説明

非接触ICラベル

【課題】ラベルを剥がす際に、確実にラベル基材が破断すると同時に非接触IC媒体のアンテナを切断して、完全に通信機能を不能にすることができる偽造防止用ICラベルを提供することを。
【解決手段】 ラベル基材1の主面上に、粘着材5とICチップ3に記憶された所定の識別情報をアンテナ4によって無線で送信する非接触IC媒体7が設けられたICラベルAにおいて、チップ周辺部にV字形状の切込みを設け、かつまた、そのV字形状の切込みの先端部に留めを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品やその包装物に貼り付けて使用する非接触ICラベルであり、被貼付体から剥がそうとした際にその痕跡を残すと同時に通信機能を破壊する非接触ICラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの比較的高価な商品や電化製品の消耗品など、偽造されては困る物品などにおいては、それらの真贋を判定するために、商品本体やそれを包装したケース等に封印ラベルを貼り付けることが行われている。
しかし、不正業者などが、正規物品を偽造した不正物品を扱う場合、正規物品に貼り付けられている封印ラベルと類似の封印ラベルをその不正物品にも貼り付けることにより、購入者に対して正規物品と不正物品とを見分け難くすることができてしまう。
【0003】
そこで、高いセキュリティ機能を有するICタグ等の非接触IC媒体を搭載することで、偽造防止機能を持つ封印ラベル等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特に、固有の識別情報が記憶されたICチップを埋め込むことで、個々の判別が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−150924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような封印ラベルでは、正規物品に貼り付けられていた封印ラベルから非接触IC媒体のみを取り外すことが可能なことから、偽造した封印ラベルにその取り外した非接触IC媒体を貼り付けることによって、非接触IC媒体を容易に使い回すことができてしまうという問題がある。そのため、真贋判定の精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、封印ラベルを被貼付体から剥がそうとする行為により、ラベル基材自体が破壊すると同時に、非接触IC媒体のアンテナが破断して確実に通信機能を不能にすることができる非接触ICラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ラベル基材と、ラベル基材の一方の面上に形成された接着または粘着層と、該粘着層上の一部に形成された非接触IC媒体と、を有する非接触ICラベルにおいて、該非接触IC媒体が、アンテナ基材と該アンテナ基材上に形成されたアンテナ及びアンテナに接続されたICチップを有し、該非接触ICラベルに2辺の切り込みからなるV字状の切り込みが設けられ、該V字状切り込みの少なくとも1辺が、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられ、該V字状切り込みの先端部に切り込みが不連続である留め部を有することを特徴とする非接触ICラベルである。
【0008】
また、前記V字形状を形成する2辺の切込みのなす角度が25度以上かつ60度以下であることを特徴とする非接触ICラベルである。
【0009】
また、前記V字状切り込みのうち、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられた1辺の長さが5mm以上であることを特徴とする非接触ICラベルである。
【0010】
また、前記V字状切り込みのうち、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられた1辺が、ICチップの周囲5mm以内の位置に達するように設けられていることを特徴とする非接触ICラベルである。
【0011】
また、前記V字状切り込みのうち、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられた1辺が、アンテナに達するように設けられていることを特徴とする非接触ICラベルである。
【0012】
また、前記留めの大きさが直径0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする非接触ICラベルである。
【0013】
また、前記ラベル基材の外周囲および内部に切込みを設けたことを特徴とする非接触ICラベルである。
【0014】
また、前記ラベル基材に、溶剤検出部が設けられていることを特徴とする非接触ICラベルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非接触ICラベルは上記のような構成からなるので、ICチップに所定の識別情報が記憶される封印ラベル等において、被貼付体から封印ラベルを剥がす際に、ラベル基材に設けられたV字形状の切込みを起点として、ラベル基材が破壊すると同時に非接触IC媒体のアンテナも破断することが可能となる。
【0016】
また、通信不可能なアンテナ長さで破断されるために、確実に通信機能を不能にすることが可能となるため、正規物品に貼り付けられていた封印ラベルから非接触IC媒体を取り外すことが不可能となり、非接触IC媒体を使い回して偽造するなどの不正行為を有効に防止することができる。
またさらに、V字形状の切込みの先端部に留めを設けることで、セパレータからラベルを剥がす際にラベルが破壊してしまう、あるいは被貼付体に曲げて貼る場合にV字切込み部が浮いてしまう、などの問題を解決するので、貼付作業の効率を向上させることができ、かつまた、被貼付体の形状に依存しないで最も効率のよい切込みを設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の非接触ICラベルの一例を示す側断面図である。 ((a)切込みなしの場合(b)切込みを入れた場合)
【図2】本発明の非接触ICラベルの一例を示す平面図である。 ((a)全体図(b)チップ周辺部拡大図)
【図3】本発明の非接触ICラベルを構成するICタグを示す平面図である。
【図4】本発明の非接触ICラベルを構成する非接触IC媒体のアンテナの長さXと通信距離の関係を示す説明図である。
【図5】本発明の非接触ICラベルを貼り付けて封印した状態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態における非接触ICラベルについて、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態としての非接触ICラベルを示したものである。
なお、図1(b)は図2(a)のY−Y’の側断面を示している。
【0019】
図1において、非接触ICラベルAは、矩形シート状のラベル基材1を備えている。
ラベル基材1の両主面のうち、一方の主面1aには、後述する溶剤検出部12が設けられている。また、溶剤発色層12の表面には、被貼付体の名称などの各種情報が印刷される印刷層11が設けられている。
また、ラベル基材1の他方の主面1bには、ラベル基材1を被貼付体に貼り付けるための接着層(粘着層)5が設けられている。
【0020】
接着層5の表面には、無線により通信を行うための非接触IC媒体7が設けられている。
なお、接着層5の表面に非接触IC媒体7を設けるとしたが、これに限ることはなく、非接触IC媒体7の表面に、接着層5を被覆させてもよい。
また、接着層5の表面には、容易に剥離できるような剥離シート6が仮粘着されている。剥離シート6としては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層されているセパレータが用いられる。
【0021】
非接触IC媒体7は、ICチップの駆動電池を持たないパッシブ型のものである。なお、パッシブ型に代えて、ICチップの駆動電池を有するアクティブ型とすることもできる。この場合には、非接触IC媒体7の構造は煩雑化するが、読取り距離が伸張する効果がある。
【0022】
この非接触IC媒体7は、帯状に延びるベースフィルム8によって接着層5に貼り付けられている。また、非接触IC媒体7は、アルミや銅などの金属により形成されたアンテナ4と、このアンテナ4の長手方向の中央部に搭載され、アンテナ4に電気的に接続されたICチップ3とを備えている。
アンテナ4は、帯状に延ばされて形成されている。このアンテナ4は、例えば、送受信される電波がマイクロ波以上の周波数を有するとき、使用周波数の波長をλとすると、アンテナ4の長手方向の長さをλ/2近傍に設定すると、電波の送受信効率の良いダイポール形のアンテナとして形成可能である。例えば、電波の使用周波数を2.45GHzとすると、ダイポール型におけるアンテナ4の長手方向の最適長さは約50mm〜60mm程度である。
【0023】
非接触IC媒体7は、図示しない情報読取装置からの電波をアンテナ4によって受け、アンテナ4の長手方向に生じる電位差をICチップ3に供給するようになっている。
なお、ベースフィルム8は樹脂フィルムだけでなく、例えば上質紙、中質紙、微塗工紙、コート紙、アート紙、キャスト塗被紙、ガラス質の含浸紙、クラフト紙、合成紙などの紙類を使用することも可能であり、より破断しやすい基材を選定できる。
またアンテナ4も、導電性を有していればよく、導電性ペーストなどを印刷によって形成することも可能である。
【0024】
ICチップ3は、例えば、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.4mm、高さ寸法が0.1mmとされている。なお、辺部の長さ寸法は、0.4mmに代えて、適宜変更可能である。
【0025】
ICチップ3の動作に十分な電力が供給される程度の強度を有する電波が照射されると、ICチップ3は稼動状態となる。ICチップ3は、情報読取装置からの電波に重畳されたタイミング信号やコマンドに合わせて、ICチップ3が有する情報を情報読取装置に返送する。情報読取装置はこの再放射の強度を測定する事で、ICチップ3に格納されている情報を読み出す。このような情報読取装置からICチップ3に対するタイミング信号やコマンドの送信の手続き、及びICチップ3から情報読取装置に対する情報の伝達の手続きの事を、エアプロトコルと称する。
なお、使用周波数がマイクロ波の周波数未満の周波数の場合、例えば13.56MHzとすると、ダイポールアンテナではなく、コイル状のアンテナが多用される。
上記は、偽造防止用ICラベルに用いられるICチップの情報読み出し動作の一例である。
【0026】
ラベル基材1には2辺の切込みからなりV字形状のV字切り込み21が設けられている。
2辺の切り込みのうち、少なくとも1辺はアンテナ基材の形成されていない領域からアンテナ基材の形成されている領域に至るように形成されている。
このとき、V字形状の方向は、V字形状を形成する1辺211がラベルの剥離方向に対して平行になるように配置することが好ましい。(図2では下から上方向に剥離すると想定した場合)これにより、V字形状を起点としてラベル基材の破壊が剥離方向と平行に進むためのきっかけとなり、確実なラベル基材破壊が見込まれる。
【0027】
V字形状の角度θは120度以下であることが好ましい。ある程度の角度があればその頂点近傍をきっかけとしてラベル基材の破壊が進行する。
特にV字形状の角度θが25度以上60度以下であることが好ましい。これは、角度が25度よりも小さい(V字底辺の長さが短すぎる)、もしくは60度よりも大きい(V字底辺の長さが長い)場合、V字切込み21を起点としてラベル基材1の破壊が進み、非接触IC媒体のアンテナ7まで至った際に、破断力を伝える効率が小さくなってしまうため、アンテナ破断させることが出来ない場合がある。
【0028】
また、アンテナ基材の形成されていない領域からアンテナ基材の形成されている領域に至る1辺212の長さが5mm以上であることが好ましい。1辺の長さが5mm以下である(V字面積が小さい)場合、V字切込み21を起点としてラベル基材1の破壊が進み、非接触IC媒体のアンテナ7まで至った際に、破断力を伝える効率が小さくなってしまうため、アンテナ破断させることが出来ない場合がある。
特にV字形状の角度θが25度以上60度以下であり、かつ1辺212の長さが5mm以上であることが好ましい。
【0029】
またさらに、V字切込み212がアンテナ基材8の形成されていない領域からアンテナ基材8の形成されている領域に至るに形成されることが好ましい。このようにすることで効率よくアンテナまで破断力を伝えることができ、アンテナ破断させ、通信機能を不能にさせることが期待できる。さらに、この切り込み212はアンテナ7と垂直方向に入るようにV字形状の角度θを調整して設けることにより、さらに破断力の伝播効果が高まる。
なお、図2では、非接触IC媒体7をラベル基材2に対して33度傾けて配置しているため、V字形状の角度θ=33度とした。
このとき、非接触IC媒体のアンテナ基材8にまで至るように設けられたV字切込み21の1辺212がICチップから5mm以下の位置に入るように設けることが好ましい。
非接触IC媒体7のアンテナ7の片側をカットして通信距離を測定した時、図4のようにアンテナ長さXが5mm以下の場合、完全に通信機能が不能になるので、ラベルを剥離する際に、アンテナ長さが5mm以下の位置で破断するようにV字切込み21を設計することが好ましい。
【0030】
また、図3に示すようにスリット部41を設け、アンテナとICチップとのインピーダンスが巧く合うようにしてもよい。
このスリット部41を断線させると、実質的なインピーダンスが当初の適切な範囲からずれてしまい、例えば利用する波長が不適切な波長に変化してしまう等の不具合を招く。すなわち、この非接触IC媒体のICチップとデータ通信を行おうとしてもデータ通信が巧く出来ないか又は全く出来ないことになる。
そのため、図2に示すように、V字切込み212の延長線上にスリット部41がくるようにV字切込み212を形成することが好ましい。
【0031】
またさらに、V字切込み21の1辺212が非接触IC媒体のアンテナ7の一部にまで至るように設けることもできる。それにより、特に金属薄膜などの場合に、よりアンテナを切断する効果が高くなる。但し、通信機能に影響を及ぼさない程度にまで切込みを調整する必要がある。
【0032】
このように本発明では、ラベル基材を剥離しようとするとラベル基材が破壊すると同時にICタグのアンテナが破断し、アンテナの長手方向の電圧差の発生効率が低下したり、アンテナとICチップとのインピーダンスマッチングの条件が悪くなったり、又はアンテナとICチップとの電気的接続が破断されるなどして、ICチップの稼動が停止したり、ICチップからの情報読み出しが正常に行われなくなる。この為、ICチップの情報が読み出せないということは、アンテナやICチップの不具合、及びこの組み合わせ条件の悪化を意味することになり、これは非接触ICラベルの破壊や剥離を試みようとした履歴、又はそれら破壊や剥離を試みようとする行為が現存する可能性を示唆する事となる。また、ICラベルから非接触IC媒体を取り出して使い回すなどの不正行為を有効に防止することができる。
【0033】
また、ラベル基材1をさらに破断し易くするために、図2に示すように、ラベル基材1に、切込み22,23,25が形成されている。
なお、切込み22〜25の形状は、必要に応じて適宜変更可能であり、直線的でも曲線でもよい。さらに、ICラベルAを剥がすとき、アンテナ4も同時に破断し易くするために、ベースフィルム8にも一定間隔にスリット25を設けることができ、またアンテナ4も脆弱性の基材を用いることができる。例えば、脆性質の塩化ビニルやコート紙などを用いることができる。
これにより、V字切込み以外の切込みからもラベル基材1及びアンテナ4の破断するため、さらに非接触ICラベルとしての機能を破壊する効果が期待できる。また、スリット25をベースフィルム8に設けることにより、よりアンテナ4を破断し易くすることができる。
【0034】
また、本発明ではV字状切り込みの先端部に切り込みが不連続である留め部213を設ける。
留め部が無い場合、セパレータからラベルを剥がす際にラベルが破壊してしまう場合がある。また被貼付体にコ字状に曲げて貼る場合にはV字切込み部が浮いてしまうため、V字切込み形状の角度や大きさが被貼付体に合わせて限定されてしまい、剥離時のラベル基材・アンテナ破壊の効率が低下してしまう可能性がある。
しかし、留め部213を設けることにより、セパレータからラベルを剥がす際にラベルが破壊してしまう、あるいは被貼付体に曲げて貼る場合にV字切込み部が浮いてしまう、などの問題を解決し、さらに自由にV字切込み21を設計することができるため、被貼付体の形体に限定されずに、剥離時のラベル基材・アンテナ破壊に対して最も効率よいV字形状を選定することが可能となる。
また留め部213の大きさとしては、直径0.5〜3.0mmの範囲内であることが好ましい。この大きさは、セパレータから剥がす際にラベルが破壊しない、かつ、被貼付体からラベルを剥離する際にラベル基材が確実に破壊する範囲である。
なお、ここでいう大きさとは2辺の切り込みが直交する交点を中心に直径0.5〜3.0mmの範囲内で2辺の切り込みの不連続な部分を形成するということである。
【0035】
さらに、本実施形態におけるラベル基材1の一方の主面1aには、溶剤検出部12が設けてもよい。
溶剤検出部12は、被貼付体に貼り付けられたラベル基材2を剥離・溶融するための剥離・溶融溶剤と化学反応するようになっている。また、溶剤検出部12は、水不溶性でかつ有機溶剤に対し可溶性の染料粒子を樹脂バインダー中に体質顔料等と分散状態で保持した構造をとる。
接着(粘着)層5の接着(粘着)材は、有機溶剤に対し可溶性を示す。ICラベルAの剥離を試みる場合、溶解性の弱い有機溶剤(エチルアルコールや除光液として用いられるアセトンなど)や市販のシールはがし液等を用いて、ラベル基材1を被貼付体から破損せずに剥がそうとすると、溶剤検出部12に分散状態で保持した染料が溶解し、ラベル基材1に発色として痕跡が残る。すなわち、溶剤検出部12は、溶剤発色機能を有し、溶剤が使用されたことを検出するものである。
本発明で使用する染料粒子は、水不溶性でかつ有機溶剤に可溶性であれば何れでも使用できるが、ロイコ染料や蛍光増白剤などの染料が使用できる。
【0036】
なお、溶剤で剥がす行為以外にドライヤなどの熱で接着層5の粘着材を軟化させて、ICラベルAを剥がして不正利用することが想定される。この場合、上記の染料だけでは溶融する温度までに至らず効果が不十分である。
そこで、このロイコ染料と熱刺激によってロイコ染料と結合する顕色剤を合わせて分散させることにより、熱刺激に対してはサーマル発色材料を使用することができる。この場合、溶剤検出部12は、サーマル発色機能を有するものである。サーマル発色の場合、ロイコ染料は通常無色か淡色の材料が使用され、サーマルで反応した際に色調として顕在化するのが適している。
なお、溶剤検出部12は、溶剤発色機能又はサーマル発色機能の少なくとも一方の機能を有していればよい。
【0037】
また、さらに印刷層を設けてもよい。印刷層としては特に限定するものではなく、公知の印刷方法で形成することができる。また転写方法で形成してもよい。
【0038】
さらに、本実施形態における接着(粘着)層5の粘着力は、JIS Z0237により、8000mN/25mmに設定されている。
ここで、偽造防止用ラベルにおいて、非接触IC媒体を被覆した接着層には、被貼付体からラベル基材を剥がそうとした際に、ラベル基材が破断するようにするために、ラベル基材の破断力よりも被貼付体と接着剤との粘着力を強くする必要がある。
したがって、接着層には、JIS Z0237により、粘着力が、8000mN/25mm以上30000mN/25mm以下の強度を持つ材料を選定する。接着層の粘着力はラベル基材の破断強度より大きいことが望まれるが、実際の剥離作業においてスリット等で脆弱化したラベル基材は8000mN/25mm以上の粘着力があれば剥離の痕跡を残すことができる。
【0039】
以上より、本発明における非接触ICラベルは、ラベルを被貼付体から剥がそうとする際に、非接触IC媒体周辺に設けられたV字形状の切込みを起点として、ラベル基材の破壊を効率よく進めることができ、さらに同時に非接触IC媒体のアンテナを破断させ通信機能を不能にすることが確実に可能となる。また、V字切込みの先端部に留めを設けることによって、セパレータからラベルを剥がす際に破壊させることなく、かつ被貼付体に貼り付けた際に浮きなく貼ることが可能となり、被貼付体の形体に限定されず、アンテナ破断に最も効率のよいV字切込みを設計することが可能である。
このように、本発明の非接触ICラベルを用いることにより、ICラベルを被貼付体から剥がして開封しようとすると、ラベル基材が破壊、同時に非接触IC媒体のアンテナも断線して通信不能になるため、その痕跡を明確に示すことができる。また同様に、ICラベルから非接触IC媒体を外して偽造品に使い回そうとすると、非接触IC媒体は通信機能が不能になるために偽造行為を完全に不可能にすることができる。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材(幅60mm、長さ39mm)に、溶剤発色性のインキを塗布した。その上に、オフセット印刷により絵柄を印刷した。
次に、アンテナ基材として38ミクロンのPETフィルムを用い、このPETフィルムの上に、アルミニウム薄膜のアンテナをエッチングにより形成した。このアンテナと金製のバンプを持つICチップとの接続部に異方導電性接着剤を用い、熱圧着することによって接続して、非接触IC媒体を作製した。
ラベル基材層に12000mN/25mmの粘着力を持つアクリル系の粘着剤を塗布し、前記非接触IC媒体を積層形成した。最後に、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施したセパレータ(厚さ112μm)を仮粘着した。
図2のように、ラベル周囲(長さ3mm、深さ1.5mm、留め直径1.0mm)、および各角部(長さ7.5mm)、ラベル中央部(X字形状、長さ4mm、留め直径0.75mm)アンテナ設置部分(4mm間隔)、さらにICチップから1.5mmの位置にV字形状の1辺が入るように配置して先端部に留めを設けたV字切込み(角度33度、長さ13mm、留め直径1.5mm)を設計した抜き型を作製し、前記ICラベルを抜き型で抜いてICラベルAを作製した。
【0041】
<実施例2>
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材に絵柄を印刷し、他方の主面に接着層と非接触ICラベルを積層形成した。その後、実施例1と同様に抜き型を作製して、ICラベルCを作製した。但し、V字切込み21の1辺212の大きさを3mmとし、角度θも55度とした。
【0042】
<実施例3>
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材に絵柄を印刷し、他方の主面に接着層と非接触ICラベルを積層形成した。その後、実施例1と同様に抜き型を作製して、ICラベルCを作製した。但し、V字切込み21の1辺212の大きさを3mmとし、角度θも80度とした。
【0043】
<比較例1>
厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材上に絵柄を印刷し、他方の主面に接着層と非接触ICラベルを積層形成した。その後、実施例1と同様に抜き型を用いて、ICラベルBを作製した。但し、V字切込み21のない形状とした。
【0044】
<比較例2>
また、厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材に絵柄を印刷し、他方の主面に接着層とICタグを積層形成した。その後、実施例1と同様に抜き型を作製して、ICラベルDを作製した。但し、V字切込み21の留めのない形状とした。
【0045】
このようにして作製した、実施例1及び比較例1,2,3のICラベルA,B,C,Dを、図5のように商品が内蔵されたボックスBに貼り付けた。その後、ICラベルA,B,C,Dをボックス33から慎重に剥がした。
【0046】
実施例1、2のICラベルAでは、V字形状の切込みを起点にして、まずラベル基材が破壊し、その後非接触IC媒体のアンテナ基材およびアンテナにまで進行してアンテナがチップから1.5mmの長さの位置で切断され、完全に非接触ICラベルとしての機能を破壊することができた。さらに、ICラベルAを、溶剤を用いてボックスBから剥がしたところ、ラベル基材自体が溶剤により発色して、その痕跡をはっきり確認することができた。
【0047】
また、実施例3のICラベルAでは、勢いよく剥がした際は実施例1、2と同様アンテナがチップから1.5mmの長さの位置で切断され、完全に非接触ICラベルとしての機能を破壊することができた。慎重に剥がした場合には実施例1,2ほどきれいではないがアンテナの切断をするができ、非接触ICラベルとしての機能を破壊することができた。
【0048】
それに対し、比較例1のICラベルB,Cでは、勢いよく剥がした際には、スリットや接着強度の違いからラベル基材の破断が期待できるが、慎重に剥がした際にはラベルは破断しなかった。特に、アンテナの破断は困難であった。また、溶剤等を用いることによって、容易にボックスBから剥がすことができ、使い回しも可能であった。
【0049】
また、比較例3のICラベルDでは、まずセパレータから剥がす際にV字切込み部が破壊した。さらにボックスBの角部に貼り付けた際に、V字切込み部が浮いてしまい、貼付時の作業効率が非常に悪く、またラベルとしての機能も損なってしまった。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
A 非接触ICラベル
B 被貼付体
1 ラベル基材
11 印刷層
12 溶剤検出部(溶剤発色層)
21 V字切込み
22〜25 切込み
3 ICチップ
4 アンテナ
5 接着層(粘着層)
6 セパレータ
7 非接触IC媒体
8 アンテナ基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル基材と、ラベル基材の一方の面上に形成された接着または粘着層と、
該粘着層上の一部に形成された非接触IC媒体と、を有する非接触ICラベルにおいて、
該非接触IC媒体が、アンテナ基材と該アンテナ基材上に形成されたアンテナ及びアンテナに接続されたICチップを有し、
該非接触ICラベルに2辺の切り込みからなるV字状の切り込みが設けられ、
該V字状切り込みの少なくとも1辺が、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられ、
該V字状切り込みの先端部に切り込みが不連続である留め部を有することを特徴とする非接触ICラベル。
【請求項2】
前記V字形状を形成する2辺の切込みのなす角度が25度以上かつ60度以下であることを特徴とする請求項1に記載の非接触ICラベル。
【請求項3】
前記V字状切り込みのうち、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられた1辺の長さが5mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICラベル。
【請求項4】
前記V字状切り込みのうち、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられた1辺が、ICチップの周囲5mm以内の位置に達するように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非接触ICラベル。
【請求項5】
前記V字状切り込みのうち、アンテナ基材の形成されていない領域から形成された領域に至るように設けられた1辺が、アンテナに達するように設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非接触ICラベル。
【請求項6】
前記留めの大きさが直径0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非接触ICラベル。
【請求項7】
前記ラベル基材の外周囲および内部に切込みを設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の非接触ICラベル。
【請求項8】
前記ラベル基材に、溶剤検出部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7に記載の非接触ICラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−217242(P2010−217242A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60690(P2009−60690)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(591186888)株式会社トッパンTDKレーベル (46)
【Fターム(参考)】