説明

非接触レンズクリーナ付き光ディスク

【課題】空気流を用いて対物レンズを清掃するクリーニングディスクにおいて、ダイナミックバランスを狂わせることなくディスクの形成が可能な非接触レンズクリーナ付き光ディスクを提供する。
【解決手段】内部にデータ記録層が設けられたドーナツ円板形状のディスク体10Aの外周部に、該ディスク体10Aを射出成型する際に該ディスク体と一体的に形成される切り欠き状の複数の溝部12…を設け、これら複数の溝部12…がディスク体10Aの回転方向における等間隔の位置に、且つ、データ記録層の最外周より外側の部位に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ピックアップの対物レンズを非接触にクリーニングする機能を有する非接触レンズクリーナ付き光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクのディスク面に貫通孔や通風機構を設け、空気流を対物レンズに当てて清掃を行うクリーニンクディスクが幾つか提案されている(例えば特許文献1〜3)。このうち、特許文献1,2のクリーニングディスクは、ディスク面に貫通孔を設けて、この貫通孔により空気流を発生させるものである。また、特許文献3のクリーニングディスクは、ディスク面内に薄い空気ダクトを設けて、ディスクの回転によりこの空気ダクトに空気を流して対物レンズに吹き付けるものである。
【特許文献1】特開2006−4490号公報
【特許文献2】特開平6−203402号公報
【特許文献3】特開2004−178778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空気流を当てて対物レンズの清掃を行う上記従来のクリーニングディスクは、光ディスクに貫通孔や空気ダクトを設ける構成であるため、光ディスクのダイナミックバランスを狂わさずに、このような機構を形成するのが困難であるという課題があった。
【0004】
例えば、光ディスクは、ディスクの型枠にその中央側から外側へポリカーボネイト材料を射出して成型するのが一般的である。しかしながら、射出成型によりディスクの途中に貫通孔を形成しようとすると、ディスクの中央側から外側へ射出するポリカーボネイト材料が、貫通孔の部位で抵抗を受け、ポリカーボネイト材料が貫通孔の部位の裏側へうまく回り込まないという事象が発生する。
【0005】
従って、光ディスクに貫通孔を設けるとなると、ドーナツ円板状に形成されたディスクに対してドリル等で貫通孔を設けることになるが、光ディスクは高回転で駆動されるため非常に高い精度でダイナミックバランスを図る必要がある。しかしながら、ドリル等で貫通孔を設けたのでは、このような高精度なダイナミックバランスを維持することは不可能である。
【0006】
また、光ディスクは2枚のディスク板を接着剤で貼り合わせて形成されるタイプのものがあるが、その場合でも、特許文献3に示すように、ディスク内部に薄い空気ダクトを形成するのは至難の業であり、高精度なダイナミックバランスを保ったままこのような構成を製造することは困難であると考えられる。
【0007】
従って、上記従来の空気流を用いたクリーニングディスクでは、光ディスクのダイナミックバランスを高い精度で維持することができず、そのため、ディスク装置内で光ディスクを高速に回転すると、異常振動が発生するなど、一般の光ディスクと同等のスピードで回転駆動することが出来ないという課題があった。
【0008】
さらに、上記従来のクリーニングディスクでは、上述したダイナミックバランスを欠くという理由もあって、光ディスクに通常の記録面を設けて、通常の光ディスクと同様にデータの記録や再生を行わせるのが困難であるという課題があった。
【0009】
この発明の目的は、空気流を用いて対物レンズを清掃するクリーニングディスクにおいて、ダイナミックバランスを狂わせることなく光ディスクの形成が可能であり、それにより、ディスク装置内で光ディスクを高速に回転させたり、通常の光ディスクと同様にデータの記録や再生を行うこともできる非接触レンズクリーナ付き光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、ドーナツ円板形状のディスク体の外周部に切り欠き状の溝部が形成されている非接触レンズクリーナ付き光ディスクとした。
【0011】
このような手段によれば、光ピックアップを光ディスクの最外周近傍に配置させ、この状態で光ディスクを回転させることで、溝部の部分で乱気流を発生させて、光ピックアップの対物レンズを清掃することができる。また、溝部をディスク体の外周部に設けているため、光ディスクの型枠に溝部に対応する型枠形状を設けておき、光ディスクを型形成する際に溝部を一体的に形成することができる。従って、溝部の位置や形状を高い精度で形成することができ、光ディスクのダイナミックバランスを高い精度で保つことができる。
【0012】
好ましくは、前記溝部は、前記ディスク体の回転方向に等間隔に複数個設けると良い。
【0013】
このような構成により、ディスクの中央位置に重心位置を設定して適宜なダイナミックバランスをとることができる。
【0014】
具体的には、前記溝部は、前記ディスク体の射出成型時に型枠形状の一部として前記ディスク体と一体的に形成されたものとすると良い。
【0015】
このような構成により、溝部を高い位置精度で形成することができる。
【0016】
好ましくは、前記ディスク体の内部にはデータ記録層を設け、前記溝部は、前記データ記録層の最外周より外側の部位に設けると良い。
【0017】
このような構成により、通常のデータ記録やデータ再生の可能な光ディスクに対して非接触のレンズクリーナの機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、空気流を利用して対物レンズの清掃が可能であるとともに、通常の光ディスクと同様に高い精度でダイナミックバランスを有した光ディスクを形成することができる。それにより、例えば、ディスク装置内で高速に回転させて大きな空気流を発生させることができるし、また、例えば、通常の光ディスクと同様にデータ記録やデータ再生を行うことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の非接触レンズクリーナ付き光ディスクの全体を示す斜視図、図2はこの光ディスクの断面図である。
【0021】
この実施形態の非接触レンズクリーナ付き光ディスク10は、センターホール9を中央に有する円板形状(ドーナツ円板形状)のディスク体10Aの外周部に、複数個(例えば3個)の溝部12を形成してなるものである。
【0022】
センターホール9はディスク装置のスピンドル機構に装着させるためのものである。また、この光ディスク10には、通常の光ディスクと同様にレーザ光を照射することでデータの記録や再生が可能な記録面が内部に形成されている。
【0023】
複数の溝部12は、ディスク体10Aの外周部で、且つ、ディスク体10Aの周方向に複数等分した位置にそれぞれ形成され、それぞれが同一の幅と深さ、同一の形状に形成されている。また、図2にも示すように、これら溝部12は、ディスク体10Aのデータ領域を外れた位置に形成されている。例えば、データ領域は、通常の光ディスクと同様に半径24mm〜半径58mmの範囲に設けられているため、溝部12はこのデータ領域の範囲を少し外れて、最外周(半径60mm)から例えば1.5mmの深さ(外周面から中心部に向けた深さ)で形成されている。
【0024】
溝部12の形状は、例えば、ディスク上面から下面にかけて直方体形状に切り欠けられた形にされている。なお、光ディスク10を水平方向に見てその切り欠き部分の辺が斜めになるような形状としたり、切り欠き部分の左右の辺がハの字状に開くような形状としたり、或いは、切り欠きの面や辺が曲面や曲線となる形状など、種々の形状を適用するようにしても良い。
【0025】
図3には、非接触レンズクリーナ付き光ディスクの製造工程の一部を説明する図を示す。
【0026】
この実施形態において上記の溝部12は、ディスク体10Aの射出成型時にディスク体10Aと一体的に形成されるようになっている。すなわち、図3に示すような射出成型装置50の金型51に、ディスク体の上面側と、外周側縁面および内周側縁面の型枠が形成されているとともに、この金型51の外周側縁面の複数個所に上記の溝部12に対応する凸形状の型枠部分が設けられている。
【0027】
さらに、データ溝等の形成されたスタンパー52が、金型51に嵌合されて当該金型51の下側を覆うことで、両者に囲まれた空隙部分55により、上記の溝部12を有するディスク体(例えば厚みが半分のディスク体)の型が形成されるようになっている。
【0028】
そして、このような射出成型装置50において、例えばポリカーボネイト材料を金型51の内周部から射出して空隙部分55に充填させ、これを押圧および冷却することで、ディスク体10Aの片割れが形成される。
【0029】
ここで、金型51は、高精度に形成することができるため、ディスク体10Aと一体的に形成される外周部分の複数の溝部12は、高精度にその周方向に等分された配置で、全てが同一の寸法で形成されることとなり、ディスク体10Aのダイナミックバランスを狂わすことがない。さらに、ポリカーボネイト材料は内周側から外周側に射出されて充填されるが、上記溝部12はディスク体10Aの最外周部分に形成されるので、材料の射出時に溝部12の型が抵抗となることがなく、ポリカーボネイト材料をスムースに空隙部分55に充填させることができる。
【0030】
上記のようにディスク体10Aの片割れが形成されたら、データ溝等が形成された面に反射膜や色素膜を形成し、このように形成された2枚の片割れを接着剤で貼り合わせることで、1枚のディスク体10Aが形成される。2枚を貼り合わせる際には、中心位置がずれないように、また、溝部12…の位置がずれないように位置合せを行ってから貼り合わせの処理を行う。
【0031】
図4には、上記の光ディスク10により対物レンズの清掃がなされる状態を説明する図を示す。
【0032】
上記のように構成された非接触レンズクリーナ付き光ディスク10によれば、その外周部に形成された複数の溝部12により、光ディスク10を高速回転させたときにその溝部12の周辺に大きな乱気流を発生させることができる。そして、図1に示すように、光ピックアップ20を光ディスク10の最外周に配置させて、上記のように光ディスク10を高速回転させることで、図4に示すようにレンズホルダ22上の対物レンズ21に乱気流が当たって、対物レンズ21上の塵や埃を吹き飛ばすことができる。
【0033】
また、上記の溝部12は、射出成型装置50の金型51により高い位置精度で形成されるため、光ディスク10のダイナミックバランスを狂わすことがない。従って、通常の光ディスクと同様にディスク装置内で光ディスク10を高速に回転させることができ、それにより、発生させる乱気流も強いものとすることができるし、また、溝部12が無い通常の光ディスクと全く同様にデータの記録や再生を行うことができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものでなく、様々な変更が可能である。例えば、図1では3個の溝部12を有した光ディスク10を示しているが、溝部12の個数は特に制限されるものではない。また、溝部12の形状も図示したものに限定されるものでない。さらに、上記実施形態では、2枚のディスク体を貼り合わせて1枚の光ディスク10を構成する例を示したが、この構成についても公知の種々の光ディスクと同様にさまざまなバリエーションがあり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の非接触レンズクリーナ付き光ディスクの全体を示す斜視図である。
【図2】非接触レンズクリーナ付き光ディスクの断面図である。
【図3】非接触レンズクリーナ付き光ディスクの製造工程の一部を示す説明図である。
【図4】溝部により発生された乱気流で対物レンズの清掃がなされる状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10 非接触レンズクリーナ付き光ディスク
10A ディスク体
12 溝部
21 対物レンズ
50 射出成型装置
51 金型
52 スタンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーナツ円板形状のディスク体の外周部に切り欠き状の溝部が形成されていることを特徴とする非接触レンズクリーナ付き光ディスク。
【請求項2】
前記溝部は、前記ディスク体の回転方向に等間隔に複数個設けられていることを特徴とする請求項1記載の非接触レンズクリーナ付き光ディスク。
【請求項3】
前記溝部は、前記ディスク体の射出成型時に型枠形状の一部として前記ディスク体と一体的に形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触レンズクリーナ付き光ディスク。
【請求項4】
前記ディスク体の内部にはデータ記録層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の非接触レンズクリーナ付き光ディスク。
【請求項5】
前記溝部は、前記データ記録層の最外周より外側の部位に設けられていることを特徴とする請求項4記載の非接触レンズクリーナ付き光ディスク。
【請求項6】
内部にデータ記録層が設けられたドーナツ円板形状のディスク体と、
該ディスク体を射出成型する際に該ディスク体と一体的に該ディスク体の外周部に切り欠き状に形成される複数の溝部とを備え、
前記溝部は、
前記ディスク体における回転方向の等間隔の位置で、且つ、前記データ記録層の最外周より外側部位に設けられていることを特徴とする非接触レンズクリーナ付き光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−54200(P2009−54200A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217280(P2007−217280)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】