非晶質シリカのハイブリッド膜構造
モノリス型の無機多孔質の支持体と、随意的な1つ以上の多孔質の無機中間層と、非晶質のシリカ膜とを備えた、非晶質シリカのハイブリッド膜構造。非晶質シリカのハイブリッド膜は、例えばH2の精製およびCO2の捕捉など、ガス分離用途に有用である。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することにより本明細書に援用される、2007年10月30日出願の米国特許出願第11/980,171号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分子レベルのガス分離に有用な非晶質シリカのハイブリッド膜構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石炭ガス化、バイオマスガス化、炭化水素の水蒸気改質、天然ガスの部分酸化など、CO2、H2およびCOを含め、ガス流れを生じる多くの産業工程が存在する。例えば隔離の目的でCO2を捕捉するため、およびH2またはH2強化したガス生成物を生産するため、しばしば、それらのガス混合物からCO2を除去することが望まれる。
【0004】
高分子材料でできた膜が開発され、天然ガス流れからのCO2の分離など、分子の分離に商業的に用いられている。しかしながら、高分子膜は、熱的・化学的安定性の乏しさに関係し、それらの透過流束は低いことが多い。さらには、炭化水素は、化石燃料源に由来するCO2のガス混合物中に遍在的に存在し、これらの炭化水素は、溶解、汚染などによる高分子膜の分解を生じ、高分子膜の広範囲に及ぶ使用をさらに制限してしまう場合がある。
【0005】
無機膜は新しい技術領域であり、高分子膜材料に関係する熱的・化学的安定性の問題を克服することが大いに期待できる。しかしながら、実際の方法では、欠陥のない無機膜の製造には、おそらくは材料加工に大きな課題が依然として存在するために、無機膜のCO2分離機能は未だに十分に実証されていない。加えて、図1Aおよび1Bに示すように、無機膜の管状または平面ディスク形状に起因して、従来の無機膜は、高分子膜よりもはるかに低い表面積充填密度を提供することが多い。図1Aおよび1Bでは、矢印102は分離されるべきガス混合物を表し、矢印104は透過流れを表し、矢印106は未透過流れを表す。
【0006】
従来の無機膜技術は、単位膜分離領域に基づいて、製造的および工学的に高いコストを負わせ、さらにゼオライトおよび他の無機膜の広範囲に及ぶ用途を制限してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮すると、分子レベルのガス分離に使用可能な材料および方法が必要とされており、本発明は、少なくとも部分的に、この必要性に対処することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハイブリッド膜構造に関し、前記ハイブリッド膜構造は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体と、
随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする1つ以上の多孔質の無機中間層と、
非晶質のシリカ膜と、
を備え、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングし、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0009】
本発明はまた、ハイブリッド膜構造を製造する方法にも関し、該方法は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体を提供し、
随意的に、1つ以上の多孔質の無機中間層を前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用し、
非晶質のシリカ膜を施用する、
各工程を有してなり、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用され、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される。
【0010】
ハイブリッド膜構造は、廃棄ガス流れからのH2の回収、燃料電池用途のための生成ガス混合物からのH2の精製、および隔離のための石炭ガス化工程におけるH2の精製およびCO2の捕捉など、重要なエネルギーおよび環境問題を解決するために使用できる可能性がある。
【0011】
本発明のこれらの、およびさらなる特性および実施の形態は、添付の図面および詳細な説明において、さらに十分に例証および論述されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の無機のガス分離膜の設計および内部のガス流れの概略図。図1Aは管状膜の斜視図を示す。図1Bは平面ディスク膜の断面図を示す。
【図2】本発明の1つの実施の形態に従ったハイブリッド膜構造の図。
【図3】図2の面Aで切断した、本発明に従ったハイブリッド膜構造の長手方向の断面図。
【図4】本発明のある実施の形態に従った非晶質のシリカ膜を施用するための化学蒸着装置の概略図。
【図5】本発明のある実施の形態に従った化学蒸着組立体の概略図。
【図6】ガス分離用途における使用を示す、本発明に従ったハイブリッド膜構造の概略図。
【図7】本発明のある実施の形態に従ったγ−アルミナ中間層のチャネル表面(7A)および断面図(7B)の走査型電子顕微鏡画像。
【図8】本発明のある実施の形態に従った非晶質のシリカ膜の断面(8A)および上面(8B)の走査型電子顕微鏡画像。
【図9】搬送ガス流れ方向に従ったモノリス型の支持体(9D)の軸方向に沿って、異なる位置(末端(9A)、中間(9B)、および開始位置(9C))に堆積させた非晶質のシリカ膜の断面の走査型電子顕微鏡画像。
【図10】加圧型の化学蒸着および非加圧型の化学蒸着による、蒸着時間に伴う非晶質のシリカ膜の理想選択性の変化を比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図に記載する実施の形態は、事実上、実例となるものであって、特許請求の範囲に定義される本発明を制限することは意図されていない。図面および本発明の個々の特徴は、以下の詳細な説明においてさらに十分に論じられよう。
【0014】
本発明の1つの態様は、ハイブリッド膜構造に関し、該構造は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体と、
随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする1つ以上の多孔質の無機中間層と、
非晶質のシリカ膜と、
を備え、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングし、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0015】
適切な無機多孔質の支持体材料としては、セラミック、ガラスセラミック、ガラス、炭素、金属、粘土、およびそれらの組合せが挙げられる。無機多孔質の支持体を作ることができる、または無機多孔質の支持体に含まれうる、これらおよび他の材料の例としては、例えば、金属酸化物、アルミナ(例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、またはそれらの組合せ)、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、ゼオライト、金属(例えばステンレス鋼)、セリア、マグネシア、タルク、ジルコニア、ジルコン、ジルコン酸塩、ジルコニアスピネル、スピネル、ケイ酸塩、ホウ化物、アルミノケイ酸塩、磁器、リチウムアルミノケイ酸塩、長石、マグネシウムアルミノケイ酸塩、溶融シリカ、カーバイド、窒化物、シリコンカーバイド、およびシリコン窒化物が挙げられる。
【0016】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、主として、アルミナ(例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、またはそれらの組合せ)、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、金属(例えば、ステンレス鋼)、シリカカーバイド、セリア、またはそれらの組合せから作られるか、そうでなければ、それらを含む。
【0017】
1つの実施の形態では、無機多孔質の支持体はガラスである。別の実施の形態では、無機多孔質の支持体はガラスセラミックである。別の実施の形態では、無機多孔質の支持体はセラミックである。別の実施の形態では、無機多孔質の支持体は金属である。さらに別の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、例えば硬化した樹脂を炭化するなど、樹脂を炭化することによって生成される、例えば炭素支持体などの炭素である。
【0018】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体はハニカムモノリスの形態をしている。ハニカムモノリスは、例えば混合バッチ材料を、ダイを通じて押出成形して未焼成体に形成し、当技術分野で既知の方法を使用して熱の印加と共に未焼成体を焼結することによって、製造することができる。特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体はセラミックモノリスの形態をしている。特定の実施の形態では、例えばセラミックモノリスなどのモノリスは、複数の平行な内部チャネルを含む。
【0019】
無機多孔質の支持体は、500m2/m3を超える、750m2/m3を超える、および/または1000m2/m3を超える表面積充填密度など、高い表面積充填密度を有しうる。
【0020】
上述のように、モノリス型の無機多孔質の支持体は、多孔質壁によって画成された表面を有する、複数の内部チャネルを含む。内部チャネルの数、間隔、および配置は、ハイブリッド膜構造の潜在用途を考慮して選択することができる。例えばチャネルの数は、5〜500、5〜50、5〜40、5〜30、10〜50、10〜40、10〜30など、2〜1000以上の範囲でありうる;これらのチャネルは、実質的に同一の断面形状(例えば、円形、楕円形、正方形、六角形など)でありうるが、同一でなくてもよい。チャネルは、無機多孔質の支持体の断面に実質的に均一に分散されうるが、そうでなくてもよい(例えばチャネルが無機多孔質の支持体の中心よりも外縁に近くなるように配置される場合のように)。チャネルはまた、あるパターンで配置されうる(例えば、無機多孔質の支持体の中心の周囲の同心円における、行と列、オフセットの行と列など)。
【0021】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の内部チャネルは、1±0.5ミリメートル、2±0.5ミリメートル、2.5ミリメートル〜3ミリメートル、および/または0.8ミリメートル〜1.5ミリメートルの水力学的な内径を有する場合など、0.5ミリメートル〜3ミリメートルの水力学的な内径を有する。特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の内部チャネルは、例えば3ミリメートル未満など、3ミリメートル以下の水力学的な内径を有する。明確にするため、このような関係において用いられる「内径(直径)」とは、内部チャネルの断面の寸法のことをいい、内部チャネルの断面が非円形の場合には、非円形の内部チャネルのものと同一の断面積を有する、仮説の円の直径を意味することに留意されたい。
【0022】
特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、25μm以下のメジアン孔隙径を有する。特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、10±5nm、20±5nm、30±5nm、40±5nm、50±5nm、60±5nm、70±5nm、80±5nm、90±5nm、100±5nm、100±50nm、200±50nm、300±50nm、400±50nm、500±50nm、600±50nm、700±50nm、800±50nm、900±50nm、1000±50nm、1±0.5μm、および/または2±0.5μmのメジアン孔隙径を有する場合など、5nm〜25μmのメジアン孔隙径を有する。他の実施の形態では、内部チャネル表面は、5μm〜15μmのメジアン孔隙径を有する。
【0023】
特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、1μm以下のメジアン孔隙径を有する。特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、5nm〜500nm、5nm〜400nm、5nm〜300nm、5nm〜400nm、5nm〜300nm、5nm〜400nm、5nm〜200nm、5nm〜100nm、5nm〜50nmなどのメジアン孔隙径を有する場合など、500nm以下のメジアン孔隙径を有する。明確にするために、このような関係において用いられる「サイズ/大きさ」とは、孔隙の断面の寸法のことを意味し、孔隙の断面が非円形の場合には、非円形の孔隙のものと同一の断面積を有する仮説に基づいた円の直径のことを意味することに留意されたい。
【0024】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、30%〜60%、50%〜60%、または35%〜50%の孔隙率など、20%〜80%の孔隙率を有する。ステンレス鋼などの金属が無機多孔質の支持体として用いられる場合には、例えば、三次元プリンティングによって、高エネルギーの粒子トンネリングによって、および/または、孔隙率および孔隙径を調節するための孔隙形成剤を使用する粒子の焼結によって、作られた工学的な孔隙またはチャネルを使用して、ステンレス鋼の支持体における孔隙率を達成することができる
例えば分離用途に使用する場合に、支持体を通過する流体流れと、コーティングされた支持体自体との間のさらに緊密な接触を可能にするため、ある実施の形態では、少なくとも一部のチャネルは支持体の一方の末端で塞栓されるが、他のチャネルは支持体のもう一方の末端で塞栓されることが望ましい。特定の実施の形態では、支持体の各末端において、塞栓された、および/または塞栓されていないチャネルが、互いに市松模様を形成することが望ましい。特定の実施の形態では、1つのチャネルが支持体の1つの末端で塞栓される(「参照末端」と称される)が、反対の末端では塞栓されない場合、そこにすぐ隣接する(少なくとも1つの壁を、対象とするチャネルと共有する)少なくとも一部、例えば大部分のチャネル(特定の他の実施の形態では、好ましくはすべてのチャネル)は、支持体のこれら反対の末端では塞栓されるが、参照末端では塞栓されないことが望ましい。個々の無機多孔質の支持体は、異なる使用条件の必要性を満たすために、さまざまな方式で積み重ねられ、または収納されて、さまざまな大きさ、使用期間などを有する、大きい無機多孔質の支持体を形成できることが認識されよう。
【0025】
上述のように、ハイブリッド膜構造は、随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする1つ以上の多孔質の無機中間層を含みうる。特定の実施の形態では、ハイブリッド膜構造は、1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない。この場合、前記非晶質のシリカ膜が、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする。本発明のこの態様の1つの実施の形態では、無機多孔質の支持体は、1μm以下のメジアン孔隙径を含む。
【0026】
他の実施の形態では、ハイブリッド膜構造は、1つ以上の多孔質の無機中間層を含む。この場合、非晶質シリカは、1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。本発明のこの態様の1つの実施の形態では、無機多孔質の支持体は、5μm〜15μmのメジアン孔隙径を含む。
【0027】
ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の無機中間層を含み、非晶質のシリカ膜が1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする場合には、「1つ以上の多孔質の中間層の表面」とは、中間層の外面(すなわち、チャネルに曝露される表面)のことをいい、あるいは、2つ以上の多孔質の中間層が存在する場合には、最も外側の中間層の外面(すなわち、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面から最も離れた中間層)のことをいうことが認識されよう。特に、「非晶質のシリカ膜が1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする」という語句は、非晶質のシリカ膜があらゆる多孔質の中間層、またはあらゆる多孔質の中間層のあらゆる側面をコーティングすることを必要とすると解釈されることは意味していない。
【0028】
1つ以上の多孔質の無機中間層を使用するか否かは、無機多孔質の支持体の性質などのいろいろな要素;無機多孔質の支持体の内部チャネルのメジアン径;ハイブリッド膜構造が施用される用途、および用いられるであろう条件(例えば、ガス流速、ガス圧力など);内部チャネル表面の粗さまたは滑らかさ;内部チャネル表面を画成する多孔質壁のメジアン孔隙径などに応じて決定されうる。
【0029】
例として、特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は、非晶質のシリカ膜が内部チャネル表面に直接コーティングされる場合に、得られるコーティングが滑らかで薄くなるように、十分に小さいメジアン孔隙径を含む。多孔質の無機中間層(少なくとも幾つかの用途のため)の使用からの重大な利益(非晶質のシリカ膜コーティングの滑らかさに関して)を受けないためには十分に小さいと考えられるメジアン孔隙径の例は、約100nm未満のものである。メジアン孔隙径が約80nm未満の場合には、もたらされる利益はさらに少ない;メジアン孔隙径が約50nm(例えば5nm〜50nmの範囲)の場合には、もたらされる利益はさらになお少ない。
【0030】
さらなる実例として、特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は、非晶質のシリカ膜が内部チャネル表面に直接コーティングされる場合に、得られるコーティングが粗くなるように十分に大きいメジアン孔隙径を含む。そのような場合には、多孔質の無機中間層を使用することは有利でありうる。多孔質の無機中間層(少なくとも幾つかの用途のため)の使用からの重大な利益を受けるように(非晶質のシリカ膜コーティングの滑らかさに関して)、十分に大きいと考えられるメジアン孔隙径の例は、約100nmを超えるものである。メジアン孔隙径が約200nmを超える場合、もたらされる利益はさらに大きい;メジアン孔隙径が約300nmを超える場合(例えば300nm〜50μmの範囲)、もたらされる利益はさらになお大きい。
【0031】
例として、特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は5nm〜100nm(例えば5nm〜50nm)のメジアン孔隙径を有し、ハイブリッド膜構造は1つ以上の多孔質の無機中間層を含まず、非晶質のシリカ膜は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする。他の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は50nm〜25μmのメジアン孔隙径(例えば、100nm〜15μmまたは5μm〜15μm)を有し、ハイブリッド膜構造は1つ以上の多孔質の無機中間層を含み、非晶質のシリカ膜は1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0032】
上述のように、1つ以上の多孔質の無機中間層を使用して、非晶質のシリカ膜がコーティングされる表面の滑らかさを増大させて、例えば、チャネルを通過するであろうガスの流れを改善し;非晶質のシリカ膜コーティングの均一性を改善し;非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目の数および/または大きさを低減し;許容される完全な被覆率(例えばギャップ、ピンホール、または他の裂け目が全くないか、または許容されるわずかなもの)を有する非晶質のシリカ膜コーティングを達成するために必要とされる非晶質のシリカ膜コーティングの厚さを低下させることができる。加えて、または代わりに、1つ以上の多孔質の無機中間層を使用して、無機多孔質の支持体の内部チャネルの有効径を低下させることができる。さらに加えて、または代替として、1つ以上の多孔質の無機中間層を使用して、非晶質のシリカ膜がコーティングされる表面の化学的、物理的、または他の特性を変化させることができる。
【0033】
1つ以上の多孔質の無機中間層を作ることのできる材料の例としては、金属酸化物、セラミック、ガラス、ガラスセラミック、炭素、およびそれらの組合せが挙げられる。1つ以上の多孔質の無機中間層を作ることのできる材料の他の例としては、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、シリカカーバイド、およびセリアが挙げられる。特定の実施の形態では、1つ以上の多孔質の無機中間層は、アルミナ(例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、またはそれらの組合せ)、チタニア、ジルコニア、シリカ、またはそれらの組合せから作られるか、そうでなければそれらを含む。
【0034】
特定の実施の形態では、1つ以上の多孔質の無機中間層のそれぞれのメジアン孔隙径は、無機多孔質の支持体の多孔質壁のメジアン孔隙径よりも小さい。例として、1つ以上の多孔質の中間層は、5nm〜50nm、5nm〜40nm、5nm〜30nm、10±5nm、20±5nm、30±5nm、40±5nm、50±5nm、60±5nm、70±5nm、80±5nm、および/または90±5nmなど、5nm〜100nmのメジアン孔隙径を含みうる。2つ以上の多孔質の中間層が存在する場合、2つ以上の多孔質の中間層のそれぞれは、同一のメジアン孔隙径を有してもよく、またはそれらの一部またはすべてが異なるメジアン孔隙径を有していてもよい。
【0035】
特定の実施の形態では、ハイブリッド膜構造は2つ以上の多孔質の中間層を含み、無機多孔質の支持体と接触する多孔質の中間層のメジアン孔隙径は、非晶質のシリカ膜に接触する多孔質の中間層のメジアン孔隙径よりも大きい。例として、無機多孔質の支持体が300nmよりも大きいメジアン孔隙径(例えば、500nmよりも大きい、1μmよりも大きい、2μmよりも大きい、3μmよりも大きいなど)を有する場合には、ハイブリッド膜構造は、2つの多孔質の中間層:無機多孔質の支持体のメジアン孔隙径よりも小さいメジアン孔隙径を有する第1の層(すなわち、無機多孔質の支持体と接触する層)(例えば、20nm〜200nm、例えば100nm〜200nmのメジアン孔隙径を有する)と、第1の中間層のメジアン孔隙径よりも小さいメジアン孔隙径を有する第2の中間層(すなわち、非晶質のシリカ膜と接触する層)(例えば、5nm〜50nmのメジアン孔隙径を有する)と、を含みうる。これらの配置を使用して、第1の中間層の孔隙を通じて、第2の中間層のさらに大きい孔隙を通じて、無機多孔質の支持体のさらになお大きい孔隙を通じて、および無機多孔質の支持体の外側への、内部チャネルからの透過性を許容できないほど低下させることなく、非晶質のシリカ膜がコーティングされる滑らかな表面を提供することができる。
【0036】
ハイブリッド膜構造はまた、例えば3つ以上の中間層を含みうる。上記のように、本発明は、非晶質のシリカ膜の方向における中間層の各追加と共に、中間層のメジアン孔隙径が減少する実施の形態を含む。
【0037】
ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の中間層を含む場合には、1つ以上の多孔質の中間層は、例えば、20nm〜100μm、2μm〜80μm、5μm〜60μm、10μm〜50μmなど、合計1μm〜100μmの厚さを含みうる。
【0038】
すべてのチャネルが1つ以上の中間層でコーティングされる必要はないということは、理解されよう。例えば中間層は、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングすることができる;あるいは、中間層は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面の幾つかをコーティングすることができる;「中間層は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする」という語句は、両方の状況を包含することが意図されている。
【0039】
上述のように、ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の中間層を含むか否かに関わらず、ハイブリッド膜構造は非晶質のシリカ膜も含む。ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、非晶質のシリカ膜は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする。ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、非晶質のシリカ膜は1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0040】
すべてのチャネルが非晶質のシリカ膜でコーティングされる必要はないということは、理解されよう。例えば非晶質のシリカ膜は、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面のすべてをコーティングすることができる;または非晶質シリカは無機多孔質の支持体の内部チャネル表面の幾つかをコーティングすることができる;「非晶質のシリカ膜が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする」という用語は、両方の状況を包含することを意味する。同様に、多孔質の中間層が用いられる場合には、非晶質のシリカ膜は、あらゆるチャネルにおける1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングすることができる;あるいは、非晶質のシリカ膜は、チャネルの幾つかにおいて、1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングすることができる;「非晶質のシリカ膜が1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする」という用語は、両方の状況を包含することを意味する。
【0041】
非晶質のシリカ膜は助剤を含みうる。例えば、非晶質のシリカ膜は、有機助剤、無機助剤、またはその両方を含みうる。これらの助剤は、例えば、非晶質のシリカ膜の重量で、例えば最大20重量%までの量で、存在しうる。有機助剤は、例えばCO2への強い親和性を有するなど、有機基を有する化合物を含む。無機の助剤は、アルミナおよびチタニアなど、膜の熱水安定性を改善することができるアミンなどの化合物を含む。
【0042】
非晶質のシリカ膜はまた、膜における分離助剤の存在に加えて、またはその代わりに、アミンなどの有機官能基に結合するシリカを含みうる。したがって、「非晶質のシリカ膜」という用語は、上述のものなど、官能基によって修飾された非晶質シリカを含有する膜を含む。一部の実施の形態では、最大10重量%までのシリカがそれらの官能基で修飾される。
【0043】
特定の実施の形態では、非晶質のシリカ膜は20nm〜2μmの厚さを有し、例えば20nm〜1μm、例えば20nm〜200nm、例えば20nm〜50nmである。他の実施の形態では、非晶質のシリカ膜は20nm〜50nmの厚さを有する。特定の実施の形態では、膜の厚さは実質的に均一である。
【0044】
特定の用途では、非晶質のシリカ膜は、多孔質の中間層の全表面または無機多孔質の支持体の全内部チャネル表面をコーティングすることが望ましいであろう。さらなる例として、特定の用途では、非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目の数および/または大きさに関しては、非晶質のシリカ膜コーティングによってコーティングされた全表面積の大きさは小さく、数も少ない(例えば、非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目が存在しない場合、または非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目の集合面積が1%未満(0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満など)の場合のように)ことが望ましいであろう。
【0045】
本発明の特定の実施の形態は、例えば、耐久性および/または強度に関して;再生または改修に関して;および/または透過流束に関して(ガス分離用途に利用するための構造についての)、先行技術の高分子膜および先行技術の無機膜よりも優れた利点を有しうる。
【0046】
例として、本発明のハイブリッド膜構造の特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体構造は、純粋な高分子膜と比較して、表面積充填密度を提供する一方、表面積、機械的強度、および耐久性についての骨格を提供することができる。
【0047】
さらに加えて、または代替として、本発明のハイブリッド膜構造の特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、無機多孔質の支持体のチャネル表面に、実質的に均一な孔隙構造を有することができる(または、実質的に均一な孔隙構造は、随意的な1つ以上の多孔質の無機中間層の使用によって生成することができる)。これは、薄く、耐久性のある非晶質のシリカ膜層の堆積を可能にし;薄い非晶質のシリカ膜層は、高い透過流束を提供することができる。よって、ハイブリッド膜構造は、先行技術の無機膜の製造コストと比較して、製造コストにおける大きい潜在的利点を提供することができる。
【0048】
チャネルサイズが小さいモノリス型の非晶質のシリカ膜製品は、同程度の本体直径を有する従来の管状膜よりもほぼ一桁大きい表面積充填密度を提供する。これは、膜モジュール組立体の大きい表面積に対する表面積あたりの膜コストおよび工業的コストの両方の劇的な軽減をもたらすことができる。他方では、ディスク形状の膜製品は、大規模用途にとっては実用的ではない。
【0049】
多層膜構造は、大きい孔隙の支持体構造を可能にし(すなわち、剥き出しの支持体を通過する高い透過性)、シリカ膜の薄層の堆積を可能にする(すなわち、高い膜透過流束)。支持体および膜の透過性を増強すると、結果的に、膜層設計は、高い膜透過流束の達成が可能になる。
【0050】
本発明の特定のハイブリッド膜構造において、上述の利点のすべて、または一部が達成される場合があり、あるいは利点のいずれも達成されない場合もありうることが理解されよう。例えば、本発明の特定のハイブリッド膜構造は、意中の他の検討材料を有するように設計して差し支えなく、これら他の検討材料が、上述の利点または他の利点の一部またはすべてを低減または打ち消すことがありうる。上述の利点は、限定されることを意味しておらず、それらは、多少なりとも、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0051】
図2は、本発明の1つの実施の形態に従ったハイブリッド膜構造200の斜視図である。この実施の形態では、ハイブリッド膜構造200は、1つ以上の中間層と共に、または1つ以上の中間層なしで、無機多孔質の支持体202および非晶質のシリカ膜204を含む。無機多孔質の支持体202は、第1の末端208から第2の末端210まで、無機多孔質の支持体202を通って延在する第1の末端208、第2の末端210、および複数の内部チャネル206を含むように示されている。
【0052】
図3Aおよび3Bは、図2の面Aにおける、図2に示すハイブリッド膜構造の長手方向の断面図である。図3Aは、1つの中間層を含む実施の形態を示しているのに対し、図3Bは、2つの中間層を含む実施の形態を例証している。
【0053】
これらの実施の形態では、ハイブリッド膜構造300および320は、無機多孔質の支持体302、非晶質のシリカ膜304、および第1の多孔質の無機中間層306を備えている。図3Bに示す実施の形態は、さらに、第2の無機中間層308を備えている。無機多孔質の支持体302は、第1の末端310、第2の末端312、および、第1の末端310から第2の末端312まで、無機多孔質の支持体302を通って延在する複数の内部チャネル314を含むように示されている。支持体の内部チャネル314は多孔質壁によって画成される表面316を有し、第1の多孔質の無機中間層306は、内部チャネル314の表面316をコーティングする。非晶質のシリカ膜304は、第1(図3A)または第2(図3B)の中間層をコーティングする。
【0054】
本発明のハイブリッド膜構造は、例えば次に述べる方法など、さまざまな手順によって調製することができる。
【0055】
本発明はまた、ハイブリッド膜構造の製造方法に関する。その方法は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記支持体を通じて前記第1の末端から前記第2の末端まで延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体を提供する工程と、
随意的に、1つ以上の多孔質の無機中間層を前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程と、
非晶質のシリカ膜を施用する工程と、
を有してなり、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用され、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される。
【0056】
本発明の方法の実施に用いることができる適切な無機多孔質の支持体としては、上述のものが挙げられる。
【0057】
無機多孔質の支持体は、さまざまな異なる方法で提供されうる。例えば、それは商業的に得ることができる。あるいは、当技術分野で周知の方法で調製することもできる。
【0058】
例として、適切な無機多孔質の支持体は、参照することによって本明細書に取り込まれる、2006年12月11日に出願した同時係属の米国仮特許出願第60/874,070号明細書;参照することによって本明細書に取り込まれる、Lachmanらの米国特許第3,885,977号明細書;および参照することによって本明細書に取り込まれる、Bagleyらの米国特許第3,790,654号明細書に記載される方法に従って調製することができる。
【0059】
例えば、無機多孔質の支持体は、60重量%〜70重量%のα−アルミナ(5μm〜30μmの範囲の粒径を有する)、30重量%の有機孔隙形成剤(7μm〜45μmの範囲の粒径を有する)、10重量%の焼結助剤、および/または他のバッチ成分(例えば架橋剤など)を合わせることによって作ることができる。合わせた材料を混合し、一定時間(例えば8〜16時間)浸漬させる。次いで、押出成形によって混合物を未焼成体の形状に成形する。得られた未焼成体を焼結して(例えば、1500℃以上の温度で8〜16時間などの適切な時間)、無機多孔質の支持体を形成する。
【0060】
上述のように、本発明の方法は、随意的に、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に、1つ以上の多孔質の無機中間層を施用する工程を含めることができる。随意的な多孔質の無機中間層および多孔質の無機中間層が作られる適切な材料の使用が望まれるであろう状況としては、上述のものが挙げられる。
【0061】
本発明の方法が、1つ以上の多孔質の無機中間層を無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程を含む状況では、1つ以上の多孔質の無機中間層は、任意の適切な方法を使用して、内部チャネル表面に施用することができる。例として、多孔質の無機中間層は、コーティング(例えば、適切な液体におけるフローコーティングなど)によって、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面の、適切な大きさ(例えば、およそ数十ナノメートルから数百ナノメートル)のセラミックまたは他の無機粒子に施用することができる。セラミックまたは他の無機粒子でコーティングした無機多孔質の支持体を、次に、乾燥および焼成してセラミックまたは他の無機粒子を焼結し、その後、多孔質の無機中間層を形成する。さらなる多孔質の無機中間層は、各層の施用の後、上記方法を、典型的には乾燥および焼成を用いて繰り返すことにより(例えばさまざまな無機粒子で)、コーティングした無機多孔質の支持体に施用することができる。
【0062】
乾燥および焼成スケジュールは、無機多孔質の支持体および多孔質の無機中間層に用いられる材料に基づいて調整することができる。例えばα−アルミナの多孔質の支持体に施用されるα−アルミナ中間層は、適切な温度(例えば120℃)で適切な時間(例えば20時間)維持すると同時に、湿度調節された環境下で乾燥することができる;乾燥後、α−アルミナ中間層を、有機成分の除去および中間層のα−アルミナ粒子の焼結に有効な条件下、例えば、調整したガス環境下、900℃〜1200℃の温度で、焼成することができる。
【0063】
セラミックまたは他の無機粒子を無機多孔質の支持体の内部チャネル表面にコーティングし、およびそれらを多孔質の無機中間層に成形する、適切な方法は、例えば、参照することによって本明細書に取り込まれる、2007年3月29日に出願した米国特許出願第11/729,732号明細書;参照することによって本明細書に取り込まれる、2007年7月19日に出願した、米国特許出願第11/880,066号明細書;および参照することによって本明細書に取り込まれる、2007年7月19日に出願した、米国特許出願第11/880,073号明細書などに、開示されている。
【0064】
γ−アルミナを含有する多孔質の無機中間層に、安定なコロイド状のベーマイト(AlOOH)ゾルを用いて施用してもよい。例えば、これらの層は、α−アルミナ中間層などの別の中間層にコーティングした、第2の、またはそれに続く中間層でありうる。例えば、γ−アルミナを含有するような層は、例えば100nm〜200nmなど、20nm〜1μmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナなどの別の中間層にコーティングすることができる。施用されたγ−アルミナ中間層は、一例として、5nm以上のメジアン孔隙径を含みうる。
【0065】
ゾル−ゲル法を用いてγ−アルミナの中間層に施用することもできる。最初に、ベーマイト(AlOOH)ゾルは、アルミナアルコキシド(アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシドなど)の加水分解によって作ることができ、その後、酸(硝酸、塩酸または酢酸)を用いて解膠して構わない。第2に、コーティング溶液は、ベーマイト・ゾルを高分子結合剤の溶液および脱イオン化水と混合することによって調製することができる。PVA(ポリビニル・アルコール)およびPEG(ポリエチレングリコール)は、高分子結合剤の例である。PVAおよびゾルの濃度は、例えば、それぞれ、0.3〜1.3重量%および0.2〜0.6mol/lでありうる。次に、フローコーティング法を用いて、支持体または他の中間層の内部チャネル表面にγ−アルミナコーティングをすることができる。その後、コーティングした支持体は、例えば650℃など、600〜800℃で乾燥および焼成することができる。例えばさらに希釈したコーティング溶液を用いて、同一のコーティング−乾燥−焼成工程を繰り返すこともできる。
【0066】
本発明の方法が、1つ以上の多孔質の無機中間層を無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する随意的な工程を含むか否かにかかわらず、本方法は、非晶質のシリカ膜の施用を含んでなる。1つ以上の多孔質の無機中間層が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、非晶質のシリカ膜が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用される。1つ以上の多孔質の無機中間層が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、非晶質のシリカ膜は、1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される。
【0067】
非晶質のシリカ膜の施用(すなわち、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面への施用)は、任意の適切な方法によって行うことができる。
【0068】
例として、非晶質のシリカ膜は、化学蒸着(CVD)によって、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面に、施用することができる。
【0069】
図4に示すCVD装置400を使用して、例えば、酸素および水の不存在下、高温におけるテトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)の熱分解を通じて、無機の支持体(改質した、またはγ−アルミナ中間層などで改質した1つ以上の中間層がない)に、非晶質シリカ層を施用することができる。CVD装置には、図5にさらに詳細に示す、CVD反応装置組立体402が含まれる。支持体408は、例えばグラファイトフェラルを備えたスウェージロック連結器などの連結器432とともに図5に示すように、CVD反応装置組立体の内部に設置することができる。支持体は、例えば、それぞれ、管の側面404およびシェル側面404を通る2つのAr流れを用いて、1℃/分で600℃まで加熱して差し支えない。図示するように、CVD反応装置組立体402は、流入するArガスの平衡流れ422および流出するAr平衡流れ424を含む。CVD反応装置組立体のための構成426の材料としては、例えば6.35mm(1/4インチ)のステンレス鋼または石英の管が挙げられる。
【0070】
シリカの堆積は、膜合成システム412におけるTEOSを充填したバブラーを通じて、搬送ガスArが流れ、TEOS蒸気を支持体408のチャネル内に運んだ後に開始することができる。支持体のチャネルにおける直線の流速は、例えば1〜10cm/秒の範囲でありうる。TEOS濃度は、例えば、0.02〜0.50mol%の範囲でありうる。Arガスは、使用する前に、最初に清浄器418で精製してもよい。Arガスの流速は、質量流量調整器420で調節して構わない。図に示すように、CVD装置400はまた、通気口428および逆圧調整器430を備えている。
【0071】
堆積時間の経過後、堆積工程を停止して差し支えなく、堆積したままの状態のシリカ層を通じたガス分離性能を、スクリーニング試験システム410によって評価することができる。試験は、He、N2、またはCO2などの異なる個別のガスを膜チャネルに導入し、異なるガスの透過流束を測定することによって行うことができる。図に示すように、スクリーニング試験システム410は、圧力調整器414および石鹸流量計416を備えている。性能が満足ではない場合には、堆積工程を継続できる。
【0072】
別の実施の形態では、非晶質のシリカ膜は、ゾル−ゲル法を使用して、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用することができる。1つの実施の形態では、TEOSをシリカ前駆体として用いて、シリカゾルを調製し、そのゾルを無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用して差し支えなく、得られた構造を乾燥および焼成することができる。
【0073】
非晶質のシリカ膜の適切な厚さおよび他の適切な特性もまた、先に述べたとおりであり、ここで繰り返すべきではないであろう。
【0074】
本発明は、大規模生産に実現可能なシリカ膜合成のための工程経路を提供する。CVD法は、半導体産業で幅広く利用されている。さらには、本発明におけるCVD法は、高価な真空システムを必要としない。その一方で、堆積方法は閉環境で起こり、したがって、ゾル−ゲル法などのオープン環境における他の方法と比較して、欠陥の調整ははるかに容易である。
【0075】
本発明のハイブリッド膜構造および本発明の方法に従って作製されたハイブリッド膜構造は、H2のCO2からの分離を含めた、H2の分離/精製のための方法など、さまざまな用途に使用することができる。例えば本発明は、H2を精製するための方法を含み、これは、
H2を含む供給ガス流れを本発明のハイブリッド膜構造の第1の末端内に導入し、
透過ガス流れを供給ガスよりもH2含量が高いハイブリッド膜構造から回収する、
各工程を有してなる。
【0076】
この実施の形態における供給ガスは、例えばCO2を含んでもよい。これに関連して、本発明の方法は、供給ガスよりもCO2含量が高い未透過のガス流れを用いてH2をCO2から分離する工程を含めてもよい。
【0077】
実例となる方法を図6に示す。供給ガス618(この事例では、水素および二酸化炭素の両方を含む)をハイブリッド膜構造600の第1の末端610内に導入し、チャネル614内に入れる。供給ガス618の水素分子の一部は、無機多孔質の支持体602の表面616に堆積した非晶質のシリカ膜604および中間層606を透過し、無機多孔質の支持体602の孔隙を通過した後、ハイブリッド膜構造の外面624から出る。これらの水素分子の通路を矢印622に示す。二酸化炭素を含む、供給ガス618の残りの部分は、チャネル614内に残留し、未透過のガス流れ620として、ハイブリッド膜構造600の第2の末端612から排出される。ハイブリッド膜構造600の第2の末端612から回収された未透過のガス流れ620は、供給ガス618よりも二酸化炭素含量が高く水素含量が低い。回収された透過ガス620は、供給ガス618よりも水素含量が高く二酸化炭素含量が低い。関係する供給ガスの用途および性質に応じて、回収されたガスは、貯蔵し、さらなる工程に供給ガスとして使用し、または大気中に排出することができる。
【0078】
上述の特定の例は、供給ガスに二酸化炭素および水素の両方を含んでいた。供給ガスは、例えば水素を含むが二酸化炭素は含まなくてもよいこと、供給ガスは、水蒸気、一酸化炭素、窒素、炭化水素、およびそれらの組合せなど、1つ以上の他のガスを含みうること、および本発明は供給ガス成分の1つ以上の成分の分離を含みうることが理解されよう。本発明のハイブリッド膜構造は、水素および/または二酸化炭素の分離に加えて、またはその代替として、供給ガス流れからこれら成分の1つ以上を分離するために用いられうることもまた、理解されよう。
【0079】
本発明をさらに、以下の非限定的な例によって例証する。
【実施例】
【0080】
実施例1:ベーマイト・ゾルの調製
この実施例では、アルミナ前駆体および解膠剤としてアルミニウムトリ−sec−ブトキシドおよび硝酸を使用し、安定なコロイド状のベーマイト(AlOOH)ゾルを調製する。
【0081】
600mlの脱イオン化水を80℃より高温に加熱し、98.53gの量のアルミニウムトリ−sec−ブトキシド(Aldrich社製)を加えた。混合物を高速で攪拌し、80〜85℃で24時間維持してアルミニウムアルコキシドを加水分解させ、白色沈殿を形成させた。次に沈殿を90℃より高温に加熱し、生成したままの状態のアルコールを蒸発させるために容器を開放した。1〜2時間の蒸発の後、容器を閉じて、還流しながら温度を約92℃に保持した。1時間の安定化の後、沈殿物を4.918gの濃硝酸(68〜70%、TME(商標))で解膠した。H+/Alのモル比は0.13であった。20時間、還流しながら溶液を90〜95℃に保持して、安定かつ透明なゾルを得た。
【0082】
得られた元々のゾルの濃度は0.75〜1.0Mの範囲であり、ゾルの体積を測定することによって正確なゾルの濃度を得た。動的光散乱分析器(Microtrac(Microtrac Inc.社製))を用いてゾルの粒径分布を測定した。得られた元々のゾルは、60〜120nmのメジアン粒径を伴う狭い粒径分布を有する。
【0083】
実施例2:改質したモノリス型の支持体上のγ−アルミナ中間層の調製
本実施例は、改質したモノリス型の支持体(すなわち、中間層が施用された支持体)の内部チャネル表面に約5nmの孔隙径を有する、均一かつ亀裂のないγ−アルミナ中間層の製造を例証する。溶液には、(i)希釈コーティング溶液を用いた多層コーティング;(ii)最初に高濃度のコーティング溶液でコーティングした後、低濃度の溶液でコーティング;(iii)2つのコーティング間のチャネルを通り抜ける、コーティング溶液の流れ方向の変化;および(iv)コーティング溶液のpH値の調整が含まれる。
【0084】
実施例1に記載する元々のベーマイト・ゾルを使用して、0.6および0.2Mのゾル濃度を有する2つのコーティング溶液を、調製した。76.5gの0.94Mの元々のゾルを、42gの4.0重量%PVA溶液および1.5gの脱イオン化水と混合した。50〜60℃で2時間攪拌の後、コーティング溶液を0.6Mのゾル濃度に調製し、1Mの硝酸溶液を使用してpH値を3.2〜3.8の範囲に調整した。同一の技術を用いて、0.2Mのコーティング溶液を調製した。
【0085】
本実施例に用いた支持体は、中間層として100〜200nmの孔隙径を有する多層のα−アルミナ膜ですでに改質した内部チャネルを有する19チャネルのα−アルミナ管であった。フロー・コーターを用いて、モノリス型の支持体の内部チャネル表面にベーマイト・ゾル層を堆積した。約100nmの孔隙径を有する6インチ長のモノリス基材をフロー・コーターに取り付け、その後、異なる圧力で、0.6Mのコーティング溶液を基材のチャネル内に吸引した。浸漬時間は20秒であった。コーティングした支持体を725rpmの速度で60秒間スパンして、チャネル内の余剰のコーティング溶液を除去し、120℃で2時間乾燥し、650℃で2時間、1℃/分の加熱速度で焼成した。0.2Mのコーティング溶液を用いて同一の手順を繰り返し、同一のコーティング溶液を用いて第3のコーティングを施してもよい。
【0086】
図7Aはγ−アルミナコーティングしたチャネル表面702の走査型電子顕微鏡画像を示している。図7Bは、γ−アルミナ中間層704の断面の走査型電子顕微鏡画像を示し、100nmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナ中間層706、および400nmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナ中間層708の基礎を形成している。γ−アルミナ中間層の表面は滑らかであり、亀裂は認められなかった。γ−アルミナ層の厚さは約2μmであった。
【0087】
実施例3:改質したモノリス型の支持体における非晶質のシリカ膜の調製
本実施例は、非加圧型のCVD工程によって、実施例2で作製された5nmの孔隙径を有する中間層を備えた6インチ長の改質したモノリス型の支持体上に、軸方向に沿った均一のシリカ膜の堆積を例証する。この実施例では、搬送ガスArの直線の8cm/秒の速い流速、および0.05mol%の低いTEOS濃度を用いた。
【0088】
図4に例証するCVD装置を使用し、不活性環境下、高温におけるテトラエトキシシラン(TEOS)の熱分解を通じて、5nmの孔隙の基材の内部チャネル表面にシリカ層を堆積させた。最初に、基材をCVD反応装置組立体(図5)に入れ、管側面およびシェル側面の両方を貫流するArを用いて、1℃/分の速度で600℃まで加熱した。第2に、12sccmの流速の搬送ガスArがTEOSで満たしたバブラーを通じて流れ、TEOSの蒸気(22℃)が基材のチャネル内に運ばれて、34sccmの希釈Ar流れと混合した後、シリカの堆積を開始した。一方、平衡Arガスを46sccmの流速で組立体のシェル側面に導入した。搬送ガスの直線の流速は8.0cm/秒であり、TEOS濃度は0.05mol%であった。7.5時間の堆積の後、搬送ガス流れを停止し、他の2つのAr流れ(希釈および平衡)は、パージの目的で流れを維持した。約20分後、これら2つの流れを閉じた。次に、堆積したままの状態のシリカ層を通じたガスを個別のガス(H2、He、CO2、N2など)をチャネルに導入し、膜を透過するガスの流速を測定することにより、評価した。測定後、CVD工程をさらに12時間再開し、堆積したままの状態のシリカ膜を再度評価した。CVD工程は、例えば選択性に満足な時点など、任意の時点で停止することができる。
【0089】
表1は、堆積時間の関数としての、モノリス型のシリカ膜の600℃における単一のガスの透過および理想選択性の変化を記載している。
【表1】
【0090】
CVDの前は、600℃におけるモノリス型のγ−アルミナ支持体の透過率は非常に高く、分子量の順番、すなわちH2>He>N2>CO2に従った。分子が軽いほど、透過率は高かった。これは、5nmの孔隙のγ−アルミナ膜を通るガス輸送のメカニズムがクヌーセン拡散に支配されていることによる。H2/CO2およびHe/CO2の選択性は、それぞれ4.0および2.9であり、これはクヌーセン拡散で予想される数値(4.7および3.3)に近かった。シリカ堆積処理に伴い、すべてのガスの透過率が低下したが、N2およびCO2では速く低下し、H2またはHe選択性は、N2またはCO2を上回る増大を生じた。29.5時間の堆積後、H2/CO2およびHe/CO2の選択性は5.6および6.1であり、これはクヌーセンの値よりも高い。Heの透過率はH2の透過率よりも高かった。He分子がH2分子よりも小さいことから、これは、分子を篩にかけるシリカ膜が形成されたことを示唆している。
【0091】
図8Aは、100nmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナ808の中間層の基礎を形成する、シリカ膜804の断面(断面を特定する2つの矢印に関する)、ならびにγ−アルミナ中間層806の断面の走査型電子顕微鏡画像を示している。図8Bは、シリカ膜802の上面の走査型電子顕微鏡画像を示す。100nmの厚さを有する連続したシリカ層がγ−アルミナ層に堆積したことは明白である。シリカ層とγ−アルミナ層の間の異なるコントラストは、シリカ構造がより高密であることを示唆している。
【0092】
図9A〜9Cは、始まりから終わりまで(図9Dに示す流れ方向に基づいて)、軸方向に沿って、γ−アルミナ中間層904上のモノリスの異なる位置に堆積させたシリカ膜902の断面図の比較である(図9Aは終端;図9Bは中央;図9Cは開始位置)それは、シリカ層が軸方向に沿って非常に均一であったことをはっきりと実証している。有利には、本発明の幾つかの実施の形態では、シリカ膜は、支持体または改質された支持体の断面のチャネルに実質的に均一の厚さを提供することができる。例えば図9Dを参照すると、本発明の実施の形態は、支持体の最も内側のチャネルにおける厚さが支持体の最も外側のチャネルにおける厚さと実質的に同一の厚さである、シリカ膜を堆積させることを含む。これは、本明細書に記載される非晶質のシリカ膜の施用にCVD法を使用することによって、達成することができる。
【0093】
実施例4:改質したモノリス型の支持体上における非晶質のシリカ膜の調製
本実施例では、実施例2で製造した5nmの孔隙径を有する3インチ長のγ−アルミナモノリス基材における、さらに良好な選択性を備えた、別のモノリス型のシリカ膜を作製するための加圧型のCVD工程について記載する。この比較試験では、実施例3に記載する非加圧型の方法を使用することにより、同一バッチのγ−アルミナモノリス基材をシリカ膜の堆積に使用した。
【0094】
実施例3と同一のCVD装置を使用した。また、ガス出口ライン(図4参照)における逆圧調整器を調節することによって(例えば流出量を制限)管の側面に高圧(周囲圧力よりも高い)を維持すること以外は、同一の堆積方法を適用した。結果として、CVDの堆積方法を通じて、特定の圧力差が膜基材に適用された。圧力差は0.1〜15psiの範囲でありうる。この実施例では、0.6psiの圧力差を使用した。CVDの堆積を、搬送ガスArの8.0cm/秒の直線流速および0.05mol%のTEOS濃度を用いて、600℃で行った。堆積工程の間に単一ガスの透過データを回収した。67.5時間の堆積の後、He/CO2およびH2/CO2の選択性は、それぞれ最大8.5および6.2に達した。
【0095】
図10は、加圧型のCVD工程1002および非加圧型のCVD工程1004によって調製されたシリカ膜のH2/CO2の理想選択性を比較している。非加圧型のCVD工程では、同一の堆積温度、搬送ガスArの直線の流速およびTEOS濃度を使用した。加圧と共に約50時間堆積した後、H2/CO2選択性は4から6に増大したが、加圧なしでは選択性は依然として未変化のままであった。加圧を用いて、同様の長時間(67.5時間対70.3時間)の堆積後、H2/CO2およびHe/CO2の選択性は、それぞれ、4.1から6.2、および4.0から8.5へと改善した。改善は、特に、基材の加圧による基材上の幾つかの欠陥の周囲における、シリカの急速な成長に起因する可能性が高い。走査型電子顕微鏡分析は、非加圧型の堆積方法の0.9nm/時間と比較して、シリカの堆積速度が2.2nm/時間であったことを示唆した。
【0096】
好ましい実施の形態について、本明細書で描写および説明をしてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神から逸脱することなく、さまざまな変更、追加、置換などを行うことが可能であり、したがって、これらは本発明の範囲内にあるとみなされることは、関連分野における技術者にとって明白であろう。
【図1A】
【図1B】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することにより本明細書に援用される、2007年10月30日出願の米国特許出願第11/980,171号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分子レベルのガス分離に有用な非晶質シリカのハイブリッド膜構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石炭ガス化、バイオマスガス化、炭化水素の水蒸気改質、天然ガスの部分酸化など、CO2、H2およびCOを含め、ガス流れを生じる多くの産業工程が存在する。例えば隔離の目的でCO2を捕捉するため、およびH2またはH2強化したガス生成物を生産するため、しばしば、それらのガス混合物からCO2を除去することが望まれる。
【0004】
高分子材料でできた膜が開発され、天然ガス流れからのCO2の分離など、分子の分離に商業的に用いられている。しかしながら、高分子膜は、熱的・化学的安定性の乏しさに関係し、それらの透過流束は低いことが多い。さらには、炭化水素は、化石燃料源に由来するCO2のガス混合物中に遍在的に存在し、これらの炭化水素は、溶解、汚染などによる高分子膜の分解を生じ、高分子膜の広範囲に及ぶ使用をさらに制限してしまう場合がある。
【0005】
無機膜は新しい技術領域であり、高分子膜材料に関係する熱的・化学的安定性の問題を克服することが大いに期待できる。しかしながら、実際の方法では、欠陥のない無機膜の製造には、おそらくは材料加工に大きな課題が依然として存在するために、無機膜のCO2分離機能は未だに十分に実証されていない。加えて、図1Aおよび1Bに示すように、無機膜の管状または平面ディスク形状に起因して、従来の無機膜は、高分子膜よりもはるかに低い表面積充填密度を提供することが多い。図1Aおよび1Bでは、矢印102は分離されるべきガス混合物を表し、矢印104は透過流れを表し、矢印106は未透過流れを表す。
【0006】
従来の無機膜技術は、単位膜分離領域に基づいて、製造的および工学的に高いコストを負わせ、さらにゼオライトおよび他の無機膜の広範囲に及ぶ用途を制限してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮すると、分子レベルのガス分離に使用可能な材料および方法が必要とされており、本発明は、少なくとも部分的に、この必要性に対処することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハイブリッド膜構造に関し、前記ハイブリッド膜構造は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体と、
随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする1つ以上の多孔質の無機中間層と、
非晶質のシリカ膜と、
を備え、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングし、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0009】
本発明はまた、ハイブリッド膜構造を製造する方法にも関し、該方法は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体を提供し、
随意的に、1つ以上の多孔質の無機中間層を前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用し、
非晶質のシリカ膜を施用する、
各工程を有してなり、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用され、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される。
【0010】
ハイブリッド膜構造は、廃棄ガス流れからのH2の回収、燃料電池用途のための生成ガス混合物からのH2の精製、および隔離のための石炭ガス化工程におけるH2の精製およびCO2の捕捉など、重要なエネルギーおよび環境問題を解決するために使用できる可能性がある。
【0011】
本発明のこれらの、およびさらなる特性および実施の形態は、添付の図面および詳細な説明において、さらに十分に例証および論述されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の無機のガス分離膜の設計および内部のガス流れの概略図。図1Aは管状膜の斜視図を示す。図1Bは平面ディスク膜の断面図を示す。
【図2】本発明の1つの実施の形態に従ったハイブリッド膜構造の図。
【図3】図2の面Aで切断した、本発明に従ったハイブリッド膜構造の長手方向の断面図。
【図4】本発明のある実施の形態に従った非晶質のシリカ膜を施用するための化学蒸着装置の概略図。
【図5】本発明のある実施の形態に従った化学蒸着組立体の概略図。
【図6】ガス分離用途における使用を示す、本発明に従ったハイブリッド膜構造の概略図。
【図7】本発明のある実施の形態に従ったγ−アルミナ中間層のチャネル表面(7A)および断面図(7B)の走査型電子顕微鏡画像。
【図8】本発明のある実施の形態に従った非晶質のシリカ膜の断面(8A)および上面(8B)の走査型電子顕微鏡画像。
【図9】搬送ガス流れ方向に従ったモノリス型の支持体(9D)の軸方向に沿って、異なる位置(末端(9A)、中間(9B)、および開始位置(9C))に堆積させた非晶質のシリカ膜の断面の走査型電子顕微鏡画像。
【図10】加圧型の化学蒸着および非加圧型の化学蒸着による、蒸着時間に伴う非晶質のシリカ膜の理想選択性の変化を比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図に記載する実施の形態は、事実上、実例となるものであって、特許請求の範囲に定義される本発明を制限することは意図されていない。図面および本発明の個々の特徴は、以下の詳細な説明においてさらに十分に論じられよう。
【0014】
本発明の1つの態様は、ハイブリッド膜構造に関し、該構造は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体と、
随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする1つ以上の多孔質の無機中間層と、
非晶質のシリカ膜と、
を備え、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングし、
前記ハイブリッド膜構造が前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0015】
適切な無機多孔質の支持体材料としては、セラミック、ガラスセラミック、ガラス、炭素、金属、粘土、およびそれらの組合せが挙げられる。無機多孔質の支持体を作ることができる、または無機多孔質の支持体に含まれうる、これらおよび他の材料の例としては、例えば、金属酸化物、アルミナ(例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、またはそれらの組合せ)、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、ゼオライト、金属(例えばステンレス鋼)、セリア、マグネシア、タルク、ジルコニア、ジルコン、ジルコン酸塩、ジルコニアスピネル、スピネル、ケイ酸塩、ホウ化物、アルミノケイ酸塩、磁器、リチウムアルミノケイ酸塩、長石、マグネシウムアルミノケイ酸塩、溶融シリカ、カーバイド、窒化物、シリコンカーバイド、およびシリコン窒化物が挙げられる。
【0016】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、主として、アルミナ(例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、またはそれらの組合せ)、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、金属(例えば、ステンレス鋼)、シリカカーバイド、セリア、またはそれらの組合せから作られるか、そうでなければ、それらを含む。
【0017】
1つの実施の形態では、無機多孔質の支持体はガラスである。別の実施の形態では、無機多孔質の支持体はガラスセラミックである。別の実施の形態では、無機多孔質の支持体はセラミックである。別の実施の形態では、無機多孔質の支持体は金属である。さらに別の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、例えば硬化した樹脂を炭化するなど、樹脂を炭化することによって生成される、例えば炭素支持体などの炭素である。
【0018】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体はハニカムモノリスの形態をしている。ハニカムモノリスは、例えば混合バッチ材料を、ダイを通じて押出成形して未焼成体に形成し、当技術分野で既知の方法を使用して熱の印加と共に未焼成体を焼結することによって、製造することができる。特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体はセラミックモノリスの形態をしている。特定の実施の形態では、例えばセラミックモノリスなどのモノリスは、複数の平行な内部チャネルを含む。
【0019】
無機多孔質の支持体は、500m2/m3を超える、750m2/m3を超える、および/または1000m2/m3を超える表面積充填密度など、高い表面積充填密度を有しうる。
【0020】
上述のように、モノリス型の無機多孔質の支持体は、多孔質壁によって画成された表面を有する、複数の内部チャネルを含む。内部チャネルの数、間隔、および配置は、ハイブリッド膜構造の潜在用途を考慮して選択することができる。例えばチャネルの数は、5〜500、5〜50、5〜40、5〜30、10〜50、10〜40、10〜30など、2〜1000以上の範囲でありうる;これらのチャネルは、実質的に同一の断面形状(例えば、円形、楕円形、正方形、六角形など)でありうるが、同一でなくてもよい。チャネルは、無機多孔質の支持体の断面に実質的に均一に分散されうるが、そうでなくてもよい(例えばチャネルが無機多孔質の支持体の中心よりも外縁に近くなるように配置される場合のように)。チャネルはまた、あるパターンで配置されうる(例えば、無機多孔質の支持体の中心の周囲の同心円における、行と列、オフセットの行と列など)。
【0021】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の内部チャネルは、1±0.5ミリメートル、2±0.5ミリメートル、2.5ミリメートル〜3ミリメートル、および/または0.8ミリメートル〜1.5ミリメートルの水力学的な内径を有する場合など、0.5ミリメートル〜3ミリメートルの水力学的な内径を有する。特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の内部チャネルは、例えば3ミリメートル未満など、3ミリメートル以下の水力学的な内径を有する。明確にするため、このような関係において用いられる「内径(直径)」とは、内部チャネルの断面の寸法のことをいい、内部チャネルの断面が非円形の場合には、非円形の内部チャネルのものと同一の断面積を有する、仮説の円の直径を意味することに留意されたい。
【0022】
特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、25μm以下のメジアン孔隙径を有する。特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、10±5nm、20±5nm、30±5nm、40±5nm、50±5nm、60±5nm、70±5nm、80±5nm、90±5nm、100±5nm、100±50nm、200±50nm、300±50nm、400±50nm、500±50nm、600±50nm、700±50nm、800±50nm、900±50nm、1000±50nm、1±0.5μm、および/または2±0.5μmのメジアン孔隙径を有する場合など、5nm〜25μmのメジアン孔隙径を有する。他の実施の形態では、内部チャネル表面は、5μm〜15μmのメジアン孔隙径を有する。
【0023】
特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、1μm以下のメジアン孔隙径を有する。特定の実施の形態では、内部チャネル表面を画成する多孔質壁は、5nm〜500nm、5nm〜400nm、5nm〜300nm、5nm〜400nm、5nm〜300nm、5nm〜400nm、5nm〜200nm、5nm〜100nm、5nm〜50nmなどのメジアン孔隙径を有する場合など、500nm以下のメジアン孔隙径を有する。明確にするために、このような関係において用いられる「サイズ/大きさ」とは、孔隙の断面の寸法のことを意味し、孔隙の断面が非円形の場合には、非円形の孔隙のものと同一の断面積を有する仮説に基づいた円の直径のことを意味することに留意されたい。
【0024】
特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、30%〜60%、50%〜60%、または35%〜50%の孔隙率など、20%〜80%の孔隙率を有する。ステンレス鋼などの金属が無機多孔質の支持体として用いられる場合には、例えば、三次元プリンティングによって、高エネルギーの粒子トンネリングによって、および/または、孔隙率および孔隙径を調節するための孔隙形成剤を使用する粒子の焼結によって、作られた工学的な孔隙またはチャネルを使用して、ステンレス鋼の支持体における孔隙率を達成することができる
例えば分離用途に使用する場合に、支持体を通過する流体流れと、コーティングされた支持体自体との間のさらに緊密な接触を可能にするため、ある実施の形態では、少なくとも一部のチャネルは支持体の一方の末端で塞栓されるが、他のチャネルは支持体のもう一方の末端で塞栓されることが望ましい。特定の実施の形態では、支持体の各末端において、塞栓された、および/または塞栓されていないチャネルが、互いに市松模様を形成することが望ましい。特定の実施の形態では、1つのチャネルが支持体の1つの末端で塞栓される(「参照末端」と称される)が、反対の末端では塞栓されない場合、そこにすぐ隣接する(少なくとも1つの壁を、対象とするチャネルと共有する)少なくとも一部、例えば大部分のチャネル(特定の他の実施の形態では、好ましくはすべてのチャネル)は、支持体のこれら反対の末端では塞栓されるが、参照末端では塞栓されないことが望ましい。個々の無機多孔質の支持体は、異なる使用条件の必要性を満たすために、さまざまな方式で積み重ねられ、または収納されて、さまざまな大きさ、使用期間などを有する、大きい無機多孔質の支持体を形成できることが認識されよう。
【0025】
上述のように、ハイブリッド膜構造は、随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする1つ以上の多孔質の無機中間層を含みうる。特定の実施の形態では、ハイブリッド膜構造は、1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない。この場合、前記非晶質のシリカ膜が、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする。本発明のこの態様の1つの実施の形態では、無機多孔質の支持体は、1μm以下のメジアン孔隙径を含む。
【0026】
他の実施の形態では、ハイブリッド膜構造は、1つ以上の多孔質の無機中間層を含む。この場合、非晶質シリカは、1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。本発明のこの態様の1つの実施の形態では、無機多孔質の支持体は、5μm〜15μmのメジアン孔隙径を含む。
【0027】
ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の無機中間層を含み、非晶質のシリカ膜が1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする場合には、「1つ以上の多孔質の中間層の表面」とは、中間層の外面(すなわち、チャネルに曝露される表面)のことをいい、あるいは、2つ以上の多孔質の中間層が存在する場合には、最も外側の中間層の外面(すなわち、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面から最も離れた中間層)のことをいうことが認識されよう。特に、「非晶質のシリカ膜が1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする」という語句は、非晶質のシリカ膜があらゆる多孔質の中間層、またはあらゆる多孔質の中間層のあらゆる側面をコーティングすることを必要とすると解釈されることは意味していない。
【0028】
1つ以上の多孔質の無機中間層を使用するか否かは、無機多孔質の支持体の性質などのいろいろな要素;無機多孔質の支持体の内部チャネルのメジアン径;ハイブリッド膜構造が施用される用途、および用いられるであろう条件(例えば、ガス流速、ガス圧力など);内部チャネル表面の粗さまたは滑らかさ;内部チャネル表面を画成する多孔質壁のメジアン孔隙径などに応じて決定されうる。
【0029】
例として、特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は、非晶質のシリカ膜が内部チャネル表面に直接コーティングされる場合に、得られるコーティングが滑らかで薄くなるように、十分に小さいメジアン孔隙径を含む。多孔質の無機中間層(少なくとも幾つかの用途のため)の使用からの重大な利益(非晶質のシリカ膜コーティングの滑らかさに関して)を受けないためには十分に小さいと考えられるメジアン孔隙径の例は、約100nm未満のものである。メジアン孔隙径が約80nm未満の場合には、もたらされる利益はさらに少ない;メジアン孔隙径が約50nm(例えば5nm〜50nmの範囲)の場合には、もたらされる利益はさらになお少ない。
【0030】
さらなる実例として、特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は、非晶質のシリカ膜が内部チャネル表面に直接コーティングされる場合に、得られるコーティングが粗くなるように十分に大きいメジアン孔隙径を含む。そのような場合には、多孔質の無機中間層を使用することは有利でありうる。多孔質の無機中間層(少なくとも幾つかの用途のため)の使用からの重大な利益を受けるように(非晶質のシリカ膜コーティングの滑らかさに関して)、十分に大きいと考えられるメジアン孔隙径の例は、約100nmを超えるものである。メジアン孔隙径が約200nmを超える場合、もたらされる利益はさらに大きい;メジアン孔隙径が約300nmを超える場合(例えば300nm〜50μmの範囲)、もたらされる利益はさらになお大きい。
【0031】
例として、特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は5nm〜100nm(例えば5nm〜50nm)のメジアン孔隙径を有し、ハイブリッド膜構造は1つ以上の多孔質の無機中間層を含まず、非晶質のシリカ膜は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする。他の実施の形態では、無機多孔質の支持体の多孔質壁は50nm〜25μmのメジアン孔隙径(例えば、100nm〜15μmまたは5μm〜15μm)を有し、ハイブリッド膜構造は1つ以上の多孔質の無機中間層を含み、非晶質のシリカ膜は1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0032】
上述のように、1つ以上の多孔質の無機中間層を使用して、非晶質のシリカ膜がコーティングされる表面の滑らかさを増大させて、例えば、チャネルを通過するであろうガスの流れを改善し;非晶質のシリカ膜コーティングの均一性を改善し;非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目の数および/または大きさを低減し;許容される完全な被覆率(例えばギャップ、ピンホール、または他の裂け目が全くないか、または許容されるわずかなもの)を有する非晶質のシリカ膜コーティングを達成するために必要とされる非晶質のシリカ膜コーティングの厚さを低下させることができる。加えて、または代わりに、1つ以上の多孔質の無機中間層を使用して、無機多孔質の支持体の内部チャネルの有効径を低下させることができる。さらに加えて、または代替として、1つ以上の多孔質の無機中間層を使用して、非晶質のシリカ膜がコーティングされる表面の化学的、物理的、または他の特性を変化させることができる。
【0033】
1つ以上の多孔質の無機中間層を作ることのできる材料の例としては、金属酸化物、セラミック、ガラス、ガラスセラミック、炭素、およびそれらの組合せが挙げられる。1つ以上の多孔質の無機中間層を作ることのできる材料の他の例としては、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、シリカカーバイド、およびセリアが挙げられる。特定の実施の形態では、1つ以上の多孔質の無機中間層は、アルミナ(例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、またはそれらの組合せ)、チタニア、ジルコニア、シリカ、またはそれらの組合せから作られるか、そうでなければそれらを含む。
【0034】
特定の実施の形態では、1つ以上の多孔質の無機中間層のそれぞれのメジアン孔隙径は、無機多孔質の支持体の多孔質壁のメジアン孔隙径よりも小さい。例として、1つ以上の多孔質の中間層は、5nm〜50nm、5nm〜40nm、5nm〜30nm、10±5nm、20±5nm、30±5nm、40±5nm、50±5nm、60±5nm、70±5nm、80±5nm、および/または90±5nmなど、5nm〜100nmのメジアン孔隙径を含みうる。2つ以上の多孔質の中間層が存在する場合、2つ以上の多孔質の中間層のそれぞれは、同一のメジアン孔隙径を有してもよく、またはそれらの一部またはすべてが異なるメジアン孔隙径を有していてもよい。
【0035】
特定の実施の形態では、ハイブリッド膜構造は2つ以上の多孔質の中間層を含み、無機多孔質の支持体と接触する多孔質の中間層のメジアン孔隙径は、非晶質のシリカ膜に接触する多孔質の中間層のメジアン孔隙径よりも大きい。例として、無機多孔質の支持体が300nmよりも大きいメジアン孔隙径(例えば、500nmよりも大きい、1μmよりも大きい、2μmよりも大きい、3μmよりも大きいなど)を有する場合には、ハイブリッド膜構造は、2つの多孔質の中間層:無機多孔質の支持体のメジアン孔隙径よりも小さいメジアン孔隙径を有する第1の層(すなわち、無機多孔質の支持体と接触する層)(例えば、20nm〜200nm、例えば100nm〜200nmのメジアン孔隙径を有する)と、第1の中間層のメジアン孔隙径よりも小さいメジアン孔隙径を有する第2の中間層(すなわち、非晶質のシリカ膜と接触する層)(例えば、5nm〜50nmのメジアン孔隙径を有する)と、を含みうる。これらの配置を使用して、第1の中間層の孔隙を通じて、第2の中間層のさらに大きい孔隙を通じて、無機多孔質の支持体のさらになお大きい孔隙を通じて、および無機多孔質の支持体の外側への、内部チャネルからの透過性を許容できないほど低下させることなく、非晶質のシリカ膜がコーティングされる滑らかな表面を提供することができる。
【0036】
ハイブリッド膜構造はまた、例えば3つ以上の中間層を含みうる。上記のように、本発明は、非晶質のシリカ膜の方向における中間層の各追加と共に、中間層のメジアン孔隙径が減少する実施の形態を含む。
【0037】
ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の中間層を含む場合には、1つ以上の多孔質の中間層は、例えば、20nm〜100μm、2μm〜80μm、5μm〜60μm、10μm〜50μmなど、合計1μm〜100μmの厚さを含みうる。
【0038】
すべてのチャネルが1つ以上の中間層でコーティングされる必要はないということは、理解されよう。例えば中間層は、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングすることができる;あるいは、中間層は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面の幾つかをコーティングすることができる;「中間層は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする」という語句は、両方の状況を包含することが意図されている。
【0039】
上述のように、ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の中間層を含むか否かに関わらず、ハイブリッド膜構造は非晶質のシリカ膜も含む。ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、非晶質のシリカ膜は無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする。ハイブリッド膜構造が1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、非晶質のシリカ膜は1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする。
【0040】
すべてのチャネルが非晶質のシリカ膜でコーティングされる必要はないということは、理解されよう。例えば非晶質のシリカ膜は、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面のすべてをコーティングすることができる;または非晶質シリカは無機多孔質の支持体の内部チャネル表面の幾つかをコーティングすることができる;「非晶質のシリカ膜が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする」という用語は、両方の状況を包含することを意味する。同様に、多孔質の中間層が用いられる場合には、非晶質のシリカ膜は、あらゆるチャネルにおける1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングすることができる;あるいは、非晶質のシリカ膜は、チャネルの幾つかにおいて、1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングすることができる;「非晶質のシリカ膜が1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする」という用語は、両方の状況を包含することを意味する。
【0041】
非晶質のシリカ膜は助剤を含みうる。例えば、非晶質のシリカ膜は、有機助剤、無機助剤、またはその両方を含みうる。これらの助剤は、例えば、非晶質のシリカ膜の重量で、例えば最大20重量%までの量で、存在しうる。有機助剤は、例えばCO2への強い親和性を有するなど、有機基を有する化合物を含む。無機の助剤は、アルミナおよびチタニアなど、膜の熱水安定性を改善することができるアミンなどの化合物を含む。
【0042】
非晶質のシリカ膜はまた、膜における分離助剤の存在に加えて、またはその代わりに、アミンなどの有機官能基に結合するシリカを含みうる。したがって、「非晶質のシリカ膜」という用語は、上述のものなど、官能基によって修飾された非晶質シリカを含有する膜を含む。一部の実施の形態では、最大10重量%までのシリカがそれらの官能基で修飾される。
【0043】
特定の実施の形態では、非晶質のシリカ膜は20nm〜2μmの厚さを有し、例えば20nm〜1μm、例えば20nm〜200nm、例えば20nm〜50nmである。他の実施の形態では、非晶質のシリカ膜は20nm〜50nmの厚さを有する。特定の実施の形態では、膜の厚さは実質的に均一である。
【0044】
特定の用途では、非晶質のシリカ膜は、多孔質の中間層の全表面または無機多孔質の支持体の全内部チャネル表面をコーティングすることが望ましいであろう。さらなる例として、特定の用途では、非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目の数および/または大きさに関しては、非晶質のシリカ膜コーティングによってコーティングされた全表面積の大きさは小さく、数も少ない(例えば、非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目が存在しない場合、または非晶質のシリカ膜コーティングにおけるギャップ、ピンホール、または他の裂け目の集合面積が1%未満(0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満など)の場合のように)ことが望ましいであろう。
【0045】
本発明の特定の実施の形態は、例えば、耐久性および/または強度に関して;再生または改修に関して;および/または透過流束に関して(ガス分離用途に利用するための構造についての)、先行技術の高分子膜および先行技術の無機膜よりも優れた利点を有しうる。
【0046】
例として、本発明のハイブリッド膜構造の特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体構造は、純粋な高分子膜と比較して、表面積充填密度を提供する一方、表面積、機械的強度、および耐久性についての骨格を提供することができる。
【0047】
さらに加えて、または代替として、本発明のハイブリッド膜構造の特定の実施の形態では、無機多孔質の支持体は、無機多孔質の支持体のチャネル表面に、実質的に均一な孔隙構造を有することができる(または、実質的に均一な孔隙構造は、随意的な1つ以上の多孔質の無機中間層の使用によって生成することができる)。これは、薄く、耐久性のある非晶質のシリカ膜層の堆積を可能にし;薄い非晶質のシリカ膜層は、高い透過流束を提供することができる。よって、ハイブリッド膜構造は、先行技術の無機膜の製造コストと比較して、製造コストにおける大きい潜在的利点を提供することができる。
【0048】
チャネルサイズが小さいモノリス型の非晶質のシリカ膜製品は、同程度の本体直径を有する従来の管状膜よりもほぼ一桁大きい表面積充填密度を提供する。これは、膜モジュール組立体の大きい表面積に対する表面積あたりの膜コストおよび工業的コストの両方の劇的な軽減をもたらすことができる。他方では、ディスク形状の膜製品は、大規模用途にとっては実用的ではない。
【0049】
多層膜構造は、大きい孔隙の支持体構造を可能にし(すなわち、剥き出しの支持体を通過する高い透過性)、シリカ膜の薄層の堆積を可能にする(すなわち、高い膜透過流束)。支持体および膜の透過性を増強すると、結果的に、膜層設計は、高い膜透過流束の達成が可能になる。
【0050】
本発明の特定のハイブリッド膜構造において、上述の利点のすべて、または一部が達成される場合があり、あるいは利点のいずれも達成されない場合もありうることが理解されよう。例えば、本発明の特定のハイブリッド膜構造は、意中の他の検討材料を有するように設計して差し支えなく、これら他の検討材料が、上述の利点または他の利点の一部またはすべてを低減または打ち消すことがありうる。上述の利点は、限定されることを意味しておらず、それらは、多少なりとも、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0051】
図2は、本発明の1つの実施の形態に従ったハイブリッド膜構造200の斜視図である。この実施の形態では、ハイブリッド膜構造200は、1つ以上の中間層と共に、または1つ以上の中間層なしで、無機多孔質の支持体202および非晶質のシリカ膜204を含む。無機多孔質の支持体202は、第1の末端208から第2の末端210まで、無機多孔質の支持体202を通って延在する第1の末端208、第2の末端210、および複数の内部チャネル206を含むように示されている。
【0052】
図3Aおよび3Bは、図2の面Aにおける、図2に示すハイブリッド膜構造の長手方向の断面図である。図3Aは、1つの中間層を含む実施の形態を示しているのに対し、図3Bは、2つの中間層を含む実施の形態を例証している。
【0053】
これらの実施の形態では、ハイブリッド膜構造300および320は、無機多孔質の支持体302、非晶質のシリカ膜304、および第1の多孔質の無機中間層306を備えている。図3Bに示す実施の形態は、さらに、第2の無機中間層308を備えている。無機多孔質の支持体302は、第1の末端310、第2の末端312、および、第1の末端310から第2の末端312まで、無機多孔質の支持体302を通って延在する複数の内部チャネル314を含むように示されている。支持体の内部チャネル314は多孔質壁によって画成される表面316を有し、第1の多孔質の無機中間層306は、内部チャネル314の表面316をコーティングする。非晶質のシリカ膜304は、第1(図3A)または第2(図3B)の中間層をコーティングする。
【0054】
本発明のハイブリッド膜構造は、例えば次に述べる方法など、さまざまな手順によって調製することができる。
【0055】
本発明はまた、ハイブリッド膜構造の製造方法に関する。その方法は、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記支持体を通じて前記第1の末端から前記第2の末端まで延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体を提供する工程と、
随意的に、1つ以上の多孔質の無機中間層を前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程と、
非晶質のシリカ膜を施用する工程と、
を有してなり、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用され、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される。
【0056】
本発明の方法の実施に用いることができる適切な無機多孔質の支持体としては、上述のものが挙げられる。
【0057】
無機多孔質の支持体は、さまざまな異なる方法で提供されうる。例えば、それは商業的に得ることができる。あるいは、当技術分野で周知の方法で調製することもできる。
【0058】
例として、適切な無機多孔質の支持体は、参照することによって本明細書に取り込まれる、2006年12月11日に出願した同時係属の米国仮特許出願第60/874,070号明細書;参照することによって本明細書に取り込まれる、Lachmanらの米国特許第3,885,977号明細書;および参照することによって本明細書に取り込まれる、Bagleyらの米国特許第3,790,654号明細書に記載される方法に従って調製することができる。
【0059】
例えば、無機多孔質の支持体は、60重量%〜70重量%のα−アルミナ(5μm〜30μmの範囲の粒径を有する)、30重量%の有機孔隙形成剤(7μm〜45μmの範囲の粒径を有する)、10重量%の焼結助剤、および/または他のバッチ成分(例えば架橋剤など)を合わせることによって作ることができる。合わせた材料を混合し、一定時間(例えば8〜16時間)浸漬させる。次いで、押出成形によって混合物を未焼成体の形状に成形する。得られた未焼成体を焼結して(例えば、1500℃以上の温度で8〜16時間などの適切な時間)、無機多孔質の支持体を形成する。
【0060】
上述のように、本発明の方法は、随意的に、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に、1つ以上の多孔質の無機中間層を施用する工程を含めることができる。随意的な多孔質の無機中間層および多孔質の無機中間層が作られる適切な材料の使用が望まれるであろう状況としては、上述のものが挙げられる。
【0061】
本発明の方法が、1つ以上の多孔質の無機中間層を無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程を含む状況では、1つ以上の多孔質の無機中間層は、任意の適切な方法を使用して、内部チャネル表面に施用することができる。例として、多孔質の無機中間層は、コーティング(例えば、適切な液体におけるフローコーティングなど)によって、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面の、適切な大きさ(例えば、およそ数十ナノメートルから数百ナノメートル)のセラミックまたは他の無機粒子に施用することができる。セラミックまたは他の無機粒子でコーティングした無機多孔質の支持体を、次に、乾燥および焼成してセラミックまたは他の無機粒子を焼結し、その後、多孔質の無機中間層を形成する。さらなる多孔質の無機中間層は、各層の施用の後、上記方法を、典型的には乾燥および焼成を用いて繰り返すことにより(例えばさまざまな無機粒子で)、コーティングした無機多孔質の支持体に施用することができる。
【0062】
乾燥および焼成スケジュールは、無機多孔質の支持体および多孔質の無機中間層に用いられる材料に基づいて調整することができる。例えばα−アルミナの多孔質の支持体に施用されるα−アルミナ中間層は、適切な温度(例えば120℃)で適切な時間(例えば20時間)維持すると同時に、湿度調節された環境下で乾燥することができる;乾燥後、α−アルミナ中間層を、有機成分の除去および中間層のα−アルミナ粒子の焼結に有効な条件下、例えば、調整したガス環境下、900℃〜1200℃の温度で、焼成することができる。
【0063】
セラミックまたは他の無機粒子を無機多孔質の支持体の内部チャネル表面にコーティングし、およびそれらを多孔質の無機中間層に成形する、適切な方法は、例えば、参照することによって本明細書に取り込まれる、2007年3月29日に出願した米国特許出願第11/729,732号明細書;参照することによって本明細書に取り込まれる、2007年7月19日に出願した、米国特許出願第11/880,066号明細書;および参照することによって本明細書に取り込まれる、2007年7月19日に出願した、米国特許出願第11/880,073号明細書などに、開示されている。
【0064】
γ−アルミナを含有する多孔質の無機中間層に、安定なコロイド状のベーマイト(AlOOH)ゾルを用いて施用してもよい。例えば、これらの層は、α−アルミナ中間層などの別の中間層にコーティングした、第2の、またはそれに続く中間層でありうる。例えば、γ−アルミナを含有するような層は、例えば100nm〜200nmなど、20nm〜1μmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナなどの別の中間層にコーティングすることができる。施用されたγ−アルミナ中間層は、一例として、5nm以上のメジアン孔隙径を含みうる。
【0065】
ゾル−ゲル法を用いてγ−アルミナの中間層に施用することもできる。最初に、ベーマイト(AlOOH)ゾルは、アルミナアルコキシド(アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシドなど)の加水分解によって作ることができ、その後、酸(硝酸、塩酸または酢酸)を用いて解膠して構わない。第2に、コーティング溶液は、ベーマイト・ゾルを高分子結合剤の溶液および脱イオン化水と混合することによって調製することができる。PVA(ポリビニル・アルコール)およびPEG(ポリエチレングリコール)は、高分子結合剤の例である。PVAおよびゾルの濃度は、例えば、それぞれ、0.3〜1.3重量%および0.2〜0.6mol/lでありうる。次に、フローコーティング法を用いて、支持体または他の中間層の内部チャネル表面にγ−アルミナコーティングをすることができる。その後、コーティングした支持体は、例えば650℃など、600〜800℃で乾燥および焼成することができる。例えばさらに希釈したコーティング溶液を用いて、同一のコーティング−乾燥−焼成工程を繰り返すこともできる。
【0066】
本発明の方法が、1つ以上の多孔質の無機中間層を無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する随意的な工程を含むか否かにかかわらず、本方法は、非晶質のシリカ膜の施用を含んでなる。1つ以上の多孔質の無機中間層が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、非晶質のシリカ膜が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用される。1つ以上の多孔質の無機中間層が無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、非晶質のシリカ膜は、1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される。
【0067】
非晶質のシリカ膜の施用(すなわち、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面への施用)は、任意の適切な方法によって行うことができる。
【0068】
例として、非晶質のシリカ膜は、化学蒸着(CVD)によって、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面に、施用することができる。
【0069】
図4に示すCVD装置400を使用して、例えば、酸素および水の不存在下、高温におけるテトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)の熱分解を通じて、無機の支持体(改質した、またはγ−アルミナ中間層などで改質した1つ以上の中間層がない)に、非晶質シリカ層を施用することができる。CVD装置には、図5にさらに詳細に示す、CVD反応装置組立体402が含まれる。支持体408は、例えばグラファイトフェラルを備えたスウェージロック連結器などの連結器432とともに図5に示すように、CVD反応装置組立体の内部に設置することができる。支持体は、例えば、それぞれ、管の側面404およびシェル側面404を通る2つのAr流れを用いて、1℃/分で600℃まで加熱して差し支えない。図示するように、CVD反応装置組立体402は、流入するArガスの平衡流れ422および流出するAr平衡流れ424を含む。CVD反応装置組立体のための構成426の材料としては、例えば6.35mm(1/4インチ)のステンレス鋼または石英の管が挙げられる。
【0070】
シリカの堆積は、膜合成システム412におけるTEOSを充填したバブラーを通じて、搬送ガスArが流れ、TEOS蒸気を支持体408のチャネル内に運んだ後に開始することができる。支持体のチャネルにおける直線の流速は、例えば1〜10cm/秒の範囲でありうる。TEOS濃度は、例えば、0.02〜0.50mol%の範囲でありうる。Arガスは、使用する前に、最初に清浄器418で精製してもよい。Arガスの流速は、質量流量調整器420で調節して構わない。図に示すように、CVD装置400はまた、通気口428および逆圧調整器430を備えている。
【0071】
堆積時間の経過後、堆積工程を停止して差し支えなく、堆積したままの状態のシリカ層を通じたガス分離性能を、スクリーニング試験システム410によって評価することができる。試験は、He、N2、またはCO2などの異なる個別のガスを膜チャネルに導入し、異なるガスの透過流束を測定することによって行うことができる。図に示すように、スクリーニング試験システム410は、圧力調整器414および石鹸流量計416を備えている。性能が満足ではない場合には、堆積工程を継続できる。
【0072】
別の実施の形態では、非晶質のシリカ膜は、ゾル−ゲル法を使用して、無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用することができる。1つの実施の形態では、TEOSをシリカ前駆体として用いて、シリカゾルを調製し、そのゾルを無機多孔質の支持体の内部チャネル表面または1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用して差し支えなく、得られた構造を乾燥および焼成することができる。
【0073】
非晶質のシリカ膜の適切な厚さおよび他の適切な特性もまた、先に述べたとおりであり、ここで繰り返すべきではないであろう。
【0074】
本発明は、大規模生産に実現可能なシリカ膜合成のための工程経路を提供する。CVD法は、半導体産業で幅広く利用されている。さらには、本発明におけるCVD法は、高価な真空システムを必要としない。その一方で、堆積方法は閉環境で起こり、したがって、ゾル−ゲル法などのオープン環境における他の方法と比較して、欠陥の調整ははるかに容易である。
【0075】
本発明のハイブリッド膜構造および本発明の方法に従って作製されたハイブリッド膜構造は、H2のCO2からの分離を含めた、H2の分離/精製のための方法など、さまざまな用途に使用することができる。例えば本発明は、H2を精製するための方法を含み、これは、
H2を含む供給ガス流れを本発明のハイブリッド膜構造の第1の末端内に導入し、
透過ガス流れを供給ガスよりもH2含量が高いハイブリッド膜構造から回収する、
各工程を有してなる。
【0076】
この実施の形態における供給ガスは、例えばCO2を含んでもよい。これに関連して、本発明の方法は、供給ガスよりもCO2含量が高い未透過のガス流れを用いてH2をCO2から分離する工程を含めてもよい。
【0077】
実例となる方法を図6に示す。供給ガス618(この事例では、水素および二酸化炭素の両方を含む)をハイブリッド膜構造600の第1の末端610内に導入し、チャネル614内に入れる。供給ガス618の水素分子の一部は、無機多孔質の支持体602の表面616に堆積した非晶質のシリカ膜604および中間層606を透過し、無機多孔質の支持体602の孔隙を通過した後、ハイブリッド膜構造の外面624から出る。これらの水素分子の通路を矢印622に示す。二酸化炭素を含む、供給ガス618の残りの部分は、チャネル614内に残留し、未透過のガス流れ620として、ハイブリッド膜構造600の第2の末端612から排出される。ハイブリッド膜構造600の第2の末端612から回収された未透過のガス流れ620は、供給ガス618よりも二酸化炭素含量が高く水素含量が低い。回収された透過ガス620は、供給ガス618よりも水素含量が高く二酸化炭素含量が低い。関係する供給ガスの用途および性質に応じて、回収されたガスは、貯蔵し、さらなる工程に供給ガスとして使用し、または大気中に排出することができる。
【0078】
上述の特定の例は、供給ガスに二酸化炭素および水素の両方を含んでいた。供給ガスは、例えば水素を含むが二酸化炭素は含まなくてもよいこと、供給ガスは、水蒸気、一酸化炭素、窒素、炭化水素、およびそれらの組合せなど、1つ以上の他のガスを含みうること、および本発明は供給ガス成分の1つ以上の成分の分離を含みうることが理解されよう。本発明のハイブリッド膜構造は、水素および/または二酸化炭素の分離に加えて、またはその代替として、供給ガス流れからこれら成分の1つ以上を分離するために用いられうることもまた、理解されよう。
【0079】
本発明をさらに、以下の非限定的な例によって例証する。
【実施例】
【0080】
実施例1:ベーマイト・ゾルの調製
この実施例では、アルミナ前駆体および解膠剤としてアルミニウムトリ−sec−ブトキシドおよび硝酸を使用し、安定なコロイド状のベーマイト(AlOOH)ゾルを調製する。
【0081】
600mlの脱イオン化水を80℃より高温に加熱し、98.53gの量のアルミニウムトリ−sec−ブトキシド(Aldrich社製)を加えた。混合物を高速で攪拌し、80〜85℃で24時間維持してアルミニウムアルコキシドを加水分解させ、白色沈殿を形成させた。次に沈殿を90℃より高温に加熱し、生成したままの状態のアルコールを蒸発させるために容器を開放した。1〜2時間の蒸発の後、容器を閉じて、還流しながら温度を約92℃に保持した。1時間の安定化の後、沈殿物を4.918gの濃硝酸(68〜70%、TME(商標))で解膠した。H+/Alのモル比は0.13であった。20時間、還流しながら溶液を90〜95℃に保持して、安定かつ透明なゾルを得た。
【0082】
得られた元々のゾルの濃度は0.75〜1.0Mの範囲であり、ゾルの体積を測定することによって正確なゾルの濃度を得た。動的光散乱分析器(Microtrac(Microtrac Inc.社製))を用いてゾルの粒径分布を測定した。得られた元々のゾルは、60〜120nmのメジアン粒径を伴う狭い粒径分布を有する。
【0083】
実施例2:改質したモノリス型の支持体上のγ−アルミナ中間層の調製
本実施例は、改質したモノリス型の支持体(すなわち、中間層が施用された支持体)の内部チャネル表面に約5nmの孔隙径を有する、均一かつ亀裂のないγ−アルミナ中間層の製造を例証する。溶液には、(i)希釈コーティング溶液を用いた多層コーティング;(ii)最初に高濃度のコーティング溶液でコーティングした後、低濃度の溶液でコーティング;(iii)2つのコーティング間のチャネルを通り抜ける、コーティング溶液の流れ方向の変化;および(iv)コーティング溶液のpH値の調整が含まれる。
【0084】
実施例1に記載する元々のベーマイト・ゾルを使用して、0.6および0.2Mのゾル濃度を有する2つのコーティング溶液を、調製した。76.5gの0.94Mの元々のゾルを、42gの4.0重量%PVA溶液および1.5gの脱イオン化水と混合した。50〜60℃で2時間攪拌の後、コーティング溶液を0.6Mのゾル濃度に調製し、1Mの硝酸溶液を使用してpH値を3.2〜3.8の範囲に調整した。同一の技術を用いて、0.2Mのコーティング溶液を調製した。
【0085】
本実施例に用いた支持体は、中間層として100〜200nmの孔隙径を有する多層のα−アルミナ膜ですでに改質した内部チャネルを有する19チャネルのα−アルミナ管であった。フロー・コーターを用いて、モノリス型の支持体の内部チャネル表面にベーマイト・ゾル層を堆積した。約100nmの孔隙径を有する6インチ長のモノリス基材をフロー・コーターに取り付け、その後、異なる圧力で、0.6Mのコーティング溶液を基材のチャネル内に吸引した。浸漬時間は20秒であった。コーティングした支持体を725rpmの速度で60秒間スパンして、チャネル内の余剰のコーティング溶液を除去し、120℃で2時間乾燥し、650℃で2時間、1℃/分の加熱速度で焼成した。0.2Mのコーティング溶液を用いて同一の手順を繰り返し、同一のコーティング溶液を用いて第3のコーティングを施してもよい。
【0086】
図7Aはγ−アルミナコーティングしたチャネル表面702の走査型電子顕微鏡画像を示している。図7Bは、γ−アルミナ中間層704の断面の走査型電子顕微鏡画像を示し、100nmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナ中間層706、および400nmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナ中間層708の基礎を形成している。γ−アルミナ中間層の表面は滑らかであり、亀裂は認められなかった。γ−アルミナ層の厚さは約2μmであった。
【0087】
実施例3:改質したモノリス型の支持体における非晶質のシリカ膜の調製
本実施例は、非加圧型のCVD工程によって、実施例2で作製された5nmの孔隙径を有する中間層を備えた6インチ長の改質したモノリス型の支持体上に、軸方向に沿った均一のシリカ膜の堆積を例証する。この実施例では、搬送ガスArの直線の8cm/秒の速い流速、および0.05mol%の低いTEOS濃度を用いた。
【0088】
図4に例証するCVD装置を使用し、不活性環境下、高温におけるテトラエトキシシラン(TEOS)の熱分解を通じて、5nmの孔隙の基材の内部チャネル表面にシリカ層を堆積させた。最初に、基材をCVD反応装置組立体(図5)に入れ、管側面およびシェル側面の両方を貫流するArを用いて、1℃/分の速度で600℃まで加熱した。第2に、12sccmの流速の搬送ガスArがTEOSで満たしたバブラーを通じて流れ、TEOSの蒸気(22℃)が基材のチャネル内に運ばれて、34sccmの希釈Ar流れと混合した後、シリカの堆積を開始した。一方、平衡Arガスを46sccmの流速で組立体のシェル側面に導入した。搬送ガスの直線の流速は8.0cm/秒であり、TEOS濃度は0.05mol%であった。7.5時間の堆積の後、搬送ガス流れを停止し、他の2つのAr流れ(希釈および平衡)は、パージの目的で流れを維持した。約20分後、これら2つの流れを閉じた。次に、堆積したままの状態のシリカ層を通じたガスを個別のガス(H2、He、CO2、N2など)をチャネルに導入し、膜を透過するガスの流速を測定することにより、評価した。測定後、CVD工程をさらに12時間再開し、堆積したままの状態のシリカ膜を再度評価した。CVD工程は、例えば選択性に満足な時点など、任意の時点で停止することができる。
【0089】
表1は、堆積時間の関数としての、モノリス型のシリカ膜の600℃における単一のガスの透過および理想選択性の変化を記載している。
【表1】
【0090】
CVDの前は、600℃におけるモノリス型のγ−アルミナ支持体の透過率は非常に高く、分子量の順番、すなわちH2>He>N2>CO2に従った。分子が軽いほど、透過率は高かった。これは、5nmの孔隙のγ−アルミナ膜を通るガス輸送のメカニズムがクヌーセン拡散に支配されていることによる。H2/CO2およびHe/CO2の選択性は、それぞれ4.0および2.9であり、これはクヌーセン拡散で予想される数値(4.7および3.3)に近かった。シリカ堆積処理に伴い、すべてのガスの透過率が低下したが、N2およびCO2では速く低下し、H2またはHe選択性は、N2またはCO2を上回る増大を生じた。29.5時間の堆積後、H2/CO2およびHe/CO2の選択性は5.6および6.1であり、これはクヌーセンの値よりも高い。Heの透過率はH2の透過率よりも高かった。He分子がH2分子よりも小さいことから、これは、分子を篩にかけるシリカ膜が形成されたことを示唆している。
【0091】
図8Aは、100nmのメジアン孔隙径を有するα−アルミナ808の中間層の基礎を形成する、シリカ膜804の断面(断面を特定する2つの矢印に関する)、ならびにγ−アルミナ中間層806の断面の走査型電子顕微鏡画像を示している。図8Bは、シリカ膜802の上面の走査型電子顕微鏡画像を示す。100nmの厚さを有する連続したシリカ層がγ−アルミナ層に堆積したことは明白である。シリカ層とγ−アルミナ層の間の異なるコントラストは、シリカ構造がより高密であることを示唆している。
【0092】
図9A〜9Cは、始まりから終わりまで(図9Dに示す流れ方向に基づいて)、軸方向に沿って、γ−アルミナ中間層904上のモノリスの異なる位置に堆積させたシリカ膜902の断面図の比較である(図9Aは終端;図9Bは中央;図9Cは開始位置)それは、シリカ層が軸方向に沿って非常に均一であったことをはっきりと実証している。有利には、本発明の幾つかの実施の形態では、シリカ膜は、支持体または改質された支持体の断面のチャネルに実質的に均一の厚さを提供することができる。例えば図9Dを参照すると、本発明の実施の形態は、支持体の最も内側のチャネルにおける厚さが支持体の最も外側のチャネルにおける厚さと実質的に同一の厚さである、シリカ膜を堆積させることを含む。これは、本明細書に記載される非晶質のシリカ膜の施用にCVD法を使用することによって、達成することができる。
【0093】
実施例4:改質したモノリス型の支持体上における非晶質のシリカ膜の調製
本実施例では、実施例2で製造した5nmの孔隙径を有する3インチ長のγ−アルミナモノリス基材における、さらに良好な選択性を備えた、別のモノリス型のシリカ膜を作製するための加圧型のCVD工程について記載する。この比較試験では、実施例3に記載する非加圧型の方法を使用することにより、同一バッチのγ−アルミナモノリス基材をシリカ膜の堆積に使用した。
【0094】
実施例3と同一のCVD装置を使用した。また、ガス出口ライン(図4参照)における逆圧調整器を調節することによって(例えば流出量を制限)管の側面に高圧(周囲圧力よりも高い)を維持すること以外は、同一の堆積方法を適用した。結果として、CVDの堆積方法を通じて、特定の圧力差が膜基材に適用された。圧力差は0.1〜15psiの範囲でありうる。この実施例では、0.6psiの圧力差を使用した。CVDの堆積を、搬送ガスArの8.0cm/秒の直線流速および0.05mol%のTEOS濃度を用いて、600℃で行った。堆積工程の間に単一ガスの透過データを回収した。67.5時間の堆積の後、He/CO2およびH2/CO2の選択性は、それぞれ最大8.5および6.2に達した。
【0095】
図10は、加圧型のCVD工程1002および非加圧型のCVD工程1004によって調製されたシリカ膜のH2/CO2の理想選択性を比較している。非加圧型のCVD工程では、同一の堆積温度、搬送ガスArの直線の流速およびTEOS濃度を使用した。加圧と共に約50時間堆積した後、H2/CO2選択性は4から6に増大したが、加圧なしでは選択性は依然として未変化のままであった。加圧を用いて、同様の長時間(67.5時間対70.3時間)の堆積後、H2/CO2およびHe/CO2の選択性は、それぞれ、4.1から6.2、および4.0から8.5へと改善した。改善は、特に、基材の加圧による基材上の幾つかの欠陥の周囲における、シリカの急速な成長に起因する可能性が高い。走査型電子顕微鏡分析は、非加圧型の堆積方法の0.9nm/時間と比較して、シリカの堆積速度が2.2nm/時間であったことを示唆した。
【0096】
好ましい実施の形態について、本明細書で描写および説明をしてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神から逸脱することなく、さまざまな変更、追加、置換などを行うことが可能であり、したがって、これらは本発明の範囲内にあるとみなされることは、関連分野における技術者にとって明白であろう。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体と、
随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする、1つ以上の多孔質の無機中間層と、
非晶質のシリカ膜と、
を備えたハイブリッド膜構造であって、
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングし、
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする、
ハイブリッド膜構造。
【請求項2】
前記無機多孔質の支持体がハニカムモノリスであることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項3】
前記無機多孔質の支持体がセラミックモノリスであることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項4】
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まず、
前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面が、1μm以下のメジアン孔隙径を有し、
前記非晶質のシリカ膜が、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする、
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項5】
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含み、
前記非晶質のシリカ膜が、前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項6】
前記非晶質のシリカ膜が、20nm〜2μmの厚さを有することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項7】
ガス流れにおけるH2を精製する方法であって、
H2を含む供給ガス流れを、請求項1記載のハイブリッド膜構造の第1の末端に導入し、
前記供給ガスよりもH2含量が高い、前記ハイブリッド膜構造からの透過ガス流れを回収する、
各工程を有してなる方法。
【請求項8】
ハイブリッド膜構造の製造方法であって、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記支持体を通じて前記第1の末端から前記第2の末端まで延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体を提供し、
随意的に、1つ以上の多孔質の無機中間層を、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用し、
非晶質のシリカ膜を施用する、
各工程を有してなり、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用され、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される、
ハイブリッド膜構造の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1つ多孔質の無機中間層を、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程を有してなり、
前記少なくとも1つの多孔質の無機中間層がα−アルミナを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの多孔質の無機中間層を、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程を有してなり、
前記無機多孔質の支持体に近い第1の無機中間層がα−アルミナを含み、
前記非晶質のシリカ膜に近い第2の無機中間層がγ−アルミナを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項1】
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記第1の末端から前記第2の末端まで前記支持体を通じて延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体と、
随意的に、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする、1つ以上の多孔質の無機中間層と、
非晶質のシリカ膜と、
を備えたハイブリッド膜構造であって、
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングし、
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含む場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする、
ハイブリッド膜構造。
【請求項2】
前記無機多孔質の支持体がハニカムモノリスであることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項3】
前記無機多孔質の支持体がセラミックモノリスであることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項4】
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含まず、
前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面が、1μm以下のメジアン孔隙径を有し、
前記非晶質のシリカ膜が、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面をコーティングする、
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項5】
前記ハイブリッド膜構造が、前記1つ以上の多孔質の無機中間層を含み、
前記非晶質のシリカ膜が、前記1つ以上の多孔質の中間層の表面をコーティングする
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項6】
前記非晶質のシリカ膜が、20nm〜2μmの厚さを有することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド膜構造。
【請求項7】
ガス流れにおけるH2を精製する方法であって、
H2を含む供給ガス流れを、請求項1記載のハイブリッド膜構造の第1の末端に導入し、
前記供給ガスよりもH2含量が高い、前記ハイブリッド膜構造からの透過ガス流れを回収する、
各工程を有してなる方法。
【請求項8】
ハイブリッド膜構造の製造方法であって、
第1の末端と、第2の末端と、多孔質壁によって画成された表面を有し、前記支持体を通じて前記第1の末端から前記第2の末端まで延在する複数の内部チャネルとを備えた、モノリス型の無機多孔質の支持体を提供し、
随意的に、1つ以上の多孔質の無機中間層を、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用し、
非晶質のシリカ膜を施用する、
各工程を有してなり、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されていない場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用され、
前記1つ以上の多孔質の無機中間層が前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用されている場合には、前記非晶質のシリカ膜が前記1つ以上の多孔質の中間層の表面に施用される、
ハイブリッド膜構造の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1つ多孔質の無機中間層を、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程を有してなり、
前記少なくとも1つの多孔質の無機中間層がα−アルミナを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの多孔質の無機中間層を、前記無機多孔質の支持体の内部チャネル表面に施用する工程を有してなり、
前記無機多孔質の支持体に近い第1の無機中間層がα−アルミナを含み、
前記非晶質のシリカ膜に近い第2の無機中間層がγ−アルミナを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【公表番号】特表2011−502042(P2011−502042A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532017(P2010−532017)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/012007
【国際公開番号】WO2009/058209
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/012007
【国際公開番号】WO2009/058209
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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