説明

非接触通信用リーダ装置

【課題】 設置した非接触通信用リーダ装置とユーザが所持する非接触通信用ICとを用いて複数の管理対象物を管理する場合に、実用的な性能をより低コストで実現する。
【解決手段】 送信回路30には、2系統の増幅器33、35の動作をそれぞれオンオフするトランジスタQ1、Q3による半導体スイッチを備える。増幅器33、35の出力側には、それぞれループアンテナによるアンテナ部50A、50Bが接続され、これらのアンテナ部50A、50Bの給電部とグランドとを短絡するトランジスタQ2、Q4による半導体スイッチと検波防止用のダイオードD1、D2を備える。制御回路20は、アンテナ切替信号SG1によってトランジスタQ1〜Q4のオンオフを制御し、一方の増幅器及びアンテナ部を選択的に動作させるとともに、非選択状態のアンテナ部を短絡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカード、RFID(Radio Frequency Identification)等の機器と非接触通信を行って情報を読み取る非接触通信用リーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
識別情報(ID)などを保持するメモリや無線通信機能を搭載した集積回路及びアンテナを一体化した非接触通信用ICは、いわゆる非接触ICカードあるいは無線ICタグ(RFIDタグ)等として実用化されており、様々な認証や決済などの目的に用いることが提案されている。
【0003】
このような非接触通信用ICとの間で無線通信を行って、認証や決済などの処理を行うために、リーダあるいはリーダ/ライタが用いられる。本明細書における非接触通信用リーダ装置は、このようなリーダあるいはリーダ/ライタに相当する。
【0004】
例えば、非接触通信用IC及びリーダ/ライタ装置を用いて入退室管理を行おうとする場合には、通常は入室管理用との退室管理用とでそれぞれリーダ/ライタ装置が必要になる。したがって、図9に示すように、各部の制御及び信号処理を行う制御部と高周波信号の処理を行う無線部とを有する処理部101、102と、アンテナ111、112とをそれぞれ備えて構成される独立したリーダ/ライタ装置を複数設けることになる。このため、管理システム全体のコストが高くなるのは避けられない。
【0005】
そこで、特許文献1には、図10に示すように、1台のリーダ/ライタ装置において1つの処理部121に複数のアンテナ131、132を接続し、処理部121によって複数のアンテナ131、132を選択的に切り替えるものが提案されている。この構成では、1台のリーダ/ライタ装置だけで入室管理と退室管理との両方の処理が可能になっている。したがって、設置すべきリーダ/ライタ装置の数が半分になるので、システムのコストを大幅に削減することができる。
【0006】
例えば入退室管理を行うような場合には、入室時の通信で用いるアンテナと退室時の通信で用いるアンテナとの2つだけを1台のリーダ/ライタ装置に接続すればよいので、特許文献1に開示された技術だけでも対応が可能であると考えられる。
【0007】
しかし、例えばコインロッカーのように多数の管理対象物が密集して存在しているような場合に、非接触通信用IC及びリーダ/ライタ装置を用いて課金やセキュリティの管理を行おうとすると、様々な問題が発生する。
【0008】
すなわち、管理システム全体のコストを削減するためには1台のリーダ/ライタ装置に多数のアンテナを接続して多数のアンテナを選択的に使用するように制御しなければならない。ところが、互いに距離の近い位置に複数のアンテナが存在する場合には、1つの非接触通信用ICから発信された信号が同じリーダ/ライタ装置の複数のアンテナで同時に受信される可能性があるので、ユーザが非接触通信用ICをかざした位置を特定できない場合がある。したがって、例えば多数のロッカーが密集して並んでいる場合に、目的のロッカーとそれに隣接する他のロッカーとを間違えてシステムが管理する可能性がある。
【0009】
そこで、受信回路と複数のアンテナとの接続をスイッチを切り替えるように構成すれば、隣接するアンテナ同士を確実に分離することができるが、切替部において高周波信号を扱うため高価なスイッチを採用せざるを得ないし、アンテナの数が増えるにつれてスイッチの数も増えるのでコストの上昇は避けられない。
【0010】
また、多数のアンテナを順番に選択して使用する場合には、短い周期でアンテナの切り替えを行わないと、全ての管理対象物をスキャンするのに長い時間がかかることになり、管理システムの応答特性が悪化する。すなわち、ユーザが非接触通信用ICをリーダ/ライタの特定のアンテナにかざしてからそれをリーダ/ライタが検出するまでに時間がかかる。しかしながら、アンテナの切り替え周期が短すぎる場合には、非接触通信用ICとリーダ/ライタ装置との間の通信に失敗したり、処理の途中でアンテナが切り替わって異常な処理結果が生じる可能性もある。
【0011】
【特許文献1】特開2004−227315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、設置した非接触通信用リーダ装置とユーザが所持する非接触通信用ICとを用いて複数の管理対象物を管理する場合に、実用的な性能をより低コストで実現することが可能な非接触通信用リーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の非接触通信用リーダ装置は、非接触通信用ICとの間で非接触通信を行って情報を読み取る非接触通信用リーダ装置であって、前記非接触通信用に配置された複数のアンテナと、前記複数のアンテナと接続され通信信号の処理を行う処理部と、前記複数のアンテナを選択的に切り替えるアンテナ切り替え手段と、前記複数のアンテナにおける非選択状態のアンテナの共振周波数特性を変更する特性切り替え手段と、を備えるものである。
【0014】
この構成により、アンテナ切り替え手段によって複数のアンテナを切り替え、選択されたアンテナと処理部によって非接触通信の処理を行うことができる。また、特性切り替え手段によって非選択状態のアンテナの共振周波数特性を変更することで、非接触通信用リーダ装置と非接触通信用ICとの間で通信する無線信号の周波数と非選択状態のアンテナの共振周波数とをずらし、無線信号が非選択状態のアンテナにおいて受信されるのを防止できる。このため、複数の管理対象物を管理する場合に、例えば複数のアンテナを距離が近い状態で互いに隣接する位置に配置した場合であっても、選択状態の特定のアンテナだけで通信を行うことができる。したがって、複数のアンテナと一つの処理部によって、それぞれのアンテナで良好な通信が可能となり、コストの上昇を抑制しつつ、実用的な性能をより低コストで実現することができる。
【0015】
また、本発明は、上記の非接触通信用リーダ装置であって、前記アンテナ切り替え手段は、前記複数のアンテナの周期的な切り替えを行い、前記特性切り替え手段は、前記複数のアンテナの選択状態に応じてアンテナの共振周波数特性の周期的な切り替えを行うものとする。
【0016】
この構成により、複数のアンテナを周期的に選択切り替えし、選択したそれぞれのアンテナで良好な通信を行うことができる。
【0017】
また、本発明は、上記の非接触通信用リーダ装置であって、前記複数のアンテナにそれぞれ接続された増幅器を備え、前記アンテナ切り替え手段は、前記それぞれの増幅器の動作をオンオフさせるスイッチを有し、このスイッチの開閉によって前記複数のアンテナの選択状態を切り替えるものとする。
【0018】
この構成により、複数のアンテナにそれぞれ接続された増幅器の動作をオンオフさせることによって、高周波信号が流れる経路を切り替えなくとも、アンテナの選択切り替えが可能である。したがって、高価な高周波リレー等を用いることなく、半導体スイッチ素子等の安価なスイッチによってアンテナを高速に切り替えることができる。また、高い耐久性も確保できる。このため、アンテナ切り替え手段のコスト上昇を抑えつつ所定の性能を確保することができる。
【0019】
また、本発明は、上記の非接触通信用リーダ装置であって、前記複数のアンテナはループアンテナによって構成され、前記特性切り替え手段は、前記アンテナの給電部近傍を短絡、または接地するスイッチを有し、このスイッチの開閉によって前記複数のアンテナの共振周波数特性を切り替えるものとする。
【0020】
この構成により、アンテナの給電部近傍をスイッチで短絡または接地することにより、安価かつ簡単な構成でアンテナの共振周波数特性を変化させることができる。
【0021】
また、本発明は、上記の非接触通信用リーダ装置であって、前記スイッチは、半導体スイッチ素子と、この半導体スイッチ素子と直列に接続されて前記半導体スイッチ素子がオフ状態の場合に等価的に形成されるダイオードの極性と逆極性を持つ検波防止用ダイオードとを有してなるものとする。
【0022】
この構成により、半導体スイッチ素子がオフ状態の場合に等価的に形成されるダイオードによる検波動作を防止でき、無線通信時の不具合を抑制できる。
【0023】
また、本発明は、上記の非接触通信用リーダ装置であって、前記アンテナ切り替え手段は、所定時間毎に選択するアンテナを順次に他のアンテナに切り替えるとともに、選択されたアンテナにおいて所定の信号の受信を検出した場合には、受信信号に関する処理が完了した後で他のアンテナに切り替えるものとする。
【0024】
この構成により、複数のアンテナにおいて、所定周期でアンテナを切り替えて非接触通信用ICからの無線信号を検出することができる。例えばアンテナ切替周期を短くすることで、アンテナの数が多い場合であっても高速でスキャンでき、応答特性を改善できる。 また、受信信号に関する処理が完了した後で他のアンテナに切り替えることにより、非接触通信用ICとの間の通信処理を確実に実行することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、設置した非接触通信用リーダ装置とユーザが所持する非接触通信用ICとを用いて複数の管理対象物を管理する場合に、実用的な性能をより低コストで実現することが可能な非接触通信用リーダ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本実施形態では、ユーザが所持する非接触ICカード等の非接触通信用ICとの間で非接触通信を行い、セキュリティを確保した状態でユーザや非接触ICの識別情報の認証、課金決済等の処理を行う非接触通信用リーダ装置の構成例を示す。
【0027】
具体的には、例えばコインロッカーのように管理対象物が複数存在し、しかも複数の管理対象物が隣接する位置に配置されている場合に適する。なお、非接触通信用ICとの間で通信するためのアンテナについては、管理対象物(例えば個別のロッカー)毎にそれぞれ設置されるものとする。
【0028】
まず、本発明の実施形態の概略構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の概略構成を示すブロック図、図2は本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の変形例の構成を示す図である。
【0029】
本実施形態の非接触通信用リーダ装置は、各部の制御を行う制御回路及び信号処理を行う信号処理回路を有する制御部1と、高周波信号を処理する送信回路及び受信回路を有する無線部2とを含む処理部3を備えている。この処理部3には、2つの増幅器4A、4Bが接続され、それぞれの増幅器4A、4Bにアンテナ5A、5Bが接続されている。また、各増幅器4A、4Bには、グランドとの接続を開閉することで増幅器の動作をオンオフする半導体スイッチ等によるスイッチ6A、6Bが接続されている。このスイッチ6A、6Bがアンテナ切り替え手段の一例に相当する。
【0030】
このように1つの処理部3に対して2つの増幅器4A、4B及びアンテナ5A、5Bを設け、増幅器4A、4Bに接続したスイッチ6A、6Bの開閉によって増幅器の動作をオンオフ制御することにより、増幅器及びアンテナの一方を選択的に切り替えて動作させることができる。
【0031】
また、図2に示す変形例の構成は、1つの処理部3及び増幅器7と、この処理部3及び増幅器7に接続される2つのアンテナ5A、5Bとを備え、増幅器7とアンテナ5A、5Bとの間に2つのアンテナ5A、5Bの接続を切り替えるリレー等によるスイッチ8を設けたものである。このスイッチ8がアンテナ切り替え手段の一例に相当する。このような変形例によっても、スイッチ8によってアンテナの一方を選択的に切り替えて動作させることができる。
【0032】
図3はアンテナ部の回路構成を示す回路図である。本実施形態では、アンテナ部において、動作停止させている方のループアンテナの両端を短絡する短絡手段を設けるようにしている。この短絡手段がアンテナの共振周波数特性を変更する特性切り替え手段の一例に相当する。
【0033】
図3(a)に示すように、図示しない共振回路を含むループアンテナからなるアンテナ部50において、給電部近傍のアンテナ両端を短絡する短絡手段としてのトランジスタQAを接続する。このアンテナ部50を選択して動作させる場合はトランジスタQAをオフしてループアンテナの給電部近傍を開放し、アンテナ部50を動作させない場合はトランジスタQAをオンしてループアンテナの給電部近傍を短絡させる。なお、アンテナ部50を動作させない場合に給電部近傍をグランドに接地させるようにしてもよい。これにより、選択していないアンテナの共振周波数を変化させ、共振による誤動作を防止することができる。
【0034】
ここで、図3(a)に示すようなアンテナ部50の給電部にトランジスタQAを接続した構成では、このアンテナ部50を選択した場合(トランジスタQAがオフの場合)の等価回路は、図3(b)のように表すことができる。すなわち、トランジスタQAは内部のPN接合の影響によりダイオードを形成することになる。この場合、トランジスタQAによって形成されたダイオードがアンテナに印加される信号を検波することになるので、アンテナの送受信動作に問題が生じることがある。
【0035】
そこで、本実施形態では、図3(c)に示すように、トランジスタQAと直列に検波防止用のダイオードDAを接続する。この場合の等価回路は図3(d)のように表すことができる。すなわち、2つのダイオードが互いに逆極性で直列に接続された状態になる。これにより、トランジスタQAによる検波動作を防止できる。
【0036】
次に、本実施形態の非接触通信用リーダ装置の具体的な構成を示す。図4は本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【0037】
非接触通信用リーダ装置は、ベースバンド信号等の信号処理を行う信号処理回路10と、各部の制御を行うCPU等からなる制御回路20と、変調等を行って高周波の送信信号を出力する送信回路30と、検波等を行って受信信号を復調する受信回路40と、複数のアンテナ部50A、50Bを備えて構成される。この例では、説明を簡略化するために1台のリーダ/ライタ装置を構成する処理部及び無線部に2つのアンテナ部50A、50Bを接続した場合を想定しているが、接続するアンテナの数は必要に応じて増やすことができる。
【0038】
信号処理回路10は、所定の非接触通信用ICとの通信に必要な様々な機能を備えている。例えば、様々なコマンドを非接触通信用ICに対して送信したり、非接触通信用ICからの応答の有無を検出したり、情報の暗号化/復号化の処理を行ったり、非接触通信用ICからの応答について認証を行う。また、信号処理回路10はクロックとして入力される同期信号に同期して信号の送受信を行う。
【0039】
制御回路20は、マイクロプロセッサを内蔵しており、信号処理回路10を制御すると共に、信号処理回路10の状態を監視しながらアンテナ切替信号SG1を出力する。更に、それぞれのアンテナ部50A、50B毎に通信相手の非接触通信用ICが利用可能な状態かどうかを管理して管理状態を示す制御信号SG2を出力する。
【0040】
送信回路30は、キャリア発振器31、変調回路32、2系統の増幅器33及びフィルタ回路34と増幅器35及びフィルタ回路36、インバータ37、インバータ38、トランジスタQ1及びQ3を備えている。
【0041】
キャリア発振器31は、非接触通信用ICに送信すべき信号の搬送波(例えば13.56MHz)の信号を常時出力する。キャリア発振器31から出力される搬送波の信号(キャリア信号)は、増幅器33、35及び信号処理回路10に入力される。
【0042】
変調回路32は、信号処理回路10が出力する送信用の信号を変調用信号に変換し、増幅器33、35に出力する。増幅器33及び増幅器35では、搬送波の信号と変調用信号とから送信信号の変調及び増幅を行って出力する。また、増幅器33、35には、それぞれの動作をオンオフ制御するために、アンテナ切り替え手段を構成するトランジスタQ1、Q3がグランドとの間に接続されている。このトランジスタQ1の制御端子(ベース)には制御回路20が出力するアンテナ切替信号SG1がそのまま印加され、トランジスタQ3の制御端子(ベース)にはアンテナ切替信号SG1がインバータ38で反転されて印加される。
【0043】
増幅器33から出力される送信信号はフィルタ回路34で帯域制限されて出力され、増幅器35から出力される送信信号はフィルタ回路36で帯域制限されて出力される。
【0044】
一方、受信回路40は、検波回路41、フィルタ回路42、及び増幅器43を備えている。この非接触通信用リーダ装置のアンテナ部50A、50Bで受信された信号は、検波回路41で検波され、フィルタ回路42で目的の帯域の信号成分のみが抽出された後、増幅器43で増幅され、受信信号として信号処理回路10に入力される。
【0045】
アンテナ部50A及び50Bは、互いに同じ特性の共振回路を有するループアンテナである。アンテナ部50Aは、一端の給電部がコンデンサC1を介してフィルタ回路34の出力及び検波回路41の入力と接続され、他端がグランドに接地されている。また、アンテナ部50Bは、一端の給電部がコンデンサC2を介してフィルタ回路36の出力及び検波回路41の入力と接続され、他端がグランドに接地されている。
【0046】
また、アンテナ部50Aの給電部の近傍とグランドとの間には、アンテナ部50Aを短絡させるスイッチとなるトランジスタQ2及びダイオードD1の直列回路が接続され、アンテナ部50Bの給電部の近傍とグランドとの間には、アンテナ部50Bを短絡させるスイッチとなるトランジスタQ4及びダイオードD2の直列回路が接続されている。ダイオードD1、D2は、前述した検波防止用のダイオードとして機能する。このトランジスタQ2の制御端子(ベース)には制御回路20が出力するアンテナ切替信号SG1がインバータ37で反転されて印加され、トランジスタQ4の制御端子(ベース)にはアンテナ切替信号SG1がそのまま印加される。
【0047】
この構成では、同じ受信回路40の入力に、2つのアンテナ部50A及び50BがコンデンサC1、C2を介して共通に接続されている。したがって、例えば同一の非接触通信用ICから送信された信号が2つのアンテナ部50A及び50Bでそれぞれ受信された場合には、利用者が非接触通信用ICをアンテナ部50Aとアンテナ部50Bのいずれに近づけたのかを区別することができない。
【0048】
そこで、アンテナ切替信号SG1によりトランジスタQ1、Q3をオンオフして選択したアンテナ部50A、50Bの選択状態に応じて、トランジスタQ2、Q4をオンオフ制御し、一方の非選択状態のアンテナ部の給電部を短絡、接地する。このように給電部を短絡すると、一方のアンテナ部の共振回路のインピーダンスが変化するため、共振周波数がずれる。これにより、選択状態のアンテナ部のみが目的の信号を受信し、非選択状態のアンテナ部は目的の周波数の信号を受信できなくなるので、非接触通信用ICから送信された信号を受信したアンテナ部の位置を確実に特定できる。
【0049】
また、非選択状態のアンテナ部の給電部を短絡することにより、送信回路30からキャリア信号を常時出力しても非選択状態のアンテナ部からはキャリア信号が送信されなくなるので、非選択状態のアンテナ部に接近している非接触通信用ICの動作を停止することもできる。すなわち、一般的な非接触通信用ICは受信したキャリア信号の電力を電源として利用するので、キャリア信号の送信を停止することにより非接触通信用ICの動作が停止する。これにより、例えば不正な非接触通信用ICが検出された場合に、それが不正利用されないように該当する非接触通信用ICの動作をロックすることもできる。
【0050】
なお、図4に示す構成例では、増幅器33、35やアンテナ部50A、50Bの給電部とグランド間を接続もしくは開放するために半導体スイッチを採用しているが、リレーのように機械的なスイッチに置き換えることもできる。また、複数のアンテナの切り替えをリレーのように機械的なスイッチで行うことも可能である。図5は非接触通信用リーダ装置の主要部の変形例の構成を示すブロック図である。この変形例は、図4の構成におけるトランジスタQ1、Q3によるスイッチをリレー回路71で置き換え、1系統の送信回路70で構成したものである。送信回路70及び受信回路40とアンテナ部50A、50Bとの間には、リレー回路71が設けられ、制御回路20からアンテナ切替信号SG1が入力されるようになっている。また、トランジスタQ2の制御端子(ベース)にはアンテナ切替信号SG1がインバータ72で反転されて印加され、トランジスタQ4の制御端子(ベース)にはアンテナ切替信号SG1がそのまま印加される。この図5に示す変形例においても、アンテナ切替信号SG1により、アンテナ部50A又は50Bを選択的に切り替えることができ、非選択状態のアンテナ部を短絡、接地することができる。
【0051】
図4に示した回路は構成が比較的複雑なように見えるが、半導体回路は集積回路として構成することによりコストを大幅に下げることが可能なので、機械的なスイッチを採用する場合に比べてコストの低減が容易である。
【0052】
図6は本実施形態の非接触通信用リーダ装置におけるアンテナ切替信号とトランジスタQ1〜Q4の動作を示す図である。本実施形態においては、増幅器33をオンオフ制御するためにトランジスタQ1をスイッチとして設けてあり、増幅器35をオンオフ制御するためにトランジスタQ3をスイッチとして設けてある。
【0053】
アンテナ切替信号SG1がH(高レベル)の場合には、トランジスタQ1がオン、トランジスタQ2がオフ、トランジスタQ3がオフ、トランジスタQ4がオンになる。この場合、アンテナ部50Bが選択され、非選択のアンテナ部50Aは短絡されて共振周波数が変化する。また、アンテナ切替信号SG1がL(低レベル)の場合には、トランジスタQ1がオフ、トランジスタQ2がオン、トランジスタQ3がオン、トランジスタQ4がオフになる。この場合、アンテナ部50Aが選択され、非選択のアンテナ部50Bは短絡されて共振周波数が変化する。
【0054】
つまり、制御回路20が出力するアンテナ切替信号SG1の制御により、いずれか1つのアンテナが常に選択され、その他のアンテナは非選択状態になる。実際には短い周期で周期的にアンテナの切り替えが実施される。
【0055】
次に、アンテナ部50A、50Bの切り替えに関する信号処理回路10及び制御回路20の動作について説明する。図7は本実施形態の非接触通信用リーダ装置におけるアンテナ切り替えに関する処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、いずれかのアンテナが受信した信号を受信回路40及び信号処理回路10で処理することにより、非接触通信用ICからの応答を検出したか否かを識別する(ステップS11)。応答を検出しない場合には、アンテナの切り替えを行ってから0.1秒が経過したか否かを判断する(ステップS12)。0.1秒が経過してなければステップS11に戻る。
【0057】
ステップS12で0.1秒が経過した場合には、2つのアンテナ部50A、50Bの切替を行う(ステップS13)。ここでは、アンテナ切替信号SG1の状態を切り替えることにより、2つのアンテナ部50A、50BをステップS13を実行する度に交互に切り替える。なお、アンテナの数が3つ以上の場合には順番に循環的に選択すればよい。したがって、非接触通信用ICからの応答を検出しない場合には、0.1秒が経過する度に選択されるアンテナが切り替わる。
【0058】
ステップS11で非接触通信用ICからの応答を検出すると、相互認証の結果を確認する(ステップS14)。すなわち、この非接触通信用リーダ装置が非接触通信用ICを正規のカードとして認識し、かつ非接触通信用ICが非接触通信用リーダ装置を正規のリーダ/ライタとして認識したか否かを調べる。
【0059】
相互認証の結果がOKであれば次のステップS16に進み、NGであればNG表示を行う(ステップS15)。このステップS15では、制御回路20から制御信号SG2を出力し、該当する非接触通信用ICが利用不可であることを利用者に通知するために、図示しない表示部にNGである旨を表示する。そしてステップS13に進んでアンテナ切替を行う。
【0060】
相互認証の結果がOKの場合、相互認証に成功した後も引き続いて非接触通信用ICからの応答を検出しているか否かを確認する(ステップS16)。ここで、応答を検出できない場合には、所定時間(40ミリ秒)を経過したか否かを判定する(ステップS17)。ステップS16及びS17で応答が検出されない時間が所定時間を経過すると、ステップS15に進んでNG表示を行い、利用者にエラーを通知する。
【0061】
相互認証に成功した後も引き続いて非接触通信用ICからの応答を検出している場合には、非接触通信用ICからの情報の読み取り動作(リード)が正常に行われたか否かを判定する(ステップS18)。ここで、正常であれば次のステップS19に進み、異常がある場合はステップS15に進んでNG表示を行って利用者にエラーを通知する。読み取り動作が正常に行われた場合は、非接触通信用ICに対する情報の書き込み動作(ライト)が正常に行われたか否かを判定する(ステップS19)。ここで、正常であれば次のステップS20に進み、異常がある場合はステップS15に進んでNG表示を行って利用者にエラーを通知する。
【0062】
非接触通信用ICに対する読み取り及び書き込みが正常に完了すると、処理が正常に行われたことを利用者に通知するために、図示しない表示部にOK表示を行う(ステップS20)。ここでは、該当する非接触通信用IC、すなわち現在選択状態の特定のアンテナ部と対向していると考えられる非接触通信用ICが利用可能なものであると認識し、読み取り及び書き込みが正常に行われた旨を表示部に表示する。具体的には、例えば制御回路20から出力される制御信号SG2を利用して、利用可能状態や処理完了などを利用者に通知する。また、例えばコインロッカーなどを管理する装置の場合には、現在選択状態の特定のアンテナ部と対応付けられた管理対象物(例えば個別のロッカー)について、該当する非接触通信用ICでの利用を許可するための認証処理や課金決済などの必要な処理を行う。
【0063】
非接触通信用ICとの間の様々なやりとり(通信プロトコル)などに必要な処理が全て終了し、OK表示を行った後、ステップS13に進んでアンテナを切り替える。したがって、1つの非接触通信用ICとの間の通信処理が完全に終了した後で、アンテナの切替が実施される。
【0064】
このため、アンテナの周期的な切替によって処理が中断したり処理の実行が遅延したりすることはない。ただし、選択状態のアンテナ部に接近した非接触通信用ICが存在しない場合には、0.1秒の周期で次のアンテナ部に切り替えて選択することができる。したがって、例えば10個の独立した管理対象物が存在し、仮に10個のアンテナ部がこの非接触通信用リーダ装置の処理部に接続されている場合であっても、1秒以内のアンテナのスキャンで確実に非接触通信用ICを検出することができるので、好ましい応答特性が期待できる。
【0065】
なお、図7に示した動作手順については、例えば通信プロトコルなどの規格の変更等に合わせて、必要に応じて変更しても良い。
【0066】
図8は本実施形態の非接触通信用リーダ装置をコインロッカーに適用した構成例を示す図である。例えば、8個の収納部61A〜61Hが連結されたコインロッカー60において、1つの制御部1及び無線部3を有する処理部3を設ける。そして、それぞれの収納部61A〜61Hには、アンテナ部62A〜62Hを配設する。この構成において、処理部3でアンテナ部62A〜62Hを選択切替することにより、1つの処理部によって8つのアンテナ部62A〜62Hを高速に切り替えながら選択的に動作させることができ、通信エラー無く非接触通信による認証や決済処理が可能となる。特に、非接触ICカードのリーダ/ライタ装置のように通信可能な距離が比較的小さい非接触通信用リーダ装置を用い、かつ、コインロッカーの収納部のように多数の管理対象物が互いに近接して並んでいる状態でそれらを区別する必要がある場合に、本実施形態は好適である。
【0067】
上述した本実施形態では、管理すべき管理対象物の数が増えても、1つの処理部によってアンテナと回路の一部を追加するだけで対応でき、低コストで多数の管理対象物を管理することが可能になる。しかも互いに隣接する管理対象物が接近している場合であっても、非選択状態のアンテナを短絡することで隣接するアンテナが干渉することを防止でき、複数の管理対象物を確実に区別して管理することができる。このため、1台の処理部に多数のアンテナを接続したり、隣接するアンテナ同士の距離を近づけて配置した場合であっても、確実な動作が期待できるので、実用的な性能を有する非接触通信用リーダ装置をより低コストで実現することができる。したがって、例えばコインロッカーのように管理対象物の数が多く、隣接する管理対象物が互いに接近した状態で配置され、しかも管理装置のコストを極力下げることが要求されるような用途に適用することによって、より大きな効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、設置した非接触通信用リーダ装置とユーザが所持する非接触通信用ICとを用いて複数の管理対象物を管理する場合に、実用的な性能をより低コストで実現することが可能となる効果を有し、非接触ICカード、RFID等の機器と非接触通信を行って情報を読み取る非接触通信用リーダ装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の変形例の構成を示す図
【図3】本実施形態に係るアンテナ部の回路構成を示す回路図
【図4】本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の主要部の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施形態に係る非接触通信用リーダ装置の主要部の変形例の構成を示すブロック図
【図6】本実施形態の非接触通信用リーダ装置におけるアンテナ切替信号とトランジスタQ1〜Q4の動作を示す図
【図7】本実施形態の非接触通信用リーダ装置におけるアンテナ切り替えに関する処理手順を示すフローチャート
【図8】本実施形態の非接触通信用リーダ装置をコインロッカーに適用した構成例を示す図
【図9】非接触通信用リーダ装置の構成例を示すブロック図
【図10】非接触通信用リーダ装置の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
【0070】
1 制御部
2 無線部
3 処理部
4A、4B、7 増幅器
5A、5B アンテナ
6A、6B、8 スイッチ
10 信号処理回路
20 制御回路
30、70 送信回路
31 キャリア発振器
32 変調回路
33、35 増幅器
34、36 フィルタ回路
37、38、72 インバータ
40 受信回路
41 検波回路
42 フィルタ回路
43 増幅器
50、50A、50B アンテナ部
71 リレー回路
Q1、Q2、Q3、Q4、QA トランジスタ
D1、D2、DA ダイオード
C1、C2 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触通信用ICとの間で非接触通信を行って情報を読み取る非接触通信用リーダ装置であって、
前記非接触通信用に配置された複数のアンテナと、
前記複数のアンテナと接続され通信信号の処理を行う処理部と、
前記複数のアンテナを選択的に切り替えるアンテナ切り替え手段と、
前記複数のアンテナにおける非選択状態のアンテナの共振周波数特性を変更する特性切り替え手段と、
を備える非接触通信用リーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信用リーダ装置であって、
前記アンテナ切り替え手段は、前記複数のアンテナの周期的な切り替えを行い、前記特性切り替え手段は、前記複数のアンテナの選択状態に応じてアンテナの共振周波数特性の周期的な切り替えを行う非接触通信用リーダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非接触通信用リーダ装置であって、
前記複数のアンテナにそれぞれ接続された増幅器を備え、
前記アンテナ切り替え手段は、前記それぞれの増幅器の動作をオンオフさせるスイッチを有し、このスイッチの開閉によって前記複数のアンテナの選択状態を切り替える非接触通信用リーダ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の非接触通信用リーダ装置であって、
前記複数のアンテナはループアンテナによって構成され、
前記特性切り替え手段は、前記アンテナの給電部近傍を短絡、または接地するスイッチを有し、このスイッチの開閉によって前記複数のアンテナの共振周波数特性を切り替える非接触通信用リーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触通信用リーダ装置であって、
前記スイッチは、半導体スイッチ素子と、この半導体スイッチ素子と直列に接続されて前記半導体スイッチ素子がオフ状態の場合に等価的に形成されるダイオードの極性と逆極性を持つ検波防止用ダイオードとを有してなる非接触通信用リーダ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の非接触通信用リーダ装置であって、
前記アンテナ切り替え手段は、所定時間毎に選択するアンテナを順次に他のアンテナに切り替えるとともに、選択されたアンテナにおいて所定の信号の受信を検出した場合には、受信信号に関する処理が完了した後で他のアンテナに切り替える非接触通信用リーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−217048(P2006−217048A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25243(P2005−25243)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】