説明

非常用バッグ及びこれを用いた非常時支援装置

【課題】 非常用物品を機能的に配し、使い勝手の良い、新たな非常用バッグを提供することである。
【解決手段】 本発明は、ドッキングステーションに載置され、当該ドッキングステーションと電気的に接続される非常用バッグである。非常用バッグは、物品を収納する収納部と、当該収納部の背当て面に設けられた一対の肩ベルトと、当該収納部の底部に形成され、ドッキングステーション側のインターフェースに結合する非常用バッグ側インターフェースと、非常用バッグ側インターフェースを介して当該ドッキングステーションからの電力を供給する電源ラインと、当該収納部の外面に設けられ、当該電源ラインに接続された第1の電源端子を有するソケットと、当該ソケットに着脱可能に取り付けられ、当該ソケットに取り付けられた状態で当該電源ラインから供給される電力により充電される蓄電池を有する懐中電灯と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害等発生時に携行される非常用バッグ及びこれを用いた非常時支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地震や火事、洪水の発生といった有事の際には、人々は、家屋等の建物から迅速に避難しなければならない場合もある。従って、非常(防災)用リュックサックは、このような突発的な事態に携行できるように、避難経路の近く(例えば玄関口)に備え付けられることが望ましい。
【0003】
下記特許文献1は、保身具とペットボトル・非常食を分けて収納できる災害非常用保身具セット収納リュックを開示する。
【0004】
また、下記特許文献2は、収納する多数の防災用具を一覧できるようにした防災用リュックサックを開示する。
【0005】
一方、各地に設置された地震計により地震波を検知し、これをコンピュータ処理して、いち早く、地震の到達予測を通知する早期地震警戒システムが知られている。かかるシステムからの通知は、例えば、テレビやラジオ等の放送波に乗せて、視聴者にリアルタイムで届けられる。特に、近年では、防災意識の高まりを受けて、さまざまな地震警報装置が提案されている。
【0006】
例えば、下記特許文献3は、気象庁サーバから専用回線を通して緊急地震速報を受けるサーバを含む地震警報装置を開示する。具体的には、サーバは、受信した緊急地震速報に基づいて、契約している家屋端末が設置されている場所での震度と予測到達時間とを計算し、それらの情報を含む地震情報をネットワークを介して家屋端末に送信する。家屋端末は、地震情報を解読し、予測到達時間の長短に応じて、異なる音声ガイド(地震警報音声)を家屋の天井に設置したスピーカから出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録第3016863号公報
【特許文献2】特開平8−238126号公報
【特許文献3】特開2009−146098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の非常用バッグは、非常時に当面必要な物品を取り揃え、コンパクトに収納しているものの、それらの物品を使用者(携行者乃至は避難者・被災者)が機能的に利用できるように設計されているとは言い難かった。例えば、特許文献2では、折り畳まれた基材シートで形成された防災用リュックサックは懐中電灯を含んでいるものの、使用者が、これを利用するには、基材シートを全て展開しなければならず、機能性の配慮が十分ではなかった。また、懐中電灯も、小袋に単に収納されるだけであり、長期間放置していた場合、非常時に電池切れであり、使用できないという状況も想定しうる。
【0009】
また、従来の非常用バッグは、その外観的形状等を理由に、一般的な家庭では保管場所に苦慮し、結局、収納棚やトランクルームといった、普段はアクセスしづらい場所にしばしば保管されることが多かった。このため、災害が発生した状況下で、避難者は非常用バッグを容易に持ち出すことができないといったことも想定しうる。
【0010】
そこで、本発明は、災害発生等の有事の際に、使用者の利用に供しやすい非常用バッグを提供することを目的とする。
【0011】
より具体的には、本発明は、非常用物品を機能的に配し、使い勝手の良い、新たな非常用バッグを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、当該非常用バッグと有機的に連動した非常時支援装置を提供することを目的とする。
【0013】
より具体的には、本発明は、平時から当該非常用バッグを適切に管理し、非常用物品の機能的劣化を防止することができるとともに、緊急地震警報等の警報を報知することのできる非常時支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ある観点に従う本発明は、ドッキングステーションの載置部に載置され、当該ドッキングステーションと電気的に接続される非常用バッグである。前記非常用バッグは、物品を収納する収納部と、使用者の背中に当接するように形成された前記収納部の第2面に設けられた、前記使用者の両肩に掛けられる一対の肩ベルトと、前記収納部の底部に形成され、前記ドッキングステーション側のインターフェースに結合する非常用バッグ側インターフェースと、前記非常用バッグ側インターフェースに接続され、前記ドッキングステーションからの電力を供給する電源ラインと、前記収納部の第1面に設けられ、前記電源ラインに接続された第1の電源端子を有するソケットと、前記ソケットに着脱可能に取り付けられ、前記ソケットに取り付けられた状態で前記電源ラインから供給される電力により充電される第1の蓄電池を有する懐中電灯と、を備える。
【0015】
また、別の観点に従う本発明は、筐体を含み、前記筐体の一部に載置部を備えたドッキングステーションと、物品を収納する収納部を有し、前記載置部に載置され前記ドッキングステーションと電気的に接続される非常用バッグとを備えた非常時支援装置である。前記ドッキングステーションは、前記筐体の内部に収容された制御回路と、外部の緊急警報システムが発信する緊急警報情報を受信する地震警報装置と、前記筐体に設けられ、表示部及び音声出力部の少なくともいずれかを含む報知部と、前記載置部に形成されたドッキングステーション側インターフェースと、を備え、前記制御回路は、前記地震警報装置によって受信した緊急警報情報に従って、前記報知部を駆動するように構成される。また、前記非常用バッグは、前記収納部の底部に形成され、前記ドッキングステーション側インターフェースに結合する非常用バッグ側インターフェースと、前記非常用バッグ側インターフェースに接続され、前記ドッキングステーションからの電力を供給する電源ラインと、前記収納部の第1面に設けられ、前記電源ラインに接続された第1の電源端子を有するソケットと、前記ソケットに着脱可能に取り付けられ、前記ソケットに取り付けられた状態で前記電源ラインから供給される電力により充電される第1の蓄電池を有する懐中電灯と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非常用バッグに非常用物品が機能的に配置され、これにより、非常用バッグの使い勝手が向上することになる。
【0017】
また、本発明によれば、平時から当該非常用バッグを適切に管理することができ、非常用物品の機能的劣化を防止することができるようになる。
【0018】
さらに、本発明によれば、当該非常用バッグと有機的に連動し、緊急地震警報等の警報を報知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る非常時支援装置の外観構成を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る非常用バッグの正面図を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る非常用バッグにおけるデバイス構成を説明するためのブロックダイアグラムである。
【図4】本発明の一実施形態に係るドッキングステーションの外観構成を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るドッキングステーションの内部のシステム構成を説明するためのブロックダイアグラムである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る非常用バッグの外観構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る非常時支援装置の外観構成を示す図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る非常用バッグの正面図を示す図である。図1に示すように、非常時支援装置は、非常用バッグ100と、ドッキングステーション200とから構成される。非常用バッグ100は、非常時に使用者が必要とする物品(非常用物品)等を収納・装備したバッグであり、使用者によってドッキングステーション200から脱離され、持ち出される。本実施形態では、非常用バッグ100は、いわゆるリュックサックの形状を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、手提げバッグの形状を有していても良い。ドッキングステーション200は、平時は、非常用バッグ100を載置し、非常用バッグ100を電気的に接続する。後述するように、ドッキングステーション200は、それ自体、例えば緊急地震警報装置を内蔵する。
【0022】
非常用バッグ100は、さまざまな物品を収納するための収納部110と、収納部110の所定面に設けられた使用者の肩に当接するための一対の肩ベルト112とを備える。従って、使用者は、一対の肩ベルト112に両肩を通すことで、非常用バッグ100を背負うことができる。本明細書では、便宜上、使用者が非常用バッグ100を背負った際に使用者の背中に当接する面を背当て面、その反対側の面を外面と呼ぶこととする。また、背負った際に使用者の右手側の側面を右側面、その反対側の面を左側面、上側を上面、下側を底面と呼ぶことにする。
【0023】
収納部110の上面には、使用者が非常用バッグ100をドッキングステーション200から引き上げやすいように、把持部114が設けられている。
【0024】
収納部110は、例えば、綿、ナイロン、ポリエステル、ビニル、皮革、合成樹脂、不織布等の軟材料乃至は可撓性材料で形成されても良いし、或いは、例えば、アルミ、ジュラルミン等の硬質性材料で形成されても良く、また、それらの混成乃至は組み合わせであっても良い。また、適宜、難燃性の材料が選択され得る。収納部110の背当て面には、クッション性の高い弾性材料が設けられる。また、収納部110の少なくとも一部には、反射材が貼着され、又は反射材料が塗布されていても良い(図示せず)。或いは、蛍光材又は蛍光材料であっても良い。肩ベルト112及び把持部114も同様の材料により構成され、適宜、クッション性の高い弾性材料が用いられる。なお、本実施形態では、非常用バッグ100の少なくとも下部が自立性を有するように、材料及び/構造が選択される。例えば、比較的軟性の材料であっても、その構造が工夫(例えば断面波側形状)され、自立性構造が確保され、又はフレームと組み合わされても良い。また、非常用バッグ100が安定的に自立できるように、収納部110の底部に突状の複数のスタビライザ116が設けられても良い。
【0025】
収納部110の下部は、ドッキングステーション200に電気的に接続できるように、インターフェース部120が設けられている(図2参照)。インターフェース部120は、電源回路122(図3参照)を含み、そこから電源ラインが収納部110の内部を延伸している(図示せず)。これにより、非常用バッグ100は、ドッキングステーション2から電力の供給を受けることができるようになっている。本実施形態では、インターフェース部120は、電磁誘導作用により電力の供給を受ける非接触(無接点)型を採用している。或いは、例えば一対の電気コネクタにより電気的接続を確立する接触型のインターフェースを採用しても良い。電源ラインは、例えば、被覆されたケーブルとして収納部110の内壁に埋め込まれ、使用者が誤って引っかけたりしないように配線されていることが好ましい。また、インターフェース部120は、接点開閉型のスイッチ121を含む。このスイッチ121は、後述するGPS追跡機の電源制御を行うために用いられる。スイッチ121は、例えば、ドッキングステーション200の突部によって押圧されるように収納部110底部に形成されたキャビティ内に設けられ、これによって、ドッキングステーション200に正しく載置された場合のみOFFとなる。
【0026】
収納部110の外面には、ソケット130が設けられ、ソケット130には、懐中電灯132が着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、ソケット130は、懐中電灯132が収納部110から突出しないように、収納部110に凹部130aが形成され、その中に設けられている。ソケット120は、懐中電灯132を確実に保持できるように、例えば硬質可撓性樹脂等に形成されている。ソケット130は、電源ラインに接続された給電用の電源端子を有し、これに対応して設けられた懐中電灯132の電源端子に当接する(図示せず)。懐中電灯132は、蓄電池を内蔵しており(図示せず)、電源端子から電力の供給を受けることができる。これにより、懐中電灯132は、ソケット130に取り付けられた状態で、内蔵された蓄電池への充電が可能になっている。また、懐中電灯132は、脱離検出用のマイクロスイッチ(図示せず)を備える。このマイクロスイッチは、懐中電灯132がソケット130に保持された状態で、ソケット130に押圧されてOFFとなり、ソケット150から脱離されると、該押圧から解放されてONとなる。懐中電灯132は、マイクロスイッチがONになると、点灯するように構成される。
【0027】
図6は、別の態様により懐中電灯132を保持する非常用バッグ100を示している。同図に示すように、本態様では、懐中電灯132は、非常用バッグ100に形成された凹部130aの周縁の少なくとも一部に狭持される。即ち、凹部132aの周縁部は、懐中電灯132の略形状に沿って形成されているが、略中央部は、使用者の手が入りやすいように、空間部が形成されている。
【0028】
収納部110の右側面から上面を通って左側面にかけて、開閉機構としての例えばファスナ118が設けられている。使用者は、ファスナ118を開放することで、収納部110の内部にアクセスし、そこへ物品を収納し、又はそこから取り出すことができる。また、収納部110は、ファスナ118の全開により収納部110の背当て面側の部分と外面側の部分とが見開き状態になるように、構成されても良い。さらに、ファスナー118は1つに限定されない。例えば、収納部110の内部は、2つのコンパートメントに区画され、それぞれに対して開閉機構が設けられても良い。
【0029】
収納部110の内部には、典型的には、図示しない非常時に必要なさまざまな物品、例えば、食料品や水、肌着、薬、簡易トイレ、簡易浄化器といったいわゆる防災用具一式が収納される。水は、例えば、収納部110内に設けられた給水タンクに充填される(図示せず)。或いは、ペットボトルであっても良い。給水タンクにはストローの一端が接続され、後述するように、他端は肩ベルト112まで延伸している。食料品や水、薬といった消費期限、賞味期限又は使用期限(以下、これらを「有効期限」と総称する。)が定められている物品には、それぞれにICタグ(RFID)が設けられる。ICタグは、例えば、物品の固体識別情報及び有効期限情報を記憶する。これらの情報は、ドッキングステーション200により読み取られて、管理される。収納部110の内部にはまた、ポータブルソーラーパネルやポータブル手回し発電機が収納されても良い(図示せず)。
【0030】
本実施形態では、収納部110内の一部にラジオ受信機140及びGPS追跡機150が取り付けられている(図3参照)。これらは、例えば、収納部110の内壁に埋め込まれていても良いし、内ポケットに収納され、適宜、取り出せるように配置されても良い。一例として、ラジオ受信機140は、そのスピーカ141が収納部110の上面乃至は側面上部に位置するように、収納部110の上部に取り付けられる。収納部110は、スピーカ141を露出させるように、その表面に開口部が形成される。ただし、これは、ラジオ受信機170がスピーカ141を必須コンポーネントとすること意味するものでなく、従って、例えば、外部出力ジャックによりイヤホン又はヘッドフォンによりラジオを聴くことを排除するものではない。ラジオ受信機140及びGPS追跡機150もまた、駆動電源としての蓄電池をそれぞれ内蔵し、電源ラインからの充電を受けるように構成される。
【0031】
一対の肩ベルト112の少なくとも一方には、使用者によって操作されるラジオ操作部142が設けられていても良い。ラジオ操作部142は、ラジオ受信機から延在する電源/制御ラインに接続されている。ラジオ操作部142は、典型的には、ボリュームボタン及び選局ボタンを含む。電源/制御ラインは、例えば、肩ベルト112の内部に埋め込まれている。使用者は、ラジオ操作部142を操作することにより、ラジオ受信機140の音量調整やチューニングを容易に行うことができる。なお、ラジオ受信機140本体に操作ボタンが設けられ、使用者はそれを操作することもできる。
【0032】
また、本実施形態では、肩ベルト112の一方には小ポケット160が形成され、その中にホイッスル161が紐部材162を介して取り付けられ、収納されている。紐部材162は、少なくとも、小ポケット160から使用者の口の位置まで長さを有する。これにより、使用者は、小ポケット160からホイッスル161を取り出して、これを使用することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、肩ベルト112の他方には、ストロー170が設けられている。ストロー170は、収納部110内に収納された給水タンクにその一端が接続され、収納部110の背当て面を貫通し、さらに肩ベルト112の内部を挿通されている。従って、使用者は、非常用バッグ100を背負ったまま、ストロー170の先端(マウスピース)を加え、給水タンクの水を吸うことができる。ストロー170の先端は、肩ベルト112に設けられた小ポケット171に収納するようにしても良い。
【0034】
さらにまた、本実施形態では、肩ベルト112の一方には小ポケット180が形成され、その中に多機能ツール181が収納されている。多機能ツール181は、例えば、ナイフ、ハサミ、缶切り等が一体的に構成されたツールである。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る非常用バッグ100におけるデバイス構成を説明するためのブロックダイアグラムである。
【0036】
上述したように、非常用バッグ100は、インターフェース部120と、懐中電灯132と、ラジオ受信機140と、GPS追跡機150とを含んで構成される。
【0037】
インターフェース部120は、電源回路122を含んで構成される。電源回路122は、例えば、誘導コイル124とAC/DCコンバータ126とを含む。誘導コイル124は、ドッキングステーション200側の誘導コイルを一次コイル(図5参照)として、相互誘導作用により、誘導電流を取り出す二次コイルである。誘導コイル124により取り出された誘導電流は、AC/DCコンバータ126に送出される。AC/DCコンバータ126は、送出される誘導電流を整流し、直流電流に変換する。AC/DCコンバータ126によって変換された直流電流は、典型的には、DC/DCコンバータ(図示せず)で所望の電圧まで降圧され、懐中電灯132、ラジオ受信機140及びGPS追跡機150に供給される。また、電源回路122は、GPS追跡機に対する電源制御回路128を含む。
【0038】
懐中電灯132は、例えばニッケル水素型の蓄電池を内蔵し、本体スイッチのON操作により蓄電池からの電力で発光素子を点灯させるように構成されている。発光素子は、LEDでもフィラメント式のいわゆる豆電球でも良い。懐中電灯132は、収納部110に設けられたソケット130に保持され、その状態で蓄電池を充電できるようになっている。
【0039】
また、懐中電灯132は、上述したように、接点開閉型のマイクロスイッチを備える。マイクロスイッチは、非常用バッグ100のソケットに保持された状態でこれに当接するように設けられる。即ち、マイクロスイッチは、懐中電灯132がソケット130に保持された状態で、ソケット130の内面に押圧されてOFFとなり、ソケット130から脱離されると、該押圧から解放されてONとなる。懐中電灯132は、マイクロスイッチがONになると通電し、本体スイッチをOFFにしない限り、点灯するように構成される。
【0040】
さらに、懐中電灯132は、停電検知回路を内蔵しても良い。停電検知回路は、ソケット130からの電力供給が遮断されたか否かを検知する。停電検知回路は、電力供給の完全な遮断を検知するのではなく、所定の基準電圧以下に低下したことを検知するように構成されても良い。電力供給の遮断は、例えば、懐中電灯132がソケットから取り外された場合や非常用バッグ100がドッキングステーション200から離脱した場合に生じる。或いは、停電により、ドッキングステーション200への電力供給が遮断した場合にも生じる。従って、地震等により停電した場合、非常用バッグ100に取り付けられた懐中電灯132が点灯するため、環境内の使用者に安心感を与え、また、使用者は非常用バッグ100の置き場所を確実に把握することができるようになる。なお、使用者が非常用バッグ100を持ち出すため、これをドッキングステーション200から離脱させた場合には、懐中電灯132を常時点灯させる必要もないため、例えば、本体スイッチをOFFにすることにより、無用な電力の消費を抑えることができる。
【0041】
ラジオ受信機140は、例えばニッケル水素型の蓄電池を内蔵し、ラジオ操作部142の操作により蓄電池からの電力でラジオ音声を聞くことができるように構成されている。なお、本実施形態では、非常時の公共情報を取得するための手段として、ラジオ受信機140を選択しているが、これに限定するものではなく、例えば携帯型テレビ受信機であっても良い。上述したように、ラジオ受信機140のラジオ操作部142は、非常用バッグ100の肩ベルト112に設けられる。コントローラは、アナログ式の操作つまみであっても良いし、例えば表示画面を含んだデジタル式の操作パネルであっても良い。使用者(避難者)は、ラジオ操作部142を操作することにより、ラジオ受信機140の音量調整やチューニングを行うことができる。また、ラジオ受信機142のスピーカ141は、例えば、収納部110の上面乃至は側面上部に位置するように設けられる。これにより、使用者が非常用バッグを背負ったときに、スピーカが、ちょうど、使用者の耳のあたりに位置し、所望のラジオ音声が聴き易く、また、床等に非常用バッグ100を載置した場合でも、周囲の物に邪魔されることなく、ラジオ音声を聴くことができる。
【0042】
GPS追跡機150は、所定の時間間隔で、GPS信号を発信する位置情報発信機であり、例えば内蔵したニッケル水素型の蓄電池により動作する。GPS信号は、例えば、発信器固有の情報及びGPS衛星から受信したGPS情報を含む。サービスセンターは、基地局を介してGPS信号を受信し、これをコンピュータ処理することにより、例えば、Webサービス等を用いて、第三者に位置情報を通知することができる。このような位置情報通知サービスは既知のサービスを用いることができる。従って、災害時に、使用者は本実施形態の非常用バッグ100を携行していれば、どこの避難所に避難したかといった情報を、家族や知人は確実に知らせることができるようになる。
【0043】
GPS追跡機150の電源ON/OFFは、例えば、インターフェース部120の電源回路122に含まれる電源制御回路128により制御される。電源制御回路128は、ドッキングステーションからの電力供給が遮断されたか否かを検知する停電検知回路を含む。電源制御回路128は、非常用バッグ100がドッキングステーション200に載置されておらず、かつ、ドッキングステーション200から電力が供給されていないことを検出した場合に、GPS追跡機の電源スイッチをONにする制御信号を出力する。これは、懐中電灯132と違って、単に停電しただけの状況では、GPSによる位置情報を取得する必要性は乏しいためである。非常用バッグ100がドッキングステーション200から離脱したか否かは、収納部110の底部に設けられたスイッチ121の開閉により検出される。なお、GPS追跡機150本体に電源スイッチが設けられていても良い。使用者は、GPS追跡が不要と判断する場合、これをOFFにして、電池の消耗を防止することができる。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態に係るドッキングステーション200の外観構成を説明するための図である。上述したように、ドッキングステーション200は、非常用バッグ100を載置し、非常用バッグ100に対して必要な電力を供給する。また、ドッキングステーション200は、緊急地震警報装置(図5参照)を内蔵し、緊急地震警報を受信すると警報を発することができるように構成されている。
【0045】
同図に示すように、本実施形態のドッキングステーション200は、略四角錐台状の筐体210により形成されているが、これに限定されない。筐体210は、例えば、略円盤状や略楕円盤状のものであっても良い。
【0046】
ドッキングステーション200の筐体210上部には肉厚の周縁部212が形成され、これによって、非常用バッグ100を載置するための凹み状の載置部214が形成されている。周縁部212の形状は、これに対応する非常用バッグ100の横断面の外周輪郭に略等しくても良い。また、周縁部212は必須ではなく、ドッキングステーション200の上部は略フラットに形成され、そこを載置部214としても良い。載置部214の面形状は、非常用バッグ100の底部の面形状に略対応する。載置部214の表面下には、誘導コイルが設けられ、インターフェースを形成している(図示せず)。
【0047】
載置部214の周縁部近傍には、非常用バッグ100の底部に設けられたスタビライザ116を受けるための凹状の受け部216が形成されている。また、載置部214には上方に僅かに突出した突部218が形成されている。突部218は、非常用バッグ100が載置部214に正しく載置された状態で、非常用バッグ100の底部のキャビティ内に設けられたスイッチ121を押圧する。これによって、非常用バッグ100がドッキングステーション200に正しく載置されているかを検出することができる。
【0048】
周縁部212の前面には、各種の操作ボタン220、インジケータ230及びスピーカ240が設けられ、使用者インターフェースを形成している。本実施形態では、インジケータ230は、複数のLEDで構成されている。ドッキングステーション200は、LEDの発光パターン(例えばカラー及び連続/点滅等の組み合わせ)により、使用者に各種の情報を提供する。例えば、ドッキングステーション200は、緊急地震警報の受信により、インジケータ230を発光させ、スピーカ240を鳴動させる。なお、操作ボタン220、インジケータ230及び/又はスピーカ240は、前面に配置されることに限定されず、例えば筐体210上端部に配置されても良い。
【0049】
ドッキングステーション200の後部には、外部電源を供給するためのインライン電源ポート及びLANに接続するためのイーサネット(登録商標)ポートが形成されている(図示せず)。図中、これらのポートにそれぞれ接続された電源ケーブル及びLANケーブルが示されている。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態に係るドッキングステーション200の内部のシステム構成を説明するためのブロックダイアグラムである。
【0051】
同図に示すように、ドッキングステーション200は、AC/DCコンバータ510と、誘導コイル520と、制御回路530と、使用者インターフェース540と、地震警報装置550と、CO2検出装置560と、通信装置570と、ICタグリーダ580とを備える。
【0052】
AC/DCコンバータ510は、電源ポートに入力される交流電流を整流し、直流電流に変換する。AC/DCコンバータ510によって変換された直流電流は、典型的には、DC/DCコンバータ(図示せず)で所望の電圧まで降圧され、制御回路530に出力される。誘導コイル520は、相互誘導作用により、非常用バッグ100に誘導電流を発生させるための一次コイルである。誘導コイル520は、非常用バッグ100の誘導コイル124と効率的に結合するように、載置部124の表面下に配置される。
【0053】
制御回路530は、典型的には、マイクロプロセッサ、メモリ、周辺チップ及びバス等を含んで構成される(図示せず)。制御回路530は、マイクロプロセッサの制御の下、プログラムされたコードを解釈、実行し、ドッキングステーション200に各種の機能を実現させる。制御回路530は、時計機能を内蔵する。制御回路530は、使用者インターフェース540と、地震警報装置550と、CO2検出装置560と、通信装置570と、ICタグリーダ580とを接続している。
【0054】
使用者インターフェース540は、操作部542、表示部544及び音声出力部546から構成される。操作部542は、例えば、電源ボタンを含む複数の操作ボタン220からなる。表示部544は、上述したように、例えば、複数のLEDが配置されたインジケータ230からなるが、これに限定されず、液晶パネル等の表示装置で構成されても良い。また、操作部542及び表示部544を一体にした液晶タッチパネルを用いても良い。音声出力部546は、スピーカ240に対応する。使用者は、制御回路530の制御の下、表示部544に示される内容や音声出力部546から出力される音声ガイダンスに従って、操作部542を操作し、制御回路530に指示を与えることができる。例えば、使用者は、操作部542を操作して、各種の設定(例えば音量設定等)を行うことができる。また、ドッキングステーション200は、制御回路530の制御の下、例えば、各種のステータスに基づいて、表示部544の表示を制御し、また、音声出力部544の出力を制御することで、使用者に各種の情報を提供する。表示部544及び/又は音声出力部546は、緊急地震警報等の警報を環境内の使用者に知らせる報知部として機能する。
【0055】
地震警報装置550は、例えば無線等で配信される緊急地震速報を受信するための装置である。このような緊急地震速報は、例えば、日本では気象庁の早期地震警戒システムより提供されている。地震警報装置550は、インターネットを介して配信される緊急地震警報を受信するようにしても良い。地震警報装置550は、緊急地震速報を受信すると、割り込み信号により制御回路530に割り込みをかける。これを受け、制御回路530は、表示部の表示を制御し、また、音声及び警報音を出力するようにスピーカを制御する。或いは、地震警報装置550が、制御回路530を介さず、表示部544及び音声出力部546を直接的に制御してもよい。また、地震警報装置550は、それ自体、地震の揺れを感知する地震センサーを備えても良い。地震センサーは、例えば、加速度センサーを含み、これによって加速度センサ地震の揺れを感知する。地震警報装置550は、地震センサーによって感知した揺れの大きさに対応する信号を制御回路530に出力する。地震センサーは、例えば、震度4強以上の揺れを検知した場合に信号を出力するようにしても良い。これを受けて、制御回路530は、地震の揺れを表示するために、表示部544の表示を制御する。これによって、使用者は、緊急地震警報のみならず、実際に発生した地震の大きさを直ちに確認することができる。
【0056】
CO2検出装置560は、環境中の二酸化炭素濃度を検出することにより、火災の発生を検知する装置である。CO2検出装置560は、環境中の二酸化炭素濃度が基準値以上の値であることを検出すると、割り込み信号により制御回路530に割り込みをかける。これを受け、制御回路530は、表示部544の表示を制御し、また、音声及び警報音を出力するように音声出力部544を制御する。或いは、CO2検出装置560が、制御回路530を介さず、インジケータ及びスピーカを直接的に制御してもよい。
【0057】
通信装置570は、LANやインターネット上のコンピュータに通信接続するための装置である。ドッキングステーション200は、制御回路530の制御の下、通信装置を介して、外部のコンピュータとネットワーク通信を行うことができる。通信装置570は、典型的には、イーサネット(登録商標)ボードである。本実施形態では、通信装置は、有線LANを接続するものとしているが、これに限定されず、無線LANに対応するものであっても良い。ドッキングステーション200は、通信装置570を介して、例えば、緊急地震警報を受信することができる。また、
【0058】
ICタグリーダ580は、ICタグと非接触型の通信を行って、ICタグに記憶された情報を読み出す装置である。ICタグは、非常用バッグ100に収納されている所定の物品に取り付けられる。ICタグは、例えば、物品の固体識別情報及びその物品の有効期限情報を記憶する。制御回路530は、例えば定期的にICタグリーダを駆動して、ドッキングステーション200に載置された非常用バッグ100内の物品に取り付けられたICタグから所定の情報を読み出し、時計機能により得られる日時を用いて、個々の物品の有効期限をチェックする。制御回路530は、有効期限に近づいた物品があると判断する場合には、表示部544の表示を制御して、使用者に交換時期を知らせる。これにより、使用者は、非常用バッグ100に収納された物品の交換時期を知ることができるので、有効期限が到来する前に物品を交換し、常に利用可能な状態に維持することができるようになる。
【0059】
また、ドッキングステーション200は、制御回路530の制御の下、通信装置570を介して、読み出した所定の情報を外部の管理コンピュータに送信しても良い。例えば、管理コンピュータを管理・運用するメンテナンス業者は、送信されてきた所定の情報に基づいて、交換する物品を特定し、当該使用者に配送するようにしても良い。これにより、使用者は、非常用バッグ100に収納されている物品を入手する手間を省くことができ、非常用バッグ100の中身を常に利用可能な状態に維持することができるようになる。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、懐中電灯やラジオ受信機の操作部及びスピーカが非常用バッグに機能的に配置されているので、非常用バッグの使い勝手が向上することになる。
【0061】
また、非常用バッグは、平時には、ドッキングステーションに載置され、そこから電力の供給を受けることができるので、電力を必要とする物品の蓄電池を充電しておくことができ、非常時に電池切れになってしまうという事態を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、災害発生等の非常時に持ち出される非常用リュックサック乃至はバッグに広く適用することができるとともに、地震警報装置を含む防災装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100…非常用バッグ
110…収納部
120…肩ベルト
130…ソケット
132…懐中電灯
140…ラジオ受信機
150…GPS追跡機
200…ドッキングステーション
210…筐体
212…周縁部
214…載置部
220…操作ボタン
230…インジケータ
240…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を含み、前記筐体の一部に載置部を備えたドッキングステーションと、
物品を収納する収納部を有し、前記載置部に載置され前記ドッキングステーションと電気的に接続される非常用バッグとを備えた非常時支援装置であって、
前記ドッキングステーションは、
前記筐体の内部に収容された制御回路と、
外部の緊急警報システムが発信する緊急警報情報を受信する地震警報装置と、
前記筐体に設けられ、表示部及び音声出力部の少なくともいずれかを含む報知部と、
前記載置部に形成されたドッキングステーション側インターフェースと、を備え、
前記制御回路は、前記地震警報装置によって受信した緊急警報情報に従って、前記報知部を駆動するように構成され、
前記非常用バッグは、
前記収納部の底部に形成され、前記ドッキングステーション側インターフェースに結合する非常用バッグ側インターフェースと、
前記非常用バッグ側インターフェースに接続され、前記ドッキングステーションからの電力を供給する電源ラインと、
前記収納部の第1面に設けられ、前記電源ラインに接続された第1の電源端子を有するソケットと、
前記ソケットに着脱可能に取り付けられ、前記ソケットに取り付けられた状態で前記電源ラインから供給される電力により充電される第1の蓄電池を有する懐中電灯と、を備える、
非常時支援装置。
【請求項2】
前記非常用バッグは、使用者の背中に当接するように形成された前記収納部の第2面を有し、前記使用者の両肩に掛けられる一対の肩ベルトを備える、請求項1記載の非常時支援装置。
【請求項3】
前記懐中電灯は、前記第1の蓄電池への電力の供給が遮断されたことを検知した場合に、前記懐中電灯の発光素子を点灯するように制御する第1の停電検知回路を含む、請求項2記載の非常時支援装置。
【請求項4】
前記ドッキングステーションは、地震の揺れを感知する地震センサーをさらに備え、
前記制御回路は、前記地震センサーから出力される地震感知情報に応じて、前記報知部を駆動する、
請求項2記載の非常時支援装置。
【請求項5】
前記非常用バッグは前記収納部の一部に設けられた位置情報発信機をさらに含む、請求項2記載の非常時支援装置。
【請求項6】
前記位置情報発信機は、
前記電源ラインに接続され、前記位置情報発信機の駆動に必要な電力を供給する第2の蓄電池を備え、
前記非常用バッグは、
前記第2の蓄電池への電力の供給が遮断され、かつ、当該非常用バッグが前記ドッキングステーションの載置部に載置されていないことを検知した場合に、前記位置情報発信機を駆動するように制御する電源制御回路と、を含む、
請求項5記載の非常時支援装置。
【請求項7】
前記非常用バッグは前記収納部の一部に設けられたラジオ受信機をさらに含む、請求項2記載の非常時支援装置。
【請求項8】
前記一対の肩掛けベルトの少なくとも一方に、前記ラジオ受信機を制御するための操作部が配置されている、
請求項7記載の非常時支援装置。
【請求項9】
前記非常用バッグは、前記一対の肩掛けベルトのいずれか一方に設けられたホイッスルをさらに備える、請求項2記載の非常時支援装置。
【請求項10】
ドッキングステーションの載置部に載置され、当該ドッキングステーションと電気的に接続される非常用バッグであって、
物品を収納する収納部と、
使用者の背中に当接するように形成された前記収納部の第2面に設けられた、前記使用者の両肩に掛けられる一対の肩ベルトと、
前記収納部の底部に形成され、前記ドッキングステーション側のインターフェースに結合する非常用バッグ側インターフェースと、
前記非常用バッグ側インターフェースに接続され、前記ドッキングステーションからの電力を供給する電源ラインと、
前記収納部の第1面に設けられ、前記電源ラインに接続された第1の電源端子を有するソケットと、
前記ソケットに着脱可能に取り付けられ、前記ソケットに取り付けられた状態で前記電源ラインから供給される電力により充電される第1の蓄電池を有する懐中電灯と、を備える、
非常用バッグ。
【請求項11】
前記懐中電灯は、前記第1の蓄電池への電力の供給が遮断されたことを検知した場合に、前記懐中電灯の発光素子を点灯するように制御する第1の停電検知回路を含む、請求項10記載の非常用バッグ。
【請求項12】
前記収納部の一部に設けられた位置情報発信機をさらに備える、請求項10記載の非常用バッグ。
【請求項13】
前記位置情報発信機は、
前記電源ラインに接続され、前記位置情報発信機の駆動に必要な電力を供給する第2の蓄電池を備え、
前記非常用バッグは、
前記第2の蓄電池への電力の供給が遮断され、かつ、当該非常用バッグが前記ドッキングステーションの載置部に載置されていないことを検知した場合に、前記位置情報発信機を駆動するように制御する電源制御回路と、を含む、
請求項12記載の非常用バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230655(P2012−230655A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151977(P2011−151977)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(511167054)
【Fターム(参考)】