する表示器を備えたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常停止回路装置において、前記非常停止スイッチ部と非常停止回路の相互に着脱される着脱部において、前記非常停止スイッチ部側は凸形状を成し、非常停止回路側は前記凸形状に嵌合する凹形状を成しているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、短絡開放切替手段が非常停止スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、非常停止回路に対して非常停止スイッチ部の着脱が容易であり、また、高価なプログラム機器などを用いることなく物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、低コストの非常停止回路装置を実現できる。また、短絡開放切替手段が各非常停止スイッチ部毎に設けられているので、複数個存在する非常停止スイッチ部から任意のものを任意の個数だけ自由に切離すことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、接続か非接続かを検出する特殊形状の接続部品などを用いることなく、市販の電気回路部品を用いて低コストで短絡開放切替手段を実現できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、取り外されて無効となっている非常停止スイッチ部の部分を容易に判断することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、電圧が印加されている可能性のある非常停止回路側における凹形状部には手や物が接触しにくく、非常停止スイッチ部が接続されていない場合に、電極などに不用意に触れて感電することや漏電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図2】同上装置の適用例を示す回路図。
【図3】同上装置の他の適用例を示す回路図。
【図4】第2の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図5】第3の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図6】(a)は第4の実施形態に係る非常停止スイッチ部を取り外した状態の回路図、(b)は同スイッチ部を取り付けた状態の回路図。
【図7】同上非常停止スイッチ部の変形例を示す回路図。
【図8】(a)は同上非常停止スイッチ部のさらに他の変形例を取り外した状態の回路図、(b)は同スイッチ部を取り付けた状態の回路図。
【図9】第5の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図10】第6の実施形態に係る非常停止回路装置の回路図。
【図11】同上装置の適用例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1、図2は第1の実施形態に係る非常停止回路装置を示し、図3は変形例を示す。図1、図2に示すように、非常停止回路装置1は、ボタンが押されることにより自己の内部回路を開路する複数の非常停止スイッチ部2(単に、スイッチ部2とも記す)と、これらのスイッチ部2が互いに直列接続され、いずれかのスイッチ部2が開路されることにより、負荷5が接続された電気回路10を非常停止として遮断する非常停止回路3と、を備えている。
【0016】
非常停止スイッチ部2は、1端面に接点を配置した電極2a,2bと、常時閉の押しボタン開閉スイッチ20と、電極2aから開閉スイッチ20を経由して電極2bに至る回路2cと、電極2a,2bの接点を配した端面から突出する凸部材21とを備え、これらを一体化して構成されている。電極2a,2b間は、開閉スイッチ20のボタンが押されると回路2cが開路されて互いに絶縁され、押されていないときには互いに導通されている。非常停止スイッチ部2は非常停止回路3に対して着脱自在の構造を有する。図1、図2には、一部のスイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態が示されている。
【0017】
非常停止回路3は、両端に正負の電圧が印加される1本の電気回路10に、開閉スイッチ11と、電磁リレー30と、複数の短絡開放切替手段4とを備えて、これらを直列接続して構成されている。開閉スイッチ11は、非常停止回路装置1そのものを動作開始させるスイッチであり、また、電気回路10を遮断して負荷5を強制的に非常停止することができるスイッチでもある。電磁リレー30は、電磁コイル3a側が電気回路10に接続されており、接点3b側には負荷5を非常停止する非常停止出力回路31が回路3cを介して接続されている。接点3bは、通常、常時開接点(a接点)が用いられるが、常時閉接点(b接点)とすることもできる。また、電磁リレー30は、ソリッドステートリレーとすることもできる。また、非常停止出力回路31を省略して、電磁リレー30の出力によって直接、負荷5を非常停止するようにしてもよい。この場合、電磁リレー30が非常停止出力回路31と見做される。なお、図中の正負の符号は、直流電源に接続されるという意味であり、いずれの端子が正か負かを決めるものではない。
【0018】
短絡開放切替手段4は、いずれかの非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態においては非常停止回路3におけるスイッチ部2を取り外した回路部分を短絡させ、スイッチ部2が装着された状態においては短絡を開放する。短絡開放切替手段4は、電気回路10を開放して成る2つの接点10a,10bを短絡させる短絡片4cと、接点10a,10bのそれぞれから分岐した電極4a,4bとを備えている。電極4a,4bの接点は、非常停止スイッチ部2の電極2a,2bの接点の配置に対応させて非常停止回路3に配設されている。非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態においては、電気回路10を開放して成る2つの接点10a,10bが短絡片4cによって短絡される。スイッチ部2が装着された状態においては、短絡片4cがスイッチ部2の凸部材21によって移動されて接点10a,10b間が開路(開放)されると共に、電極4a,4bと電極2a,2bとが互いに電気的に接続される。つまり、短絡開放切替手段4は、各非常停止スイッチ部2を配置する場所毎に設けられ、スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替える。
【0019】
非常停止スイッチ部2は、非常停止回路3に装着された状態において、スイッチ部2の電極2a,2b、回路2c、および開閉スイッチ20が、短絡片4cに代わって電気回路10の接点10a,10b間を電気的に短絡する。この状態で、非常停止スイッチ部2の開閉スイッチ20のボタンが押されると、接点10a,10b間、従って、電気回路10が回路され、負荷5が非常停止される。このように、ある非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に接続(装着)された場合、当該の非常停止スイッチ部2については、その接続部における電気回路10の接点10a,10b間の回路は開き、接続された非常停止スイッチ部2が、非常停止スイッチとして有効な状態となる。逆に、ある非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に接続されていない場合、非常停止回路3側の対応する接続部における接点10a,10b間の回路は閉路とされ、当該接続部においては非常停止スイッチ部2が無効な状態となり、他の接続部に接続された有効な非常停止スイッチ部2によって非常停止回路3が構成される。
【0020】
非常停止回路装置1を適用したシステムの動作を説明する。非常停止回路装置1は、上記構成のもとで、いずれかの非常停止スイッチ部2のボタンが押されることにより非常停止回路3が電気回路10を遮断する。電気回路10が遮断されると、電気回路10に接続された負荷5は、その接続部(本実施例の場合、電磁リレー30)を介して、少なくとも非常停止すべきとの非常停止信号を受けるか、または、直接、非常停止される。負荷5は、非常停止用の信号を受けると、安全性や復旧時の作業を最小とするなどの観点に基づく負荷5毎の個々の態様のもとで、非常停止される。非常停止回路装置1は、複数の非常停止スイッチ部2を空間的に広がった大規模の負荷5の周辺に分散させて配置することにより、負荷5の動作を広範囲の場所において緊急停止できるシステムを、容易に構築することができる。
【0021】
図3に示す例は、負荷5が複数のユニットからなり、各ユニット負荷5(ユニット化された負荷5)が非常停止スイッチ部2と一緒に非常停止回路3から取り外し可能とされている例を示す。また、この例では、非常停止スイッチ部2だけを非常停止回路3から取り外すことも可能とされている。負荷5として、機械加工装置の他に、化学処理、洗浄、加熱冷却、組立、分解などの種々の処理を行う装置を対象とすることができる。そこで、複数の工程を含む組立ラインのシステムであって、各工程毎に1つまたは複数の処理ユニット負荷5を含む場合に、各ユニット負荷5毎に非常停止スイッチ部2を設けて非常停止回路装置1を備えたシステムを構成する。各ユニット負荷5は、その配置寸法や配置方法など、特に、電気的インターフェースや機械的インターフェースを共通化して、配置等に互換性のあるものとされている。そこで、例えば、ロボットセル生産システムをユニット負荷5によって構成し、非常停止回路装置1を備えたものとする。このようなユニット負荷5を有するシステムにおいて、いずれかのユニット負荷5を保守点検したり、交換したり、生産調整のために停止したり、再稼働させたりすることが、非常停止回路3から非常停止スイッチ部2を着脱することにより、短期間のシステム停止のみで、または、なんらシステム停止をすることなく、容易に行えるようになる。
【0022】
本実施形態の非常停止回路装置1によれば、短絡開放切替手段4が非常停止スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、非常停止回路3に対して非常停止スイッチ部2の着脱が容易であり、また、高価なプログラム機器などを用いることなく物理的な動作によって短絡と開放を切り替えるので、低コストの非常停止回路装置1を実現できる。また、短絡開放切替手段4が各非常停止スイッチ部2毎に設けられているので、複数個存在する非常停止スイッチ部2から任意のものを任意の個数だけ自由に切離すことができる。なお、図2、図3における本実施形態の適用例を示す回路は、以下に示す第2乃至第5の実施形態の装置の適用例とすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態の非常停止回路装置1は、第1の実施形態とは短絡開放切替手段4をリレー回路40を用いて構成する点が異なり、他は同様である。すなわち、本実施形態における短絡開放切替手段4は、非常停止スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によってリレー回路40を動作させることにより、非常停止スイッチ部2の着脱部における電気回路10の短絡と開放を切り替える。リレー回路40は、常時閉接点(b接点)型の電磁リレーであり、その接点10cが電気回路10に直列接続(すなわち回路中に挿入)されている。接点10cの両側から分岐された電極4a,4b、および非常停止スイッチ部2側の電極2a,2b、凸部材21、開閉スイッチ20の構成は第1の実施形態と同様である。リレー回路40は、接点10cを開閉するための電磁コイル4fと、電磁コイル4fに通電する線路に設けられた電極4d,4eと、前記電極4d,4e間を短絡させる短絡片4cとを備えている。
【0024】
非常停止回路装置1が動作中であって非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に装着された状態においては、短絡片4cがスイッチ部2の凸部材21によって移動されて電極4a,4b間が短絡され、電磁コイル4fが励磁されて接点10cが開路(開放)されると共に、電極4a,4bと電極2a,2bとが互いに電気的に接続されている(図4の下部参照)。また、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外された状態においては、電磁コイル4fは非励磁状態であり、接点10cは短絡状態(閉状態)とされている(図4の上部参照)。このように、短絡開放切替手段4は、スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作に基づいてリレー回路40を動作させ、電気回路10の短絡と開放を切り替える。リレー回路40は、ソリッドステートリレーとすることもできる。本実施形態の非常停止回路装置1によれば、市販の電気回路部品(電磁リレー)を用いて低コストで短絡開放切替手段4を実現できる。
【0025】
(第3の実施形態)
図5は第3実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態の非常停止回路装置1は、第1または第2の実施形態の非常停止スイッチ部2における凸部材21に代えて、互いに短絡された電極2d,2eを、電極2a,2bの接点の配置面側に配置して備え、短絡開放切替手段4における短絡片4cに代えて、電極4d,4eの接点を電極4a,4bの接点の配置面側に配置して備えるものである。このような短絡開放切替手段4と非常停止スイッチ部2の構成によると、非常停止スイッチ部2の着脱に伴う物理的な動作によって短絡と開放を切り替える構成を、短絡片4cのような可動部のない、より単純な構造によって非常停止回路装置1を構成できる。
【0026】
(第4の実施形態)
図6、図7、および図8は第4の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態は、上述の第1乃至第3の実施形態における非常停止スイッチ部2と非常停止回路3の相互に着脱される着脱部において、非常停止スイッチ部2側は凸形状を成し、非常停止回路3側は前記凸形状に嵌合する凹形状を成すように構成したものである。図6(a)に示すように、非常停止スイッチ部2側の着脱部は、電極2a,2bの接点を配置した電極保持部22である。非常停止回路3側の着脱部は、短絡開放切替手段4における電極4a,4bの接点を配置保持した電極保持部とこの電極保持部よりも突出してこれを囲む外壁部41との部分である。図6(b)に示すように、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3側、従って短絡開放切替手段4側に装着された状態において、外壁部41は電極保持部22の外周を囲む配置となる。図7、図8(a)(b)は、それぞれ変形例を示す。図8(a)(b)の例は、電極そのものに凹凸形状を付与するものであり、短絡開放切替手段4における電極xを凹形状とし、非常停止スイッチ部2における電極yを凸形状とし、外壁部41と電極保持部22の嵌合に加え、電極x,yが互いに嵌合する構成としたものである。
【0027】
本実施形態によれば、電圧が印加されている可能性のある非常停止回路3側における凹形状部には手や物が接触しにくく、非常停止スイッチ部2が接続されていない場合に、非常停止回路3側の電極などに不用意に触れて感電することや漏電を防止できる。
【0028】
(第5の実施形態)
図9は第5の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態は、第4の実施形態において、非常停止スイッチ部2の着脱の状態を表示する表示器6を備えたものであり、他の点は同様である。表示器6を動作させるために、短絡開放切替手段4を構成するリレー回路40は、2極接点、すなわち、常時閉接点10bに加えて、常時開接点6aを有している。非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に装着されることにより、電極4d,4e間が短絡されて電磁コイル4fが動作し、接点6aが閉じられて表示器6が点灯し、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から取り外しされることにより、電磁コイル4fが停止し、接点6aが開かれて表示器6が消灯する。表示器6は、例えば、ランプや発光素子(LED)を用いることができる。本実施形態によれば、非常停止スイッチ部2が接続された接続部については、表示器6が点灯し、その状態を知ることができ、また、無効となっている非常停止スイッチ部2部分を容易に判断することができる。このような表示器6は、短絡開放切替手段4に電磁リレーを用いるかどうかに関わらず、他の実施形態においても同様に備えることができる。すなわち、リレー回路40の接点6aの代わりに、非常停止スイッチ部2の着脱に応じて表示器6を点灯、消灯させるための接点を設ければよい。
【0029】
(第6の実施形態)
図10、図11は第6の実施形態に係る非常停止回路装置を示す。本実施形態は、負荷5が複数のユニットからなる第1の実施形態における図3に示した例の変形である。すなわち、押しボタン式の非常停止スイッチ部2は、そのスイッチ部2を構成する開閉スイッチ20に連動する非常停止スイッチ70を更に備えており、この点が第1の実施形態と異なる。スイッチ20のボタンが押されると、スイッチ20の接点が開路(短絡開放)されると共に、スイッチ70の接点も開路される。ユニット負荷5は、当該負荷5を制御するユニット制御回路51を有する。ユニット制御回路51は、スイッチ70の接点の開路によって、例えば、電磁リレー7を介して、非常停止される。電磁リレー7は、スイッチ70の接点に回路7c(線路)によって直列接続された電磁コイル7aと、電磁コイル7aの活性化によって閉路される常時開接点7bとを有する。接点7bは、回路7dによってユニット制御回路51に接続されている。スイッチ20のボタンが押されることにより、スイッチ70と電磁リレー7とを介してユニット制御回路51、すなわちユニット負荷5が非常停止される。
【0030】
上述のように行われるユニット負荷5の非常停止は、ユニット負荷5が非常停止スイッチ部2と共に非常停止回路3から、電気的に、または空間的に、切り離されて単独で動作されている場合においても、開閉スイッチ20、従ってこれに連動したスイッチ70によって、行うことができる。本実施形態の非常停止回路装置1によれば、いずれかのユニット負荷5を保守点検したり、交換したり、生産調整のために停止したり、再稼働させたりすることが、容易に行えるようになる。なお、電磁リレー7は、必ずしも必須ではなく、スイッチ70をユニット制御回路51に直結して非常停止させるようにすることもできる。また、接点7bはユニット制御回路51の態様により常時閉接点とすることもできる。
【0031】
非常停止回路装置1は、非常停止スイッチ部2、従ってユニット負荷5が非常停止回路3に接続されている場合に、非常停止出力回路31からの非常停止信号をユニット制御回路51に送信して、非常停止することができる。この場合、ユニット負荷5は、内外二重の停止信号を受けることになる。また、非常停止スイッチ部2は、ユニット負荷5と一緒に非常停止回路3から切り離されずに、単独で、非常停止スイッチ部2のみが非常停止回路3から切り離されるようにすることもできる(図11参照)。この場合、電磁リレー7とスイッチ70とを接続する回路7cをフレキシブルにしたり、接離用のコネクタや接点を設けたりすればよい。
【0032】
なお、本発明は、上記各実施形態で説明した構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3から電気的に分離される前に、電気回路10におけるスイッチ部2を取り外した回路部分の短絡を、短絡開放切替手段4によって完了する構成とすることにより、非常停止回路装置1と、これを適用した負荷5とが動作中に、これらを動作停止させることなく、非常停止スイッチ部2を非常停止回路3から取り外すことができる。同様に、非常停止スイッチ部2が非常停止回路3に対して電気的に接続された後に、電気回路10の当該回路部分を開路(開放)する構成とすることにより、非常停止回路装置1と、これが適用した負荷5とが稼働中に、これらを停止させることなく、非常停止スイッチ部2を非常停止回路3から取り外すことができる。
【0033】
上述のように短絡または開路のタイミングを調整するには、例えば、第1および第2の実施形態におけるように凸部材21を用いる場合、凸部材21を後退可能としておく。スイッチ部2を外す場合には、事前に凸部材21を一時的に後退させることにより突出量を減少させて電気回路10の該当部分を短絡させ、また、スイッチ部2を装着する場合には、同様に一時的に突出量を減少させた状態でスイッチ部2を装着し、その後、凸部材21を通常の突出量とすることにより電気回路10の該当部分を開放することができる。なお、非常停止スイッチ部2の開閉スイッチ20を開閉するボタンは、押すことに限らず、引いたり、回したり、倒したりして、何らかの操作によってスイッチ20を開閉操作できるものであればよく、任意の形状や任意の動作機構のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 非常停止回路装置
2 非常停止スイッチ部(スイッチ部)
3 非常停止回路
4 短絡開放切替手段
6 表示器
10 電気回路
40 リレー回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンが押されることにより回路を開路する複数の非常停止スイッチ部と、これらのスイッチ部が互いに直列接続されており、前記いずれかのスイッチ部が開路されることにより、負荷が接続された電気回路を非常停止として遮断する非常停止回路と、を備えた非常停止回路装置において、
前記非常停止スイッチ部は非常停止回路に対して着脱自在であり、
前記いずれかの非常停止スイッチ部が取り外された状態においては非常停止回路における該スイッチ部を取り外した回路部分を短絡させ、該スイッチ部が装着された状態においては前記短絡を開放する短絡開放切替手段を備え、
前記短絡開放切替手段は、前記各非常停止スイッチ部毎に設けられ、該スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記短絡と開放を切り替えることを特徴とする非常停止回路装置。
【請求項2】
前記短絡開放切替手段は、リレー回路を有し、前記非常停止スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記リレー回路を動作させることにより前記短絡と開放を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の非常停止回路装置。
【請求項3】
前記非常停止スイッチ部の着脱の状態を表示する表示器を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非常停止回路装置。
【請求項4】
前記非常停止スイッチ部と非常停止回路の相互に着脱される着脱部において、前記非常停止スイッチ部側は凸形状を成し、非常停止回路側は前記凸形状に嵌合する凹形状を成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常停止回路装置。
【請求項1】
ボタンが押されることにより回路を開路する複数の非常停止スイッチ部と、これらのスイッチ部が互いに直列接続されており、前記いずれかのスイッチ部が開路されることにより、負荷が接続された電気回路を非常停止として遮断する非常停止回路と、を備えた非常停止回路装置において、
前記非常停止スイッチ部は非常停止回路に対して着脱自在であり、
前記いずれかの非常停止スイッチ部が取り外された状態においては非常停止回路における該スイッチ部を取り外した回路部分を短絡させ、該スイッチ部が装着された状態においては前記短絡を開放する短絡開放切替手段を備え、
前記短絡開放切替手段は、前記各非常停止スイッチ部毎に設けられ、該スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記短絡と開放を切り替えることを特徴とする非常停止回路装置。
【請求項2】
前記短絡開放切替手段は、リレー回路を有し、前記非常停止スイッチ部の着脱に伴う物理的な動作によって前記リレー回路を動作させることにより前記短絡と開放を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の非常停止回路装置。
【請求項3】
前記非常停止スイッチ部の着脱の状態を表示する表示器を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非常停止回路装置。
【請求項4】
前記非常停止スイッチ部と非常停止回路の相互に着脱される着脱部において、前記非常停止スイッチ部側は凸形状を成し、非常停止回路側は前記凸形状に嵌合する凹形状を成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常停止回路装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−176873(P2010−176873A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15310(P2009−15310)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]