説明

非接触式ICカードリーダライタ装置及び送信電波出力レベル制御方法

【課題】非接触式ICカードとの距離に応じて適切に送信電波の出力レベルを制御することが可能な非接触式ICカードリーダライタ装置を提供すること。
【解決手段】非接触式ICカードリーダライタ装置は、非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、前記非接触式ICカードから送信される電波を受信する送受信手段と、前記送受信手段による電波送信に伴う消費電流レベルを検出する電流レベル検出手段と、前記送受信手段により受信された電波の振幅レベルを検出する振幅レベル検出手段と、前記電流レベル検出手段による消費電流レベルの検出結果、及び前記振幅レベル検出手段による振幅レベルの検出結果に基づき、送信電波の出力レベルを制御する制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、非接触式ICカードから送信される電波を受信し、非接触式ICカードに対してデータを書き込んだり、非接触式ICカードからデータを読み出したりする非接触式ICカードリーダライタ装置に関する。
【0002】
また、本発明は、このような非接触式ICカードリーダライタ装置に適用される送信電波出力レベル制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、情報の安全性と携帯の利便性の面から非接触で利用可能な非接触式ICカードの普及が進んでおり、このような非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、非接触式ICカードから送信される電波を受信し、非接触式ICカードに対してデータを書き込んだり、非接触式ICカードからデータを読み出したりする非接触式ICカードリーダライタ装置に関する各種提案がなされている。
【0004】
非接触式ICカードリーダライタ装置は、様々な条件を考慮して、非接触式ICカードに対して、所定のパワーの電波を送信する。例えば、非接触式ICカードリーダライタ装置は、遠くから近づいてくる非接触式ICカードと早めに通信を開始するため、或いは近づききらなかった非接触式ICカードと良好に通信するために、やや強いパワーの電波を送信することがある。
【0005】
しかしながら、このような非接触式ICカードリーダライタ装置は、近接し過ぎた非接触式ICカードに過大な電力を供給してしまい、その結果、非接触式ICカードを破壊してしまうことがある。また、非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタ装置に対して近接した状態で長時間放置された際には、非接触ICカードが異常に発熱してしまうという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、次のような構成の非接触式ICカードリーダライタ装置が提案されている。送信電力を増幅する電力増幅回路と、前記電力増幅手段の出力レベルを可変するための電力切替回路と、受信検波信号の振幅を検出する振幅検出回路と、前記振幅検出回路で検出された受信検波信号の振幅の大きさを判定する振幅判定回路とを具備し、前記振幅判定回路の判定結果をもとに前記電力切替回路の出力を切替制御する非接触式ICカードリーダライタ装置が提案されている。
【0007】
非接触式ICカードが、非接触式ICカードリーダライタ装置に近接すると、振幅検出回路で検出される電圧値が大きくなり、振幅判定回路により振幅検出回路で検出される電圧が所定の閾値を越えたと判定されると、電力切替回路により、電力増幅回路の送信電力を下げる。これにより、非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタ装置に近接した時も、非接触式ICカードが異常に発熱することなく、正常に通信を行うことが可能となる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−227314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非接触式ICカードリーダライタで検出される受信信号レベルは、非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタに接近することにより、必ずしも単純増加するわけではない。例えば、非接触式ICカードの種類によっては、非接触式ICカードの近接に伴い非接触式ICカードリーダライタで検出される受信信号レベルが次第に増大し、さらに非接触式ICカードが近づくと途中で一旦受信信号レベルが下がり、さらに非接触式ICカードが近づくと受信信号レベルが再び増大することがある。
【0009】
このようなケースを含めると、受信信号レベルの検出結果だけに基づき送信電力の出力レベルを制御する方法では、非接触式ICカードと非接触式ICカードリーダライタとの距離に応じた正確な制御ができない。
【0010】
例えば、非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタ装置に近い位置にあるにも関わらず、受信信号レベルの低下に伴い、非接触式ICカードリーダライタが、非接触式ICカードが遠方にあるものと判断してしまい、送信電力の出力レベルを上げてしまい、非接触式ICカードを破損してしまう可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、非接触式ICカードとの距離に応じて適切に送信電波の出力レベルを制御することが可能な非接触式ICカードリーダライタ装置及び送信電波出力レベル制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の非接触式ICカードリーダライタ装置及び送信電波出力レベル制御方法は、以下のように構成されている。
【0013】
(1)この発明の非接触式ICカードリーダライタ装置は、非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、前記非接触式ICカードから送信される電波を受信する送受信手段と、前記送受信手段による電波送信に伴う消費電流レベルを検出する電流レベル検出手段と、前記送受信手段により受信された電波の振幅レベルを検出する振幅レベル検出手段と、前記電流レベル検出手段による消費電流レベルの検出結果、及び前記振幅レベル検出手段による振幅レベルの検出結果に基づき、送信電波の出力レベルを制御する制御手段とを備えている。
【0014】
(2)この発明の送信電波出力レベル制御方法は、非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、この電波送信に伴う消費電流レベルを検出し、前記非接触式ICカードから送信される電波を受信するとともに、この受信された電波の振幅レベルを検出し、前記消費電流レベルの検出結果及び前記振幅レベルの検出結果に基づき、送信電波の出力レベルを制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非接触式ICカードとの距離に応じて適切に送信電波の出力レベルを制御することが可能な非接触式ICカードリーダライタ装置及び送信電波出力レベル制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明は、非接触式ICカードリーダライタ装置と非接触式ICカードとの間の通信、及び非接触式ICカードリーダライタ装置から非接触式ICカードへの電力供給を電磁結合を利用して行う非接触式ICカードシステムに関し、特に、非接触式ICカードリーダライタ装置と非接触式ICカードとの距離に応じて適切なレベルの電力供給を可能にした非接触式ICカードリーダライタ装置に関する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触式ICカードリーダライタ装置101の概略構成、及びこの非接触式ICカードリーダライタ装置101と通信する非接触式ICカード120の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、非接触式ICカードリーダライタ装置101は、制御回路102、変調回路103、増幅回路104、ループアンテナ105、検波回路106、受信回路107、振幅検出回路108、判定回路109、電力切替回路110、及び電流検出回路111を備えている。
【0020】
制御回路102は、メモリおよびCPU等を含み、データの格納およびデータの処理を行う。変調回路103は、制御回路102から出力されるデータでキャリアを変調する。増幅回路104は、変調回路103の出力を規定の送信電力まで増幅する。ループアンテナ105は、増幅回路104から出力されるキャリアを放射して非接触式ICカード120に電力を供給すると共にデータを送信し、かつ負荷変調方式によりデータでAM変調されたキャリアを非接触式ICカード120から受信する。
【0021】
検波回路106は、ダイオードブリッジ等で構成され、ループアンテナ105で受信されたキャリアからデータの復調を行う。受信回路107は、検波回路106で復調されたデータを増幅し、波形整形して制御回路102へ伝える。振幅検出回路108は、検波回路106の検波出力を整流して直流電圧に変換する。判定回路109は、振幅検出回路108の出力を所定の閾値と比較し、大小判定を行う。電力切替回路110は、比較回路109の出力により増幅回路104の送信電力を2段階に切り替える。電流検出回路111は、変調回路103と増幅回路104とループアンテナ105を含む送信回路系の消費電流値を直流電圧に変換する。
【0022】
一方の非接触式ICカード120は、ループアンテナ121、及び制御回路122を備えている。
【0023】
ループアンテナ121は、非接触式ICカードリーダライタ装置101のループアンテナ105から放射されるキャリアを受信して制御回路122へ供給すると共に、制御回路122から供給されるデータにより負荷変調方式でAM変調されたキャリアを放射する。制御回路122は、メモリおよびCPU等を含み、ループアンテナ121から供給されるキャリアを整流して動作電源とすると共に、データの格納およびデータ処理を行う。
【0024】
次に、上記説明した非接触式ICカードリーダライタ装置101の動作を説明する。
【0025】
非接触式ICカードリーダライタ装置101は、変調回路103で生成され、増幅回路104で増幅されたキャリアを常時、ループアンテナ105から出力している。非接触式ICカード120は、非接触式ICカードリーダライタ装置101に近接すると、アンテナ121がキャリアを受信し、その受信波を整流することで、動作電源を得る。
【0026】
また、非接触式ICカードリーダライタ装置101は、制御回路102からコマンドを送出し、変調回路103を通してキャリアにAM変調をかけ、一定周期でコマンドを送出している。非接触式ICカード120は、そのキャリアから動作電源を得ると共に、非接触式ICカードリーダライタ装置101から一定周期で送出されるコマンドを受信し、制御回路122により、コマンドに対するレスポンスを生成し、アンテナ121の負荷を変える負荷変調方式でキャリアをAM変調し、非接触式ICカードリーダライタ装置101に応答する。非接触式ICカードリーダライタ装置101では、負荷変調方式で返送されたAM変調波をループアンテナ105が受信、検波回路106で復調し、制御回路102でレスポンスを認識し、データの授受が完了する。
【0027】
例えば、非接触式ICカードリーダライタ装置101の送信電力は、非接触式ICカード120が10cm程度離れた状態でも通信が出来るように1W程度とする。ところが、この出力状態で非接触式ICカード120が非接触式ICカードリーダライタ装置101のループアンテナ105に近接すると(例えば、非接触式ICカード120が非接触式ICカードリーダライタ装置101のループアンテナ105に対して数センチ以内まで近接すると)、非接触式ICカード120の受信電力が大きくなりすぎる。このため、非接触式ICカード120が受信電力を消費しきれず、非接触式ICカード120が加熱され破壊される恐れが生じる。
【0028】
この問題を解決するための送信電波出力レベル制御方法1及び送信電波出力レベル制御方法2について、以下に記述する。
【0029】
・送信電波出力レベル制御方法1
非接触式ICカード120が、非接触式ICカードリーダライタ装置101のループアンテナ105に近接した場合は、検波回路106は、受信検波レベルが図2に示すように単純増大することを検出する。同時に、振幅検出回路108は、検出電圧の増大を検出する。そして、判定回路109が、振幅検出回路108の検出電圧が所定の閾値を越えたと判定する。つまり、判定回路109が、非接触式ICカード120が近接したと判断する。この判断に基づき、電力切替回路110は、送信電力を指定のレベルまで下げる。これにより、非接触式ICカード120が、非接触式ICカードリーダライタ装置101に必要以上に近接した時も、非接触式ICカード120が、必要以上に加熱されることなく、正常に通信を行うことが可能となる。
【0030】
非接触式ICカードリーダライタ装置101は、常時受信検波レベルをモニタしており、再び、非接触式ICカード120が遠ざかった時には、振幅検出回路108、判定回路109は、受信検波レベルが小さくなったことを検出する。この検出に基づき、電力切替回路110は、送信電力を1W程度のレベルまで引き上げる。
【0031】
しかし、近年普及が進む非接触式ICカードのなかには、リーダライタに近づくに従い受信信号レベルが単純増大するものばかりではなく、図3に示すように中間の位置でレベルが低下し再度増大するものが存在する。このため、上述した受信信号レベルの検出だけでは、非接触式ICカードが近づいたかどうか正確に判断できないことがある。つまり、上述した送信電波出力レベル制御方法1では適切な送信電波出力レベル制御ができないことがある。
【0032】
そこで、上記したように受信信号レベルが単純増大しない場合であっても、適切な送信電波出力レベル制御が可能な送信電波出力レベル制御方法2について説明する。
【0033】
・送信電波出力レベル制御方法2
非接触式ICカードリーダライタ装置101は、非接触式ICカード120が近づくに従い、送信回路で消費される電流値が低下するという特性を有する。送信電波出力レベル制御方法2では、この特性を利用し、非接触式ICカード120の近づき具合を正確に検出する。たとえば、図4に示すように、非接触式ICカードリーダライタ装置101が、非接触式ICカード120が一番近づいたときに消費電流が最小になる特性を有する場合には、電流検出回路111の検出値が小さくなっている場合は非接触式ICカード120が非接触式ICカードリーダライタ装置101に対して近づいていることが分かり、電流検出回路111の検出値が大きくなっている場合は非接触式ICカード120が非接触式ICカードリーダライタ装置101から遠ざかっていることが分かる。
【0034】
非接触式ICカードリーダライタ装置101は、受信信号レベルが閾値より高いか或いは閾値以下かを検出し、さらに消費電流値の増加傾向又は減少傾向を検出することにより(両検出の組み合わせにより)、非接触式ICカード120が近づいているか遠ざかっているかを正確に判断する。これにより、非接触式ICカード120がある程度近づいた位置で送信電力を低い値に切替え、また、非接触式ICカード120が遠ざかるときは送信電力を高い値に切替えることが可能となる。その結果、非接触式ICカードリーダライタ装置101から非接触式ICカード120へ必要十分な電力を供給し、非接触式ICカード120の過剰な発熱及びこれに伴う回路破壊等を回避することが可能となる。
【0035】
非接触式ICカードリーダライタ装置101は、通常、1W程度の十分高い送信電力で動作している。非接触式ICカード120が非接触式ICカードリーダライタ装置101のループアンテナ105に近接すると、非接触式ICカードリーダライタ装置101は送信電力レベルを小さくする。これにより、非接触式ICカード120が異常に加熱され、破壊されるのを防止でき、安心して非接触式ICカード120を使用することが可能になり、大幅に使い勝手が向上する。
【0036】
次に、送信電波出力レベル制御方法2について説明する。図5は、送信電波出力レベル制御方法2の一例を示すフローチャートである。
【0037】
まず、非接触式ICカードリーダライタ装置101は送信出力を高モード(第1出力レベル)に設定した後(ST101)、非接触式ICカード120に対してコマンドを送信する(ST102)。非接触式ICカードリーダライタ装置101は、コマンド送信後、受信モードに入り非接触式ICカード120からの信号の受信待ちとなる。非接触式ICカードリーダライタ装置101が、非接触式ICカード120からの信号を受信すると(ST103)、電流検出回路111により監視されている電流値(電圧に換算した値)が制御回路102のメモリ等に保持される(ST104)。ここで、保存される電流値を電流値Aと定義する。振幅検出回路108は、受信レベルの振幅を検出し続け(ST105)、電流検出回路111は、電流値を検出し続ける(ST106)。電流検出回路111が検出する現在の電流値を電流値Bと定義する。
【0038】
振幅検出回路108による受信レベルがあらかじめ設定した閾値よりも高くなり(ST107、YES)、制御回路102により電流値Aと電流値Bが比較され、電流値Bが電流値Aより小さい場合(ST108、YES)、制御回路102は、非接触式ICカード120が近づいていると判断し(ST109)、送信出力を高モード(第1出力レベル)から低モード(第1出力レベルより低い第2出力レベル)に切り換える(ST110)。すでに低モードへ切り替えられている場合はそのままとする(ST110)。
【0039】
電流値Bが電流値A以上の場合は(ST108、NO)、制御回路102は、非接触式ICカード120が遠ざかっていると判断するが(ST116)、送信出力を高モード(第1出力レベル)から低モード(第2出力レベル)に切り換える(ST117)。すでに低モードへ切り替えられている場合はそのままとする(ST110)。
【0040】
振幅検出回路108による受信レベルがあらかじめ設定した閾値以下で(ST107、NO)、制御回路102により電流値Aと電流値Bが比較され、電流値Bが電流値Aより小さい場合(ST113、YES)、制御回路102は、非接触式ICカード120が近づいていると判断し(ST114)、送信出力を低モード(第2出力レベル)から高モード(第1出力レベル)に切り換える(ST115)。すでに高モードへ切り替えられている場合はそのままとする(ST115)。
【0041】
電流値Bが電流値A以上の場合は(ST113、NO)、制御回路102は、非接触式ICカード120が遠ざかっていると判断し(ST112)、送信出力を低モード(第2出力レベル)から高モード(第1出力レベル)に切り換える(ST111)。すでに高モードへ切り替えられている場合はそのままとする(ST111)。
【0042】
近年普及が進む非接触式ICカードのなかには、リーダライタに近づくに従い受信信号レベルが単純増大するものばかりではなく、図3に示すように中間の位置でレベルが低下し、再度増大するものが存在する。このようなケースにおいて、受信信号レベルの検出のみ、つまり、送信電波出力レベル制御方法1では適切な送信電波出力レベル制御ができないことがある。
【0043】
しかし、上記したような送信電波出力レベル制御方法2では、非接触式ICカードリーダライタ装置101での受信信号レベルの検出に加えて、送信回路部で消費される電流値の検出により、これら検出結果を組み合わせて、受信信号レベルが単純増大しない場合でも非接触式ICカード120が非接触式ICカードリーダライタ装置101のループアンテナ105に近づいているか或いは遠ざかっているかを正確に判断することができる。これにより、非接触式ICカード120がある程度近づいた位置で適切に送信電力を低い値に切替え、また、遠ざかるときにも適切に送信電力を高い値に切替えることができ、非接触式ICカードリーダライタ装置101から非接触式ICカード120へ必要十分な電力を供給し、非接触式ICカード120の過剰な発熱及びこれに伴う回路破壊等を回避することが可能となる。また、ループアンテナ105の近傍で非接触式ICカード120が過電力となり発熱した際にレスポンスを返さなくなりその結果通信不可状態となる不具合も回避も可能となる。
【0044】
なお、上記説明では、非接触式ICカードリーダライタ装置101は、非接触式ICカード120が近づくに従い、送信回路で消費される電流値が低下する特性を有するものとして説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、非接触式ICカードリーダライタ装置101が、非接触式ICカード120が近づくに従い、送信回路で消費される電流値が増大する特性を有する場合には、以下のような制御となる。
【0045】
振幅検出回路108による受信レベルがあらかじめ設定した閾値よりも高くなり、制御回路102により電流値Aと電流値Bが比較され、電流値Bが電流値Aより小さい場合、制御回路102は、非接触式ICカード120が遠ざかっていると判断し、送信出力を高モードから低モードに切り換える。すでに低モードへ切り替えられている場合はそのままとする。電流値Bが電流値A以上の場合は、制御回路102は、非接触式ICカード120が近づいていると判断し、送信出力を高モードから低モードに切り換える。すでに低モードへ切り替えられている場合はそのままとする。
【0046】
振幅検出回路108による受信レベルがあらかじめ設定した閾値以下で、制御回路102により電流値Aと電流値Bが比較され、電流値Bが電流値Aより小さい場合、制御回路102は、非接触式ICカード120が遠ざかっていると判断し、送信出力を低モードから高モードに切り換える。すでに高モードへ切り替えられている場合はそのままとする。電流値Bが電流値A以上の場合は、制御回路102は、非接触式ICカード120が近づいていると判断し、送信出力を低モードから高モードに切り換える。すでに高モードへ切り替えられている場合はそのままとする。
【0047】
なお、送信電波出力レベル制御方法1及び送信電波出力レベル制御方法2は、図1に示す非接触式ICカードリーダライタ装置101で実現可能であるが、送信電波出力レベル制御方法1は図6に示す非接触式ICカードリーダライタ装置101でも実現可能である。
【0048】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触式ICカードリーダライタ装置の概略構成、及びこの非接触式ICカードリーダライタ装置と通信する非接触式ICカードの概略構成を示す図である。
【図2】非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタ装置のループアンテナに近接した場合に、非接触式ICカードリーダライタ装置側での受信検波レベルが単純増大する例、つまりICカードと非接触式ICカードリーダライタ装置との距離に応じて変化する受信信号レベル特性の第1例を示す図である。
【図3】非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタ装置のループアンテナに近接した場合に、非接触式ICカードリーダライタ装置側での受信検波レベルが単純増大せずに、中間の位置で受信検波レベルが低下し再度増大する例、つまりICカードと非接触式ICカードリーダライタ装置との距離に応じて変化する受信信号レベル特性の第2例を示す図である。
【図4】非接触式ICカードが非接触式ICカードリーダライタ装置に一番近づいたときに消費電流が最小になる例、つまりICカードと非接触式ICカードリーダライタ装置との距離に応じて変化する消費電流特性の例を示す図である。
【図5】送信電波出力レベル制御方法2(振幅レベルと閾値との比較結果及び消費電流レベルの増減傾向の組み合わせに基づく送信電波の出力レベル制御)の一例を示すフローチャートである。
【図6】送信電波出力レベル制御方法1のみ実現可能な非接触式ICカードリーダライタ装置の概略構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
101…非接触式ICカードリーダライタ装置、102…制御回路、103…変調回路、104…増幅回路、105…ループアンテナ、106…検波回路、107…受信回路、108…振幅検出回路、109…判定回路、110…電力切替回路、111…電流検出回路、120…非接触式ICカード、121…ループアンテナ、122…制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、前記非接触式ICカードから送信される電波を受信する送受信手段と、
前記送受信手段による電波送信に伴う消費電流レベルを検出する電流レベル検出手段と、
前記送受信手段により受信された電波の振幅レベルを検出する振幅レベル検出手段と、
前記電流レベル検出手段による消費電流レベルの検出結果、及び前記振幅レベル検出手段による振幅レベルの検出結果に基づき、送信電波の出力レベルを制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする非接触式ICカードリーダライタ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記振幅レベル検出手段により検出された振幅レベルと閾値との比較結果、及び前記電流レベル検出手段により検出された消費電流レベルの増減傾向の組み合わせに基づき、送信電波の出力レベルを制御することを特徴とする請求項1に記載の非接触式ICカードリーダライタ装置。
【請求項3】
前記非接触式ICカードが近づくに従い消費電流レベルが減少する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の非接触式ICカードリーダライタ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
初期段階において第1出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記振幅レベル検出手段により検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値より高く、且つ前記電流レベル検出手段により検出される消費電流レベルが減少傾向にあると判断された段階において、前記第1出力レベルより低い第2出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記振幅レベル検出手段により検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値より高く、且つ前記電流レベル検出手段により検出される消費電流レベルが増加傾向にあると判断された段階において、前記第2出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記振幅レベル検出手段により検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値以下で、且つ前記電流レベル検出手段により検出される消費電流レベルが減少傾向にあると判断された段階において、前記第1出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記振幅レベル検出手段により検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値以下で、且つ前記電流レベル検出手段により検出される消費電流レベルが増加傾向にあると判断された段階において、前記第1出力レベルの送信電波の送信を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の非接触式ICカードリーダライタ装置。
【請求項5】
非接触式ICカードに対して電波を送信するとともに、この電波送信に伴う消費電流レベルを検出し、
前記非接触式ICカードから送信される電波を受信するとともに、この受信された電波の振幅レベルを検出し、
前記消費電流レベルの検出結果及び前記振幅レベルの検出結果に基づき、送信電波の出力レベルを制御する、
ことを特徴とする送信電波出力レベル制御方法。
【請求項6】
前記検出された振幅レベルと閾値との比較結果及び前記検出された消費電流レベルの増減傾向の組み合わせに基づき、送信電波の出力レベルを制御することを特徴とする請求項5に記載の送信電波出力レベル制御方法。
【請求項7】
前記非接触式ICカードが近づくに従い消費電流レベルが減少する特性を有する非接触式ICカードリーダライタに適用可能な送信電波出力レベル制御方法であって、
初期段階において第1出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値より高く、且つ前記検出される消費電流レベルが減少傾向にあると判断された段階において、前記第1出力レベルより低い第2出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値より高く、且つ前記検出される消費電流レベルが増加傾向にあると判断された段階において、前記第2出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値以下で、且つ前記検出される消費電流レベルが減少傾向にあると判断された段階において、前記第1出力レベルの送信電波の送信を制御し、
前記検出された振幅レベルと閾値とを比較し振幅レベルが閾値以下で、且つ前記検出される消費電流レベルが増加傾向にあると判断された段階において、前記第1出力レベルの送信電波の送信を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の送信電波出力レベル制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−129919(P2008−129919A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315557(P2006−315557)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】