説明

非接触データ通信装置

【課題】通信環境の違いに応じて、適切な負荷変調の強度が得られるようにすることができる非接触データ通信装置を提供する。
【解決手段】ICカード12は、整流回路31と、整流回路31の出力電圧に関する複数の設定値が設定されるレジスタ部35と、レジスタ部35に設定された設定値に基づいて、整流回路31の出力電圧レベルを検出する電圧レベル検出回路33と、電圧レベル検出回路33で検出された出力電圧レベルに応じて、有効あるいは無効とされる複数の負荷変調用トランジスタと、受信部32で受信した受信データに応じて、送信データを生成して、複数の負荷変調用トランジスタに供給する制御部34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触データ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型ICカード、RFIDタグ等の非接触データ通信装置が広く普及している。その非接触型ICカード等は、装置自体に電源を有していないものもある。装置自体に電源がない非接触型ICカード等の場合、リーダ/ライタのアンテナとしての送信コイルに電流を流して磁界を発生させ、その磁界を利用して、非接触型ICカード等の受信コイルに電圧、すなわち誘起電圧を発生させて、電源として利用している。
【0003】
しかし、一般に、リーダ/ライタと非接触型ICカード等との間の距離が大きくなれば、非接触型ICカード等の受信コイルの受ける磁界の強度は小さく、誘起電圧も小さくなってしまう。
【0004】
誘起電圧が小さくなると、負荷変調に係る抵抗で電力を多くを消費するため、送信回路等の駆動に必要な電力が得られなくなり、リーダ/ライタとの通信が不能になる場合がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、誘起電圧を検出しその検出した誘起電圧値に基づいて負荷を変化させ、負荷で消費される消費電力を調整することにより、負荷変調の強度が変化するようにした端末が提案されている(例えば、特許文献1参照)。その結果、誘起電圧の大きさに応じて消費電力を調整することにより、通信が不能になるのを防ぐことができる。
【0006】
しかし、その提案では、誘起電圧に応じて、負荷変調の強度を一様にしか変化させていないため、具体的には予め決められたパターンでしか消費電力を調整していないため、通信環境の違いにより、適切な負荷変調の強度が得られず、通信が不能になる虞があった。
【0007】
非接触カード等の通信環境は、その非接触カード等が適用されるリーダ/ライタの種類、その非接触カード等をリーダ/ライタに臨ませる方式の違い、その通信装置の回路部分が搭載されるICカード、タグ、端末等の構造、形態等によって異なる。上述した提案では、そのような通信環境の違いを考慮していないため、リーダ/ライタとの通信が不能になる虞があった。
【特許文献1】特開2007-288718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、通信環境の違いに応じて、適切な負荷変調の強度が得られるようにすることができる非接触データ通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、整流回路と、前記整流回路の出力電圧に関する1以上の設定値が設定されるレジスタ回路と、前記レジスタ回路に設定された前記1以上の設定値に基づいて、前記整流回路の出力電圧レベルを検出する電圧レベル検出回路と、前記電圧レベル検出回路で検出された前記出力電圧レベルに応じて、有効あるいは無効とされる複数の負荷変調用トランジスタと、前記整流回路の出力電圧で動作し、データを受信する受信回路と、前記受信回路で受信した受信データに応じて、送信データを生成して、前記複数の負荷変調用トランジスタに供給する制御回路と、を有する非接触データ通信装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非接触データ通信装置によれば、通信環境の違いに応じて、適切な負荷変調の強度が得られるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
(構成)
まず図1に基づき、本実施の形態に係わる通信システムの構成を説明する。図1は、リーダ/ライタと、情報処理端末とにより構成される通信システム1を示すブロック図である。以下、情報処理端末が、ICカードである例で説明する。
リーダ/ライタ11は、送受信アンテナとしての送信コイル21と、リーダ/ライタ駆動部22とを有する。リーダ/ライタ11は、図示しないが、信号処理部と、送信部と、受信部とを有し、ホストコンピュータと接続されている。
【0012】
ICカード12は、データ送受信部23と、ICカード駆動部24とを有する。データ送受信部23は、搬送波を受信する受信コイル25と、同調用コンデンサ26とからなり、特定の周波数で共振するように設定された共振回路である。ICカード駆動部24の構成は、後述する。
【0013】
リーダ/ライタ11は、送信コイル21に電流を流すことにより磁界を発生させ、ICカード12における負荷変調に応じた送信コイルに流れる電流の変化を、ICカード12からの応答と認識して、所定の処理を行う。所定の処理には、例えば、ホストコンピュータ(図示せず)と連携した動作も含む。ICカード12は、内部に設けられた負荷を有効あるいは無効にすることによって、リーダ/ライタ11に対するインピーダンスを変動させることにより、負荷変調を行う。
【0014】
図2は、ICカード12の構成例を示すブロック図である。
ICカード12は、受信コイル25とコンデンサ26を含むデータ送受信部23を有する。図2において、データ送受信部23以外の部分が、図1のICカード駆動部24である。
【0015】
ICカード12は、図示しない基板上に搭載され各種回路が組み込まれた半導体チップ12aと、その半導体チップ12a外の基板上に設けられた複数の負荷変調用のインピーダンス素子群としての抵抗群12bとを含む。
【0016】
半導体チップ12aは、整流回路31と、受信部32と、電圧レベル検出回路33と、制御部34と、レジスタ部35と、スイッチ部36と、トランジスタ部37を含む。
【0017】
整流回路31は、並列接続された受信コイル25とコンデンサ26の両端に、半導体チップ12aの端子12c、12dを介して接続された整流用ブリッジダイオード回路である。整流回路31は、送信コイル25の両端に発生した電圧を整流して、直流の電圧出力を出力する。整流回路31の出力電圧Vnは、ICカード12内の駆動電源として、各種回路に供給される。
受信部32は、整流回路31の出力電圧Vnで動作し、出力電圧Vnに含まれる受信データを受信して抽出する受信回路である。
【0018】
電圧レベル検出回路33は、整流回路31の出力電圧Vnとレジスタ部35からの設定値が入力される。電圧レベル検出回路33は、整流回路31の出力電圧Vnをモニタし、レジスタ回路35に設定された複数の設定値に基づいて、出力電圧Vnが、予め設定された複数のレベルの中のどのレベルにあるかを検出する回路である。電圧レベル検出回路33は、出力電圧Vnの出力電圧レベルに応じた複数の、ここでは3つの、検出信号#1から#3を出力する。電圧レベル検出回路33の検出信号#1から#3は、スイッチ部36に入力される。電圧レベル検出回路の構成については後述する。
【0019】
制御部34は、中央処理装置(以下、CPUという)34aと、不揮発性メモリであるメモリ34bと、RAM(図示せず)を含み、受信部32からの受信データに応じた所定の処理を実行して、送信データを生成する制御回路である。不揮発性のメモリ34bには、後述する各設定値TH1からTH3のデータが、格納されている。制御部34は、受信データに応じて生成した送信データを、シリアル信号として、スイッチ部36を介してトランジスタ部37に出力する。
【0020】
レジスタ部35は、整流回路31の出力電圧Vnに関する1以上の設定値のデータが設定される複数の、ここでは3つの、レジスタを含むレジスタ回路である。レジスタ部35に設定された各設定値のデータは、設定変更可能である。後述するように、各設定値のデータは、制御部34によってメモリ34bから読み出されて、レジスタ部35に書き込まれることによって設定される。レジスタ部35に設定された各設定値のデータは、電圧レベル検出回路33に供給される。
【0021】
スイッチ部36は、複数の、ここでは4つの、バッファ回路Bf1からBf4を有し、制御部34からの送信データと、電圧レベル検出回路33からの検出信号#1から#3とが入力される。検出信号#1から#3は、それぞれ、イネーブル信号としてバッファ回路Bf1からBf3に入力される。各バッファ回路Bf1からBf3は、イネーブル信号としての検出信号がLOW
のときにイネーブルとなって動作して、入力された送信データ信号を反転して、トランジスタ部37へ出力する回路である。制御部34の送信データは、全てのバッファ回路Bf1からBf4の入力端に入力される。なお、バッファ回路Bf4は、イネーブル信号を入力せず、常に入力された送信データ信号を反転してそのままトランジスタ部37に出力する。
【0022】
トランジスタ部37は、負荷変調用トランジスタとして、複数の、ここでは4つの、NMOSトランジスタTr1からTr4を有する。4つのNMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタという)Tr1からTr4の4つのゲートには、それぞれスイッチ部36の4つのバッファ回路Bf1からBf4の送信データの信号が入力される。各トランジスタTrのソース側は、接地されている。
【0023】
トランジスタ部37は、電圧レベル検出回路33からの検出信号#1から#3に基づいて、スイッチ部36の各バッファの出力が制御されることによって、有効あるいは無効とされる、複数の負荷変調用トランジスタである。言い換えると、トランジスタ部37は、電圧レベル検出回路33で検出された出力電圧レベルに応じて、外付けの抵抗群と共に、有効あるいは無効とされる、複数の負荷変調用トランジスタである。
【0024】
抵抗群12bが、上述したように、半導体チップ12aの外部に設けられており、負荷変調用のインピーダンス素子群として複数の抵抗R1からR4を含む。各抵抗Rの一端は、半導体チップ12aの端子12eに共通に接続されている。
そして、トランジスタTr1からTr4のドレイン側は、それぞれ、複数の抵抗R1からR4の他端に、それぞれ半導体チップ12aの端子12fから12iを介して接続されている。このように、ICカード12は、負荷変調用の、複数のオープンドレイン端子を有している。
【0025】
図3は、整流回路31の出力電圧Vnと設定値との関係を説明するための図である。
リーダ/ライタ11とICカード12の距離に応じて、整流回路31の出力電圧Vnのレベルが変化するが、その出力電圧Vnが、予め設定された複数レベルの中のどのレベルあるいは範囲にあるかが決定される。そのレベルあるいは範囲の決定は、レジスタ部35の各設定値と、整流回路31の出力電圧Vnとの比較により行われる。
【0026】
図2に示すように、レジスタ部35は、3つのレジスタ1,2,3を有する。レジスタ1には、設定値TH1が設定され、レジスタ2には、設定値TH2が設定され、レジスタ3には、設定値TH3が設定されている。例えば、TH1は5Vで、TH2は7Vで、TH3は9Vである。
【0027】
図3に示すように、出力電圧Vnは、レジスタ部35に設定された各設定値THによって4つのレベルあるいは範囲に分けられ、入力された出力電圧Vnが、どのレベルにあるかが決定される。そのレベルあるいは範囲は、ICカード12とリーダ/ライタ11間の距離Lに対応するが、設定値THが変われば、そのレベルあるいは範囲の位置あるいは広さも変更される。
【0028】
ここでは、出力電圧Vnが、設定値TH1よりも小さいときは、ICカード12とリーダ/ライタ11間の距離Lは離れている、すなわち遠距離、とされる。出力電圧Vnが、設定値TH1以上で設定値TH2よりも小さいときは、ICカード12とリーダ/ライタ11間の距離Lはやや離れている、すなわちやや遠距離、とされる。出力電圧Vnが、設定値TH2以上で設定値TH3よりも小さいときは、ICカード12とリーダ/ライタ11間の距離Lは中程度、すなわち中距離、とされる。出力電圧Vnが、設定値TH3以上のときは、ICカード12とリーダ/ライタ11間の距離Lは短い、すなわち近距離、とされる。
【0029】
なお、本実施の形態では、複数の範囲は、4つであるが、3つ以下でも、あるいは5つ以上でもよい。
【0030】
図4は、電圧レベル検出回路33の構成例を示すブロック図である。電圧レベル検出回路33は、比較部41と、デジタル/アナログ変換(以下、D/A と略す)部42とを有して構成される。比較部41は、3つの比較回路41a、41b、41cを有する。D/A部42は、D/A回路42a、42b、42cを有する。各比較回路は、出力電圧Vnと対応する設定値とを比較して、比較結果として検出信号を出力する。
【0031】
レジスタ1に設定された設定値TH1のデータは、D/A回路42aに入力されてアナログ値に変換され、比較回路41aの一方の入力端に入力される。比較回路41aの他方の入力端には、出力電圧Vnが入力される。同様に、レジスタ2に設定された設定値TH2のデータは、D/A回路42bに入力され、レジスタ3に設定された設定値TH3のデータは、D/A回路42cに入力される。比較回路41bと41cのそれぞれの他方の入力端には、出力電圧Vnが入力される。
【0032】
各比較回路は、出力電圧Vnが、各設定値TH以上になると、HIGHを出力する。出力電圧Vnが、設定値TH1未満であると、いずれの比較回路も、検出信号を出力しないので、検出信号#1から#3は、LOWとなる。出力電圧Vnが、設定値TH1以上で設定値TH2よりも小さいときは、比較回路41aは検出信号#1を出力するので、検出信号#1はHIGHで、検出信号#2と#3は、LOWとなる。出力電圧Vnが、設定値TH2以上で設定値TH3よりも小さいときは、比較回路41bも検出信号#2を出力するので、検出信号#1と#2はHIGHで、検出信号#3は、LOWとなる。出力電圧Vnが、設定値TH3以上のときは、比較回路41cも検出信号#3を出力するので、検出信号#1から#3はHIGHとなる。
【0033】
(動作)
次に、上述した構成に係るICカード12の動作を説明する。
まず、ICカード12は、リーダ/ライタ11に近付けることにより、内部に誘起電圧を発生する。
【0034】
誘起電圧が発生して、ICカード12内の各回路が動作可能になると、まず、CPU34aは、初期設定処理を含むイニシャル処理を実行する。CPU34aは、初期設定処理において、不揮発性のメモリ34bに格納されている各設定値TH1からTH3のデータを読み出して、それぞれ、レジスタ部35の対応するレジスタに記憶する。
【0035】
電圧レベル検出回路33は、整流回路31の出力電圧Vnと、レジスタ部35からの各設定値THとを比較し、上述したような検出信号#1から#3を出力する。
【0036】
例えば、リーダ/ライタ11とICカード12間の距離Lが近距離の場合、検出信号#1から#3は、いずれもHIGHになり、バッファ回路Bf1からBf3はいずれもLOWを出力する。その結果、バッファ回路Bf4だけが動作可能であり、制御部34からの送信データを反転させてトランジスタTr4に出力する。トランジスタTr4は、送信データに基づいて、オンオフし、オンすると抵抗R4に電流が流れる。そのときのリーダ/ライタ11に対するインピーダンスは、抵抗R4だけで決まるので、消費電力は、そのインピーダンスに応じた値となる。
【0037】
一方、CPU34aは、受信部32からの受信データに応じた送信データを生成する処理を実行し、生成した送信データをシリアル信号としてスイッチ部36の各バッファ回路Bfに出力する。
【0038】
なお、図5は、距離Lと各バッファ回路の動作(有効か無効か)を説明するための図である。距離Lが近距離の場合は、バッファBf1からBf3はディスエーブル状態、すなわち無効であり、トランジスタTr4以外のトランジスタTr1からTr3は、無効とされ、送信データに応じてオンオフしない。
【0039】
リーダ/ライタ11とICカード12間の距離Lが中距離の場合、検出信号#1,#2はHIGHに、検出信号#3はLOWになり、バッファ回路Bf1とBf2は無効となり、LOWを出力する。その結果、バッファ回路Bf3とBf4が有効であり動作可能となり、図5に示すように、トランジスタTr3とTr4が有効とされてオンとなると、抵抗R3とR4に電流が流れる。そのときのリーダ/ライタ11に対するインピーダンスは、抵抗R3とR4だけで決まるので、消費電力は、そのインピーダンスに応じた値となるが、抵抗群12bの各抵抗は並列接続であるため、距離Lが近距離の場合に比べてインピーダンスは小さくなる。よって、リーダ/ライタ11から見てインピーダンスの変動が小さくなりすぎることがない。
【0040】
リーダ/ライタ11とICカード12間の距離Lがやや遠距離の場合、検出信号#1はHIGHで、検出信号#2,#3はLOWとなり、バッファ回路Bf1は無効となり、LOWを出力する。その結果、バッファ回路Bf2とBf3とBf4が有効であり動作可能となり、図5に示すように、トランジスタTr2とTr3とTr4が有効とされてオンになると、抵抗R2とR3とR4に電流が流れる。そのときのリーダ/ライタ11に対するインピーダンスは、抵抗R2とR3とR4だけで決まるので、消費電力は、そのインピーダンスに応じた値となるが、抵抗群12bの各抵抗は並列接続であるため、距離Lが中距離の場合に比べてインピーダンスはさらに小さくなる。よって、リーダ/ライタ11から見てインピーダンスの変動が小さくなりすぎることがない。
【0041】
さらに、リーダ/ライタ11とICカード12間の距離Lが遠距離の場合、検出信号#1から#3の中でHIGHとなるものはなく、バッファ回路Bf1からBf4の全てが有効であり動作可能となり、図5に示すように、トランジスタTr1からTr4の全てが有効とされてオンになると、抵抗R1からR4の全てに電流が流れる。そのときのリーダ/ライタ11に対するインピーダンスは、抵抗R1からR4で決まるので、消費電力は、そのインピーダンスに応じた値となるが、抵抗群12bの各抵抗は並列接続であるため、距離Lがやや遠距離の場合に比べてインピーダンスはさらに小さくなる。よって、リーダ/ライタ11から見てインピーダンスの変動が小さくなりすぎることがない。
【0042】
以上のように、本実施の形態のICカードによれば、出力電圧Vnの電圧レベルを検出するための設定値を通信環境に応じてレジスタ部に設定することができるので、適切な負荷変調の強度を得ることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、負荷変調用のインピーダンス素子群として、複数の抵抗を有する抵抗群12であったが、本実施の形態では、抵抗以外のインピーダンス素子も用いている点が、第1の実施の形態と異なる。
【0044】
抵抗だけでなく、各種インピーダンス素子を通信環境に応じて選択して利用することにより、負荷変調の強度が変化における波形の形状を最適な形状にする、あるいは近付けることができる。言い換えると、各種インピーダンス素子を利用することによって、リーダ/ライタ側で検出される信号波形の質を向上させることができる。
【0045】
図6は、本実施の形態に係るICカード12Aの構成例を示すブロック図である。なお、図2と同じ構成要素については、同じ符号を付して、説明は省略し、第1の実施の形態と異なる点を主として説明する。
【0046】
図6に示すように、インピーダンス素子群12b1は、抵抗素子である抵抗R2の代わりに容量素子であるコンデンサCが、抵抗R3の代わりにダイオードDを有する。従って、トランジスタTr2がオンになったときには、コンデンサCを介して電流が流れ、トランジスタTr3がオンすると、ダイオードDを介しても電流が流れる。
【0047】
図6では、トランジスタTr2は、スイッチSW1をオンすることにより、コンデンサCに電流が流れるようにし、トランジスタTr3は、スイッチSW2をオンすることにより、ダイオードDに電流が流れるように構成されている。なお、これらのスイッチSW1,SW2は省略してもよい。
【0048】
以上のように、本実施の形態のICカードによれば、第1の実施の形態の効果に加えて、抵抗以外のコンデンサ等を用いることによって、通信環境に応じて、例えば、対向するリーダ/ライタの種類等、ICカードの構造等に応じて、負荷変調の強度変化における波形の形状等を、より適切な形状等にすることができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態のICカードによれば、出力電圧Vnの電圧レベルを検出するための設定値を通信環境に応じてレジスタ部に設定することができるので、適切な負荷変調の強度を得ることができる。すなわち、インピーダンス素子を適宜選択することによって、通信環境に応じた負荷変調の強度の変化を生じさせることができ、通信が不能になる状態を防ぐことができる。
【0050】
以上のように、上述した2つの実施の形態のICカードによれば、通信環境に応じて、出力電圧Vnの電圧レベルを検出するための設定値をレジスタ部に設定することができるので、適切な負荷変調の強度を得ることができる。
【0051】
なお、上述した2つの実施の形態では、各トランジスタのドレイン側に接続されるインピーダンス素子は1つであるが、各種インピーダンス素子を複数、直列にあるいは並列にさらにあるいはこれらの組み合わせたものが、各トランジスタに接続するようにしてもよい。
【0052】
さらになお、上述した2つの実施の形態では、ICカードを例に説明したが、非接触データ通信装置としては、RFIDタグ等の他の装置でもよい。
【0053】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる、リーダ/ライタと、情報処理端末とにより構成される通信システム1を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わるICカードの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる、整流回路の出力電圧と設定値との関係を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる、電圧レベル検出回路の構成例を示すブロック図である
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる、各バッファ回路の動作(有効か無効か)を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るICカードの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1 通信システム、11 リーダ/ライタ、12 ICカード、12a 半導体チップ、12b、12b1 インピーダンス素子群、21 送信コイル、23 データ送受信部、31 整流回路、34 制御部、35 レジスタ部、36 スイッチ部、37 トランジスタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路と、
前記整流回路の出力電圧に関する1以上の設定値が設定されるレジスタ回路と、
前記レジスタ回路に設定された前記1以上の設定値に基づいて、前記整流回路の出力電圧レベルを検出する電圧レベル検出回路と、
前記電圧レベル検出回路で検出された前記出力電圧レベルに応じて、有効あるいは無効とされる複数の負荷変調用トランジスタと、
前記整流回路の出力電圧で動作し、データを受信する受信回路と、
前記受信回路で受信した受信データに応じて、送信データを生成して、前記複数の負荷変調用トランジスタに供給する制御回路と、
を有することを特徴とする非接触データ通信装置。
【請求項2】
前記電圧レベル検出回路は、前記出力電圧レベルに応じた複数の検出信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の非接触データ通信装置。
【請求項3】
前記複数の負荷変調用トランジスタの出力側に、複数の負荷変調用インピーダンス素子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触データ通信装置。
【請求項4】
前記複数の負荷変調用インピーダンス素子は、抵抗素子、容量素子、及びダイオードの少なくとも2つを含むことを特徴とする請求項3に記載の非接触データ通信装置。
【請求項5】
前記整流回路、前記レジスタ回路、前記電圧レベル検出回路、前記複数の負荷変調用トランジスタ、前記受信回路、及び前記制御回路は、半導体チップ内に形成され、
前記複数の負荷変調用インピーダンス素子は、前記半導体チップ外に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の非接触データ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−302953(P2009−302953A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155743(P2008−155743)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】