説明

非接触ICカードの製造方法

【課題】表裏基材シートに非接触IC部材を搭載したアンテナシートを挟み、平滑プレス機によってプレスした際の、シート積層体の端部からの一部接着剤の流れ出しを防止し、シート積層体の端部付近の製品の厚さ精度を確保する。
【解決手段】表基材シート,接着剤,非接触ICカード部材を搭載するアンテナシート,接着剤,裏基材シートが順次重ね合わせられ、前記表基材シートと前記裏基材シートのそれぞれ表出する印刷面が平滑な金属板54で挟み込まれ、加圧されて非接触ICカードのシート積層体15が積層される非接触ICカードの製造方法において、前記シート積層体15を挟む金属板54の前記表基材シート及び前記裏基材シート面に対向する面が、シート積層体の製品領域を内包する閉じられた形状の枠55を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードの製造方法に関し、詳しくは、非接触ICカードの表裏基材シートのそれぞれに湿気硬化型ホットメルト接着剤を部分的に塗布し、前記表裏基材シートの接着剤塗布面間に非接触IC部材を搭載したアンテナシートを挟み、前記ホットメルト接着剤を硬化させてそれぞれのシートを接着させる非接触ICカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、システムの維持管理が容易な非接触ICカードが、交通機関のゲートや、ビルのエントランス等で利用されるようになってきている。
前記交通機関などのゲートで使用される非接触ICカードは、カードにアンテナとアンテナに接続されたICチップを内包させ、ICカードのアンテナと通信端末とを無線で交信させて、定期券として利用したり、ICチップに記録された金額から使用された料金を差し引き残額を記録してプリペイドカードとして利用している。残額がなくなるとリチャージャーにより金額を補填し、繰り返し使用できるようになっている。
【0003】
非接触ICカードは、多くの場合ラミネート方式や樹脂充填方式によって作製される。
しかし、ラミネート方式ではICチップを格納するための貫通孔をICカードの内部に設けるためにICチップの厚みの調整が難しいなどの問題や、工程数が多く手間がかかるという問題や、何枚ものシートを積層するためにICカードの製造コストが高くなるという問題があった。
また、樹脂充填方式は、UV樹脂等を使用するためにUV光を透過する透明な基材を使用する必要があり、出来上がったICカードは少なくとも片方のカード面が透明な状態に仕上がってしまうなどの問題や、充填後の樹脂の硬化により凹凸が生じて良好なICカードの平面性が得られないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、ICチップ等が搭載されたアンテナシートを表裏のオーバーシート間に挟んで、ICチップの周辺に生じる空隙にホットメルト樹脂を充填するICカードの製造方法が提案されている。
しかし、この方法では、使用される材料の軟化温度より使用されるホットメルト樹脂の溶融温度が低くなくてはならないため、耐熱性が要求されるICカードには対応できなかった。
このような課題を解決するために反応型ホットメルト接着剤を充填して使用する製造方法が提供されている。この製造方法では、カードを構成する表裏基材シートなどを接着させた後で反応型ホットメルト接着剤を注入して硬化させるため、ICカードの耐熱温度を接着加工温度より高くすることができる。ここで使用される反応型ホットメルト接着剤は、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーを主成分とし、このイソシアネート基が水分と反応して活性化し、さらに、プレポリマーと反応して架橋構造を形成する所謂湿気硬化型接着剤である。
【0005】
そこで、本願出願人は先の出願(例えば、特許文献1参照)で、充填樹脂の塗布量を調整して平面性を確保することを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−282900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先の出願(特許文献1の発明)では、表裏基材シートに接着剤を塗布し、固化させた後に非接触IC部材を搭載したアンテナシートを挟み込み、前記接着剤を加熱して接着剤を溶融させた後、平滑プレス機によってプレス、冷却を行って成型すると、図5のように、プレス時にシート積層体の端部から一部接着剤が流れ出し、シート積層体の端部付近の製品の厚さ精度が確保できないという課題が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の非接触ICカードの製造方法の第一の態様は、表基材シート,接着剤,非接触ICカード部材を搭載するアンテナシート,接着剤,裏基材シートが順次重ね合わせられ、前記表基材シートと前記裏基材シートのそれぞれ表出する印刷面が平滑な金属板で挟み込まれ、加圧されて非接触ICカードのシート積層体が積層される非接触ICカードの製造方法において、前記シート積層体を挟む金属板の前記表基材シート及び前記裏基材シート面に対向する面に、シート積層体の製品領域を内包する閉じられた形状の枠を介して積層されることを特徴とするものである。
【0009】
また、第二の態様は、第一の態様において、枠は、50〜250μmの厚さの耐熱性を有するプラスチック、または、金属で形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
1)第一の態様のように、表基材シート,接着剤,非接触ICカード部材を搭載するアンテナシート,接着剤,裏基材シートが順次重ね合わせられ、前記表基材シートと前記裏基材シートのそれぞれ表出する印刷面が平滑な金属板で挟み込まれ、加圧されて非接触ICカードのシート積層体が積層される非接触ICカードの製造方法において、前記シート積層体を挟む金属板の前記表基材シート及び前記裏基材シート面に対向する面に、シート積層体の製品領域を内包する閉じられた形状の枠を介して積層されることによって、従来の課題であったシート積層体の周辺部の不良品を減少させることができ、また、シート積層体の端面で金属板が曲がることによって再利用できなかったという課題を解消することができた。
2)また、第二の態様のように、第一の態様において、枠は、50〜250μmの厚さの耐熱性を有するプラスチック、または、金属で形成されることによって、アンテナシートに搭載する非接触ICカード部材、及び、枠材を貼り合わせる接着材料に対応させて厚さを調整することができ、良品率を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の非接触ICカードの製造方法の一例について説明するための図である。
【図2】本実施形態の非接触ICカードの製造方法の、積層工程の一例について説明するための図である。
【図3】シート積層体の積層前の状態の一例について説明するための図である。
【図4】シート積層体、金属板、枠について説明するための図である。
【図5】本実施形態の、平滑プレス機によるプレス成型が完了した状態について説明するための平滑プレス機の断面の一例を示す図である。
【図6】従来の平滑プレス機によるプレス成型が完了した状態について説明するための平滑プレス機の断面の一例を示す図である。
【図7】本実施形態の非接触ICカードの製造方法により作製された非接触ICカードの断面の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の非接触ICカードの製造方法について図1を用いて説明する。
図1は、平滑プレス機における上下金属板54とシート積層体15の間に本実施形態の枠55を介在させた断面の一例について示した図である。
シート積層体15は図3に示すように表基材シートに塗布された接着剤11a及び裏基材シートに塗布された接着剤13aが、図に示すように表基材シート11及び裏基材シート13の内側に形成されている。多くの場合、アンテナシート12は、表基材シート11及び表基材シート13と略同一の大きさに設定される。
【0013】
表基材シート11及び裏基材シート13,アンテナシート12が図3に示すように重ね合わせられ、仮貼りされて、シート積層体15として上下の金属板54に挟まれてセットされる。
上下の金属板54には、シート積層体15に接する面に枠55が固定されて形成される。
上下の金属板54の外側には板紙やクロスなどのクッション材53が挟み込まれて平滑プレス機105の圧縮台に載せられる。
【0014】
図2を参照して、図1に示す、平滑プレス機105によるプレス成型が、一連の非接触ICカード製造工程の流れの中でどの様な役割を果たしているかについて説明する。
積層工程では図2に示すように、まず、積層装置100のシート供給部101からシート積層体15を順次供給する。
供給されたシート積層体15は、ホットメルト接着剤が溶融する80°Cから100°Cの温度に加熱された複数対のゴムローラ102(以下、ゴムローラ部ともいう)の間を通過させる。
この工程で、ゴムローラ102の上下の間隔は、規定のカード厚みよりは、狭い間隔(500μm〜700μm程度)に設定されている。ゴムローラ部の前後のローラ間隔は、1組のシート積層体15を2以上のゴムローラ対で保持する間隔に設定されている。
ゴムローラの径は、小さ過ぎると線接触に近くなり、均一な圧縮が困難になる。したがって、ローラ径は、70mmから120mm程度になっている。
ゴムローラで加熱しながら移動させる理由は、シート積層体の接着剤が溶融する過程でシート間のエア残りを少なくするためである。
シート間の空気は、過熱されたゴムローラで軽くしごかれ、シート積層体15の末端(ゴムローラ間を移動するシート積層体の後端)から押し出されて除去される。
【0015】
次に、シート積層体15は、図2に示す金属ローラ103(以下、金属ローラ部ともいう)に受け継がれる。シート積層体15は、一定温度に保たれた3対の金属ローラ103間を通過する。
前述のゴムローラ部102が第一積層部という位置づけであるのに対し、金属ローラ部103は第二積層部という位置付けで、上下の金属ローラ間を通過させることによって接着剤の斑が除去され、シート積層体の厚みが一定に調整される。
シート積層体15からしごき出された余分の接着剤は、シート積層体15の後ろの端部にしごき出される。シート積層体15の端部には、押し出された接着剤を留めるための余分な空間が設けられており、しごき出された微量の接着剤は、シート積層体15の端部に留まる。接着剤は塗布量が調整されており、しごき出された接着剤が金属ローラ等に付着することはない。
シート積層体15の最後の図柄部分が通過した後、上下ローラ間の間隔が開いて余分な溶融接着剤をシート積層体15の外にはみ出さないようにすることもできる。
【0016】
金属ローラ径を設定するに当たってはゴムローラと同様の配慮が必要である。
金属ローラの望ましいローラ径は、ゴムローラ径より大き目の120mmから200mm程度とすると、シート積層体15の厚さを均一にする効果がより高くなる。金属ローラ103は、シート積層体15をニップする際にゴムローラと異なり、ローラ径が変形しないためにシート積層体15の厚さを均一にするという意味で重要となる。
金属ローラ103の上下間隔は、完成した非接触ICカードの規定厚み寸法より小さく設定する。これは、シート積層体15がローラを通過した後、接着剤の弾性成分の効果で厚みが増加するからである。複数対の金属ローラ間を通過したシート積層体15は、所定時間保温ゾーン104に留まる。保温ゾーン104における保温温度は、65°C〜90°Cの範囲に設定されている。
【0017】
保温ゾーン104に所定時間留まったシート積層体15は、平滑プレス機(以下、平滑プレス部ともいう)105で冷却される。
この工程は、第三積層部という位置付けで、後述する鏡面金属板の間にシート積層体15を1セットずつ挟み、加圧しながらシート積層体15の表裏基材シートの表出面を平滑化する。
プレス圧が強すぎると非接触ICチップを破損するため、シート積層体15の面積(多面付けされた表裏基材シートの表面積)に対して、0.1MPa〜0.2MPa 程度で加圧する。
図示しないが、シート積層体15は、平滑プレス機105の圧縮台、固定台に通された水によって、保温ゾーン104における65°C〜90°Cから緩やかに冷却され、20°C程度となる。
【0018】
平滑プレス後のシート積層体を恒温、恒湿状態で所定時間保存して接着剤(湿気硬化型ホットメルト)の硬化と脱気を行う。
平滑プレス直後は、接着剤は完全には硬化していないので、恒温、恒湿状態で所定時間放置し、硬化の促進と発生した二酸化炭素ガスを脱気させる。
平滑プレス後のシート積層体を複数枚重ね合わせ、48時間程度放置する。放置時の温度は25°C〜30°C程度が好ましい。
放置時の相対湿度は40%〜60%、より好ましくは、45%〜55%である。接着剤が湿気硬化型ホットメルトであるために硬化のために適度な湿気が必要だからである。空気中の湿気は、シート積層体の側面及び表裏基材シート表面から吸収され、発生する炭酸ガスも同様、シート積層体の側面及び表裏基材シート表面から脱気される。
ICカードを構成する基材の厚みにもよるが、1枚のICカードに対して、1g〜3g程度の接着剤が塗工され、この接着剤から発生する二酸化炭素ガスの量は6cm3〜18cm3程度である。
ICカードの基材として使用されるPET−Gの二酸化炭素ガスの透過率は低く、15ml/m2・24h・atm程度である。
前述の接着剤から発生する微量のガスは24〜48h(時間)程度の放置時間で脱気することができる。
【0019】
硬化、脱気が完了した多面付けシート積層体15は、「裁断工程」で個々のカードに打ち抜かれる。
さらに外観検査や通信性能等の検査工程を経て非接触ICカードが完成する。
【0020】
図7を一部参照して、非接触ICカードの一例について説明する。
図7に示すように、非接触ICカード1は表基材シート11、裏基材シート13、アンテナシート12がホットメルト接着剤11a、13bで積層された構造になっている。
アンテナシート12は、絶縁性プラスチック基材面にループ状のアンテナ2が形成され、非接触ICカード部材として非接触通信用ICチップ3を搭載し、前記アンテナ2に接続されたものである。
非接触ICカード1は、カード厚みをISOで規定する0.76mm±0.08mmとなるように仕上げる。
カード表面には接続端子がなく、カード基体内に埋設された非接触ICチップ3及びこれに接続されたアンテナ2により外部装置と交信する。
表基材シート11,裏基材シート13,アンテナシート12,接着剤11a,13aはカードの断面に表出している。
【0021】
図3、図4を一部参照して、図2のシート積層体15を構成する表裏基材シート、アンテナシートの製造方法の一例について説明する。
まず、表基材シート11に、アプリケータを使用して湿気硬化型ホットメルト接着剤11aを流動状態で塗布し、その後、室温に戻して接着剤を一旦固化させる。
図4に示すように、表基材シート11は、予め必要な図柄110が多面付けで印刷されている。
多面付けとは、表基材シート11の表出面に縦、横複数の図柄が面付けされた状態を意味する。
図示してないが、必要により磁気テープも転写される。
裏基材シート13には、表基材シート11と同質の基材が使用される。
【0022】
表裏基材シートの材質には、近年、環境にやさしいポリ乳酸,非晶質ポリエステル(PET−G)などが使用される。
本実施形態では、接着剤13a(図示しないが、接着剤11aも同様)として、ホットメルトタイプの湿気硬化型のウレタン樹脂を使用する。
湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂は、空気中の水分を吸収して鎖延長反応を起こし、硬化反応中に炭酸ガスを発生するという特徴がある。
表裏基材シートへの接着剤形成は、接着剤であるホットメルト樹脂を90°C〜130°C程度に加温して流動状態にし、ダイコータ等のヘッドから所定量流出させて均一に塗布する。
【0023】
表裏基材シート11,13の厚さ、接着剤13a(図示しないが、接着剤11aも加算される)の厚さ、ICチップを搭載したアンテナシート12の厚さが加算されてカードの全体厚になる。この時に、接着剤の余分が極力生じないように接着剤の厚さが設定される。
接着剤の塗布厚は、少なくとも、アンテナシート12に搭載されるICチップ(図示せず)の厚さより厚目に設定される。
なお、表基材シート11の厚さに前述の接着剤11aの厚さを加えた合計厚さと、裏基材シート13の厚さに接着剤13aの厚さを加えた合計が、ほぼ等しくなるようにすると反りの少ない非接触ICカードが得られる。
接着剤は塗布された後、室温で数秒〜数十秒間曝して冷却されるとタック性を失った状態になる。
表基材シートと同様、図柄又は文字、罫線が印刷された裏基材シート13に、接着剤13aを流動状態で塗布し、室温に放置して接着剤を固化させる。
表出面に磁気テープを形成有する場合もある。
【0024】
前述の表裏基材シートは図柄、文字、罫線印刷面を保護するために透明の樹脂シートでラミネートされている場合や、熱可塑性の樹脂で被覆される場合がある。
【0025】
表裏基材シート11,13の接着剤塗布面を内側にして対向させ、その間に、アンテナ及び非接触ICチップを搭載したアンテナシート12を挟んで位置合わせを行い、重ね合わせ、必要に応じて各シートを固定するための仮貼りを行う。仮貼りとは、重ね合わせたシート相互間の位置関係が、前述の製造工程でずれないように、表裏基材シート11,13とアンテナシート12をカード図柄のない外周部分でスポット的に仮止めする作業である。前述の各シートを仮止めした状態がシート積層体15である。
仮貼りは超音波又は加熱ヘッドにより行う。接着剤による仮接着であっても良い。
仮貼りでは、少なくとも図2におけるシート供給部101のシート積層体15の進行方向の先端と側端部の3箇所を止める。
【0026】
図5において、圧縮台52は油圧又はカムによって前述のクッション材53と金属板に挟まれたシート積層体15を固定台の方向に押し上げる。
その結果、上下の枠55が、表裏基材シート11,13の端部を変形させながら押しつぶし、表基材シート11及び裏基材シート13をアンテナシート12の面まで到達させる。
前述のようにシート積層体15は、保温ゾーンで加温(65°C〜90°C)された温度で平滑プレス部105に移動させられるため、接着剤11a,13aは加圧されて、枠55でつぶされたシート積層体15の端部(図5に示す左右端部)に向かって移動する。接着剤11a,13aは前述のように、所定量(カードの総厚の1/2から内包物と基材シートの厚さを差し引いた量に接着剤の冷却後の体積収縮分を加味して計算された量)塗布されているために、枠55の外にはみ出すことなく、図5に示す変形したシート積層体15の形状で固化する。
【0027】
図6で判るように、従来の製造方法では平滑プレスの圧縮台を上昇させシート積層体15を加圧していくと、図3に示す完全に固まってはいない状態の接着剤11a,13aが加圧されて変形し、表裏基材シート11,13とアンテナシート12の(長辺、短辺方向に設けられた)空間部に向かって移動を始め、圧縮台52、固定台51に通された水によって冷却されて固化する。その間に表裏基材シート11,13とアンテナシート12の間に設けられた空間部の表裏基材シート11,13が、クッション材53に加圧されて、図6に示すようにシート積層体の製品領域に及んで接着剤の厚さが薄い部分が広がってゆく。その結果多面付けされた積層体の端部付近の製品の厚さが、接着剤の流動によって一部設定より薄い部分を有するカードとなる。
【0028】
前述に対して、本実施の形態では、前述のように枠55によって接着剤の出口を塞いでしまうために枠55の内側の範囲内で接着剤の移動を止めることができる。
図7で説明したように、非接触ICカード1は表基材シート11、裏基材シート13、アンテナシート12がホットメルト接着剤11a、13bで積層された構造になっている。
非接触ICカードの、例えば、搭載される非接触ICカード部材が変わると、アンテナ2の面積や、搭載される非接触ICカード部材体積が異なってくるためにアンテナシート12の厚さを厚くしたり薄くしたりする。アンテナシート12の厚さを厚くした場合、枠55の厚さを薄くして非接触ICカード全体の仕上がりをISOに規定された厚さ(0.76mm±0.08mm)に準拠させる。その際に金属板に枠材を貼り付けた状態で枠の高さ(厚さ)を50μm〜250μmの範囲で変化させて対応させる。
枠55には、耐熱性を有するプラスチックテープや、金属を使用する。
【0029】
(材料、材質に関する実施例)
1)枠、枠固定のために使用される材料
枠材として市販の幅5〜25mm、厚さ50〜250μmのSUS,銅,真鍮,アルミニウム等の金属板、又はポリプロピレン,ポリエステル,アクリル,ABS,ポリイミド,ガラスエポキシ等のプラスチックフィルムから選択し使用する。
上記枠は、最初から固定材料を伴っていても、別々に用意してもよい。
枠を固定材料で固定する場合は、均一な厚さが得られる耐熱性の両面粘着テープ、例えば、日東電工(株)製の耐熱両面テープ「No.5919ML」,「No.5915」(いずれも粘着部の厚さが、50μm)等を使用する(接着剤は、前記に拘るものではない)。
また、上記固定材料を溶接で固定してもよい。
2)接着剤の材料例
表裏基材シートに塗布されるホットメルト接着剤として、例えば、空気中等の水分によって架橋硬化するイソシアネート基末端プレポリマーに各種の添加剤、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、オレフィン樹脂等)、粘着性付与剤(例えば、ジメチルフタレート等)、酸化防止剤(例えば、フェノール系酸化防止剤等)および触媒(例えば、ジブチルチンジラウリレート等)等を適宜配合した反応型ポリウレタンホットメルト樹脂を使用する。
市販されている湿気硬化型のホットメルト接着剤としては、例えば、住友スリーエム社製の「TEO30」や、「TE100」,日立化成ポリマー社製の「ハイボン4820」,ヘンケル社製の「Macroplast QR3460」,積水化学工業(株)製の「エスダイン2013MK」等を使用する。
3)表裏基材シート
表裏基材シートとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン,ポリアミド,ポリ塩化ビニル,ポリカーボネート,ポリ乳酸等の合成樹脂が使用でき、表裏基材シートの厚みは、100〜250μmの範囲のものが好ましい。
なお、使用される材料、材質に関しては上記に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
非接触ICカード、接触非接触両用型ICカードなどの製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 非接触ICカード
2 アンテナ
3 非接触ICカード用ICチップ,ICチップ
11 表基材シート
11a 接着剤
12 アンテナシート
13 裏基材シート
13a 接着剤
15 シート積層体
51 固定台
52 圧縮台
53 クッション
54 金属板
55 枠
100 積層装置
101 シート供給部
102 ゴムローラ,ゴムローラ部
103 金属ローラ,金属ローラ部
104 保温ゾーン
105 平滑プレス機,平滑プレス部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表基材シート,接着剤,非接触ICカード部材を搭載するアンテナシート,接着剤,裏基材シートが順次重ね合わせられ、前記表基材シートと前記裏基材シートのそれぞれ表出する印刷面が平滑な金属板で挟み込まれ、加圧されて非接触ICカードのシート積層体が積層される非接触ICカードの製造方法において、前記シート積層体を挟む金属板の前記表基材シート及び前記裏基材シート面に対向する面に、シート積層体の製品領域を内包する閉じられた形状の枠を介して積層されることを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触ICカードの製造方法において、
枠は、50〜250μmの厚さの耐熱性を有するプラスチック、または、金属で形成されることを特徴とする非接触ICカードの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191840(P2011−191840A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55370(P2010−55370)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】