説明

非水系電解液電池

【課題】初期の常温および−30℃出力が高く、ハイレート放電時にも高い放電容量を与え、加えて高温保存試験やサイクル試験といった耐久試験後の容量維持率が高く、かつ耐久試験後でも初期の出力性能やハイレート放電容量に優れた非水系電解液電池を提供する。
【解決手段】集電体と、LixMPO4 (M: 周期表2族〜12族の金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、xは0<x<=1.2)で表されるリチウム含有リン酸化合物を正極活物質として少なくとも一種含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、
(1)鎖状エーテル、および
(2)不飽和結合を有する環状カーボネート
を含有することを特徴とする非水系電解液電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液電池に関する。詳しくは、正極としてリン酸鉄リチウムを用いた際の、高出力特性と耐久性に優れた非水系電解液を用いた非水系電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池等の非水系電解液電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、電池特性、例えば高容量、高出力、高温保存特性、サイクル特性、高安全性等を高い水準で達成することが求められている。
【0003】
非水系電解液電池では一般に、正極にはLiCoO、負極にはリチウムを吸蔵・放出することが可能な炭素材料が用いられている。また、非水系電解液としては、エチレンカーボネートやエチルメチルカーボネートのような非水系有機溶媒中に、LiPFに代表される電解質塩を溶解させたものが使用されている。
上記の正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO)は、充電状態での熱安定性が低く、電池安全性が低下するといった不都合がある。このため、LiCoOに替わる正極活物質が広く探索されてきた。
【0004】
その中の一つとして、近年オリビン構造を有するリチウム含有金属酸化物が注目を集めてきた。例えば、LiFePOを正極活物質とする非水系電解液電池では、LiFePOの熱的および化学的安定性が高いことを活用して、サイクル特性や電池安全性を向上させることができる。このような性質は、例えばハイブリッド自動車等の用途を考えた場合、搭載する電池を大型化して重量エネルギー密度を向上させたり、あるいは出力エネルギー密度を向上させる観点や、電池の長寿命化に極めて有効である。
【0005】
しかしながら、LiFePOはLiCoOやLiNiO、LIMnO2、Li(
Ni1/3Mn1/3Co1/3)Oらと比較して正極活物質内部の電子伝導性が低く
、ハイレート放電特性が低いことが知られている。
また、LiFePOを正極活物質とする非水系電解液電池においては、例えば60℃程度の高温環境下で充放電を繰り返し行うと、充放電に伴って活物質中のFe等の元素が部分的に溶出し、溶出したFeが炭素材料等からなる負極活物質に悪影響を及ぼし、その結果として、負極自体の充放電の可逆性等が損なわれて反応性が低下し、非水系電解液電池の容量や出力が低下し易くなるという問題があった。
【0006】
特許文献1には、比較的大きな電流で放電を行うハイレート放電時にも放電容量を向上させることが可能な非水系電解液電池として、リン酸鉄リチウムを含む正極活物質と導電剤と結着剤とを含む正極合剤層の密度を1.7g/ccとし、かつエチレンカーボネートと鎖状エーテルとを含有する溶媒を含む非水系電解液とを備えた非水系電解液電池が開示されている。
【0007】
開示されている技術によれば、正極活物質と導電剤、導電剤と集電体、および、正極活物質と集電体との密着性を向上させることで、正極内の電子伝導性が向上する。また、誘電率が高いエチレンカーボネートに粘度が極めて低いジメトキシエタンを加えた溶媒を用いることにより、正極合剤層内に十分に含液させることができるとともに、リチウムイオンの移動速度が向上する。これにより、比較的大きな電流で放電を行うハイレート放電時
の放電容量が改善されると考えられている。
【0008】
しかしながら、現在最も汎用的である、炭素材料を負極に用いた場合には、負極被膜の安定性が低いため、高温保存特性やサイクル特性といった耐久性が未だ不十分であった。
特許文献2には、大容量かつ高出力で、例えば60℃程度の高温環境下で充放電を繰り返し行った後においても初期の大きな容量を維持できると共に、常温での出力及び例えば−30℃程度の低温での出力の低下を防止して初期の高い出力を示す非水系電解液電池として、正極活物質としてオリビン構造の鉄リン酸リチウムを主成分とし、電解質は、LiPFを主成分とし、非水溶媒がエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒またはエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を主成分とし、さらに少なくともビニレンカーボネート及び/又はビニルエチレンカーボネートを含有する非水系電解液電池が開示されている。
【0009】
開示されている技術によれば、ビニレンカーボネート及び/又はビニルエチレンカーボネートは、その少なくとも一部が電極上で分解し、正極及び/又は負極の活物質表面に安定な皮膜等の被覆物を形成する。その結果、上記正極活物質からのFe元素等の溶出を抑制すると共に、溶出元素が上記負極活物質に悪影響を及ぼすことを抑制し、充放電を繰り返し行ってもリチウムイオンの挿入及び脱離がスムーズに行われ、容量の劣化を抑制し、内部抵抗の上昇を抑制して出力の低下を抑制できると考えられている。
【0010】
しかしながら、当該非水系電解液は、鎖状エーテルを用いた非水系電解液電池に比べて粘度が高くイオン伝導度が低いため、初期の出力を比較した場合には、鎖状エーテルを用いた非水系電解液に比べて、室温や−30℃のような低温領域での出力が未だ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−236809号公報
【特許文献2】特開2009−4357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、初期の常温および−30℃出力が高く、ハイレート放電時にも高い放電容量を与え、加えて高温保存試験やサイクル試験といった耐久試験後の容量維持率が高く、かつ耐久試験後でも初期の出力性能やハイレート放電容量に優れた非水系電解液電池を実現することのできる非水系電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、正極活物質としてオリビン構造を有するリチウム含有金属酸化物を用いた場合に、電解液組成に対して、鎖状エーテルと、負極被膜形成機能を有する化合物或いは正極保護機能を有する化合物を特定組成とすることにより、初期の常温および−30℃出力が高く、ハイレート放電時にも高い放電容量を与え、加えて高温保存試験やサイクル試験といった耐久試験後の容量維持率が高く、かつ耐久試験後でも初期の出力性能やハイレート放電容量に優れた非水系電解液電池が実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.集電体と、LixMPO4(M: 周期表2族〜12族の金属からなる群より選ばれる少なく
とも一種の元素、xは0<x<=1.2)で表されるリチウム含有リン酸化合物を正極活物質として少なくとも一種含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有す
る負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、(1)鎖状エーテル、および
(2)不飽和結合を有する環状カーボネート
を含有することを特徴とする非水系電解液電池。
【0015】
2.集電体と、LixMPO4(M: 周期表2族〜12族の金属からなる群より選ばれる少なく
とも一種の元素、xは0<x<=1.2)で表されるリチウム含有リン酸化合物を正極活物質として少なくとも一種含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、(1)鎖状エーテル、および
(2)フルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類、スルホン酸エステル類、亜硫酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類
を含有することを特徴とする非水系電解液電池。
【0016】
3.前記正極活物質が、LixMPO4(M=周期表、第4周期の4族〜11族の遷移金属から
なる群より選ばれる少なくとも一種の元素、xは0<x<=1.2) であることを特徴とする1.
または2に記載の非水系電解液電池。
4.前記不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量が電解液全量に対して0.001〜5重量%であることを特徴とする1.に記載の非水系電解液電池。
【0017】
5.該非水系電解液がエチレンカーボネートを10体積%以上含有することを特徴とする
1.または2.に記載の非水系電解液電池。
6.前記鎖状エーテルが、R1OR2 (R1, R2 は 炭素数1〜8のフッ素原子を有していても
よい有機基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)であることを特徴とする1.
または2.に記載の非水系電解液電池。
【0018】
7.前記負極活物質が、炭素質材料であることを特徴とする1.または2.に記載の非水系電解液電池。
8.前記集電体表面に、集電体とは異なる化合物組成により導電層を有することを特徴とする1.または2.に記載の非水系電解液電池。
9.上記1.〜8.のいずれかに1つに記載の非水系電解液電池に用いる非水系電解液。
【発明の効果】
【0019】
本発明の非水系電解液電池によれば、オリビン構造を有するリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いる場合に、非水系電解液中に鎖状エーテルを含有することにより、非水系電解液の粘度が低下してイオン伝導度を向上させることにより、ハイレート放電容量の向上、および高出力化が達成される。また、負極被膜形成機能を有する化合物を特定組成とすることにより、熱的および化学的な耐久性を維持しながら、負極表面上の被膜の抵抗を極端に増加させることを防ぐことにより、高い高温保存特性やサイクル特性に加えて、耐久前後のハイレート特性の向上および高出力化を達成することができる。また、正極保護機能を有する化合物を特定組成とすることにより、正極活物質からの金属溶出を抑制すると共に、熱的および化学的な耐久性を維持しながら、正極表面上の被膜の抵抗を極端に増加させることを防ぐことにより、高い高温保存特性やサイクル特性に加えて、耐久前後のハイレート特性の向上および高出力化を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
[非水系電解液]
第一の発明に用いる非水系電解液は、
(1)鎖状エーテル、および
(2)不飽和結合を有する環状カーボネート
を含有するものである。
【0021】
また、第二の発明に用いる非水系電解液は、
(1)鎖状エーテル、および
(2)フルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類、スルホン酸エステル類、亜硫酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類
を含有するものである。
【0022】
<鎖状エーテル>
鎖状エーテルとしてはRORで表される化合物が好ましい。R、Rは炭素数1〜8のフッ素原子を有していてもよい有機基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。炭素数3〜10のものがさらに好ましく用いられる。
具体的には、炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)
(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。
また、これらの中でも、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテルが、耐酸化性が高く、高温保存試験やサイクル試験といった耐久試験後の容量維持率が高く、かつ耐久試験後でも初期の出力性能やハイレート放電容量に優れる点で好ましい。
【0024】
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテルが、粘性が低く高いイオン伝導度を与え、かつ電池耐久性に優れることから特に好ましい。
【0025】
本発明の非水系電解液全体に対するエーテル化合物の配合量は、非水溶媒に対して、通常5体積%以上、好ましくは8体積%以上、より好ましくは10体積%以上、また、通常70体積%以下、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下の濃度で含
有させることが望ましい。濃度が小さすぎると、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果が得られにくい傾向があり、また大きすぎると、炭素負極中に鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下することがある。
【0026】
<不飽和結合を有する環状カーボネート>
本発明の非水系電解液において、非水系電解液電池の負極表面に皮膜を形成し、電池の長寿命化を達成するために、不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある)を用いることができる。
前記不飽和環状カーボネートとしては、炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0027】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0028】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0029】
中でも、特に好ましい不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0030】
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは80以上であり、また、より好ましくは150以下である。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0031】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの配合量は、非
水系溶媒100質量%中、好ましくは、0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0032】
不飽和結合を有する環状カーボネートとしてはフッ素原子を有していてもよい。フッ素原子を有する不飽和環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある)が有するフッ素原子の数は1以上があれば、特に制限されない。中でもフッ素原子が通常6以下、好ましくは4以下であり、1個又は2個のものが最も好ましい。
【0033】
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0034】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0035】
中でも、特に好ましいフッ素化不飽和環状カーボネートとしては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0036】
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上であり、また、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を
確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは100以上であり、また、より好ましくは200以下である。
【0037】
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、通常、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0038】
<スルホン酸エステル類>
本発明で用いる非水系電解液において、電池の長寿命化を達成するために、スルホン酸エステル類を用いることができる。スルホン酸エステル類としては、例えば、炭素数3〜6の環状スルホン酸エステル、および、炭素数1〜4の鎖状スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0039】
炭素数3〜6の環状スルホン酸エステルとしては、1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−エチル−1,3−プロパンスルトン、2−エチル−1,3−プロパンスルトン、3−エチル−1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1−メチル−1,4−ブタンスルトン、2−メチル−1,4−ブタンスルトン、3−メチル−1,4−ブタンスルトン、4−メチル−1,4−ブタンスルトン、1−エチル−1,4−ブタンスルトン、2−エチル−1,4−ブタンスルトン、3−エチル−1,4−ブタンスルトン、4−エチル−1,4−ブタンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−エチル−1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1−メチル−1,4−ブタンスルトン、2−メチル−1,4−ブタンスルトン、3−メチル−1,4−ブタンスルトン、4−メチル−1,4−ブタンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン等が、電極表面との相互作用による電極界面保護能が高く保存やサイクル耐久性を向上させるため、より好適に用いられる。
【0041】
炭素数1〜4の鎖状スルホン酸エステルとしては、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、フルオロスルホン酸プロピル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸プロピル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル等が挙げられる。
これらの中でも、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル等が、電極表面との相互作用による電極界面保護能が高く保存やサイクル耐久性を向上させるため、より好適に用いられ
る。
【0042】
スルホン酸エステル類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、スルホン酸エステルの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。スルホン酸エステル類の配合量は、通常、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0043】
<亜硫酸エステル類>
本発明で用いられる非水系電解液において、電池の長寿命化を達成するために、環状亜硫酸エステルを用いることができる。亜硫酸エステル類としては、例えば、炭素数3〜6の環状亜硫酸エステルが挙げられる。
炭素数3〜6の環状亜硫酸エステルとしては、エチレンサルファイト、4−メチル−エチレンサルファイト、4,4−ジメチル−エチレンサルファイト、4,5−ジメチルエチレンサルファイト、4−エチル−エチレンサルファイト、4,4−ジエチル−エチレンサルファイト、4,5−ジエチルエチレンサルファイトが挙げられる。
【0044】
この中でも、エチレンサルファイト、4−メチル−エチレンサルファイト、が、電極表面との相互作用による電極界面保護能が高く保存やサイクル耐久性を向上させるため、より好適に用いられる。
亜硫酸エステル類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、亜硫酸エステル類の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。環状亜硫酸エステルの配合量は、通常、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0045】
<その他の配合成分>
本発明においては、エチレンカーボネートを始めとする環状カーボネートや鎖状カーボネート、環状および鎖状エステルを使用することも可能である。
<環状カーボネート>
・エチレンカーボネート
本発明で用いる非水系電解液はエチレンカーボネートを含有することが好ましく、この含有量としては、非水溶媒全体に対し、下限が10体積%以上であることが好ましく、上限が70体積%以下であることが好ましい。
【0046】
ここで非水溶媒全体とは、前述した不飽和結合を有する環状カーボネート、スルホン酸エステル類、亜硫酸エステル類、後述するフルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類、および、後述する電解質を除いた非水系電解液全体を指す。・エチレンカーボネート以外の環状カーボネート
エチレンカーボネート以外の環状カーボネートとしては、例えば、炭素数3〜4のアルキレン基を有するものが挙げられる。
【0047】
具体的には、炭素数3〜4の環状カーボネートとしては、プロピレンカーボネート、ブ
チレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、プロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
本発明において、エチレンカーボネート以外の環状カーボネートは、非水系電解液中の非水溶媒全体に対して、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上の濃度で含有させることが望ましい。この下限を下回ると、本発明の非水系電解液に対する電気伝導率の上昇が少なく、特に非水系電解液電池の大電流放電特性の向上に寄与しない場合がある。また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下の濃度で含有させることが望ましい。この範囲を上回ると、非水系電解液の粘性率が高くなることに由来する電気伝導率の低下を引き起こす傾向があり、特に非水系電解液電池の大電流放電特性が低下する場合がある。
【0048】
尚、ここでの非水系溶媒全体に関しても、エチレンカーボネートの場合と同様、前述した不飽和結合を有する環状カーボネート、スルホン酸エステル類、亜硫酸エステル類、後述するフルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類、および、後述する電解質を除いた非水系電解液全体を指す。
・フッ素原子を有する飽和環状カーボネート
フッ素原子を有する飽和環状カーボネート(以下、「フッ素化飽和環状カーボネート」と略記する場合がある)としては、特に制限はないが、例えば、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する飽和環状カーボネートの誘導体が挙げられ、具体的にはエチレンカーボネート誘導体が挙げられる。エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1〜8個のものが好ましい。
【0049】
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボ
ネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0050】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチ
ルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素化飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。フッ素化飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系溶媒100質量%中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、上限値としては50質量%未満であり、好ましくは45質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、高温保存特性の低下や、ガス発生量の増加により、放電容量維持率が低下することを回避しやすい。
【0051】
<鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては炭素数3〜7のものが好ましい。
具体的には、炭素数3〜7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等を挙げることができる。
【0052】
これらの中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、が好ましい。
これらの中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、が特に好ましい。
【0053】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(これを以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある)も好適に用いることが出来る。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数も、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。フッ素化鎖状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート誘導体類、ジメチルカーボネート誘導体類、エチルメチルカーボネート誘導体類、ジエチルカーボネート誘導体類等が挙げられる。
【0054】
上記ジメチルカーボネート誘導体類の具体例としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロ)メチルカーボネート等が挙げられる。
上記エチルメチルカーボネート誘導体類の具体例としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0055】
上記ジエチルカーボネート誘導体類の具体例としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0056】
以上説明した鎖状カーボネートについても、本発明の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用させてもよい。
本発明に用いる非水系電解液において、鎖状カーボネートは、非水系電解液中の非水溶媒全体に対して、好ましくは15体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは25体積%以上の濃度で含有させることが望ましい。また、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは75体積%以下の濃度で含有させることが望ましい。
【0057】
上記範囲内であると、非水系電解液の粘度が増加することなく、イオン導電度も低下し
ないため、大電流導電特性も良好である。
また、本発明の非水系電解液においては、特定の鎖状エーテル系化合物に対しては、エチレンカーボネート、特定の鎖状カーボネートを、特定の配合量とすることで、その性能を著しく向上させることができる。
【0058】
例えば、鎖状エーテルとしてジメトキシエタンを選択した場合、上記特定の鎖状カーボネートにエチルメチルカーボネートを選択することが好ましい。この場合、エチレンカーボネートの配合量を15体積%以上、40体積%以下、ジメトキシエタンの配合量を10体積%以上、40体積%以下、エチルメチルカーボネートの配合量を30体積%〜60体積%であることが特に好ましい。鎖状カーボネートにエチルメチルカーボネートを選択し、かつ上記配合量を選択することで、温度相溶領域を広げることができ、リチウム塩の低温析出温度を低下させることができる。
【0059】
他の例としては、鎖状エーテルとしてジエトキシエタンを選択した場合、上記特定の鎖状カーボネートにジメチルカーボネートを選択することが好ましい。この場合、エチレンカーボネートの配合量を15体積%以上、40体積%以下、ジエトキシエタンの配合量を20体積%以上、60体積%以下、ジメチルカーボネートの配合量を15体積%〜60体積%であることが特に好ましい。鎖状カーボネートにジメチルカーボネートを選択し、かつ上記配合量を選択することで、リチウム塩の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも高出力を得ることができる。
【0060】
<環状エステル>
環状エステルとしては、炭素原子数が3〜12のものが挙げられる。
具体的には、環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等を挙げることができる。これらの中でも、ガンマチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0061】
本発明において、環状エステルは、非水系電解液中の非水溶媒全体に対して、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上の濃度で含有させることが望ましい。この下限を下回ると、本発明の非水系電解液に対する電気伝導率の上昇が少なく、特に非水系電解液電池の大電流放電特性の向上に寄与しない場合がある。また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下の濃度で含有させることが望ましい。この範囲を上回ると、非水系電解液の粘性率が高くなることに由来する電気伝導率の低下を引き起こしたり、負極抵抗が増大する傾向があり、特に非水系電解液電池の大電流放電特性が低下する場合がある。
【0062】
<鎖状エステル>
鎖状エステルとしては、炭素数3〜7のアルキレン基を有するものが挙げられる。
具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等を挙げることができる。
【0063】
その中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から特に好ましい。
本発明において、鎖状エステルは、非水系電解液中の非水溶媒全体に対して、通常10
体積%以上、好ましくは15体積%以上の濃度で含有させることが望ましい。この下
限を下回ると、本発明の非水系電解液に対する電気伝導率の上昇が少なく、特に非水系電解液電池の大電流放電特性の向上に寄与しない場合がある。また、通常60体積%以下、好ましくは50体積%以下の濃度で含有させることが望ましい。この範囲を上回ると、負極抵抗が増大して非水系電解液電池の大電流放電特性が低下したり、サイクル特性が低下する傾向がある。
【0064】
<環状エーテル>
環状エーテルとしては、炭素数3〜6のアルキレン基を有するものが挙げあれる。
具体的には、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
【0065】
中でも、2−メチルテトラヒドロフラン、2−メチル−1,3−ジオキサンが、粘性が低く、かつリチウムイオンへの溶媒和能力が高いことからイオン解離性を向上させることから、高いイオン伝導度を与えるため、特に好ましい。
環状エーテルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。この範囲であれば、環状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、環状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0066】
<スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3〜6の環状スルホン、及び炭素数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0067】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0068】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
【0069】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0070】
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100質量%中、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0071】
<電解質>
本発明に用いる非水系電解液が含有する電解質としては、フルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類を用いることができる。これらリチウム塩類の中でも、正極活物質表面に吸着あるいは相互作用する能力が高い化合物が好ましく、電極表面に吸着あるいは相互作用する能力が高い化合物を用いた場合、熱的および化学的な耐久性を維持しながら、電極表面上の被膜の抵抗を極端に増加させることを防ぐことにより、高い高温保存特性やサイクル特性に加えて、耐久前後のハイレート特性の向上および高出力化を達成することができる。また、上記リチウム塩類以外にも任意のリチウム塩類を用いることができる。
【0072】
<フルオロリン酸リチウム類>
フルオロリン酸リチウム類としては、フルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これらは併用して用いてもよく、特にジフルオロリン酸リチウムは電極活物質表面に吸着あるいは相互作用する能力が高いため好ましい。
<スルホン酸リチウム類>
スルホン酸リチウム類としては、フルオロスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸リチウム、モノフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が挙げられる。これらは併用して用いてもよく、特にフルオロスルホン酸リチウムとトリフルオロメタンスルホン酸リチウムは、電極活物質表面に吸着あるいは相互作用する能力が高いため好ましい。
【0073】
<イミドリチウム塩類>
イミドリチウム塩類としは、LiN(FCO、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等が挙げられる。これらは併用して用いてもよく、特にLiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドは、電極活物質表面に吸着あるいは相互作用する能力が高いため好ましい。
【0074】
<その他のリチウム塩類>
フルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類以外のリチウム塩としては、
ギ酸リチウム、酢酸リチウム、モノフルオロ酢酸リチウム、ジフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム等のカルボン酸リチウム塩類;
LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類;
その他、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類;
等が挙げられる。
【0075】
これらのうち、非水系電解液の主たる電解質としては、LiPF、LiBF、フルオロスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドが電池性能向上の点から好ましい。
【0076】
非水系電解液中のこれらの主たる電解質の濃度は、特に制限はないが、通常0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、その上限は、通常3mol/L以下、好ましくは2mol/L以下、より好
ましくは1.8mol/L以下、特に好ましくは1.5mol/L以下である。添加される電解質の濃度が上記範囲にある場合、電池特性の向上効果が十分に発揮され、電荷移動抵抗が増加して充放電性能が低下するといった事態を回避しやすい。
【0077】
非水系電解液の主たる電解質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPFとLiBF,LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド等との併用であり、出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある。
【0078】
非水系電解液中に2種類以上の主たる電解質が含まれる場合の濃度についても特に制限はないが、通常は主たる電解質の合計で0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、その上限は、通常3mol/L以下、好ましくは2mol/L以下、より好ましくは1.8mol/L以下、特に好ましくは1.5mol/L以下である。添加される電解質の濃度が上記範囲にある場合、電池特性の向上効果が十分に発揮され、電荷移動抵抗が増加して充放電性能が低下するといった事態を回避しやすい。
【0079】
非水系電解液の主たる電解質に加えて、主たる電解質以外の電解質を添加することも好ましい。LiPFを主たる電解質とした場合に添加する電解質の好ましい一例は、LiBF、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、モノフルオロ酢酸リチウム、ジフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム、メタンスルホン酸リチウム、モノフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロオキサラトフォスフェート等が挙げられる。上記を添加することにより、出力特性やハイレート特性を向上させる効果がある。
【0080】
また、フルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロオキサラトフォスフェート等は、主たる電解質に加えて添加することにより、高温保存特性やサイクル特性を向上させる効果があることから好ましい。
【0081】
非水系電解液中に主たる電解質の他に添加される電解質の濃度についても特に制限はないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。またその上限は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。添加される電解質の濃度が上記範囲にある場合、電池特性の向上効果が十分に発揮され、電荷移動抵抗が増加して充放電性能が低下するといった事態を回避しやすい。
【0082】
尚、LiBF、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド等にあっては、主たる電解質であっても、主たる電解質に加えて添加される電解質
であっても、その電池性能を向上させる効果を有する。
【0083】
<過充電防止剤>
本発明の非水系電解液において、非水系電解液電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0084】
過充電防止剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。過充電防止剤は、非水系溶媒100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲でれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。過充電防止剤は、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0085】
<その他の助剤>
本発明の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0086】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系溶媒100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上
であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。その他の助剤の配合量は、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0087】
以上に記載してきた非水系電解液は、本発明に記載の非水系電解液電池の内部に存在するものも含まれる。具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調整し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合や、本発明の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合、更には、本発明の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液電池内で発生させて、本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
【0088】
[電池構成]
本発明の非水系電解液電池の電池構成は、従来公知のものと同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して、正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。したがって、本発明の非水系電解液電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0089】
[負極]
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
<負極活物質>
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料などが挙げられる。
【0090】
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0091】
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
【0092】
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズ(これらを以下、「特定金属元素」と略記する場合がある)の単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0093】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質としては、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0094】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も挙げることができる。具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。例えば、スズの場合、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0095】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物、炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0096】
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタン及びリチウムを含有する材料が好ましく、より好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、さらにリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する)である。すなわちスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、非水系電解液電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0097】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、T
i、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
上記金属酸化物が、一般式(1)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、一般式(1)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0098】
LiTi (1)
[一般式(1)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の一般式()で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
【0099】
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3、(b)ではLiTi、(c)ではLi4/5Ti11/5である。また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましいものとして挙げられる。
<炭素質材料の物性>
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
【0100】
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることがさらに好ましい。
【0101】
(体積基準平均粒径)
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0102】
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0103】
(ラマンR値、ラマン半値幅)
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0104】
ラマンR値が上記範囲内である場合、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなり、充電受入性が低下するといった事態を回避しやすくなる。さらに、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招くことを防ぐこともできる。また、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招くといった事態も回避しやすくなる。
【0105】
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下
であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下がさらに好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。
ラマン半値幅が上記範囲内である場合、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなり、充電受入性が低下するといった事態を回避しやすくなる。さらに、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招くことを防ぐこともできる。また、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招くといった事態も回避しやすくなる。
【0106】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度Iと、1360cm−1付近のピークPBの強度Iとを測定し、その強度比R(R=I/I)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明の炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm−1付近のピークPの半値幅を測定し、これを本発明の炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
【0107】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上がさらに好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下がさらに好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
【0108】
BET比表面積の値が上記範囲内の場合、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が容易になり、リチウムが電極表面で析出しにくくなる。さらに、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性がそれほど高くないためガス発生が少なく、好ましい電池が得られやすい。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明の炭素質材料のBET比表面積と定義する。
【0109】
(円形度)
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲内であると、負極活物質の充
填性が向上し、粒子間の抵抗が増大することなく、短時間高電流密度充放電特性が低下しにくくなる。
【0110】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明の炭素質材料の円形度と定義する。
【0111】
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0112】
(タップ密度)
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がさらに好ましく、2.0g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が上記範囲内の場合、負極として用いた場合に充填密度を高くすることができ、高容量の電池を得やすくなる。さらに、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎることもないため、粒子間の導電性が確保され、好ましい電池特性が得られやすい。
【0113】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明の炭素質材料のタップ密度として定義する。
【0114】
(配向比)
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲内の場合、高密度充放電特性が低下するといった事態を回避しやすい。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
【0115】
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発明の炭素質材料の配向比と定義する。
【0116】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
(アスペクト比(粉))
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲内の場合、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下するといった事態を回避しやすい。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0117】
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(A/B)を、本発明の炭素質材料のアスペクト比と定義する。
【0118】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0119】
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
(集電体)
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0120】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
【0121】
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが上記範囲内であると、電池全体の容量が低下し過ぎることがなく、取り扱いも容易となる。
(集電体と負極活物質層との厚さの比)
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がさらに好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じにくい。また、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少するといった事態を回避しやすい。
【0122】
(結着剤)
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0123】
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招くといった事態を回避しやすい。また、負極電極の強度低下を招くこともない。
【0124】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0125】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0126】
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(増粘剤)
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いて
も、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0127】
さらに増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲内であると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が適度であり、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大するといった事態を回避しやすい。
【0128】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.9g・cm−3以下がより好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.7g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招くといった事態を回避しやすい。また、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下するといった事態も回避できる。
【0129】
(負極板の厚さ)
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下が望ましい。
【0130】
[正極]
以下に本発明のリチウム二次電池に使用される正極について説明する。
[正極活物質]
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
(組成)
本発明の非水系電解液電池は、LixMPO4(M: 周期表2族〜12族の金属からなる群より
選ばれる少なくとも一種の元素、xは0<x<=1.2)で表されるリチウム含有リン酸化合物を基本組成とする正極活物質を備えている。
【0131】
上記のリチウム含有リン酸化合物としては、LixMPO4(M=周期表、第4周期の4族〜1
1族の遷移金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、xは0<x<=1.2)であるものが好ましい。
また、上記LixMPO4のMとしては、Mg, Zn, Ca, Cd, Sr, Ba, Co, Ni, Fe, Mn およびCu
からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましく、Co,Ni,Fe,Mnからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることがより好ましい。これらの中でも、特にLiFePO4を基本組成とするオリビン構造の鉄リン酸リチウムが、高温・充電状態での金属溶出が起こりにくく、また安価であるために好適に用いられる。
なお、上述の「LixMPO4を基本組成とする」とは、その組成式で表される組成のものだけ
でなく、結晶構造におけるFe等のサイトの一部を他の元素で置換したものも含むことを意味する。さらに、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損等した非化学量論組成のものも含むことを意味する。置換する他の元素はAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の元素であることが好ましい。上記他元素置換を行う場合
は、0.1mol%以上5mol%以下が好ましく、さらに好ましくは0.2mol%以上2.5mol%以下である

【0132】
また、上記正極活物質は、上記LixMPO4を主成分とするが、その他にも、例えばリチウ
ムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物を併用することができる。好ましくは、上記正極活物質は、上記LixMPO4を20wt%以上含有することがよ
い。この場合には、上記非水系電解液電池の充放電サイクル特性をより向上させることができる。より好ましくは、上記LixMPO4の含有量は40wt%以上がよい。
【0133】
また、LixMPO4を二種類以上併用することもできる。併用する際の好ましい組み合わせ
としては、LixFePO4とLixMnPO4、LixFePO4とLixCoPO4、LixFePO4とLixNiPO4を挙げることができ、これにより安全性を保持しながら電池動作電圧を向上させることができる。これらの中でも特に好ましい組み合わせはLixFePO4とLixMnPO4であり、上記安全性や電池動作電圧の向上に加えて、高温保存特性やサイクル特性等の耐久性に優れるために好ましい。
【0134】
(表面被覆)
また、LixMPO4の正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用
いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0135】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
【0136】
表面付着物質の量としては、該正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができ、その付着量が適度な場合にはその効果がより一層発揮される。
【0137】
本発明においては、LixMPO4の正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着
したものをも「正極活物質」という。
(形状)
本発明における前記正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
【0138】
(タップ密度)
前記正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.1g/cm3以上、より好ましくは0
.2g/cm3以上、更に好ましくは0.3g/cm3以上、最も好ましくは0.4g/cm3以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に
、 必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層
への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは2.0g/cm3以下、より好ましくは
1.8g/cm3以下である。
【0139】
なお、本発明では、タップ密度は、正極活物質粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccとして求める。
(メジアン径d50
前記正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上、最も好ましくは2μm以上であり、上限は、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、更に好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成、すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ該正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることができる。
【0140】
本発明におけるメジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA−920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
(平均一次粒子径)
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、該正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.03μm以上、更に好ましくは0.05μm以上であり、上限は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.6μm以下、更に好ましくは1.3μm以下、最も好ましくは1μm以下である。上記範囲内であると、球状の二次粒子を形成し易く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなるといった事態を回避しやすい。さらに、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題も生じ難くなる。
【0141】
一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
(BET比表面積)
本発明の二次電池に供する該正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.4m2
g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、更に好ましくは0.6m2/g以上であり、上限は50m2/g以下、好ましくは40m2/g以下、更に好ましくは30m2/g以下
である。BET比表面積が上記範囲内であると、電池性能の低下を抑制でき、さらに正極活物質層形成時の塗布性も良好である。
【0142】
BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
(製造法)
該正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、リン酸等のリン原料物質と、LixMPO4におけるMの原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし
粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成し
て活物質を得る方法等が挙げられる。
【0143】
本発明における正極の製造のためには、LixMPO4の正極活物質及び/又は前記表面付着
物質で被覆されたLixMPO4の正極活物質を単独で用いても良く、異なる組成の1種以上と
を、任意の組み合わせ又は比率で併用しても良い。ここで、LixMPO4の正極活物質及び/
又は前記表面付着物質で被覆されたLixMPO4の正極活物質は、正極活物質全体の30質量
%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。LixMPO4の正
極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆されたLixMPO4の正極活物質の使用割合上記
範囲内であると、好適な電池容量を提供することができる。
【0144】
なお、「LixMPO4の正極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆されたLixMPO4の正極活物質」と「LixMPO4の正極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆されたLixMPO4の正極活物質以外の正極活物質」を総称して「正極活物質」という。
[正極の構成]
以下に、本発明に使用される正極の構成について述べる。
【0145】
(電極構造と作製法)
本発明のリチウム二次電池用の正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。すなわち、本発明のリチウム二次電池用の正極は、前記正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることにより正極を得ることができる。
【0146】
本発明のリチウム二次電池の正極に用いられる正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が上記範囲内であると電気容量と正極の強度のバランスに優れる。
【0147】
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の充填密度は、下限として好ましくは1.3g/cm3以上、より好ましくは1.4g/cm3以上、更に好ましくは1.5g/cm3以上であり、上限としては、好ましくは3.0g/
cm3以下、より好ましくは2.5g/cm3以下、更に好ましくは2.3g/cm3以下
の範囲である。
【0148】
上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られないといった事態や、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られないといった事態を回避しやすい。
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また上限は、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量が上記範囲内であると、導電性を十分に確保することができ、好適な電池容量を提供することができる。
【0149】
(結着剤)
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0150】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、上限は、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結着剤の割合が上記範囲内であると、正極活物質を十分保持できるため、好適な正極の機械的強度を提供することができ、電池容量や導電性の低下を招くことなく、サイクル特性等に優れた電池性能を提供することが可能となる。
【0151】
(液体媒体)
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエー
テル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。
【0152】
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、また、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。上記範囲内であると、塗布性が良好となり、正極活物質層に占める活物質の割合が低くなり過ぎることなく、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題が生じるといった事態を回避し易い。
【0153】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0154】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜が上記範囲内であると、集電体として必要な強度を備えることができ、取り扱いも容易となる。
【0155】
また、集電体の表面に、集電体とは異なる化合物組成により導電層が形成されているものを用いることも、集電体と正極活物質層の電子接触抵抗を低下させる観点で好ましい。集電体とは異なる化合物組成により形成された導電層としては、炭素質材料や、導電性高分子、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。上記範囲内であると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じたり、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少するといった事態を回避し易くなる。
【0156】
(電極面積)
本発明の非水系電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には
、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0157】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは特に限定されるものではないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下である。
【0158】
[セパレータ]
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0159】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0160】
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータの厚さが、上記範囲内であると、絶縁性や機械的強度が低下することなく、レート特性等の電池性能が低下や、非水系電解液電池全体としてのエネルギー密度が低下が生じ難くなる。
【0161】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲内であると、膜抵抗が大きくなり過ぎず好適なレート特性を提供できる。さらに、セパレータの機械的強度も低下することなく、好適な絶縁性も提供できる。
【0162】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲内であると、短絡が生じ難く、膜抵抗は大きくなり過ぎず好適なレート特性を提供できる。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0163】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤
として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0164】
[電池設計]
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0165】
電極群占有率が、上記範囲内であると、好適な電池容量を提供することができ、適度な空隙スペースも確保できるため、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりしても内部圧力が上昇過ぎないため、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動するといった事態を回避し易くなる。
【0166】
<集電構造>
集電構造は、特に制限されないが、本発明の非水系電解液による高電流密度の充放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0167】
電極群が上記の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0168】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水電解質に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0169】
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0170】
<保護素子>
上記の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好まし
い。
【0171】
<外装体>
本発明の非水系電解液電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
【0172】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【実施例】
【0173】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
[負極の作製]
人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100重量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ75μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、負極とした。
【0174】
[正極の作製]
正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4、STL Energy Techno
logy社製)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め炭素質材料を塗布した厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ80μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。
【0175】
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比2:3:5)98.5重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした。
【0176】
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、シート状電池を作製し、評価を行った。電解液の成分を表1に示す。
【0177】
[初期放電容量の評価]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.0Vまで充電した後、0.1Cの定電流で2.5Vまで放電した。これを2サイクル行って電池を安定させ、3サイクル目から6サイクル目は、0.2Cの定電流で4.0Vまで充電後、4.0Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電した。その後、7サイクル目に0.2Cの定電流で4.0Vまで充電後、4.0Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電して、初期放電容量を求めた。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、5Cとはその5倍の電流値を、0.1Cとはその1/10の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0178】
[25℃出力の評価]
初期放電容量評価が終了した電池を25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを25℃において各々1C、2C、4C、7C、10C、15Cで10秒間放電させ、その10秒目の電圧を測定した。電流−電圧直線と下限電圧(2.5V)とで囲まれる三角形の面積を出力(W)とし、比較例1の25℃における出力値を100としたときの相対値(%)を算出した。
【0179】
[−30℃出力の評価]
初期放電容量評価が終了した電池を25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを−30℃において各々0.2C、0.4C、0.8C、1C、2Cで10秒間放電させ、その10秒目の電圧を測定した。電流−電圧直線と下限電圧(2.5V)とで囲まれる三角形の面積を出力(W)とし、比較例1の−30℃における出力値を100としたときの相対値(%)を算出した。
【0180】
[高温サイクル特性の評価]
初期放電容量評価試験の終了した電池を、60℃において、2Cの定電流で3.6Vまで充電後、2Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、500サイクル実施した。1サイクル目の放電容量を100とした場合の500サイクル目の放電容量(%)を求め、放電容量維持率とした。
【0181】
[ハイレート放電特性の評価]
高温サイクル試験が終了した電池を、25℃において0.2Cの定電流で3.6Vまで充電後、3.6Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電した。これを2Cおよび5Cの定電流で2.5Vまで放電する試験を実施した。初期放電容量試験の放電容量を100とした場合に対する高温サイクル試験後の2Cおよび5Cの放電容量(%)を求めた。
【0182】
以上の評価結果を表2〜3に示す。
実施例2
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比2:3:5)99.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0183】
実施例3
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)
とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比2:3:5)99.5重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0184】
実施例4
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)98.5重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0185】
実施例5
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)99.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0186】
実施例6
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジエトキシエタン(DEE)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:1:6)99.0重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0187】
実施例7
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(ETFEE)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:1:6)99.0重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0188】
実施例8
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)と(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル(TFETFPE)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:1:6)99.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0189】
実施例9
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)98.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、フルオロスルホン酸リチウム(LiFSO)1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0190】
実施例10
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)98.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CFSOLi)1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0191】
実施例11
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)98.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0192】
実施例12
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)99.0重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.3重量部、1,3-プロパンスルトン(PS)0.
2重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0193】
実施例13
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)99.0重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.3重量部、エチレンサルファイト(ES)0.2重量部、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0194】
比較例1
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:3:4)99.5重量部、ビニレンカーボネート(VC)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0195】
比較例2
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:3:4)99重量部、ビニレンカーボネート(VC)1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0196】
比較例3
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:3:4)99.5重量部、ビニルエチレンカーボネート(VEC)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0197】
比較例4
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:3:4)99.5重量部、1,3−プロパンスルトン(PS)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0198】
比較例5
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比3:2:5)を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。電解液の成分及び評価結果を表1及び表3に示す。
【0199】
比較例6
[正極の作製]
正極活物質としてLi(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O(NMC)90質量%と
、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め導電助剤を塗布した厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ80μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。
【0200】
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメトキシエタン(DME)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比2:3:5)99.0重量部、LiN(FSO(LiFSI)1.0重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPFを1.1mol/Lの割合となるように溶解して電解液とした以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製した。電解液の成分を表1に示す。
【0201】
[初期放電容量の評価]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃
において、0.2Cに相当する定電流で4.1Vまで充電した後、0.2Cの定電流で3Vまで放電した。これを2サイクル行って電池を安定させ、3サイクル目は、0.2Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3Vまで放電した。その後、4サイクル目に0.2Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3Vまで放電して、初期放電容量を求めた。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、5Cとはその5倍の電流値を、0.1Cとはその1/10の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0202】
[高温サイクル特性の評価]
初期放電容量評価試験の終了した電池を、60℃において、2Cの定電流で4.2Vまで充電後、2Cの定電流で3Vまで放電する過程を1サイクルとして、500サイクル実施した。1サイクル目の放電容量を100とした場合の500サイクル目の放電容量(%)を求め、放電容量維持率とした。
【0203】
[ハイレート放電特性の評価]
高温サイクル試験が終了した電池を、25℃において0.2Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電した。これを2Cおよび5Cの定電流で3Vまで放電する試験を実施した。初期放電容量試験の放電容量を100とした場合に対する高温サイクル試験後の2Cおよび5Cの放電容量(%)を求めた。
以上の結果を表2〜3に示す。
【0204】
【表1】

【0205】
【表2】

【0206】
【表3】

【0207】
【表4】

【0208】
表2から明らかなように、本発明の非水系電解液電池は、初期の25℃およびー30℃における出力に優れる。また、表3から明らかなように、高温サイクル特性、高温サイクル試験後の高電流密度での放電特性に優れることから、高い耐久性を有することが分かった。一方、本発明に係る非水系電解液でないものを用いた電池では、初期の25℃および−30℃における出力が本発明に係る非水系電解液を用いた電池よりも低く、かつ高温サイクル特性と高温サイクル試験後の高電流密度での放電特性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明の非水系電解液電池は、初期の常温および−30℃出力が高く、ハイレート放電時にも高い放電容量を与え、加えて高温保存試験やサイクル試験といった耐久試験後の容量維持率が高く、かつ耐久試験後でも初期の出力性能やハイレート放電容量に優れたものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、LixMPO4(M: 周期表2族〜12族の金属からなる群より選ばれる少なくとも
一種の元素、xは0<x<=1.2)で表されるリチウム含有リン酸化合物を正極活物質として少なくとも一種含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、
(1)鎖状エーテル、および
(2)不飽和結合を有する環状カーボネート
を含有することを特徴とする非水系電解液電池。
【請求項2】
集電体と、LixMPO4 (M: 周期表2族〜12族の金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、xは0<x<=1.2)で表されるリチウム含有リン酸化合物を正極活物質として少なくとも一種含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、
(1)鎖状エーテル、および
(2)フルオロリン酸リチウム類、スルホン酸リチウム類、イミドリチウム塩類、スルホン酸エステル類、亜硫酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類
を含有することを特徴とする非水系電解液電池。
【請求項3】
前記正極活物質が、LixMPO4 (M=周期表、第4周期の4族〜11族の遷移金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、xは0<x<=1.2) であることを特徴とする請求項1
または2に記載の非水系電解液電池。
【請求項4】
前記不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量が電解液全量に対して0.001〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液電池。
【請求項5】
該非水系電解液がエチレンカーボネートを10容量%以上含有することを特徴とする請求
項1または2に記載の非水系電解液電池。
【請求項6】
前記鎖状エーテルが、R1OR2 (R1, R2 は炭素数1〜8のフッ素原子を有していてもよい有機基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)であることを特徴とする請求項1ま
たは2に記載の非水系電解液電池。
【請求項7】
前記負極活物質が、炭素質材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系電解液電池。
【請求項8】
前記集電体表面に、集電体とは異なる化合物組成により導電層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の非水系電解液電池。
【請求項9】
上記請求項1〜8のいずれかに1項に記載の非水系電解液電池に用いる非水系電解液。


【公開番号】特開2011−96643(P2011−96643A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210895(P2010−210895)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成14年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発/次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発(要素技術開発)/大型リチウム二次電池用高安全性電解質の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】