説明

非接触ICラベルおよび撮影装置、非接触ICラベル管理システム

【課題】非接触ICラベルにおいて、偽造ICチップを内装して作製した偽造非接触ICラベルであっても、そのICラベルが偽造品であることが正確に判断できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】外部と非接触で通信可能なICチップを有する非接触ICラベルであって、透明性を有するラベル基材と、前記ラベル基材の下面に設けられた光学変化デバイスと、前記光学変化デバイスの下面に設けられてアンテナとして機能する導電層と、前記ICチップと電気的に接続された接続層とを備え、さらに前記導電層と前記接続層との間にあってこれらを静電容量結合させるための絶縁層と、可視光を吸収し赤外光を透過する隠蔽層とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な視覚効果を呈する光学変化デバイスを備え、外部のデータ読取装置との間で非接触でデータの送受信ができる非接触ICラベルと、その非接触ICラベルの画像を撮影する撮影装置と、非接触ICラベルの真偽判定を行うための管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小売店やレンタル店等における商品管理に、ICチップとアンテナとを備えた非接触ICラベルが使用されている。これは、非接触ICラベルを、管理する商品を被接着体として取り付け、専用のデータ読み書き装置でICチップに格納されたデータを読み書きし、商品の出入庫管理、在庫管理、貸し出し管理等を行うものである。ICチップを備えている為、商品コードだけでなく、入荷日、担当者等の豊富な情報を商品と一体で管理することができる。
【0003】
また、非接触ICラベルが普及するにつれ、非接触ICラベルに光学変化デバイス(optical variable device:以下、「OVD」と称する。)を組み合わせることが期待されている。OVDとは、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できるホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより見る角度により色の変化を生じる多層薄膜の総称である。
これらOVDは立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるため、視覚的に優れた装飾効果を有しており、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。
【0004】
さらに、OVDは高度な製造技術を要することから偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等にも利用されている。
【0005】
上述の非接触ICラベルのデータ読み書き機能とOVDの偽造防止機能や装飾効果を組み合わせることによって、より高レベルの偽造防止効果を実現したり、偽造防止効果又は装飾効果と商品管理機能を併せ持つラベルを構成したりすることができる等の利点がある。
【0006】
一例として、ホログラム加工を施した金属薄膜の一部をエッチング、レーザ照射などにより除去し残った導電性金属部分をアンテナパターンとした非接触型データ送受信体が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0007】
また、ホログラム加工を施したパターン状金属薄膜と、この金属薄膜上に絶縁層を介してICチップとICチップに接続されたアンテナ層(接続層)を設け、アンテナ層(接続層)と金属薄膜を容量結合で電気的に接続することでアンテナ層と金属薄膜が共同して一つのアンテナとして機能し良好な通信が可能となるRFID情報媒体が提案されている。(例えば、下記特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−42088号公報
【特許文献2】WO2008/038672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の技術あるいは前記特許文献1および特許文献2に記載の技術のいずれにおいても、非接触ICラベルにおいて、核となるICチップそのものが偽造されてしまう可能性があった。
このようなことが起こった場合、既に出回っている正規品ラベルに搭載されたICチップの固有の識別情報(ユニークID)が読み取られてしまい、この読み取った識別情報を持つ偽造ICチップが大量に複製されることを意味し、そのために、この識別情報で非接触ICラベルの真贋判定をしていた従来の仕組みが崩壊してしまうという大きな課題があった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触ICラベルにおいて、偽造ICチップを内装して作製した偽造非接触ICラベルであっても、そのICラベルが偽造品であることが正しく判断できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明の請求項1に係る非接触ICラベルは、
外部と非接触で通信可能なICチップを有し、
透明性を有するラベル基材と、前記ラベル基材の下面に設けられた光学変化デバイスと、前記光学変化デバイスの下面に設けられてアンテナとして機能する導電層と、前記ICチップと電気的に接続された接続層とを備え、
さらに前記導電層と前記接続層との間にあってこれらを静電容量結合させるための絶縁層と、可視光を吸収または反射し、かつ赤外光を透過する隠蔽層とを備えたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、ラベル基材が透明性を有しているため、上面(ラベル表面)側から見ても基材の下の光学変化デバイスやその下の導電層等が透けて見え、さらに可視光を吸収または反射しかつ赤外光を透過する隠蔽層を備えることによって、隠蔽層の下にICチップがある場合には、可視光では見えないが赤外線をラベル表面から照射することによって接続層やICチップの形状が確認可能となる。
【0013】
本発明の請求項2に係る非接触ICラベルは、
前記接続層が導電性ペーストインキ材料を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3に係る非接触ICラベルの撮影装置は、
非接触ICラベルのICチップに記憶された所定のデータを読み取るデータ読取機能と、赤外光ランプおよび赤外光カメラとを有し、前記データ読取機能により得られた情報を第一の識別情報とする手段と、
さらに、非接触ICラベルに赤外光を照射して赤外光カメラでICチップ及びその周辺部分を撮影して得られた画像を第二の識別情報とする手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る非接触ICラベル管理システムは、
請求項3の非接触ICラベルの撮影装置を用いて得られた前記第一の識別情報および前記第二の識別情報であって、ネットワークを介して送信されたこれら識別情報を受信する受信手段と、受信されたこれら識別情報を保管するデータベースとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に係る非接触ICラベル管理システムは、
前記第一の識別情報および第二の識別情報を、前記データベースに保管された情報と比較することにより、非接触ICラベルの真偽判定を行う手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6に係る非接触ICラベル管理システムは、
前記非接触ICラベルの真偽判定を行う手段が、前記第二の識別情報において、接続層の形状と、ICチップの外観形状と、バンプの形状と、ICチップ実装の際に接続層に形成されたバンプ痕の陰影形状とから選択される一つ以上を判定対象としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る非接触ICラベルによれば、製造技術的に高度な光学変化デバイスを備え、かつ可視光では見えず赤外光でのみ視認可能な識別情報を備えているため、偽造が困難であり、偽造防止効果を著しく高めることが可能となる。
また、本発明に係る非接触ICラベルの撮影装置および管理システムによって、偽造ICチップを内装して作製した偽造非接触ICラベルであっても、そのラベルが偽造品であることが正確に判断でき、高価な商品や重要商品であっても高度なセキュリティ性を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の非接触ICラベルを表面側から見た透過図である。
【図2】本発明の非接触ICラベルの裏面側から見た図である。
【図3】図1のA−A間断面の拡大図である。
【図4】図1のICチップ付近を表面側から見た透過拡大図である。
【図5】図4の変形例を示す透過拡大図である。
【図6】本発明の非接触ICラベル管理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
(非接触ICラベル)
以下、本発明の第1実施形態の非接触ICラベル(以下、単に「ICラベル」と称する。)について、図1から図6を参照して説明する。
図1は本実施形態のICラベル1を示し、これを表面側から見た透過図であり、図2はICラベル1を裏面から見た図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、ICラベル1は、上面に設けられた透明なラベル基材2と、ラベル基材2の下面側に設けられて本事例では蝶のデザインとしてパターン形成された導電層5と、導電層5の下面側に設けられた接続層4と、接続層4に実装されたICチップ3とを備えている。
【0022】
図3は、図1に示したA−A線間における断面を拡大して示した図である。ラベル基材2は、導電層5が視認できるような透明の樹脂等からなる。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂(ABS)等の樹脂等からなる透明なシート状の材料を好適に採用することができる。
なお、ラベル基材2は、下方の導電層5がラベル表面側から視認できれば、必ずしも無色でなくてもよく、透明性を有する有色の材料で形成されてもよい。
【0023】
ラベル基材2の導電層5に対向する面には、前記OVDとして機能する機能層6が形成されている。機能層6は、立体画像が表現されたり、見る角度によって色が変化するカラーシフトを生じたりする層状の構造であり、レリーフ型や体積型のホログラム、複数種類の回折格子が画素として配置された回折格子画像、カラーシフトを生じるセラミクスや金属材料の薄膜積層体等が、適宜選択されて公知の方法により形成されている。
これらの中では、量産性やコストを考慮すると、レリーフ型ホログラム(回折格子)や
多層薄膜方式のものが好ましい。
【0024】
導電層5は、アルミ等の金属を機能層6上に蒸着することによって蒸着膜として形成されている。導電層5は、後述する絶縁層(マスク層)をマスクとしてデメタライズ処理を施すことによってパターン加工されて、所望の形状を形成して意匠性を高めることができる。本実施形態のICラベル1においては、図1及び図2に示すように、一例として導電層5が蝶の形に形成されている。
【0025】
導電層5は、接続層4を介してICチップ3と電気的に接続されて、アンテナとしての機能を持ち、ICチップ3の非接触通信を可能にする。これとともに、導電層5が意匠性の高い形状として形成されているときは、機能層6が発揮する視覚効果を高めることができる。
特に、機能層6がレリーフホログラムや回折格子等の場合は、導電層5によりこれらの回折効果が高められてより美麗なデザインを得られると共に、製造技術的に高度であり偽造が困難なことから偽造防止に効果がある。
【0026】
絶縁層7(マスク層)は、ポリアミドイミド等の非導電性材料を用いて導電層5の下面に設けられ、所望の形状を形成して導電層5を被覆している。
【0027】
絶縁層7の下面及びラベル基材2の下面には、ICラベル1を上面(表面)側から見たとき(平面視)に接続層4及びICチップ3を可視光下で視認不能にするための隠蔽層8が設けられている。すなわち、隠蔽層8により目視ではラベル表面側から接続層4およびICチップ3は見えないようにしている。
【0028】
隠蔽層8および絶縁層7は、後述するように導電層5と接続層4とが静電容量結合可能となるように、非導電性材料で形成されている。本実施形態においては、非導電性インキを用いて印刷することによって隠蔽層8が形成されている。
【0029】
また、隠蔽層8は、非導電性インキのうち、赤外線を透過する特性を有する赤外線透過インキを用いて形成されている。このような隠蔽層を形成するための材料としては、例えば、ゼラチン、オラゾールブラックやオラゾール2RG等の赤外線透過性の染料を含む塗料、通常の紫外線硬化型プロセスインキ等を採用することができる。このようにすると、ICチップ3の接続層4に対する実装状態を確認することができるという利点があるが、この理由については後述する。
【0030】
隠蔽層8の可視光下における外観は、ラベル表面から見て接続層4及びICチップ3が見えなくなれば、その態様に特に制限はない。例えば、所定の波長の可視光線を反射して特定の色彩を呈するものでも良いし、すべての波長の可視光線を吸収するような黒色のものでもよい。さらに、すべての波長の可視光線を反射するものでもよい。
【0031】
上記のようなさまざまな態様の隠蔽層8は目的によって使い分けることが可能である。例えば、特定の色彩を呈するものであれば、ICラベル1が接着される物品等の被接着体の色彩と隠蔽層8の色彩とを同一に揃えることによって、あたかも蝶の形の導電層5のみが被接着体に接着されているような外観となる。したがって、より自然な印象を使用者に与えるように意匠性を高めることができる。
【0032】
一方、すべての波長の可視光線を反射するものは外観が鏡面状となり、可視光下においては導電層5と区別できなくなる。もし接続層4及びICチップ3の上面を導電層5で完全に覆ってしまうと、導電層5がアンテナ回路としての機能が失われ、ICチップ3の非接触通信ができなくなるが、このような態様の隠蔽層8を接続層4及びICチップ3の上
面に設けると導電層5と一体に見えるため、可視光下における外観上は、接続層4及びICチップ3を、導電層5とともに埋没させることができる。
【0033】
ICチップ3のデータ通信を補助する接続層4は、銀ペーストインキ等の導電性ペーストを用いて隠蔽層8の下面に公知の方法で印刷されることによって、例えば図2に示すように帯状に形成されている。
接続層4の端部は、ラベル表面からの平面視において導電層5と重畳するように形成されている。印刷された接続層4の厚みは、特に限定されないが本事例では約5マイクロメートル(μm)であり、ICラベル1の平坦性にはほとんど影響しない。
【0034】
ICチップ3は、シリコンの単結晶等からなり、バンプが異方導電性接着剤等を用いて加熱加圧接着されることによって、接続層4に電気的に接続されて実装されている。
導電層5と接続層4とは、両者の間に介在する絶縁層7及び隠蔽層8を誘電体として静電容量結合されて電気的に接続されており、これによりICチップ3が、外部の読取装置に対して電波方式の非接触データ通信を行うことが可能となっている。
ICチップ5と外部の読取装置との交信に使用する周波数は、一般の非接触ICでの通信に使われるものでよく、本事例ではマイクロ波帯(2.45ギガヘルツ)及びUHF波帯(850〜960メガヘルツ)となっている。
【0035】
ICチップ3及び接続層4を含む隠蔽層8の下方全体には、接着層9が設けられており、その接着力によってICラベル1の下面を各種物品等の被接着体に接着することができる。
【0036】
(ICラベルの識別情報)
次に、本発明の非接触ICラベルの管理システムを構築するためにその主要な構成要素となる、ICラベルの識別情報について詳細に説明する。
【0037】
まず、ICラベルの第一の識別情報について説明する。
ICチップ3には、その内部記憶に1個1個異なる識別情報(ユニークID、以下、「UID」と称する。)が付されたものが用いられる。UIDは、例えば、数字、英文字、記号等またはこれらの組み合わせからできており、それぞれのICチップのメモリに、対応するUIDが記憶されている。
【0038】
このようなICチップを用いると、UIDを読み取り利用することによって、そのICチップ(又はそのICチップが付いたICラベル)のトレーサビリティを確保することができる。本発明の非接触ICラベルおよびその管理システムでは、このICチップ3のUIDを第一の識別情報とする。
【0039】
次に、ICラベルの第二の識別情報について説明する。
隠蔽層8は、前述のように赤外線を透過するインキで形成されているので、赤外線を照射すると、赤外線が隠蔽層8を透過して、ラベル表面側から赤外カメラ等を用いて接続部4及びICチップ3を視認することができる。
図4に、このときの図1のICチップ付近の赤外光下における上面透過拡大図を示す。
【0040】
本発明の第二の識別情報は、このようにICラベル1に赤外光を照射して接続層4を含むICチップ3の周辺部を赤外カメラで拡大撮影した撮影画像とする。
概ねの範囲としては、図4あるいは図5に示すような範囲を撮影して撮影画像とすればよいが、以下にこの撮影画像がICラベル1の第二の識別情報として有用となる複数の根拠を、それぞれの要素ごとに説明する。
【0041】
本事例のICチップ3には、アンテナ接続端子であるバンプが4個付けられている。
バンプは、一般的に金などの導電材料が用いられ、形状は様々であり、例えば四角形の形状であれば、一例として約70μm(W)×約70μm(D)×約15μm(H)といった大きさで、ICチップ3の回路パターン(アンテナ接続端子)上に取り付けられる。
【0042】
このバンプはICチップ3のシリコン本体からその高さ分(約15μm)突き出ており、ICチップ3の実装の際、この突き出たバンプによって、接続層4を形成する銀ペーストインキ層がチップ実装時の圧力で層方向に潰れ、バンプの形状が接続層4の上面に痕跡(シルエット)として現れる。この痕跡が図4に示すバンプ痕10である。
なおバンプ痕10は銀ペーストインキ層の凹凸による陰影であって、色の変化ではないため、赤外光域の単波長下であっても見ることができる。
【0043】
バンプの形状寸法は、それを製造する際にばらつきが生じるため均一な大きさではなく、さらにバンプ痕10は、前述の通りチップ実装時の圧力で接続層4が潰れてできた偶然の痕跡であるため、その潰れ具合は様々であり均一ではなく、また再現性もない。よって、バンプ痕10はバンプの形状寸法のばらつき、潰れ具合の不均一という要因により、同じ形状のバンプ痕は非常にでき難いといえる。
【0044】
接続層4は、銀ペーストインキ等の導電性ペーストを用いて隠蔽層8の下面にスクリーン印刷などの公知の方法で印刷法により形成されるが、実際に印刷した接続層4のICチップ3付近を拡大してみると図4に示すようになっており、接続層4のエッジ部分は波を打ったようになった。
【0045】
これはスクリーン印刷においてスクリーン版が印刷物から離れる際に起きる現象であり、印刷時の銀ペーストインキの粘度、インキの溶剤含有量、印刷機の機械的な印刷条件設定などにより波打ちの形状は変化し、全く同じ形状は非常にでき難い。
なお、この形状の変化をICラベルとしてみた場合、接続層4のエッジ部分の波打ちは通信性能にはほとんど影響しない。
【0046】
ラベル基材2の下面にはディメタライズ処理された導線層5があって、その下面にはラベル基材2の全面にわたり隠蔽層8が設けられ、さらにその隠蔽層8の下面に接続層4が印刷によって設けられる層構成である。
【0047】
なお、以降の工程では、接続層4の上にICチップ3がICチップ専用の実装機にて実装されるが、このICチップ3を実際に接続層4に対して所定位置に実装する際には、回転角を含め実装精度にある程度のばらつきがあるが、一般的なICチップ実装機の実装精度は約20μm以下であり、ICラベルの通信特性の変化は特に問題にならない程度である。
【0048】
図5に、図4の変形例を示す。ICチップ3には、実装時にICチップ本体を安定させる目的でダミーバンプ22が用意されているが、ダミーバンプ22はチップ上の回路とは電気的に接続されていないため、図5の例のように接続層4と接続させないように構成することもできる。
【0049】
本発明のICラベルの構成では、柔らかい性質を持つ銀ペーストインキの接続層4の厚さ方向にバンプ10が沈み込むため、不安定な実装にはならない。
前述の通りICチップ3に設けられたバンプは、それを製造する際にばらつきが生じ均一な大きさではないことに着目し、ダミーバンプ22を露出させることで、バンプ痕ではなく直接ダミーバンプ22の形状を赤外光下で見ることができる。
【0050】
図5の接続層4aおよび接続層4bは、接続層4のエッジの波打ち部のような部分を増やし、不均一の部分を多くする目的で設けたものである。なお、図5で十字状のマークとして表されたレーザーマーク23は、レーザー光によって接続層4上に描かれた重ね合わせマーク(後述)である。
【0051】
これらのことから、異なるICラベルにおいて、前述のバンプ痕10の形状、ダミーバンプ22の形状、接続層4のエッジ部分の波打ち形状、ICチップの実装位置ばらつき等の全てが一致し、赤外カメラで拡大撮影した撮影画像として同一の見え方となるものは、本ICラベルの通常生産において作られることはない。
【0052】
本発明において、前記の撮影画像を第二の識別情報とし、ICラベルの特徴を表す要素として前述の第一の識別情報に加えることとした。なお、前記撮影画像の分解能は、本事例においては各要素の変化分が正確に判断できるよう、1μm=1画素(ピクセル)の分解能としたが、特にこれに限定されず適宜選定できる。
【0053】
(非接触ICラベルの管理システム)
次に、本発明の非接触ICラベルの管理システムについて説明する。
【0054】
図6に非接触ICラベル管理システムのブロック図を示す。
撮影装置14は、赤外デジタルカメラ15、赤外光源ランプ16、RFIDタグリーダー17、真偽判定結果表示ランプ18、表示器24が備えられており、ネットワーク19を介して外部のサーバー装置20に繋がっている。撮影装置14の中央の台上には真偽判定の対象物としてICラベル1が置かれている。
【0055】
このようにして撮影装置14および外部のサーバー装置20で構成された非接触ICラベルの管理システムの主な機能としては、ICラベルの識別情報登録と、ICラベルの真贋判定の二つがある。
【0056】
最初に、非接触ICラベル管理システムの識別情報登録の詳細について説明する。
図6の撮影装置14において、装置の台上に計測対象のICラベル1を置いたのち、データ読取装置としてRFIDタグリーダー17を稼働させ、ラベル内のICチップのUID(第一の識別情報)を読み込む。このICラベル1は、正規品とするものであって、後述の真偽判定における基準として用いる。
【0057】
次に、赤外光源ランプ16により赤外光を対象のICラベル1に照射し、赤外デジタルカメラ15で接続層4を含むICチップ3の周辺部を拡大撮影する。
【0058】
撮影画像(第二の識別情報)は、先のICチップのUIDと合わせて外部のサーバー装置20に向けてネットワーク19を介して転送される。ネットワーク19上での情報の転送に際しては、後述する真偽判定における情報の転送も含め、公開鍵暗号方式など公知の暗号化処理を行って情報のセキュリティを確保している。
【0059】
サーバー装置20の内部では、ICラベルを管理するデータベース機能を備えた所定のアプリケーションが実行されており、前述のICチップのUIDおよび撮影画像は、このアプリケーションが情報を受信してデータベースに格納する。またこのアプリケーションは、後述する画像重ね合わせ比較処理機能も持つ。
【0060】
以上の処理が、真偽判定の基準であるICラベル1の識別情報登録である。
【0061】
次に本非接触ICラベル管理システムによる真偽判定手順について説明する。
まず図6の装置台上に、真偽判定の比較計測対象とするICラベル11(前記ICラベル1とは別のもの)を置いたのち、RFIDタグリーダー17を稼働させ、ラベル内のICチップのUID(第一の識別情報)を読み込む。
【0062】
次に、赤外光源ランプ16により赤外光を対象のICラベル11に照射し、赤外デジタルカメラ15でICラベル11中の接続層4を含むICチップ3の周辺部を拡大撮影する。
【0063】
撮影画像は、先のICチップ3のUIDと合わせて外部のサーバー装置20に向けネットワーク19を介して情報転送される。
【0064】
外部のサーバー装置20のアプリケーションが、ICチップ3のUIDおよび撮影画像の情報を受け取り、データベース内をICチップ3のUIDの情報、すなわち第一の識別情報で検索し、該当する登録情報がなかった場合は、未登録として撮影装置14に通知する。
【0065】
該当する登録情報があった場合、すなわち、本事例では前記で真偽判定の基準としたICラベル1の第一の識別情報と一致した場合は、次に第二の識別情報である撮影画像の比較を行う。
【0066】
データベース内に登録されているICラベル1の第二の識別情報(すなわち前記基準としたICラベル1の撮影画像)と、送られてきたICラベル11の第二の識別情報(撮影画像)との比較を、アプリケーション内の画像比較機能を用いて行う。
【0067】
図5に示すレーザーマーク23は十字状の重ね合わせマークであり、これを用いて双方の撮影画像の位置合わせを行い、その状態で二つの画像を比較する。
比較結果が所定の許容範囲内で一致したと認められる場合は、このICラベル11が正規品と判定し、比較結果が許容範囲外であった場合は偽造品と判定し、その判定結果を撮影装置14に通知する。
【0068】
撮影装置14は、これらの結果に応じて真偽判定結果表示ランプ18(所定のランプの色で区別できるようにすればよい。例えば、正規品=緑色、未登録=黄色、偽造品=赤色)を点灯させ、真偽判定の処理を終了する。
【0069】
ここで測定したICラベル11の判定結果が、基準のデータが未登録の場合以外は、撮影装置14に備えられた表示器24に、すでにデータベース内に登録されている撮影画像と、対象のICラベル11の撮影画像との比較画像などが表示され、装置オペレーター(人)がアプリケーションの判定プロセスの詳細などを確認できるようになっている。
【0070】
なお、アプリケーション内の画像比較機能は公知のアルゴリズムで行っており、比較結果(一致率など)を数値化して正規品、偽造品の判定をしている。さらに、装置オペレーター(人)が画像を比較して真偽判定できるようにもなっている。
【0071】
次に、本発明の非接触ICラベル管理システムが取り扱う識別情報の情報量について説明する。
【0072】
本実施例において、ICラベル上面から見たICチップ3の形状寸法は0.5mm×0.5mmである。前記撮影画像は、このICチップ3を中心に1mm×1mmの範囲を撮影した赤外光下のモノクロ画像とした。
撮影画像の分解能は1μm=1画素(ピクセル)とし、1画素(ピクセル)を256階
調とした場合、その情報量は1画像当たりでおおよそ1K(キロ)バイト×1Kバイト=1M(メガ)バイトとなる。例えば、100万枚のICラベルの撮影画像管理を考えた場合、その情報量は1Mバイト/1画像×100万枚で約1T(テラ)バイトとなる。
【0073】
近年のサーバー装置では、1台で10Tバイトの容量を持つものなどが市販されており、前述の約1Tバイトの情報量は、サーバー装置のストレージ容量からみて取り扱い上特に問題のない情報量といえる。
またサーバー装置のストレージ容量の増大は日進月歩であることから、より大容量が必要となっても処理が可能であって、撮影画像の分解能をさらに細かくすることもでき、または管理枚数を増やすこともできる。
【0074】
前記サーバー装置20のデータベース内には、生産された全てのICラベルの撮影画像(第二の識別情報)が第一の識別情報と共に保管されている。
仮に第三者が、保管されている一つのICラベル(正規品)の偽造を試みても、データベース内に保管されている撮影画像と比較すると、前記のICラベルの識別情報において述べた理由により、μm単位の精度で同様の見え方となって比較画像が一致し、真偽判定結果が真となる偽造品を作り出すことは不可能であり、ましてやそれを安定的に大量生産することももちろん不可能である。
【0075】
以上のように、たとえ正規品ラベルに搭載されたICチップの固有の識別情報(ユニークID)すなわち第一の識別情報が読み取られ、これと同じ識別情報を持つ偽造ICチップが大量に複製されても、前述の通り正規品と同じ第二の識別情報を作り出すことができないため、実質的に本ICラベルの偽造はできない。そのため、本発明の仕組みにより著しい偽造抑止の効果も得られることになる。
【0076】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の内容や目的に応じて適宜その構成や材料等において最適化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る非ICラベルおよび撮影装置、非接触ICラベル管理システムによれば、非接触ICラベルを用いて多様な製品の製造管理、流通管理が可能となることに加え、光学変化デバイスとICラベルの識別情報とを備えることにより、偽造が著しく困難でありたとえ偽造されたとしてもその真偽判定が正確にできるので、セキュリティ性の確保が必要な重要な製品においても適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1,11 ICラベル
2 ラベル基材
3 ICチップ
4、4a、4b 接続層
5 導電層(OVDアンテナ)
6 機能層(OVD)
7 絶縁層(マスク層)
8 隠蔽層
9 接着層
10 バンプ痕
14 撮影装置
15 赤外デジタルカメラ
16 赤外光源ランプ
17 RFIDタグリーダー(データ読取装置)
18 真偽判定結果表示ランプ
19 ネットワーク
20 サーバー装置
22 バンプ
23 レーザーマーク
24 表示器(モニター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と非接触で通信可能なICチップを有する非接触ICラベルであって、
透明性を有するラベル基材と、前記ラベル基材の下面に設けられた光学変化デバイスと、前記光学変化デバイスの下面に設けられてアンテナとして機能する導電層と、前記ICチップと電気的に接続された接続層とを備え、
さらに前記導電層と前記接続層との間にあってこれらを静電容量結合させるための絶縁層と、可視光を吸収し赤外光を透過する隠蔽層とを備えたことを特徴とする、非接触ICラベル。
【請求項2】
前記接続層が導電性ペーストインキ材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の非接触ICラベル。
【請求項3】
非接触ICラベルのICチップに記憶された所定のデータを読み取るデータ読取機能と、赤外光ランプおよび赤外光カメラとを有する非接触ICラベル撮影装置であって、
前記データ読取機能により得られた情報を第一の識別情報とする手段と、
さらに、非接触ICラベルに赤外光を照射して赤外光カメラでICチップおよびその周辺部分を撮影して得られた画像を第二の識別情報とする手段とを備えたことを特徴とする、非接触ICラベルの撮影装置。
【請求項4】
請求項3の非接触ICラベルの撮影装置を用いて得られた前記第一の識別情報および前記第二の識別情報であって、ネットワークを介して送信されたこれら識別情報を受信する受信手段と、
受信されたこれら識別情報を保管するデータベースとを備えることを特徴とする、非接触ICラベル管理システム。
【請求項5】
前記第一の識別情報および第二の識別情報を、前記データベースに保管された情報と比較することにより非接触ICラベルの真偽判定を行う手段を備えたことを特徴とする、請求項4に記載の非接触ICラベル管理システム。
【請求項6】
前記非接触ICラベルの真偽判定を行う手段が、
前記第二の識別情報において、接続層の形状と、ICチップの外観形状と、バンプの形状と、ICチップ実装の際に接続層に形成されたバンプ痕の陰影形状とから選択される一つ以上を判定対象としたことを特徴とする、請求項5に記載の非接触ICラベル管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−164883(P2011−164883A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26332(P2010−26332)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】