説明

非水系インクの印刷方法および非水系インク用被印刷体

【課題】高い画像濃度を確保しつつ、ローラ転写汚れを抑制することが可能な、非水系インクの印刷方法および被印刷体を提供する。
【解決手段】色材および非水系溶剤を含む非水系インクを用いて、被印刷体に印刷する印刷方法であって、非水系インクは、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが25〜30mN/m、かつ、分散成分比率が0.55〜0.75でり、被印刷体は、無機粒子を含む塗工層を有し、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、無機粒子の吸液性が0.30以上である、非水系インクの印刷方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い画像濃度を確保しつつ、ローラ転写汚れを抑制することが可能な非水系インクの印刷方法および非水系インク用被印刷体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なヘッドノズルからインク粒子として噴射し、上記ノズルに対向して置かれた被印刷体に画像を印刷するものであり、とりわけ、多数のインクヘッドを備えるラインヘッド方式のインクジェット印刷装置を用いると高速印刷が可能であることから、近年急速に普及している。
【0003】
インクジェットインクは水系インクと非水系インクに大別されるが、非水系インクは被印刷体がカールやコックリングを起こしにくく、搬送しやすいことから、高速印刷に適したインクである。
【0004】
このようなインクジェット印刷方式に用いられるインクとして、溶剤に顔料を微分散させたいわゆる非水系インクが種々提案されている。
【0005】
例えば、出願人は特許文献1において、エステル溶剤、高級アルコール溶剤、炭化水素溶剤等の溶剤に顔料を分散させた非水系インクを提案している。このインクは機上安定性に優れるとともに、このインクの印刷物は、PPC複写機やレーザープリンターで印刷された印刷物と、印刷面同士を重ね合わせた場合でも貼り付かないという利点を有する。
【0006】
一方、非水系インクは、被印刷体上での色材と溶媒の離脱性が悪く、特に被印刷体として普通紙を用いた場合、色材と溶媒が一緒に被印刷体の繊維間隙に浸透しやすく、画像濃度が低くなる傾向がある。ここで、普通紙は塗工層を設けていない用紙である。
【0007】
画像濃度が低くなる問題に対し、ロゼッタ型軽質炭酸カルシウムを主に含む填料とパルプとを主成分とし、サイズ剤として高分子化合物を含有し、ステキヒトサイズ度が5〜80秒であり、かつJIS−P8251に規定された灰分が20〜40%である普通紙に、非水系インクを用いて印刷物を得ることで、画像濃度の高い印刷物が得られる方法が開示されている(特許文献2)。
【0008】
しかし、この方法では画像濃度は高くなるものの、被印刷体の灰分が多いことが影響し、色材が被印刷体表面に残りやすくなる。このため、印刷物がローラに押圧された際、色材がローラに転写し、転写された色材が次に搬送されてきた印刷物へ再転写して印刷物を汚す、いわゆるローラ転写汚れという問題が起こることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−126564号公報
【特許文献2】特開2005−193660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高い画像濃度を確保しつつ、ローラ転写汚れを抑制することが可能な、非水系インクの印刷方法および非水系インク用被印刷体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定の性状の非水系インクと、所定の性状の被印刷体を用いて印刷を行うことにより、高い画像濃度を確保しつつ、ローラ転写汚れを抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の一局面によれば、色材および非水系溶剤を含む非水系インクを用いて、被印刷体に印刷する印刷方法であって、前記非水系インクは、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが25〜30mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.55〜0.75であり、前記被印刷体は、無機粒子を含む塗工層を有し、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上である、非水系インクの印刷方法が提供される。
式(1)・・・分散成分比率γdr=γd/γ
γdr:分散成分比率
γd:分散成分の表面自由エネルギー
γ:トータル表面自由エネルギー
式(2)・・・無機粒子の吸液性A=B/C
A:無機粒子の吸液性
B:無機粒子の吸油量(ml/100g)
C:無機粒子の比表面積(m/g)
ただし、式(2)において、Bで示す吸油量はJISK5101−21による亜麻仁油吸油量測定方法の値であり、Cで示す比表面積は、BET法による比表面積測定方法の値である。
【0013】
ここで、Kaelble−Uyの理論式は、トータル表面自由エネルギーが分散成分γd、極性成分γpからなると仮定し、トータル表面自由エネルギーγをγ=γd+γp(式3)と表す。
また、液体の表面の表面エネルギーをγl、固体の表面エネルギーをγs、接触角をθで表すと、γl(1+cosθ)=2√γsdγld+2√γspγlp(式4)が成り立つ。
【0014】
従って、γlの成分が既知の液体を2種類用いて、それぞれの接触角θを測定し、γsd、γspに関する連立方程式を解くことによりγsが求められる。
【0015】
同様に、Kaelble−Uyの理論式を用いて、非水系インクのトータル表面自由エネルギーγxd、γxpを算出することができる。
非水系インクのトータル表面自由エネルギーの算出は、非水系インクの表面張力の測定、及び既知溶剤である水との界面張力の測定結果から連立方程式を解くことにより求められる。
水のトータル表面自由エネルギー成分γwをγw=γwd+γwp(式5)と表す。
また、非水系インクXと水との界面張力をγwxとすると、γwx=γw+γx−2√γwdγxd−2√γwpγxp(式6)が成り立つ。
界面張力γwxを測定し、γxd≧0、γxp≧0の条件下で2元2次方程式を解くことにより非水系インクXの2成分を求めることができる。
【0016】
また、本発明の他の局面によれば、色材および非水系溶剤を含み、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが25〜30mN/m、かつ、上記式(1)で示される分散成分比率が0.55〜0.75である非水系インク用の被印刷体であって、前記被印刷体は、無機粒子を含む塗工層を有し、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、上記式(1)で示される分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、上記式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上であることを特徴とする非水系インク用被印刷体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、色材および溶剤を含む非水系インクを被印刷体へ吐出させる印刷方法において、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーγが25〜30mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.55〜0.75の非水系インクを用いて、無機粒子を含む塗工層を有する被印刷体であって、トータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上である被印刷体に印刷を行うので、高い画像濃度を確保しつつ、ローラ転写汚れを抑制することが可能となる。
式(1)・・・γdr=γd/γ
γdr:分散成分比率
γd:分散成分の表面自由エネルギー
γ:トータル表面自由エネルギー
式(2)・・・無機粒子の吸液性A=B/C
A:無機粒子の吸液性
B:無機粒子の吸油量(ml/100g)
C:無機粒子の比表面積(m/g)
ただし、式(2)において、Bで示す吸油量は、JISK5101−21による亜麻仁油吸油量測定方法の値であり、Cで示す比表面積は、BET法による比表面積測定方法の値である。
【0018】
すなわち、非水系インクと被印刷体との親和性およびインクの吸収性を上記範囲にすることで、非水系インクは被印刷体にすばやく浸透しつつ十分な定着をすることが可能となり、画像濃度が高くローラ転写汚れが抑制された印刷物を得ることができる。
【0019】
非水系インクのトータル表面自由エネルギーが25〜30mN/m、かつ、分散成分比率が0.55〜0.75である場合でも、被印刷体のトータル表面自由エネルギーが30mN/m未満または50mN/mより大きい場合、あるいは分散成分比率が0.80未満場合、被印刷体は非水系インクを十分に吸収できず、ローラ転写汚れが十分に抑制できない。
【0020】
被印刷体のトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、分散成分比率が0.80〜1.0の範囲内である場合でも、インクのトータル表面自由エネルギーが、25mN/m未満または30mN/mより大きい場合、分散成分比率が0.55未満または0.75より大きい場合、被印刷体は非水系インクを十分に吸収できず、高い画像濃度が確保できず、ローラ転写汚れが十分に抑制できない。また、無機粒子の吸液性が0.30未満である場合、十分な画像濃度が確保できない。
【0021】
また、非水系インクとしては、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーγが25〜30mN/m、かつ式(1)で示される分散成分比率が0.60〜0.70の非水系インクがより好ましい。
【0022】
また、被印刷体としては、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが35〜50mN/m、かつ、分散成分比率が0.90〜1.0、かつ式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上の被印刷体がより好ましい。
【0023】
上記塗工層の無機粒子の量は2.0〜6.0g/mであることが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0g/mである。
【0024】
塗工層の無機粒子が2.0g/mより少ない場合には、インクジェット印刷においては、インク吸収容量の不足によりインクの溢れ、滲み、発色ムラ等を生じることがある。塗工層の無機粒子が6.0g/mより多い場合には、塗工層強度が低下し、塗工層が脱落することによりローラに付着して汚れの原因となることがあり、プリンタ内部を汚すことがあり、二次的な被害を発生させることがある。また、インクジェット印刷時にはドット径が小さすぎるために発色濃度の低下を招くことがある。
塗工層の無機粒子の量は、塗工液の無機粒子含有量で調整したり、塗工液の塗工量で調整したり、塗工液の塗工回数で調整することができる。
【0025】
Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、分散成分比率が0.80〜1.0、かつ式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上の被印刷体としては、支持体に無機粒子を含む塗工液を塗布したものであってよい。
【0026】
上記塗工液は無機粒子の量にして2.0〜6.0g/mとなる量で支持体に塗工することが好ましい。より好ましくは2.0〜4.0g/mである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0028】
「1.非水系インク」
本発明で使用する非水系インクは、非水系溶剤及び色材から主として構成されるが、非水系インクのトータル表面自由エネルギーが、25〜30mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.55〜0.75であれば、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
式(1)・・・分散成分比率γdr=γd/γ
γdr:分散成分比率
γd:分散成分の表面自由エネルギー
γ:トータル表面自由エネルギー
【0029】
より好ましくは、非水系インクの分散成分比率は0.60〜0.70である。
【0030】
「1−1.非水系溶剤」
非水系溶剤は、インクの溶媒すなわちビヒクルとして機能するものであれば特に限定されず、揮発性溶剤及び難揮発性溶剤の何れであってもよい。しかしながら、本発明では環境上の観点から、非水系溶剤は、難揮発性溶剤を主体として含有することが好ましい。難揮発性溶剤の沸点は、200℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上である。溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、6.5(cal/cm1/2以上、10.0(cal/cm1/2以下のものを使用することが好ましく、7.0(cal/cm1/2以上、9.0(cal/cm1/2以下のものを使用することがより好ましい。
【0031】
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れの有機溶剤も使用できる。これらは、単独で使用してもよく、または、単一の相を形成する限り、2種以上組み合わせて使用できる。本発明では、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤を組み合わせて使用することが好ましく、20〜80質量%の非極性溶剤と80〜20質量%の極性溶剤とから溶剤を構成することが好ましく、30〜70質量%の非極性溶剤と30〜70質量%の極性溶剤とから溶剤を構成することがより好ましい。
【0032】
「1−1−1.非極性溶剤」
非極性有機溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の石油系炭化水素溶剤を使用でき、具体的には、ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素類、エクソンモービル社製「アイソパー、エクソール」(いずれも商品名)、JX日鉱日石エネルギー製「AFソルベント、ノルマルパラフィンH」(いずれも商品名)、サン石油社製「サンセン、サンパー」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
「1−1−2.極性溶剤」
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
エステル系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が5以上、好ましくは9以上、より好ましくは12乃至32の高級脂肪酸エステル類が挙げられ、例えば、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルドデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0035】
アルコール系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が12以上の脂肪族高級アルコール類が挙げられ、具体的には、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。
【0036】
脂肪酸系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が4以上、好ましくは9乃至22の脂肪酸類が挙げられ、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる、
【0037】
エーテル系溶剤としては、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類の他、グリコールエーテル類のアセタートなどが挙げられる。
【0038】
「1−2.色材」
色材は、インクの溶媒に溶解または分散するものであれば特に限定されず、染料、顔料の何れであってもよい。しかしながら、本発明ではより優れた画質を形成する観点から、顔料を主体として含有することが好ましい。
【0039】
「1−2−1.顔料」
顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、カーボンブラック、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、ピリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが好適に使用できる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
顔料は、非水系インキ全量に対して0.01〜20質量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0041】
「1−2−2.染料」
本発明のインクに用いられる染料としては従来公知の染料を用いることができ、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料などの染料が使用される。これらの染料は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて使用することも可能であるが、インク全量に対して0.1〜20質量%の範囲で、より好ましくは1〜10質量%の範囲で含有することが望ましい。0.1質量%未満では印刷濃度が著しく低下し、20質量%よりも多くしても、コストUPに見合う画像濃度向上は見込めない。
【0042】
「1−3.顔料分散剤」
色材として顔料を使用する場合、非水系インク中における顔料の分散を良好にするために、非水系インクに顔料分散剤を添加することが好ましい。本発明で使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤を使用するのが好ましい。
【0043】
顔料分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、Efka CHEMICALS社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46,47,48,49,4010,4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、花王株式会社製「デモールP、EP、ポイズ520、521、530、ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名)、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0044】
上記顔料分散剤のうち、ポリエステル鎖からなる側鎖を複数備える櫛形構造のポリアミド系分散剤が好ましく使用される。ポリエステル鎖からなる側鎖を複数備える櫛形構造のポリアミド系分散剤とは、ポリエチレンイミンのような主鎖に多数の窒素原子を備え、該窒素原子を介してアミド結合した側鎖を複数備える化合物であって、該側鎖がポリエステル鎖であるものをいい、例えば、特開平5−177123号公報に開示されているような、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンからなる主鎖一分子当り3〜80個のポリ(カルボニル―C3〜C6―アルキレンオキシ)鎖がアミド架橋によって側鎖として結合している構造の分散剤が挙げられる。なお、かかる櫛形構造のポリアミド系分散剤としては、上記日本ルーブリゾール社製ソルスパース11200、ソルスパース28000(何れも商品名)が該当する。
【0045】
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記非水系溶剤中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。
【0046】
「1−4.その他の成分」
本発明の非水系インクには、インクの性状に悪影響を与えない限り、上記非水系溶剤、顔料、染料、顔料分散剤以外に、例えば、界面活性剤、定着剤、防腐剤等の他の成分を添加できる。
【0047】
「1−5.非水系インクの製造方法」
本発明の非水系インクは、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め非水系溶剤の一部と顔料の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
【0048】
「2.被印刷体」
本発明で使用する被印刷体は、無機粒子を含む塗工層を有し、被印刷体のトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上である。
式(1)・・・分散成分比率γdr=γd/γ
γdr:分散成分比率
γd:分散成分の表面自由エネルギー
γ:トータル表面自由エネルギー
式(2)・・・無機粒子の吸液性A=B/C
A:無機粒子の吸液性
B:無機粒子の吸油量(ml/100g)
C:無機粒子の比表面積(m/g)
【0049】
ここで、無機粒子の吸油量Bは、はJISK5101−21による亜麻仁油吸油量測定方法の値であり、無機粒子の比表面積Cは、BET法による比表面積測定方法の値である。
【0050】
より好ましくは、被印刷体の分散成分比率は0.90〜1.0である。
【0051】
本発明において、被印刷体は、支持体に無機粒子を含む塗工層を形成したものであり、被印刷体の支持体は普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシートなどが使用できるが、これに限定されるものではない。本発明によれば、普通紙に印刷する場合でも、顔料が印刷被印刷体に浸透することを防止して印刷被印刷体の表面に留まるので、印字濃度が向上し、裏抜けが低減するという大きなメリットが得られる。
【0052】
「2−1.無機粒子」
無機粒子としては、体質顔料として使用されている無機粒子が使用でき、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、白土、タルク、クレー、ケイソウ土、カオリン、マイカなどの無機粒子が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、1μm以上13μm以下であることが更に一層好ましい。平均粒子径が1μmより小さい場合及び平均粒子径が20μmより大きい場合の何れでも、画像濃度の向上効果が十分に得られないことがある。
【0053】
本発明の被印刷体は、印刷機とオンラインで支持体に上記した無機粒子を含む塗工液を塗布することで、無機粒子を含む塗工層を形成することもできる。
【0054】
上記無機粒子は、塗工液全量に対して0.01〜40質量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは、5〜30質量%の範囲である。この無機粒子の含有量が0.01質量%未満の場合、所定の被印刷体を得るためには塗布を繰り返す必要が生じ、作業効率が低下することがある。この無機粒子の含有量が塗工液全量に対して40質量%より多い場合、塗工液の流動性が悪くなり、均一な塗布が困難になり、作業効率が低下することがある。
【0055】
上記塗工液は無機粒子のほかに、溶剤および高分子化合物を含むことが好ましい。
【0056】
「2−2.溶剤」
塗工液に使用可能な溶剤は、水および有機溶剤からなる群より選択して使用できる。有機溶剤は、水溶性有機溶剤であっても非水溶性有機溶剤であってもよいが、次の溶解度パラメーターの範囲内であることが好ましい。
【0057】
有機溶剤は、溶解度パラメータ(SP値)が、7.5(cal/cm1/2以上、17.0(cal/cm1/2以下のものを使用することが好ましく、8.0(cal/cm1/2以上、17.0(cal/cm1/2以下のものを使用することがより好ましい。また、塗工液の溶剤のSP値とインクのSP値との差は1.0(cal/cm)1/2以上であることが好ましい。このSP値の差が小さすぎると、被印刷体中の残溶剤および無機粒子の分散に用いた分散剤の影響によりインクが浸透しやすくなり、隠蔽性が低下し、印刷濃度が十分に向上せず、裏抜けや滲みが発生することがある。
【0058】
水溶性有機溶剤としては、グリコール系溶剤、グリコールエーテル類、グリコールエーテル類のアセタート、低級アルコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、イミダゾリジノン系溶剤、3−メチル−2,4−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、また、単一の相を形成する限り、2種以上混合して使用してもよい。
【0059】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール類が挙げられる。
【0060】
グリコールエーテル類としては、アルキレングリコールアルキルエーテル及びポリアルキレングリコールアルキルエーテル(本明細書では、両者を(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテルと総称する)が挙げられ、例えば、下記化学式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0061】
【化1】

【0062】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6好ましくは4〜6のアルキル基であり、nは1乃至4の整数である。)
【0063】
上記化学式(1)で示される(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
他の(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテルの具体例としては、下記化学式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0065】
【化2】

【0066】
(式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6好ましくは4〜6のアルキル基であり、nは1乃至4の整数である。)
【0067】
上記化学式(2)で示される(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテルの具体例としては、例えば、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。
【0068】
低級アルコールとしては、例えば一分子中の炭素数が1〜6の脂肪族アルコール類が挙げられ、具体的には、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
【0069】
これらの水溶性有機溶剤のうち、グリコール系溶剤、グリコールエーテル類、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン及びポリグリセリンが好ましく使用される。
【0070】
非水溶性有機溶剤の具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等が挙げられる。
【0071】
「2−3.高分子化合物」
高分子化合物としては、各種の水溶性高分子または水分散性の高分子粒子などが挙げられる。ここで、高分子化合物とは分子量500以上の化合物をいう。具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸等のアクリル酸系共重合体、アクリル/マレイン酸共重合体、アクリル/スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、デンプン、アルキド樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール等が挙げられる。
【0072】
上記塗工液の溶剤として水を使用した場合は、高分子化合物としてポリビニルアルコールが好ましく使用される。重合度が500以下でけん化度が60mol%以上であるポリビニルアルコールを使用することが特に好ましい。このようなポリビニルアルコールを使用すると、300×300dpi以下の比較的低解像度で印刷した場合に、高い印刷濃度が得られる。ポリビニルアルコールは、塗工液全量に対して0.3〜6.0質量%の範囲で含有されることが好ましく、1.0〜6.0質量%の範囲で含有されることがより好ましい。ポリビニルアルコールの添加量が多すぎると、ドットサイズが大きくなり、輝度が高くなるため、画像性が低下する。また、ポリビニルアルコールの添加量が少なすぎると、塗工層自体の強度が低下し、印刷媒体表面から剥がれやすくなる。
【0073】
「2−4.その他の成分」
本発明で使用する塗工液には、その性状に悪影響を与えない限り、上記溶剤、無機粒子、高分子化合物以外に、例えば、分散剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤等の他の成分を添加できる。
【0074】
「2−5.被印刷体の製造方法」
本発明の被印刷体は、支持体に無機粒子を含む塗工層を形成することで得られる。支持体としては、一般の普通紙、板紙、及びフィルム等が用いられる。支持体上の少なくとも片面に単層あるいは多層に塗工液を塗工する。塗工後の乾燥方式としては熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥等が挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。塗工層の乾燥後に、必要に応じてマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等の処理を行っても良い。本発明においては、方式は特に限定されるものではない。印刷装置と塗布装置をオンラインにすることができると、多様な支持体に対し、短時間で本発明の効果を得ることができ、好ましい。
【0075】
「2−5−1.塗工液の製造方法」
本発明で使用する塗工液は、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め溶剤の一部と無機粒子の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
【0076】
「2−5−2.塗工液の塗布方法」
支持体に塗工液を塗工する方法としては、一般の塗工機、具体的にはブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーター、刷毛、ローラ、バーコーター等を使用して印刷媒体の表面を均一にコーティングすることによって行ってもよく、または、インクジェット印刷及びグラビア印刷などの印刷手段によって画像を印刷することで行ってもよい。例えば、インクジェットプリンタを使用し、印刷媒体上へ塗工液を吐出した後これに重ねて非水系インクを連続的に吐出させることにより印刷を行ってもよい。なお、本発明では、塗工液を印刷媒体に塗布した後、塗布された処理液が浸透および蒸発乾燥した後に非水系インクを吐出させることが好ましい。そのため、塗工液中の水分量が多い場合には、非水系インク印刷前に乾燥工程を付与してもよい。乾燥工程は、塗工液の塗布後に印刷媒体に熱風を当てる、熱したロールの下に印刷媒体を搬送させるなど、既存の方法を用いることができる。
【0077】
「3.印刷方法」
本発明の印刷方法は、非水系インクを被印刷体に印刷する方法であれば、特に限定されないが、インクジェットプリンタを用いて、非水系インクを被印刷体上へ吐出させる方法により行われることが好ましい。
【0078】
本発明の印刷方法を容易に実施できるように、上記被印刷体を上記非水系インク用の被印刷体として提供することができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0080】
「実施例1〜6、比較例1〜4」
(1)非水系インクの作製
表1に非水系黒インクの処方を示す。表1に示す各成分を表1に示す割合でプレミックスし、その後、直径(φ)0.5mmのジルコニアビーズを入れ、ロッキングミル((株)セイワ技研製)にて60分間分散し、得られた分散液をメンブレンフィルター(開口径3μm)でろ過し、黒インクを調製した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示す材料の詳細は下記のとおりである。
カーボンブラックMA−11:三菱化学株式会社製「MA−11(商品名)」(カーボンブラック)。
ソルスパース−28000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース28000(商品名)」(顔料分散剤)。
ソルスパース−11200:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース11200(商品名)」(顔料分散剤)。
エキセパールM−OL:花王株式会社製「エキセパールM−OL(商品名)」(オレイン酸メチル)。
エキセパールIPM:花王株式会社製「エキセパールIPM(商品名)」(ミリスチン酸イソプロピル)。
ノルマルパラフィンH:JX日鉱日石エネルギー株式会社製「ノルマルパラフィンH(商品名)」(炭化水素溶剤)。
Neosolue−Aqulio:日本精化株式会社製「Neosolue−Aqulio(商品名)」(シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール)。
【0083】
(2)被印刷体の作製
表2に被印刷体の塗工液の処方を示す。表2に示す各成分を表2に示す割合でプレミックスし、その後、超音波分散機にて1分間分散し塗工液を得た。
理想科学工業株式会社製普通紙「理想用紙薄口(商品名)」の片面全面に塗工層中の無機粒子量が所定量(2.7g/m)になるように、塗工ローラで塗工液を塗布し、ヒートロールで溶剤を乾燥させ、被印刷体を得た。
なお、被印刷体5は、塗工液で処理しないで普通紙をそのまま用いた。
【0084】
【表2】

【0085】
表2に示す材料の詳細は下記のとおりである。
シリカ:P758C:水澤化学工業株式会社製「ミズカシルP−758C(商品名)」、平均粒子径13.0μmの粉体シリカ。
シリカ:P73:水澤化学工業株式会社製「ミズカシルP−73(商品名)」、平均粒子径4.0μmの粉体シリカ。
CaCO:白艶華PZ:白石工業株式会社製「白艶華PZ(商品名)」、平均粒子径3.5μmの炭酸カルシウム(CaCO)。
デモールEP:花王株式会社製「デモールEP(商品名)」(特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、固形分25%)。
ポリビニルアルコール:日本酢ビ・ポバール株式会社製「JMR−10M(商品名)」(けん化度65.0mol%、重合度250のポリビニルアルコール)。
ポリアクリル酸ナトリウム:重合度2700〜7500、和光純薬工業株式会社製
スチレン/アクリル系エマルション樹脂:日本合成化学工業株式会社製「モビニール966A(商品名)」(スチレン/アクリル系エマルション樹脂、固形分45%)。
スラウト33:日本エンバイロケミカル株式会社製「スラウト33(商品名)」(防腐剤)。
サーフィノールDF−58:エアプロダクツジャパン株式会社製「サーフィノールDF−58(商品名)」(消泡剤)
水:水のSP値は23.4(cal/cm1/2である。
【0086】
表2で使用した無機粒子の詳細を表3に示す。表3において、無機粒子の吸油量Bは、はJISK5101−21による亜麻仁油吸油量測定方法の値であり、無機粒子の比表面積Cは、BET法による比表面積測定方法の値である。これらの測定結果から、無機粒子の吸液性A=B/Cを求めた。
【0087】
【表3】

【0088】
(3)非水系インクの印刷
表4及び表5に示す組み合わせで、表1に示す非水系インクを、インクジェットプリンタ「ORPHIS−X9050」(商品名;理想科学工業株式会社製)の吐出経路に導入し、表2に示す被印刷体に、ベタ画像を印刷した。印刷は、解像度300×300dpiにて、36pl/dotのインク量の条件で行った。
【0089】
(4)評価
得られた印刷物の画像濃度およびローラ転写汚れを下記方法で測定し、評価した。結果を表4及び表5に併せて示す。
【0090】
(画像濃度)
ベタ画像を印刷した印刷物を一晩放置後、このベタ画像表面の印刷画像濃度(OD)を光学濃度計(RD920:マクベス社製)を用いて測定し、下記基準で評価した。
A:1.20<OD値
B:1.15<OD値≦1.20
C:OD値≦1.15
【0091】
(ローラ転写汚れ)
ベタ画像を印刷した直後に、印刷物に理想科学工業株式会社製両面マット紙「理想用紙マットIJ(W)(商品名)」を重ね、その上をプラスチックローラーで5往復し、両面マット紙に転写した汚れの度合いを下記基準に従い目視で評価した。
AA:汚れが確認されない。
A:汚れは極僅かで目立たない。
B:やや汚れが目立つ。
C:汚れがひどい。
【0092】
(5)非水系インク及び被印刷体の物性の測定
非水系インク及び被印刷体のトータル表面エネルギー及び分散成分比率を測定し、結果を表4及び表5に併せて示す。
【0093】
(5)−1非水系インクのトータル表面自由エネルギーγx及び分散成分比率γxdrの測定
協和界面科学株式会社製動的接触角計DM500を用いて、非水系インクの表面張力(トータル表面自由エネルギー)γx、及び非水系インク−水の界面張力γwxをペンダントドロップ法から測定した。測定した表面張力γx、及び界面張力γwxの結果から、インクのトータル表面自由エネルギーγx及び分散成分比率γxdrを算出した。すなわち、下記式a1に、界面張力γwx、水の表面張力γw(72.8)、インクの表面張力γx、水の分散成分γwd(21.8)、水の極性成分γwp(51.0)を代入し、下記式a2に、インクの表面張力γxを代入し、2式の連立方程式を解いて、インクの極性成分γspを求め、下記式a3からインクの分散成分比率γxdrを求めた。
γwx=γw+γx−2√γwdγxd−2√γwpγxp ・・・(a1)
γx=γxd+γxp ・・・(a2)
γxdr=γxd/γx ・・・(a3)
【0094】
(5)−2被印刷体のトータル表面自由エネルギーγs及び分散成分比率γsdrの測定
協和界面科学株式会社製動的接触角計DM500を用いて、被印刷体とジヨードメタンとの接触角θ1、及び被印刷体と水との接触角θ2を液滴法からそれぞれ測定し、測定した接触角θの結果から、被印刷体のトータル表面自由エネルギーγs及び分散成分比率γsdrを算出した。すなわち、下記式b1に接触角θ1、ジヨードメタンのトータル表面自由エネルギー(50.8)、分散成分(48.5)、極性成分(2.3)を代入し、また、下記式b1に接触角θ2、水のトータル表面自由エネルギー(72.8)、分散成分(21.8)、極性成分(51.0)を代入し、2式の連立方程式を解いて、被印刷体の分散成分γsd及び極性成分γspを求め、下記式b2から被印刷体のトータル表面自由エネルギーγsを求め、下記式b3から被印刷体の分散成分比率γsdrを求めた。
γl(1+cosθ)=2√γsdγld+2√γspγlp ・・・(b1)
γs=γsd+γsp ・・・(b2)
γsdr=γsd/γs ・・・(b3)
【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
本発明の印刷方法である実施例1〜実施例7では、画像濃度が高く、ローラ転写汚れが少なかった。このように、非水系インクと被印刷体との親和性、及び無機粒子の吸液性を制御することで、高い画像濃度が得られ、かつローラ転写汚れを抑制することが可能である。
【0098】
比較例1では、被印刷体のインクとの親和性は高いものの、吸液性が低いため、画像濃度が低く、ローラ転写汚れが低下した。
比較例2では、被印刷体の極性が適正な範囲に入っておらず、吸液性も低いため、画像濃度が低下した。
比較例3では、無機粒子の吸液性は高いが、極性が適正な範囲に入っていないため、画像濃度が低く、ローラ転写汚れが低下した。
比較例4では、インクの極性が高いため、被印刷体の極性が適正な範囲に入っていても親和性が悪く、ローラ転写汚れが低下した。
比較例5では、無機粒子の吸液性が高いものの、極性が適正な範囲に入っておらず、ローラ転写汚れが低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材および非水系溶剤を含む非水系インクを用いて、被印刷体に印刷する印刷方法であって、
前記非水系インクは、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが25〜30mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.55〜0.75でり、
前記被印刷体は、無機粒子を含む塗工層を有し、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上である、
非水系インクの印刷方法。
式(1)・・・分散成分比率γdr=γd/γ
γdr:分散成分比率
γd:分散成分の表面自由エネルギー
γ:トータル表面自由エネルギー
式(2)・・・無機粒子の吸液性A=B/C
A:無機粒子の吸液性
B:無機粒子の吸油量(ml/100g)
C:無機粒子の比表面積(m/g)
式(2)において、Bで示す吸油量はJISK5101−21による亜麻仁油吸油量測定方法の値であり、Cで示す比表面積は、BET法による比表面積測定方法の値である。
【請求項2】
前記塗工層の無機粒子の量は2.0〜6.0g/mである、請求項1に記載の非水系インクの印刷方法。
【請求項3】
前記非水系溶剤は、20〜80質量%の非極性溶剤と80〜20質量%の極性溶剤とを含む、請求項1または2に記載の非水系インクの印刷方法。
【請求項4】
色材および非水系溶剤を含み、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが25〜30mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.55〜0.75である非水系インク用の被印刷体であって、
前記被印刷体は、無機粒子を含む塗工層を有し、Kaelble−Uyの理論式から算出されるトータル表面自由エネルギーが30〜50mN/m、かつ、式(1)で示される分散成分比率が0.80〜1.0、かつ、式(2)で示される無機粒子の吸液性が0.30以上である、
非水系インク用被印刷体。
式(1)・・・分散成分比率γdr=γd/γ
γdr:分散成分比率
γd:分散成分の表面自由エネルギー
γ:トータル表面自由エネルギー
式(2)・・・無機粒子の吸液性A=B/C
A:無機粒子の吸液性
B:無機粒子の吸油量(ml/100g)
C:無機粒子の比表面積(m/g)
式(2)において、Bで示す吸油量はJISK5101−21による亜麻仁油吸油量測定方法の値であり、Cで示す比表面積は、BET法による比表面積測定方法の値である。
【請求項5】
前記塗工層の無機粒子の量は2.0〜6.0g/mである、請求項4に記載の非水系インク用被印刷体。
【請求項6】
前記非水系インクの非水系溶剤は、20〜80質量%の非極性溶剤と80〜20質量%の極性溶剤とを含む、請求項4または5に記載の非水系インク用被印刷体。

【公開番号】特開2012−254620(P2012−254620A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276755(P2011−276755)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】