説明

非接触IC媒体通信システム、通信装置、非接触IC媒体通信方法、及びそのプログラム

【課題】この発明は、システム内の電波を制御すべき対象者を容易に識別することを可能にし、より確実に前記電波を制御することで、前記対象者に安心感を与えることができる非接触IC媒体通信システム、通信装置、非接触IC媒体通信方法、及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】前記通信装置は、前記非接触IC媒体との通信により、該非接触IC媒体の識別情報を読取るとともに、該識別情報に基づいて、前記通信装置から前記非接触IC媒体に送信される電波のレベルを制御する送信レベル制御手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触IC媒体と通信するための非接触IC媒体通信システム、通信装置、非接触IC媒体通信方法、及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、専用の通信装置を用いて非接触IC媒体との間で電波を送受信することにより、該非接触IC媒体と非接触で通信することを可能にした通信システムが知られている。
【0003】
このような通信システムは、所定の施設にて管理対象物(人や物品等を含む)の出入りを許可/制限するいわゆるセキュリティシステムや、前記管理対象物の居場所を判定する居場所管理システム等に広く採用されている。
【0004】
しかしながら、その反面、近年では、非接触IC媒体と通信装置との間で通信を行う際に送受信される電波が、医療機器、例えば心臓ペースメーカの動作に影響を及ぼす可能性が指摘されている。このため、心臓ペースメーカの所有者は、自身の周辺で上述した通信システムが採用されることに対し、不安を抱く可能性がある。
【0005】
また、近年、電波(電磁波)が人体の健康に及ぼす影響について様々な学説が発表されていることに伴い、例えば、乳幼児を持つ保護者等は、電磁波が自身の子供に及ぼす影響について不安を抱いているという実情もある。このため、乳幼児を持つ保護者等についても、心臓ペースメーカの所有者と同様、周辺で上述した通信システムが採用されることに対し、不安を抱く可能性がある。
【0006】
さらに、このような背景から、上述した通信システムの採用を検討している側も、電波の影響を不安視する者に配慮して、前記通信システムを採用することに躊躇する傾向がある。
【0007】
ところで、心臓ペースメーカの所有者に対する電波の影響を考慮した技術としては、例えば、下記特許文献1に開示されたものがある。下記特許文献1では、非接触IC媒体と通信装置との間の非接触の通信を利用して、電波送信源となる携帯電話を制御するようにしたシステムが開示されている。
【0008】
具体的には、携帯電話端末の所有者に、非接触IC媒体を身に付けさせる一方、前記携帯電話端末側に通信装置を備える構成となっている。
【0009】
そして、携帯電話端末の所有者が心臓ペースメーカ所有者に接近した時には、携帯電話端末の所有者自らの判断により、前記非接触IC媒体を前記通信装置に近づけ、非接触の通信を行わせる。これにより、前記非接触IC媒体に記憶された制御情報を前記通信装置に読取らせ、携帯電話端末に対して電力供給停止制御や、電波送信禁止制御を実行できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−96557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている技術は、既存の無線通信システム(ナースコールシステム)に用いられる携帯電話端末からの電波送信を非接触IC媒体通信システムを利用して制御するものであって、非接触IC媒体通信システムにおける電波の送受信そのものを制御するものではない。
【0012】
さらに、前記特許文献1に開示された技術では、上述したように、電波送信源となる携帯電話端末の所有者が、自らの判断によって意図的に通信装置を非接触IC媒体と通信させなければならず、この場合、制御の確実性に問題がある。
【0013】
また、前記特許文献1に開示された技術は、例えば、医師や看護士等、医療施設における従事者が、心臓ペースメーカの所有者を予め把握している場合にのみ実現できるものである。特に、不特定多数の者が行き来する施設の場合、心臓ペースメーカ所有者について言えば、非所有者と外見上見分けがつかないために、通信システム内の電波を制御すべきか否かを判断することは容易ではない。
【0014】
この発明は、上述の問題に鑑み、システム内の電波を制御すべき対象者を容易に識別することを可能にし、より確実に前記電波を制御することで、前記対象者に安心感を与えることができる非接触IC媒体通信システム、通信装置、非接触IC媒体通信方法、及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、非接触IC媒体と、該非接触IC媒体と通信する通信装置とを備えた非接触IC媒体通信システムであって、前記通信装置は、前記非接触IC媒体との通信により、該非接触IC媒体の識別情報を読取るとともに、該識別情報に基づいて、前記通信装置から前記非接触IC媒体に送信される電波のレベルを制御する送信レベル制御手段を備えた非接触IC媒体通信システムであることを特徴とする。
【0016】
前記非接触IC媒体は、RFIDタグのように、非接触で通信できると共にICを備えている媒体で構成することができる。
【0017】
前記通信装置は、RFIDタグとの通信により、RFIDタグの情報を読取ったり、RFIDタグに対して情報を書き込んだりすることが可能なリーダライタ装置や、RFIDタグとの通信により、RFIDタグの情報の読取りのみを可能とするリーダ装置で構成することができる。
【0018】
この発明により、非接触IC媒体の識別情報に基づいて、非接触IC媒体を所持する不特定多数の者の中から、電波の送信レベルを制御すべき対象者を容易に識別することができる。そして、前記識別情報の読取り結果に基づいて、電波の送信レベルを通信装置で確実に制御できるため、通信装置に接近する前記対象者に対して安心感を与えることができる。
【0019】
この発明の態様として、前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信を停止するように制御する構成とすることができる。
これにより、前記対象者に非接触IC媒体通信システムに対する安心感をより強く与えることができる。
【0020】
この発明の態様として、前記通信装置の前記送信レベル制御手段により制御した前記電波の送信レベルを、制御前の送信レベルに復帰させる送信レベル復帰操作手段を備えた構成とすることができる。
【0021】
送信レベル復帰操作手段は、操作者の押下操作により、送信レベルの復帰処理を実行させる押しボタンスイッチで構成することができる。
【0022】
これにより、前記対象者を含め、通信装置の周辺に人がいないことを確認次第、送信レベル復帰操作手段を操作することで、前記対象者の安心感を損なうことなく、電波の送信レベルを制御前のレベルに復帰させることができる。
【0023】
この発明の態様として、前記通信装置の前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信レベルを、時間経過とともに段階的に増加させる送信レベル復帰制御部を備えた構成とすることができる。
これにより、前記送信レベルが制御前のレベルに復帰するまでに、前記対象者が通信装置から遠ざかるための時間を稼ぐことができ、通信装置から離れつつある前記対象者に安心感を与えることができる。また、前記送信レベルの復帰制御開始直後に、前記対象者が再び通信装置に接近したとしても、前記対象者の不安感を軽減できる。
【0024】
この発明の態様として、前記非接触IC媒体を、電源装置を有するアクティブタグとした構成とすることができる。
これにより、電源装置を備えないパッシブタグに比べて電波の送信レベルが高くなり、該電波の送信距離を長くすることができる。このため、前記対象者が通信装置から遠く離れていても、通信装置は、識別情報を含む電波を受信することができ、電波の送信レベルをより早いタイミングで制御することができる。
【0025】
この発明の態様として、前記非接触IC媒体は、前記通信装置から送信される電波の受信レベルを算出する受信レベル算出部と、該受信レベル算出部の算出値に基づき、受信レベルを報知する受信レベル報知手段を備えた構成とすることができる。
【0026】
受信レベル報知手段は、点灯表示位置や、点灯する色、文字等の変化によって受信レベルを報知する点灯表示手段で構成することができ、この点灯表示手段は、LED、有機EL等の半導体発光素子や、その他の発光手段で構成することができる。
また、受信レベル報知手段は、音量や音質等の変化によって受信レベルを報知するスピーカ装置で構成することができる。
【0027】
これにより、前記対象者は、自身の周辺での電波レベルを容易に認識することが可能になり、その結果、より強い安心感を得ることができる。
【0028】
またこの発明は、非接触IC媒体と通信する通信装置であって、前記非接触IC媒体との通信により、該非接触IC媒体の識別情報を読取るとともに、該識別情報に基づいて、前記通信装置から前記非接触IC媒体に送信される電波のレベルを制御する送信レベル制御手段を備えた通信装置であることを特徴とする。
【0029】
この発明により、非接触IC媒体の識別情報のうち、所定の識別情報を読取った時には、非接触IC媒体を所持する不特定多数の者の中から、電波の送信レベルを制御すべき対象者を容易に識別することができる。そして、所定の識別情報の読取りに基づいて、電波の送信レベルを確実に制御することにより、通信装置に接近する前記対象者に対して安心感を与えることができる。
【0030】
この発明の態様として、前記送信レベル制御手段は、前記非接触IC媒体から受信する電波の受信レベルを算出する受信レベル算出部を備えるとともに、該受信レベル算出部における算出値と、予め設定した閾値とを比較する受信レベル比較部を備え、前記識別情報と、前記受信レベル比較部での比較結果とに基づいて、前記電波の送信レベルを制御する構成とすることができる。
これにより、通信装置と非接触IC媒体との間の通信が制限される状態を必要最低限に抑制することができる。
【0031】
この発明の態様として、前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信を停止するように制御する構成とすることができる。
これにより、前記対象者に、非接触IC媒体通信システムに対する安心感をより強く与えることができる。
【0032】
この発明の態様として、前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信レベルを、予め設定した閾値と比較し、前記識別情報、及び前記閾値との比較結果に基づいて、前記電波の送信状態を維持しつつ、該電波の送信レベルを前記閾値未満となるように制御する構成とすることができる。
これにより、前記対象者の安心感を損なうことなく、通信装置と非接触IC媒体との間の通信が可能な状態を継続させることができる。
【0033】
この発明の態様として、前記送信レベル制御手段により制御した前記電波の送信レベルを、制御前の送信レベルに復帰させる送信レベル復帰操作手段を備えた構成とすることができる。
これにより、前記対象者を含め、通信装置の周辺に人がいないことを確認次第、送信レベル復帰操作手段を操作することで、前記対象者の安心感を損なうことなく、電波の送信レベルを制御前のレベルに復帰させることができる。
【0034】
この発明の態様として、前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信レベルを、時間経過とともに段階的に増加させる送信レベル復帰制御部を備えた構成とすることができる。
これにより、前記送信レベルが制御前のレベルに復帰するまでに、前記対象者が通信装置から遠ざかるための時間を稼ぐことができ、通信装置から離れつつある前記対象者に安心感を与えることができる。また、前記送信レベルの復帰制御開始直後に、前記対象者が再び通信装置に接近したとしても、前記対象者の不安感を軽減できる。
【0035】
この発明の態様として、前記送信レベル復帰制御部により制御される前記電波の送信レベルを報知する送信レベル報知手段を備えた構成とすることができる。
【0036】
送信レベル報知手段は、点灯表示位置や、点灯する色、文字等の変化によって送信レベルを報知する点灯表示手段で構成することができ、この点灯表示手段は、LED、有機EL等の半導体発光素子や、その他の発光手段で構成することができる。
また、送信レベル報知手段は、音量や音質等の変化によって送信レベルを報知するスピーカ装置で構成することができる
【0037】
これにより、前記対象者は、通信装置の電波の送信レベルを容易に認識することが可能になり、その結果、より強い安心感を得ることができる。
【0038】
またこの発明は、通信装置により非接触IC媒体と通信する非接触IC媒体通信方法であって、前記非接触IC媒体と通信することにより、前記通信装置で、非接触IC媒体の識別情報を読取るステップと、該識別情報に基づいて、前記通信装置の送信レベル制御手段で、電波の送信レベルを制御するステップとを有する非接触IC媒体通信方法であることを特徴とする。
【0039】
この発明により、非接触IC媒体の識別情報に基づいて、非接触IC媒体を所持する不特定多数の者の中から、電波の送信レベルを制御すべき対象者を容易に識別することができる。そして、前記識別情報の読取り結果に基づいて、電波の送信レベルを通信装置で確実に制御できるため、通信装置に接近する前記対象者に対して安心感を与えることができる。
【0040】
またこの発明は、コンピュータに、通信装置により非接触IC媒体と通信するステップを実行させる非接触IC媒体通信プログラムであって、前記非接触IC媒体と通信することにより、前記通信装置で、非接触IC媒体の識別情報を読取るステップと、該識別情報に基づいて、前記通信装置の送信レベル制御手段で、電波の送信レベルを制御するステップとをコンピュータに実行させる非接触IC媒体通信プログラムであることを特徴とする。
【0041】
この発明により、コンピュータに非接触IC媒体通信プログラムをインストールして、通信装置に接近する前記対象者に対して安心感を与える非接触IC媒体通信システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明により、システム内の電波を制御すべき対象者を容易に識別することを可能にし、より確実に前記電波を制御することで、前記対象者に安心感を与えることができる非接触IC媒体通信システム、通信装置、非接触IC媒体通信方法、及びそのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の第1実施形態に係る非接触IC媒体通信システムを示す概略図であって、(a)心臓ペースメーカの所有者である通行人がリーダライタ装置から離れている場合を示す概略図、(b)同通行人がリーダライタ装置に接近した場合を示す概略図。
【図2】図1に対応するブロック図。
【図3】非接触IC媒体通信システムの動作を示すフローチャート。
【図4】この発明の第3実施形態に係る非接触IC媒体通信システムを示す概略図。
【図5】図6に対応するブロック図。
【図6】LEDの表示例を示す図。
【図7】非接触IC媒体通信システムの動作を示すフローチャート。
【図8】(a)この発明の第4実施形態に係る非接触IC媒体通信システムを示す概略図、(b)この発明の第1実施形態に係る非接触IC媒体通信システムを示す概略図。
【図9】図10(a)に対応するブロック図。
【図10】LEDの表示例を示す図。
【図11】この発明の第5実施形態に係る非接触IC媒体通信システムを示す概略図。
【図12】図13に対応するブロック図。
【図13】この発明の第7実施形態に係る非接触IC媒体通信システムを適用した居場所管理システムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図3に示す第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る非接触IC媒体通信システム(以下、通信システムと略記する。)1を示す概略図であり、図2は、図1に対応するブロック図である。
【0045】
本実施形態に係る通信システム1は、図1、図2に示すように、通信装置としてのリーダライタ装置30と、心臓ペースメーカ50を所持する通行人P1が所持する非接触IC媒体としてのRFIDタグ(以下、タグと略記する)40とから構成されている。
【0046】
リーダライタ装置30は、本体30aとアンテナ31とにより構成され、タグ40との間で電波Wr、Wtの送受信を行うことにより、このタグ40と非接触で通信することが可能となっている。そして、上述したタグ40との通信により、タグ40の情報を読取ったり、タグ40に対して情報を書き込んだりすることが可能となっている。また、リーダライタ装置30のアンテナ31には、後述する復帰操作ボタン32が設けられている。
【0047】
一方、タグ40は、例えば、図1に示すように環状の首紐2に取付けられており、通行人P1は、この首紐2を自身の首に掛けることにより、タグ40を首から吊り下げた状態で所持している。但し、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、このタグ40が心臓ペースメーカ50に内蔵されていてもよい。この場合、心臓ペースメーカ50の動作に影響を及ぼすことがない構成となっている。
【0048】
また、リーダライタ装置30について、そのアンテナ31は、電波Wrを発生させ、通行人P1のタグ40に向けて送信することで、タグ40側のアンテナ41(図2参照)から、後述するタグ40の識別情報を含む電波Wtを受信する。
【0049】
ここで、リーダライタ装置30の本体30aは、図2に示すように、制御部33と、記憶部34とを備えている。このうち、制御部33は、アンテナ31での電波Wr、Wtの送受信を制御する。記憶部34には、主に制御部33が制御動作を実行するためのプログラムの他、後述する送信レベル制御IDが記憶されている。本実施形態では、この送信レベル制御IDとして、例えば、5桁の番号「00000」を記憶している。
【0050】
ところで、通信システム1では、タグ40から送信される電波Wtをアンテナ31が受信した時の受信レベルに基づき、タグ40の周辺での電波Wrのレベルを推定することが可能である。そこで、本実施形態では、制御部33(図2参照)に、タグ40のアンテナ41から送信された電波Wtをアンテナ31が受信した時の受信レベルを算出する受信レベル算出部33aを備えている。そして、記憶部34には、図1に示す通行人P1が所持する心臓ペースメーカ50が許容できる最大レベルの電波Wrをタグ40が受信している時にアンテナ31が受信する電波Wtの受信レベルを閾値として記憶している。
【0051】
本実施形態では、タグ40が、電池等の電源装置を備えていないいわゆるパッシブタグとされており、アンテナ41の他、主に、制御部42、記憶部43を備えている。このうち、制御部42は、リーダライタ装置30のアンテナ31から送信された電波Wrをアンテナ41が受信した時、アンテナ41から送信する電波Wtを制御する。
【0052】
記憶部43には、主に制御部42が制御動作を実行するためのプログラムの他、予め割り当てられた識別情報としてのIDコードが記憶されている。このIDコードは、通行人P1(タグ40)を識別するためのコードであり、通行人P1の場合には、記憶部43に、心臓ペースメーカ50を所持する者に共通のIDコードとして、例えば、5桁の番号「00000」が割り当てられている。
【0053】
リーダライタ装置30では、通常時、タグ40と非接触の通信を行うべくアンテナ31から電波Wrを送信している。ここで、タグ40を所持した通行人P1がリーダライタ装置30(アンテナ31)に接近すると、タグ40では、アンテナ41が電波Wrを受信することにより、制御部42が作動する。
【0054】
この時、制御部42は、記憶部43からIDコードを読出し、このIDコードに関連する情報を含む電波Wtを、アンテナ41からリーダライタ装置30のアンテナ31に送信する。
【0055】
また、リーダライタ装置30では、アンテナ31がタグ40から電波Wtを受信すると、制御部33が、読取ったIDコードと、記憶部34にて記憶した送信レベル制御ID「00000」とを照合する。そして、読取った前記IDコードが前記送信レベル制御IDと一致した時、受信レベル算出部33aで算出した電波Wtの受信レベルと、記憶部34に記憶した受信レベルの閾値とを比較するようになっている。ここで、前記受信レベルが前記閾値未満である時には、図1(a)及び図2(a)に示すように、アンテナ31からの電波Wrの送信状態を維持するようになっている。
【0056】
但し、通行人P1(タグ40)が、図1(b)、図2(b)に示すようにリーダライタ装置30に接近し、アンテナ31における電波Wtの受信レベルが前記閾値に達した時には、受信した電波Wtから読取ったIDコードが「00000」であることに基づき、電波Wrの送信を停止するようになっている。図1(b)及び図2(b)等の各図では、電波Wrの送信が停止した状態を、二点鎖線の矢印で模式的に示している、また、各図では、電波Wr、Wtの送受信レベルの高低を、矢印の太さで表現している。
【0057】
また、本実施形態では、アンテナ31からの電波Wrの送信が停止された時、通信システム1の管理者等が復帰操作ボタン32を押下操作することで、電波Wrの送信停止状態を解除でき、電波Wrの送信レベルを、制御前のレベルに復帰させることができるようになっている。
【0058】
次に、図3に示すフローチャートとともに、本実施形態に係る通信システム1の動作について説明する。
通常時、リーダライタ装置30では、制御部33がアンテナ31を制御することにより、タグ40と通信を行うための電波Wrが送信されている(ステップS1)。ここで、リーダライタ装置30の周辺に通行人P1、つまりはタグ40が接近していなければ(ステップS2:NO)、ステップS1に戻る一方、リーダライタ装置30にタグ40が接近すると(ステップS2:YES)、タグ40は、電波Wrを受信し(ステップS3)、タグ40の制御部42が、IDコードに関連する情報を含む電波Wtを、アンテナ31に向けて送信する(ステップS4)。
【0059】
ここで、リーダライタ装置30の制御部33は、ステップS5にてアンテナ31が受信した電波Wtから、タグ40のIDコードを読取り、ステップS6にて、読取ったIDコードが、予め記憶部34に記憶された送信レベル制御ID「00000」であるか否かを判定する。ここで、読取ったIDコードが、前記送信レベル制御IDでない時には(ステップS6:NO)、ステップS1に戻り、ステップS1〜S6の処理が繰り返される。
【0060】
一方、前記送信レベル制御IDである時には(ステップS6:YES)、リーダライタ装置30の制御部33の受信レベル算出部33aが、記憶部34から前記閾値を読出し、タグ40から送信された電波Wtの受信レベルを、前記閾値と比較する(ステップS7)。
【0061】
ここで、受信レベルが閾値以上である時には(ステップS7:YES)、制御部33は、アンテナ31を制御して電波Wrの送信を停止させる(ステップS8)。
【0062】
次に、制御部33は、前記管理者等により、復帰操作ボタン32が操作されたか否かを判定する(ステップS9)。この時、復帰操作ボタン32が操作されていなければ(ステップS9:NO)、制御部33は、ステップS8に戻る一方、復帰操作ボタン32が操作されれば(ステップS9:YES)、アンテナ31からの電波Wrの送信を再開させ、その送信レベルを制御前のレベルに復帰させた後(ステップS10)、再びステップS1の処理に戻る。
【0063】
一方、ステップS7において、前記受信レベルが前記閾値未満である時には(ステップS7:NO)、ステップS1に戻り、アンテナ31からの電波Wrの送信状態を継続する。そして、ステップS7にて、前記受信レベルが前記閾値以上となるまで、ステップS1〜S7の処理を繰り返す。
【0064】
このように、本実施形態では、タグ40に割り当てられた識別情報として、IDコードをタグ40の記憶部43に記憶させ、特に、心臓ペースメーカ50の所有者である通行人P1の場合、心臓ペースメーカ50の所有者に共通のIDコード「00000」を記憶させている。
【0065】
そして、リーダライタ装置30の記憶部34には、予め前記共通のIDコードと同じIDを、送信レベル制御IDとして記憶させ、前記共通のIDコードを読取った時には、アンテナ31からの電波Wrの送信を停止するようになっている。
【0066】
ここで、通行人P1は、自身が所有する心臓ペースメーカ50に対して電波Wrの影響が及ぶことを心配している可能性がある。このため、通行人P1が、リーダライタ装置30に接近した時、アンテナ31から送信される電波Wrの送信レベルが適切に制御されるような構成にすれば、通行人P1に安心感を与えることができると考えられる。
【0067】
本実施形態では、タグ40に記憶した識別情報としてのIDコード「00000」に基づき、不特定多数の通行人の中から、電波Wrの送信レベルを制御すべき対象者である通行人P1を容易に識別することができる。そして、前記IDコードに基づいてアンテナ31から送信される電波Wrの送信レベルを確実に制御できるため、リーダライタ装置30に接近する通行人P1に対して安心感を与えることができる。
【0068】
また、上述したように、前記IDコード「00000」の読取りに基づいて、アンテナ31から送信する電波Wrを停止することにより、通行人P1に、通信システム1に対する安心感をより強く与えることができる。
【0069】
ところで、上述したように、近年、通信システム内において送受信される電波が心臓ペースメーカに与える影響について懸念されているが、実際には、周辺の電波レベルが所定未満である場合には、心臓ペースメーカの動作に及ぼす影響は小さいか、または殆どない場合もある。
【0070】
本実施形態では、タグ40から送信された電波の受信レベルと、予め設定した前記閾値とを比較し、前記受信レベルが閾値以上である時に限り、電波Wrの送信を停止するようにしたため、リーダライタ装置30とタグ40との間の通信が制限される状態を必要最低限に抑制することができる。
【0071】
このため、図1(a)に示すように、通行人P1がリーダライタ装置30から大きく遠ざかることによって、心臓ペースメーカ50周辺の電波レベルが、心臓ペースメーカ50の動作に影響を及ぼさない程度となった時に、タグ40′を所持した心臓ペースメーカ50の非所有者である別の通行人P2がリーダライタ装置30に接近すると、この通行人P2に対しては、リーダライタ装置30とタグ40′との間の非接触の通信を実行することができる。
【0072】
但し、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、通行人P1への配慮を重視する場合には、例えば、前記IDコード「00000」を読取った時、アンテナ31からの電波Wrの送信を直ちに停止するようにしてもよい。
【0073】
ところで、リーダライタ装置30のアンテナ31から送信される電波Wrの送信範囲から通行人P1が外れた時には、アンテナ31からの電波Wrの送信を再開させることが可能である。
【0074】
そこで、通行人P1を含め、リーダライタ装置30の周辺に人がいないことを確認次第、復帰操作ボタン32を操作することで、通行人P1の安心感を損なうことなく、電波Wrの送信レベルを制御前のレベルに復帰させることができる。そして、後から来た通行人が、通信システム1を利用可能な状態に戻すことができる。
【0075】
なお、本実施形態では、復帰操作ボタン32をリーダライタ装置30に設けることとしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、パーソナルコンピュータ等の通信端末装置をリーダライタ装置30に接続し、この通信端末装置において適宜の入力操作を行うことにより、電波Wrの送信を再開できるように構成してもよい。
【0076】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、心臓ペースメーカ50の所有者である通行人P1が所持するタグ40のIDコードをリーダライタ装置30が読取った時、アンテナ31からの電波Wrの送信を停止することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0077】
例えば、リーダライタ装置30のアンテナ31から電波Wrを送信する状態を維持しつつ、通行人P1の心臓ペースメーカ50の動作に及ぼす影響が小さいか、または殆どないと考えられるレベルまで電波Wrの送信レベルを低減させるようにしてもよい。
【0078】
本実施形態では、リーダライタ装置30が、タグ40から送信される電波WtからIDコード「00000」を読取った時、電波Wrの送信レベルが予め設定した閾値以上であった時、制御部33は、電波Wrの送信レベルを、通常のレベルから低減させ、前記閾値未満の送信レベルとする。
【0079】
この場合、電波Wrの送信レベルは低減しているものの、該電波Wrの送信状態は維持されているため、リーダライタ装置30とタグ40との間の通信は引き続き可能である。このため、通行人P1の安心感を損なうことなく、リーダライタ装置30とタグ40との間の通信が可能な状態を継続させることができる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、図4〜図7に示す第3実施形態について説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係る通信システム101を示す概略図であり、図5は、図4に対応するブロック図である。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0081】
上述した各実施形態では、アンテナ31から送信する電波Wrの送信レベルが停止または低減された後、復帰操作ボタン32を操作すると、前記送信レベルを制御前のレベルに復帰させることができるように構成したが、復帰操作ボタン32が操作された時、前記送信レベルを、時間経過とともに段階的に制御前の送信レベルにまで増加させるようにしてもよい。図4、図5では、通信システム101において、復帰操作ボタン32が操作されたことにより、アンテナ131から送信される電波Wrの送信レベルが、時間経過とともに、Wra、Wrb、Wrc、…の順に徐々に増加していることを、矢印の太さ及び長さで表現している。
【0082】
本実施形態では、リーダライタ装置130の本体130aに備えられた記憶部134(図5参照)に、復帰操作ボタン32が操作されてからの経過時間と前記送信レベルとの関係を設定したマップが記憶されており、制御部133(図5参照)は、このマップに基づき、アンテナ131から送信する電波Wrの送信レベルを時間経過とともに段階的に増加させ、制御前のレベルに復帰させる。
【0083】
また、本実施形態では、図5に示すように、リーダライタ装置130の制御部133が、第1実施形態と同様、受信レベル算出部33aを備えており、心臓ペースメーカ150(図4参照)の所有者である通行人P3のタグ140から送信される電波Wtの受信レベルを算出可能としている。そして、受信レベル算出部33aにて算出した電波Wtの受信レベルが所定以上である時、前記送信レベルの復帰制御を停止する一方、電波Wtの受信レベルが所定未満である時、前記送信レベルの復帰制御を続行するようになっている。
【0084】
また、アンテナ131には、その表面に、図4〜図6に示すような複数(ここでは3つ)のLED136〜138が設けられている。これら各LED136〜138は、点灯する際の色がそれぞれ異なっており、増加する前記送信レベルに応じて、各LED136〜138が順番に点灯するようになっている。
【0085】
具体的には、送信レベルが低レベルの時には、図6(a)に示すように一番下のLED136が点灯し、送信レベルが、復帰初期の送信レベルと制御前の送信レベルとの略中間の中レベルとなった時には、図6(b)に示すように中央のLED137が点灯し、制御前のレベルと同等の高レベルとなった時には、図6(c)に示すように一番上のLED138が点灯するようになっている。
【0086】
但し、LED136〜138を点灯させる方式は、必ずしもこれに限定されるものではなく、前記送信レベルが増加するにしたがって、点灯するLEDが増加するような方式であってもよい。
【0087】
次に、図7に示すフローチャートとともに、本実施形態に係る通信システム101の動作について説明する。
先ず、本実施形態では、ステップS101〜S109において、第1実施形態の図3に示すフローチャートのS1〜S9に対応する処理がなされる。ここで、ステップS109において、復帰操作ボタン32が操作されれば(ステップS109:YES)、ステップS110に移行し、アンテナ131からの電波Wrの送信を再開させる。このステップS110では、リーダライタ装置130から送信する電波の送信レベルを、制御前のものと比べてはるかに低いレベルとする。この時、制御部133は、LED136を点灯させる。
【0088】
また、制御部133は、ステップS111において、受信レベル算出部33aの算出結果に基づき、タグ140、つまりは通行人P3がリーダライタ装置130に再び接近しているか否かを判定している。
【0089】
ここで、通行人P3が所定距離以下のところまでリーダライタ装置130に接近し、タグ140からの電波Wtの受信レベルが所定以上となった時には(ステップS111:YES)、ステップS108に戻る。一方、通行人P3が所定距離より遠ざかっており、タグ140からの電波Wtの受信レベルが所定未満である時には(ステップS111:NO)、ステップS112に移行して、電波Wrの送信レベルの復帰制御を続行し、アンテナ131から送信する電波Wrの送信レベルを前記マップに基づいて増加させる。この時、制御部133は、LED136を消灯させると同時に、LED137を点灯させる。
【0090】
また、制御部133は、ステップS113において、再びステップS111に対応する処理を実行する。ここで、タグ140からの電波Wtの受信レベルが所定以上となった時には(ステップS113:YES)、ステップS108に戻る。
【0091】
一方、タグ140からの電波Wtの受信レベルが所定未満である時には(ステップS113:NO)、ステップS114に移行して、電波Wrの送信レベルの復帰制御を続行し、アンテナ131から送信する電波Wrの送信レベルを、前記マップに基づき制御前のレベルまで復帰させ、再びステップS101の処理に戻る。この時、制御部133は、LED137を消灯させると同時に、LED138を点灯させる。
【0092】
このように、本実施形態では、復帰操作ボタン32が操作された時、前記送信レベルを、時間経過とともに段階的に制御前の送信レベルにまで増加させるようにしているため、通行人P3がリーダライタ装置130から遠ざかった直後における電波Wrの送信レベルを低レベルなものとすることができる。
【0093】
従って、前記送信レベルが制御前のレベルに復帰するまでに、通行人P3がリーダライタ装置130から遠ざかるための時間を稼ぐことができ、リーダライタ装置130から離れつつある通行人P3に安心感を与えることができる。また、復帰操作ボタン32が操作され、前記送信レベルの復帰制御が開始された直後に、通行人P3が再びリーダライタ装置130に接近したとしても、通行人P3の不安感を軽減できる。
【0094】
また、LED136〜138の点灯により、前記送信レベルの状態を視覚的に報知することができる。このため、前記送信レベルを容易に認識することが可能になり、その結果、通行人P3はより強い安心感を得ることができる。
【0095】
なお、前記送信レベルを報知する手段としては、複数のLED136〜138により構成することに必ずしも限定されるものではない。例えば、点灯表示位置や、点灯する色、文字等の変化によって送信レベルを報知する点灯表示手段で構成することができ、LED以外にも、有機EL等の各種発光手段で構成することができる。また、送信レベルを報知する手段は、音量や音質等の変化によって送信レベルを報知するスピーカ装置で構成することができる。
【0096】
なお、ここで言う前記送信レベルの段階的な増加とは、前記送信レベルが時間とともに増加すること全般を含むこととし、例えば、前記送信レベルの変化と時間とが略比例関係となるような増加も含むものとする。
【0097】
(第4実施形態)
上述した各実施形態では、通行人P1等が所有するタグ40等をパッシブタグとしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、図8(a)及び図9に示す通信システム201を構成するタグ240のように、電源装置としての電池244を内蔵したアクティブタグとしてもよい。この場合、パッシブタグであるタグ40に比べ(図8(b)参照)、電波Wtの送信レベルが高くなり、図8(a)に示すように、電波Wtの送信距離を長くすることができる。
【0098】
このため、タグ240を所有する通行人P4が、図8(a)及び図9に示すように、リーダライタ装置30から遠く離れていても、アンテナ31は、IDコード「00000」に関連する情報を含む電波Wtを受信することができ、これによって、電波Wrの送信レベルをより早いタイミングで制御することができる。なお、この場合、上述したようにタグ240から送信される電波Wtの送信レベルは高くなるものの、当然のことながら、その送信レベルは、心臓ペースメーカ250(図8参照)に影響を及ぼさないと考えられる程度に設定される。
【0099】
また、本実施形態では、タグ240に、図9に示すようにアンテナ241、制御部242、記憶部243が備えられる他、タグ240の表面には、図8及び図9に示すように、3つのLED245〜247が設けられており、これらLED245〜247は、電池244の電力を利用して点灯するものとされる。そして、これらLED245〜247の点灯制御は、制御部242により実行される。
【0100】
例えば、制御部242には、電波Wrをアンテナ241が受信した時の受信レベルを算出する受信レベル算出部242aが備えられており、制御部242は、この受信レベル算出部242aの算出値に基づいて、LED245〜247の点灯制御を実行する。
【0101】
また、各LED245〜247は、点灯する際の色がそれぞれ異なっており、電波Wrをアンテナ241が受信した時の受信レベルに応じて、各LED245〜247が順番に点灯するようになっている。
【0102】
具体的には、通行人P4がリーダライタ装置30から十分遠ざかっており、電波Wrをアンテナ241が受信できない場合や、前記受信レベルが低レベルの時には、図10(a)に示すように、一番左側のLED245が点灯する。そして、前記受信レベルがこのような低レベルの状態から増加すると、図10(b)に示すように、LED245が消灯すると同時に中央のLED246が点灯し、さらに前記受信がさらに増加すると、図10(c)に示すように、LED246が消灯すると同時に一番右側のLED247が点灯するようになっている。
【0103】
但し、LED245〜247を点灯させる方式としては、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、前記受信レベルが増加するにしたがって、点灯するLEDの数が増加するような方式であってもよい。
【0104】
このように、本実施形態では、タグ240に電池244を内蔵したことで、タグ240にLED245〜247を設けて、このLED245〜247を点灯させることが可能になっている。そして、自身の周辺の電波Wrのレベルを通行人P4に対して視覚的に報知することができる。このため、通行人P4は、自身の周辺での電波Wrのレベルを容易に認識することが可能になり、その結果、通行人P4は、より強い安心感を得ることができる。
【0105】
なお、前記受信レベルを報知する手段としては、複数のLED245〜247により構成することに必ずしも限定されるものではない。例えば、点灯表示位置や、点灯する色、文字等の変化によって受信レベルを報知する点灯表示手段で構成することができ、LED以外にも、有機EL等の各種発光手段で構成することができる。また、受信レベルを報知する手段は、音量や音質等の変化によって受信レベルを報知するスピーカ装置で構成することができる。
【0106】
なお、図8〜図10において、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0107】
(第5実施形態)
また、本発明では、リーダライタ装置30等が、IDコード「00000」の読取りに基づき、電波Wrの送信レベルを制御する際、リーダライタ装置30等の他に電波を送信している機器があった場合には、その機器から送信される電波の送信レベルも併せて制御するようにしてもよい。
【0108】
図11は、本発明の第5実施形態に係る通信システム301、及びこれと並存する無線LAN通信システムを示す概略図であり、図12は、図11に対応するブロック図である。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0109】
図11、図12に示す本実施形態では、リーダライタ装置330とタグ340との非接触の通信を行う通信システム301が構成される一方、携帯電話の無線基地局に相当するアクセスポイント360と、利用者(図示せず)が所有する通信端末装置(図示せず)との間を無線接続させる無線LANシステムが構成されている。そして、このアクセスポイント360は、リーダライタ装置330と通信可能に接続されている。
【0110】
ここで、アクセスポイント360は、図11に示すように、前記端末装置と非接触で通信するためのアンテナ361と、該アンテナ361における電波の送受信を制御する制御部363を備えた制御装置362とから構成されている。
【0111】
そして、アクセスポイント360の制御装置362には、インターフェース364が備えられている。制御部363は、インターフェース364、及びリーダライタ装置330の本体330aに備えられたインターフェース335を介して、制御部333に接続されている。
【0112】
さらに、制御部363は、インターフェース364を介して、インターネット370に接続され、これらを介してサーバ装置380に接続されている。
【0113】
サーバ装置380は、前記無線LANの利用者の端末装置に対し、インターネット370等を介して各種情報を提供するものである。
【0114】
ここで、図11に示すように、タグ340を所持した通行人P5がリーダライタ装置330に接近し、アンテナ41(図12参照)が送信した電波から、リーダライタ装置330がIDコード「00000」を読取ると、制御部333は、電波Wrの送信レベルを制御するとともに、インターフェース335、364を介して、アクセスポイント360の制御装置362に備えられた制御部363に対し、所定の制御信号を送信するようになっている。
【0115】
この時、制御部363は、制御部333からの前記制御信号に基づいて、アンテナ361から送信する無線LAN通信用の電波WLanの送信レベルを制御するようになっている。具体的には、電波WLanの送信を停止させるか、または送信レベルを低減させるようになっている。
【0116】
このように、本実施形態では、リーダライタ装置330が、受信した電波WtからIDコード「00000」を読取った時、電波Wrの送信レベルを制御する他、無線LAN通信用の機器(ここではアクセスポイント360)から送信される電波WLanも併せて制御する。
【0117】
この場合、通行人P5の心臓ペースメーカ350(図11参照)に対して影響を及ぼすことが懸念されているあらゆる機器について、そこから送信される電波Wr、WLanを、通信システム301を利用して制御することができる。
【0118】
(第6実施形態)
なお、上述した各実施形態に係る通信システムは、例えば、所定の施設に管理対象物(訪問者や物品等)の出入りを許可/規制するいわゆるセキュリティシステムに適用することができる。具体的には、各訪問者に対し、「00000」以外(すなわち「00001」〜「99999」のいずれか)のそれぞれ異なる入出許可IDコードを割り当てたタグを所持させる一方、リーダライタ装置30等には、上述した入出許可IDコードを全て収録した入室許可IDリストを記憶させる。
【0119】
この場合、リーダライタ装置は、上述した入室許可IDコードを読取った時には、ドアを開放制御する等して、訪問者の入室を許可する一方で、IDコードが「00000」のタグ40等を所有する通行人P1等がリーダライタ装置30等に近づいた時には、電波Wrの送信レベルを停止または低減するように制御すればよい。
【0120】
(第7実施形態)
なお、上述した第6実施形態では、本発明に係る通信システムを、セキュリティシステムに適用した場合について説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図13に示すように、例えば、管理対象者M1の居場所を、関係者が把握、管理する居場所管理システムに本発明を適用してもよい。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0121】
本実施形態に係る居場所管理システムでは、電柱410、411や交通信号機412等、市街地の各公共設備にリーダライタ装置430、430、…が取付けられるとともに、これらが専用のネットワーク460を介してシステム管理サーバ470に接続されている。そして、このシステム管理サーバ470は、ネットワーク460を介して、管理対象者M1の関係者が所有する通信端末装置480(例えば、パーソナルコンピュータや携帯電話端末)に接続されている。
【0122】
また、本実施形態では、管理対象者M1が、リーダライタ装置430のアンテナ431と非接触で通信可能なタグ440′を所持しており、これらリーダライタ装置430とタグ440とが非接触で通信可能となっている。
【0123】
タグ440には、その記憶部(ここでは図示略)に、予め割り当てられた対象者識別IDコード(以下、IDコードと略記する。)が記憶されている。このIDコードは、管理対象者M1(タグ440′)を識別するためのコードであり、上述した第6実施形態と同様、管理対象者M1毎に、例えば「00000」以外の異なる番号が割り当てられている。
【0124】
ここで、管理対象者M1が、図13に示すように電柱410に接近すると、タグ440′では、そのアンテナ(ここでは図示せず)がリーダライタ装置430のアンテナ431から送信された電波Wrを受信することにより、前記IDコードに関連する情報を含む電波Wtをアンテナ431に送信する。
【0125】
そして、リーダライタ装置430は、タグ440′より送信された電波Wtから前記IDコードを読取り、該IDコード情報とともに、前記読取りを行ったリーダライタ装置430の所在地に関連する位置情報をシステム管理サーバ470に送信する。
【0126】
システム管理サーバ470は、上述した各種情報のうち、前記IDコードと、予め各管理対象者が登録したIDとを照合し、居場所を判定した管理対象者M1を特定する。そして、該管理対象者M1に対応する関係者の通信端末装置480に、前記位置情報に基づき判定した管理対象者M1の居場所に関連する情報を送信する。
【0127】
ところで、図13では、心臓ペースメーカ450の所有者M2が、交通信号機412に取付けられたリーダライタ装置430に接近したことにより、通信システム401が構成された場合を示している。
【0128】
本実施形態では、所有者M2が、居場所管理システムの管理対象者でないものの、管理対象者M1と同様、タグ440を所持している。
【0129】
そして、上述した各実施形態と同様、このタグ440の記憶部(ここでは図示せず)には、例えばIDコードとして、リーダライタ装置心臓ペースメーカ450の所有者に共通のIDコード「00000」が記憶されている。
【0130】
ここで、所有者M2がリーダライタ装置430に接近すると、タグ440では、上述したIDコード「00000」に関連する情報を含む電波Wtをリーダライタ装置530のアンテナ431に送信する。
【0131】
この時、リーダライタ装置430は、電波Wtから前記IDコードを読取ると、上述した各実施形態と同様、電波Wrの送信を停止するか、またはその送信レベルを低減するようになっている。
【0132】
このような構成により、上述したような居場所管理システムが構成された市街地であっても、所有者M2は、通信システム401により、リーダライタ装置430から送信される電波を気にすることなく安心して行動することができる。
【0133】
なお、本実施形態において、上述したように電波Wrの送信レベルが制御された時には、例えば、制御開始時点から所定時間経過後に、前記送信レベルを自動的に制御前のレベルに復帰できるようにすればよい。
【0134】
(その他の実施形態)
なお、上述した各実施形態では、リーダライタ装置30等から送信される電波Wrを制御すべき対象者として、心臓ペースメーカ50の所有者(通行人P1)等を例に挙げて説明したが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、通信システム1等にて送信される電波Wrに対して不安を抱く乳幼児の保護者に配慮して、乳幼児に前記タグを所持させるようにしてもよい。
【0135】
また、例えば、工場等で、電波の影響を受けることが好ましくない精密機械等を扱う場合には、該精密機械等が入った箱にタグを取付け、この箱が電波発信源となるリーダライタ装置に接近すると、前記タグとの通信により、リーダライタ装置からの電波の送信を停止させることができるように構成してもよい。
【0136】
また、上述した各実施形態では、タグ40等と通信を行う通信装置として、リーダライタ装置30等を用いた場合を説明したが、必ずしもこれに限定されることはなく、前記通信装置は、タグ40の情報の読取りのみを可能とするリーダ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1、101、201、301、401…非接触IC媒体通信システム
30、130、330、430…リーダライタ装置
32…復帰操作ボタン
33、133、333…制御部
33a…受信レベル算出部
40、140、240、340、440…RFIDタグ
136、137、138…LED
242a…受信レベル算出部
244…電池
245、246、247…LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触IC媒体と、該非接触IC媒体と通信する通信装置とを備えた非接触IC媒体通信システムであって、
前記通信装置は、前記非接触IC媒体との通信により、該非接触IC媒体の識別情報を読取るとともに、
該識別情報に基づいて、前記通信装置から前記非接触IC媒体に送信される電波のレベルを制御する送信レベル制御手段を備えた
非接触IC媒体通信システム。
【請求項2】
前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信を停止するように制御する
請求項1記載の非接触IC媒体通信システム。
【請求項3】
前記通信装置の前記送信レベル制御手段により制御した前記電波の送信レベルを、制御前の送信レベルに復帰させる送信レベル復帰操作手段を備えた
請求項1または2記載の非接触IC媒体通信システム。
【請求項4】
前記通信装置の前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信レベルを、時間経過とともに段階的に増加させる送信レベル復帰制御部を備えた
請求項1または2記載の非接触IC媒体通信システム。
【請求項5】
前記非接触IC媒体は、電源装置を有するアクティブタグである
請求項1記載の非接触IC媒体通信システム。
【請求項6】
前記非接触IC媒体は、前記通信装置から送信される電波の受信レベルを算出する受信レベル算出部と、
該受信レベル算出部の算出値に基づき、受信レベルを報知する受信レベル報知手段を備えた
請求項5記載の非接触IC媒体通信システム。
【請求項7】
非接触IC媒体と通信する通信装置であって、
前記非接触IC媒体との通信により、該非接触IC媒体の識別情報を読取るとともに、
該識別情報に基づいて、前記通信装置から前記非接触IC媒体に送信される電波のレベルを制御する送信レベル制御手段を備えた
通信装置。
【請求項8】
前記送信レベル制御手段は、前記非接触IC媒体から受信する電波の受信レベルを算出する受信レベル算出部を備えるとともに、
該受信レベル算出部における算出値と、予め設定した閾値とを比較する受信レベル比較部を備え、
前記識別情報と、前記受信レベル比較部での比較結果とに基づいて、前記電波の送信レベルを制御する
請求項7記載の通信装置。
【請求項9】
前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信を停止するように制御する
請求項7または8記載の通信装置。
【請求項10】
前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信レベルを、予め設定した閾値と比較し、
前記識別情報、及び前記閾値との比較結果に基づいて、前記電波の送信状態を維持しつつ、該電波の送信レベルを前記閾値未満となるように制御する
請求項7または8記載の通信装置。
【請求項11】
前記送信レベル制御手段により制御した前記電波の送信レベルを、制御前の送信レベルに復帰させる送信レベル復帰操作手段を備えた
請求項7から10のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項12】
前記送信レベル制御手段は、前記電波の送信レベルを、時間経過とともに段階的に増加させる送信レベル復帰制御部を備えた
請求項7から10のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項13】
前記送信レベル復帰制御部により制御される前記電波の送信レベルを報知する送信レベル報知手段を備えた
請求項12記載の通信装置。
【請求項14】
通信装置により非接触IC媒体と通信する非接触IC媒体通信方法であって、
前記非接触IC媒体と通信することにより、前記通信装置で、非接触IC媒体の識別情報を読取るステップと、
該識別情報に基づいて、前記通信装置の送信レベル制御手段で、電波の送信レベルを制御するステップとを有する
非接触IC媒体通信方法。
【請求項15】
コンピュータに、通信装置により非接触IC媒体と通信するステップを実行させる非接触IC媒体通信プログラムであって、
前記非接触IC媒体と通信することにより、前記通信装置で、非接触IC媒体の識別情報を読取るステップと、
該識別情報に基づいて、前記通信装置の送信レベル制御手段で、電波の送信レベルを制御するステップとをコンピュータに実行させる
非接触IC媒体通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−226604(P2010−226604A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73684(P2009−73684)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】