説明

非接触通信装置および非接触通信方法

【課題】通信速度が高速になっても安定に非接触通信ができる非接触通信装置を提供する。
【解決手段】相手方と電磁結合して通信をするためのコイル111を備えるアンテナ共振回路110と、アンテナ共振回路110のQ値を変更する変更手段とを備える。制御手段171は、予め用意されている複数の通信速度のうちの一つの通信速度で、アンテナ共振回路110を通じて、相手方とデータ送受信するように制御すると共に、通信速度が速いほど、Q値を小さくするように変更手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、IC(Integrated Circuit;集積回路)カードと、その読み書き装置との間で電磁結合を利用して非接触で近接通信を行なう場合に使用して好適な非接触通信方法およびその非接触通信方法に使用する非接触通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁結合を利用した非接触通信技術としては、フェリカ(FeliCa(登録商標))が知られている。また、このフェリカ(FeliCa(登録商標))も含む近接通信の通信規格としては、NFC(Near Field Communication)規格がある。
【0003】
図30は、フェリカ(FeliCa(登録商標))技術を用いた非接触通信システムを示す図であり、リーダライタ10と、トランスポンダ20とからなる。
【0004】
良く知られた例においては、図31に示すように、トランスポンダ20は、非接触ICカードとされ、リーダライタ10は、駅の改札や自動販売機などに備え付けられる。そして、リーダライタ10に、利用者30が手に持った非接触ICカードからなるトランスポンダ20を近接させることにより、個人認証や課金が行なわれる。
【0005】
リーダライタ10は、アンテナ共振回路11と、送受信処理部12とからなる。
【0006】
アンテナ共振回路11は、並列共振用のコイル11L、コンデンサ11Cおよび抵抗11Rからなる。
【0007】
送受信処理部12は、受信信号の検波回路および復調回路を含むと共に、リーダライタの制御部、さらに、送信信号の変調回路を含む。
【0008】
一方、トランスポンダ20は、アンテナ共振回路21と、負荷切替変調回路22と、送受信処理部23とを備える。
【0009】
アンテナ共振回路21は、並列共振用のコイル21L、コンデンサ21Cおよび抵抗21Rからなる。負荷切替変調回路22は、抵抗22Rと半導体スイッチ22SWとからなる。送受信処理部23は、受信信号の検波回路および復調回路を含むと共に、制御部、さらに、送信信号の変調回路を含む。
【0010】
半導体スイッチ22SWは、送受信処理部23からの信号により制御され、受信時にはオフとされる。そして、送信時には、半導体スイッチ22SWは、変調された送信しようとする信号によりオン・オフされる。
【0011】
この例のトランスポンダ20を構成する非接触ICカードは、無電源カードであり、リーダライタ10から電磁誘導により与えられる誘導電流を整流して自身の直流駆動電源を得ている。
【0012】
この例の近接通信システムにおいては、トランスポンダ20のアンテナ共振回路21と、リーダライタ10のアンテナ共振回路11との間での電磁結合により、トランスポンダ20とリーダライタ10との間での通信がなされる。
【0013】
この場合に、相互の近接通信においては、例えば13.56MHzのキャリア周波数が用いられ、リーダライタ10とトランスポンダ20との間の送受信間距離D(図31参照)を、密着(0cm)から10数cmの範囲とした通信が行なわれる。
【0014】
そして、リーダライタ10およびトランスポンダ20の双方のアンテナ共振回路11,21は、キャリア周波数近傍において、急峻な共振周波数特性を持つように設計されている。このように急峻な共振周波数特性とするのは、無電源のトランスポンダ20で十分な直流駆動電力が得られるようにすると共に、リーダライタ10およびトランスポンダ20の双方で十分な変調信号強度が得られるようにするためである。
【0015】
例えば、フェリカ(FeliCa(登録商標))通信システムにおいて広く用いられているEdy(登録商標)カードの周波数共振特性を図32に示す。
【0016】
この図32の共振周波数特性は、リーダライタ10とトランスポンダ20との間の送受信間距離Dが約1cmの場合の測定値であり、縦軸は測定器にて得られるパラメータを規格化して表示している。図32の特性曲線の共振の鋭さを示す値であるQ(Quality Factor)値は、約49である。このQ値は、値が大きければ大きいほど、共振が鋭く急峻な周波数特性となる。
【0017】
なお、上記の近接通信システムにおける非接触ICカードについては、例えば特許文献1(特開平10−187916号公報)や特許文献2(特開2005−11009号公報)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平10−187916号公報
【特許文献2】特開2005−11009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来、リーダライタ10とトランスポンダ20(例えば非接触ICカード)との間の非接触通信に利用されている通信速度(データ転送速度)は、212kbpsや424kbpsなどである。
【0020】
このように、比較的通信速度が遅い場合には、変調波のスペクトル幅(通信信号の周波数幅)が狭いため、図32のような、Q値が大きく、急峻な共振周波数特性を持つ場合でも、その使用する全帯域において一定の受信レベルが確保することができる。
【0021】
ところで、最近は、上述のような近接通信により、より大量のデータを通信しようとする要請があり、そのため、より高速の通信速度(データ転送速度)での通信が望まれている。
【0022】
しかしながら、より高速の通信速度にすると、Q値が大きく、急峻な共振周波数特性を持つ場合に、安定なデータ通信ができなくなると言う問題がある。この問題を図33を参照して説明する。
【0023】
図33は、各通信速度におけるスペクトル幅を、Q値=50の急峻な共振周波数特性曲線と共に示した図であり、両矢印で示される範囲が、その横に記載した各通信速度におけるスペクトル幅である。この図33では、横軸は周波数を示しており、縦軸は受信側で観測される受信レベルを示している。
【0024】
そして、各通信速度におけるスペクトル幅を示す両矢印の縦軸方向のレベル位置は、当該スペクトル幅の全帯域において一定の受信レベルを確保することができるときのレベルに対応している。
【0025】
この図33から、各通信速度の場合において使用する全帯域で一定の受信レベルを確保することを考慮すると、高速になるほど、受信感度が低い領域を用いる必要があることが分かる。
【0026】
したがって、高速の通信においては、図32および図33のように、Q値が大きく、急峻な周波数特性を共振周波数特性をアンテナ共振回路に持たせた場合には、受信レベルを確保することが困難になる。
【0027】
この発明は、以上の点にかんがみ、通信速度が高速になっても安定に非接触通信ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
相手方と電磁結合して通信をするためのコイルを備えるアンテナ共振回路と、
前記アンテナ共振回路のQ値を変更する変更手段と、
予め用意されている複数の通信速度のうちの一つの通信速度で、前記アンテナ共振回路を通じて、前記相手方とデータ送受信するように制御すると共に、前記通信速度が速いほど、前記Q値を小さくするように前記変更手段を制御する制御手段と、
を備える非接触通信装置を提供する。
【0029】
アンテナ共振回路のQ値を小さくすると、当該アンテナ共振回路の周波数特性において、共振周波数をピークとした前後の減衰傾きが緩やかになる。したがって、アンテナ共振回路のQ値を小さくしたときには、同じ通信速度のときであっても、その通信速度での通信信号のスペクトル幅の全帯域において一定の受信レベルを確保することができるレベルを高くすることができる。
【0030】
図1は、Q値=40のアンテナ共振回路の周波数特性(実線の曲線1)と、Q値=20のアンテナ共振回路の周波数特性(実線の曲線2)とを、共振周波数が13.56MHzのときのピークレベルを同一にして示したものである。
【0031】
この図1から、Q値=20の場合における±1.7MHzの全帯域において、Q値=40の場合において±848kHzの帯域を使用する場合と同等の受信レベルが得られることが分かる。つまり、Q値を半分に下げると、通信速度が丁度半分のときと同等の条件で通信を行なうことができる。
【0032】
上述の構成の請求項1の発明によれば、制御手段は、通信速度が速いほど、アンテナ共振回路のQ値を小さくするように変更手段を制御する。したがって、通信速度が高速になっても安定に非接触通信ができるようになる。
【0033】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の非接触通信装置において、
前記アンテナ共振回路を通じてキャリア信号に情報が重畳された受信信号を受け、前記受信信号の包絡線変化を解析して前記情報を含む検波信号を生成する検波部と、
前記検波信号に対する補正処理を実行し補正検波信号を出力する等化処理部と、
を備え、
前記等化処理部は、デジタルフィルタで構成される適応等化手段で構成されることを特徴とする。
【0034】
この請求項2の発明によれば、受信信号は、等化処理部で適応等化処理がなされて、波形ひずみ補正がなされ、より安定にエラーなく復調することが可能になる。
【0035】
この場合に、この発明によれば、前述したように、通信速度が速くなるほどアンテナ共振回路のQ値が小さくされ、その周波数特性は、共振周波数をピークとした前後の減衰傾きが緩やかになるので、等化処理部での波形歪み補正が、より容易になされる。したがって、通信速度が速くなっても、等化処理により、さらに、安定にエラーなく復調することが可能になる。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、通信速度が速いほど、アンテナ共振回路のQ値を小さくするように変更手段を制御するので、通信速度が高速になっても安定に非接触通信ができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明による非接触通信方法の実施形態の要部を説明するために用いる周波数特性図である。
【図2】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図3】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図4】この発明による非接触通信方法の実施形態の要部を説明するために用いる図である。
【図5】この発明による非接触通信方法の実施形態を説明するために用いる図である。
【図6】この発明による非接触通信装置の実施形態の一部の構成例を示す図である。
【図7】この発明による非接触通信方法の実施形態が適用される通信プロトコルによりやり取りされるパケットフォーマットの例を示す図である。
【図8】この発明による非接触通信方法の実施形態が適用される通信プロトコルでのパケットのシーケンス例を示す図である。
【図9】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第1の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図10】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第1の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図11】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第2の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図12】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第2の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図13】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第3の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図14】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第3の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図15】この発明による非接触通信方法の第3の実施形態の要部を説明するために用いる図である。
【図16】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第3の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図17】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第3の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図18】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第4の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図19】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第4の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図20】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第5の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図21】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第5の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図22】この発明による非接触通信方法の第5の実施形態の要部を説明するために用いる図である。
【図23】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第5の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図24】この発明による非接触通信装置の実施形態であるリーダライタの第5の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図25】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第5の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図26】この発明による非接触通信装置の実施形態であるトランスポンダの第5の実施形態における処理動作を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図27】この発明による非接触通信方法の実施形態(第6の実施形態)が適用される非接触通信システムの構成例を示す図である。
【図28】この発明による非接触通信装置の実施形態の要部の他の構成例を説明するための図である。
【図29】この発明による非接触通信方法の更に他の実施形態が適用される非接触通信システムの構成例を示す図である。
【図30】従来の一般的な非接触通信システムの構成例を説明するための図である。
【図31】従来の一般的な非接触通信システムの構成例を説明するための図である。
【図32】従来の非接触通信システムに用いられる非接触通信装置のアンテナ共振回路の共振周波数特性の例を示す図である。
【図33】非接触通信システムに用いられる非接触通信装置のアンテナ共振回路の共振周波数特性の例と、通信速度との関係を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、この発明の実施形態の幾つかを、フェリカ(FeliCa(登録商標))通信システムに適用した場合を例にとって、図を参照しながら説明する。
【0039】
[第1の実施形態]
図2は、リーダライタ100の構成例を示すブロック図であり、また、図3は、非接触ICカードからなるトランスポンダ200の構成例を示すブロック図である。
【0040】
<リーダライタ100の構成>
リーダライタ100は、アンテナ共振回路110と、送信アンプ120と、ミキサ130と、局部発信器140と、バンドパスアンプ150と、検波回路160と、信号処理部170とを備えている。
【0041】
リーダライタ100は、USB(Universal Serial Bus)やICバスなどを通じてホスト機器101と接続されている。ホスト機器101は、例えばパーソナルコンピュータや、当該リーダライタ100が設けられる装置の制御装置(CPU(Central Processing Unit)を備える)からなる。
【0042】
リーダライタ100のアンテナ共振回路110は、アンテナコイル111と、共振コンデンサ112と、n個の抵抗113R1〜113Rnと、n個のスイッチ回路114SW1〜114SWnとからなる。n個の抵抗113R1〜113Rnと、n個のスイッチ回路114SW1〜114SWnとは、同じサフィックス同士が直列に接続されていると共に、それぞれの直列回路が、コンデンサ112に対して並列に接続されている。
【0043】
n個のスイッチ回路114SW1〜114SWnのそれぞれは、信号処理部170のQ値変更回路175からの切替信号により、独立にオン・オフ制御される。そして、このn個のスイッチ回路114SW1〜114SWnのそれぞれのオン・オフ状態に応じて、アンテナ共振回路110のQ値が変更される。
【0044】
すなわち、アンテナ共振回路110のQ値は、n個の抵抗113R1〜113Rnのうち、スイッチ回路114SW1〜114SWnがオンとされることにより、コンデンサ112に並列に接続される1または複数個の抵抗に応じて変更される。
【0045】
信号処理部170は、制御部171と、メモリ172と、変調回路173と、適応等化回路および復調回路174と、Q値変更回路175とを備える。
【0046】
制御部171は、リーダライタ100の動作を制御するためのもので、ハードウエアロジック回路として構成されていても良いし、組み込みCPU(Central Processing Unit)として構成されていても良い。
【0047】
この例では、リーダライタ100とトランスポンダ200との間では、例えば、212kbps、424kbps、848kbps、1.7Mbps、3.4Mbpsの5種類の通信速度(データ転送速度)での通信が可能とされている。制御部171は、この5種類の通信速度のうちから選択した通信速度で、トランスポンダ200との間での通信をするようにする。
【0048】
制御部171は、自分自身で、いずれの通信速度で通信を行なうかを決定するが、例えばホスト機器101からの制御指示に基づいて、いずれの通信速度で通信を行なうかを決定するようにすることもできる。
【0049】
例えば、ホスト機器101から送信情報が送られてくる場合、その送信情報の通信速度が、高速が望ましい場合であれば、制御部171は、通信相手のトランスポンダ200との通信が可能な通信速度のうちで、最も早い通信速度で通信を行うようにする。
【0050】
以上のように、制御部171は、常に現在の通信速度を把握しており、その通信速度の情報を後述するようにQ値変更回路175に供給する。
【0051】
メモリ172は不揮発性メモリであり、このメモリ172には、トランスポンダ200との間での認証用の情報の他、この実施形態においては、通信速度とアンテナ共振回路110のQ値との対応情報であるQ値切り替えテーブル情報が記憶されている。
【0052】
図4に、この例におけるQ値切り替えテーブル情報の例を示す。すなわち、この例では、リーダライタ100とトランスポンダ200との間では、前述したように、5種類の通信速度(データ転送速度)での通信が可能とされている。
【0053】
この実施形態では、この5種類の通信速度のそれぞれでの通信時に最適なアンテナ共振回路110のQ値が予め設定されている。この各通信速度とQ値の設定値との対応関係が、図4に示すように、Q値切り替えテーブル情報としてメモリ172に記憶されている。
【0054】
すなわち、図4に示すように、通信速度が低い場合には、Q値は、大きい値に設定し、通信速度が速くなればなるほど、Q値は小さく設定される。図4の例では、低速の通信速度212kbpsおよび424kbpsでは、Q値=32と最も大きくされる。また、中間の通信速度848では、Q値=24、それより速い通信速度1.7MHzでは、Q値=16と設定される。そして、最も早い通信速度3.4MHzでは、Q値=8と最小に設定される。
【0055】
以上のように、アンテナ共振回路110のQ値が、通信速度が高速になるほど小さい値に設定されるので、高速の通信速度であっても、変調波のスペクトル幅の全帯域において一定の受信レベルを確保することができるレベルを高くすることができる。したがって、安定な通信が可能となる。
【0056】
変調回路173は、トランスポンダ(例えば非接触ICカード)200へ送信する情報を変調した送信信号(変調信号)を生成して出力する。
【0057】
変調回路173から出力された送信信号は、ミキサ130に供給されて、局部発信器140からの局部発信周波数信号と掛け算されて、キャリア周波数が13.56MHzとなるように周波数変換される。
【0058】
そして、ミキサ130で周波数変換された送信信号は、送信アンプ120を通じてアンテナ共振回路110に供給されて、無線送信される。
【0059】
適応等化回路および復調回路174は、受信信号に対して無線通信路において発生した歪みを補正しつつ、受信信号を復調する回路部である。適応等化回路および復調回路174のうちの適応等化回路については、後で詳述する。
【0060】
リーダライタ100においては、アンテナ共振回路110を通じて受信された受信信号は、バンドバスアンプ150を通じて検波回路160に供給される。検波回路160には、局部発信器140からの局部発信周波数信号が供給されて、キャリア周波数が13.56MHzの受信信号が、元の変調信号の周波数に変換される。すなわち、検波回路160では、トランスポンダ200からの送信信号の検波出力として得られる。
【0061】
そして、検波回路160では、この検波出力がA/D変換されて、デジタル信号とされ、適応等化回路および復調回路174に供給され、受信信号が復調される。
【0062】
Q値変更回路175は、制御部171からの通信速度の情報を受けて、通信速度が変わったか否かを判別する。そして、Q値変更回路175は、通信速度が変わった判別したときには、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照して、その通信速度のときのアンテナ共振回路110のQ値を認識する。
【0063】
そして、Q値変更回路175は、認識したQ値が、そのときのアンテナ共振回路110のQ値と異なるか否かを判別し、異なっていると判別したときには、認識したQ値になるように、スイッチ回路114SW1〜114SWnをオン・オフ制御する。
【0064】
なお、上述したQ値変更回路175の機能は、制御部171が、その一部の機能として備えるように構成してもよい。
【0065】
このリーダライタ100の各部の電源電圧は、図示は省略するが、電池や外部電源から供給されるものである。
【0066】
<トランスポンダ200の構成>
トランスポンダ200は、アンテナ共振回路210と、整流回路220と、負荷変調回路230と、レギュレータ240と、検波回路250と、信号処理部260とを備えている。
【0067】
トランスポンダ200のアンテナ共振回路210は、アンテナコイル211と、共振コンデンサ212と、n個の抵抗213R1〜213Rnと、n個のスイッチ回路214SW1〜214SWnとからなる。n個の抵抗213R1〜213Rnと、n個のスイッチ回路214SW1〜214SWnとは、同じサフィックス同士が直列に接続されていると共に、それぞれの直列回路が、コンデンサ212に対して並列に接続されている。
【0068】
n個のスイッチ回路214SW1〜214SWnのそれぞれは、信号処理部260のQ値変更回路265からの切替信号により、独立にオン・オフ制御される。そして、このn個のスイッチ回路214SW1〜214SWnのそれぞれのオン・オフ状態に応じて、アンテナ共振回路210のQ値が変更される。
【0069】
すなわち、アンテナ共振回路210のQ値は、n個の抵抗213R1〜213Rnのうち、スイッチ回路214SW1〜214SWnがオンとされることにより、コンデンサ212に並列に接続される1または複数個の抵抗に応じて変更される。
【0070】
整流回路220は、アンテナ共振回路210で受信した受信信号を整流して、その整流出力をレギュレータ240に供給する。レギュレータ240は、整流回路220の整流出力から安定化された直流電圧を生成して、各部に電源電圧として供給する。
【0071】
信号処理部260は、制御部261と、メモリ262と、変調回路263と、適応等化回路および復調回路264と、通信速度検出回路265と、Q値変更回路266とを備える。
【0072】
制御部261は、トランスポンダ200の動作を制御するためのもので、ハードウエアロジック回路として構成されていても良いし、組み込みCPUとして構成されていても良い。
【0073】
メモリ262は不揮発性メモリであり、このメモリ262には、リーダライタ100との間での認証用の情報の他、この実施形態においては、通信速度とアンテナ共振回路210のQ値との対応情報であるQ値切り替えテーブル情報が記憶されている。
【0074】
この例では、このメモリ262に格納されるトランスポンダ200側のQ値切り替えテーブル情報も、図4に示したものと同じものとされる。
【0075】
この実施形態では、前述したように、5種類の通信速度のそれぞれでの通信時に適切なアンテナ共振回路210のQ値が予め設定されている。この各通信速度とQ値の設定値との対応関係が、図4に示すように、Q値切り替えテーブル情報としてメモリ262に記憶されている。すなわち、通信速度が速くなればなるほど、小さい値のQ値が設定されるようにされている。
【0076】
このように、アンテナ共振回路210のQ値が、通信速度が高速になるほど小さい値に設定されるので、高速の通信速度であっても、変調波のスペクトル幅の全帯域において一定の受信レベルを確保することができるレベルを高くすることができる。したがって、安定な通信が可能となる。
【0077】
変調回路263は、リーダライタ100へ送信する情報を変調した送信信号(変調信号)を生成して出力する。
【0078】
変調回路263から出力された送信信号は、負荷変調回路230に供給される。
【0079】
負荷変調回路230は、整流回路220の出力端間に直列接続された抵抗231と、変調用トランジスタ(FET)232とからなる。変調用トランジスタ232は、変調回路263から出力された送信信号によりオン・オフ制御される。これにより、変調回路263から出力された送信信号がデータ変調される。
【0080】
こうしてデータ変調された送信信号は、アンテナ共振回路210に供給されて、無線送信される。
【0081】
検波回路250は、整流回路220の出力から受信信号を検波して得る。そして、検波回路250は、その検波出力をA/D変換して、デジタル信号に変換して、信号処理部260の適応等化回路および復調回路264に供給する。検波回路250の検波出力は、また、通信速度検出回路265にも供給される。
【0082】
適応等化回路および復調回路264は、リーダライタ100の適応等化回路および復調回路174と同様のもので、受信信号に対して無線通信路において発生した歪みを補正しつつ、受信信号を復調する回路部である。適応等化回路および復調回路264のうちの適応等化回路については、後で詳述する。
【0083】
通信速度検出回路265は、受信した信号が、前記5種の通信速度のうちのいずれの通信速度で伝送されてきたものであるかを検出する回路で、例えば、以下のように構成することができる。
【0084】
前述した5種類の通信速度のそれぞれにおける受信信号を復調するためには、それぞれの受信信号から再生されるクロックに同期する複数個のPLL(Phase Locked Loop)回路を設ける必要がある。
【0085】
通信速度検出回路265の第1の構成例は、前記複数個のPLL回路のうちの、いずれの通信速度の受信信号用のPLL回路でクロック同期が取れたかにより、通信速度を検出する方法である。
【0086】
また、通信速度検出回路265は、次のような構成とすることもできる。すなわち、受信パケットの同期信号SYNCの検出回路は、前述した5種類の通信速度のそれぞれにおける受信信号について設ける。
【0087】
そこで、通信速度検出回路265の第2の構成例は、前記複数個の同期信号検出回路のうちの、いずれの通信速度の受信信号用の同期信号検出回路で同期信号SYNCが検出されたかにより、通信速度を検出する方法である。
【0088】
この通信速度検出回路265で検出された通信速度の情報Vcは、信号処理部260の制御部261に供給される。制御部261は、この通信速度検出回路265からの通信速度の情報Vcから通信速度を認識し、認識した通信速度の情報VcをQ値変更回路266に供給する。
【0089】
Q値変更回路266は、制御部261からの通信速度の情報を受けて、通信速度が変わったか否かを判別する。そして、Q値変更回路266は、通信速度が変わった判別したときには、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照して、その通信速度のときのアンテナ共振回路210のQ値を認識する。
【0090】
そして、Q値変更回路266は、認識したQ値が、そのときのアンテナ共振回路210のQ値と異なるか否かを判別し、異なっていると判別したときには、認識したQ値になるように、スイッチ回路214SW1〜214SWnをオン・オフ制御する。
【0091】
なお、上述したQ値変更回路266の機能は、制御部261が、その一部の機能として備えるように構成してもよい。
【0092】
<適応等化回路について>
リーダライタ100のアンテナコイル111と、トランスポンダ200のアンテナコイル211との距離が短くなり、電磁結合の結合係数が増加すると、アンテナコイルの相互干渉の影響が大きくなり、伝送路の周波数特性のピークが2つの山に分かれてくる。このことは、周知である。
【0093】
なお、実際には、上記の現象を司るパラメータは両アンテナ同士の結合係数であるので、厳密にはアンテナ間距離のみならず、アンテナのサイズやアンテナ中心点の位置ずれなども関係してくる。しかし、この明細書では、便宜的に、結合係数大=アンテナ間距離小、結合係数小=アンテナ間距離大、として説明する。
【0094】
図5に、周波数13.56MHzに共振点を持つ2つのアンテナにおける、各アンテナ間距離における周波数特性を示す。
【0095】
この図5に示すように、アンテナ間距離が10cmや5cmのように、比較的大きいときには、伝送路の周波数特性のピークは1つである。しかし、アンテナ間距離がそれよりも短くなってくると、伝送路の周波数特性のピークが2つの山に分かれ、アンテナ間距離が短くなればなるほど、分かれたピークの山の周波数位置が離れる。
【0096】
この図5から判るように、電磁結合により非接触で通信を行う場合、アンテナ間距離によって、伝送路の周波数特性が複雑に変化する。そのため、等化回路を用いて、受信信号における伝送路から受ける歪みを補正しようとした場合、周波数に対する増幅率が固定の等化回路では、上述のような複雑な周波数特性に対応することができない。
【0097】
出願人は、先に、特願2008−297629(提出日2008年11月21日)として、上述のような複雑な周波数特性に対応することができるようにした適応等化技術を提案している。
【0098】
この実施形態では、この先に提案している適応等化技術を、前記適応等化回路に用いている。
【0099】
検波回路250および適応等化回路の部分の具体構成例を、図6に示す。
【0100】
すなわち、この例においては、検波回路250および適応等化回路の部分は、増幅器301と、検波器302と、AGC(Automatic Gain Control;自動利得制御)回路303と、PLL回路304と、適応等化回路305、検出部306とからなる。
【0101】
受信信号は、増幅器301において復調のために十分な振幅を持つように適切な増幅率あるいは減衰率で増幅または減衰される。この増幅器301は、減衰器またはAGC回路により構成される場合もある。
【0102】
増幅器301の出力は、検波器302に供給される。検波器302では、増幅器301の出力から振幅情報を抽出する検波処理がなされる。すなわち、検波器302は、キャリア信号に重畳された受信情報を受けて、前記キャリア信号の包絡線変化を解析し、受信情報を含む検波信号を生成する。
【0103】
この検波器302からの検波信号は、ハイパスフィルタ303に供給される。このハイパスフィルタ303は、検波信号に対して、波形の中点電位をゼロレベルに設定する直流(DC)成分の除去を行い、DCオフセットが除去された検波波形出力を生成する。
【0104】
ハイパスフィルタ303からのDCオフセットが除去された検波波形出力は、AGC回路に供給されて、利得制御された後、A/D変換回路305に供給されてデジタル信号に変換される。
【0105】
A/D変換回路305からのデジタル信号は、PLL回路306に供給され、デジタル信号からクロックが再生された後、適応等化回路307に供給される。
【0106】
適応等化回路307は、前述の図6のような周波数特性を持つ伝送系を経由して受信される受信信号の波形の歪みを補正する補正処理を行う。この適応等化回路307は、例えばFIR(Finite Impulse Response)デジタルフィルタで構成される。そして、適応等化回路307においては、その出力として本来得られるべき検出出力に対する誤差が最小になるように、FIRデジタルフィルタの各タップの乗算係数が、自動的に(適応的に)変更制御される。
【0107】
この適応等化回路307により、図6に示したように、受信信号について、伝送路の周波数特性が大きく変化する系においても、その変化に適応的に対応することができるようにされる。
【0108】
適応等化回路307の出力信号は、検出部308に供給される。この検出部308では、適応等化回路307からの補正されたデジタル信号から、「1」、「0」の2値信号を受信情報として検出して出力する。
【0109】
図33に示したように、通信速度が速くなるほど、変調波のスペクトル幅が広がる。そして、図6のようにアンテナ間距離の変化により、前記周波数特性も変化することから、前記の適応等化処理は、複雑なものとなる。
【0110】
このような周波数帯域が広く、また、複雑な特性変化に対しても、FIRデジタルフィルタのタップ数を多くしたり、十分に処理時間を確保することができる場合には、上述の適応等化処理により受信波形歪みに対応することができる。
【0111】
しかし、この実施形態のような非接触通信はリアルタイム処理であって、適応等化処理も高速に収束するように行われる必要がある。また、デジタル回路の回路規模削減の要請から、FIRデジタルフィルタのタップ数は、少なく制限されることが多い。
【0112】
このため、この実施形態のように、従来よりも高速の通信速度が要請される場合には、受信波形の歪みが十分に補正されずに、受信情報の検出エラー、つまり、通信エラーが発生してしまうという問題がある。
【0113】
これに対して、この実施形態では、通信速度の速さに応じてアンテナ共振回路、つまり、伝送路のQ値が変更され、通信速度が速くなるほど、Q値が小さくなるようにされる。このように、Q値が小さくされると、周波数特性は、図1に示したように、共振周波数をピークとしたその前後の周波数での減衰の傾きが緩やかなものとなる。
【0114】
このように、ピークの前後の周波数での減衰が緩やかな周波数特性のときには、より容易に波形歪み補正を行なえることが判っている。
【0115】
したがって、この実施形態においては、使用する通信速度が速くなるほど、アンテナ共振回路のQ値を小さくするように制御することで、高速の通信速度でも、適応等化回路307での適応等化処理も有効に行え、通信エラーを低減することができる。
【0116】
そして、上述の実施形態によれば、通信速度が高速になればなるほど、アンテナ共振回路のQ値を下げることにより、従来は、困難であったリーダライタ100とトランスポンダ200の双方が非常に近接する際においても、高速通信が可能になる。
【0117】
<リーダライタ100およびトランスポンダ200の通信時の処理動作>
フェリカ(FeliCa(登録商標))の仕様においては、リーダライタ100は、任意の通信速度でコマンドを、非接触ICカードからなるトランスポンダ200に対して送出することができる。
【0118】
ここで、リーダライタ100とトランスポンダ200との間でやり取りされるコマンドのパケットのフォーマットを図7に示す。
【0119】
すなわち、この例のパケットは、プリアンブルと、ヘッダと、データとからなる。そして、ヘッダには、同期信号SYNCと、パケット長の情報と、エラー検出、訂正用のパリティとが含まれる。
【0120】
次に、図8は、フェリカ(FeliCa(登録商標))のプロトコルにおける通信開始時からのパケットの流れを説明するためのシーケンス図である。
【0121】
リーダライタ100は、先ず、ポーリングコマンドをトランスポンダ(非接触ICカード)200に対して、繰り返し送信する。そして、当該ポーリングコマンドに対する応答コマンド(ポーリングレスポンスコマンド)がトランスポンダ200から返ってきたら、リーダライタ100は、リクエストサービスコマンドを、トランスポンダ200に送る。
【0122】
このリクエストサービスコマンドを受け取ったトランスポンダ200は、その応答コマンド(リクエストサービスレスポンスコマンド)をリーダライタ100に返す。
【0123】
こうして、リーダライタ100とトランスポンダ200との間で、通信開始時のコマンドとその応答のやり取りが成立すると、その後、両者の間で、必要な情報の通信が実行される。
【0124】
この実施形態では、リーダライタ100からのポーリングコマンドは、順次に通信速度が変えられて送出される。例えば、リーダライタ100は、通信速度が速い方から順に、順次にポーリングコマンドの送出を行う。
【0125】
そして、送出されたポーリングコマンドに対する応答コマンドがトランスポンダ200から帰ってきたら、リーダライタ100は、そのときの通信速度で固定して、リクエストサービスコマンドを送出する。そして、リーダライタ100は、そのときの通信速度でトランスポンダ200との間で情報通信を実行するようにする。
【0126】
<リーダライタ100での処理動作の流れ>
このときのリーダライタ100での処理動作の流れを、図9のフローチャートを参照して説明する。この図9の処理は、制御部171による制御に従って実行される。なお、この図9の説明では、制御部171は、Q値変更回路175の機能をも有しているとする。
【0127】
先ず、制御部171は、通信速度を変更したか否か判別する(ステップS101)。ステップS101で、通信速度を変更していないと判別したときには、そのときの通信速度でポーリングコマンドパケットを送信する(ステップS104)。
【0128】
ステップS101で、通信速度を変更したと判別したときには、制御部171は、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS102)。
【0129】
そして、制御部171は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路110のスイッチ回路114SW1〜114SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS103)。そして、変更後の通信速度でポーリングコマンドパケットを送信する(ステップS104)。
【0130】
ステップS104で、ポーリングコマンドパケットを送出した後には、制御部171は、トランスポンダ200からの応答コマンドパケットの受信を監視する(ステップS105)。
【0131】
ステップS105で、応答コマンドパケットを受信していないと判別したときには、制御部171は、その非受信状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS106)。
【0132】
そして、ステップS106で、応答コマンドパケットの非受信状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部171は、ステップS105に戻り、応答コマンドパケットの受信を監視する。
【0133】
また、ステップS106で、応答コマンドパケットの非受信状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部171は、通信不能状態であることを認識する(ステップS107)。
【0134】
そして、制御部171は、通信処理は終了したか否か判別し(ステップS109)、未だ、終了していないと判別したときには、ステップS101に戻る。また、ステップS109で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0135】
また、ステップS105で、トランスポンダ200からの応答コマンドパケットを受信したと判別したときには、制御部171は、トランスポンダ200との間で情報通信を実行する(ステップS108)。この情報通信の実行には、前述のリクエストサービスコマンドおよびリクエストサービス応答コマンドのやり取りも含まれるものとする。
【0136】
ステップS108の後には、ステップS109に進み、通信処理は終了したか否か判別し、未だ、終了していないと判別したときには、ステップS101に戻る。また、ステップS109で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0137】
<トランスポンダ200での処理動作の流れ>
次に、上記のリーダライタ100の処理動作に対応するトランスポンダ200での処理動作の流れを、図10のフローチャートを参照して説明する。この図10の処理は、制御部261による制御に従って実行される。なお、この図10の説明では、制御部261は、Q値変更回路266の機能をも有しているとする。
【0138】
先ず、制御部261は、リーダライタ100から送られてくる変調信号を監視し(ステップS201)、前記変調信号を検知したと判別したときには、通信速度検知手段265で検出された通信速度を検知する(ステップS202)。
【0139】
そして、制御部261は、通信速度が、前に検知した変調信号から検知した通信速度とは異なっているかどうかにより、通信速度が変化したか否かを判別する(ステップS203)。
【0140】
ステップS203で、通信速度が変化したと判別したときには、制御部261は、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS204)。
【0141】
そして、制御部261は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路210のスイッチ回路214SW1〜214SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS205)。
【0142】
そして、制御部261は、リーダライタ100からのコマンドパケット(ポーリングコマンドパケット)の受信を監視する(ステップS206)。
【0143】
また、ステップS203で、通信速度は変化してはいないと判別したときには、制御部261は、ステップS204、ステップS205をバイパスして、Q値を変えることなく、ステップS206に進み、ポーリングコマンドパケットの受信を監視する。
【0144】
ステップS206で、リーダライタ100からのポーリングコマンドパケットを受信していないと判別したときには、制御部261は、その非受信状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS207)。
【0145】
そして、ステップS207で、ポーリングコマンドパケットの非受信状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部261は、ステップS206に戻り、ポーリングコマンドパケットの受信を監視する。
【0146】
また、ステップS207で、ポーリングコマンドパケットの非受信状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部261は、通信不能状態であることを認識する(ステップS208)。そして、制御部171は、ステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0147】
また、ステップS206で、リーダライタ100からのポーリングコマンドパケットを受信したと判別したときには、制御部261は、リーダライタ100に対して、ポーリング応答コマンドパケットを送信する(ステップS209)。そして、トランスポンダ200の制御部261は、リーダライタ100との間で情報通信を実行する(ステップS210)。この情報通信の実行には、前述のリクエストサービスコマンドおよびリクエストサービス応答コマンドのやり取りも含まれるものとする。
【0148】
その後、制御部261は、ステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0149】
なお、リーダライタ100において、ポーリングコマンドの通信速度を変える順序は、上述の例のように速いもの順ではなく、遅いものから順に速い方へ変更しても良いし、任意の順序で、通信速度を変えるようにしても良い。
【0150】
また、リーダライタ100において、複数個の通信速度の全てでポーリングコマンドを送出し、トランスポンダ200からポーリング応答コマンドが返ってきた通信速度のうちの最も速い通信速度で、リクエストサービスコマンドを送出するようにしても良い。
【0151】
さらに、遅い通信速度で送出したポーリングコマンドに対する応答コマンドを受信したときに、即座に情報通信を開始するのではなく、より速い通信速度でポーリングコマンドを再度送出し、当該速い通信速度で応答コマンドをさらに受信したら、より速い方の通信速度で情報通信を実行するように構成しても良い。
【0152】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態は、リーダライタ100とトランスポンダ200との間の通信のプロトコルが、フェリカ(FeliCa(登録商標))のプロトコルの場合である。
【0153】
リーダライタ100とトランスポンダ200との間の通信のプロトコルとしては、これ以外に、例えばISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルが利用可能である。
【0154】
このISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルは、速度変更コマンドおよび速度変更レスポンスコマンドを用いて、通信速度の変更前の通信速度でネゴシエーションを行った後、通信速度の変更を行う仕様である。
【0155】
この第2の実施形態は、ISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルを用いて非接触通信を行う場合の例である。
【0156】
この第2の実施形態の場合のリーダライタ100のハードウエア構成は、図2に示した第1の実施形態の場合と全く同様でよい。
【0157】
一方、この第2の実施形態の場合のトランスポンダ200のハードウエア構成は、図3に示した第1の実施形態の場合において、通信速度検知回路265を不要とする構成となる。何故なら、第2の実施形態の場合のトランスポンダ200においては、リーダライタ100から通信速度が通知されるので、通信速度検知回路265で通信速度を検出する必要がないからである。
【0158】
この第2の実施形態の場合におけるリーダライタ100とトランスポンダ200における処理動作の流れを以下に説明する。
【0159】
<リーダライタ100での処理動作の流れ>
この第2の実施形態の場合におけるリーダライタ100での処理動作の流れを、図11のフローチャートを参照して説明する。この図11の処理は、制御部171による制御に従って実行される。なお、この図11の説明では、制御部171は、Q値変更回路175の機能をも有しているとする。
【0160】
先ず、制御部171は、通信速度を変更したか否か判別する(ステップS111)。このステップS101で、通信速度を変更したと判別したときには、制御部171は、速度変更コマンドパケットを送出する(ステップS112)。このときのQ値は、5種の値のうちの最大値、あるいは、速度変更前の通信速度に対応するQ値とされる。
【0161】
次に、制御部171は、送出した速度変更コマンドパケットに対応する速度変更応答(レスポンス)パケットの受信を監視する(ステップS113)。
【0162】
ステップS113で、速度変更応答コマンドパケットを受信したと判別したときには、制御部171は、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS115)。
【0163】
そして、制御部171は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路110のスイッチ回路114SW1〜114SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS116)。そして、変更後の通信速度でコマンドパケットを送信する(ステップS117)。
【0164】
ステップS117で、コマンドパケットを送出した後には、制御部171は、トランスポンダ200からの、当該コマンドパケットに対する応答(レスポンス)パケットの受信を監視する(ステップS118)。
【0165】
ステップS118で、応答パケットを受信していないと判別したときには、制御部171は、その非受信状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS119)。
【0166】
そして、ステップS119で、応答パケットの非受信状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部171は、ステップS118に戻り、応答パケットの受信を監視する。
【0167】
また、ステップS119で、応答パケットの非受信状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部171は、通信不能状態であることを認識する(ステップS120)。
【0168】
そして、制御部171は、通信処理は終了したか否か判別し(ステップS122)、未だ、終了していないと判別したときには、ステップS111に戻る。また、ステップS122で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0169】
また、ステップS118で、トランスポンダ200からの応答パケットを受信したと判別したときには、制御部171は、トランスポンダ200との間で情報通信を実行する(ステップS121)。
【0170】
ステップS121の後には、ステップS122に進み、通信処理は終了したか否か判別し、未だ、終了していないと判別したときには、ステップS111に戻る。また、ステップS122で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0171】
ステップS111で、通信速度を変更していないと判別したときには、制御部171は、ステップS117にジャンプして、そのときの通信速度でコマンドパケットを送信する。そして、前述したステップS117以降の処理を繰り返す。
【0172】
また、ステップS113で、速度変更応答パケットを受信していないと判別したときには、制御部171は、その非受信状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS114)。
【0173】
そして、ステップS114で、速度変更応答パケットの非受信状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部171は、ステップS113に戻り、速度変更応答パケットの受信を監視する。
【0174】
また、ステップS114で、応答パケットの非受信状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部171は、通信不能状態であることを認識する(ステップS120)。そして、このステップS120以降の処理を繰り返す。
【0175】
<トランスポンダ200での処理動作の流れ>
次に、この第2の実施形態において、上記のリーダライタ100の処理動作に対応するトランスポンダ200での処理動作の流れを、図12のフローチャートを参照して説明する。この図12の処理は、制御部261による制御に従って実行される。なお、この図12の説明では、制御部261は、Q値変更回路266の機能をも有しているとする。
【0176】
先ず、制御部261は、リーダライタ100から送られてくるコマンドパケットの受信を監視する(ステップS211)。このときのQ値は、5種の値のうちの最大値、あるいは、速度変更前の通信速度に対応するQ値とされる。
【0177】
そして、制御部261は、このステップS211で、コマンドパケットを受信したと判別したときには、受信したコマンドパケットは、速度変更コマンドパケットであるか否か判別する(ステップS212)。
【0178】
ステップS212で、受信コマンドパケットは、速度変更コマンドパケットであると判別したときには、制御部261は、速度変更応答パケットを送出する(ステップS213)。そして、制御部261は、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照し、速度変更コマンドパケットで指定された通信速度に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS214)。
【0179】
そして、制御部261は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路210のスイッチ回路214SW1〜214SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS215)。そして、制御部261は、ステップS211に戻り、コマンドパケットの受信を監視する。
【0180】
また、ステップS212で、受信したコマンドパケットが速度変更コマンドパケットではないと判別したときには、制御部261は、リーダライタ100で、ステップS117で送信されたコマンドパケットを受信したと判別して、その応答パケットを送出する(ステップS216)。
【0181】
そして、トランスポンダ200の制御部261は、リーダライタ100との間で情報通信を実行する(ステップS217)。その後、制御部261は、ステップS211に戻り、このステップS211以降の処理を繰り返す。
【0182】
この第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様の作用効果が得られるものである。
【0183】
なお、この第2の実施形態においては、通信速度変更通知を送出するときには、通信速度を低速、例えば最も遅い通信速度とし、Q値もそれに対応する大きい値とするようにしても良い。
【0184】
[第3の実施形態]
上述した第1および第2の実施形態においては、高速通信時にアンテナ共振回路のQ値を下げることにより、従来は困難であったリーダライタ100とトランスポンダ200のアンテナが近接する際の高速通信を行うことが可能となる。
【0185】
しかし、その一方で、Q値が下がると必然的に、通信可能な最大通信距離は短くなってしまう。
【0186】
あるリーダライタ100とトランスポンダ200間の通信において、アンテナ間距離が十分に離れている場合には、Q値を従来に比べて下げなくても通信が可能であることも考えられる。
【0187】
このような場合、第1および第2の実施形態のように、通信速度のみの情報によってQ値を下げてしまうと、通信不能であった近距離において通信が可能となる一方、元々通信可能であった遠距離において通信が行えなくなってしまうと言うトレードオフが生じる可能性がある。
【0188】
ここで、もしも、リーダライタ100およびトランスポンダ200の制御部が互いのアンテナ間距離も検知することができれば、遠距離においてはQ値を高いままに保つなどのより好適なQ値の調整が可能となる。
【0189】
第3の実施形態は、以上の点を考慮したものである。
【0190】
図13に、この第3の実施形態の場合のリードライタ100の構成例のブロック図を示す。また、図14に、この第3の実施形態の場合のトランスポンダ200の構成例のブロック図を示す。
【0191】
図13に示すように、この第3の実施形態の場合のリーダライタ100においては、アンテナ共振回路110と送信アンプ120との接続点に、アンテナ間距離検出回路180が設けられる。そして、このアンテナ間距離検出回路180で検出されたアンテナ間距離の情報が信号処理部170の制御部171に供給される。
【0192】
そして、この第3の実施形態では、制御部171は、通信速度のみではなく、アンテナ間距離によっても、Q値を変更するようにする。
【0193】
このため、この第3の実施形態のリーダライタ100では、メモリ172に記憶されるQ値切り替えテーブル情報が、前述した第1および第2の実施形態とは異なる。すなわち、この第3の実施形態では、通信速度のみではなく、アンテナ間距離によっても、Q値を変更するので、Q値切り替えテーブル情報は、通信速度とアンテナ間距離との組み合わせ毎のQ値からなるものとされる。
【0194】
この第3の実施形態の場合におけるQ値切り替えテーブル情報の例を、図15に示す。
【0195】
この図15の例においては、Q値を切り替える境目(閾値)とされるアンテナ間距離は、0.5mm、6mm、30mm、50mm、100mmの5値とされる。図15の表は、アンテナ間距離が、これらの閾値距離により区切られる複数個のアンテナ間距離範囲であるときの設定Q値を示すものとなっている。
【0196】
図15に示すように、5種類の通信速度の中で遅い通信速度212kbpsと、424kbpsでは、この例では、アンテナ間距離に関係なく、大きいQ値=32が設定される。
【0197】
そして、通信速度848kbpsでは、アンテナ間距離が0.5mmより大きいときには、Q値=32に設定されると共に、0.5mm以下のときには、Q値=24に変更される。
【0198】
また、通信速度1.7Mbpsでは、アンテナ間距離が6mmより大きいときにはQ値=32に設定されると共に、アンテナ距離が6mm以下で0.5mmより大きいときにはQ値=24に、アンテナ距離が0.5mm以下のときには、Q値=16に、変更される。
【0199】
さらに、通信速度3.4Mbpsでは、アンテナ間距離が30mmより大きいときにはQ値=32に設定される。そして、通信速度3.4Mbpsでは、アンテナ距離が30mm以下で6mmより大きいときにはQ値=24に、アンテナ距離が6mm以下で0.5mmより大きいときにはQ値=16に、アンテナ距離が0.5mm以下のときには、Q値=8に、変更される。
【0200】
その他の構成は、図2に示した第1の実施形態のリーダライタ100の場合と全く同様である。
【0201】
次に、トランスポンダ200は、この第3の実施形態においては、図14に示すように、整流回路220の出力端に対してアンテナ間距離検出回路270が設けられた構成とされる。
【0202】
そして、アンテナ間距離検出回路270で検出されたアンテナ間距離の情報が信号処理部260の制御部261に供給される。
【0203】
そして、この第3の実施形態では、制御部261は、通信速度のみではなく、アンテナ間距離によっても、Q値を変更するようにする。
【0204】
このため、この第3の実施形態のトランスポンダ200では、メモリ262に記憶されるQ値切り替えテーブル情報は、例えば図15に示したように、通信速度とアンテナ間距離との組み合わせ毎のQ値からなるものとされる。
【0205】
その他の構成は、図3に示した第1の実施形態のトランスポンダ200の場合と全く同様である。
【0206】
なお、通信プロトコルとして、第2の実施形態の場合のISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルが用いられる実施形態である場合には、前述と同様に、通信速度検知回路265は、設ける必要はない。
【0207】
<アンテナ間距離検出方法の例>
<<キャリア強度を用いる方法>>
リーダライタ100においては、共振特性を持つトランスポンダ(非接触ICカード)が近づくと、自ら発するキャリア出力強度が減少するため、その値を検知することで、トランスポンダに対する相対的なアンテナ間距離変化を検知することができる。
【0208】
ここで、システムの仕様などにより、トランスポンダ(非接触ICカード)の入力インピーダンス値が予め分かっていれば、アンテナ間距離の絶対値も推定可能である。
【0209】
そこで、アンテナ間距離検出回路180では、アンテナ共振回路110の共振電圧を監視して、アンテナ間距離を検出し、その検出出力を信号処理部170の制御部171に供給するようにする。
【0210】
一方、トランスポンダ(非接触ICカード)200においては、キャリアを発生するリーダライタ100が近づくと、整流回路220の出力電圧値が上昇する。そして、システム仕様などで、リーダライタ100の出力キャリアレベルが予め分かっていれば、アンテナ間距離の絶対値も推定可能である。
【0211】
そこで、アンテナ間距離検出回路270では、整流回路220の出力電圧値を監視して、アンテナ間距離を検出し、その検出出力を信号処理部260の制御部261に供給するようにする。
【0212】
<<共振周波数を用いる方法>>
リーダライタ100とトランスポンダ200との間でアンテナ同士が近づくと、アンテナ内を流れる電流の共振周波数が、各々のアンテナ共振回路について予め定められている共振周波数よりも高い方向へずれてくる。この共振周波数のずれ幅を検知することにより、リーダライタ100およびトランスポンダ200は、それぞれ、相手方との間の相対的なアンテナ間距離の変化を検出することができる。
【0213】
そして、システム仕様などで、相手方デバイスが持つアンテナ特性が予め分かっていれば、アンテナ間距離の絶対値も推定可能である。
【0214】
この場合には、アンテナ間距離検出回路180および270のそれぞれは、アンテナ共振回路110および210の共振周波数を弁別する周波数弁別回路で構成し、弁別した周波数に基づいてアンテナ間距離を検出するようにする。そして、検出したアンテナ間距離の情報を、信号処理部170および260の制御部171および261に供給するようにする。
【0215】
<リーダライタ100での処理動作の流れ>
この第3の実施形態におけるリーダライタ100での処理動作の流れを、図16のフローチャートを参照して説明する。この図16の処理は、制御部171による制御に従って実行される。なお、この図16の説明では、制御部171は、Q値変更回路175の機能をも有しているとする。
【0216】
先ず、制御部171は、通信速度を変更したか否か判別する(ステップS131)。ステップS131で、通信速度を変更していないと判別したときには、制御部171は、アンテナ間距離検出回路180の検出出力から、アンテナ間距離が、前述したQ値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したか否か判別する(ステップS132)。
【0217】
ステップS132で、アンテナ間距離がQ値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化してはいないと判別したときには、制御部171は、そのときの通信速度およびQ値のままで、ポーリングコマンドパケットを送信する(ステップS136)。
【0218】
一方、ステップS131で、通信速度を変更したと判別したときには、制御部171は、アンテナ間距離検出回路180の検出出力からアンテナ間距離を認識する(ステップS133)。そして、制御部171は、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度および認識したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS134)。
【0219】
また、ステップS132で、アンテナ間距離が、Q値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したと判別したときにもステップS154に進み、制御部171は、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照し、そのときの通信速度および認識したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する。
【0220】
そして、ステップS134の次には、制御部171は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路110のスイッチ回路114SW1〜114SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS135)。そして、変更後の通信速度でポーリングコマンドパケットを送信する(ステップS136)。
【0221】
ステップS136で、ポーリングコマンドパケットを送出した後には、制御部171は、トランスポンダ200からの応答コマンドパケットの受信を監視する(ステップS137)。
【0222】
ステップS137で、応答コマンドパケットを受信していないと判別したときには、制御部171は、その非受信状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS138)。
【0223】
そして、ステップS138で、応答コマンドパケットの非受信状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部171は、ステップS137に戻り、応答コマンドパケットの受信を監視する。
【0224】
また、ステップS138で、応答コマンドパケットの非受信状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部171は、通信不能状態であることを認識する(ステップS139)。
【0225】
そして、制御部171は、通信処理は終了したか否か判別し(ステップS141)、未だ、終了していないと判別したときには、ステップS131に戻る。また、ステップS141で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0226】
また、ステップS137で、トランスポンダ200からの応答コマンドパケットを受信したと判別したときには、制御部171は、トランスポンダ200との間で情報通信を実行する(ステップS140)。この情報通信の実行には、前述のリクエストサービスコマンドおよびリクエストサービス応答コマンドのやり取りも含まれるものとする。
【0227】
ステップS140の後には、ステップS141に進み、通信処理は終了したか否か判別し、未だ、終了していないと判別したときには、ステップS131に戻る。また、ステップS141で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0228】
<トランスポンダ200での処理動作の流れ>
次に、この第3の実施形態において、上記のリーダライタ100の処理動作に対応するトランスポンダ200での処理動作の流れを、図17のフローチャートを参照して説明する。この図17の処理は、制御部261による制御に従って実行される。なお、この図17の説明では、制御部261は、Q値変更回路266の機能をも有しているとする。
【0229】
先ず、制御部261は、リーダライタ100から送られてくる変調信号を監視する(ステップS221)。そして、制御部261は、前記変調信号を検知したと判別したときには、通信速度検知手段265で検出された通信速度を検知すると共に、アンテナ間距離検出回路270で検出されたアンテナ間距離を検知する(ステップS222)。
【0230】
そして、制御部261は、通信速度が、前に検知した変調信号から検知した通信速度とは異なっているかどうかにより、通信速度が変化したか否かを判別する(ステップS223)。
【0231】
ステップS223で、通信速度が変化したと判別したときには、制御部261は、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度およびステップS222で検知したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS225)。
【0232】
また、ステップS223で、通信速度は変化していないと判別したときには、制御部261は、ステップS222で検知したアンテナ間距離に基づいて、アンテナ間距離が、Q値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したか否か判別する(ステップS224)。
【0233】
このステップS224で、アンテナ間距離が、Q値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したと判別したときには、制御部261は、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照し、そのときの通信速度および認識したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS225)。
【0234】
そして、ステップS225の次には、制御部261は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路210のスイッチ回路214SW1〜214SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS226)。
【0235】
そして、制御部261は、リーダライタ100からのコマンドパケット(ポーリングコマンドパケット)の受信を監視する(ステップS227)。
【0236】
ステップS224で、アンテナ間距離がQ値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化してはいないと判別したときには、制御部261は、ステップS225およびステップS226をバイパスして、Q値を変えることなく、ステップS227に進み、ポーリングコマンドパケットの受信を監視する。
【0237】
ステップS227で、リーダライタ100からのポーリングコマンドパケットを受信していないと判別したときには、制御部261は、その非受信状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS228)。
【0238】
そして、ステップS228で、ポーリングコマンドパケットの非受信状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部261は、ステップS227に戻り、ポーリングコマンドパケットの受信を監視する。
【0239】
また、ステップS228で、ポーリングコマンドパケットの非受信状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部261は、通信不能状態であることを認識する(ステップS229)。そして、制御部261は、ステップS221に戻り、このステップS221以降の処理を繰り返す。
【0240】
また、ステップS227で、リーダライタ100からのポーリングコマンドパケットを受信したと判別したときには、制御部261は、リーダライタ100に対して、ポーリング応答コマンドパケットを送信する(ステップS230)。そして、トランスポンダ200の制御部261は、リーダライタ100との間で情報通信を実行する(ステップS231)。この情報通信の実行には、前述のリクエストサービスコマンドおよびリクエストサービス応答コマンドのやり取りも含まれるものとする。
【0241】
その後、制御部261は、ステップS221に戻り、このステップS221以降の処理を繰り返す。
【0242】
この第3の実施形態によれば、通信速度の変化にのみ応じてQ値を変更するのではなく、リーダライタ100とトランスポンダ200とのアンテナ間距離に応じても、Q値を変更するようにしている。このため、高速の通信速度においても、リーダライタ100とトランスポンダ200とのアンテナ間距離が遠距離の時にはQ値を高いままにすることができ、当該高速の通信速度のときにも、アンテナ間距離が遠距離のときの通信を行えるものである。
【0243】
[第4の実施形態;第3の実施形態におけるアンテナ間距離検出方法の他の例]
この第4の実施形態は、第3の実施形態におけるアンテナ間距離検出方法の他の例を用いる場合である。
【0244】
この第4の実施形態では、リーダライタ100およびトランスポンダ200は、アンテナ間距離検出用の距離検知用センサ、例えば光学センサを備え、この距離検知用センサのセンサ出力に基づいて、アンテナ間距離を検出するようにする。
【0245】
図18に、この第4の実施形態の場合のリーダライタ100の構成例のブロック図を示す。また、図19に、この第4の実施形態の場合のトランスポンダ200の構成例のブロック図を示す。
【0246】
すなわち、図18に示すように、リーダライタ100は、例えば光学センサからなる距離検知用センサ190を備えると共に、信号処理部170に、この距離検知用センサ190のセンサ出力からアンテナ間距離を検出するアンテナ間距離検出回路176を備える。
【0247】
制御部171は、このアンテナ間距離検出回路176で検出されたアンテナ間距離の情報を用いて、上述した第3の実施形態と全く同様にして、Q値の変更処理などを行う。したがって、図13の例におけるアンテナ間距離検出回路180は、この例では、設けられない。
【0248】
また、図19に示すように、トランスポンダ200は、同様に光学センサからなる距離検知用センサ280を備えると共に、信号処理部260に、この距離検知用センサ280のセンサ出力からアンテナ間距離を検出するアンテナ間距離検出回路267を備える。
【0249】
制御部261は、このアンテナ間距離検出回路267で検出されたアンテナ間距離の情報を用いて、上述した第3の実施形態と全く同様にして、Q値の変更処理などを行う。したがって、図14の例におけるアンテナ間距離検出回路270は、この例では、設けられない。
【0250】
この第4の実施形態においても、上述した第3の実施形態と全く同様の作用効果が得られる。
【0251】
なお、上述した第3および第4の実施形態は、第1の実施形態と同様に、フェリカ(FeliCa(登録商標))通信プロトコル仕様の場合に、この発明を適用したものである。しかし、この第3および第4の実施形態は、第2の実施形態の場合におけるISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルでの通信においても、適用可能であることはいうまでもない。
【0252】
[第5の実施形態]
図7に示したように、リーダライタ100とトランスポンダ200との間でやり取りされる通信パケットには、パリティデータが含まれ、リーダライタ100およびトランスポンダ200は、パケット受信時に通信エラーを検知する能力を備える。
【0253】
パリティデータを用いて通信エラーを検知する方法としては、CRCC(Cyclic Redundancy Check Code)を用いたエラー検出、あるいは、ECC(Error Checking and Correcting)コードを用いたエラー検出および訂正を用いることができる。
【0254】
また、通信パケットの同期信号SYNCパターンの一致判定ができたか否かによって通信エラーを検知するようにすることもできる。
【0255】
フェリカ(FeliCa(登録商標))通信プロトコル仕様においては、図8に示したようなコマンドのシーケンス処理(ここではトランザクションと呼ぶ)が実行される。
【0256】
この場合において、リーダライタ100またはトランスポンダ200において、パケット受信時に通信エラーを検知した場合には、そのトランザクションは破棄され、適切なタイムアウト時間の経過後、リーダライタ100からパケットが再送される。
【0257】
この第5の実施形態においては、通信速度およびアンテナ間距離とに応じてアンテナ共振回路のQ値を変更すると共に、通信エラーの状況に応じても、前記Q値を変更するようにする。
【0258】
図20に、この第5の実施形態の場合のリードライタ100の構成例のブロック図を示す。また、図21に、この第5の実施形態の場合のトランスポンダ200の構成例のブロック図を示す。この例の第5の実施形態は、第3の実施形態に適用した場合である。
【0259】
図20に示すように、この第5の実施形態の場合のリーダライタ100においては、図13に示した構成例に加えて、信号処理部170に、通信エラー検出回路177を設ける。
【0260】
また、図21に示すように、この第5の実施形態の場合のトランスポンダ200においては、図14に示した構成例に加えて、信号処理部260に、通信エラー検出回路268を設ける。
【0261】
この通信エラー検出回路177および268は、エラー検知カウンタを備え、パケット受信時に通信エラーを検知する毎に、エラー検知カウンタのカウント値(エラーカウント値)をインクリメントする。
【0262】
そして、その後、連続して通信エラーが検出されたときには、通信エラー検出回路177および268は、そのエラー検知カウンタのエラーカウント値のインクリメントを継続して行う。そして、通信エラー検出回路177および268は、パケットを正常に受信できたときには、エラー検知カウンタのエラーカウント値を「0」にクリアする。
【0263】
そして、この通信エラー検出回路177および268での通信エラー検出結果(エラーカウント値)を制御部171および261に通知するようにする。
【0264】
この第5の実施形態においては、メモリ172および262には、図15に示した第3の実施形態と同様のQ値切り替えテーブル情報が格納されている。
【0265】
そして、制御部171および261は、この第5の実施形態においては、前述した第3の実施形態と同様に、通信速度およびアンテナ間距離に応じてQ値を設定すると共に、通信エラー検出回路177および268からの通信エラー検出結果(エラーカウント値)が閾値を超えた場合には、設定されたQ値を、さらに下げるように変更制御する。
【0266】
すなわち、通信速度やアンテナ間距離が変化していなくても、通信エラー検出回路177および268からの通信エラー検出結果(エラーカウント値)が閾値を超えた場合には、制御部171および268は、設定されたQ値を、さらに下げるように変更制御する。
【0267】
この場合に、制御部171および261におけるQ値の下げ方としては、1段階づつ下げるようにする方法に限られず、2段階以上の複数段階に渡って下げるようにしてもよい。なお、閾値とされるエラーカウント値は、例えば1〜5、好適には3とされる。
【0268】
そして、この実施形態では、Q値を低減させても、引き続き通信エラーが発生する場合には、さらにQ値を下げるようにする。そして、Q値を、最小の設定値に下げても、なお通信エラーが閾値を越えて発生する場合には、制御部171および262は、通信不能な状態と判断するようにする。
【0269】
例えば、図22に示すように、通信速度が3.4Mbpsで、アンテナ間距離が30mmから50mmの範囲内のところで通信を開始した場合、そのときのQ値は、Q値=32と設定される。
【0270】
ところが、この状態において、通信エラー検出回路177および268で検出されたエラーカウント値が閾値を超えた場合には、制御部171および261は、図22の例では、Q値を1段階下げて、Q値=24に変更する。そして、その変更したQ値でも、通信エラー検出回路177および268で検出されたエラーカウント値が閾値を超えた場合には、制御部171および261は、さらに、Q値を1段階下げて、Q値=16に変更するようにする。なお、Q値の下げ方は、1段階ではなく、2段階以上の複数段階であってもよい。
【0271】
この第5の実施形態によれば、以上のようなQ値の制御を行うことにより、リーダライタ100およびトランスポンダ200では、波形歪みの程度が適応等化回路が対応できる範囲になるまで、Q値を自動的に調整することが可能になる。
【0272】
<リーダライタ100での処理動作の流れ>
この第5の実施形態におけるリーダライタ100での処理動作の流れを、図23およびその続きである図24のフローチャートを参照して説明する。この図23および図24の処理は、制御部171による制御に従って実行される。なお、この図23および図24の説明では、制御部171は、Q値変更回路175の機能をも有しているとする。
【0273】
先ず、制御部171は、通信速度を変更したか否か判別する(ステップS151)。ステップS151で、通信速度を変更していないと判別したときには、制御部171は、アンテナ間距離検出回路180の検出出力から、アンテナ間距離が、前述したQ値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したか否か判別する(ステップS152)。
【0274】
ステップS152で、アンテナ間距離がQ値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化してはいないと判別したときには、制御部171は、そのときの通信速度およびQ値のままで、ポーリングコマンドパケットを送信する(ステップS156)。
【0275】
一方、ステップS131で、通信速度を変更したと判別したときには、制御部171は、アンテナ間距離検出回路180の検出出力からアンテナ間距離を認識する(ステップS153)。そして、制御部171は、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度および認識したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS154)。
【0276】
また、ステップS152で、アンテナ間距離が、Q値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したと判別したときにもステップS154に進み、制御部171は、メモリ172のQ値切り替えテーブル情報を参照し、そのときの通信速度および認識したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する。
【0277】
そして、ステップS154の次には、制御部171は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路110のスイッチ回路114SW1〜114SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS155)。そして、変更後の通信速度でポーリングコマンドパケットを送信する(ステップS156)。
【0278】
ステップS156で、ポーリングコマンドパケットを送出した後には、制御部171は、トランスポンダ200から送られてくる変調信号を監視する(図24のステップS161)。
【0279】
ステップS161で前記変調信号を検知していないと判別したときには、制御部171は、その非検知状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS162)。
【0280】
そして、ステップS162で、変調信号の非検知状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部171は、ステップS161に戻り、変調信号を監視する。
【0281】
また、ステップS162で、変調信号の非検知状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部171は、通信不能状態であることを認識する(ステップS170)。
【0282】
そして、制御部171は、通信処理は終了したか否か判別し(ステップS173)、未だ、終了していないと判別したときには、図23のステップS151に戻る。また、ステップS173で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0283】
そして、ステップS161で前記変調信号を検知したと判別したときには、制御部171は、通信エラー検出回路177の出力から、通信エラーが発生したか否か判別する(ステップS163)。すなわち、このステップS161で変調信号を検知したということは、送出したコマンドパケットに対する応答(レスポンス)パケットを受信したことを意味するが、制御部171が、その応答パケットについて通信エラーが発生していないかどうか判別する。
【0284】
このステップS163で、通信エラーは発生していないと判別したときには、制御部171は、通信エラー検出回路177のエラー検知カウンタのエラーカウント値を「0」にクリアする(ステップS171)。そして、制御部171は、応答パケットを正しく受信したことにより、トランスポンダ200との間で情報通信を実行する(ステップS172)。
【0285】
そして、次に、制御部171は、ステップS173に進み、通信処理は終了したか否か判別し、未だ、終了していないと判別したときには、図23のステップS151に戻る。また、ステップS173で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0286】
また、ステップS163で、通信エラーが発生していると判別したときには、制御部171は、通信エラー検知回路177のエラー検知カウンタのエラーカウント値をインクリメントする(ステップS164)。
【0287】
そして、制御部171は、エラーカウント値は閾値以上であるか否か判別し(ステップS165)、閾値以上でなければコマンドパケットを再送し(ステップS169)、その後、ステップS161に戻り、このステップS161以降の処理を繰り返す。
【0288】
また、ステップS165で、エラーカウント値が閾値以上であると判別したときには、制御部171は、エラー検知カウンタのエラーカウント値を「0」にクリアする(ステップS166)。
【0289】
そして、次に、制御部171は、Q値の値は、5種の値のうちの最小値になっているか判別し(ステップS167)、Q値が最小値になっていないと判別したときには、Q値を、この例では1段階小さい値に変更する(ステップS168)。Q値が最大値である場合のように大きいQ値であったときには、2段階以上、下げるようにしても良い。
【0290】
次に、制御部171は、ステップS169に進んで、コマンドパケットを再送し、その後、ステップS161に戻り、このステップS161以降の処理を繰り返す。
【0291】
また、ステップS167で、Q値が最小値になっていると判別したときには、制御部171は、通信不能状態であることを認識する(ステップS170)。
【0292】
そして、制御部171は、通信処理は終了したか否か判別し(ステップS173)、未だ、終了していないと判別したときには、図23のステップS151に戻る。また、ステップS173で、通信処理は終了したと判別したときには、制御部171は、以上の処理ルーチンを終了する。
【0293】
<トランスポンダ200での処理動作の流れ>
次に、この第5の実施形態において、上記のリーダライタ100の処理動作に対応するトランスポンダ200での処理動作の流れを、図25およびその続きである図26のフローチャートを参照して説明する。この図25および図26の処理は、制御部261による制御に従って実行される。なお、この図25および図26の説明では、制御部261は、Q値変更回路266の機能をも有しているとする。
【0294】
先ず、制御部261は、リーダライタ100から送られてくる変調信号を監視する(ステップS241)。そして、制御部261は、前記変調信号を検知したと判別したときには、通信速度検知手段265で検出された通信速度を検知すると共に、アンテナ間距離検出回路270で検出されたアンテナ間距離を検知する(ステップS242)。
【0295】
そして、制御部261は、通信速度が、前に検知した変調信号から検知した通信速度とは異なっているかどうかにより、通信速度が変化したか否かを判別する(ステップS243)。
【0296】
ステップS243で、通信速度が変化したと判別したときには、制御部261は、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照し、変更後の通信速度およびステップS242で検知したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS245)。
【0297】
また、ステップS243で、通信速度は変化していないと判別したときには、制御部261は、ステップS242で検知したアンテナ間距離に基づいて、アンテナ間距離が、Q値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したか否か判別する(ステップS244)。
【0298】
このステップS244で、アンテナ間距離が、Q値切り替えテーブルにおける各閾値を超えて変化したと判別したときには、制御部261は、メモリ262のQ値切り替えテーブル情報を参照し、そのときの通信速度および認識したアンテナ間距離に対応するQ値を認識(取得)する(ステップS245)。
【0299】
そして、ステップS245の次には、制御部261は、認識したQ値となるように、アンテナ共振回路210のスイッチ回路214SW1〜214SWnをオン・オフ制御して、Q値を切り替え変更する(ステップS246)。
【0300】
そして、制御部261は、ステップS241で変調信号を検知したことにより受信したパケットに通信エラーが発生していないかどうかを、通信エラー検出回路268の出力に基づき判別する(図26のステップS251)。
【0301】
このステップS251で、通信エラーは発生していないと判別したときには、制御部261は、通信エラー検出回路268のエラー検知カウンタのエラーカウント値を「0」にクリアする(ステップS260)。そして、制御部261は、コマンドパケットを正しく受信したことにより、リーダライタ100に対して応答(レスポンス)パケットを送信し(ステップS261)、その後、リーダライタ100との間で情報通信を実行する(ステップS262)。そして、図25のステップS241に戻る。
【0302】
また、ステップS251で、通信エラーが発生していると判別したときには、制御部261は、通信エラー検知回路268のエラー検知カウンタのエラーカウント値をインクリメントする(ステップS252)。
【0303】
そして、制御部261は、エラーカウント値は閾値以上であるか否か判別し(ステップS253)、閾値以上でなければ、リーダライタ100から送られてくる変調信号を監視する(ステップS257)。
【0304】
そして、このステップS257で、変調信号を検知したと判別したときには、ステップS251に進み、上述したこのステップS251以降の処理を繰り返す。
【0305】
また、ステップS257で、変調信号を検知していないと判別したときには、制御部261は、その非検知状態が予め定められた一定時間以上経過したか否か判別する(ステップS258)。
【0306】
そして、ステップS258で、変調信号の非検知状態が未だ一定時間以上経過していないと判別したときには、制御部261は、ステップS257に戻り、変調信号の検知動作を継続する。
【0307】
また、ステップS258で、変調信号の非検知状態が一定時間以上経過したと判別したときには、制御部261は、通信不能状態であることを認識する(ステップS259)。そして、制御部261は、ステップS241に戻り、このステップS241以降の処理を繰り返す。
【0308】
また、ステップS253で、エラーカウント値が閾値以上であると判別したときには、制御部261は、エラー検知カウンタのエラーカウント値を「0」にクリアする(ステップS254)。
【0309】
そして、次に、制御部261は、Q値の値は、5種の値のうちの最小値になっているか判別し(ステップS255)、Q値が最小値になっていないと判別したときには、Q値を、この例では1段階小さい値に変更する(ステップS256)。
【0310】
次に、制御部261は、ステップS257に進んで、リーダライタ100からの変調信号(コマンドパケット)を監視し、このステップS257以降の処理を繰り返す。
【0311】
また、ステップS255で、Q値が最小値になっていると判別したときには、制御部261は、通信不能状態であることを認識する(ステップS259)。そして、制御部261は、図25のステップS241に戻り、このステップS241以降の処理を繰り返す。
【0312】
この第5の実施形態によれば、通信エラーのカウント値に応じて、Q値を下げるようにするので、波形歪みの程度が、適応等化回路が対応することできる範囲になるまで、Q値を自動的に変更調整することができる。
【0313】
なお、上述した第5の実施形態は、第3および第4の実施形態のように、通信速度とアンテナ間距離とに応じてQ値を変更する場合に適用したものである。しかし、この第5の実施形態における通信エラーのカウント値に応じてQ値を下げる方法は、第1の実施形態や第2の実施形態の場合にも適用可能であることは勿論である。
【0314】
[第6の実施形態]
前述したように、ISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルでの通信においては、Q値を下げなくても通信可能な低速度において通信を開始し、その後、必要に応じて高速通信へ移行してゆくことが可能である。この第6の実施形態は、このようなプロトコルの特徴を用いる例である。
【0315】
そして、この場合に、低速度の通信において、通信を行ったときに、互いのデバイスの非接触通信の能力や特性など、それぞれのデバイス仕様についての情報をやり取りすることができる。例えば、トランスポンダ200が無電源非接触カードか、携帯電話端末などに組み込まれた電源を備えるトランスポンダか、などの情報をやり取りする。そして、この実施形態では、デバイス仕様に応じて、複数個のQ値切り替えテーブル情報を備えておくようにする。
【0316】
すなわち、この実施形態の場合のリーダライタ100およびトランスポンダ200のそれぞれは、通信の相手のデバイス仕様に応じて異なる複数個のQ値切り替えテーブル情報を、メモリに記憶しておく。
【0317】
そして、この第6の実施形態においては、図27(A)に示すように、先ず、リーダライタ100とトランスポンダ200との間で低速通信を実行して、予め、相手デバイスを特定するようにする。
【0318】
次に、高速通信に移行するようにするが、その時に、図27(B)に示すように、リーダライタ100とトランスポンダ200のそれぞれは、複数のQ値切り替えテーブルの中から、特定した相手デバイスにとって最適なものを選択するようにする。
【0319】
そして、当該選択したQ値切り替えテーブルを用いたQ値の切り替え処理としては、上述した第2の実施形態〜第5の実施形態において、ISO14443−4や、NFCIP−1トランスポートプロトコルに対応した例を行うようにする。
【0320】
この第6の実施形態においては、高速通信開始前に、リーダライタ100およびトランスポンダ200の制御部171および261が、相手デバイスが何であるかを特定できているので、アンテナ間距離などを検知する上でも有用である。
【0321】
[その他の実施形態および変形例]
以上の実施形態の説明では、リーダライタ100とトランスポンダ200とのいずれも、Q値の変更機能を備えるようにしたが、リーダライタ100とトランスポンダ200との一方のみがQ値の変更機能を持つようにしてもよい。
【0322】
特に、トランスポンダ200が電源を有しない非接触ICカードの場合には、製造コストやCPUの動作速度の制約などの理由から、Q値の変更機能を設けない場合が考えられるので、その場合には、リーダライタ100のみがQ値の変更機能を持つことになる。
【0323】
また、上述の実施形態では、アンテナ共振回路110および210におけるQ値の切り替え回路は、複数個の抵抗をスイッチでオン・オフする構成としてが、Q値の切り替え回路は、これに限られるものではないことはいうまでもない。
【0324】
例えば、図28(A)に示すような電圧制御可変抵抗マルチプライアを用いて、制御電圧(コントロール電圧)Vcにより、連続的に抵抗値を変更することにより、Q値を連続的に変更することもできる。
【0325】
この電圧制御可変抵抗マルチプライアは、アンプ400を用いて、入力側からの見かけの抵抗値Reを、コントロール電圧Vcにより変更する回路である。
【0326】
なお、図28(B)は、図28(A)の電圧制御可変抵抗マルチプライアにおけるコントロール電圧Vcに対する抵抗値の特性を示す図である。
【0327】
また、上述の実施形態では、トランスポンダ200は、非接触ICカードの場合を例にして説明したが、トランスポンダ200は、携帯電話端末など、種々のデバイスが備えるものとすることができる。
【0328】
この場合、携帯電話端末に格納されている画像情報を、リーダライタ100側に、高速で伝送するような使用態様が考えられ、この発明は、そのような高速通信の場合に好適である。
【0329】
さらに、図29に示すように、携帯電話端末500A,550Bのそれぞれに、リーダライタ100の機能と、トランスポンダ200の機能との両機能を設けるようにすることもできる。
【0330】
この場合には、一方の携帯電話端末に格納されている画像情報を他方の携帯電話端末に高速に伝送するようにすることができる。
【符号の説明】
【0331】
100…リーダライタ、200…トランスポンダ、110,210…アンテナ共振回路、171,261…制御部、172,262…メモリ、174,264…適応等化回路および復調回路、175,266…Q値変更回路、176,180,267…アンテナ間距離検出回路、177,268…通信エラー検出回路、265…通信速度検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方と電磁結合して通信をするためのコイルを備えるアンテナ共振回路と、
前記アンテナ共振回路のQ値を変更する変更手段と、
予め用意されている複数の通信速度のうちの一つの通信速度で、前記アンテナ共振回路を通じて、前記相手方とデータ送受信するように制御すると共に、前記通信速度が速いほど、前記Q値を小さくするように前記変更手段を制御する制御手段と、
を備える非接触通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信装置において、
前記アンテナ共振回路を通じてキャリア信号に情報が重畳された受信信号を受け、前記受信信号の包絡線変化を解析して前記情報を含む検波信号を生成する検波部と、
前記検波信号に対する補正処理を実行し補正検波信号を出力する等化処理部と、
を備え、
前記等化処理部は、デジタルフィルタで構成される適応等化手段で構成される
非接触通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非接触通信装置において、
前記制御手段は、前記複数の通信速度のうちから選択した前記一つの通信速度を順次に変更する機能を備えると共に、前記相手方から応答が返ってきたときの通信速度で固定して、その固定した通信速度で前記データ通信を行なう
非接触通信装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の非接触通信装置において、
前記制御手段は、前記複数の通信速度のうちの一つの通信速度を通知する機能を備えると共に、前記通知に対して応答が返ってきたときの通信速度で、前記データ通信を行なう
非接触通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触通信装置において、
前記制御手段は、前記複数の通信速度のうちの一つの通信速度を通知するときには、遅い通信速度を選択すると共に、前記Q値を大きくするように前記変更手段を制御する
非接触通信装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の非接触通信装置において、
前記相手方からのデータの通信速度を検知する通信速度検知手段を備え、
前記制御手段は、前記通信速度検知手段で検知した前記通信速度に応じた前記Q値にするように前記変更手段を制御する
非接触通信装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2または請求項6のいずれかに記載の非接触通信装置において、
前記相手方との通信距離を検知する距離検知手段を備え、
前記制御手段は、前記距離検知手段で検知した距離が短いほど、前記Q値を小さくするように前記切替手段を切り替え制御する
非接触通信装置。
【請求項8】
請求項1、請求項2、請求項6または請求項7のいずれかに記載の非接触通信装置において、
通信エラーを検知する通信エラー検知手段を備え、
前記制御手段は、前記通信エラー検知手段で検知された前記通信エラーが閾値を超えたときに、前記Q値を小さくするように前記切替手段を切り替え制御する
非接触通信装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の非接触通信装置において、
前記複数の通信速度と、各通信速度のときのQ値との対応テーブル情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御手段は、前記記憶部の前記対応テーブル情報を参照して、前記Q値の変更制御を実行する
非接触通信装置。
【請求項10】
請求項7に記載の非接触通信装置において、
前記相手方との通信距離と、前記複数の通信速度と、前記通信距離と前記通信速度との組み合わせのときのQ値との対応テーブル情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御手段は、前記記憶部の前記対応テーブル情報を参照して、前記Q値の変更制御を実行する
非接触通信装置。
【請求項11】
相手方と電磁結合して通信をするためのコイルを備えるアンテナ共振回路と、前記アンテナ共振回路のQ値を変更する変更手段とを備える非接触通信装置における非接触通信方法において、
予め用意されている複数の通信速度のうちの一つの通信速度で、前記アンテナ共振回路を通じて、前記相手方とデータ送受信するように制御すると共に、前記通信速度が速いほど、前記Q値を小さくするように前記変更手段を制御する
非接触通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−10159(P2011−10159A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153219(P2009−153219)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】