説明

非接触式ICカードリーダ装置

【課題】 非接触式ICカードの再検出が必要となった場合であっても、その再検出に要する時間を短縮することができ、かつ、通信頻度が低い通信方式の非接触式ICカードであっても、その検出効率の低下を抑制することができる、通信方式の異なる非接触式ICカードに対応した非接触式ICカードリーダ装置を提供する。
【解決手段】 非接触式ICカードリーダ装置1は、これに内設されたアンテナ4から、通信方式の異なる非接触式ICカード6に対し、カード検出信号を送信してポーリング処理を実行し、任意のタイミングで実行されたポーリング処理で確定された検出通信方式のカード検出信号の送信回数が、前記検出通信方式以外の通信方式のカード検出信号の送信回数よりも多くなるように設定する処理を行い、また、タイマー回路7により設定された時間内にアクセスしない場合には、前記カード検出信号の送信回数が、全ての通信方式について均等となるように設定する処理を行う制御回路2を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信方式に対応する非接触式ICカードと通信を行う非接触式ICカードリーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子マネーの精算や自動改札機で用いられるカード、あるいは、入退室管理システムや社員証等のIDカードとして、非接触式ICカードが広く用いられており、今後も様々な分野で利用されることが予想される。
【0003】
非接触式ICカードは、非接触式ICカードリーダ装置によって実行されるポーリング処理により、その存在が確認される。非接触式ICカードリーダ装置には送信アンテナが内設されており、その送信アンテナからカード検出信号が絶えず送信されている。そして、非接触式ICカードがその通信範囲内に入ったとき、非接触式ICカードは、送信されたカード検出信号に呼応して、その応答信号を非接触式ICカードリーダ装置に内設された受信アンテナに向けて返信する。そして、非接触式ICカードリーダ装置は、この受信した応答信号によりその存在を確認する。
【0004】
このような非接触式ICカードと非接触式ICカードリーダ装置との間の通信方式は、例えばISO14443のような国際標準として通信規格が定められている。通信距離に応じて「密着型」、「近接型」、「近傍型」、および「遠隔型」の4種類に区分され、このうち「近接型」の通信では、送受信周波数が13.56MHzの電波が用いられ、通信が可能な距離はおおよそ10cm以下である。また、通信速度や記憶容量の違い、あるいは符号化方式や変調方式の違い等により、「タイプA」、「タイプB」の二種類の通信方式が公式に規定されている。この他に非公式の通信方式として「タイプC」がある。
【0005】
上述したような通信方式の異なる非接触式ICカードに対し、その通信方式を識別するためのカード検出信号を順次送信することにより、一台の非接触式ICカードリーダ装置で非接触式ICカードの読み取りに対応することができるようにしたものが知られており、このような技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0006】
(従来例1)
図3は、従来の非接触式ICカードリーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。従来の非接触式ICカードリーダ装置11は、少なくとも、電波を送信または受信するアンテナ14と、前記アンテナ14を介して非接触式ICカード16との送受信の処理を行う送受信回路13と、非接触式ICカードリーダ装置11を制御し、上位装置17との通信を行う制御回路12とから構成されている。
【0007】
さらに、前記制御回路12は、非接触式ICカード16の通信方式、例えば送受信周波数が13.56MHzのタイプAの通信方式で規定された「A方式」、タイプBの通信方式で規定された「B方式」、およびタイプCの通信方式で規定された「C方式」のいずれかの通信方式へ切り替える機能を有する通信方式切替部15を備えている。
【0008】
図4は、従来の非接触式ICカードリーダ装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図4は、図3に示した構成の非接触式ICカードリーダ装置の処理手順を示したものである。以下、従来の非接触式ICカードリーダ装置について、図3および図4を参照しながら説明する。
【0009】
従来の非接触式ICカードリーダ装置11は、非接触式ICカード16の読み取りにおいて、「A方式」、「B方式」、および「C方式」の三種類の通信方式に対応可能である。
【0010】
最初に、通信方式切替部15は、制御回路12からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード16の通信方式のうちの任意の通信方式、例えば「A方式」を選択し、通信方式を「A方式」に切り替える(ステップS11)。
【0011】
次に、切り替えられた通信方式である「A方式」を検出通信方式として設定し、「A方式」のカード検出信号を、送受信回路13を経由してアンテナ14から送信する(ステップS12)。
【0012】
次に、非接触式ICカードリーダ装置11の通信範囲内に存在する非接触式ICカード16が「A方式」であった場合(ステップS13にて「Yes」の場合)、非接触式ICカード16からの応答信号が、アンテナ14を介して受信され、送受信回路13を経由して上位装置17に通知される(ステップS14)。
【0013】
また、非接触式ICカードリーダ装置11の通信範囲内に存在する非接触式ICカード16が「A方式」以外であった場合、あるいは非接触式ICカード16が存在しない場合(ステップS13にて「No」の場合)、ステップS11に戻り、通信方式切替部15は、制御回路12からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード16の通信方式のうちの「A方式」以外の任意の通信方式、例えば「B方式」を選択し、通信方式を「B方式」に切り替える(ステップS11)。
【0014】
次に、切り替えられた通信方式である「B方式」を検出通信方式として設定し、「B方式」のカード検出信号を、送受信回路13を経由してアンテナ14から送信する(ステップS12)。
【0015】
次に、非接触式ICカードリーダ装置11の通信範囲内に存在する非接触式ICカード16が「B方式」であった場合(ステップS13にて「Yes」の場合)、非接触式ICカード16からの応答信号が、アンテナ14を介して受信され、送受信回路13を経由して上位装置17に通知される(ステップS14)。
【0016】
また、非接触式ICカードリーダ装置11の通信範囲内に存在する非接触式ICカード16が「B方式」以外であった場合、あるいは非接触式ICカード16が存在しない場合(ステップS13にて「No」の場合)、ステップS11に戻り、通信方式切替部15は、制御回路12からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード16の通信方式のうちの「A方式」および「B方式」以外の通信方式、この場合「C方式」を選択し、通信方式を「C方式」に切り替える(ステップS11)。
【0017】
次に、切り替えられた通信方式である「C方式」を検出通信方式として設定し、「C方式」のカード検出信号を、送受信回路13を経由してアンテナ14から送信する(ステップS12)。
【0018】
次に、非接触式ICカードリーダ装置11の通信範囲内に存在する非接触式ICカード16が「C方式」であった場合(ステップS13にて「Yes」の場合)、非接触式ICカード16からの応答信号が、アンテナ14を介して受信され、送受信回路13を経由して上位装置17に通知される(ステップS14)。
【0019】
また、非接触式ICカードリーダ装置11の通信範囲内に存在する非接触式ICカード16が「C方式」以外であった場合、あるいは非接触式ICカード16が存在しない場合(ステップS13にて「No」の場合)、ステップS11に戻り、通信方式切替部15は、制御回路12からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード16の通信方式のうちの「B方式」および「C方式」以外の通信方式、この場合「A方式」を選択し、通信方式を「A方式」に切り替える(ステップS11)。以下、同様の処理を繰り返し実行する。
【0020】
図7は、非接触式ICカードリーダ装置によるポーリング処理において、各通信方式が均等に選択された場合のカード検出信号の送信順序の一例を示す図である。図7に示すように、上記で説明したような通信方式の切り替えを実行した場合、三種類の通信方式、すなわち「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の送信順序は、「A方式」→「B方式」→「C方式」→「A方式」→「B方式」・・・「A方式」→「B方式」→「C方式」となる。
【0021】
このとき、通信方式の異なる三種類の非接触式ICカードと非接触式ICカードリーダ装置とが、例えば単位時間あたり総計六回の通信を実行したものとする。そして、その内訳を通信方式別に見た場合、「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の単位時間あたりの各々の送信回数はそれぞれ二回ずつとなる。つまり、この場合、非接触式ICカードリーダ装置のアンテナから送信される各々の通信方式のカード検出信号の送信回数は均等となる。
【0022】
また、通信方式の異なる非接触式ICカードに対し、その通信方式を識別するためのカード検出信号を順次送信することにより、一台の非接触式ICカードリーダ装置で非接触式ICカードの読み取りに対応することができるようにしたもののうち、非接触式ICカードの検出効率を向上させる目的で、利用頻度の高い通信方式の非接触式ICカードを優先的に読み取ることができるようにしたものが提案されている。このような技術は、例えば特許文献2に開示されている。
【0023】
(従来例2)
図5は、従来の非接触式ICカードリーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。従来の非接触式ICカードリーダ装置21は、少なくとも、電波を送信または受信するアンテナ24と、前記アンテナ24を介して非接触式ICカード26との送受信の処理を行う送受信回路23と、非接触式ICカードリーダ装置21を制御し、上位装置27との通信を行う制御回路22とから構成されている。
【0024】
さらに、前記制御回路22は、非接触式ICカード26の通信方式、例えば送受信周波数が13.56MHzのタイプAの通信方式で規定された「A方式」、タイプBの通信方式で規定された「B方式」、およびタイプCの通信方式で規定された「C方式」のいずれかの通信方式へ切り替える機能を有する通信方式切替部25を備えている。
【0025】
また、前記制御回路22は、検出通信方式とされた回数を、複数種類の通信方式毎にカウントする計数部28と、前記計数部28によりカウントされたカウント値を記憶する記憶部29とを備えている。
【0026】
図6は、従来の非接触式ICカードリーダ装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図6は、図5に示した構成の非接触式ICカードリーダ装置の処理手順を示したものである。以下、従来の非接触式ICカードリーダ装置について、図5および図6を参照しながら説明する。
【0027】
従来の非接触式ICカードリーダ装置21は、非接触式ICカード26の読み取りにおいて、「A方式」、「B方式」、および「C方式」の三種類の通信方式に対応可能である。
【0028】
最初に、通信方式切替部25は、制御回路22からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード26の通信方式のうちの任意の通信方式、例えば「A方式」を選択し、通信方式を「A方式」に切り替える(ステップS21)。
【0029】
次に、切り替えられた通信方式である「A方式」を検出通信方式として設定し、「A方式」のカード検出信号を、送受信回路23を経由してアンテナ24から送信する(ステップS22)。
【0030】
次に、非接触式ICカードリーダ装置21の通信範囲内に存在する非接触式ICカード26が「A方式」であった場合(ステップS23にて「Yes」の場合)、非接触式ICカード26からの応答信号が、アンテナ24を介して受信され、送受信回路23を経由して上位装置27に通知される(ステップS24)。
【0031】
また、非接触式ICカードリーダ装置21の通信範囲内に存在する非接触式ICカード26が「A方式」以外であった場合、あるいは非接触式ICカード26が存在しない場合(ステップS23にて「No」の場合)、ステップS21に戻り、通信方式切替部25は、制御回路22からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード26の通信方式のうちの「A方式」以外の任意の通信方式、例えば「B方式」を選択し、通信方式を「B方式」に切り替える(ステップS21)。
【0032】
以降、ステップS21からステップS24までは、前述した従来例1と同様の処理を繰り返し実行する。
【0033】
次に、ステップS25において、三種類の非接触式ICカード26の通信方式、すなわち、「A方式」、「B方式」、および「C方式」の各々について、検出通信方式とされた回数が計数部28でカウントされ、そのカウント値が記憶部29に累積され、記憶される。
【0034】
次に、制御回路22において、記憶部29に蓄積された通信方式毎の前記カウント値の情報を参照し、ステップS21からステップS24を実行する際の優先順位を決定する。すなわち、検出通信方式とされた回数が多い順に通信方式を並べ替え、最も回数が多い通信方式を第一位とする。そしてこの順位を基に該当する通信方式のカード検出信号を送信するよう設定する(ステップS26)。
【0035】
記憶部29に蓄積された通信方式毎の前記カウント値の情報、すなわち単位時間当たりに検出通信方式とされた回数が、例えば「A方式」については30回、「B方式」については20回、および「C方式」については10回であった場合、この回数が多い順、すなわち、「A方式」、「B方式」、「C方式」の順番で、ステップS21からステップS23を実行する際の優先順位が設定される。この結果、制御回路22による通信方式の選択の機会は、「A方式」が最も高く、次に「B方式」となり、「C方式」は最も低くなる。
【0036】
図8は、非接触式ICカードリーダ装置によるポーリング処理において、A方式が数多く選択された場合のカード検出信号の送信順序の一例を示す図である。図8において、上述したような通信方式の切り替えを実行した場合、三種類の通信方式、すなわち「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の送信順序は、例えば「A方式」→「B方式」→「A方式」→「C方式」→「A方式」→「B方式」→「A方式」→「C方式」→「A方式」・・・となる。
【0037】
このとき、通信方式の異なる三種類の非接触式ICカードと非接触式ICカードリーダ装置とが、例えば単位時間あたり総計六回の通信を実行したものとする。そして、その内訳を通信方式別に見た場合、「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の単位時間あたりの各々の送信回数は、それぞれ三回、二回、および一回となる。
【0038】
つまり、この場合、ポーリング処理、すなわちステップS21からステップS23の処理を実行する際に用いられる通信方式(上記の例では「A方式」)と、通信頻度が高い非接触式ICカード、すなわち非接触式ICカードリーダ装置に対し最もアクセスする機会の多い非接触式ICカードの通信方式(上記の例では「A方式」)とが、早いタイミングで一致する確率を高めることができる。その結果、通信頻度が高い非接触式ICカードの通信方式の検出効率を向上させ、通信頻度が高い非接触式ICカードに対しては早く通信を開始することが可能であるとしている。
【0039】
【特許文献1】特開2001−143023号公報
【特許文献2】特開2005−136476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
しかしながら、従来例1で説明した従来の非接触式ICカードリーダ装置のポーリング処理においては、各通信方式によるカード検出信号の送信回数が均等であることから、通信頻度が高い通信方式の非接触式ICカード、および通信頻度が低い通信方式の非接触式ICカードの双方に対して、単位時間あたりに各々ほぼ同じ回数のカード検出信号が送信されることになる。その結果、全体として、非接触式ICカードの通信頻度が高い通信方式の検出効率が悪くなるという問題がある。
【0041】
また、非接触式ICカードからの応答信号の受信後に実行される非接触式ICカードと上位装置との情報交換の際、予期せぬエラーの発生により通信が途絶え、当該非接触式ICカードの再検出が必要となる場合が想定される。この場合、読み取り対象である非接触式ICカードの通信方式は、直前に読み取った通信方式と同じであることが明白であるにもかかわらず、その前段までの処理を再び最初からやり直さなければならないため、再検出に時間がかかるという問題がある。
【0042】
また、従来例2で説明した従来の非接触式ICカードリーダ装置のポーリング処理において、通信頻度が高い通信方式の非接触式ICカードについては、その検出効率を向上させることは可能である。しかし、通信頻度が低い通信方式の非接触式ICカードについては、単位時間あたりのカード検出信号の送信回数が、極端に少なくなる可能性があるため、その検出効率は、従来例1で説明した従来の非接触式ICカードリーダ装置のポーリング処理、すなわち各通信方式によるカード検出信号の送信回数が均等となるようなポーリング処理を実行する場合よりも、さらに悪くなるという問題がある。
【0043】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたもので、本発明の目的は、通信エラー等により非接触式ICカードの再検出が必要となった場合であっても、その再検出に要する時間を短縮することができ、かつ、通信頻度が低い通信方式の非接触式ICカードであっても、その検出効率の低下を抑制することができる非接触式ICカードリーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0044】
上記課題を解決すべく、本発明者等は種々の検討の結果、以下の解決手段を見出した。すなわち、非接触式ICカードリーダ装置のアンテナから、通信方式の異なる非接触式ICカードに対し、カード検出信号を送信し、定期的に問い合わせを行うポーリング処理を実行し、これに呼応した非接触式ICカードの応答信号を受信し、前記応答信号に基づき、当該非接触式ICカードの通信方式を確定する機能を有する非接触式ICカードリーダ装置であって、任意のタイミングで実行されたポーリング処理、すなわち、繰り返し実行されるポーリング処理のうち、ある時点で実行されたポーリング処理の際に、呼応した非接触式ICカードからの応答信号を受信し、前記応答信号を基に確定された通信方式を検出通信方式とし、前記任意のタイミングより以降に実行されるポーリング処理において、その直前のポーリング処理、すなわち前記任意のタイミングで実行されたポーリング処理で確定された前記検出通信方式のカード検出信号の送信回数が、前記検出通信方式以外の通信方式のカード検出信号の送信回数よりも多くなるように設定する処理を行うようにし、この処理を非接触式ICカードリーダ装置内の制御回路で実行させることが有効であることを見出した。
【0045】
また、同時に、前記非接触式ICカードリーダ装置は、タイマー回路を備え、これと前記制御回路とを連動させて、非接触式ICカードとの通信を制御することが有効である。
【0046】
具体的には、非接触式ICカードリーダ装置は、前記タイマー回路が設定した時間内に、非接触式ICカードからの応答信号を受信しない場合、すなわち、非接触式ICカードを所持した利用者が非接触式ICカードリーダ装置に長時間アクセスしない場合には、通信方式の異なる非接触式ICカードに対し、前記非接触式ICカードリーダ装置のアンテナから、複数の通信方式に対応したカード検出信号を送信し、定期的に問い合わせを行うポーリング処理において、前記カード検出信号の送信回数が、全ての通信方式について均等、すなわち、単位時間あたりに送信される各通信方式のカード検出信号の送信回数が、全ての通信方式についてほぼ同じ回数となるように設定する処理を行うようにし、この処理を前記制御回路で実行させるのが好ましい。
【0047】
すなわち本発明によれば、非接触式ICカードとの複数の通信方式における通信を制御する制御回路と、前記複数の通信方式に対応したカード検出信号の送信処理および前記非接触式ICカードからの応答信号の受信処理を行う送受信回路と、前記カード検出信号および前記応答信号の送受信を行うアンテナを備えた非接触式ICカードリーダ装置であって、前記応答信号の受信間隔時間を計測して、あらかじめ指定した設定時間との照合を行うタイマー回路を具備し、前記制御回路は、前記複数の通信方式に対応したカード検出信号の送信および定期的な問い合わせを行うポーリング処理と、前記制御回路に内設した通信方式切替部により前記カード検出信号に呼応した通信方式、すなわち検出通信方式への切り替えと、任意のタイミングで実行された前記ポーリング処理により検出した前記非接触式ICカードの前記応答信号の有無を検出、すなわち前記応答信号の有無を上位装置、例えば前記非接触式ICカードリーダ装置に外設されたパーソナルコンピュータ等、あるいは前記非接触式ICカードリーダ装置に内設されたマイクロプロセッサ等へ通知するとともに、前記任意のタイミングより以降に実行される前記ポーリング処理において、前記検出通信方式における前記カード検出信号の送信回数が、前記検出通信方式以外の前記送信回数よりも多くなるように設定する処理と、前記設定時間の範囲内で前記応答信号を受信しない場合に、前記カード検出信号の前記送信回数が、全ての通信方式について均等となるように設定する処理を行うよう構成した非接触式ICカードリーダ装置が得られる。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明は、上述した構成により、例えば、通信エラーにより通信が途絶え、上位装置との情報交換が正常に実行されず、非接触式ICカードの再検出が必要となる場合であっても、エラー発生直後のポーリング処理の際、エラー発生直前に読み取った非接触式ICカードと同じ通信方式のカード検出信号を、他の通信方式のカード検出信号よりも数多く送信することによって、当該非接触式ICカードの再検出にかかる時間を短縮できる。
【0049】
さらに、制御回路に連動したタイマー回路が設定した時間内に、非接触式ICカードからの応答信号を受信しない場合には、通信方式の異なる非接触式ICカードに対し、非接触式ICカードリーダ装置のアンテナから、複数の通信方式に対応したカード検出信号を送信し、定期的に問い合わせを行うポーリング処理において、カード検出信号の送信回数を、全ての通信方式について均等となるように設定することで、通信頻度が低い通信方式の非接触式ICカードであっても、その検出効率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳説する。
【0051】
図1は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICカードリーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。本発明による非接触式ICカードリーダ装置1は、少なくとも、電波を送信または受信するアンテナ4と、前記アンテナ4を介して非接触式ICカード6との送受信の処理を行う送受信回路3と、受信した応答信号の受信間隔時間を計測し、あらかじめ指定した設定時間との照合を行うタイマー回路7と、非接触式ICカードリーダ装置1を制御し、上位装置8との通信を行う制御回路2とから構成されている。
【0052】
さらに、前記制御回路2は、定期的に問い合わせを行うポーリング処理実行時に送信するカード検出信号の通信方式を切り替える機能を有する通信方式切替部5を備える。前記通信方式切替部5は、非接触式ICカード6の通信方式、例えば送受信周波数が13.56MHzのタイプAの通信方式で規定された「A方式」、タイプBの通信方式で規定された「B方式」、およびタイプCの通信方式で規定された「C方式」の三種類の通信方式のうちのいずれかの通信方式へ切り替える機能を有する。
【0053】
図2は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICカードリーダ装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図2は、図1に示した構成の非接触式ICカードリーダ装置1の処理手順を示したものである。以下、本発明の非接触式ICカードリーダ装置について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0054】
本発明の非接触式ICカードリーダ装置1は、非接触式ICカード6の読み取りにおいて、「A方式」、「B方式」、および「C方式」の三種類の通信方式に対応可能である。
【0055】
最初に、通信方式切替部5は、制御回路2からの制御コマンドに応じ、非接触式ICカード6の通信方式のうちの任意の通信方式、例えば「A方式」を選択し、通信方式を「A方式」に切り替える(ステップS1)。
【0056】
次に、切り替えられた通信方式である「A方式」を検出通信方式として設定し、「A方式」のカード検出信号を、送受信回路3を経由してアンテナ4から送信する(ステップS2)。
【0057】
次に、非接触式ICカードリーダ装置1の通信範囲内に存在する非接触式ICカード6が「A方式」であった場合(ステップS3にて「Yes」の場合)、非接触式ICカード6からの応答信号が、アンテナ4を介して受信され、送受信回路3を経由して上位装置8に通知される(ステップS4)。
【0058】
次に、ステップS1からステップS3で実行された任意のタイミングで実行されたポーリング処理の際受信した応答信号に基づき確定された検出通信方式、すなわちこの場合「A方式」が、以降のポーリング処理で選択される通信方式のうち、最も多く選択される通信方式となるように設定する(ステップS5)。
【0059】
本発明の非接触式ICカードリーダ装置1によるポーリング処理において、直前に読み取った非接触式ICカード6の検出通信方式、すなわちこの場合「A方式」が、最も多く選択される通信方式となるように設定した場合、三種類の通信方式、すなわち「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の送信順序は、例えば図8に示したような、「A方式」→「A方式」→「B方式」→「A方式」→「A方式」→「C方式」→「A方式」→「B方式」→「C方式」・・・となる。
【0060】
このとき、通信方式の異なる三種類の非接触式ICカードと非接触式ICカードリーダ装置とが、例えば単位時間あたり総計六回の通信を実行したものとする。そして、その内訳を通信方式別に見た場合、「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の単位時間あたりの各々の送信回数は、それぞれ三回、二回、および一回となる。つまり、この場合、非接触式ICカードリーダ装置1のアンテナ4から送信されるカード検出信号の送信回数は、「A方式」が最も多くなる。
【0061】
次に、ステップS1に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0062】
一方、ステップS3の判断において、非接触式ICカードリーダ装置1の通信範囲内に存在する非接触式ICカード6が「A方式」以外であった場合、あるいは非接触式ICカード6が存在しない場合(ステップS3にて「No」の場合)、ステップS6に移行しタイマーを開始する。タイマーは受信した応答信号の受信間隔時間を計測し、あらかじめ指定した設定時間との照合を行う。
【0063】
ステップS6のタイマー開始後、ステップS7の判断において、前記設定時間が経過した場合(ステップS7にて「Yes」の場合)、制御回路2は、それぞれの通信方式が均等に選択されるように設定する。すなわち、定期的に問い合わせを行うポーリング処理において、前記カード検出信号の送信回数が、全ての通信方式について均等、すなわち、単位時間あたりに送信される各通信方式のカード検出信号の送信回数が、全ての通信方式についてほぼ同じ回数となるように設定する。
【0064】
すなわち、三種類の通信方式、すなわち「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の送信順序は、例えば図7に示したような、「A方式」→「B方式」→「C方式」→「A方式」→「B方式」・・・「A方式」→「B方式」→「C方式」となる。
【0065】
このとき、通信方式の異なる三種類の非接触式ICカード6と非接触式ICカードリーダ装置1とが、例えば単位時間あたり総計六回の通信を実行したものとする。そして、その内訳を通信方式別に見た場合、「A方式」、「B方式」、および「C方式」のカード検出信号の単位時間あたりの各々の送信回数はそれぞれ二回ずつとなる。つまり、この場合、非接触式ICカードリーダ装置1のアンテナ4から送信される各々の通信方式のカード検出信号の送信回数は均等となる。
【0066】
次に、ステップS1に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0067】
また、ステップS7の判断において、前記設定時間が経過しない場合(ステップS7にて「No」の場合)、ステップS5に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて詳細に説明する。ただし、以下で説明する実施例は、図1に示した構成からなり、かつ、図2に示したフローチャートに従って処理が実行される非接触式ICカードリーダ装置を用いた場合のものである。
【0069】
(実施例1)
非接触式ICカードリーダ装置は、ISO14443に準拠し、送受信周波数が13.56MHzである、タイプAの通信方式で規定された「A方式」、タイプBの通信方式で規定された「B方式」、およびタイプCの通信方式で規定された「C方式」の三種類の通信方式に対応可能であるものとした。各通信方式の非接触式ICカードをそれぞれ10枚、合計30枚用意した。この中から一枚の非接触式ICカードを無作為に選出し、これを非接触式ICカードリーダ装置のアンテナが内設されてあるカード検出面にかざして読み取り処理を実行した。一枚目の読み取り処理が終了した後、同様の要領で二枚目から三十枚目まで読み取り処理を実行した。ただし、n枚目と(n+1)枚目の処理間隔は、一定ではなく任意の時間とした。
【0070】
また、開始時のポーリング処理における各通信方式のカード検出信号の送信順序を、各通信方式が均等となるように設定した。
【0071】
また、n枚目の非接触式ICカードの応答信号を受信してから十秒後に指定された処理を実行するようにタイマーを設定した。
【0072】
また、非接触式ICカードリーダ装置によるポーリング処理の実行後、非接触式ICカードの応答があり、上位装置にその応答信号を通知する際、任意のタイミングで複数回の通信エラーが発生するようにあらかじめ制御回路を調整しておいた。
【0073】
上述した条件の下、非接触式ICカードの読み取り処理を実行した。
【0074】
n枚目の非接触式ICカードの読み取り時、非接触式ICカードリーダ装置は、前記非接触式ICカードから、通信方式が「A方式」である応答信号を受信し、これを上位装置へ通知しようと試みたが、エラーが発生し、通信が一端途絶えた。非接触式ICカードリーダ装置は、非接触式ICカードリーダ装置に具備したエラー表示ランプの点灯により、通信エラーがあったことを表示した。
【0075】
このとき、非接触式ICカードリーダ装置の制御回路は、直前に読み取った非接触式ICカードの検出通信方式、すなわち「A方式」が、最も多く選択される通信方式となるようにカード検出信号の送信順序を変更した。
【0076】
非接触式ICカードリーダ装置に内設されたアンテナ部分にかざされたままの状態にあった前記n枚目の非接触式ICカードは、約十ミリ秒後に再検出され、正常に処理が実行された。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同様の三種類の通信方式に対応可能な非接触式ICカードリーダ装置、および三十枚の非接触式ICカードを用いて読み取り処理を実行した。
【0078】
また、開始時のポーリング処理における各通信方式のカード検出信号の送信順序を、「A方式」が、最も多く選択される通信方式となるように設定した。
【0079】
また、m枚目の非接触式ICカードの応答信号を受信してから六十秒後に指定された処理を実行するようにタイマーを設定した。
【0080】
上述した条件の下、非接触式ICカードの読み取り処理を実行した。
【0081】
m枚目の非接触式ICカードの読み取り完了から、約三分間、非接触式ICカードリーダ装置へのアクセスを実行しないものとした。
【0082】
このとき、非接触式ICカードリーダ装置の制御回路は、タイマーにより設定された経過時間、すなわちm枚目の非接触式ICカードの応答信号を受信してから六十秒間経過したことを認識し、以降のポーリング処理における各通信方式のカード検出信号の送信順序を、各通信方式が均等となるように設定した。
【0083】
これにより、(m+1)枚目以降の非接触式ICカードの検出に要する時間は、通信方式の種類にかかわらずほぼ均等となった。
【0084】
以上、実施例を用いて、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の非接触式ICカードリーダ装置で使用される通信方式は、送受信周波数が13.56MHzである「A方式」、「B方式」、および「C方式」の三種類に限定されず、これら以外、あるいはこれらを含む四種類以上使用した場合であっても本発明の非接触式ICカードリーダ装置に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態に係る非接触式ICカードリーダ装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る非接触式ICカードリーダ装置が実行する処理の一例を示すフローチャート。
【図3】従来の非接触式ICカードリーダ装置の構成の一例を示すブロック図。
【図4】従来の非接触式ICカードリーダ装置が実行する処理の一例を示すフローチャート。
【図5】従来の非接触式ICカードリーダ装置の構成の一例を示すブロック図。
【図6】従来の非接触式ICカードリーダ装置が実行する処理の一例を示すフローチャート。
【図7】非接触式ICカードリーダ装置によるポーリング処理において、各通信方式が均等に選択された場合のカード検出信号の送信順序の一例を示す図。
【図8】非接触式ICカードリーダ装置によるポーリング処理において、A方式が数多く選択された場合のカード検出信号の送信順序の一例を示す図。
【符号の説明】
【0086】
1、11、21 非接触式ICカードリーダ装置
2、12、22 制御回路
3、13、23 送受信回路
4、14、24 アンテナ
5、15、25 通信方式切替部
6、16、26 非接触式ICカード
7 タイマー回路
8、17、27 上位装置
28 計数部
29 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式ICカードとの複数の通信方式における通信を制御する制御回路と、前記複数の通信方式に対応したカード検出信号の送信処理および前記非接触式ICカードからの応答信号の受信処理を行う送受信回路と、前記カード検出信号および前記応答信号の送受信を行うアンテナを備えた非接触式ICカードリーダ装置であって、
前記応答信号の受信間隔時間を計測して、あらかじめ指定した設定時間との照合を行うタイマー回路を具備し、
前記制御回路は、前記複数の通信方式に対応したカード検出信号の送信および定期的な問い合わせを行うポーリング処理と、前記制御回路に内設した通信方式切替部により前記カード検出信号に呼応した検出通信方式への切り替えと、任意のタイミングで実行された前記ポーリング処理により検出した前記非接触式ICカードの前記応答信号の有無を検出するとともに、
前記任意のタイミングより以降に実行される前記ポーリング処理において、前記検出通信方式における前記カード検出信号の送信回数が、前記検出通信方式以外の前記送信回数よりも多くなるように設定する処理と、前記設定時間の範囲内で前記応答信号を受信しない場合に、前記カード検出信号の前記送信回数が、全ての通信方式について均等となるように設定する処理を行うよう構成したことを特徴とする非接触式ICカードリーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−265721(P2009−265721A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111002(P2008−111002)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】