説明

非接触式帯電ローラ、該非接触式帯電ローラを備えた帯電装置、該帯電装置を備えた画像形成装置

【課題】画像形成装置の環境条件(10℃15%〜30℃90%)の範囲で、従来の非接触式帯電ローラに比べて膨潤膨張が非常に少なく、画像形成欠陥を起こすようなひび割れの発生が無く、イオン導電剤のブリードアウトが無く、被帯電体への帯電電位変動を抑制することができ、更には、放電時のスパッタリング作用を受けることがない非接触式帯電ローラの提供、及び、該非接触式帯電ローラを備えた帯電装置、該帯電装置を備えた画像形成装置の提供。
【解決手段】(1)アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体表面に酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜の表面にシリカ膜を形成した非接触式帯電ローラ、該非接触式帯電ローラを備えた帯電装置、該帯電装置を備えた画像形成装置。
(2)酸化皮膜及びシリカ膜を抵抗調整層とし、該抵抗調整層の表面に、導電性微粒子を分散させた樹脂組成物からなる保護層を形成した(1)記載の非接触式帯電ローラ、該非接触式帯電ローラを備えた帯電装置、該帯電装置を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面を非接触で帯電する非接触式帯電ローラ、当該非接触式帯電ローラを備えた帯電装置、及び該帯電装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンタなどの電子写真方式の画像形成装置に使用される帯電装置は、オゾンや窒素酸化物の生成を抑制するため低電圧での帯電、及び画像形成装置の小型化、電源の低コスト化等から、帯電ローラの帯電電位付与面を感光体と接触させた接触式帯電ローラが使われている。
この接触式帯電ローラの帯電電位付与面となる材質は、アクリルニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴム等の弾性部材に、カーボンブラック等の導電性微粒子を分散させて、体積固有抵抗値を10〜10Ωcm、厚みを2〜3mmとし、表面に撥水性のフッ素系樹脂等を含有する組成物を薄く(0.1〜0.2μm)塗布し、汚れ防止や画像形成装置の設置環境(高温高湿、低温低湿)に対する安定性を確保しようとしているが、設置環境での高温高湿時には弾性部材が膨張膨潤し易く帯電性能を変化させてしまう。
同じく、カーボンブラック等の導電性付与剤を分散させた電気抵抗が10〜1010Ωcmのポリウレタン等の弾性部材表面に、ポリシラザンから成る表面被覆膜を形成して摩擦係数を低下させ、表面粘着性が小さく摺動や圧接回転による外径寸法、電気抵抗の変化が少ない導電性ローラが知られているが(特許文献1参照)、帯電ローラとして用いる場合にはやはり、高温高湿時に弾性部材が膨張膨潤し易く、帯電性能を変化させてしまう。また、その表面は、接触式のため記録紙の紙粉や感光体表面に残留するトナー等が付着して汚れ易く、長期使用における耐久性の面でも問題が生じ易い。
このため、帯電電位付与面を形成する部材の膨張膨潤性を改善し、汚れが付着し難く、メンテナンス頻度の比較的少ない非接触式帯電ローラが用いられるようになってきた。
【0003】
非接触式帯電ローラでは、導電性支持体上に、高分子界面活性剤であるポリエーテルエステルアミド成分をABS樹脂に含有させ、射出成形により0.5〜1mmの厚みで被覆して抵抗調整層とし、その表面に、酸化スズ、ITO(酸化インジウムスズ)、カーボンブラック等の導電剤微粒子を50〜60重量%添加して体積固有抵抗値が1010〜1012Ωcmになるように調整した樹脂組成物からなる膜厚5〜10μmの保護層を形成したものが用いられる。この非接触式帯電ローラでは、導電性支持体上の抵抗調整層が樹脂であり、保護層もアクリル、シリコン、ウレタン又はフッ素系の樹脂と導電性微粒子からなるので、ゴム部材を用いたものと異なり、温湿度条件の変化に対し膨潤膨張量が比較的少なく、また、非接触式における帯電ギャップを狭小とすることも少ない。
しかし、ポリエーテルエステルアミド成分をABS樹脂に含有させて抵抗調整層とする場合には、ABS樹脂の体積固有抵抗値が高い(1012〜1016Ωcm)ので、10〜10Ωcmに低下させるため10〜10Ωcmのポリエーテルエステルアミド成分を多量に混入分散する必要があり(ABS樹脂100重量部に対し100〜120重量部程度)、温湿度条件により、飽和吸水率50〜70%のポリエーテルエステルアミド成分の影響が出易くなる。そのため、四級アンモニウム塩等の界面活性剤を3〜5重量%添加してポリエーテルエステルアミド成分の添加量を抑えたものもある。
また、ポリエーテルエステルアミド成分をABS樹脂に含有させて射出成形する場合には、射出成形用ペレット材料の吸湿量が多いと、泡などを発生させて成形不良となるので、成形前に水分量を0.5〜1質量%に減湿させて使用する。
【0004】
抵抗調整層上に形成する保護層は、スプレー塗布等により、イソシアネート系硬化剤を用いた塗料を膜厚5〜15μmになるように成膜したのち、100〜130℃で30分間程度の加熱を行って形成するため、下層の抵抗調整層が熱膨張する状態にある表面で硬化することになる。
画像形成装置内では高温高湿(30℃90%RH)から低温低湿(10℃15%RH)の範囲の動作環境が想定されるが、上記の方法で形成される非接触式帯電ローラは、抵抗調整層のポリエーテルエステルアミド成分の飽和吸水率が50〜70%と高いために、高温高湿条件では保護層を通して吸湿膨潤する。
また、射出成形加工時の成形金型内で抵抗調整層材料が硬化する際に、ウエルドラインにポリエーテルエステルアミド成分が多くなり、その部分の電気抵抗が低下して帯電電位付与時の電路となって発熱し易く、変性劣化して脆くなり、画像形成装置の動作環境が低温低湿(10℃15%RH)となったときなどに収縮差を生じて亀裂を発生させ易い。
【0005】
関連する公知技術としては、特許文献2に、導電性支持体上に高分子型イオン導電材料のポリエーテルエステルアミド含有化合物又は四級アンモニウム塩基含有化合物からなるイオン導電材料を分散した熱可塑性組成物を用いて、抵抗調整層を射出成形又は押出し成形で形成し、その表面を、アクリル骨格中にポリシロキサン成分を含有するセラミックハイブリッド材料からなる保護層で被覆した帯電部材が開示されている。
しかし、熱可塑性組成物を用いて抵抗調整層を射出成形又は押出し成形で形成する場合に、溶融材の流動性を確保するため、層の厚みを1〜2mm程度に厚くして表面に保護層を形成する必要があり、表面近傍が保護層形成時の溶剤により膨潤して抵抗調整層に亀裂を生じ易くなったり、保護層形成の際に加熱乾燥による抵抗調整層の熱膨張や、抵抗調整層の吸湿を招く。また、成形金型内のウエルドライン部分にポリエーテルエステルアミド成分が多くなり、電路を形成して発熱し易くなり、脂成分が変性劣化して亀裂を発生させ易くなったりし、帯電電位付与時には抵抗調整層中の四級アンモニウム塩等のイオン導電材料が保護層表面にブリードアウトして被帯電体の帯電電位を変動させる。
【0006】
また、特許文献3では、抵抗調整層の外周面から両端部側面まで保護層で被覆することにより環境安定性が良くなるとしているが、保護層が10μm程度の薄膜であり、導電性微粒子が50〜60重量%添加されるために湿気が透過し易い。また抵抗調整層のポリエーテルエステルアミド成分が吸湿し易く膨潤するため保護層に亀裂を発生させ易い。また熱可塑性組成物により抵抗調整層を射出成形で形成する場合に、溶融材の流動性を確保するため、層の厚みを1〜2mm程度に厚くして表面に保護層を形成する必要があり、保護層形成時の溶剤により抵抗調整層が膨潤して亀裂を発生させ易くなったりする。
更に、射出成形加工時の成形金型内で抵抗調整層材料が硬化する際に、ウエルドラインにポリエーテルエステルアミド成分が多くなり、その部分の電気抵抗が低下して帯電電位付与時の電路となって発熱し、樹脂が変性劣化して脆くなり、画像形成装置の動作環境が低温低湿(10℃15%RH)となったときに収縮差を生じて亀裂を発生させ易い。
【0007】
また、特許文献4には、トナー固着及びそれらに伴う帯電不良の防止や長期使用時の耐久性を向上させるため、アクリル骨格中にフッ素成分とポリシロキサンオリゴマーを含有するハイブリッド樹脂で保護層を構成する方法が開示されている。
しかし、抵抗調整層にポリエーテルエステルアミド成分を含有した熱可塑性組成物を用いて射出成形する場合に、溶融材の流動性を確保するため、層の厚みを1〜2mm程度に厚くし、その上に保護層を形成する必要があり、抵抗調整層の表面近傍が保護層形成時の溶剤により膨潤して亀裂を発生させ易くなるという欠点がある。
また、射出成形加工時の成形金型内で抵抗調整層材料硬化の際にウエルドラインにポリエーテルエステルアミド成分が多くなり、その部分の電気抵抗が低下して帯電電位付与時の電路となって発熱し、樹脂が変性劣化して脆くなり、画像形成装置動作環境が低温低湿(10℃15%RH)となったときに収縮差を生じて亀裂を発生させ易い。
また、小径の非接触式帯電ローラは、中心部の導電性支持体である金属製軸部材も比較的細く形成されるため、剛性が低下する欠点があり、感光体表面と帯電ローラの帯電電位付与面が形成する帯電ギャップの変動を大きくし感光体への帯電ムラを起こし易い。
このため、帯電ローラに印加するDC(直流)電圧の帯電ムラを防止するために重畳するAC(交流)電圧を高くする傾向にあり、帯電ローラの抵抗調整層に形成されるウエルドラインのポリエーテルエステルアミド成分が多くなった部分の電流が増加して変性劣化し脆くなって亀裂を発生させ易くなる。
また、帯電電位付与面はコロナ放電が強くなり、発生するオゾン及びスパッタリング作用により損傷し易くなる。
【0008】
【特許文献1】特開平9−90739号公報
【特許文献2】特開2003−76116号公報
【特許文献3】特開2004−70172号公報
【特許文献4】特開2004−109528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、画像形成装置の環境条件(10℃15%〜30℃90%)の範囲で、従来の非接触式帯電ローラに比べて膨潤膨張が非常に少なく、画像形成欠陥を起こすようなひび割れの発生が無く、イオン導電剤のブリードアウトが無く、被帯電体への帯電電位変動を抑制することができ、更には、放電時のスパッタリング作用を受けることがない非接触式帯電ローラの提供、及び、該非接触式帯電ローラを備えた帯電装置、該帯電装置を備えた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は次の1)〜4)の発明(以下、本発明1〜4という)によって解決される。
1) アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体表面に酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜の表面にシリカ膜を形成したことを特徴とする非接触式帯電ローラ。
2) 酸化皮膜及びシリカ膜を抵抗調整層とし、該抵抗調整層の表面に、導電性微粒子を分散させた樹脂組成物からなる保護層を形成したことを特徴とする1)記載の非接触式帯電ローラ。
3) 画像形成装置の感光体両端部と接し、感光体の帯電面となる範囲に帯電ギャップを形成して感光体に帯電電位を付与することができる非接触式帯電ローラとして、1)又は2)記載の非接触式帯電ローラを備えたことを特徴とする帯電装置。
4) 感光体表面を帯電する帯電装置として、3)記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図8(a)は、機能分離型有機系感光体を使用しカールソンプロセスを用いる白黒及びカラー画像形成装置の構成図で、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色毎のトナー画像形成ユニット81が順次配置されている。
図8(b)は、トナー画像形成ユニット81の構成を示し、外径φ30〜100mmの円筒状の機能分離型有機系感光体82を中心とし、その外周に帯電ユニット83、光書き込みユニット84、現像ユニット85、クリーニングユニット86が配置され、各色トナー毎に構成されて、転写ユニット87の転写ベルト88上に配置されている。
機能分離型有機系感光体82の表面には、帯電ローラ89により600〜800Vの正又は負の帯電が与えられ、レーザー光810により潜像を形成し、現像部材811によりトナーを静電付着させて可視画像とし、記録紙812上に転写部材813でトナー像を静電転写し、図8(a)の定着ユニット814に、画像形成された記録紙812を搬送し、160〜200℃でトナー像を加熱加圧して定着する。
【0012】
近年、複写機やレーザープリンタなどの画像形成装置の感光体への帯電方法は、帯電装置を小型で省スペース化するため、また、感光体への帯電電位付与時のオゾン発生量を低減させるために、低電圧帯電を可能とする近接式ローラ帯電方法が採用されている。
この近接式ローラ帯電では、カーボンブラック等の導電剤を分散混入させた1〜2mmの厚さを有する導電性ゴムを利用し、画像形成時の帯電ムラを防止するためにその抵抗値を108〜9Ωcmに制御し、その弾性を利用して帯電ギャップを作らずに感光体と接触させる接触式帯電ローラを用いるか、又は、ポリエーテルエステルアミド等の高分子化合物及び四級アンモニウム塩等のイオン導電性物質を含有させて抵抗値を108〜9Ωcmに制御したABS樹脂を、射出成形により導電性支持体の表面に0.5〜1mmの厚みで被覆して抵抗調整層とし、該抵抗調整層の表面に、酸化錫、ITO(酸化錫インジウム)、カーボンブラックなどの導電性微粒子を分散させた熱可塑性樹脂組成物からなる保護層を形成し、感光体の両端部に帯電ギャップ保持部材を用いて当接させ、50〜100μmのギャップを持たせて近接させることにより、感光体と非接触とする非接触式帯電ローラを用いるかして、低電圧で帯電させている。
【0013】
<非接触式帯電ローラの抵抗調整層及び保護層の損傷する原因>
図3(a)に示すように、非接触式帯電ローラでは、帯電電圧を印加するための支持体として金属製軸部材30を用い、軸受け部31、電圧印加用軸受け部32、外径8〜12mmの被覆部33が一体で構成される。
図3(b)に示すように、被覆部33の周面上には、ポリエーテルエステルアミド等の高分子化合物及び四級アンモニウム塩等のイオン導電性物質を含有したABS樹脂(熱可塑性樹脂)を用いて、射出成形により0.5〜1mmの厚みで被覆したのち旋削加工を施して抵抗調整層34を形成し、該抵抗調整層34の表面に酸化スズ、ITO(酸化錫インジウム)、カーボンブラック等などの導電性微粒子が分散した電気抵抗1012〜1013Ωcmの熱可塑性樹脂組成物からなる5〜10μmの厚みの保護層35を形成する。
非接触式帯電ローラでは感光体両端と当接させてギャップを形成させるために、ギャップ形成部材36及び37が被覆され、所望の帯電ギャップを形成する。
ギャップ形成部材36、37の厚みは、通常、印加電圧を低電圧とするため50〜60μm程度であり、テフロン(登録商標)及びポリイミド等の粘着テープや熱収縮性のテフロン(登録商標)チユーブ及び樹脂等が用いられる。
【0014】
図3(c)に示すように、図3(b)の非接触式帯電ローラを用いて、画像形成装置の感光体両端部と当接し、感光体の帯電面38の範囲に帯電ギャップ39、310、311を形成すると、感光体の中央部の帯電ギャップ310では、その隙間が狭小となり易い傾向にあり、その狭小となる量1μm当たり5〜10Vで帯電電位が変化して、画像形成時のムラやザラツキを引き起こす不具合を生じ易い。
これは、画像形成装置を小型化するために、非接触式帯電ローラの金属製軸部材30が小径化し、軸方向の機械強度が低下したためであり、本来設定される帯電ギャップは、ギャップ形成部材36及び37により50〜60μmとなるが、非接触式帯電ローラ312と感光体313を形成する精度によって、軸方向中央部では、設定する帯電ギャップ50〜60μmに対し、中央部の帯電ギャップ310が5〜10μm程度狭くなり易い傾向がある。
また、非接触式帯電ローラの中央部では、金属製軸部材30を無処理で使用すると被覆部33の軸振れが10〜20μm発生し易く、そのまま用いると感光体との帯電ギャップが回転に伴って狭小となり、残留するトナーと接触して非接触式帯電ローラの中央部にトナーが付着し汚染される状態になる。
【0015】
また、非接触式帯電ローラの金属製軸部材30を軸方向の機械強度が低いままで使用すると、中央部の帯電ギャップ310の幅の精度と形状が帯電ギャップ形成に影響してしまい、帯電ムラを防ぐために重畳するAC電圧(Vp−p)を上昇させ、その放電電流は、抵抗調整層34を樹脂で成形加工する際に樹脂の流動先端部が会合した場所に形成される細い線状のウエルドラインに流れる傾向がある。
ウエルドラインには、抵抗調整用の高分子界面活性剤であるポリエーテルエステルアミド成分が凝集し易く、凝集部分に放電電流が増加し発熱が多くなって変質劣化し易く、更に高温高湿環境では吸湿性の大きいポリエーテルエステルアミド成分が吸湿して電気抵抗を下げ、放電電流は増加傾向となり変質劣化を助長させ、抵抗調整層に亀裂を発生させ易い状況となり、低温低湿条件に移行すると変質劣化した部分で割れを生じる。
【0016】
非接触式帯電ローラの場合、軸の直線性などについて金属製軸部材30の形状や精度の補正をせずに、電気的に帯電ムラを補正しようとすると、帯電ムラを補正するために重畳するAC印加電圧(Vp−p)は、−800Vの感光体の帯電に対し、−2000〜−2400V程度となる。その結果、帯電ローラ表面は高電圧で放電することとなり、発生するイオンやスパッタリング作用で、最表面の保護層の結着剤である樹脂成分の分解損耗度合いが大きくなって、形成する画像にザラツキが発生するようになり、部品寿命を短くして交換を余儀なくされる。
また、有機感光体表面も発生するイオンや電子の衝突で損傷する度合いが大きくなり、感光層を形成する樹脂の分解損耗などで、その寿命が低下する。また、高電圧で放電する場合には、オゾンや窒素酸化物の発生量も多くなり、画像形成装置を設置する室内環境を臭気などで汚染するようにもなる。
なお、図3(c)中の314、315はギヤ、316は軸間距離を示す。
【0017】
<本発明の非接触式帯電ローラの構成>
そこで本発明では、図1(a)に示すように、金属製軸部材10の上に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体11を形成し、その表面を、刃先のノーズR1〜5mm、ニゲ角5〜10°、スクイ角15〜20°、刃面の粗さ0〜0.2μm、刃面により形成される切れ刃嶺の丸み半径0〜0.5μmのダイヤモンドバイトを用いて旋削加工し、表面に酸化皮膜12を形成させ、更に、シリカ膜13を被覆して非接触式帯電ローラとする。
図1(b)に示すように、順次形成する層の詳細な構成は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体14(JIS H 4080 1999記載、合金番号1000番台、5000番台、6000番台の何れかを使用する)の表面を、0.5〜2.5mol/Lの濃度の無機酸又は有機酸を電解液として陽極酸化処理し、微細孔15が形成された膜厚10〜30μmの酸化皮膜16を形成する。
次いで酸化皮膜16の表面に、アミン触媒を含有するペルヒドロポリシラザンを0.5〜2重量%含有する有機溶媒溶液を塗布し、100〜200℃で1時間焼成してシリカに転化させ、膜厚0.1〜0.2μmのシリカ膜17を形成する。
微細孔15の底部のバリヤー層18は、ホウ酸を電解液として、電圧250Vで電流がほぼゼロになるまでの約10分間程度陽極酸化し、膜厚を厚くして耐電圧を向上させる方が好ましい。
【0018】
図1(c)、(d)は、図1(b)に示す詳細な構成部の電子顕微鏡写真であり、図1(c)は膜厚方向への断面で、酸化皮膜19上にシリカ膜110が0.1〜0.2μmの膜厚で形成されている様子が分る。シリカ膜110の表面111はダイヤモンド旋削加工の表面性が確認できる。図1(d)は表面111の性状を更に拡大したもので、シリカ膜がうろこ状112に形成され、陽極酸化処理で形成される酸化皮膜の微細孔は封止されている。
更に図1(e)に示すように、シリカ膜13の表面に保護層113を被覆して非接触式帯電ローラとする。保護層113は導電性微粒子を分散させた電気抵抗1012〜1013Ωcm、膜厚5〜15μmの樹脂組成物で形成される。
更に、図1(f)に示すように、金属製軸部材114としてSUS440A、SUS440B、SUS440C、及びSUS440Fのステンレス鋼棒の何れかを用い、外径周面が硬度HRC54〜65になるように焼入硬化処理を施して使用する。このように外径周面を焼入硬化し機械強度の増加した金属製軸部材114を用いて非接触式帯電ローラを形成するようにすれば、強度が増加した分、軸振れ精度が悪化せず、設定する帯電ギャップを確保し易くなる。
【0019】
図2(a)は抵抗調整層に熱可塑性樹脂組成物を用いた従来型の非接触式帯電ローラの構成を示し、金属製軸部材20上に、ポリエーテルエステルアミド等の高分子化合物及び四級アンモニウム塩等のイオン導電性物質を含有させて電気抵抗値10〜10Ωcmになるよう調整されたABS樹脂組成物の抵抗調整層21が、0.5〜1mmの膜厚で射出成形により形成され、最表面に導電性微粒子を分散させて電気抵抗値が1010〜1012Ωcmになるように調整された熱可塑性樹脂組成物からなる保護層22が、膜厚5〜10μmで形成されている。
図2(b)は、上記従来型の抵抗調整層21を射出成形機で被覆する際の、溶融したABS樹脂組成物の金型内での流動状況を示す図であり、固定金型23と可動金型24の合わせ目にできるパーティングライン25と、注入口26から金型内に流入したABS樹脂組成物の流動先端会合部のウエルドライン27の状況を示しており、金属製軸部材28の軸方向にスジとして形成される。
【0020】
パーティングライン25は、次の工程の外径旋削加工でほぼ消失するが、ウエルドライン27は、金型温度や樹脂溶融温度などの成形条件、ABS樹脂組成物の配合比などにより特に膜厚方向及び軸方向に発現し易く、図2(c)に示すように、外径を旋削加工された抵抗調整層表面29にスジ210として目視で確認されるように発現する。
このウエルドライン27のスジ210の部分では、ポリエーテルエステルアミド等のイオン導電性の高分子化合物成分が5μm幅で凝縮して電気抵抗値の低下した部分を形成し、更に高温高湿時の環境条件でポリエーテルエステルアミド成分特有の高吸湿状態となって電気抵抗値を低下させる。その結果、その部分での放電電流が増加することにより発熱して樹脂材料の変性劣化が起こって脆くなり、環境条件が低温低湿条件に変化すると伸縮差によりひび割れを発生させるようになる。
特に非接触式帯電ローラの軸振れが多い場合は、被帯電体への帯電ムラを緩和させるためにDC電圧に重畳するAC電圧1800〜2000Vが2000〜2400Vと高くなるので、放電電流も多くなって樹脂材料の変性劣化は更に加速され、よりひび割れを発生させ易い状況となる。
また、ウエルドライン27やパーティングライン25の部分では、他の部分と違って、成形時に熱応力が働いている状態になると、保護層形成の際の溶剤が含浸し易くなり、ひび割れを助長し易くなる。
【0021】
<アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体の外径表面旋削加工の方法>
図4は、焼入れ及びセンターレス研削加工により軸振れが高精度となった金属製軸部材40の上に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体41を被覆して外径表面を旋削加工する方法を示す図であり、図4(b)に示すように、旋削用の刃具は切削抵抗を低く抑えるため刃先を鋭く形成できるダイヤモンドバイト42を使用する。ダイヤモンドバイト42は、その刃先ノーズR1〜5mm、ニゲ角5〜10°、スクイ角15〜20°であって、刃面の粗さを0〜0.2μmとし、刃面により形成される切れ刃嶺の丸み半径を0〜0.5μmとする。スクイ角を15〜20°と鋭利にすることで加工抵抗を低く抑えることが可能となり、非接触式帯電ローラの軸方向中央部の外径が大きくなるのを抑制でき、バリの発生を抑制できるため異常放電部を形成することが無くなる。
旋削加工は、発熱を抑制し切粉を吸引装置へ誘導するために、エアーノズル46から切削油の入った圧縮空気をダイヤモンドバイト42の先端に吹付けて行なう。ダイヤモンドバイト42の取付けは、スクイ面47を下向きとし、切粉を下方のフード48で吸引して行なう。そして切粉が被加工物の表面に付着したり巻込まれたりするのを防止できるように、切削速度に応じた切粉吸引速度を確保して切粉回収装置49で切粉の吸引を行ない、切粉をボックス410に収納し圧縮して回収する。
【0022】
上記ダイヤモンドバイ42を用いて、例えば図4(a)に示すように、主軸とテール軸の同期回転型旋削装置(株式会社エグロ製RL600型)の主軸チャック43(藤井精密工業製エアーバルーンチャック)により非接触式帯電ローラの電圧印加用軸受け部の外径をクランプし、テール軸チャック44(藤井精密工業製エアーバルーンチャック)により非接触式帯電ローラの軸受け部の外径をクランプし、主軸とテール軸に5000〜6000rpmの同期回転駆動を与え、旋削送り0.1mm/rev、切込み量5〜10μmでダイヤモンドバイト42を取付けた刃物台45を移動して荒加工を行ない、同じく切込み量3〜5μmで仕上加工を行ない、表面粗さ0.5〜3.5μmRz(JIS B 0601 1994)の表面を得る。
【0023】
<酸化皮膜及びシリカ膜の形成方法>
外径表面を仕上げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体41には、無機酸又は有機酸(例えば、硫酸、燐酸、蓚酸、マロン酸)を電解液とし濃度0.5〜2.5mol/L、液温20〜25℃、電解電流0.8〜2A/dの範囲で1〜2時間の陽極酸化処理を行って、膜厚10〜30μmの酸化皮膜を形成し、イオン交換水で洗浄したのち130℃で30分間加熱乾燥して酸化皮膜に形成された微細孔の中の水分除去を行う。
酸化皮膜上には、図4(c)の塗布装置を用いて、ペルヒドロポリシラザン0.5〜2重量%と少量のアミン触媒を含有したキシレン・ミネラルスピリット溶液(QGC東京社製:アクアミカ、製品番号NP110)を塗布する。金属製軸部材取付け主軸411、押え軸412の回転数を300rpmとし、スプレーノズル413の移動速度を10〜20mm/秒として、酸化皮膜の外径面414に、1〜2ccの有機溶媒溶液を数回塗布し、指触(指で触れて乾いたと感じる程度に)乾燥後、150〜200℃で1時間加熱乾燥させてシリカに転化させ、膜厚0.1〜0.2μmのシリカ膜を形成する。
ペルヒドロポリシラザンのシリカへの転化は、形成されたシリカ膜上に50〜60μmの厚みの帯電ギャップ形成部材を両端部円周上に幅10mmに被覆し、非接触式で感光体への帯電電位を測定し、帯電電位が各印加電圧毎に一定してステップし直線性となることにより確認する。次いで、帯電ギャップ形成部材36、37を両端部に被覆すれば本発明1の非接触式帯電ローラが得られる。
【0024】
<酸化皮膜とシリカ膜からなる抵抗調整層に保護層を形成する方法>
更に、帯電電位が各印加電圧毎に一定してステップし直線性となる上記帯電ローラの酸化皮膜及びシリカ膜を抵抗調整層として、酸化錫、ITO(酸化錫インジウム)、カーボンブラック等の導電性微粒子20〜50重量%を混合分散したフッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも一つを含有するセラミック複合樹脂塗料を、図4(c)と同様の塗布装置で塗布して、電気抵抗値が1010〜1012Ωcmの保護層を5〜15μmの膜厚で形成する。
図5は、形成された保護層表面を研磨する方法を示す図であって、図5(a)に示すように、保護層50の表面にはセラミック複合樹脂塗料の微小な突起51が形成され易く、そのままで帯電ローラ表面として使用すると、突起51部分が放電点となって強い放電が行われ、画像形成上でざらつきの原因となるので、表面をラッピングペーパー52で研磨して平滑化させる。
図5(b)は、研磨装置の概略図であって、番2000〜3500のラッピングペーパー52を収納したテープリール53からテンションローラ上54及びテンションローラ下55を介して巻取りテープリール56に毎分20〜50mmで巻取りながら非接触式帯電ローラ57の保護層となる表面を研磨し、突起の除去された表面粗さが0.1〜3μmRz(JIS B 0601 1994)の範囲の研磨面を持つ図5(c)に示すような保護層表面57を形成する。次いで、帯電ギャップ形成部材36、37を両端部に被覆すれば、本発明2の非接触式帯電ローラが得られる。
【0025】
<本発明1、2の非接触式帯電ローラと、支持体表面に酸化皮膜のみを形成した非接触式帯電ローラの帯電特性>
図6(a)は、非接触式帯電ローラの帯電電位測定装置の構成図で、帯電ギャップ形成部材となる膜厚50μmの粘着テープで、非接触式帯電ローラ60の両端部を幅10mm被覆し、2〜4Nの荷重で感光体に当接させ帯電ギャップ50μmで配置し、被帯電体には機能分離型有機感光体61を用いた。機能分離型有機感光体61の層構成は、アルミニウム基体(φ30mm)、下引き層5μm(メラミンアルキド樹脂、酸化Ti分散)、電荷発生層0.5μm(電荷発生剤チタニルフタロシアニン、ブチラール樹脂)、電荷輸送層30μm(電荷輸送剤スチルベン系、ポリカーボネート樹脂)である。
測定に用いた機器は、高圧電源62(FLUKE415B 0〜±3KV)、表面電位計63(TREK344)、電位測定プローブ64(TREK344用)、測定間隔約1mm、帯電電位の記録計65(GRAPHTEC SERVO150)、オゾン測定器66(光明理化学工業ガス検知管)である。
暗箱67内で機能分離型有機感光体61を線速250mm/秒で回転させ、感光体61表面に帯電した電位は導電性の除電ブラシ68を用いて除去した。
【0026】
図6(b)は、支持体表面に酸化皮膜610のみを形成した非接触式帯電ローラでの、機能分離型有機感光体61への帯電電位を測定した記録チャートであって、横軸が帯電電位測定時間(15秒/5mm)、縦軸が感光体帯電電位(200V/10mm)である。測定環境は室温22〜23℃、湿度52〜55%である。
図から分るように、非接触式帯電ローラへの印加電圧−900Vから、感光体への立上り帯電電位611が−90V程度上昇し始め、印加電圧−1000V〜−1600Vの範囲612で、30〜150Vと振幅不安定領域613を持った帯電電位となり、画像形成装置で用いられる感光体への帯電電位−400〜−800Vの範囲614では、安定な帯電が得られ難い傾向を示している。
【0027】
図6(c)は、上記不安定領域613を持った帯電電位となる非接触式帯電ローラの酸化皮膜610の上に、シリカ膜615を形成した本発明1の非接触式帯電ローラについて、同様にして帯電電位を測定した記録チャートである。
図から分るように、非接触式帯電ローラへの印加電圧が−900Vから感光体への立上り帯電電位616が−40V程度上昇し始め、画像形成装置で用いられる感光体への帯電電位−400〜−800Vの範囲617では、安定な帯電が得られるようになっている。更に非接触式帯電ローラへの印加電圧−900Vの位置618から印加電圧−2500Vの位置619の範囲で、ほぼ等間隔で感光体帯電電位が上昇し、印加電圧に対し直線性を持った帯電電位となっている。酸化皮膜の膜厚10〜30μm、シリカ膜の膜厚0.1〜0.2μmの範囲では、ほぼ同様の結果が得られる。
また、感光体帯電電位−800Vで画像形成を行う場合を想定して、非接触式帯電ローラへDC−1570Vの印加電圧を2分間連続印加した時の感光体帯電電位620は、−800Vから−765Vに35V低下した。
【0028】
図7は、酸化皮膜の上にシリカ膜を形成して抵抗調整層とし、更にその表面に保護層70を形成した本発明2の非接触式帯電ローラについて、図6の場合と同様にして帯電電位を測定した記録チャートである。
酸化皮膜とシリカ膜からなる抵抗調整層上に、セラミックハイブリッド樹脂となるセラタイト塗料(エスケー化研製)に酸化錫を20重量%混合し、図3(c)のスプレー装置で膜厚5〜15μmになるように塗布し、80℃で30分間余熱乾燥したのち130℃で30分間の本乾燥を行って保護層70を形成した。
図から分かるように、画像形成装置で用いられる帯電電位−400〜−800Vの範囲71では安定な帯電が得られた。更に非接触式帯電ローラへの印加電圧−900Vの位置72から印加電圧−2500Vの位置73の範囲で、ほぼ等間隔で感光体への電位が上昇し、印加電圧に対し直線性を持った帯電電位となった。
また、感光体帯電電位−800Vで画像形成を行う場合を想定して、非接触式帯電ローラへDC−1720Vの印加電圧を2分間連続で印加した時の保護層での感光体帯電電位74は−800Vで安定しており、図6(c)の場合よりも優れていた。
【0029】
このようにアルミニウム又はアルミニウム合金を支持体として酸化皮膜10〜30μmを形成し、その表面にシリカ膜0.1〜0.2μmを形成して非接触式帯電ローラとすることにより、非接触式帯電ローラへの印加電圧に対応して感光体へ直線性を持った帯電をさせることができ、更に、酸化皮膜とシリカ膜を抵抗調整層とし保護層を形成することで、スパッタリングにより抵抗調整層表面が損耗劣化することが無くなり耐久性のあるものとなる上に、保護層がない場合と同様に、非接触式帯電ローラへの印加電圧に対応して感光体へ直線性を持った帯電をさせることができる。
また、抵抗調整層が酸化アルミニウム(Al)及びシリカ(SiO)の無機皮膜で形成されるため、高温高湿条件においても、ABS樹脂等を用いた抵抗調整層と比較して膨潤膨張は非常に少なく、画像形成に影響するような抵抗調整層のヒビ割れの発生などを起さないものとなる。
【0030】
上記本発明1〜2の非接触式帯電ローラを組み込んだ本発明3の帯電装置は、感光体に所望の帯電電位を付与し、帯電ムラ防止のために重畳するACバイアス電圧(Vp−p)を特に上昇させることなく帯電電位付与が可能となり、抵抗調整層にポリエーテルエステルアミド等の高分子界面活性材を用いないため膨潤膨張が非常に少なく、ウエルドライン等の亀裂の発生し易い層構造がないため耐久性の良い安定した帯電装置となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明1の非接触式帯電ローラによれば、画像形成装置の環境条件(10℃15%〜30℃90%)の範囲で、高分子界面活性剤及びイオン導電剤を混合した熱可塑性樹脂組成物を用いた非接触式帯電ローラに比べて膨潤膨張が非常に少なく、画像形成欠陥を起こすようなひび割れの発生が無く、四級アンモニウム塩等のイオン導電剤を用いないためイオン導電剤のブリードアウトが無く、被帯電体への帯電電位変動を抑制することができる。
本発明2の非接触式帯電ローラによれば、画像形成装置の環境条件(10℃15%〜30℃90%)の範囲で、高分子界面活性剤及びイオン導電剤を混合した熱可塑性樹脂組成物を用いた非接触式帯電ローラに比べて抵抗調整層の膨潤膨張が非常に少なく、画像形成欠陥を起こすような抵抗調整層のひび割れ及び保護層のひび割れの発生が無く、また抵抗調整層に四級アンモニウム塩等のイオン導電剤を用いないため、保護層表面へのイオン導電剤のブリードアウトが無く、更に、保護層の被覆により抵抗調整層表面が直接露出していないため、放電時のスパッタリング作用を受けることがなく、抵抗変化が少なくなり、被帯電体への帯電電位変動を抑制することができる。
【0032】
本発明3の帯電装置によれば、本発明1又は2の非接触式帯電ローラを備えることにより過剰な放電(電子なだれ)が抑制され、それに伴いオゾンの発生も抑制され、DC印加電圧の各電圧に対応する被帯電体の帯電電位が安定となり、また、重畳するAC印加電圧を低下させることができる。
本発明4の画像形成装置によれば、本発明3の帯電装置を備えた画像形成装置であることから、画像形成装置を設置する室内環境の汚染を増加させることがない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、外径測定には、キーエンスLS型レーザー測定機、ギャップテープの厚み測定には、市販のマイクロメータ、ギャップ変動量測定には、キーエンスLS型レーザー測定機とφ30鋼製円筒冶具(精度:1μm/350mm)、画像形成には、リコーイマジオカラー、オゾン測定には、ガステックGV−100S(オゾンガス検知管0.05〜0.6ppm、5回基準)を用いた。
【0034】
実施例1
金属製軸部材としてステンレス鋼棒(SUS440C製、直径11.3mm)を用い、外径周面が硬度HRC58になるように真空焼入硬化処理をし、次いで研削加工を施して直径11mmとした。
次いで、ステンレス鋼棒の上にアルミニウム(アルミニウム合金継目無管JIS H 4080 1999 合金番号5056、内径11mm、肉厚1mm)からなる支持体を被覆したのち表面を旋削加工し外径φ11.9mmとした。旋削加工にはダイヤモンドバイトを使用し、発熱を抑制し切粉を吸引装置へ誘導するために、エアーノズルから切削油の入った圧縮空気をダイヤモンドバイトの先端に吹付けて行なった。荒加工、仕上加工を経て、表面粗さ2〜3.5μmRz(JIS B 0601 1994)の表面を得た。
次いで、上記外径表面を仕上げたアルミニウムからなる支持体に対し、マロン酸を電解液とし、濃度2.5mol/L、液温25〜30℃、電解電流0.8〜1A/dの範囲で1時間の陽極酸化処理を行って、膜厚30μmの酸化皮膜を形成し、イオン交換水で洗浄したのち、130℃で30分間加熱乾燥して酸化皮膜に形成された微細孔の中の水分を除去した。
次いで、図4(c)の塗布装置を用いて、酸化皮膜上に、ペルヒドロポリシラザン0.5〜2重量%と少量のアミン触媒を含有するキシレン・ミネラルスピリット溶液(東京QGC社製:アクアミカ、製品番号NP110)を塗布した。金属製軸部材取付け主軸及び押え軸の回転数を300rpmとし、スプレーノズルの移動速度を10mm/秒として、酸化皮膜の外径面に1〜2ccの上記キシレン・ミネラルスピリット溶液を数回塗布し、指触(指で触れて乾いたと感じる程度に)乾燥後、130〜150℃で1時間加熱乾燥させてシリカに転化させ、膜厚0.15μmのシリカ膜を形成した。
次いで、帯電ギャップ形成部材として粘着テープ(ニチバン製50μm粘着テープ)を両端部に被覆し、非接触式帯電ローラを得た。
この非接触式帯電ローラを用いて測定したところ、表1のような結果が得られた。
【0035】
実施例2
シリカ膜の上に、フッ素樹脂を含有するセラミックハイブリッド樹脂となるセラタイト塗料(エスケー化研製:セラタイトF)に酸化錫を20重量%混合し、図3(c)のスプレー装置で膜厚10〜15μmになるように塗布し、80℃で30分間余熱乾燥したのち130℃で30分間の本乾燥を行って保護層70を形成した点以外は、実施例1と同様にして非接触式帯電ローラを得た。
この非接触式帯電ローラを用いて、実施例1と同様にして測定したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0036】
比較例1
金属製軸部材としてステンレス鋼棒(SUS303製、直径10mm、焼入れ処理無し)を用い、抵抗調整層としてポリエーテルエステルアミド及びイオン導電剤を含有するABS樹脂を射出成形加工により厚さ1mmで形成され、その表面にアクリルシリコン系樹脂、イソシアネート系硬化剤及びITO(酸化インジウムスズ)からなるセラミックハイブリッド樹脂組成物を塗布して厚さ約10μmで形成された保護層を持つ外径φ11.9mmの非接触式帯電ローラである従来品を得た(リコー製デジタルカラー複写機イマジオネオC600のサービスパーツより)。
この非接触式帯電ローラを用いて、実施例1と同様にして測定したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0037】
比較例2
金属製軸部材としてステンレス鋼棒(SUS303製、直径8mm、焼入れ処理無し)を用い、抵抗調整層としてエピクロルヒドリンゴム及び導電剤にカーボンブラックを混合分散されて厚さ1.5mmで形成された表面にフッ素樹脂系塗料を厚さ0.1〜0.2μm塗布して形成された外径φ11mmの非接触式帯電ローラである従来品を得た(リコー製デジタルカラー複写機イマジオネオC285のサービスパーツより)。
この非接触式帯電ローラを用いて、実施例1と同様にして測定したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から分るように、実施例1、2では、金属製軸部材に焼入れ硬化処理を施すことにより、非接触帯電ローラ中央部の外径の増径量が、比較例1、2の半分以下になり、ギャップ変動量も向上し、画像ムラを防止するためのAC重畳電圧を上昇させることもなかった。
実施例のオゾン発生量は、比較例1とは大差無いが、比較例2のゴム製非接触帯電ローラ(従来品)に比べて半減し、暗箱内でのオゾン臭を感じない程度となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)金属製軸部材の上に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体、その酸化皮膜、シリカ膜を順に形成した非接触式帯電ローラの断面図、(b)酸化皮膜とシリカ膜の詳細な構成を示す説明図(部分拡大図)、(c)詳細な構成部の電子顕微鏡写真、(d)表面111の性状を更に拡大した図(電子顕微鏡写真)、(e)シリカ膜13の表面に保護層を被覆した非接触式帯電ローラを示す図、(f)焼入硬化処理を施した金属製軸部材を用いた非接触式帯電ローラを示す図。
【図2】(a)抵抗調整層に熱可塑性樹脂組成物を用いた従来型の非接触式帯電ローラの構成を示す図、(b)射出成形で形成される従来型の非接触式帯電ローラの抵抗調整層に形成されるパーティングライン及びウエルドラインの説明図、(c)射出成形で形成された抵抗調整層表面のウエルドラインの状態説明図。
【図3】(a)非接触式帯電ローラの金属製軸部材の正面図、(b)非接触式帯電ローラの正面図、(c)非接触式帯電ローラと感光体とそのギャップの正面図。
【図4】焼入れ及びセンターレス研削加工により軸振れが高精度となった金属製軸部材40の上に、アルミ又はアルミ合金からなる支持体を被覆して外径表面を旋削加工する方法を示す図。(a)旋削加工方法の上面図、(b)旋削加工のダイヤモンドバイト取付図及び切粉回収方法の概要図、(c)スプレー塗布装置の上面図。
【図5】形成された保護層表面を研磨する方法を示す図。(a)スプレー塗布装置での保護層の表面状態図、(b)ラッピングペーパー研磨装置の概要図、(c)研磨後の保護層の表面状態図。
【図6(a)】非接触式帯電ローラの帯電電位測定装置の説明図。
【図6(b)】支持体表面に酸化皮膜のみを形成した非接触式帯電ローラでの感光体への帯電電位を測定した記録チャート。
【図6(c)】支持体表面に形成した酸化皮膜にシリカ膜を被覆して抵抗調整層とした本発明の非接触式帯電ローラでの感光体への帯電電位を測定した記録チャート。
【図7】酸化皮膜にシリカ膜を被覆して抵抗調整層とし、更に保護層を被覆して非接触式帯電ローラとしたときの感光体への帯電電位を測定した記録チャートである。
【図8】(a)機能分離型有機系感光体を使用しカールソンプロセスを用いる白黒及びカラー画像形成装置の概略構成図、(b)トナー画像形成ユニットの構成を示す図。
【符号の説明】
【0041】
10 金属製軸部材
11 支持体
12 酸化皮膜
13 シリカ膜
14 支持体(11の支持体に相当)
15 微細孔
16 酸化皮膜(12の酸化皮膜に相当)
17 シリカ膜(13のシリカ膜に相当)
18 バリヤー層
19 (電子顕微鏡写真上の)酸化皮膜
110 (電子顕微鏡写真上の)シリカ膜
111 (電子顕微鏡写真上の)シリカ膜表面
112 うろこ状のシリカ膜
113 保護層
114 焼入硬化処理された金属製軸部材
20 金属製軸部材
21 抵抗調整層
22 保護層
23 固定金型
24 可動金型
25 パーティングライン
26 注入口
27 ウエルドライン
28 金属製軸部材
29 旋削加工された抵抗調整層表面
210 スジ
30 金属製軸部材
31 軸受け部
32 電圧印加用軸受け部
33 被覆部
34 抵抗調整層
35 保護層
36 帯電ギャップ形成部材
37 帯電ギャップ形成部材
38 帯電面
39 帯電ギャップ
310 帯電ギャップ
311 帯電ギャップ
312 非接触式帯電ローラ
313 感光体
314 ギヤ
315 ギヤ
316 軸間距離
40 焼入れ硬化された金属製軸部材
41 アルミニウム又はアルミニウム合金の支持体
42 ダイヤモンドバイト
43 旋削装置主軸チャック
44 旋削装置テール軸チャック
45 刃物台
46 エアーノズル
47 スクイ面
48 フード
49 切粉回収装置
410 ボックス
411 金属製軸部材取付け主軸
412 押え軸
413 スプレーノズル
414 酸化皮膜の外径面
50 保護層
51 突起
52 ラッピングペーパー
53 テープリール
54 テンションローラ上
55 テンションローラ下
56 巻取りテープリール
57 研磨面を持つ保護層表面
60 非接触式帯電ローラ
61 機能分離型有機系感光体
62 高圧電源
63 表面電位計
64 表面電位計プローブ
65 帯電電位の記録計
66 オゾン測定器
67 暗箱
68 除電ブラシ
610 酸化皮膜
611 立上り帯電電位
612 印加電圧−1000〜−1600Vの範囲
613 振幅不安定領域
614 酸化皮膜での帯電電位−400〜−800Vの範囲
615 シリカ膜
616 立上り帯電電位
617 シリカ膜での帯電電位−400〜−800Vの範囲
618 印加電圧−900Vの位置
619 印加電圧−2500Vの位置
620 酸化皮膜とシリカ膜での帯電電位
70 保護層
71 抵抗調整層と保護層での帯電電位−400〜−800Vの範囲
72 印加電圧−900Vの位置
73 印加電圧−2500Vの位置
74 保護層での感光体帯電電位
81 トナー画像形成ユニット
82 機能分離型有機系感光体
83 帯電ユニット
84 光書込みユニット
85 現像ユニット
86 クリーニングユニット
87 転写ユニット
88 転写ベルト
89 帯電ローラ
810 レーザー光
811 現像部材
812 記録紙
813 転写部材
814 定着ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体表面に酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜の表面にシリカ膜を形成したことを特徴とする非接触式帯電ローラ。
【請求項2】
酸化皮膜及びシリカ膜を抵抗調整層とし、該抵抗調整層の表面に、導電性微粒子を分散させた樹脂組成物からなる保護層を形成したことを特徴とする請求項1記載の非接触式帯電ローラ。
【請求項3】
画像形成装置の感光体両端部と接し、感光体の帯電面となる範囲に帯電ギャップを形成して感光体に帯電電位を付与することができる非接触式帯電ローラとして、請求項1又は2記載の非接触式帯電ローラを備えたことを特徴とする帯電装置。
【請求項4】
感光体表面を帯電する帯電装置として、請求項3記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−155797(P2007−155797A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346640(P2005−346640)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】