非接触型情報媒体付属冊子
【課題】非接触型情報媒体付属冊に必要な柔軟性と平滑性を持ち、問題となっている熱をかけ非接触型情報媒体を冊子から分離し、別の偽造品と取り替える偽変造に対して、抑止効果を持ち、偽変造行為の有無を簡便かつ迅速に確認出来る非接触型情報媒体付属冊子を提供する。
【解決手段】なくとも、熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面と接着剤層を介して接着された表紙用部材を具備し、本文用紙、裏表紙用部材からなる非接触型情報媒体付属冊子において、特定波長領域の光により励起されて蛍光を発し、さらに加熱により不可逆な反応を起こし、蛍光を発さなくなる偽変造防止機能層が設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。
【解決手段】なくとも、熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面と接着剤層を介して接着された表紙用部材を具備し、本文用紙、裏表紙用部材からなる非接触型情報媒体付属冊子において、特定波長領域の光により励起されて蛍光を発し、さらに加熱により不可逆な反応を起こし、蛍光を発さなくなる偽変造防止機能層が設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICおよびアンテナコイルを有する非接触型情報媒体、内貼り用紙、表紙用部材、本文用紙から成る電子データの記入や印字が可能な非接触型情報媒体付属冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードや非接触ICタグを用いたシステムが普及している、例えば非接触ICモジュールとそれに接続されたアンテナからなるICインレットを外装基材で挟み込んで非接触型情報媒体としている。そして、この非接触型情報媒体とカバークロスなどを用いた表紙用部材とを貼り合わせた上で、内貼り用紙と本文用紙を取り付けて装丁した、電子データの記入や印字が可能な非接触型情報媒体付属冊子が開発されている。このような冊子としてパスポートや預貯金通帳等冊子等が例示される。
【0003】
第1の基材の上面側に、所定の広さの開口部を有する第2の基材が接着されて凹部が形成され、この凹部内にICチップとこれに接続されたコイルアンテナが備えられ、前記第1の基材シートの下面側に接着剤層が設けられている非接触型情報媒体と、この非接触型情報媒体が裏表紙の内面に貼付されてなる非接触型情報媒体付属冊子がある(特許文献1)。
【0004】
非接触型情報媒体付属冊子の1つである電子パスポートを例に取ると、多くの偽造と変造が報告されており、それらの偽変造を防止するため、冊子に偽変造防止機能を付加させることが行なわれている。冊子の偽変造を防止するためには一般的に用いられている偽変造防止技術を使用することが出来、例えば見る角度によって色が変化するインキ(光学変化デバイス(OPTICAL VARIABLE DEVICE:以下「OVD」と称する。)や、用紙自体に特殊な蛍光を発する糸を漉き込んだり、セキュリティスレッド(細線状の金属箔やホログラム箔)を挿入したりすることも行なわれている。また近年では機械検知によって偽変造を判別するため、例えば感温変色インキ中に蛍光物質を混入させ、印刷した印刷部に赤外線ランプや紫外線ランプを照射して印刷部を発光させる事が行われている(特許文献2)。
【0005】
また、同じくパスポートを例に取ると名前や顔写真などの個人情報の変造を防止するために、例えばホログラムフィルムのラミネートが施されていたり、レーザーエングレービングによって個人情報を記録することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−42068号公報
【特許文献2】特開2008−308555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上で述べたように非接触型情報媒体を冊子に貼り付けることで、簡単な方法で非接触型情報媒体付属冊子を製造できるという反面、この非接触型情報媒体を冊子から分離し、別の偽造品と取り替える偽変造が容易にできてしまう。さらには、このようにして偽変造が行なわれた場合でも冊子に偽変造の跡が残りにくく、偽変造の有無の判定を行なうことが困難である。
【0008】
さらに、現状の非接触型情報媒体はICカードに代表されるように熱ラミネート方式で製造される事が主流になっている。これは熱可塑性の基材や熱可塑性の接着剤を使用してICチップおよびアンテナを基材間に挟んで成形するものであり、製造が容易である反面、熱をかけることで分離することが可能である。
【0009】
このような状況に対して、上で述べたような従来の偽変造防止技術は基本的に紙幣や有価証券、パスポート冊子など、紙をベースとした印刷物の偽変造を防止するものが中心であり、上記のように非接触型情報媒体を取り代えたりする偽変造に対しては十分な効果が有るとは言いがたい。このため、前述のような従来にはない偽変造を防止するとともに、このような偽変造品を容易に判断できる偽変造防止技術の開発が必要となっている。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、非接触型情報媒体付属冊に必要な柔軟性と平滑性を持ち、問題となっている熱をかけ非接触型情報媒体を冊子から分離し、別の偽造品と取り替える偽変造に対して、抑止効果を持ち、偽変造行為の有無を簡便かつ迅速に確認出来る非接触型情報媒体付属冊子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも、熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面に接着剤層を介して接着された表紙用部材を具備し、本文用紙、他の表紙用部材からなる非接触型情報媒体付属冊子において、特定波長領域の光により励起されて蛍光を発し、さらに加熱により不可逆な反応を起こし、蛍光を発さなくなる偽変造防止機能層が表紙用部材に設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記非接型触情報媒体が、2枚以上の基材にICインレットを挟み積層して熱圧により接着形成されているとともに、該基材の少なくとも一方が積層の内側の面に熱可塑性接着剤層を設けた多孔質熱可塑性シートからなることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記偽変造防止機能層が紫外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記偽変造防止機能層を赤外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された該偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記偽変造防止機能層が内貼り用紙と非接触型情報媒体の間あるいは非接触型情報媒体と表紙用部材の間に設けたことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記偽変造防止機能層は接着層を剥離する温度よりも低い温度の加熱で、不可逆反応を起こす事を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、材料の入手が難しく特定波長領域の光により励起されて蛍光を発するため、一般には気づかれない偽変造防止技術である。さらに現在問題と成っている非接触型情報
媒体付属冊子に対しておこなわれる熱をかけて冊子から非接触型情報媒体を分離し別の偽造品と取り替える偽変造に対して、偽変造行為の有無を簡便かつ迅速に確認出来、偽変造行為に対して有効な抑止効果が得られるものである。。
【0018】
このような偽変造防止機能を判断する方法としては大きく分けて目視で判断する方法と機械検知で判断する方法があり、偽変造防止機能層の種類と付与する場所に依存する。
請求項3および請求項4に示すように内貼り用紙の上に偽変造防止機能層を設ける場合は、紫外領域または赤外線領域の光を照射することで蛍光インキが励起され蛍光を発するため、可視の蛍光を発する場合は、機械検知だけでなく目視による確認が可能である。
【0019】
請求項5に示すように冊子の各層の層間に偽変造防止機能層を設ける場合は、内貼り用紙や非接触型情報媒体の基材を通して確認することになるため、機械検知で判断する必要があり、例えば媒体への透過性の優れている赤外領域の光を照射することにより冊子を形成する媒体に影響されることなく蛍光インキが励起され、蛍光を発する材料を用いることで実現できる。このように冊子の層間に偽変造防止機能層を設けた場合には外からは目視で確認できないため、偽変造を行なう者が気づきにくく、耐久性にも優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の非接触型情報媒体付属冊子の実施形態の一例を示した概念図である。
【図2】本発明に用いる非接触ICインレットの実施形態の一例を示した概念図である。
【図3】非接触型情報媒体、表紙用部材、内貼り用紙、非接触ICインレット、外装基材を貼り合せた実施形態の断面の一例を示した概念図である。
【図4】本発明の偽変造防止機能層を内貼り用紙上に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図5】本発明の偽変造防止機能層を内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の非接触型情報媒体側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図6】本発明の偽変造防止機能層を内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の内貼り用紙側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。。
【図7】本発明の偽変造防止機能層を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の非接触型情報媒体側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図8】本発明の偽変造防止機能層を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の表紙用部材側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。。
【図9】本発明の偽変造防止機能層を非接触型情報媒体と表紙用部材との間のホットメルト接着剤層に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図10】本発明の偽変造防止機能層に特定波長領域の光を照射し、励起されて偽変造防止機能層が蛍光を発している事を示した概念図である。
【図11】本発明の偽変造防止機能層が加熱により不可逆な反応を起こし、偽変造防止機能層が蛍光を発さなくなった状態を示す概念図である。
【図12】本発明の偽変造防止機能を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の接着剤に付与したサンプルの加熱前の状態を説明する断面図である。
【図13】本発明の偽変造防止機能を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の接着剤に付与したサンプルの加熱後の状態を説明する断面図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施するための形態を図面を用いて詳細に説明する。非接触型情報媒体付属冊子15は、図1に示すような形状であり、表紙用部材11とその内面に貼着する内貼り用紙12との間に非接触型情報媒体10を挟み込んで接着され、これに複数の本文用紙13と裏表紙14が加わったものである。この非接触型情報媒体の一部である非接触ICインレット23は図2に示すようにアンテナシート基材20とICチップ21とアンテナ
コイル22とから構成される。
【0022】
この非接触ICインレット23は例えば図3に示すように、2枚の外装基材30の間に挟み込まれることで非接触型情報媒体10を構成している。また、偽変造防止機能層を有する非接触型情報媒体付属冊子15は図4から図9に示すように6種類の場所にそれぞれ該偽変造防止機能層(機能性色材層)40や偽変造防止機能層(接着剤層)41を設けることで構成している。
【0023】
図2に示す非接触ICインレット23は、アンテナシート基材20上にエッチング方式や印刷アンテナ方式などによってアンテナが形成される。このアンテナに、ICが溶接方式やワイヤボンディング方式などによって接続される。また、ICチップ21とアンテナコイル22とアンテナシート基材20からなる非接触ICインレット23は、ICチップ21自身の厚みや、アンテナコイル22の厚み、ジャンパ線とアンテナの接合部や、アンテナシート基材20自体の厚みなどにより、凹凸のあるシートとなっている。このICインレットを外装基材30の間に挟んで非接触型情報媒体10に加工する際、外観上はこれらの凹凸を無くすことが望ましい。
【0024】
外装基材30としては、例えば 、PVC、PET−Gなどだけではなく、多孔質熱可塑性基材を使用することが出来、このような材料は一般にインクジェットやオフセットなどに対する印刷適性を付与した樹脂シート又は合成紙として市販されている。特に、基材に多孔質熱可塑性基材を使用することで柔軟性のある非接触型情報媒体を形成することが可能となり、また、接着剤と良好な密着性を得ることが出来るため加工性に優れている。
【0025】
上記多孔質熱可塑性基材を使用する場合、図3に示すように2枚の外装基材30のそれぞれ内側にあたる部分に、あらかじめ熱可塑性の接着剤33を塗布してから積層し、熱圧をかけることで接着させ、非接触型情報媒体10を得る。ここで使用可能な熱可塑性の接着剤33は、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、一般的な各種熱可塑性の樹脂を使用することができる。
【0026】
これらの中でも、特に水分に強く、酸素や塩化物イオンの透過を抑制するような塗膜を形成する樹脂、また熱や湿度により劣化し接着部分に剥がれを生じないものを使用する。これらの性能を両立させるために2種類以上の樹脂を混合したり、2層に塗工したりすることも可能である。また、後工程や作業性の面から、塗工が容易で、乾燥後のブロッキングが生じにくく、耐久性の高いものが使用に適する。例えば、エチレン‐メタクリル酸共重合体系の水系エマルジョン接着剤にエポキシ系架橋剤を添加したものや、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤などをグラビアコーターで塗工するなどで好適な性能を得ることが出来る。
【0027】
一方、一般的にポリエステル系の接着剤は湿度による加水分解が生じる可能性があり、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系接着剤は経時劣化し易いので注意が必要である。また、上記の樹脂を使用してエマルジョンやディスパージョンにした水系のヒートシール剤を用いる場合には、それらのヒートシール剤自体がアンテナ等に悪影響を与えないかについても注意が必要である。
【0028】
また、非接触型情報媒体付属冊子15はこの非接触型情報媒体10を表紙用部材11と内貼り用紙12との間に挟み込んで接着し、冊子形状に加工されたものである。非接触型情報媒体10は内貼り用紙12と接着剤(内貼り用紙用)31によって接着されるが、この接着剤は作業性や環境の側面からも水系のエマルジョン接着剤を使用する場合が多く、また、実際にはこれまで冊子を製造してきた設備を使用することも多いので、布と紙の貼
り合わせ用としての接着剤が選ばれてきた。
【0029】
仮に非接触型情報媒体付属冊子15に使用する非接触型情報媒体10を、一般のICカードに使われるような外装基材30、例えばPVCやPET−Gを使用して作成した場合、既存の設備および接着剤で内貼り用紙12を接着することはできない上、剛度が高いことによる問題が生じる。
【0030】
このような問題を解決するため、請求項2にある多孔質熱可塑性基材シートを外装用基材30として使用することで、様々なタイプの接着剤と良好な密着性を示し、かつ、凹凸が無く、柔軟な非接触型情報媒体付冊子を作成することが出来る。
【0031】
非接触型情報媒体10と表紙用部材11を接着する際には体積変化の無い反応硬化型の接着剤を好適に用いることが出来る。仮に体積変化のある乾燥硬化型の接着剤を使用した場合、非接触型情報媒体の一部が凹んでいたとすると接着剤の使用量が多くなるため乾燥時の体積減少が大きくなり、表紙用部材の外側に凹みが生じてしまうため外観上の問題となる。このような問題を解決するために体積変化の無い接着剤を使用することが望ましく、例えば、2液混合型エポキシ系接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤、などが使用できる。また、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種のホットメルト接着剤なども使用可能である。
【0032】
非接触型情報媒体付属冊子15は、熱により偽変造されることがあるため、該非接触型情報媒体10に偽変造防止機能層(機能性色材層)40や偽変造防止機能層(接着剤層)41を持たせている。そこで、図4から図8に示すように、紫外または赤外領域の特定波長の光を照射することで蛍光を発していた機能性色材層が加熱により蛍光を発さなくなる機能性色材を用いて該非接触型情報媒体10の内貼り用紙12、外装基材30、表紙用部材11、の少なくとも1つに層を設けて、該蛍光を発する偽変造防止機能層40とする。
【0033】
図9は、表紙用部材を非接触型情報媒体との間の接着剤層に機能性色材を混合させた実施形態を示しており、偽変造防止機能層(兼接着剤層)41を形成した。また、内貼り用紙12の最表面に蛍光を発する偽変造防止機能層40を印刷方法で設ける場合、絵柄、パターン、文字など用途に合わせてパターン化した蛍光を発する偽変造防止機能層40を付与することが出来る。
【0034】
図10と図11は本発明の非接触型情報媒体付属冊子15を加熱して冊子から非接触型情報媒体を分離し、別の偽造品と取り替える変造を想定し、加熱処理を行い蛍光を発する偽変造防止機能層40の変化を示したものである。内貼り用紙上12に蛍光を発する偽変造防止機能層40を設けた場合、暗視野で紫外または赤外領域の特定波長の光を照射することにより目視による偽変造の有無判定を行なうことが可能である。この時の偽変造の有無判定方法は、蛍光を発する偽造防止機能層40に紫外または赤外領域の特定波長の光を照射することで励起し蛍光を発していた機能性色材が、加熱することで紫外または赤外領域の特定波長の光を照射しても蛍光を発さなくなる変化であり、目視により判定を行なうことが出来る。
【0035】
図10は非接触型情報媒体付属冊子15に加熱をして偽変造する前の状態を表した一例の図で、機能性色材を内貼り用紙上に文字を印刷し、蛍光を発する偽変造防止機能層40としたものであり、非接触型情報媒体付属冊子を加熱すると蛍光を発する偽変造防止機能層40に変化が生じ、例えば、図11に示すように紫外領域の光を照射しても蛍光を発することはなくなる。また、その変化は不可逆であるため、元に戻ることはない。
【0036】
蛍光を発する偽変造防止機能層40を内貼り用紙12と非接触型情報媒体10の間、あるいは非接触型情報媒体10と表紙用部材11の間、あるいは表紙用部材11と非接触型情報媒体10との間の接着剤に蛍光を発する偽変造防止機能層40を設ける場合は、機械検知による前記真贋判定を行なうことが可能である。図12は表紙用部材11と非接触型情報媒体10の間に偽変造防止機能層(兼接着剤層)41を設けたものであり、図13は偽変造による加熱により接着層が加熱後の偽変造防止機能層(兼接着剤層)43に変化した様子を示している。
【0037】
偽変造防止機能層(兼接着装)41に赤外光を照射することで励起し蛍光を発していた機能性色材が、加熱することで赤外光を照射しても蛍光を発さなくなるような変化を伴うため、機械検知により偽変造の有無判定を行なうことが出来る。図12は非接触型情報媒体付属冊子15に加熱をして偽変造する前の状態を示しており、非接触型情報媒体付属冊子を加熱すると赤外領域の光を照射しても蛍光を発さなくなり、その変化は不可逆で元に戻ることはない。
【0038】
熱圧を用いて形成された非接触型情報記録媒体10を熱で分離して偽変造を行なうためには、多くの場合において100℃以上の熱を加える必要があるため、一般的に、100℃以上で反応する機能性色材を用いる。本発明のように、ホットメルト接着剤に機能性色材を混ぜることで偽変造防止機能層(兼接着層)41を設けるときは、使用するホットメルト接着剤の加工時の溶融温度が、特に、本発明では、80℃から130℃程度であるため、この加工時の溶融温度では反応せずに、偽変造が行なわれる加工後の溶融温度より低い温度で反応する機能性色材を選択する必要がある。
【0039】
前記機能性色材の発色剤として蛍光を問わない場合はロイコ染料のように一般的に感熱記録材料に用いられるものでよく、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げる。本発明の様に、蛍光を必要とする場合は、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物を用いることで青色、黄色、赤色などの蛍光性の発現に有効となる。その中でも100℃以上または130℃以上の熱をかけ反応媒体中で発色剤と顕色剤との結合が解離するような反応を生じる材料が好適に使用可能である。
【0040】
一方、顕色剤は一般に感熱記録紙に用いられているものであればよく、例えば、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等があり、活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール化合物やポリフェノール化合物を挙げることができる。
【0041】
また、特定温度において反応を引き起させ、ロイコ染料と顕色剤の結合を阻害させる反応媒体は、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
さらに、各成分は2種類以上の混合物でも良く、機能に支障の無い範囲で光安定剤や染料、顔料、蓄光顔料など必要に応じて混合することが出来る(特開平11−92795、特開2006−63238参照)。
【符号の説明】
【0042】
10・・・非接触型情報媒体
11・・・表紙用部材
12・・・内貼り用紙
13・・・本文用紙
14・・・裏表紙用部材
15・・・非接触型情報媒体付属冊子
20・・・アンテナシート基材
21・・・ICチップ
22・・・アンテナコイル
23・・・非接触ICインレット
30・・・外装基材
31・・・接着剤(内貼り用紙用)
32・・・接着剤(表紙用部材)
33・・・接着剤(外装基材塗布用)
40・・・蛍光を発する偽変造防止機能層
41・・・偽変造防止機能層(兼接着剤層)
42・・・加熱により蛍光を発しない偽変造防止機能層
43・・・加熱後の偽変造防止機能層(兼接着剤層)
50・・・特定波長光源
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICおよびアンテナコイルを有する非接触型情報媒体、内貼り用紙、表紙用部材、本文用紙から成る電子データの記入や印字が可能な非接触型情報媒体付属冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードや非接触ICタグを用いたシステムが普及している、例えば非接触ICモジュールとそれに接続されたアンテナからなるICインレットを外装基材で挟み込んで非接触型情報媒体としている。そして、この非接触型情報媒体とカバークロスなどを用いた表紙用部材とを貼り合わせた上で、内貼り用紙と本文用紙を取り付けて装丁した、電子データの記入や印字が可能な非接触型情報媒体付属冊子が開発されている。このような冊子としてパスポートや預貯金通帳等冊子等が例示される。
【0003】
第1の基材の上面側に、所定の広さの開口部を有する第2の基材が接着されて凹部が形成され、この凹部内にICチップとこれに接続されたコイルアンテナが備えられ、前記第1の基材シートの下面側に接着剤層が設けられている非接触型情報媒体と、この非接触型情報媒体が裏表紙の内面に貼付されてなる非接触型情報媒体付属冊子がある(特許文献1)。
【0004】
非接触型情報媒体付属冊子の1つである電子パスポートを例に取ると、多くの偽造と変造が報告されており、それらの偽変造を防止するため、冊子に偽変造防止機能を付加させることが行なわれている。冊子の偽変造を防止するためには一般的に用いられている偽変造防止技術を使用することが出来、例えば見る角度によって色が変化するインキ(光学変化デバイス(OPTICAL VARIABLE DEVICE:以下「OVD」と称する。)や、用紙自体に特殊な蛍光を発する糸を漉き込んだり、セキュリティスレッド(細線状の金属箔やホログラム箔)を挿入したりすることも行なわれている。また近年では機械検知によって偽変造を判別するため、例えば感温変色インキ中に蛍光物質を混入させ、印刷した印刷部に赤外線ランプや紫外線ランプを照射して印刷部を発光させる事が行われている(特許文献2)。
【0005】
また、同じくパスポートを例に取ると名前や顔写真などの個人情報の変造を防止するために、例えばホログラムフィルムのラミネートが施されていたり、レーザーエングレービングによって個人情報を記録することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−42068号公報
【特許文献2】特開2008−308555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上で述べたように非接触型情報媒体を冊子に貼り付けることで、簡単な方法で非接触型情報媒体付属冊子を製造できるという反面、この非接触型情報媒体を冊子から分離し、別の偽造品と取り替える偽変造が容易にできてしまう。さらには、このようにして偽変造が行なわれた場合でも冊子に偽変造の跡が残りにくく、偽変造の有無の判定を行なうことが困難である。
【0008】
さらに、現状の非接触型情報媒体はICカードに代表されるように熱ラミネート方式で製造される事が主流になっている。これは熱可塑性の基材や熱可塑性の接着剤を使用してICチップおよびアンテナを基材間に挟んで成形するものであり、製造が容易である反面、熱をかけることで分離することが可能である。
【0009】
このような状況に対して、上で述べたような従来の偽変造防止技術は基本的に紙幣や有価証券、パスポート冊子など、紙をベースとした印刷物の偽変造を防止するものが中心であり、上記のように非接触型情報媒体を取り代えたりする偽変造に対しては十分な効果が有るとは言いがたい。このため、前述のような従来にはない偽変造を防止するとともに、このような偽変造品を容易に判断できる偽変造防止技術の開発が必要となっている。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、非接触型情報媒体付属冊に必要な柔軟性と平滑性を持ち、問題となっている熱をかけ非接触型情報媒体を冊子から分離し、別の偽造品と取り替える偽変造に対して、抑止効果を持ち、偽変造行為の有無を簡便かつ迅速に確認出来る非接触型情報媒体付属冊子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも、熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面に接着剤層を介して接着された表紙用部材を具備し、本文用紙、他の表紙用部材からなる非接触型情報媒体付属冊子において、特定波長領域の光により励起されて蛍光を発し、さらに加熱により不可逆な反応を起こし、蛍光を発さなくなる偽変造防止機能層が表紙用部材に設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記非接型触情報媒体が、2枚以上の基材にICインレットを挟み積層して熱圧により接着形成されているとともに、該基材の少なくとも一方が積層の内側の面に熱可塑性接着剤層を設けた多孔質熱可塑性シートからなることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記偽変造防止機能層が紫外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記偽変造防止機能層を赤外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された該偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記偽変造防止機能層が内貼り用紙と非接触型情報媒体の間あるいは非接触型情報媒体と表紙用部材の間に設けたことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記偽変造防止機能層は接着層を剥離する温度よりも低い温度の加熱で、不可逆反応を起こす事を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、材料の入手が難しく特定波長領域の光により励起されて蛍光を発するため、一般には気づかれない偽変造防止技術である。さらに現在問題と成っている非接触型情報
媒体付属冊子に対しておこなわれる熱をかけて冊子から非接触型情報媒体を分離し別の偽造品と取り替える偽変造に対して、偽変造行為の有無を簡便かつ迅速に確認出来、偽変造行為に対して有効な抑止効果が得られるものである。。
【0018】
このような偽変造防止機能を判断する方法としては大きく分けて目視で判断する方法と機械検知で判断する方法があり、偽変造防止機能層の種類と付与する場所に依存する。
請求項3および請求項4に示すように内貼り用紙の上に偽変造防止機能層を設ける場合は、紫外領域または赤外線領域の光を照射することで蛍光インキが励起され蛍光を発するため、可視の蛍光を発する場合は、機械検知だけでなく目視による確認が可能である。
【0019】
請求項5に示すように冊子の各層の層間に偽変造防止機能層を設ける場合は、内貼り用紙や非接触型情報媒体の基材を通して確認することになるため、機械検知で判断する必要があり、例えば媒体への透過性の優れている赤外領域の光を照射することにより冊子を形成する媒体に影響されることなく蛍光インキが励起され、蛍光を発する材料を用いることで実現できる。このように冊子の層間に偽変造防止機能層を設けた場合には外からは目視で確認できないため、偽変造を行なう者が気づきにくく、耐久性にも優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の非接触型情報媒体付属冊子の実施形態の一例を示した概念図である。
【図2】本発明に用いる非接触ICインレットの実施形態の一例を示した概念図である。
【図3】非接触型情報媒体、表紙用部材、内貼り用紙、非接触ICインレット、外装基材を貼り合せた実施形態の断面の一例を示した概念図である。
【図4】本発明の偽変造防止機能層を内貼り用紙上に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図5】本発明の偽変造防止機能層を内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の非接触型情報媒体側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図6】本発明の偽変造防止機能層を内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の内貼り用紙側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。。
【図7】本発明の偽変造防止機能層を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の非接触型情報媒体側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図8】本発明の偽変造防止機能層を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の表紙用部材側に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。。
【図9】本発明の偽変造防止機能層を非接触型情報媒体と表紙用部材との間のホットメルト接着剤層に設けた実施の形態を説明する断面の一例を示した概念図である。
【図10】本発明の偽変造防止機能層に特定波長領域の光を照射し、励起されて偽変造防止機能層が蛍光を発している事を示した概念図である。
【図11】本発明の偽変造防止機能層が加熱により不可逆な反応を起こし、偽変造防止機能層が蛍光を発さなくなった状態を示す概念図である。
【図12】本発明の偽変造防止機能を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の接着剤に付与したサンプルの加熱前の状態を説明する断面図である。
【図13】本発明の偽変造防止機能を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の接着剤に付与したサンプルの加熱後の状態を説明する断面図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施するための形態を図面を用いて詳細に説明する。非接触型情報媒体付属冊子15は、図1に示すような形状であり、表紙用部材11とその内面に貼着する内貼り用紙12との間に非接触型情報媒体10を挟み込んで接着され、これに複数の本文用紙13と裏表紙14が加わったものである。この非接触型情報媒体の一部である非接触ICインレット23は図2に示すようにアンテナシート基材20とICチップ21とアンテナ
コイル22とから構成される。
【0022】
この非接触ICインレット23は例えば図3に示すように、2枚の外装基材30の間に挟み込まれることで非接触型情報媒体10を構成している。また、偽変造防止機能層を有する非接触型情報媒体付属冊子15は図4から図9に示すように6種類の場所にそれぞれ該偽変造防止機能層(機能性色材層)40や偽変造防止機能層(接着剤層)41を設けることで構成している。
【0023】
図2に示す非接触ICインレット23は、アンテナシート基材20上にエッチング方式や印刷アンテナ方式などによってアンテナが形成される。このアンテナに、ICが溶接方式やワイヤボンディング方式などによって接続される。また、ICチップ21とアンテナコイル22とアンテナシート基材20からなる非接触ICインレット23は、ICチップ21自身の厚みや、アンテナコイル22の厚み、ジャンパ線とアンテナの接合部や、アンテナシート基材20自体の厚みなどにより、凹凸のあるシートとなっている。このICインレットを外装基材30の間に挟んで非接触型情報媒体10に加工する際、外観上はこれらの凹凸を無くすことが望ましい。
【0024】
外装基材30としては、例えば 、PVC、PET−Gなどだけではなく、多孔質熱可塑性基材を使用することが出来、このような材料は一般にインクジェットやオフセットなどに対する印刷適性を付与した樹脂シート又は合成紙として市販されている。特に、基材に多孔質熱可塑性基材を使用することで柔軟性のある非接触型情報媒体を形成することが可能となり、また、接着剤と良好な密着性を得ることが出来るため加工性に優れている。
【0025】
上記多孔質熱可塑性基材を使用する場合、図3に示すように2枚の外装基材30のそれぞれ内側にあたる部分に、あらかじめ熱可塑性の接着剤33を塗布してから積層し、熱圧をかけることで接着させ、非接触型情報媒体10を得る。ここで使用可能な熱可塑性の接着剤33は、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、一般的な各種熱可塑性の樹脂を使用することができる。
【0026】
これらの中でも、特に水分に強く、酸素や塩化物イオンの透過を抑制するような塗膜を形成する樹脂、また熱や湿度により劣化し接着部分に剥がれを生じないものを使用する。これらの性能を両立させるために2種類以上の樹脂を混合したり、2層に塗工したりすることも可能である。また、後工程や作業性の面から、塗工が容易で、乾燥後のブロッキングが生じにくく、耐久性の高いものが使用に適する。例えば、エチレン‐メタクリル酸共重合体系の水系エマルジョン接着剤にエポキシ系架橋剤を添加したものや、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤などをグラビアコーターで塗工するなどで好適な性能を得ることが出来る。
【0027】
一方、一般的にポリエステル系の接着剤は湿度による加水分解が生じる可能性があり、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系接着剤は経時劣化し易いので注意が必要である。また、上記の樹脂を使用してエマルジョンやディスパージョンにした水系のヒートシール剤を用いる場合には、それらのヒートシール剤自体がアンテナ等に悪影響を与えないかについても注意が必要である。
【0028】
また、非接触型情報媒体付属冊子15はこの非接触型情報媒体10を表紙用部材11と内貼り用紙12との間に挟み込んで接着し、冊子形状に加工されたものである。非接触型情報媒体10は内貼り用紙12と接着剤(内貼り用紙用)31によって接着されるが、この接着剤は作業性や環境の側面からも水系のエマルジョン接着剤を使用する場合が多く、また、実際にはこれまで冊子を製造してきた設備を使用することも多いので、布と紙の貼
り合わせ用としての接着剤が選ばれてきた。
【0029】
仮に非接触型情報媒体付属冊子15に使用する非接触型情報媒体10を、一般のICカードに使われるような外装基材30、例えばPVCやPET−Gを使用して作成した場合、既存の設備および接着剤で内貼り用紙12を接着することはできない上、剛度が高いことによる問題が生じる。
【0030】
このような問題を解決するため、請求項2にある多孔質熱可塑性基材シートを外装用基材30として使用することで、様々なタイプの接着剤と良好な密着性を示し、かつ、凹凸が無く、柔軟な非接触型情報媒体付冊子を作成することが出来る。
【0031】
非接触型情報媒体10と表紙用部材11を接着する際には体積変化の無い反応硬化型の接着剤を好適に用いることが出来る。仮に体積変化のある乾燥硬化型の接着剤を使用した場合、非接触型情報媒体の一部が凹んでいたとすると接着剤の使用量が多くなるため乾燥時の体積減少が大きくなり、表紙用部材の外側に凹みが生じてしまうため外観上の問題となる。このような問題を解決するために体積変化の無い接着剤を使用することが望ましく、例えば、2液混合型エポキシ系接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤、などが使用できる。また、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種のホットメルト接着剤なども使用可能である。
【0032】
非接触型情報媒体付属冊子15は、熱により偽変造されることがあるため、該非接触型情報媒体10に偽変造防止機能層(機能性色材層)40や偽変造防止機能層(接着剤層)41を持たせている。そこで、図4から図8に示すように、紫外または赤外領域の特定波長の光を照射することで蛍光を発していた機能性色材層が加熱により蛍光を発さなくなる機能性色材を用いて該非接触型情報媒体10の内貼り用紙12、外装基材30、表紙用部材11、の少なくとも1つに層を設けて、該蛍光を発する偽変造防止機能層40とする。
【0033】
図9は、表紙用部材を非接触型情報媒体との間の接着剤層に機能性色材を混合させた実施形態を示しており、偽変造防止機能層(兼接着剤層)41を形成した。また、内貼り用紙12の最表面に蛍光を発する偽変造防止機能層40を印刷方法で設ける場合、絵柄、パターン、文字など用途に合わせてパターン化した蛍光を発する偽変造防止機能層40を付与することが出来る。
【0034】
図10と図11は本発明の非接触型情報媒体付属冊子15を加熱して冊子から非接触型情報媒体を分離し、別の偽造品と取り替える変造を想定し、加熱処理を行い蛍光を発する偽変造防止機能層40の変化を示したものである。内貼り用紙上12に蛍光を発する偽変造防止機能層40を設けた場合、暗視野で紫外または赤外領域の特定波長の光を照射することにより目視による偽変造の有無判定を行なうことが可能である。この時の偽変造の有無判定方法は、蛍光を発する偽造防止機能層40に紫外または赤外領域の特定波長の光を照射することで励起し蛍光を発していた機能性色材が、加熱することで紫外または赤外領域の特定波長の光を照射しても蛍光を発さなくなる変化であり、目視により判定を行なうことが出来る。
【0035】
図10は非接触型情報媒体付属冊子15に加熱をして偽変造する前の状態を表した一例の図で、機能性色材を内貼り用紙上に文字を印刷し、蛍光を発する偽変造防止機能層40としたものであり、非接触型情報媒体付属冊子を加熱すると蛍光を発する偽変造防止機能層40に変化が生じ、例えば、図11に示すように紫外領域の光を照射しても蛍光を発することはなくなる。また、その変化は不可逆であるため、元に戻ることはない。
【0036】
蛍光を発する偽変造防止機能層40を内貼り用紙12と非接触型情報媒体10の間、あるいは非接触型情報媒体10と表紙用部材11の間、あるいは表紙用部材11と非接触型情報媒体10との間の接着剤に蛍光を発する偽変造防止機能層40を設ける場合は、機械検知による前記真贋判定を行なうことが可能である。図12は表紙用部材11と非接触型情報媒体10の間に偽変造防止機能層(兼接着剤層)41を設けたものであり、図13は偽変造による加熱により接着層が加熱後の偽変造防止機能層(兼接着剤層)43に変化した様子を示している。
【0037】
偽変造防止機能層(兼接着装)41に赤外光を照射することで励起し蛍光を発していた機能性色材が、加熱することで赤外光を照射しても蛍光を発さなくなるような変化を伴うため、機械検知により偽変造の有無判定を行なうことが出来る。図12は非接触型情報媒体付属冊子15に加熱をして偽変造する前の状態を示しており、非接触型情報媒体付属冊子を加熱すると赤外領域の光を照射しても蛍光を発さなくなり、その変化は不可逆で元に戻ることはない。
【0038】
熱圧を用いて形成された非接触型情報記録媒体10を熱で分離して偽変造を行なうためには、多くの場合において100℃以上の熱を加える必要があるため、一般的に、100℃以上で反応する機能性色材を用いる。本発明のように、ホットメルト接着剤に機能性色材を混ぜることで偽変造防止機能層(兼接着層)41を設けるときは、使用するホットメルト接着剤の加工時の溶融温度が、特に、本発明では、80℃から130℃程度であるため、この加工時の溶融温度では反応せずに、偽変造が行なわれる加工後の溶融温度より低い温度で反応する機能性色材を選択する必要がある。
【0039】
前記機能性色材の発色剤として蛍光を問わない場合はロイコ染料のように一般的に感熱記録材料に用いられるものでよく、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げる。本発明の様に、蛍光を必要とする場合は、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物を用いることで青色、黄色、赤色などの蛍光性の発現に有効となる。その中でも100℃以上または130℃以上の熱をかけ反応媒体中で発色剤と顕色剤との結合が解離するような反応を生じる材料が好適に使用可能である。
【0040】
一方、顕色剤は一般に感熱記録紙に用いられているものであればよく、例えば、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等があり、活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール化合物やポリフェノール化合物を挙げることができる。
【0041】
また、特定温度において反応を引き起させ、ロイコ染料と顕色剤の結合を阻害させる反応媒体は、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
さらに、各成分は2種類以上の混合物でも良く、機能に支障の無い範囲で光安定剤や染料、顔料、蓄光顔料など必要に応じて混合することが出来る(特開平11−92795、特開2006−63238参照)。
【符号の説明】
【0042】
10・・・非接触型情報媒体
11・・・表紙用部材
12・・・内貼り用紙
13・・・本文用紙
14・・・裏表紙用部材
15・・・非接触型情報媒体付属冊子
20・・・アンテナシート基材
21・・・ICチップ
22・・・アンテナコイル
23・・・非接触ICインレット
30・・・外装基材
31・・・接着剤(内貼り用紙用)
32・・・接着剤(表紙用部材)
33・・・接着剤(外装基材塗布用)
40・・・蛍光を発する偽変造防止機能層
41・・・偽変造防止機能層(兼接着剤層)
42・・・加熱により蛍光を発しない偽変造防止機能層
43・・・加熱後の偽変造防止機能層(兼接着剤層)
50・・・特定波長光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面に接着剤層を介して接着された表紙用部材を具備し、本文用紙、他の表紙用部材からなる非接触型情報媒体付属冊子において、特定波長領域の光により励起されて蛍光を発し、さらに加熱により不可逆な反応を起こし、蛍光を発さなくなる偽変造防止機能層が表紙用部材に設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項2】
前記非接型触情報媒体が、2枚以上の基材にICインレットを挟み積層して熱圧により接着形成されているとともに、該基材の少なくとも一方が積層の内側の面に熱可塑性接着剤層を設けた多孔質熱可塑性シートからなることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項3】
前記偽変造防止機能層が紫外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項4】
前記偽変造防止機能層を赤外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された該偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項5】
前記偽変造防止機能層が内貼り用紙と非接触型情報媒体の間あるいは非接触型情報媒体と表紙用部材の間に設けたことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項6】
前記偽変造防止機能層は接着層を剥離する温度よりも低い温度の加熱で、不可逆反応を起こす事を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項1】
少なくとも、熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面に接着剤層を介して接着された表紙用部材を具備し、本文用紙、他の表紙用部材からなる非接触型情報媒体付属冊子において、特定波長領域の光により励起されて蛍光を発し、さらに加熱により不可逆な反応を起こし、蛍光を発さなくなる偽変造防止機能層が表紙用部材に設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項2】
前記非接型触情報媒体が、2枚以上の基材にICインレットを挟み積層して熱圧により接着形成されているとともに、該基材の少なくとも一方が積層の内側の面に熱可塑性接着剤層を設けた多孔質熱可塑性シートからなることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項3】
前記偽変造防止機能層が紫外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項4】
前記偽変造防止機能層を赤外波長領域の光で励起されて蛍光を発する機能性色材で形成された該偽変造防止機能層であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項5】
前記偽変造防止機能層が内貼り用紙と非接触型情報媒体の間あるいは非接触型情報媒体と表紙用部材の間に設けたことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項6】
前記偽変造防止機能層は接着層を剥離する温度よりも低い温度の加熱で、不可逆反応を起こす事を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触型情報媒体付属冊子。
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−194708(P2011−194708A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63884(P2010−63884)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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