説明

非復帰型保護装置

【課題】温度ヒューズエレメントの作動時、スパークやプラズマ放電が生じてスイッチング部材の開離トラブルを排除して安全確実な回路遮断する非復帰型保護装置を提供する。
【解決手段】非復帰型保護装置10は金属ケース12内に温度ヒューズエレメントの低抵抗回路と電流溶断エレメントの高抵抗回路を並列接続した電路切離手段を備える。すなわち、可動接点体18、感温ペレット20、および強圧縮ばね22と弱圧縮ばね24を含む圧縮スプリングからなる温度ヒューズエレメントと、可動接点体18と並列接続状態で配置した高抵抗圧縮細線ばね26からなる電流溶断エレメントとが、一対のリード部材14,16が取付けられた金属ケース12内に収容される。動作において、この保護装置は、所定の動作温度で可動接点体が開離開放され、圧縮細線ばね26が一時的に通電を許容し電流溶断して回路遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度ヒューズなどの開離時に伴う接点溶着を防止する非復帰型保護装置、特に、感温材を用いる温度ヒューズエレメントと高抵抗の電流溶断エレメントとを組み合わせて安全に電気回路を遮断するワンショットタイプの非復帰型保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用あるいは産業用電子、電気機器の過熱による損傷を保護するために温度ヒューズが使用されている。温度ヒューズは温度の異常な上昇を検出し、速やかに回路を遮断して機器の損傷や火災を未然に防止する機能を有する非復帰型保護素子であり、小形で堅牢な構造のワンショットタイプの安全に電気回路を遮断する保護素子である。たとえば、特許文献1に開示されるような環境上問題のある有害金属を含まない低融点可溶合金を感温材に使用する可溶合金型温度ヒューズが知られている。また、公称定格電流が0.5A〜15Aと幅広いが6A以上の高電流用として、感温材に感温物質成形体を用いる感温ペレット型温度ヒューズが知られている。このうち、特許文献2は、熱可塑性樹脂からなる感温ペレットを用い所定の動作温度で動作する感温ペレット型温度ヒューズを開示している。さらに、特許文献3は感温ペレット型温度ヒューズの代表的構造である金属ケース内に可動電極や強弱スプリングと共に絶縁性化学物質を成型加工したペレットを収納し、気密封着して導出リードを設けた温度ヒューズにおいて、使用するペレットを異なる有機化合物の組み合わせ組成物で構成するものを挙げている。一方、特許文献4および5には、高負荷用温度ヒューズとして、ケーシング内に充填した易融はんだのタブレットと摺動可能な作動ピンとを用いて、接点ばねを作動ピンの摺動により作動させカットオフする温度安全スイッチが開示される。しかし、これら温度ヒューズでは接点の解離または開離時スパークやアーク放電が発生して接点部分を溶融させ、接点溶着を起こす恐れがある。
【特許文献1】特開2005−276577号公報
【特許文献2】特開2003−317589号公報
【特許文献3】特開2002−163966号公報
【特許文献4】特開平4−212234号公報
【特許文献5】特開昭56−67130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、上述する温度ヒューズを所定の動作温度で回路遮断する際に、接点部分が溶着して回路遮断に不具合を生ずることがあった。たとえば、高電圧、高電流で高負荷用の温度安全スイッチや感温材の変形が緩やかな接点の開離が徐々に行われる感温ペレット型温度ヒューズにおいて、遮断時にチャタリングが生じ、その持続で接点部分が溶解損傷して溶着するといった不具合が生ずる。このような不具合は、高電圧の場合や大電流で使用する場合、負荷が大きければ大きいほど問題となる不具合が生ずる。たとえば、動作温度での接点開離時にスパークが発生したり、動作電流により接点部の溶着を招いたりして確実かつ安全な遮断動作を困難にすることがあった。特に、直流回路で使用する温度ヒューズの場合には、回路遮断でプラズマ放電が継続して安全に遮断できないなどのトラブルが生ずることが考えられる。また、可動接点のない可溶合金型温度ヒューズにおいても溶断時の開離において溶融状態の可溶合金が切り離される際に生ずる電極間のスパークやアーク放電によって絶縁抵抗の低下やケース破壊といった不安定な解離や不具合となることがある。それゆえに、温度ヒューズの電路開放時に生ずるトラブルを回避するための何等かの対策が要請されており、常に安全に回路遮断できる非復帰型温度安全スイッチあるいは温度ヒューズを含むワンショトタイプの保護装置の提供が望まれていた。
【0004】
したがって、本発明は上述の欠点を排除するために提案されたものであり、一回限りの作動であるワンショットタイプ温度ヒューズにおいて、所定の動作温度で電路を化学的な変化による解離または物理的な変化による開離で開放する際、スパークやプラズマ放電による溶着等の不具合発生を阻止し、安全に電気回路が遮断できる新規かつ改良された保護装置の提供を目的とするものである。
【0005】
特に、スイッチング部材を感温材の物理的変形を利用して作動させ感温材の変形特性が急峻でない場合、具体的には熱可塑性樹脂などの樹脂軟化を利用したり、加温が緩やかで徐々に変形が生じたりする場合、あるいは高電圧・高電流の負荷回路や直流回路で使用するなどの不安定な作動に有効な手段として、電流ヒューズ的機能を付与して安全に回路遮断するために改良された非復帰型保護装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、主電路を形成する一対のリード部材を取付けたケースに所定の動作温度を有する感温材を含むスイッチング部材を収容し、前記リード部材間に低抵抗回路と高抵抗回路の並列回路からなる電路切離手段を接続配置し、前記感温材の所定の動作温度で低抵抗回路を開放し、その直後に、高抵抗回路の一時的な通電を許容して開放し、前記リード部材間の主電路を電気的に遮断する非復帰型保護装置が提供される。ここで、前記電路切離手段は低抵抗回路が感温材を用いた温度ヒューズエレメントであり、高抵抗回路が電流溶断エレメントであって温度ヒューズエレメントの作動後に電流ヒューズエレメントが開放して回路を遮断する。換言すると、低抵抗回路は、感温材が低融点可溶合金を使用した可溶合金型温度ヒューズ、あるいは感温ペレットを使用した感温ペレット型温度ヒューズであり、高抵抗回路は低抵抗回路の作動後に一時的に通電を許容し電流溶断により解離または開離して回路遮断させる。以下解離または開離を統一して開離として用いる。たとえば、高抵抗回路が電流溶断エレメントの場合は、温度ヒューズエレメントと電気的に並列に接続した高抵抗の金属細線からなり、一対の電路用リード部材間に接続される高抵抗バイパス回路として作用し、温度ヒューズエレメントが所定の動作温度で作動した後に一時的に通電を許容して開離し、回路遮断させる保護装置である。
【0007】
温度ヒューズエレメントの感温材には、可溶合金型温度ヒューズの場合には低融点可溶合金が用いられ、感温ペレット型温度ヒューズの場合には感温物質成形体が用いられる。後者の感温ペレット型温度ヒューズにあっては、電路切離手段の低抵抗回路が電路用リード部材の一方の電極側に配置されて感温物質成形体の物理的変形に応動するスイッチング部材が重要であり、高抵抗回路としての電流溶断エレメントは一対の電路用リード部材が形成する電気回路内にあって、スイッチング部材と電気的に並列接続した高抵抗金属細線材のコイリング圧縮ばね、または、低融点可溶金属片で構成することができる。なお、低融点可溶金属片を使用する場合はスイッチング部材が作動する感温物質成形体の有する所定の動作温度より低い融点を有し、感温物質成形体の作動前に溶融状態を呈し作動直後に一時的通電を許容して回路を遮断させる非復帰型保護装置である。
【0008】
より詳細には、感温ペレット型温度ヒューズエレメントは可動接点体および圧縮スプリングを含むスイッチング部材を筒状金属ケースに収容してなり、一対の電路用リード部材は、筒状金属ケースの一端側で絶縁材を貫通させて筒状金属ケースを気密封着した第1リードと、筒状金属ケースの他端側で直接かしめ固定した第2リードとからなり、第1リードの電極側で可動接点体を開離自在に配置構成し、常温では可動接点体に対する圧縮スプリングの押圧力を作用させて可動接点体が第1リードに圧接接触する導通状態を維持し、所定の動作温度では感温物質成形体の物理的変形に応動して第1リードと開離開放する遮断状態にスイッチングする非復帰型保護装置を開示する。ここで、圧縮スプリングは弱圧縮ばねおよび強圧縮ばねを使用して星型状の可動接点体に押圧力を付与する。一方、高抵抗回路としての電流溶断エレメントは高抵抗細線材をコイリングした圧縮細線ばねを使用して第1リードと可動接点体間に介在配置する。なお、電流溶断エレメントに低融点金属片を使用することもでき、この場合、可動接点体に押圧力を作用させる弱圧縮ばねおよび強圧縮ばねを使用して低融点金属片を可動接点体に接触配置する構造を開示する。
【0009】
また、温度ヒューズエレメントは、感温物質成形体とこの成形体に当接配置した作動ロッドとを収容するケースを具備し、電路用リード部材をこのケースに取付けた一対の導出リードで構成し、スイッチング部材を導出リードの一方の端部に装着して作動ロッドの変位で押圧力を付与する可動接点ばねとし、電流溶断エレメントを一対の導出リード間に接続配置構成し、常温では可動接点ばねが作動ロッドの押圧力の作用により導出リードの他方の端部に圧接接触して導通状態を維持し、所定の動作温度では感温物質成形体の物理的変形で作動ロッドを変位させて他方の端部から開離して遮断状態にスイッチングすることを特徴とする非復帰型保護装置を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非復帰型保護装置は、温度ヒューズエレメントの一対のリード部材に電気的接続される電路切離手段に対して、電流溶断エレメントを並列に接続した保護装置であり、それによって、回路遮断の安定化が図られ、スパークやプラズマ放電による不具合の発生を阻止して安全で確実な遮断動作を行わせる。すなわち、遮断動作が感温材による開離開放とそれに続く電流溶断エレメントへの通電による開離開放の2ステップを経て安全確実に回路遮断を達成させる。たとえば、温度ヒューズエレメントとしては一対の電極間に可溶合金またはスイッチング部材を介在させ、電流溶断エレメントとしては高抵抗細線材スプリングをリード部材の両電極間に設けて高抵抗バイパス回路を形成するものであり、前段の開離開放をスイッチング部材で、後段の開離開放を高抵抗細線材スプリングの通電発熱によって溶断させ、非導通状態を2つのステップを経て段階的にする。この場合に、高抵抗への通電では電流が抑制され、しかる後に細線材スプリングが発熱溶融して溶断するので最終的に回路遮断する時の負荷も抑制される。したがって、スパークやプラズマ放電に伴う不具合もなく、安全で確実に電気回路を遮断する改良された非復帰型保護装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非復帰型保護装置は、一対の電路用リード部材を取付けたケースに所定の動作温度を有する感温材を収容し、低抵抗回路と高抵抗回路を並列接続した電路切離手段を電路用リード部材間に接続配置し、低抵抗回路が感温材の動作温度で開放され、次いで、高抵抗回路が電流溶断等により開放されて電路用リード部材間を電気的に遮断する。たとえば、電路切離手段の低抵抗回路が感温材を用いた温度ヒューズエレメント、高抵抗回路が電流溶断エレメントとして構成する。本発明の第1の実施態様は、感温材は感温物質成形体を使用した感温ペレット型温度ヒューズエレメントであって、感温物質成形体の物理的変形に応動するスイッチング部材が電路用リード部材の一方の電極側に配置され、高抵抗回路はスイッチング部材と電気的に並列接続した高抵抗金属細線であって、温度ヒューズエレメントの作動後に一時的に通電を許容して回路遮断させることを特徴とする非復帰型保護装置である。ここで、感温ペレット型温度ヒューズエレメントのスイッチング部材は可動接点体および圧縮スプリングを筒状金属ケースに収容してなり、一対の電路用リード部材は筒状金属ケースの一端側を気密封着した絶縁材を貫通する第1リードと、筒状金属ケースの他端側で直接かしめ固定する第2リードであり、可動接点体を第1リードの電極側で開離自在に配置構成し、常温では圧縮スプリングの押圧力を作用させて可動接点体を第1リードに圧接接触する導通状態に維持し、所定の動作温度では感温物質成形体の物理的変形に作用して第1リードと開離開放する遮断状態にスイッチングする。また、前記高抵抗金属細線はコイリングした圧縮細線ばねからなる電流溶断エレメントであり、圧縮スプリングは弱圧縮ばねおよび強圧縮ばねを含み、可動接点体に押圧作用させる。この保護装置の所定の動作温度での作動において、圧縮細線ばねを溶断させるに至らない通電電流であった場合でも、弱圧縮ばねが更に可動接点体を押し離すことで細線ばねとの接触も断たれて回路遮断は確実に実行される。その結果、低抵抗回路の第1のリードと可動接点体との開離開放後に、高抵抗回路への通電でスパークやプラズマ放電を生起することなく第2ステップとしての電流溶断となって安全で確実な遮断状態のスイッチングが行われる。すなわち、可動接点体に押圧力を付与する圧縮スプリングの弱圧縮ばねと強圧縮ばねが協働し、所定の動作温度で感温ペレットが物理的変形した時の第1ステップと、次の圧縮細線ばねへの通電電流による溶断の第2ステップとで遮断状態にスイッチングするワンショットタイプの非復帰型保護装置が提供される。
【0012】
本発明の第2の実施態様は、上述する感温ペレット型温度ヒューズエレメントを利用する場合の構造上の変形例である。すなわち、感温材は感温物質成形体を使用した感温ペレット型温度ヒューズエレメントであって、感温物質成形体の物理的変形に応動するスイッチング部材が電路用リード部材の一方の電極側に配置され、高抵抗回路はスイッチング部材と電気的に並列状態で配置した低融点可溶金属体であって、この低融点可溶金属体の融点を前記感温材の動作温度より低く選定することで、温度ヒューズエレメントの作動前に溶融状態を呈し、作動後に一時的通電を許容して回路遮断させることを特徴とする非復帰型保護装置である。この場合も感温ペレット型温度ヒューズエレメントのスイッチング部材は可動接点体および圧縮スプリングを筒状金属ケースに収容してなり、一対の電路用リード部材は筒状金属ケースの一端側を気密封着した絶縁材を貫通する第1リードと、筒状金属ケースの他端側でかしめ固定する第2リードであり、可動接点体を第1リードの電極側で開離自在に配置し、常温では圧縮スプリングの押圧力を作用させて可動接点体を第1リードに圧接接触する導通状態に維持し、所定の動作温度では前記感温物質成形体の物理的変形に作用して第1リードと開離開放する遮断状態にスイッチングするもので、低融点可溶金属体は低融点金属片からなる電流溶断エレメントであり、圧縮スプリングは弱圧縮ばねおよび強圧縮ばねを含み、可動接点体に押圧作用させると共に低融点金属片を可動接点体に接触させる。この場合に、低融点金属片は所定の動作温度に達する直前に軟化溶融状態にされており、可動接点体が開離開放しても暫時軟化溶融状態の低融点金属片による通電が許容され、スパークや放電を阻止しつつ完全な遮断を実行する。
【0013】
本発明の第3の実施態様は、上述する感温ペレット型温度ヒューズエレメントを使用する場合であるがスイッチング部材の構成を異にするものであり、高負荷の電気回路に好適な保護装置である。具体的に、低抵抗回路は感温物質成形体とこの成形体に当接配置した作動ロッドとを収容するケース体を備えた温度ヒューズエレメントであって、感温物質成形体の物理的変形に応動するスイッチング部材が電路用リード部材の一方の電極側に配置され、電路用リード部材がケース体に取付けた一対の導出リードからなり、スイッチング部材は導出リードの一方の端部に装着されて作動ロッドを押圧する可動接点ばねからなり、高抵抗回路は一対の導出リード間に接続配置され、可動接点ばねと電気的に並列接続した高抵抗金属細線からなる電流溶断エレメントであり、可動接点ばねは、常温では作動ロッドの押圧力の作用により導出リードの他方の端部に圧接接触して導通状態に維持し、所定の動作温度では感温物質成形体の物理的変形で作動ロッドが移動して他方の端部から開離し、この作動後、電流溶断エレメントが一時的に通電を許容して遮断状態にスイッチングする。換言すると、作動ロッドおよび感温物質成形体を収容するケースを備え、このケースに取付けた導出リードの一方の電極端部に装着した可動接点ばねで構成され、一対の導出リード間に電流溶断エレメントとしての高抵抗回路が接続配置される。ここで、可動接点ばねは作動ロッドの押圧力の作用により常温では導出リードに圧接接触して導通状態を維持し、所定の動作温度では感温物質成形体の物理的変形で作動ロッドをシフト移動して可動接点ばねを開離開放して温度ヒューズエレメントをカットオフし、次いで高抵抗の電流溶断エレメントを通電発熱で溶断して回路を完全な遮断状態にスイッチングする。このようにして遮断時の動作は、高負荷回路であってもカットオフ時の放電、あるいは動作中の接点溶着を阻止して安定で確実な回路遮断を行う非復帰型保護装置を提供する。
【0014】
本発明の第4の実施態様は、ケースに取付けた一対の電路用リード部材の電極部間に、低抵抗回路としてのフラックス被覆付き低融点可溶合金を接続した可溶合金型温度ヒューズエレメントと、高抵抗回路としての高抵抗を有する金属細線材からなる電流溶断エレメントとを具えたワンショットタイプの非復帰型保護装置を開示する。この場合も前述の実施態様と同様に、先ず、温度ヒューズエレメントが作動して開放され、次いで、電流溶断エレメントが一時的通電後に作動して開放するのでスパークや放電が抑止され、スパークや放電に伴う不具合の発生を阻止して安全で確実な遮断状態へのスイッチングが達成される。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1の実施態様である実施例1は、温度ヒューズエレメントの作動時、スパークやプラズマ放電が生じてスイッチング部材の開離トラブルを排除して安全確実な回路遮断する非復帰型保護装置を提供する。以下、図1に示す非復帰型保護装置について図面を参照しつつ詳述する。本発明の非復帰型保護装置10は導電性および熱伝導性の良好な金属ケース12内に温度ヒューズエレメントの低抵抗回路と電流溶断エレメントの高抵抗回路を並列接続した電路切離手段を備える。具体的には、可動接点体18、感温ペレット20、および強圧縮ばね22と弱圧縮ばね24を含む圧縮スプリングからなる温度ヒューズエレメントと、可動接点体18と並列接続状態で配置した高抵抗圧縮細線ばね26からなる電流溶断エレメントとが、一対のリード部材14,16が取付けられた金属ケース12内に収容される。動作において、この保護装置は、所定の動作温度で可動接点体が開離開放され、圧縮細線ばね26が一時的に通電を許容し電流溶断して回路遮断する。図1(a)は常温時の状態における本発明の保護装置10が示される。すなわち、一対のリード部材14,16が取付けられた円筒状金属ケース12の内部には電路切離手段として、スイッチング部材と高抵抗金属細線材とが収納される。スイッチング部材は可動接点体18、感温ペレット20および強圧縮ばね22と弱圧縮ばね24とを含む圧縮スプリングからなる。一方、高抵抗金属細線材は可動接点体18と並列接続状態の圧縮細線ばね26からなる。スイッチング部材として、更に、2枚の押圧板28,30が強圧縮ばね22の前後に配置されて動作の安定化が図られる。一方、金属ケース12は円筒体に成形加工され、その一端側開口部は、第1のリード部材14を貫通配置した絶縁碍管32で閉塞すると共に封口樹脂の絶縁材33で気密封着される。また、金属ケース12の他端側開口部は、第2のリード部材16を端部でかしめ固着して閉止状態にされている。ここで、高抵抗金属細線材をコイリングした圧縮細線ばね26は第1のリード部材14と可動接点体18との間に電気的に並列接続して配置されている。電流溶断エレメントである圧縮細線ばね26は、図1(b)に拡大して示すように、第1のリード部材14の先端側の係留部19と先端電極部17が接触する可動接点体18との間に圧接状態で介在配置され電気的に導通状態にされている。この圧縮細線ばね26は高抵抗回路として使用され、第1のリード部材14と可動接点体18に常時接触し、可動接点体18とリードの先端電極部17との開離時には一時的に高抵抗のバイパス回路を形成する。この保護装置が作動する所定の動作温度において、感温ペレット20は、図1(c)に示すように、低抵抗回路を形成する可動接点体18が先端電極部17から開離開放し、一時的に細線圧縮ばね26の介在で電流規制されスパーク発生が阻止され、直後に発熱溶融して圧縮細線ばね26が断線して開離し、安定な回路遮断を達成する。ここで、高抵抗回路の抵抗値は、100V、10Aの保護装置において低抵抗回路の抵抗値に対して、数倍の数十Ωであるが、たとえ電流での断線がなくても感温ペレット20の溶解と弱圧縮ばね24側の大きなストローク作用で圧縮細線ばね26と可動接点体18との接触は切り離される。
【実施例2】
【0016】
図2(a)に示す実施例2は、上述する実施例1の変形例の非復帰型保護装置30を示し、同一部分については同一符号を用いて示している。具体的には、図2(b)に拡大して示すように、実施例1の圧縮細線ばねに替えて低融点金属片27が使用される。低融点金属片27は感温ペレットの有する所定の動作温度より低い温度の融点を有する金属合金材を組立て容易なリング状に成形加工したもので、金属ケース内の可動接点体18と第1のリード部材14の先端電極部17との間に組み込まれる。動作において、所定の動作温度における開離開放時に、低融点金属片27は溶融状態で介在しており、開離開放直後に発生するスパークを溶融状態の金属片による一時的通電により阻止する。すなわち、低融点金属片27の溶融合金がリード部材14の先端電極部17と可動接点体18との間に介在して溶着を阻止して安定な回路遮断を導くことができる。
【実施例3】
【0017】
本発明の実施例3の非復帰型保護装置40は、図3に示すように、絶縁ケース42に取り付けた一対のリード部材44と46に対して、ケース内に収容した感温物質成形体50に接する作用ロッド52が常時一方のリード部材44に結合の可動接点体48を支承し、他方のリード部材46の先端電極部47と圧接状態で接続されている。一方、高抵抗回路の高抵抗細線56が前述の先端電極部47と可動接点体48の間に接続されている。したがって、所定の動作温度で感温物質成形体50が溶融すると、先ず、作用ロッド52が移動して可動接点体48が先端電極部47から開離開放し、その後高抵抗細線56の電流溶断エレメントが溶断して一対のリード部材44と46間の確実な回路遮断が行われる。ここで、可動接点体48は弾性金属部材からなる第1リード部材44の先端部に設けられており、常時、弾性力で開離開放する下方側への力が作用するが、感温材50によって支承された作用ロッド52により第2リード部材46の先端電極部47との接触状態を保持して低抵抗回路を構成している。したがって、この低抵抗回路と高抵抗細線56により電路切離手段が構成され、非復帰型保護装置は遮断動作を安全確実に達成する。
【実施例4】
【0018】
図4はさらに別タイプである合金型温度ヒューズエレメントを使用した非復帰型保護装置60の実施例を示す。図において、筒状絶縁ケース62に絶縁材63で封着した絶縁パッケージ内に一対のリード部材64および66の先端電極間に取付けた低融点可溶合金68と高抵抗細線76とが収容されて保護装置60が構成される。ここで低融点可溶合金68は表面にフラックス70が被着されており、エポキシ樹脂の絶縁材63を貫通して伸びる一対のリード部材64および66間の低抵抗回路として機能する。同様に一対のリード部材間に接続の高抵抗細線76は、低抵抗回路と並列に接続された高抵抗回路を構成し、これら両者により電路切離手段を構成する。作用において、所定の動作温度で低融点可溶合金68が溶融して一対のリード部材64と66間に形成された低抵抗回路が開離開放するが、一時的に高抵抗回路の高抵抗細線76が通電を許容するのでスパークやアーク放電を生じさせない。その後、高抵抗細線76の電流溶断エレメントが溶断して、完全に回路遮断が達成される。したがって、合金型温度ヒューズエレメントを使用した非復帰型保護装置の安全確実な作動が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に示す感温ペレット型温度ヒューズエレメントを使用した非復帰型保護装置であり、図1(a)は常温時の縦断面図、図1(b)は要部拡大縦断面図および図1(c)は動作時の縦断面図である。
【図2】同じく実施例2に示す図1の変形例であり、図2(a)は常温時の縦断面図、図2(b)はその要部拡大縦断面図である。
【図3】同じく実施例3に示す別の感温ペレット型温度ヒューズエレメントを使用した非復帰型保護装置の断面図である。
【図4】同じく実施例4に示す別の可溶合金型温度ヒューズエレメントを使用した非復帰型保護装置の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10、30、40、60;非復帰型保護装置、 12;金属ケース、
14、44、64;第1リード部材、 16、46、66;第2リード部材、
17、47;先端電極部、 18、48;可動接点体(低抵抗回路)、 19;係留部、
20、50;感温ペレットまたは感温物質成形体、 22;強圧縮ばね(圧縮スプリング)、
24;弱圧縮ばね(圧縮スプリング)、 26;圧縮細線ばね(高抵抗回路)、
27;低融点金属片(高抵抗回路)、 28、30;押圧板、 32;絶縁碍管、
33、63;絶縁材、 42、62;絶縁ケース、 52;作用ロッド、
56、76;高抵抗細線(高抵抗回路)、 68;可溶合金(低抵抗回路)、
70;フラックス。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電路用リード部材を取付けたケースに所定の動作温度を有する感温材を収容し、低抵抗回路と高抵抗回路を並列接続した電路切離手段を前記電路用リード部材間に接続配置して構成され、前記低抵抗回路は前記感温材の動作温度で開放し、その後、前記高抵抗回路を開放して前記電路用リード部材間を電気的に遮断する非復帰型保護装置。
【請求項2】
前記電路切離手段は低抵抗回路が前記感温材を用いた温度ヒューズエレメントであり、高抵抗回路が電流溶断エレメントであることを特徴とする請求項1に記載の非復帰型保護装置。
【請求項3】
前記感温材は低融点可溶合金を使用した可溶合金型温度ヒューズエレメントであり、前記高抵抗回路は前記低融点可溶合金と電気的に並列接続した金属細線であって、前記温度ヒューズエレメントの作動後に一時的に通電を許容して回路遮断させることを特徴とする請求項1に記載の非復帰型保護装置。
【請求項4】
前記感温材は感温物質成形体を使用した感温ペレット型温度ヒューズエレメントであって、前記感温物質成形体の物理的変形に応動するスイッチング部材が前記電路用リード部材の一方の電極側に配置され、前記高抵抗回路は前記スイッチング部材と電気的に並列接続の金属細線であって、前記温度ヒューズエレメントの作動後に一時的に通電を許容して回路遮断させることを特徴とする請求項1に記載の非復帰型保護装置。
【請求項5】
前記温度ヒューズエレメントのスイッチング部材は可動接点体および圧縮スプリングを筒状金属ケースに収容され、前記電路用リード部材は前記筒状金属ケースの一端側を気密封着した絶縁材を貫通する第1リードと、前記筒状金属ケースの他端側でかしめ固定する第2リードであり、前記可動接点体を前記第1リードの電極側で開離自在に配置構成し、常温では前記圧縮スプリングの押圧作用により前記可動接点体を前記第1リードに圧接接触して導通状態を維持し、前記感温物質成形体が物理的変形する動作温度では前記第1リードと前記可動接点体を開離開放して遮断状態にスイッチングすることを特徴とする請求項4に記載の非復帰型保護装置。
【請求項6】
前記金属細線はコイリングした圧縮細線ばねであり、前記圧縮スプリングは弱圧縮ばねおよび強圧縮ばねを含み、前記可動接点体に押圧力を作用させることを特徴とする請求項5に記載の非復帰型保護装置。
【請求項7】
前記感温材は感温物質成形体を使用した感温ペレット型温度ヒューズエレメントであって、前記感温物質成形体の物理的変形に応動するスイッチング部材が前記電路用リード部材の一方の電極側に配置され、前記高抵抗回路は前記スイッチング部材と電気的に並列状態で配置した動作温度より低い融点を有する低融点可溶金属体であって、前記温度ヒューズエレメントの作動前に溶融状態を呈し、作動後に一時的通電を許容して回路遮断させることを特徴とする請求項1に記載の非復帰型保護装置。
【請求項8】
前記感温ペレット型温度ヒューズエレメントのスイッチング部材は可動接点体および圧縮スプリングを筒状金属ケースに収容してなり、前記電路用リード部材は前記筒状金属ケースの一端側を気密封着した絶縁材を貫通する第1リードと、前記筒状金属ケースの他端側でかしめ固定する第2リードであり、前記可動接点体を前記第1リードの電極側で開離自在に配置構成し、常温では前記圧縮スプリングの押圧力を作用させて前記可動接点体を前記第1リードに圧接接触する導通状態に維持し、所定の動作温度では前記感温物質成形体の物理的変形に作用して前記第1リードと開離開放する遮断状態にスイッチングすることを特徴とする請求項7に記載の非復帰型保護装置。
【請求項9】
前記低融点可溶金属体は低融点金属片からなる電流溶断エレメントであり、前記圧縮スプリングは弱圧縮ばねおよび強圧縮ばねを含み、前記可動接点体に押圧力を付与すると共に前記低融点金属片を前記可動接点体に接触させることを特徴とする請求項8に記載の非復帰型保護装置。
【請求項10】
前記低抵抗回路は感温物質成形体と作動ロッドとを収容するケース体を具備する温度ヒューズエレメントであって、前記感温物質成形体の動作温度で物理的変形に応動する作動ロッドで移動するスイッチング部材が前記電路用リード部材の一方の電極側に配置され、前記電路用リード部材が前記ケース体に取付けた一対の導出リードであって、その一方の端部に前記スイッチング部材が装着され、前記高抵抗回路は前記導出リード間に接続配置され、前記スイッチング部材と電気的に並列接続した高抵抗金属体からなる電流溶断エレメントで構成し、前記スイッチング部材は、常温では前記作動ロッドの作用により前記導出リードの他方の端部に圧接接触して導通状態に維持し、所定の動作温度では前記感温物質成形体の物理的変形による前記作動ロッドの変位で前記他方の端部から開離開放し、この作動後に前記電流溶断エレメントが一時的に通電を許容して遮断状態にスイッチングすることを特徴とする請求項1に記載の非復帰型保護装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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