説明

非接触給電装置

【課題】一次コイルの端子間電圧の上昇を抑える非接触給電装置を提供する。
【解決手段】一次コイルと、一次コイルに直列接続された直列コンデンサと、二次コイルと、二次コイル42に並列接続された並列コンデンサ48と、を有し、一次コイルと二次コイルとが空隙を隔てて配置され、交流が流れる一次コイルから二次コイルに電磁誘導作用によって電力が給電される非接触給電装置であって、一次コイルが複数の一次部分コイル531、532に分割され、直列コンデンサが複数の直列部分コンデンサ541、542に分割され、一次部分コイルと直列部分コンデンサとが交互に直列接続されていることを特徴とする。一次コイル及び直列コンデンサを、例えば二分割して、一次部分コイルと直列部分コンデンサとを交互に直列接続した場合、それらを分割しないときに比べて、一次コイルの端子間電圧は1/2になり、また、分割数を3にすれば、1/3になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などの移動体に非接触で給電する非接触給電装置に関し、地上に設置される給電トランスの一次コイルの端子間電圧が高電圧になるのを防ぐとともに、一次側装置の低コスト化と高効率化を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
非接触給電装置は、一次コイルと二次コイルとの間の電磁誘導を利用して一次コイルから二次コイルに電力を供給する。この非接触給電装置は、下記特許文献1に記載されているように、電気自動車やプラグインハイブリッド車に搭載された二次電池の充電に利用することができ、この車両充電用の非接触給電装置に対する需要は、今後、拡大するものと見られている。
車両充電時には、図14に示すように、二次コイル8を下面に搭載した自動車が、地面に設置された一次コイル9の真上に二次コイル8を位置させて停車し、非接触給電が行われる。この一次コイル9、二次コイル8は、コアの一面に、渦巻状に巻回された電線を配置して構成されている。
【0003】
非接触給電装置の一次コイル9及び二次コイル8は、基本的にギャップのあるトランスの一次、二次コイルであり、電磁誘導を利用し、数mmから数cmのギャップを隔てて数kW〜数十kWの電力が給電される。
しかし、ギャップ長が大きいため、コイル間の結合係数が低く、大きな漏れインダクタンスが生じる。その対策として、電源周波数を10kHz〜50kHzに設定して二次コイルでの誘起電圧を上げ、また、一次コイル及び二次コイルにコンデンサを接続して漏れインダクタンスを補償することが行われている。
【0004】
漏れインダクタンス補償用のコンデンサの配置には、図15(a)に示す、一次側に直列コンデンサを配置し、二次側に並列コンデンサを配置するSP方式、図15(b)に示す、一次側及び二次側に並列コンデンサを配置するPP方式、図15(c)に示す、一次側に並列コンデンサを配置し、二次側に直列コンデンサを配置するPS方式、及び、図15(d)に示す、一次側及び二次側に直列コンデンサを配置するSS方式が知られている。
【0005】
この中のSP方式は、両コンデンサの値を適切に選ぶと理想変圧器特性が成り立つことが知られており(下記非特許文献1)、この理想変圧器特性を利用して、次のような優れた性能を持つ非接触給電装置を得ることができる。
(1)電源の小型化が可能である(負荷に依らず電源出力の力率を1にできるため)。
(2)電源の効率向上が可能である(電源出力の電圧と電流が同位相になりゼロ電流スイッチングが可能なため)。
(3)コンデンサの値は負荷に依らず、トランス定数だけで決まる。
(4)電源を定電圧/定電流制御すれば負荷も定電圧/定電流になる。
(5)給電効率の向上が可能である(簡単な効率の理論式を用いて送受電トランスの最適設計や最大効率運転が可能となる)。
そのため、車両充電用の非接触給電装置に対しても、SP方式の適用は、多くの利点をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−288889号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】藤田・金子・阿部:「直列および並列共振コンデンサを用いた非接触給電システム」,電学論 D,Vol.127,No.2 pp.174-180 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両充電では、充電時間の短縮化が求められており、それに応えるには、車両充電用非接触給電装置の給電電力を増やす必要がある。
しかし、SP方式(一次直列二次並列コンデンサ方式)の非接触給電装置は、給電電力が増えて一次電流が大きくなると、一次コイルの端子間電圧も大きくなる特性を有している。
そのため、給電電力の増加に伴い、一次コイルの端子間電圧や直列コンデンサの端子間電圧が過大(例えば1000V以上)になり、一次コイル及び直列コンデンサへの高電圧対策が必要になる。
また、非接触給電装置を使用する車両充電がさらに普及するためには、装置の一層の低コスト化と高効率化が求められる。
【0009】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、一次コイルや直列コンデンサの端子間電圧の上昇を抑えることができ、また、一次側装置の低コスト化と高効率化を図ることができる非接触給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された一次コイルと、前記一次コイルに直列接続された直列コンデンサと、第2のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された二次コイルと、前記二次コイルに並列接続された並列コンデンサと、を有し、前記一次コイルと前記二次コイルとが空隙を隔てて配置され、交流電源の交流が流れる前記一次コイルから前記二次コイルに電磁誘導作用によって電力が給電される非接触給電装置であって、前記一次コイルが複数の一次部分コイルに分割され、前記直列コンデンサが少なくとも前記一次部分コイルと同数の直列部分コンデンサに分割され、前記一次部分コイルと前記直列部分コンデンサとが交互に直列接続されていることを特徴とする。
一次コイル及び直列コンデンサを、例えば二分割して、一次部分コイルと直列部分コンデンサとを交互に直列接続した場合、それらを分割しないときに比べて、一次コイルの端子間電圧や直列コンデンサの端子間電圧は約1/2になり、また、分割数を3にすれば、約1/3になる。
【0011】
また、本発明の非接触給電装置は、前記一次コイルの自己インダクタンスをL1、前記二次コイルの自己インダクタンスをL2、前記一次コイルと前記二次コイルとの相互インダクタンスをM、電源周波数をf0、電源角周波数をω0(=2π×f0)とする時、前記並列コンデンサCpの値を、
p=1/(ω02×L2
とし、前記直列部分コンデンサCsi(i=1,2,・・N)の合成直列容量Cs(=1/(Σ(1/Csi))を、
s=1/(ω02×(L1−M2/L2))
とすることが望ましい。
このように一次直列コンデンサ及び二次並列コンデンサの値を設定することにより、理想変圧器特性が成り立つ。
【0012】
また、本発明の非接触給電装置は、Csi(i=1,2,・・N)の値がほぼ等しくなるように設定することが望ましい。
si(i=1,2,・・N)の値が全て等しいとき、一次コイルの端子間電圧は最も小さくなる。
【0013】
また、本発明は、第1のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された一次コイルと、前記一次コイルに直列接続された直列コンデンサと、第2のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された二次コイルと、前記二次コイルに並列接続された並列コンデンサと、を有し、前記一次コイルと前記二次コイルとが空隙を隔てて配置され、交流電源の交流が流れる前記一次コイルから前記二次コイルに電磁誘導作用によって電力が給電される非接触給電装置であって、前記一次コイルが、並列接続された複数の並列一次コイルから成ることを特徴とする。
一次コイルを並列化(例えば、3つに並列化)することにより、後述する交流電源の多重化を行う場合に(電流均一化のための)外部リアクトルを設置するする必要がなくなり、電源を含む一次側装置の低コスト化、高効率化、小型化が可能になる。
【0014】
また、本発明の非接触給電装置では、並列接続された複数の前記並列一次コイルの各々に交流を供給する交流電源を、前記並列一次コイルに相当する数の出力が可能なハーフブリッジ回路で構成すれば、フルブリッジ回路で構成する場合に比べ、交流電源の効率向上や低コスト化を図ることができる。このように交流電源を複数の小容量電源で並列駆動する方式は一般に電源の多重化と呼ばれる。
この交流電源をハーフブリッジ回路で構成する場合は、産業用に大量に使われているインバータ用のIPM(インテリジェントパワーモジュール)の機能を有効に利用することができ、それによって非接触給電装置の低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の非接触給電装置では、並列接続された複数の並列一次コイルの各々を複数の一次部分コイルに分割し、この一次部分コイルを並列接続した並列一次部分コイルの複数個で一次コイルを形成し、前記直列コンデンサを少なくとも前記並列一次部分コイルの個数と同数の直列部分コンデンサに分割し、前記並列一次部分コイルと前記直列部分コンデンサとを交互に直列接続することが望ましい。
こうすることで、並列一次コイルの端子間電圧を低減することができる。
【0016】
また、本発明の非接触給電装置は、前記一次コイルを地上に設置し、前記二次コイルを車両の下面に設置して、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの充電に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の非接触給電装置は、一次コイル及び直列コンデンサの分散配置により、一次コイルや直列コンデンサの端子間電圧を低く抑えることができ、絶縁設計の負担が軽減され、装置の小型化や低コスト化が可能になる。
また、一次コイルの並列化により、交流電源の低コスト化及び効率改善を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両充電用非接触給電装置の全体形状を示す図
【図2】図1の一次コイル及び二次コイルを示す図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る非接触給電装置の回路構成を示す図
【図4】比較用の非接触給電装置の回路構成を示す図
【図5】図4の装置の電圧測定結果を示す図
【図6】図3の装置の電圧測定結果を示す図
【図7】電源の電圧VIN及び電流IINの波形を示す図
【図8】図4の装置の電圧ベクトル図を示す図
【図9】図3の装置の電圧ベクトル図を示す図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る非接触給電装置の回路構成を示す図
【図11】図10の並列一次コイルの一本の回路構成を示す図
【図12】図10の直列コンデンサを一個に集約した回路構成を示す図
【図13】図12の並列一次コイルを分割して分散配置した状態の回路構成を示す図
【図14】従来の車両充電用非接触給電装置を示す図
【図15】非接触給電装置のコンデンサ接続方式を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の非接触給電装置をプラグインハイブリッド車の充電に用いた実施形態を示している。
充電を受けるプラグインハイブリッド車40は、エンジン47とともにモータ46を駆動源として搭載し、モータ46用の電源である二次電池44と、二次電池44の直流を交流に変換してモータ46に供給するインバータ45と、二次電池44の充電回路43と、非接触給電装置の二次コイル42とを備えている。二次コイル42は車体の床面の外側に設置され、二次コイル42と床面との間には電磁遮蔽のための金属板41が設置されている。また、二次コイル42には、並列コンデンサ48が接続されている。
【0020】
一方、給電ステーション側(地上側)は、商用周波数の交流電源50と、この交流を直流に変換し、さらに高周波交流を生成するインバータ51と、非接触給電装置の一次コイル53とを備えている。一次コイル53と地表との間には電磁遮蔽のため金属板52が設置され、また、一次コイル53には、直列コンデンサ54が接続されている。
なお、一次コイル53及び直列コンデンサ54の詳細は、後述する。
運転者は、二次コイル42が一次コイル53の真上に来るように車両40を停止させて、二次電池44への給電を開始する。
【0021】
インバータ51は、10kHz〜50kHzの高周波交流を生成して一次コイル53に出力する。一次コイル53及び二次コイル42は、図2に示すように、コアに電線を巻回して構成されている。ここでは、電源(インバータ51)から送られる交流の周波数が高いため、コアにフェライトを使用し、電線として、表皮効果による巻線抵抗の増大を防ぐためにリッツ線(絶縁被覆された細線を束ねた線)を用いている。
【0022】
(第1の実施形態)
図3は、この非接触給電装置の回路構成に関する第1の実施形態を示している。一次コイル53は、二つの部分531、532に分割され、直列コンデンサ54も541、542の二つに分割されている。ここでは、一次コイル53の分割された各部分を「一次部分コイル」531、532と呼び、直列コンデンサ54の分割された各部分を「直列部分コンデンサ」541、542と呼ぶことにする。
【0023】
一次部分コイル531及び一次部分コイル532の巻数は略同一に設定し、直列部分コンデンサ541及び直列部分コンデンサ542の容量は略同一に設定している。そして、一次部分コイルと直列部分コンデンサとを交互に直列接続している。
インバータ51は、商用電源50の交流を直流に変換した後、高周波の方形波を生成し、直列接続された一次部分コイル531、532及び直列部分コンデンサ541、542に出力する。
非接触給電装置の二次側は、二次コイル42と、二次コイル42に並列接続された並列コンデンサ48と、二次コイル42が受電した交流を整流して二次電池44に出力する充電回路43とを備えている。
なお、図4には、本発明と比較するため、分割しない状態の一次コイル53及び直列コンデンサ54を配置した回路構成を示している。
【0024】
SP方式の非接触給電装置では、理想変圧器特性を保つために、図3、図4の並列コンデンサ48の値を二次コイル42と共振するように設定する。即ち、二次コイル42の自己インダクタンスをL2、電源周波数をf0、電源角周波数をω0(=2π×f0)とする時、並列コンデンサ48の値Cpは、
p=1/(ω02×L2
と設定する。
【0025】
また、図4の直列コンデンサ54の値Csは、一次コイル53の自己インダクタンスをL1、二次コイル42の自己インダクタンスをL2、一次コイル53と二次コイル42との相互インダクタンスをM、電源周波数をf0、電源角周波数をω0(=2π×f0)とする時、
s=1/{ω02×(L1−M2/L2)}
に設定する。
直列コンデンサを分割配置した図3の場合は、値Cs1の直列部分コンデンサ541と、値Cs2の直列部分コンデンサ542との合成直列容量Cs(=1/{(1/Cs1)+(1/Cs2)})を、
s=1/(ω02×(L1−M2/L2))
に設定する。
【0026】
図5は、図4に相当する、直列コンデンサを集中配置した回路の電圧測定結果を示し、図6は、直列コンデンサを分散配置した図3の回路の電圧測定結果を示している。
図7には、これらの回路にインバータ51から入力する電圧VIN及び電流IINの波形を示している。電圧VINの実効値は111Vであり、電流IINの実効値は23.0Aであった。
直列部分コンデンサCs1及び直列部分コンデンサCs2を集中配置した図5では、直列部分コンデンサCs1の端子間電圧VCs1、直列部分コンデンサCs2の端子間電圧VCs2、直列接続された直列部分コンデンサCs1及び直列部分コンデンサCs2の両端間の電圧VCs、一次部分コイル531の端子間電圧V11、一次部分コイル532の端子間電圧V12、並びに、直列接続された一次部分コイル531及び一次部分コイル532の両端間の電圧V1に関する波形と実効値とを示している。
【0027】
また、直列部分コンデンサCs1及び直列部分コンデンサCs2を分散配置した図6では、直列部分コンデンサCs1の端子間電圧VCs1、直列部分コンデンサCs2の端子間電圧VCs2、一次部分コイル531の端子間電圧V11、一次部分コイル532の端子間電圧V12、並びに、直列部分コンデンサCs1を挟んで直列接続された一次部分コイル531及び一次部分コイル532の両端間の電圧V1に関する波形と実効値とを示している。
一次コイルの端子間電圧を示す電圧V1を図5と図6とで比較すると、一次コイルを分散配置した図6では、その値が約1/2に低下していることが分かる。
また、直列部分コンデンサCs1及び直列部分コンデンサCs2を集中配置した図5の回路における電圧VCS(実際の回路では、Cs1及びCs2が一つのコンデンサで実現され、その端子間電圧はVCSとなる。)と図6の電圧VCS1、VCS2とを比較すると、直列コンデンサを分散配置した図6では、その値が約1/2に低下していることが分かる。
【0028】
また、図8は、一次コイル及び直列コンデンサを集中配置した回路の電圧のベクトル図を示し、図9は、一次コイル及び直列コンデンサを分散配置した回路の電圧のベクトル図を示している。図8及び図9には、図5及び図6の測定結果を併せて示している。
一次コイル及び直列コンデンサを集中配置した図8のベクトル図では、インバータ電源の出力電圧VINを示すベクトルABに対して、直列コンデンサ(Cs1+Cs2)の両端間の電圧VCSを表すベクトルBCの向きは90°進んでおり、一次コイルの端子間電圧V1はベクトルACで表されることが分かる。
一方、一次コイル及び直列コンデンサを分散配置した図9のベクトル図では、インバータ電源の出力電圧VINを示すベクトルABは、大きさと方向が同じベクトルADとベクトルDBの和で表される。図8と同様に、コンデンサCs1の両端間の電圧VCS1を表すベクトルDC1の向きは、ベクトルADに対して90°進んでおり、AC1間の一次部分コイルの端子間電圧V11はベクトルAC1で表される。コンデンサCs2の両端間の電圧を表すベクトルBC2の向きは、ベクトルDBに対して90°進んでおり、DC2間の一次部分コイルの端子間電圧V12はベクトルDC2で表される。その結果、コンデンサCS1を挟んで直列接続された二つの一次部分コイルの端子間電圧V1はベクトルAC2で表されることが分かる。
このベクトル図から明らかなように、一次コイル及び直列コンデンサを分散配置することにより、一次コイルの端子間電圧や直列コンデンサの端子間電圧が低減できる。
【0029】
このように、一次コイルを複数の一次部分コイルに分割し、直列コンデンサを複数の直列部分コンデンサに分割し、その一次部分コイルと直列部分コンデンサとを交互に直列接続することにより、一次コイルの端子間電圧を低減させることができる。
なお、一次コイル及び直列コンデンサを複数に分割して交互に配置しても、一次コイルに流れる電流は変わらず、また、二次側への給電電力も変わらない。図8及び図9では、充電回路43の中の整流回路からの出力直流電圧をVLとして示している。
【0030】
また、図9から分かるように、ベクトルAC2は、直列部分コンデンサCs1に相当するベクトル成分C1D、及び、直列部分コンデンサCs2に相当するベクトル成分BC2が等しいときに最も小さくなる。従って、一次コイルの端子間電圧を減らすためには、直列部分コンデンサCs1及び直列部分コンデンサCs2の容量値を等しく設定することが望ましい。
【0031】
なお、ここでは、一次コイル及び直列コンデンサを二つに分割する例を説明したが、分割数は、3以上であっても良い。分割数を3にすれば、一次コイルの端子間電圧や直列コンデンサの端子間電圧は約1/3になり、分割数をN個にすれば、約1/Nになる。分割数がN個の場合、理想変圧器特性を保つために、直列部分コンデンサCsi(i=1,2,・・N)の合成直列容量Cs(=1/(Σ(1/Csi))は、
s=1/(ω02×(L1−M2/L2))
となるように設定する。また、直列部分コンデンサCsi(i=1,2,・・N)の値は、全て等しいことが望ましい。
【0032】
また、ここでは、一次コイル及び直列コンデンサを同数に分割して、それらを交互に直列接続する例を説明したが、直列コンデンサの分割数を一次コイルの分割数より1つ多くして、一次部分コイルと直列部分コンデンサとを交互に直列接続した両端に直列部分コンデンサが配置されるようにしても良い。
また、ここでは、フェライトコアにリッツ線を巻回して一次コイル及び二次コイルを形成する例を説明したが、本願発明は、それだけに限定されない。特許文献1に記載されているように、コアの一面に電線を巻回したコイルを用いても良い。
【0033】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、高周波電源の低コスト化を可能にする非接触給電装置の回路構成について説明する。
図10は、非接触給電装置の第2の実施形態に係る回路構成を示している。
この回路は、三並列のハーフブリッジインバータとして動作するインバータ71と、インバータ71から高周波交流が出力される、三並列化された一次コイル(「並列一次コイル」と呼ぶ。)61、62、63とを有している。
なお、二次側の回路構成は第1の実施形態(図3)と変わりがない。
【0034】
図11では、並列一次コイルとインバータ71との接続関係を説明するため、その1本の並列一次コイル61とインバータ71との接続関係を示している。
図11に示すように、インバータ71は、1本の並列一次コイル61に対し、ハーフブリッジインバータとして動作し、二つのスイッチング素子を交互にオン・オフさせて高周波交流を並列一次コイル61に出力する。
図10では直列コンデンサを並列一次コイル毎に3個配置しているが、図12のように1個にまとめることが可能で、製作や調整が簡単になることから実用上有利である。
インバータ71は、図10、図12に示すように、三段のハーフブリッジ機能を有しており、各段から並列一次コイル61、62、63のそれぞれに同じ位相の高周波交流が出力される。
【0035】
このインバータ71は、産業用に大量に使われているインバータ用のIPM(インテリジェントパワーモジュール)を用いて構成することができる。このIPMは、インバータを構成する主回路の他に、その駆動回路や自己保護回路などが組み込まれてワンパッケージ化されており、三相出力が標準となっている。
そのため、一次コイルを並列一次コイル61、62、63に三並列化することで、IPMの三相出力能力を全て利用して一次コイルへの電力供給を行うことができる。
【0036】
また、このようにインバータから三相出力が出力される場合、出力電流のアンバランスが問題になり、その対策として、通常、インバータの各出力にリアクトルを入れて調整が行われる。
しかし、この非接触給電装置の回路は、並列一次コイル61、62、63を有しているため、並列一次コイル61、62、63により、各相の電流アンバランスを調整することができ、リアクトルを設ける必要がない。
【0037】
また、図13は、この並列一次コイル61、62、63の端子間電圧を低減させるための構成について示している。
並列化された一次コイル61、62、63の各々は、二つの一次部分コイルに分割されている。
即ち、並列一次コイル61は一次部分コイル611、612に分割され、並列一次コイル62は一次部分コイル621、622に分割され、また、並列一次コイル63は一次部分コイル631、632に分割されている。
また、一次部分コイル611、621、631は、並列接続されて並列一次部分コイル641を構成し、一次部分コイル612、622、632は、並列接続されて並列一次部分コイル642を構成している。
従って、並列一次部分コイル641、642は、直列部分コンデンサCs1、Cs2と交互に直列接続されており、並列一次コイル及び直列コンデンサが分散配置されている。
【0038】
このように、非接触給電装置の一次コイルを並列化することで、産業用に大量に使われているインバータ用IPMの機能を有効に活用して非接触給電装置の高周波電源を構成することができ、装置の低コストが可能になる。
なお、一次コイルがリッツ線で構成されている場合、リッツ線は絶縁被覆された細線を束ねた線であるため、例えば、900本の細線を300本ずつに束ねて、3本の並列一次コイルに分割することが容易である。
また、インバータをハーフブリッジとして動作させる場合は、電流が通過する半導体素子の数が少ない(フルブリッジの半分)ため、オン損失(通過損失)が減少し、インバータの効率が上がる。
【0039】
また、直列コンデンサの挿入に伴う並列一次コイル61、62、63の端子間電圧の高圧化は、図13に示すように、並列一次コイルを複数の並列一次部分コイル641、642に分割し、直列コンデンサを複数の直列部分コンデンサCs1、Cs2に分割し、その並列一次部分コイルと直列部分コンデンサとを交互に直列接続することにより、低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の非接触給電装置は、一次コイルの端子間電圧や直列コンデンサの端子間電圧を低く抑えることができるため、絶縁設計が容易であり、小型軽量化及び低コスト化を図ることができ、電気自動車、プラグインハイブリッド車、移動ロボットなど、停止した状態で給電を行う各種の固定型非接触給電に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
8 二次コイル
9 一次コイル
40 プラグインハイブリッド車
41 金属板
42 二次コイル
43 充電回路
44 二次電池
45 インバータ
46 モータ
47 エンジン
48 並列コンデンサ
50 商用電源
51 インバータ
52 金属板
53 一次コイル
54 直列コンデンサ
61 並列一次コイル
62 並列一次コイル
63 並列一次コイル
71 インバータ
531 一次部分コイル
532 一次部分コイル
541 直列部分コンデンサ
542 直列部分コンデンサ
611 一次部分コイル
612 一次部分コイル
621 一次部分コイル
622 一次部分コイル
631 一次部分コイル
632 一次部分コイル
641 並列一次部分コイル
642 並列一次部分コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された一次コイルと、前記一次コイルに直列接続された直列コンデンサと、第2のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された二次コイルと、前記二次コイルに並列接続された並列コンデンサと、を有し、前記一次コイルと前記二次コイルとが空隙を隔てて配置され、交流電源の交流が流れる前記一次コイルから前記二次コイルに電磁誘導作用によって電力が給電される非接触給電装置であって、
前記一次コイルが複数の一次部分コイルに分割され、前記直列コンデンサが少なくとも前記一次部分コイルと同数の直列部分コンデンサに分割され、前記一次部分コイルと前記直列部分コンデンサとが交互に直列接続されていることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電装置であって、前記一次コイルの自己インダクタンスをL1、前記二次コイルの自己インダクタンスをL2、前記一次コイルと前記二次コイルとの相互インダクタンスをM、電源周波数をf0、電源角周波数をω0(=2π×f0)とする時、前記並列コンデンサCpの値を、
p=1/(ω02×L2
とし、前記直列部分コンデンサCsi(i=1,2,・・N)の合成直列容量Cs(=1/(Σ(1/Csi))を、
s=1/(ω02×(L1−M2/L2))
としたことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非接触給電装置であって、Csi(i=1,2,・・N)の値がほぼ等しくなるように設定したことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項4】
第1のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された一次コイルと、前記一次コイルに直列接続された直列コンデンサと、第2のコアの周りまたは一面に電線を巻回して構成された二次コイルと、前記二次コイルに並列接続された並列コンデンサと、を有し、前記一次コイルと前記二次コイルとが空隙を隔てて配置され、交流電源の交流が流れる前記一次コイルから前記二次コイルに電磁誘導作用によって電力が給電される非接触給電装置であって、
前記一次コイルが、並列接続された複数の並列一次コイルから成ることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触給電装置であって、並列接続された複数の前記並列一次コイルの各々に交流を供給する交流電源が、前記並列一次コイルに相当する数の出力が可能なハーフブリッジ回路を有することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の非接触給電装置であって、前記並列一次コイルの数および前記ハーフブリッジ回路の数がそれぞれ3であり、各ハーフブリッジ回路は同じ位相の高周波交流電圧を出力することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の非接触給電装置であって、並列接続された複数の前記並列一次コイルの各々が複数の一次部分コイルに分割され、当該一次部分コイルが並列接続された並列一次部分コイルの複数個により前記一次コイルが形成され、前記直列コンデンサが少なくとも前記並列一次部分コイルと同数の直列部分コンデンサに分割され、前記並列一次部分コイルと前記直列部分コンデンサとが交互に直列接続されていることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の非接触給電装置であって、前記一次コイルが地上に設置され、前記二次コイルが車両の下面に設置されていることを特徴とする非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−176914(P2011−176914A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37650(P2010−37650)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(591206887)株式会社テクノバ (20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】