説明

非接触ICラベルおよび貼付体

【課題】ラベルを剥がす際に、確実にラベル基材が破断すると同時に非接触IC媒体のアンテナを切断して、完全に通信機能を不能にすることができる非接触ICラベルおよびその貼付体を提供すること
【解決手段】ラベル基材1の主面上に、粘着材5とICチップ3に記憶された所定の識別情報をアンテナ4によって無線で送信する非接触IC媒体7が設けられたICラベルAにおいて、ICチップ周辺部に切込み2を設け、貼付体Bに貼り付けた際にその切込みが立体構造(段差)を持つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品やその包装物に貼り付けて使用する非接触ICラベルおよびその貼付体であり、貼付体から剥がそうとした際にその痕跡を残すと同時に通信機能を不可能にする非接触ICラベルおよびその貼付体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの比較的高価な商品や電化製品の消耗品など、偽造されては困る物品などにおいては、それらの真贋を判定するために、商品本体やそれを包装したケース等に封印ラベルを貼り付けることが行われている。しかし、不正業者などが、正規物品を偽造した不正物品を扱う場合、正規物品に貼り付けられている封印ラベルと類似の封印ラベルをその不正物品にも貼り付けることにより、購入者に対して正規物品と不正物品とを見分け難くすることができてしまう。
【0003】
そこで、高いセキュリティ機能を有するICタグを搭載することで、偽造防止機能を持つ封印ラベル等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 特に、固有の識別情報が記憶されたICチップを埋め込むことで、個々の判別が可能となる。
【0004】
しかしながら、上記のような封印ラベルでは、正規物品に貼り付けられていた封印ラベルを貼付体から綺麗に剥がすことは可能であり、ラベル自体を使い回し不正規物品に貼り付けることが出来、また前記封印ラベルから非接触IC媒体のみを取り外すことも可能なことから、偽造した封印ラベルにその取り外した非接触IC媒体を貼り付けることによって、非接触IC媒体を容易に使い回すこともできてしまうという問題がある。そのため、真贋判定の精度が低下してしまう。
【0005】
正規物品に貼りつけられた封印ラベルを剥がして、不正規物品に貼りつけるといった不正に対しては、剥がす操作が行われた時に封印ラベルが破壊してしまう様な切り込みを入れ、基材にフィラー等を加え、基材の機械的強度を低下させる脆性化処理が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−150924号公報
【特許文献2】特開2008−186127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、封印ラベルを貼付体から剥がそうとする行為により、ラベル基材自体が確実に破壊すると同時に、非接触IC媒体のアンテナも破断して確実に通信機能を不能にすることができる非接触ICラベルおよびその貼付体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は凹凸を持つ貼付体に貼り付けるための粘着材が設けられたラベル基材と、このラベル基材に設けられ、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信するICチップ及びアンテナを有する非接触IC媒体を備え、前記ICチップ周辺部に貼付体の凹凸に合わせた切込みを設けた非接触ICラベルにおいて、前記非接触ICラベルを貼り付けた際に、前記切込み部分が貼付体の凹凸に合わせた立体
構造になることを特徴とする非接触ICラベルである。
【0009】
請求項2に記載の発明は粘着材が設けられたラベル基材と、このラベル基材に設けられ、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信する非接触IC媒体を備え、前記ICチップ周辺部に切込みを設けた非接触ICラベルを貼り付ける貼付体において貼り付けた際に、前記切込み部分が立体構造になる様に凹凸を持たせた事を特徴とする貼付体である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、凹凸を持たせた部位が前記非接触ICラベルの切込み部分を貼り付ける箇所の凹部の最深部の深さが2mm以上で、底辺4.3mm以下で、かつ最深凹部へのスロープ角度が25度以上で、あることを特徴とする請求項2に記載の貼付体である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記切込み部分にかかるようにOVD(Optical Variable Device)機能層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の非接触ICラベルである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記切込み部分が前記非接触IC媒体のアンテナに設けられたアンテナ基材にまで至るように設けることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の非接触ICラベルである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記ラベル基材が脆性を有することを特徴とする請求項1または請求項4、5のいずれか一項に記載の非接触ICラベルである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記非接触IC媒体のアンテナが導電性インキで設けられ、かつ前記アンテナ基材を有しないことを特徴とする請求項1または請求項4、6のいずれか一項に記載の非接触ICラベルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非接触ICラベルおよび貼付体は上記のような構成からなり、ICチップに所定の識別情報が記憶させ、貼付体に貼り付けられた非接触ICラベルは切込み部が立体構造になり、貼付体から綺麗に非接触ICラベルを剥がすことは不可能であり、封印ラベルを貼付体から剥がそうとする行為により、ラベル基材自体が確実に破壊すると同時に、IC媒体のアンテナも破断して確実に通信機能を不能にさせるため、正規物品に貼り付けられていた封印ラベルから非接触IC媒体を取り外すことも不可能となり、非接触IC媒体を使い回して偽造するなどの不正行為も有効に防止することができる。
【0016】
またさらに、本発明の非接触ICラベルは切込み部に、見る角度によって色変化をするOVD機能層を設けることで、貼付体に貼り付けた際に立体構造になる切込み部において、正面からでもその視覚効果(色変化)を確認することができ、効率よくその真贋判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第一の非接触ICラベルの実施形態の例を平面で見た説明図
【図2】本発明に係る第一の非接触ICラベルの例を断面(図1X−Y断面)で見た説明図
【図3】本発明に係る第二の非接触ICラベルの例を貼付体の例に貼り付ける前の切り込みと貼付体の凹凸部分の断面で見た説明図
【図4】本発明に係る第二の非接触ICラベルの例を貼付体の例に貼り付けた際の切込み部分の断面を見た説明図
【図5】本発明に係る第一の非接触ICラベルの一例に内蔵されている非接触IC媒体を平面で見た説明図
【図6】本発明に係る非接触ICラベルの一例に内蔵されているICタグのアンテナの片側をカットした際のアンテナ長さ(L)と通信距離の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態における非接触ICラベル(A)について、図面を参照して説明する。図1、2は、本発明の実施形態としての非接触ICラベル(A)一例の平面図および断面図(図1X−Y断面)を示したものである。また図3は、本発明の実施形態としての非接触ICラベル(A)を貼付体に貼り付けた際の切込み(21,22)と貼付体(B)の凹凸部分(91,92)の断面図を示したものである。
【0019】
非接触ICラベル(A)は、ラベル基材(1)を備え、ラベル基材(1)の表裏面のうち、表面部には、貼付体の名称などの各種情報が印刷される印刷層(11)が設けられている。
また、ラベル基材(1)の裏面には、粘着層(5)を設け、非接触IC媒体(7)が貼られ、更に貼付体(B)に貼り付けるための粘着層(5)が設けられている。
【0020】
また、粘着層(5)の表面には、容易に剥離できるような剥離シート(6)が仮粘着されている。剥離シート(6)としては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層されている。
【0021】
非接触IC媒体(7)は、ICチップの駆動電池を持たないパッシブ型のものである。なお、パッシブ型に代えて、ICチップの駆動電池を有するアクティブ型とすることもできる。この場合には、非接触IC媒体(7)の構造は煩雑化するが、読取り距離が伸張する効果がある。
【0022】
この非接触IC媒体(7)は、帯状に延びるアンテナ基材(8)面側で粘着層(5)に貼り付けられている。また、非接触IC媒体(7)は、アルミや銅などの金属により形成されたアンテナ(4)と、このアンテナ4の長手方向の中央部に搭載され、アンテナ(4)に電気的に接続されたICチップ(3)とを備えている。
【0023】
アンテナ(4)は、帯状に延ばされて形成されている。このアンテナ(4)は、例えば、送受信される電波がマイクロ波以上の周波数を有するとき、使用周波数の波長をλとすると、アンテナ(4)の長手方向の長さをλ/2近傍に設定すると、電波の送受信効率の良いダイポール形のアンテナとして機能する。例えば、電波の使用周波数を2.45GHzとすると、ダイポール型におけるアンテナ(4)の長手方向の最適長さは約50mm〜60mm程度である。
【0024】
非接触IC媒体(7)は、図示しない情報読取装置からの電波をアンテナ(4)によって受け、アンテナ(4)の長手方向に生じる電位差をICチップ(3)に供給するようになっている。
【0025】
ICチップ(3)は、例えば、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.4mm、高さ寸法が0.1mmとされている。なお、辺部の長さ寸法は、0.4mmに代えて、適宜変更可能である。
【0026】
ICチップ(3)の動作に十分な電力が供給される程度の強度を有する電波が照射されると、ICチップ(3)は稼動状態となる。ICチップ(3)は、情報読取装置からの電波に重畳されたタイミング信号やコマンドに合わせて、ICチップ(3)が有する情報を
情報読取装置に返送する。情報読取装置はこの再放射の強度を測定する事で、ICチップ(3)に格納されている情報を読み出す。このような情報読取装置からICチップ(3)に対するタイミング信号やコマンドの送信の手続き、及びICチップ(3)から情報読取装置に対する情報の伝達の手続きの事を、エアプロトコルと称する。
【0027】
なお、使用周波数がマイクロ波の周波数未満の周波数の場合、例えば13.56MHzとすると、ダイポールアンテナではなく、コイル状のアンテナが多用される。上記は、非接触ICラベル(A)に用いられるICチップ(3)の情報読み出し動作の一例である。
【0028】
図1に示したラベル基材(1)への切込み(2)はV字形状を一例として示したが、この切込みの形状はV字に限ることはなく、十字型、半楕円型、半丸型など自由に設けることができる。
【0029】
一方、前記非接触ICラベル(A)を貼り付ける貼付体(B)には、図3のように凹部(91)、が設けられており、非接触ICラベル(A)の切込み(21、22)の形状と合致するように設計されている。この貼付体(B)の凹部(91)、に切込み(2)を合わせて非接触ICラベル(A)を貼り付けることにより、切込み(21,22)部分に立体構造(段差)を持たせることができる。
【0030】
通常、ラベルを貼付体(B)から剥がす方法としては、ラベル基材(1)と貼付体(B)の間の粘着層(5)の部分にカッターなどを入れて、粘着層(5)を切るように剥がす方法が取られる。この際、ラベル基材(1)と平行にカッターを入れるとラベル基材(1)を破壊することなく剥がすことができる。
【0031】
しかし本発明の貼付体(B)に貼り付けた非接触ICラベル(A)を剥がそうとした場合、この立体構造(段差)にカッターを入れて剥がすことになるが、ラベル基材(1)と貼付体(B)との間の粘着層(5)に、ラベル基材と平行に、カッターの刃を入れることは不可能であり、綺麗に剥がすことは非常に困難となる。
【0032】
このとき、凹部(91)の深さ(D)を2.5mm以上、底辺(E)4.3mm以下、角度θを25度以上とすることが好ましく、これによりさらにラベル基材を破壊する構造となり、剥がした痕跡を残すことができる。
【0033】
貼付体(B)には、図3のように凸部(92)を設けることもできる。これにより、凹部(91)の高さ(D)がさらに大きくなり、よりカッターの刃が入りづらい構造となる。かつ180度反対方向から剥がされた際に凸部(92)にも溝ができているため、カッターの刃を入れることが難しく、非接触ICラベル(A)を綺麗に剥がすことをより防ぐ効果がある。
【0034】
またこの貼付体(B)の凹部(91)に切込み(2)合わせて非接触ICラベル(A)を貼り付ける際、貼付体(B)の凹部(91)形状に合致した専用の立体冶具にて貼り付けることが好ましい。これにより、貼付体(B)の凹部(91)に非接触ICラベル(A)の切込み(2)を隙間なく密着させて貼り付けることができる。
【0035】
また、非接触ICラベル(A)の切込み(2)が非接触IC媒体(7)のアンテナ基材(8)にまで至るように設けることが好ましい。これにより、アンテナまで破断させることができ、アンテナを破断することにより通信機能を不能にさせることができる。
【0036】
このとき、非接触IC媒体(7)のアンテナ基材(8)にまで至るように設けられたV字切込み(2)の一辺がICチップ(3)から5mm以下の位置に入るように設ける。
【0037】
これは、非接触IC媒体(7)のアンテナ(4)の片側をカットして通信距離を測定した時、図6のようにアンテナ長さ(L)が5mm以下の場合、完全に通信機能が不能になるので、ラベルを剥離する際に、アンテナ長さが5mm以下の位置で破断するようにV字切込み(2)を設計する必要があるためである。
【0038】
また特に、図5のスリット部(41)はアンテナ(4)とICチップ(3)とのインピーダンスマッチング条件に重要な部位であり、この部位を断線させることが最も効率がよいため、図1に示す様にスリット部(41)周辺にV字切込み(2)を配置することが好ましい。
【0039】
本発明では、非接触ICラベル(A)を剥離しようとすると、まずラベル基材(1)が破壊するため、その痕跡を確実に残すことができる。また同時に非接触IC媒体(7)のアンテナ(4)が破断し、アンテナ(4)の長手方向の電圧差の発生効率が低下したり、アンテナ(4)とICチップ(3)とのインピーダンスマッチングの条件が悪くなったり、アンテナ(4)とICチップ(3)との電気的接続が破断されるなどして、ICチップ(3)の稼動が停止する。
【0040】
ICチップ(3)からの情報読み出しが正常に行われなくなるため、アンテナ(4)やICチップ(4)の不具合、及びこの組み合わせ条件の悪化を意味することになり、これは非接触ICラベル(A)の破壊や剥離を試みようとした履歴、又はそれら破壊や剥離を試みようとする行為が現存する可能性を示唆する事となる。また、非接触ICラベル(A)から非接触IC媒体(7)を取り出して使い回すなどの偽造行為を有効に防止することができる。
【0041】
またI非接触ICラベル(A)の切込み(2)周辺には、見る角度によって色変化をするOVD機能層(12)を設ける。前述のように、貼付体Bに非接触ICラベル(A)を貼り付けたとき、切込み2の部分は貼付体Bの凹部(91)に沿って貼られることにより立体構造になる。すなわち、貼付体(B)の貼付体凹部(91)上に設けられたOVD機能層(121)と、それ以外の貼付体(B)部に貼られたOVD機能層(122)では、光の反射角度が異なるため、正面から見ても異なる色に見える。これにより、目視でも容易に確実に非接触ICラベル(A)の真贋判定をすることが可能となる。
【0042】
OVD機能層(12)は、OVD機能材料を用いて印刷などで設ける。OVD(Optical Variable Device)とは、光の干渉を利用した画像であり、立体画像の表現や見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる表示体であって、目視により真偽判定が可能な媒体である。その中でホログラムや回折格子などのようなOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や、体積方向に干渉縞を記録する体積型が挙げられる。
【0043】
また、ホログラムや回折格子とは手法が異なるが、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層した多層膜方式や、或いは液晶材料等による見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる材料もその例である。これらOVDは、立体画像やカラーシフトといった独特な印象を与え、また高度な製造技術を要することから、偽造防止の有効な手段と言える。
【0044】
これらOVDの中でも量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(又はレリーフ型回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。
【0045】
まず、レリーフ型ホログラムについて述べる。このレリーフ型ホログラム又はレリーフ型回折格子は、それぞれホログラム又は回折格子を成す微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のプレス版を用いて量産を行う。すなわち、このプレス版でOVD形成層を加熱・加圧して、微細な凹凸パターンを複製する。
【0046】
OVD機能層(12)は、その回折効率を高めるためのものであり、レリーフ面を構成する高分子材料とは屈折率の異なる材料からなる。用いる材料としては、屈折率の異なるTiO2、Si2O3、SiO、Fe2O3、ZnS、などの高屈折率材料や、より反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられ、これらの材料が単独あるいは積層して使用される。これらの材料は真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成され、その膜厚は用途によって異なるが、0.5〜100nm程度で形成される。
【0047】
なお、ホログラムは非接触IC媒体(7)の通信に影響を及ぼすことがないように、金属蒸着の部分を特定するか、又は絶縁性の非金属蒸着材料による透明ホログラムを用いることが望ましい。
【0048】
さらに、多層薄膜方式について述べる。多層薄膜方式を用いる場合、前述したように、OVD機能層(12)は、異なる光学適性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜又はそれらを併設してなる複合薄膜として積層形成される。例えば,屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
【0049】
この多層薄膜層は、セラミックスや金属などの材料が用いられ、おおよそ2つ以上の高屈折率材料と屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものである。以下に、用いられる材料の例を挙げる。先ず、セラミックスとしては、Sb2O3(3.0=屈折率n:以下同じ)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、SiO2(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al2O3(1.6)、GaO(1.7)等がある。
【0050】
そして、金属単体又は合金の薄膜としては、例えば、Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si等が挙げられる。また、低屈折率の有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等が挙げられる。
【0051】
これらの高屈折率材料、又は30%〜60%透過の金属薄膜から少なくとも一種を選択し、低屈折率材料から少なくとも一種選択し、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収又は反射を示すようになる。なお、金属から構成される薄膜は、構成材料の状態や形成条件などにより、屈折率などの光学特性が変わってくるため、本願では一定の条件における値を示している。
【0052】
上記した各材料から屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択され、薄膜として積層され多層薄膜層を形成する。形成方法は公知の手法を用いることができ、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚(=n・d、n:屈折
率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法にて形成される。
【0053】
これらOVDを非常に薄い箔状にして、ラベル基材(1)上に転写するか、又は微細化したOVD箔を樹脂バインダー中に分散してインキ化し印刷するかによって設けることができる。
【0054】
ラベル基材(1)は、脆性(脆弱性)を有している材料を用いることが好ましい。ラベル基材(1)の材質としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどの可塑剤を適量混合して脆質化した脆性塩化ビニル、脆性ポリエステルなどの合成樹脂フィルムや、又は、セルロースアセテート、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの高結晶性プラスチック素材を溶液成膜により形成したフィルムなどがあげられる。
【0055】
その他の材質として、UV硬化法合成樹脂又はカオリン、炭酸カルシウムなどの粉体を適量混合したUV硬化型合成樹脂を用い、その樹脂薄膜をUV照射により硬化乾燥させて成膜したフィルムなどがあげられる。また、合成繊維での不織布、又は、アート紙、コート紙、上質紙などの用紙があげられる。
【0056】
これにより、貼付体に貼り付けられた非接触ICラベル(A)を剥がそうとする際に、ラベル基材(1)をさらに破断しやすくすることができ、偽造防止効果を奏することができる。
【0057】
また非接触IC媒体(7)のアンテナ基材(8)に脆弱性の基材を用いることもできる。
【0058】
また非接触IC媒体(7)のアンテナ(4)を、導電性インキを用いて印刷にて形成することもできる。その際、図3のようにアンテナ基材(8)を設けないでラベル基材(1)に直接アンテナ(4)を印刷することも可能である。これにより、ラベル基材(1)とアンテナ(4)が一体化するので、貼付体(B)から非接触ICラベル(A)を剥がそうとした際、切込み(2)の立体構造によるラベル基材(1)の破壊と同時にアンテナ(4)を破断して通信不能にすることがより確実となり、偽造防止効果を高めることができる。
【0059】
以上より、本発明における非接触ICラベル(A)は、貼付体(B)に貼り付けた際に切込み(2)部分に立体構造(段差)を作るため、非接触ICラベル(A)を貼付体(B)から剥がそうとする際に、その立体構造(段差)が障害となって、ラベル基材(1)を破壊しないで剥がすことは不可能となり、痕跡を確実に残すことができる。さらに同時に非接触IC媒体(7)のアンテナ(4)を破断させ通信機能を不能にすることも可能となる。
【0060】
また、切込み(2)にかかるようにOVD機能層(12)を設けることによって、前述の立体構造を利用して目視での色変化による真贋判定を行うことができ、より偽造防止効果を高めることが可能となる。
【0061】
次に、本発明の非接触ICラベル(A)の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0062】
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材(幅60mm、長さ39mm)に、オフセット印刷により絵柄を印刷した。次に、38ミクロンのPETフィルムの上に、アルミニ
ウム薄膜のアンテナ(4)をエッチングにより形成した。このアンテナ(4)と金製のバンプを持つICチップ(3)との接続部に異方導電性接着剤を用い、熱圧着することによって接続して非接触IC媒体(7)を作製した。
【0063】
ラベル基材(1)に12000mN/25mmの粘着力を持つアクリル系の粘着剤を塗布し粘着層(5)を設けた後、前記非接触IC媒体(7)を積層形成し、さらにその上に粘着層(5)を積層し最後に、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートを行い、その上にシリコン処理を施したセパレータ(6)(厚さ112μm)を仮粘着した。
【0064】
ICチップ(3)から1.5mmの位置にV字形状の一辺が入るように配置したV字切込みをレーザーにて設け、その上にかかるように、まず、以下の組成の墨インキ(商品名:ファインスターRコンク墨 東洋インキ製造(株)製)を硬化膜厚が約2μmとなるようにグラビア印刷した。この上に重ねて、シルクスクリーン印刷により、以下の組成のパールインキを塗布し、OVD機能層(12)を形成した。〈パールインキ〉
顔料(商品名:イリオジン235 メルク(株)製) 8質量%
ワニス(商品名:SS66 東洋インキ製造(株)製) 50質量%
溶剤(商品名:S718溶剤 東洋インキ製造(株)製)42質量%
【実施例2】
【0065】
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材(1)(幅60mm、長さ39mm)に、オフセット印刷により絵柄を印刷した。他方の主面に、銀ペースト(商品名:XA−3106 藤倉化成(株)製)を用いてスクリーン印刷にてアンテナ(4)を形成し、このアンテナ(4)と金製のバンプを持つICチップ(3)との接続部に異方導電性接着剤を用い、熱圧着することによって接続してラベル基材(1)上に非接触IC媒体(7)を作製した。
以下、実施例1と同様に接着層(5)を設け、V字の切込み(2)、およびOVD機能層(12)を加工して非接触ICラベル(A)を作製した。
【0066】
以下に、本発明の比較例について説明する。
(比較例1)
【0067】
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材(1)上に絵柄を印刷し、他方の主面に接着層とエッチングにより形成されたアンテナ(4)を持つ非接触IC媒体(7)を積層形成した。その後、切込み工程を行わずに非接触ICラベル(A)を作製した。
【0068】
このようにして作製した実施例1、2及び比較例1の非接触ICラベルを作製し、商品が内蔵されたボックスに貼り付けた。その際、実施例1、2の非接触ICラベルは、貼付体となるボックスの表面に図3のような凹部と凸部を持つ構造に非接触ICラベルの切込みが合うように専用冶具を用いて貼り付けた。比較例1の非接触ICラベルは凹部、凸部の構造を持たないボックスに貼り付けた。
【0069】
実施例1、2の非接触ICラベルは、まず目視にてOVD機能層(12)の色変化を凹部に貼られたOVD機能層(121)と凹部ではない部分に貼られたOVD機能層(122)で確認することができた。すなわち、正面から見たときに、凹部に貼られた部分は赤色、それ以外の部分は緑色と異なる発色が見られた。
【0070】
次に、貼付体(B)であるボックスに貼られた非接触ICラベル(A)の粘着層(5)の間にカッターをいれて剥がそうとしたが、切込み(2)部分の立体構造が障害となってカッターの刃を入れることができず、ラベル基材(1)を綺麗にはがすことができなかった。また特に実施例2の非接触ICラベルは、ラベル基材(1)が破壊すると同時に非接
触IC媒体(7)のアンテナ(4)も傷付けて破断し、通信不能になった。
【0071】
それに対し、比較例1の非接触ICラベル(A)では、粘着層(5)の間にカッターの刃を入れることができ、ラベル基材(1)の破断することなく綺麗にはがして、非接触ICラベルの使い回しできた。また、アンテナ(4)の破断は困難であり、偽造したラベル基材(1)に貼り付けて、非接触ICラベル(A)としての使い回しも可能であった。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
A 非接触ICラベル
B 貼付体
D 凹部91の深さ
E 凹部91の底辺
L アンテナ長さ
1 ラベル基材
11 印刷層
12 OVD機能層
121 貼付体凹部に貼られたOVD機能層
122 貼付体にはられたOVD機能層
2 切込み
21 切込み凹部
22 切込み凸部
3 ICチップ
4 アンテナ
41 スリット部
5 粘着層
6 剥離シート
7 非接触IC媒体
8 アンテナ基材
91 貼付体凹部
92 貼付体凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を持つ貼付体に貼り付けるための粘着材が設けられたラベル基材と、このラベル基材に設けられ、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信するICチップ及びアンテナを有する非接触IC媒体を備え、前記ICチップ周辺部に貼付体の凹凸に合わせた切込みを設けた非接触ICラベルにおいて、前記非接触ICラベルを貼り付けた際に、前記切込み部分が貼付体の凹凸に合わせた立体構造になることを特徴とする非接触ICラベル
【請求項2】
粘着材が設けられたラベル基材と、このラベル基材に設けられ、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信する非接触IC媒体を備え、前記ICチップ周辺部に切込みを設けた非接触ICラベルを貼り付ける貼付体において貼り付けた際に、前記切込み部分が立体構造になる様に凹凸を持たせた事を特徴とする貼付体
【請求項3】
凹凸を持たせた部位が前記非接触ICラベルの切込み部分を貼り付ける箇所の凹部の最深部の深さが2mm以上で、底辺4.3mm以下で、かつ最深凹部へのスロープ角度が25度以上で、あることを特徴とする請求項2に記載の貼付体。
【請求項4】
前記切込み部分にかかるようにOVD(Optical Variable Device)機能層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の非接触ICラベル。
【請求項5】
前記切込み部分が前記非接触IC媒体のアンテナに設けられたアンテナ基材にまで至るように設けることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の非接触ICラベル。
【請求項6】
前記ラベル基材が脆性を有することを特徴とする請求項1または請求項4、5のいずれか一項に記載の非接触ICラベル。
【請求項7】
前記非接触IC媒体のアンテナが導電性インキで設けられ、かつ前記アンテナ基材を有しないことを特徴とする請求項1または請求項4、6のいずれか一項に記載の非接触ICラベル。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112758(P2011−112758A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267270(P2009−267270)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】